照明装置及び撮像装置
【課題】広い面積の円環状の射出面から均一な照射を効率良く行わせる照明装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材10aと、を有する照明装置と、撮影レンズ3aを収納する撮影レンズ鏡筒部3と、を有するカメラ1aにおいて、円環状導光部材10aは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って案内し、円環形状を有する複数の導光部14bと、複数の導光部14bと同心円状に配置され、複数の導光部14bを分離する溝14cと、を有する。
【解決手段】閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材10aと、を有する照明装置と、撮影レンズ3aを収納する撮影レンズ鏡筒部3と、を有するカメラ1aにおいて、円環状導光部材10aは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って案内し、円環形状を有する複数の導光部14bと、複数の導光部14bと同心円状に配置され、複数の導光部14bを分離する溝14cと、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、閃光発光部からの光を近接撮影(マクロモード)に適した照明に変換する光学系としては、通常状態で光路を妨げず近接撮影時に突出して光路を切換えて撮影レンズの周囲に配置したライトガイドに導くものがある(例えば、特許文献1参照)。また、LEDを光源として使用し、LEDからの射出光を鏡筒部の回りに配置した円環状の発光部に変換するアダプタも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平08−043887号公報
【特許文献2】特開2005−258011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1は、閃光発光部からの光をライトガイドに効率良く導くことができず、射出面ではない部分から光が逃げてしまう成分が多かった。特に、導光部の幅が広い場合にこの傾向が強かった。一方、特許文献2は、導光部の幅を狭め効率を重視した円環状発光部は、発光面積が狭くなって背景にできる影を十分に柔らかくすることが難しかった。
【0004】
本発明は、広い面積の円環状の射出面から均一な照射を効率良く行わせる照明装置及び撮像装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての撮像装置は、閃光発光部と、当該閃光発光部からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有する照明装置と、撮影レンズを収納する撮影レンズ鏡筒部と、を有し、前記円環状導光部材は、同心円状に前記撮影レンズ鏡筒部の周りに配置され、各々が前記閃光発光部からの光を前記同心円に沿って案内し、円環形状を有する複数の導光部と、前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する溝と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の一側面としての照明装置は、光源と、当該光源からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有し、前記円環状導光部材は、同心円状に配置され、各々が前記光源からの光を前記同心円に沿って案内する複数の導光部と、前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する複数の溝と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、広い面積の円環状の射出面から均一な照射を効率良く行わせる照明装置及び撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例のデジタルコンパクトカメラ(撮像装置)について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1から図9は、実施例1のコンパクトデジタルカメラ(撮像装置)1aを示している。なお、本実施例の照明装置が搭載可能なカメラは図1〜図3に示すカメラ1aに限定されず、他のカメラ(一眼レフカメラやビデオカメラ等)であってもよい。図1及び図2はカメラ1aの正面図であり、図3はカメラ1aの斜視図である。カメラ1aは、カメラ本体2、撮影レンズ鏡筒部3、閃光発光部4、レリーズボタン5、外光の明るさを測定する測光装置の覗き窓6、ファインダーの覗き窓7、円環状導光部材10a、反射板25(図1及び図2には図示を省略)を有する。
【0010】
カメラ本体2は筺体構造を有する。撮影レンズ鏡筒部3は、撮影レンズ3aを収納し、カメラ本体2の前面2aのほぼ中央に設けられて前面2aから突出可能に設けられている。閃光発光部4は、カメラ本体2の前面2aに向かって右上に設けられ、図1及び図2では、幅が細い長方形形状を有する。
【0011】
閃光発光部(光源)4は、円環状導光部材10aと共に照明装置を構成する。
【0012】
閃光発光部4は、図示しない閃光放電管、内面反射鏡、ライトガイド、パネルを含む。閃光放電管は、光源手段としての閃光を発し、円筒形状を有する。閃光放電管は、図1の閃光発光部4が延びる水平方向に長手方向が一致するように配置される。内面反射鏡は、閃光放電管からの放射光束のうち前方以外の、例えば、後方(被写体側と反対方向)に放射される光束を被写体側へ集光反射する一次元方向に曲率を有する。ライトガイドは、閃光放電管から直接入射した光束及び内面反射鏡で反射して入射した光束を集光し、被写体側へ効率良く照射する光学部材である。パネルはカメラ本体2の前面2aに露出する透過率の高いガラス又は樹脂からなる透明部材である。
【0013】
円環状導光部材10aは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10aは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面14a)に変換する。円環状導光部材10aは、切り欠かれた円環(リング)形状を有する円環部11と、円環部11の切り欠き13に取り付けられた受光部15と、を有する。円環状導光部材10aは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で図3に示すように一体成型される。このため、本発明は円環部11と受光部15を別々に形成して切り欠き13において両者を接合する方法を採用していない。受光部15の表側(被写体側)の面と円環部11の表側(被写体側)の面は同一の高さの平面(面一)となっている。一方、円環部11の裏側(カメラ本体側)には後述するように溝14cが形成されているが、受光部15の裏側(カメラ本体側)には溝が形成されておらず受光部15は平板部材として構成される。
【0014】
図4は円環状導光部材10aの分解斜視図であり、受光部15を省略している。図5は円環状導光部材10aの円環部11を径方向に切断した場合の部分断面図又は切り欠き13の側面図である。
【0015】
また、図4に示すように、円環状導光部材10aとカメラ本体2の前面2aとの間には円環形状を有する反射板25が配置されている。なお、反射板25はカメラ1aの外装部材の一部に反射を行わせるための処理を施してカメラ本体2の前面2aと一体的に形成してもよく、また、金属外装の一部を反射面として利用してもよい。かかる構成により、限られたスペースを有効に利用できると共に製造コストを下げることができる。
【0016】
円環部11は、図4に示すように、円筒又は円盤形状の中空部12と、三角形状の切り欠き13と、を有する。図1乃至図3に示すように、円環部11の中空部12には撮影レンズ鏡筒部3が挿入され、切り欠き13には受光部15が接続される。
【0017】
図5に示すように、円環部11は、射出面14a、複数(本実施例では5つ)の導光部14b、溝14c、背面14d、側面14eを有する。射出面14aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面である。複数の導光部14bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。溝14cは、導光部14bを分離する。導光部14bと溝14cは、中空部12の中心に関して同心円状に形成される。反射板25は、円環状導光部材10aの射出面14aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10aに戻す機能を有し、円環部11の最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板25の中空部26の径は円環部11の中空部12の径と同一であり、中空部26には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面14dは、撮影レンズ3aの光軸方向に傾斜した平面もしくは曲面で構成される。側面14eには、反射面として構成されていてもよいが、本実施例では透過面として構成されている。
【0018】
