説明

照明装置用の注光器及び照明装置

【課題】曲げ可能なシート状の部材の引き出し位置に関わらず、均一に発光させることができる照明装置用の注光器及び照明装置を提供する。
【解決手段】導光部24が、LED光源23から出射された光を入射する入射面24aと、カーテン13を曲げることによって形成された曲面に相対変位可能に接触する注光面24bとを有し、カーテン13を巻くことによって、注光面24bに接触した位置から所望の長さの表面を発光させるので、LED光源13から遠い面でもほぼ均一に光らせることが可能である。また、必要な部分からのみ発光できるため、省エネルギーの効果もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にインテリア用として好適な照明装置用の注光器及び照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや環境負荷に対する注目が増しており、蛍光灯よりも寿命が長いとされ、更に消費電力が少ないことから、光源にLED(Light Emitting Diode)を用いた照明装置が注目され始めている。しかし、それまで照明に一般的に用いられていた蛍光灯に比べ、LEDは配光に指向性が強いため、LEDを光拡散部材で覆うなどして照明装置として用いても、特に光量を稼ぐために複数配置した時など、LEDの設置位置が発光点として明瞭に視認されてしまいがちである。よって、美観を損なうという観点からインテリア照明としての用途が制限されるという実情がある。それでも、省エネルギー性能の向上や照明装置の小型化は急務とされ、LEDの室内照明やインテリア照明への応用に対する要求が日々強まってきている。
【0003】
ここで、インテリア照明の中でも、室外から室内を見えないようにしつつ、室内を照らす照明として、ロールカーテンを照明として用いる技術が公開されている(特許文献1参照)。特許文献1の照明装置では、ウェイトバー26の内部にLEDを配置し、LEDの上方に設けられた光開口部から出射した光でスクリーンの表面を照射するように構成されている。このような構造を採ることで室内を照明してもLED自体は直接視認されず、且つ室内空間に溶け込むような照明を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-281138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような照明装置の場合、光源に近い場所においては被照射面の照度が高くなる一方、光源よりも遠い場所においては被照射面の照度が小さくなる。従って、場所による光り方に差が生じてしまう為、美観を損ねるから、特にデザインを重視するインテリア用の照明装置としては不適切であるという問題があった。
【0006】
本発明は、曲げ可能なシート状の部材の引き出し位置に関わらず、均一に発光させることができる照明装置用の注光器及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の照明装置用の注光器は、曲げ可能なシート状の部材の一方のシート面に光源からの光を注光する注光器であって、導光部を有し、
前記導光部は、前記光源から出射された光を入射する入射面と、前記シート状の部材を曲げることによって形成された面に相対変位可能に接触する注光面とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記導光部が、前記光源から出射された光を入射する入射面と、前記シート状の部材を曲げることによって形成された面に相対変位可能に接触する注光面とを有し、前記シート状の部材と前記導光部とを相対変位させることによって、前記シート状の部材の内部に注光された光で、前記シート状の部材の前記注光面に接触した位置から所望の長さの表面を発光させるので、前記光源から遠い面でもほぼ均一に光らせることが可能である。ここで、前記シート状の部材と前記導光部とを相対変位させるとは、前記シート状の部材と前記導光部との接触位置をシート面に沿った方向に変更させることを指し、例えば、シート状の部材を巻き上げたり、引き出したりすることによって相対変位させることができる。
【0009】
請求項2に記載の照明装置用の注光器は、請求項1に記載の発明において、前記導光部の注光面と、前記シート状の部材とは、光伝達可能に接触することを特徴とする。
【0010】
前記導光部の注光面と、前記シート状の部材とを、例えば低屈折率である空気層などを介さずに光学的に接触させることで、接触面で全反射が生じることを抑制し、光の漏れを防ぎ、効率良く導光させることが出来る。
【0011】
請求項3に記載の照明装置用の注光器は、請求項1又は2に記載の発明において、前記導光部の注光面と、前記シート状の部材とを、互いに接触する方向に相対的に押圧する押圧機構を有することを特徴とする。
【0012】
前記押圧機構を用いることで、前記導光部の注光面と、前記シート状の部材とを光伝達可能に接触させやすくなり、両者間の導光光量が増えることで光の利用効率が向上する。
【0013】
請求項4に記載の照明装置用の注光器は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記注光器の導光部の屈折率n'と、前記シート状の部材の屈折率nとが、以下の式を満たすことを特徴とする。
0≦n'-n≦0.5 (1)
【0014】
(1)式の範囲に収まるように、前記注光器の導光部の屈折率n'と、前記シート状の部材の屈折率nとの関係を規定することで、導光効率を向上させることが可能である。
【0015】
請求項5に記載の照明装置用の注光器は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記シート状の部材の厚みDと、前記注光器の導光部の厚みdとが、以下の式を満たすことを特徴とする。
-0.9≦(d-D)/D≦0.05 (2)
【0016】
(2)式の範囲になるよう、前記シート状の部材の厚みDと、前記注光器の導光部の厚みdとの関係を規定することで、60%以上の導光効率を保つことが出来る。
【0017】
請求項6に記載の照明装置用の注光器は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記光源から出射された光を反射して前記導光部の入射面に向かわせる反射部材が設けられていることを特徴とする。
【0018】
前記反射部材を設けることで、前記光源の発光面と前記注光器の導光部の入射面との隙間から漏れる光を、前記シート状の部材に向かって反射して注入することができ、導光効率を上げることが出来る。
【0019】
請求項7に記載の照明装置用の注光器は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記注光器の導光部は樹脂またはガラスからなることを特徴とする。
【0020】
前記注光器の導光部に、可視光を透過する透明な部材を選択することで、効率良く光を前記シート状の部材に注入することが可能である。
【0021】
請求項8に記載の照明装置は、光源と、請求項1から7のいずれかに記載の注光器と、シート状の部材とからなることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の照明装置は、請求項8に記載の発明において、前記光源は面発光光源であることを特徴とする。
【0023】
面発光光源を用いることで、前記注光器の導光部に効率良く光を入射させることが出来る。面発光光源としては、省エネルギーの観点からLEDや有機ELが好ましい。
【0024】
請求項10に記載の照明装置は、請求項8又は9に記載の発明において、前記照明装置に、前記シート状の部材の一部の曲率半径を維持する部材を備え、前記一部に前記注光器が接触していることを特徴とする。
【0025】
前記シート状の部材の曲面の曲率半径が固定されることで、シート状の部材と注光面との接触位置において双方の曲率半径を一致させることができるので、前記注光器の導光部の注光面と、前記シート状の部材の接触面積を一定に保つことが出来、導光効率の変動と低下を抑えることが出来る。なお、注光面やシート状部材の曲率半径は無限大でも良い。
【0026】
請求項11に記載の照明装置は、請求項8〜10のいずれかに記載の発明において、前記シート状の部材の素材は、シリコン、ウレタン、アクリル、又はポリカーボネートであることを特徴とする。
【0027】
前記シート状の部材に、これらの材料を