受光部15は、閃光発光部4と同一又は若干大きく閃光発光部4を覆うことが可能な受光端部16と、受光端部16に入射した光を円環部11に導光する導光部17と、を有する。導光部17は、反射面17a及び17bと、透過面17c及び17dと、を有する。反射面17aは受光端部16の左側において受光端部16と円環部11との間に設けられ、反射面17bは受光端部16の下側において受光端部16と円環部11との間に設けられている。これらの反射面17a及び17bは閃光発光部4からの光が外部に漏れることを防止すると共にかかる光を円環部11に反射する機能を有する。透過面17c及び17dは受光部15と円環部11との接続面であり、閃光発光部4からの光を円環部11に供給する界面である。本実施例では、透過面17cと17dのそれぞれの断面は長方形である。
【0019】
円環状導光部材10aは、図1に示す第1の位置と図2に示す第2の位置との間で鏡筒を軸として鏡筒周りに回転機構30により回転移動可能にカメラ本体2に設けられている。なお、図1は、回転機構30を点線で概念的に示しているが、実際にはカメラ本体2の内部に設けられて図3に示すように外部からは見えない。回転機構30は、ユーザーがカメラ本体2に設けられた不図示のボタンを押すことによって自動で円環状導光部材10aを回転してもよいし、ユーザーが手動で円環状導光部材10aを回転してもよい。回転機構30の構造は特に限定されない。
【0020】
第1の位置は、近接撮影(マクロ撮影)に使用される位置であり、円環状導光部材10aの受光部15の受光端部16が閃光発光部4を覆う位置である。この配置によって、閃光発光部4から射出された光束を円環状導光部材10aに導くことができる。
【0021】
以下、第1の位置を使用した近接撮影について説明する。
【0022】
図6は、カメラ1aのモード切替動作に必要な制御系のブロック図である。図6に示すように、カメラ1aは、CPU(中央演算処理装置又は制御部)40、モード切替スイッチ42、測光装置44、CCDなどの撮像素子46、発光制御回路48を有する。発光制御回路48と閃光発光部4とはトリガーリード線49により接続されている。
【0023】
カメラ1aの動作モードがモード切替スイッチ42によって「近接撮影モード」に設定される。図1に示すように、円環状導光部材10aの受光部15の受光端部16は閃光発光部4の前側を覆う位置に回転機構30によって回動させる。なお、手動操作によって、円環状導光部材10aを回動させて図1に示す状態にしてもよい。また、「近接撮影モード」の設定によって、撮影レンズ鏡筒部3は撮影レンズ3aを近接撮影に適したマクロモード位置に配置する。レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと撮像素子46の感度とに応じて閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して閃光発光部4の不図示の閃光放電管を発光させる。閃光発光部4から射出した光束は、円環状導光部材10aに導かれて所定の光束に変化された後、射出面14aから射出される。
【0024】
次に、図7及び図8を参照して、円環状導光部材10aに導かれた光束の動作について説明する。なお、図7と図8は、見やすくするために、円環状導光部材の一部を切り欠いて示している。これは、切り欠きをなくすと光線追跡が連続してしまうからである。図7は導光部材の径方向の幅が広い場合に閃光発光部4から導かれた光束の入射位置によって光線がどのように振舞うかを説明するための図である。図7(a)から図7(c)は、順に撮影光軸から近い側から遠い側へ光束を入射させる位置を変化させたものである。
【0025】
図7(a)は、光束が円環状導光部材10aの内周部に近い位置から入射した状態を示している。図7(a)に示すように、この位置に入射した光束は、外周面に立てた法線に対する角度が小さく全反射条件を満たしにくいため、円環状導光部材10aの外周から最も抜けやすい。なお、図7(a)では、円環部の側面を反射面としていない。この結果、外周部から射出してしまう成分が非常に多い。特に、リング状導光部材10aの幅が広い場合には、外周部に最初当たる位置が入射部から離れた位置になってしまい、この傾向が強くなる。
【0026】
図7(b)は、光束が円環状導光部材10aの入射面中央に近い位置から入射した状態を示している。この位置に入射する光束は、導光部材の内部を全反射しながら導かれる成分が多く、導光部材の外周部から抜け出る成分が少ない。導光中の光束は、導光部材の内周部付近を通る成分は少なく、このことは同時に、導光部の内周部付近から射出する光束が少ないことを示している。
【0027】
図7(c)は、光束が円環状導光部材10aの最も外周寄りの位置から入射した状態を示している。図7(c)に示すように、この位置に入射した光束は、円環状導光部材10aの外周部から外側に抜け出る成分はないため、効率良く導光させることができる。また、この場合の導光の特徴として、円環状導光部の外周部に沿って導かれていることがわかる。この場合にも、円環状導光部の内周部付近を通る光束は少なく、この最も外周寄りの位置から入射した光束の大部分は、導光部材10aの外周部付近から照射されることが予想される。
【0028】
このように、円環状導光部材10aの幅が広い場合には、リング状導光部材10aへの入射位置によっては、導光部材の外周部より抜け出る成分が存在する。また、リング状導光部材10aの内周部に近い成分が少なく、外周部に近い成分が多くなる傾向がある。このことから、円環状導光部材の幅が広い場合には、一見して射出部の面積が大きくこの種の発光部の形態として望ましい形態だと考えられるが、実際には閃光発光部4からの入射光束を有効に利用できない。また、必ずしも発光面の全ての領域で均一な発光ができるわけではない。
【0029】
実施例1は、この問題を解決するために、円環状導光部材10aの外周部から漏れる光束を最小限に抑えると共に、幅広い円環状導光部材10aの全面から均一な光束を射出させている。
【0030】
次に、図8(a)〜図8(c)を参照して、円環状導光部材10aの幅を変化させた場合の導光状態について説明する。なお、図7で説明したように、円環状導光部材10aへの光束の入射位置として内周部に近い位置から入射させた場合が最も外周部へ抜け出し易い。このため、図8に示す幅の異なった各導光部材についても、最も厳しい条件である内周部付近から光束を入射させた場合について比較を行っている。
【0031】
図8(a)は最も幅の広い円環状導光部材10aを示し、図8(c)は最も幅の狭い円環状導光部材10aを示し、図8(b)はその中間の幅の円環状導光部材10aを示している。図8(a)においては、図7(a)と同様に、幅の広い円環状導光部材10aの内周部付近から光束を入射させた場合に光束が外周部から抜け出し易い。図8(b)に示す中間の幅の円環状導光部材10aでは、外周部からの光線の抜け出しが極端に減っているものの、まだ一部外周部から光束が抜け出ている。図8(c)に示す幅が最も狭い円環状導光部材10aにおいては、外周部への光線の抜け出しはなく、光束を効率良く円環状の導光部に導くことができる。これは、図8(a)から図8(c)の比較からもわかるように、光束が入射した直後の光線分布が同等であっても、内外周の径の差によって入射光が外周面に立てた法線に対してなす角度が変化することに起因している。
【0032】
図9を参照して、導光部材の幅変化により外周部より光線が抜け易くなることを説明する。図9は、幅の異なる円環状導光部材10aを重ねて示した断面図であり、代表光線として入射面の点Dから左側へ水平に入射した光線の反射角度がどのように変化するかを示したものである。同図において、Aは幅の狭い円環状導光部材と幅の広い円環状導光部材の共通の内周面、Bは幅の狭い円環状導光部材の外周面、Cは幅の広い円環状導光部材の外周面である。また、Dは円環状導光部材への入射する光線の基点、Eは基点Dから射出した水平方向の光線と幅の狭い円環状導光部材の外周面Bとの交点、Fは交点E上に立てた法線であり、水平方向の光線DEと法線Fとのなす角度をαとする。Gは基点Dから射出した水平方向の光線と幅の広い円環状導光部材の外周面Cとの交点、Hは交点G上に立てた法線であり、水平方向の光線DGと法線Hとのなす角度をβとする。
【0033】
図示のように、基点から水平方向に入射した光束と幅の狭い円環状導光部材の点Eに立てた法線とのなす角度αは、同様に幅の広い円環状導光部材の点Gに立てた法線Hとなす角度βより大きくなる。このため、同条件で入射させた光束でも、導光部14bの幅が狭い場合には角度αが大きいすなわち全反射条件を満たしやすく、導光部14bの幅が広い場合には角度βが小さくなり全反射条件を満たしにくくなる傾向にあることがわかる。図9は、基点Dに対する水平方向の光線を代表光線としてとっているが、その他の角度成分に対しても同じ傾向にある。
【0034】
このように、円環状導光部材10aの幅と円環状導光部材10aの外周部からの光線の抜けは密接な関係があり、円環状導光部材10aの幅が狭いほど外周部の交点に立てた法線との角度が大きくなる。この角度は、円環状導光部材10aを光線が導光していく際、大きければ大きいほど全反射させることが容易にできるため、円環状導光部材10aを構成する上で都合がよい。円環状導光部材10aの最適な幅は、光学材料の屈折率や、導光部材に入射する前の角度分布によっても異なる。しかし、定性的に円環状導光部材10aの幅が狭い方が光束を全反射を用いて導光させる上で都合がよい。
【0035】
以上説明したように、円環状導光部材10aを外周部からの光線の漏れがないように効率良く導くためには、円環状導光部材10aの幅を極力狭めることが有効である。しかし、この一方で、近接撮影においては、狭く細い発光部より、発光面積の広く全体から均一な発光を行わせることが可能な発光部の方が、被写体全体に光が回り背後にできる影を柔らかくするのには有効であることも事実である。
【0036】
この2つの要求を同時に満足するために、本実施例は、円環状導光部材10aに同心円状に複数の溝14cを形成して幅の狭い複数の導光部14bを持った光学部材と同様な効果を持たせている。図1、図4に示すように、射出面4a側は円環状平面で構成され、その裏面には、図5に示すような断面形状の溝14cが形成されている。
【0037】
図1に示すように、閃光発光部4から射出した光束は、図中矢印で示すように、反射面17bで反射し、円環部11に反時計回りに導光される光束と、閃光発光部4から直接下方に導かれて円環部11に時計回りに導光される光束に分離される。これは、閃光発光部4の発光部が受光部15の横幅よりも長く、この射出面から導かれる光束を効率良く導くのに有効な形状である。このように、閃光発光部4から射出した光束は、受光部15を介して円環部11に導かれる。
【0038】
ここで、本実施例では、図5に示すようにスリット状の溝14cを同心円状に形成している。溝14cは、導光部14bに対して隣の導光部14bに光束が混じるのを防止する。この溝14cで構成される側面を全反射面として機能させるように構成している。このため、溝14cの深さが深ければ深いほど、即ち、各導光部14b同士を結ぶ肉厚が薄ければ薄いほど望ましい。
【0039】
また、溝14cの径方向の幅は狭いことが望ましい。これは、溝14cの幅を広げると導光部14bの領域を減少させることにつながるからである。図5に示すように、溝14cの幅を極力狭めること、即ち、溝14cの幅を樹脂材料の成形限界まで狭めることが有効である。
【0040】
本実施例では、導光部14bの裏面側を撮影レンズ3aの光軸方向に傾けた背面14dで構成している。これは、図3に示すように、円環状導光部材10aは、撮影レンズ鏡筒部3の付け根の部分、即ち、カメラの外装面に取り付けられているからである。円環状導光部材10aから撮影レンズ鏡筒部3の先端部までは距離があり、超至近距離の撮影を想定した場合、撮影レンズ3aの突出量によっては、光軸中心部に回り込む光束が十分に行き渡らないことが懸念される。本実施例は、この至近距離における、鏡筒部での光線ケラレを最小限に抑えるため、円環状導光部材10aから射出する光束を、レンズ光軸側に傾けるように光束の射出方向を規制している。図5における傾斜面14dがこの形状であり、導光部の裏面側の形状を光軸側に傾斜させることで、射出光束を意図的に内側で向かせている。このことによって、超至近距離の被写体に対しても鏡筒ケラレの少ない照明を行うことができる。
【0041】
図1及び図2に戻って、第2の位置は、非近接撮影に使用される位置であり、受光部15が閃光発光部4からずれて閃光発光部4を露出する位置である。この配置は、図1に示す位置から円環状導光部材10aをレンズ鏡筒部3の回りに右方向に回転させることによって実現される。この動作によって、閃光発光部4から射出した光束は円環状導光部材10aへ導かれることなく通常の発光を行う。
【0042】
以下、第2の位置を使用した非近接撮影について説明する。カメラ1aの動作モードがモード切替スイッチ42によって「ストロボオートモード」に設定される。そして、レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと、撮像素子46の感度とに応じて、閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して発光制御回路48の不図示の閃光放電管を発光させる。
【0043】
実施例1は、各導光部14bを肉薄部で結び、射出面14aが平面となるように構成しているが、必ずしもこの形状に限定されず、必要最小限の部分を肉薄部でつなぐ構成としてもよい。この構成により、導光部間の光線の混入がさらに少なくなり、均一に光束を導くことができる。
【実施例2】
【0044】
図10から図12は、実施例2のコンパクトデジタルカメラ(撮像素子)1bを示している。なお、本実施例の照明装置が搭載可能なカメラは図10及び図11に示すカメラ1bに限定されず、他のカメラ(一眼レフカメラやビデオカメラ等)であってもよい。図10及び図11はカメラ1bの正面図である。カメラ1bは、カメラ本体2、撮影レンズ鏡筒部3、閃光発光部4、レリーズボタン5(図示せず)、覗き窓6、覗き窓7、円環状導光部材10b、反射部材(図示せず)、中間部材50、ストラップ(接続部材)52、接続部54を有する。
【0045】
中間部材50は、閃光発光部4と円環状導光部材10bとを光学的に接続する。ストラップ52は、カメラ本体2の接続部54に繋がれており、先端部には中間部材50が取り付けられ、不用意に紛失するのを防止している。
【0046】
円環状導光部材10bは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10bは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面18a)に変換する。円環状導光部材10bは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で形成されている。本実施例の円環状導光部材10bは、切り欠きはなく回転しない。
【0047】
図12は円環状導光部材10bの断面図である。円環状導光部材10bは、射出面18a、複数(本実施例では5つ)の導光部18b、溝18c、背面18d、側面18e、壁面18fを有する。
【0048】
射出面18aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面である。複数の導光部18bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。溝18cは、導光部18bを分離する。導光部18bと溝18cは、円環状導光部材10bの中空部の中心に関して同心円状に形成される。図示しない反射板は、円環状導光部材10bの射出面18aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10bに戻す機能を有し、円環状導光部材10bの最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板の中空部の径は円環状導光部材10bの中空部の径と同一であり、反射板の中空部には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面18dは、撮影レンズ3aの光軸方向に傾斜した平面もしくは曲面で構成される。側面18eには、反射面として構成されていてもよいが、本実施例では透過面として構成されている。壁面18fは、溝18cを形成する傾斜面である。
【0049】
以下、近接撮影について説明する。近接撮影時には、図10に示すように、中間部材50が閃光発光部4と円環状導光部材10bとを接続する。この場合の制御系は、図6に示す制御系の回転機構30がないものに対応する。
【0050】
カメラ1bの動作モードがモード切替スイッチ42によって「近接撮影モード」に設定される。図10に示す位置に、中間部材50を取り付け、これにより、閃光発光部4から射出した光束を所定の光束に変換し、円環状導光部材10bから射出させることを可能にする。また、「近接撮影モード」の設定によって、撮影レンズ鏡筒部3は撮影レンズ3aを近接撮影に適したマクロモード位置に配置する。レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと撮像素子46の感度とに応じて閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して閃光発光部4の不図示の閃光放電管を発光させる。閃光発光部4から射出した光束は、中間部材50を介して円環状導光部材10bに導かれて所定の光束に変化された後、射出面18aから射出される。
【0051】
本実施例の円環状導光部材10bは、射出面18aが実施例1と同様に円環状の平面で構成されているものの、その裏面は壁面18fを有する導光部18bで構成されている点で異なる。かかる構造は、区分けされた各導光部18bの光束に指向性を持たせるために有効である。導光部18bを形成する壁面18fの傾きを規制することで円環状の導光部18bから射出させる際の径方向の照射角度範囲をある程度制御できる。即ち、各導光部18bの形状を射出面に近づくにつれて末広がりの形状とすることによって、定性的に径方向の照射角度範囲を狭め、必要とされる照射範囲に対して効率良く照射させることができる。これは、導光部の傾斜した壁面18fで全反射した成分が、反射後に撮影光軸に近い角度に変換されることを利用している。また、この形状は、円環状導光部材10bの加工を行う際にも有効である。各導光部18bの壁面18fに傾斜を持たせることによって光学樹脂材料の成形性を向上させることができる。
【0052】
本実施例でも、導光部18bは、撮影レンズ3aの光軸方向に傾けた背面18dを有する。これは、実施例1と同様に、射出光束をレンズ光軸中心側に回り込ませることで、至近距離における鏡筒部での光線ケラレによる影響を最小限に抑えるためである。本実施例では、溝18cを形成する側面の両側の面を傾斜させているが、傾斜させる側面は、片側のみでもよい。
【0053】
図11は、非近接撮影に使用される位置であり、中間部材50が閃光発光部4からずれて閃光発光部4を露出する位置である。この配置は、中間部材50をユーザーが手動で図10に示す位置から移動することによって実現される。この動作によって、閃光発光部4から射出した光束は円環状導光部材10bへ導かれることなく通常の発光を行う。
【0054】
以下、非近接撮影について説明する。カメラ1bの動作モードがモード切替スイッチ42によって「ストロボオートモード」に設定される。そして、レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと、撮像素子46の感度とに応じて、閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して発光制御回路48の不図示の閃光放電管を発光させる。
【実施例3】
【0055】
実施例3は、実施例1及び2の変形例であり、円環状導光部材10a、10bの溝の形状のみを変形させている。他の構成については同様であるため説明を省略する。
【0056】
円環状導光部材10cは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10cは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面19a)に変換する。円環状導光部材10cは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で形成されている。本実施例の円環状導光部材10cは、切り欠きはなく回転しない。
【0057】
図13は円環状導光部材10cの断面図である。円環状導光部材10cは、射出面19a、導光部19b、溝19c、背面19dを有する。射出面19aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面であるが、複数(本実施例では4つ)の溝19cによって5つに分割されている。複数の導光部19bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。複数の導光部19bは、同様に、溝19cによって5つに分割されている。溝19cは、導光部19bを分離する。導光部19bと溝19cは、円環状導光部材10cの中空部の中心に関して同心円状に形成され、カメラ本体の表面に露出する。図示しない反射板は、円環状導光部材10cの射出面19aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10cに戻す機能を有し、円環状導光部材10cの最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板の中空部の径は円環状導光部材10cの中空部の径と同一であり、反射板の中空部には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面19dは射出面19aと平行な平面であり、分割されていない。図13に示すように、円環状導光部材10cの射出面19a側に溝19cを設けても実施例1及び2と同様に、複数の細い導光部に分離することができ、ほぼ同等の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0058】
実施例4は、実施例1及び2の変形例であり、円環状導光部材10a、10bの溝の形状のみを変形させている。他の構成については同様であるため説明を省略する。
【0059】
円環状導光部材10dは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10dは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面20a)に変換する。円環状導光部材10dは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で形成されている。本実施例の円環状導光部材10dは、切り欠きはなく回転しない。
【0060】
図14は円環状導光部材10dの断面図である。円環状導光部材10dは、射出面20a、導光部20b、溝20c1及び20c2、背面20dを有する。射出面20aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面であるが、複数(本実施例では4つ)の溝20c1によって5つに分割されている。複数の導光部20bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。複数の導光部20bは、同様に、溝20c2によって5つに分割されている。溝20c1及び20c2は、導光部20bを分離する。導光部20bと溝20c1及び20c2は、円環状導光部材10dの中空部の中心に関して同心円状に形成され、カメラ本体の表面に露出する。図示しない反射板は、円環状導光部材10dの射出面20aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10dに戻す機能を有し、円環状導光部材10dの最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板の中空部の径は円環状導光部材10dの中空部の径と同一であり、反射板の中空部には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面20dは射出面20aと平行な平面であり、溝20c2によって5つに分割されている。図14に示すように、円環状導光部材10dの射出面20a側と背面20d側の両方に溝20c1及び20c2を設けても実施例1及び2と同様に、複数の細い導光部に分離することができ、ほぼ同等の効果を得ることができる。
【0061】
特に、本実施例のように、射出面20aと背面20dの両側に溝20c1及び20c2を形成した場合には、それぞれの溝の深さを浅く設定することが可能なため溝の幅を狭くできる可能性が高い。このため、導光部20bとして機能しない溝20c1及び20c2の体積を減らすことが可能になるため、より効率の良い照明装置を構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1のカメラ(撮像装置)の正面図である。
【図2】実施例1のカメラの正面図である。
【図3】図1に示すカメラの斜視図である。
【図4】図1に示す円環状導光部材の部分斜視図である。
【図5】図4に示す円環状導光部材の部分断面図である。
【図6】図1に示すカメラの制御系のブロック図である。
【図7】円環状導光部材の光束入射位置と光束漏れとの関係を示す図である。
【図8】図1に示す円環状導光部材の幅の変化と光線の振舞意図の関係を説明する図である。
【図9】図1に示す円環状導光部材の幅変化により外周部から光線が抜け易くなることを説明するための図である。
【図10】実施例2のカメラ(撮像装置)の正面図である。
【図11】実施例2のカメラの正面図である。
【図12】図10に示す円環状導光部材の部分断面図である。
【図13】実施例3の円環状導光部材の部分断面図である。
【図14】実施例4の円環状導光部材の部分断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1a、1b カメラ
2 カメラ本体
3 撮影レンズ鏡筒部
3a 撮影レンズ
4 閃光発光部
10a、10b、10c、10d 円環状導光部材
14b、18b、19b、20b 導光部
14c、18c、19c、20c1、20c2 溝
30 回転機構
40 中央演算処理装置(CPU)
50 中間部材
52 ストラップ(接続部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、閃光発光部からの光を近接撮影(マクロモード)に適した照明に変換する光学系としては、通常状態で光路を妨げず近接撮影時に突出して光路を切換えて撮影レンズの周囲に配置したライトガイドに導くものがある(例えば、特許文献1参照)。また、LEDを光源として使用し、LEDからの射出光を鏡筒部の回りに配置した円環状の発光部に変換するアダプタも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平08−043887号公報
【特許文献2】特開2005−258011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1は、閃光発光部からの光をライトガイドに効率良く導くことができず、射出面ではない部分から光が逃げてしまう成分が多かった。特に、導光部の幅が広い場合にこの傾向が強かった。一方、特許文献2は、導光部の幅を狭め効率を重視した円環状発光部は、発光面積が狭くなって背景にできる影を十分に柔らかくすることが難しかった。
【0004】
本発明は、広い面積の円環状の射出面から均一な照射を効率良く行わせる照明装置及び撮像装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての撮像装置は、閃光発光部と、当該閃光発光部からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有する照明装置と、撮影レンズを収納する撮影レンズ鏡筒部と、を有し、前記円環状導光部材は、同心円状に前記撮影レンズ鏡筒部の周りに配置され、各々が前記閃光発光部からの光を前記同心円に沿って案内し、円環形状を有する複数の導光部と、前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する溝と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の一側面としての照明装置は、光源と、当該光源からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有し、前記円環状導光部材は、同心円状に配置され、各々が前記光源からの光を前記同心円に沿って案内する複数の導光部と、前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する複数の溝と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、広い面積の円環状の射出面から均一な照射を効率良く行わせる照明装置及び撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例のデジタルコンパクトカメラ(撮像装置)について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1から図9は、実施例1のコンパクトデジタルカメラ(撮像装置)1aを示している。なお、本実施例の照明装置が搭載可能なカメラは図1〜図3に示すカメラ1aに限定されず、他のカメラ(一眼レフカメラやビデオカメラ等)であってもよい。図1及び図2はカメラ1aの正面図であり、図3はカメラ1aの斜視図である。カメラ1aは、カメラ本体2、撮影レンズ鏡筒部3、閃光発光部4、レリーズボタン5、外光の明るさを測定する測光装置の覗き窓6、ファインダーの覗き窓7、円環状導光部材10a、反射板25(図1及び図2には図示を省略)を有する。
【0010】
カメラ本体2は筺体構造を有する。撮影レンズ鏡筒部3は、撮影レンズ3aを収納し、カメラ本体2の前面2aのほぼ中央に設けられて前面2aから突出可能に設けられている。閃光発光部4は、カメラ本体2の前面2aに向かって右上に設けられ、図1及び図2では、幅が細い長方形形状を有する。
【0011】
閃光発光部(光源)4は、円環状導光部材10aと共に照明装置を構成する。
【0012】
閃光発光部4は、図示しない閃光放電管、内面反射鏡、ライトガイド、パネルを含む。閃光放電管は、光源手段としての閃光を発し、円筒形状を有する。閃光放電管は、図1の閃光発光部4が延びる水平方向に長手方向が一致するように配置される。内面反射鏡は、閃光放電管からの放射光束のうち前方以外の、例えば、後方(被写体側と反対方向)に放射される光束を被写体側へ集光反射する一次元方向に曲率を有する。ライトガイドは、閃光放電管から直接入射した光束及び内面反射鏡で反射して入射した光束を集光し、被写体側へ効率良く照射する光学部材である。パネルはカメラ本体2の前面2aに露出する透過率の高いガラス又は樹脂からなる透明部材である。
【0013】
円環状導光部材10aは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10aは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面14a)に変換する。円環状導光部材10aは、切り欠かれた円環(リング)形状を有する円環部11と、円環部11の切り欠き13に取り付けられた受光部15と、を有する。円環状導光部材10aは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で図3に示すように一体成型される。このため、本発明は円環部11と受光部15を別々に形成して切り欠き13において両者を接合する方法を採用していない。受光部15の表側(被写体側)の面と円環部11の表側(被写体側)の面は同一の高さの平面(面一)となっている。一方、円環部11の裏側(カメラ本体側)には後述するように溝14cが形成されているが、受光部15の裏側(カメラ本体側)には溝が形成されておらず受光部15は平板部材として構成される。
【0014】
図4は円環状導光部材10aの分解斜視図であり、受光部15を省略している。図5は円環状導光部材10aの円環部11を径方向に切断した場合の部分断面図又は切り欠き13の側面図である。
【0015】
また、図4に示すように、円環状導光部材10aとカメラ本体2の前面2aとの間には円環形状を有する反射板25が配置されている。なお、反射板25はカメラ1aの外装部材の一部に反射を行わせるための処理を施してカメラ本体2の前面2aと一体的に形成してもよく、また、金属外装の一部を反射面として利用してもよい。かかる構成により、限られたスペースを有効に利用できると共に製造コストを下げることができる。
【0016】
円環部11は、図4に示すように、円筒又は円盤形状の中空部12と、三角形状の切り欠き13と、を有する。図1乃至図3に示すように、円環部11の中空部12には撮影レンズ鏡筒部3が挿入され、切り欠き13には受光部15が接続される。
【0017】
図5に示すように、円環部11は、射出面14a、複数(本実施例では5つ)の導光部14b、溝14c、背面14d、側面14eを有する。射出面14aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面である。複数の導光部14bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。溝14cは、導光部14bを分離する。導光部14bと溝14cは、中空部12の中心に関して同心円状に形成される。反射板25は、円環状導光部材10aの射出面14aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10aに戻す機能を有し、円環部11の最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板25の中空部26の径は円環部11の中空部12の径と同一であり、中空部26には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面14dは、撮影レンズ3aの光軸方向に傾斜した平面もしくは曲面で構成される。側面14eには、反射面として構成されていてもよいが、本実施例では透過面として構成されている。
【0018】
受光部15は、閃光発光部4と同一又は若干大きく閃光発光部4を覆うことが可能な受光端部16と、受光端部16に入射した光を円環部11に導光する導光部17と、を有する。導光部17は、反射面17a及び17bと、透過面17c及び17dと、を有する。反射面17aは受光端部16の左側において受光端部16と円環部11との間に設けられ、反射面17bは受光端部16の下側において受光端部16と円環部11との間に設けられている。これらの反射面17a及び17bは閃光発光部4からの光が外部に漏れることを防止すると共にかかる光を円環部11に反射する機能を有する。透過面17c及び17dは受光部15と円環部11との接続面であり、閃光発光部4からの光を円環部11に供給する界面である。本実施例では、透過面17cと17dのそれぞれの断面は長方形である。
【0019】
円環状導光部材10aは、図1に示す第1の位置と図2に示す第2の位置との間で鏡筒を軸として鏡筒周りに回転機構30により回転移動可能にカメラ本体2に設けられている。なお、図1は、回転機構30を点線で概念的に示しているが、実際にはカメラ本体2の内部に設けられて図3に示すように外部からは見えない。回転機構30は、ユーザーがカメラ本体2に設けられた不図示のボタンを押すことによって自動で円環状導光部材10aを回転してもよいし、ユーザーが手動で円環状導光部材10aを回転してもよい。回転機構30の構造は特に限定されない。
【0020】
第1の位置は、近接撮影(マクロ撮影)に使用される位置であり、円環状導光部材10aの受光部15の受光端部16が閃光発光部4を覆う位置である。この配置によって、閃光発光部4から射出された光束を円環状導光部材10aに導くことができる。
【0021】
以下、第1の位置を使用した近接撮影について説明する。
【0022】
図6は、カメラ1aのモード切替動作に必要な制御系のブロック図である。図6に示すように、カメラ1aは、CPU(中央演算処理装置又は制御部)40、モード切替スイッチ42、測光装置44、CCDなどの撮像素子46、発光制御回路48を有する。発光制御回路48と閃光発光部4とはトリガーリード線49により接続されている。
【0023】
カメラ1aの動作モードがモード切替スイッチ42によって「近接撮影モード」に設定される。図1に示すように、円環状導光部材10aの受光部15の受光端部16は閃光発光部4の前側を覆う位置に回転機構30によって回動させる。なお、手動操作によって、円環状導光部材10aを回動させて図1に示す状態にしてもよい。また、「近接撮影モード」の設定によって、撮影レンズ鏡筒部3は撮影レンズ3aを近接撮影に適したマクロモード位置に配置する。レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと撮像素子46の感度とに応じて閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して閃光発光部4の不図示の閃光放電管を発光させる。閃光発光部4から射出した光束は、円環状導光部材10aに導かれて所定の光束に変化された後、射出面14aから射出される。
【0024】
次に、図7及び図8を参照して、円環状導光部材10aに導かれた光束の動作について説明する。なお、図7と図8は、見やすくするために、円環状導光部材の一部を切り欠いて示している。これは、切り欠きをなくすと光線追跡が連続してしまうからである。図7は導光部材の径方向の幅が広い場合に閃光発光部4から導かれた光束の入射位置によって光線がどのように振舞うかを説明するための図である。図7(a)から図7(c)は、順に撮影光軸から近い側から遠い側へ光束を入射させる位置を変化させたものである。
【0025】
図7(a)は、光束が円環状導光部材10aの内周部に近い位置から入射した状態を示している。図7(a)に示すように、この位置に入射した光束は、外周面に立てた法線に対する角度が小さく全反射条件を満たしにくいため、円環状導光部材10aの外周から最も抜けやすい。なお、図7(a)では、円環部の側面を反射面としていない。この結果、外周部から射出してしまう成分が非常に多い。特に、リング状導光部材10aの幅が広い場合には、外周部に最初当たる位置が入射部から離れた位置になってしまい、この傾向が強くなる。
【0026】
図7(b)は、光束が円環状導光部材10aの入射面中央に近い位置から入射した状態を示している。この位置に入射する光束は、導光部材の内部を全反射しながら導かれる成分が多く、導光部材の外周部から抜け出る成分が少ない。導光中の光束は、導光部材の内周部付近を通る成分は少なく、このことは同時に、導光部の内周部付近から射出する光束が少ないことを示している。
【0027】
図7(c)は、光束が円環状導光部材10aの最も外周寄りの位置から入射した状態を示している。図7(c)に示すように、この位置に入射した光束は、円環状導光部材10aの外周部から外側に抜け出る成分はないため、効率良く導光させることができる。また、この場合の導光の特徴として、円環状導光部の外周部に沿って導かれていることがわかる。この場合にも、円環状導光部の内周部付近を通る光束は少なく、この最も外周寄りの位置から入射した光束の大部分は、導光部材10aの外周部付近から照射されることが予想される。
【0028】
このように、円環状導光部材10aの幅が広い場合には、リング状導光部材10aへの入射位置によっては、導光部材の外周部より抜け出る成分が存在する。また、リング状導光部材10aの内周部に近い成分が少なく、外周部に近い成分が多くなる傾向がある。このことから、円環状導光部材の幅が広い場合には、一見して射出部の面積が大きくこの種の発光部の形態として望ましい形態だと考えられるが、実際には閃光発光部4からの入射光束を有効に利用できない。また、必ずしも発光面の全ての領域で均一な発光ができるわけではない。
【0029】
実施例1は、この問題を解決するために、円環状導光部材10aの外周部から漏れる光束を最小限に抑えると共に、幅広い円環状導光部材10aの全面から均一な光束を射出させている。
【0030】
次に、図8(a)〜図8(c)を参照して、円環状導光部材10aの幅を変化させた場合の導光状態について説明する。なお、図7で説明したように、円環状導光部材10aへの光束の入射位置として内周部に近い位置から入射させた場合が最も外周部へ抜け出し易い。このため、図8に示す幅の異なった各導光部材についても、最も厳しい条件である内周部付近から光束を入射させた場合について比較を行っている。
【0031】
図8(a)は最も幅の広い円環状導光部材10aを示し、図8(c)は最も幅の狭い円環状導光部材10aを示し、図8(b)はその中間の幅の円環状導光部材10aを示している。図8(a)においては、図7(a)と同様に、幅の広い円環状導光部材10aの内周部付近から光束を入射させた場合に光束が外周部から抜け出し易い。図8(b)に示す中間の幅の円環状導光部材10aでは、外周部からの光線の抜け出しが極端に減っているものの、まだ一部外周部から光束が抜け出ている。図8(c)に示す幅が最も狭い円環状導光部材10aにおいては、外周部への光線の抜け出しはなく、光束を効率良く円環状の導光部に導くことができる。これは、図8(a)から図8(c)の比較からもわかるように、光束が入射した直後の光線分布が同等であっても、内外周の径の差によって入射光が外周面に立てた法線に対してなす角度が変化することに起因している。
【0032】
図9を参照して、導光部材の幅変化により外周部より光線が抜け易くなることを説明する。図9は、幅の異なる円環状導光部材10aを重ねて示した断面図であり、代表光線として入射面の点Dから左側へ水平に入射した光線の反射角度がどのように変化するかを示したものである。同図において、Aは幅の狭い円環状導光部材と幅の広い円環状導光部材の共通の内周面、Bは幅の狭い円環状導光部材の外周面、Cは幅の広い円環状導光部材の外周面である。また、Dは円環状導光部材への入射する光線の基点、Eは基点Dから射出した水平方向の光線と幅の狭い円環状導光部材の外周面Bとの交点、Fは交点E上に立てた法線であり、水平方向の光線DEと法線Fとのなす角度をαとする。Gは基点Dから射出した水平方向の光線と幅の広い円環状導光部材の外周面Cとの交点、Hは交点G上に立てた法線であり、水平方向の光線DGと法線Hとのなす角度をβとする。
【0033】
図示のように、基点から水平方向に入射した光束と幅の狭い円環状導光部材の点Eに立てた法線とのなす角度αは、同様に幅の広い円環状導光部材の点Gに立てた法線Hとなす角度βより大きくなる。このため、同条件で入射させた光束でも、導光部14bの幅が狭い場合には角度αが大きいすなわち全反射条件を満たしやすく、導光部14bの幅が広い場合には角度βが小さくなり全反射条件を満たしにくくなる傾向にあることがわかる。図9は、基点Dに対する水平方向の光線を代表光線としてとっているが、その他の角度成分に対しても同じ傾向にある。
【0034】
このように、円環状導光部材10aの幅と円環状導光部材10aの外周部からの光線の抜けは密接な関係があり、円環状導光部材10aの幅が狭いほど外周部の交点に立てた法線との角度が大きくなる。この角度は、円環状導光部材10aを光線が導光していく際、大きければ大きいほど全反射させることが容易にできるため、円環状導光部材10aを構成する上で都合がよい。円環状導光部材10aの最適な幅は、光学材料の屈折率や、導光部材に入射する前の角度分布によっても異なる。しかし、定性的に円環状導光部材10aの幅が狭い方が光束を全反射を用いて導光させる上で都合がよい。
【0035】
以上説明したように、円環状導光部材10aを外周部からの光線の漏れがないように効率良く導くためには、円環状導光部材10aの幅を極力狭めることが有効である。しかし、この一方で、近接撮影においては、狭く細い発光部より、発光面積の広く全体から均一な発光を行わせることが可能な発光部の方が、被写体全体に光が回り背後にできる影を柔らかくするのには有効であることも事実である。
【0036】
この2つの要求を同時に満足するために、本実施例は、円環状導光部材10aに同心円状に複数の溝14cを形成して幅の狭い複数の導光部14bを持った光学部材と同様な効果を持たせている。図1、図4に示すように、射出面4a側は円環状平面で構成され、その裏面には、図5に示すような断面形状の溝14cが形成されている。
【0037】
図1に示すように、閃光発光部4から射出した光束は、図中矢印で示すように、反射面17bで反射し、円環部11に反時計回りに導光される光束と、閃光発光部4から直接下方に導かれて円環部11に時計回りに導光される光束に分離される。これは、閃光発光部4の発光部が受光部15の横幅よりも長く、この射出面から導かれる光束を効率良く導くのに有効な形状である。このように、閃光発光部4から射出した光束は、受光部15を介して円環部11に導かれる。
【0038】
ここで、本実施例では、図5に示すようにスリット状の溝14cを同心円状に形成している。溝14cは、導光部14bに対して隣の導光部14bに光束が混じるのを防止する。この溝14cで構成される側面を全反射面として機能させるように構成している。このため、溝14cの深さが深ければ深いほど、即ち、各導光部14b同士を結ぶ肉厚が薄ければ薄いほど望ましい。
【0039】
また、溝14cの径方向の幅は狭いことが望ましい。これは、溝14cの幅を広げると導光部14bの領域を減少させることにつながるからである。図5に示すように、溝14cの幅を極力狭めること、即ち、溝14cの幅を樹脂材料の成形限界まで狭めることが有効である。
【0040】
本実施例では、導光部14bの裏面側を撮影レンズ3aの光軸方向に傾けた背面14dで構成している。これは、図3に示すように、円環状導光部材10aは、撮影レンズ鏡筒部3の付け根の部分、即ち、カメラの外装面に取り付けられているからである。円環状導光部材10aから撮影レンズ鏡筒部3の先端部までは距離があり、超至近距離の撮影を想定した場合、撮影レンズ3aの突出量によっては、光軸中心部に回り込む光束が十分に行き渡らないことが懸念される。本実施例は、この至近距離における、鏡筒部での光線ケラレを最小限に抑えるため、円環状導光部材10aから射出する光束を、レンズ光軸側に傾けるように光束の射出方向を規制している。図5における傾斜面14dがこの形状であり、導光部の裏面側の形状を光軸側に傾斜させることで、射出光束を意図的に内側で向かせている。このことによって、超至近距離の被写体に対しても鏡筒ケラレの少ない照明を行うことができる。
【0041】
図1及び図2に戻って、第2の位置は、非近接撮影に使用される位置であり、受光部15が閃光発光部4からずれて閃光発光部4を露出する位置である。この配置は、図1に示す位置から円環状導光部材10aをレンズ鏡筒部3の回りに右方向に回転させることによって実現される。この動作によって、閃光発光部4から射出した光束は円環状導光部材10aへ導かれることなく通常の発光を行う。
【0042】
以下、第2の位置を使用した非近接撮影について説明する。カメラ1aの動作モードがモード切替スイッチ42によって「ストロボオートモード」に設定される。そして、レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと、撮像素子46の感度とに応じて、閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して発光制御回路48の不図示の閃光放電管を発光させる。
【0043】
実施例1は、各導光部14bを肉薄部で結び、射出面14aが平面となるように構成しているが、必ずしもこの形状に限定されず、必要最小限の部分を肉薄部でつなぐ構成としてもよい。この構成により、導光部間の光線の混入がさらに少なくなり、均一に光束を導くことができる。
【実施例2】
【0044】
図10から図12は、実施例2のコンパクトデジタルカメラ(撮像素子)1bを示している。なお、本実施例の照明装置が搭載可能なカメラは図10及び図11に示すカメラ1bに限定されず、他のカメラ(一眼レフカメラやビデオカメラ等)であってもよい。図10及び図11はカメラ1bの正面図である。カメラ1bは、カメラ本体2、撮影レンズ鏡筒部3、閃光発光部4、レリーズボタン5(図示せず)、覗き窓6、覗き窓7、円環状導光部材10b、反射部材(図示せず)、中間部材50、ストラップ(接続部材)52、接続部54を有する。
【0045】
中間部材50は、閃光発光部4と円環状導光部材10bとを光学的に接続する。ストラップ52は、カメラ本体2の接続部54に繋がれており、先端部には中間部材50が取り付けられ、不用意に紛失するのを防止している。
【0046】
円環状導光部材10bは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10bは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面18a)に変換する。円環状導光部材10bは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で形成されている。本実施例の円環状導光部材10bは、切り欠きはなく回転しない。
【0047】
図12は円環状導光部材10bの断面図である。円環状導光部材10bは、射出面18a、複数(本実施例では5つ)の導光部18b、溝18c、背面18d、側面18e、壁面18fを有する。
【0048】
射出面18aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面である。複数の導光部18bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。溝18cは、導光部18bを分離する。導光部18bと溝18cは、円環状導光部材10bの中空部の中心に関して同心円状に形成される。図示しない反射板は、円環状導光部材10bの射出面18aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10bに戻す機能を有し、円環状導光部材10bの最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板の中空部の径は円環状導光部材10bの中空部の径と同一であり、反射板の中空部には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面18dは、撮影レンズ3aの光軸方向に傾斜した平面もしくは曲面で構成される。側面18eには、反射面として構成されていてもよいが、本実施例では透過面として構成されている。壁面18fは、溝18cを形成する傾斜面である。
【0049】
以下、近接撮影について説明する。近接撮影時には、図10に示すように、中間部材50が閃光発光部4と円環状導光部材10bとを接続する。この場合の制御系は、図6に示す制御系の回転機構30がないものに対応する。
【0050】
カメラ1bの動作モードがモード切替スイッチ42によって「近接撮影モード」に設定される。図10に示す位置に、中間部材50を取り付け、これにより、閃光発光部4から射出した光束を所定の光束に変換し、円環状導光部材10bから射出させることを可能にする。また、「近接撮影モード」の設定によって、撮影レンズ鏡筒部3は撮影レンズ3aを近接撮影に適したマクロモード位置に配置する。レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと撮像素子46の感度とに応じて閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して閃光発光部4の不図示の閃光放電管を発光させる。閃光発光部4から射出した光束は、中間部材50を介して円環状導光部材10bに導かれて所定の光束に変化された後、射出面18aから射出される。
【0051】
本実施例の円環状導光部材10bは、射出面18aが実施例1と同様に円環状の平面で構成されているものの、その裏面は壁面18fを有する導光部18bで構成されている点で異なる。かかる構造は、区分けされた各導光部18bの光束に指向性を持たせるために有効である。導光部18bを形成する壁面18fの傾きを規制することで円環状の導光部18bから射出させる際の径方向の照射角度範囲をある程度制御できる。即ち、各導光部18bの形状を射出面に近づくにつれて末広がりの形状とすることによって、定性的に径方向の照射角度範囲を狭め、必要とされる照射範囲に対して効率良く照射させることができる。これは、導光部の傾斜した壁面18fで全反射した成分が、反射後に撮影光軸に近い角度に変換されることを利用している。また、この形状は、円環状導光部材10bの加工を行う際にも有効である。各導光部18bの壁面18fに傾斜を持たせることによって光学樹脂材料の成形性を向上させることができる。
【0052】
本実施例でも、導光部18bは、撮影レンズ3aの光軸方向に傾けた背面18dを有する。これは、実施例1と同様に、射出光束をレンズ光軸中心側に回り込ませることで、至近距離における鏡筒部での光線ケラレによる影響を最小限に抑えるためである。本実施例では、溝18cを形成する側面の両側の面を傾斜させているが、傾斜させる側面は、片側のみでもよい。
【0053】
図11は、非近接撮影に使用される位置であり、中間部材50が閃光発光部4からずれて閃光発光部4を露出する位置である。この配置は、中間部材50をユーザーが手動で図10に示す位置から移動することによって実現される。この動作によって、閃光発光部4から射出した光束は円環状導光部材10bへ導かれることなく通常の発光を行う。
【0054】
以下、非近接撮影について説明する。カメラ1bの動作モードがモード切替スイッチ42によって「ストロボオートモード」に設定される。そして、レリーズボタン5がユーザーによって押下され、覗き窓6を介して測光装置44で測定された外光の明るさと、撮像素子46の感度とに応じて、閃光発光部4を発光させるか否かをCPU40が判断する。CPU40が閃光発光部4を発光させると判断すると、CPU40は発光信号を発光制御回路48に出力し、発光制御回路48からトリガーリード線49を介して発光制御回路48の不図示の閃光放電管を発光させる。
【実施例3】
【0055】
実施例3は、実施例1及び2の変形例であり、円環状導光部材10a、10bの溝の形状のみを変形させている。他の構成については同様であるため説明を省略する。
【0056】
円環状導光部材10cは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10cは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面19a)に変換する。円環状導光部材10cは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で形成されている。本実施例の円環状導光部材10cは、切り欠きはなく回転しない。
【0057】
図13は円環状導光部材10cの断面図である。円環状導光部材10cは、射出面19a、導光部19b、溝19c、背面19dを有する。射出面19aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面であるが、複数(本実施例では4つ)の溝19cによって5つに分割されている。複数の導光部19bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。複数の導光部19bは、同様に、溝19cによって5つに分割されている。溝19cは、導光部19bを分離する。導光部19bと溝19cは、円環状導光部材10cの中空部の中心に関して同心円状に形成され、カメラ本体の表面に露出する。図示しない反射板は、円環状導光部材10cの射出面19aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10cに戻す機能を有し、円環状導光部材10cの最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板の中空部の径は円環状導光部材10cの中空部の径と同一であり、反射板の中空部には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面19dは射出面19aと平行な平面であり、分割されていない。図13に示すように、円環状導光部材10cの射出面19a側に溝19cを設けても実施例1及び2と同様に、複数の細い導光部に分離することができ、ほぼ同等の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0058】
実施例4は、実施例1及び2の変形例であり、円環状導光部材10a、10bの溝の形状のみを変形させている。他の構成については同様であるため説明を省略する。
【0059】
円環状導光部材10dは、カメラ本体2の前面2aの撮影レンズ鏡筒部3の周囲に設けられ、近接撮影(マクロ撮影)に使用される。円環状導光部材10dは、閃光発光部4からの光の射出領域を円環状の領域(後述する射出面20a)に変換する。円環状導光部材10dは、透明体で形成された光学部材であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透過率の高い光学用有機高分子材料で形成されている。本実施例の円環状導光部材10dは、切り欠きはなく回転しない。
【0060】
図14は円環状導光部材10dの断面図である。円環状導光部材10dは、射出面20a、導光部20b、溝20c1及び20c2、背面20dを有する。射出面20aは、閃光発光部4から導光された光が射出される平面であるが、複数(本実施例では4つ)の溝20c1によって5つに分割されている。複数の導光部20bは、同心円状に撮影レンズ鏡筒部3の周りに配置され、各々が閃光発光部4からの光を同心円に沿って内面全反射によって案内し、円環形状を有する。複数の導光部20bは、同様に、溝20c2によって5つに分割されている。溝20c1及び20c2は、導光部20bを分離する。導光部20bと溝20c1及び20c2は、円環状導光部材10dの中空部の中心に関して同心円状に形成され、カメラ本体の表面に露出する。図示しない反射板は、円環状導光部材10dの射出面20aと反対側に射出した光束を反射させ、再度円環状導光部材10dに戻す機能を有し、円環状導光部材10dの最外径と同一又はそれ以上の最外径を有する。反射板の中空部の径は円環状導光部材10dの中空部の径と同一であり、反射板の中空部には撮影レンズ鏡筒部3が挿入される。背面20dは射出面20aと平行な平面であり、溝20c2によって5つに分割されている。図14に示すように、円環状導光部材10dの射出面20a側と背面20d側の両方に溝20c1及び20c2を設けても実施例1及び2と同様に、複数の細い導光部に分離することができ、ほぼ同等の効果を得ることができる。
【0061】
特に、本実施例のように、射出面20aと背面20dの両側に溝20c1及び20c2を形成した場合には、それぞれの溝の深さを浅く設定することが可能なため溝の幅を狭くできる可能性が高い。このため、導光部20bとして機能しない溝20c1及び20c2の体積を減らすことが可能になるため、より効率の良い照明装置を構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1のカメラ(撮像装置)の正面図である。
【図2】実施例1のカメラの正面図である。
【図3】図1に示すカメラの斜視図である。
【図4】図1に示す円環状導光部材の部分斜視図である。
【図5】図4に示す円環状導光部材の部分断面図である。
【図6】図1に示すカメラの制御系のブロック図である。
【図7】円環状導光部材の光束入射位置と光束漏れとの関係を示す図である。
【図8】図1に示す円環状導光部材の幅の変化と光線の振舞意図の関係を説明する図である。
【図9】図1に示す円環状導光部材の幅変化により外周部から光線が抜け易くなることを説明するための図である。
【図10】実施例2のカメラ(撮像装置)の正面図である。
【図11】実施例2のカメラの正面図である。
【図12】図10に示す円環状導光部材の部分断面図である。
【図13】実施例3の円環状導光部材の部分断面図である。
【図14】実施例4の円環状導光部材の部分断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1a、1b カメラ
2 カメラ本体
3 撮影レンズ鏡筒部
3a 撮影レンズ
4 閃光発光部
10a、10b、10c、10d 円環状導光部材
14b、18b、19b、20b 導光部
14c、18c、19c、20c1、20c2 溝
30 回転機構
40 中央演算処理装置(CPU)
50 中間部材
52 ストラップ(接続部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閃光発光部と、当該閃光発光部からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有する照明装置と、
撮影レンズを収納する撮影レンズ鏡筒部と、
を有する撮像装置であって、
前記円環状導光部材は、
同心円状に前記撮影レンズ鏡筒部の周りに配置され、各々が前記閃光発光部からの光を前記同心円に沿って案内し、円環形状を有する複数の導光部と、
前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する溝と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記同心円の径方向における前記溝の幅は、前記同心円の径方向における各導光部の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記溝は、前記円環状導光部材が前記閃光発光部からの光を射出する射出面と、前記射出面と反対側にある背面のうちの少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記円環状導光部材を前記同心円の径を含む断面で切断した場合に、前記溝は外側に広がる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記円環状導光部材は、
前記閃光発光部からの光を射出する平面である射出面と、
前記射出面と反対側にある背面と、
を有し、
前記背面は前記射出面と平行な平面、又は、前記撮影レンズの光軸中心側に傾斜する傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記円環状導光部材は、
前記閃光発光部からの光を射出する円環部と、
前記円環部に接続され、前記閃光発光部からの光を受光して前記円環部に導光する受光部と、
を有し、
前記撮像装置は、
前記受光部が前記閃光発光部から前記光を受光する第1の位置と、前記受光部が前記閃光発光部から離れた第2の位置との間で前記円環状導光部材を回転する回転機構を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記照明装置は、前記閃光発光部からの光を受光して前記円環状導光部材に導光する中間部材を更に有し、
前記撮像装置は、
前記中間部材を、前記撮影レンズ鏡筒部が取り付けられたカメラ本体に接続する接続部材を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
光源と、当該光源からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有する照明装置であって、
前記円環状導光部材は、
同心円状に配置され、各々が前記光源からの光を前記同心円に沿って案内する複数の導光部と、
前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する複数の溝と、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項1】
閃光発光部と、当該閃光発光部からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有する照明装置と、
撮影レンズを収納する撮影レンズ鏡筒部と、
を有する撮像装置であって、
前記円環状導光部材は、
同心円状に前記撮影レンズ鏡筒部の周りに配置され、各々が前記閃光発光部からの光を前記同心円に沿って案内し、円環形状を有する複数の導光部と、
前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する溝と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記同心円の径方向における前記溝の幅は、前記同心円の径方向における各導光部の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記溝は、前記円環状導光部材が前記閃光発光部からの光を射出する射出面と、前記射出面と反対側にある背面のうちの少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記円環状導光部材を前記同心円の径を含む断面で切断した場合に、前記溝は外側に広がる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記円環状導光部材は、
前記閃光発光部からの光を射出する平面である射出面と、
前記射出面と反対側にある背面と、
を有し、
前記背面は前記射出面と平行な平面、又は、前記撮影レンズの光軸中心側に傾斜する傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記円環状導光部材は、
前記閃光発光部からの光を射出する円環部と、
前記円環部に接続され、前記閃光発光部からの光を受光して前記円環部に導光する受光部と、
を有し、
前記撮像装置は、
前記受光部が前記閃光発光部から前記光を受光する第1の位置と、前記受光部が前記閃光発光部から離れた第2の位置との間で前記円環状導光部材を回転する回転機構を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記照明装置は、前記閃光発光部からの光を受光して前記円環状導光部材に導光する中間部材を更に有し、
前記撮像装置は、
前記中間部材を、前記撮影レンズ鏡筒部が取り付けられたカメラ本体に接続する接続部材を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
光源と、当該光源からの光の射出領域を円環状の領域に変換する円環状導光部材と、を有する照明装置であって、
前記円環状導光部材は、
同心円状に配置され、各々が前記光源からの光を前記同心円に沿って案内する複数の導光部と、
前記複数の導光部と同心円状に配置され、前記複数の導光部を分離する複数の溝と、を有することを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−237298(P2009−237298A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83602(P2008−83602)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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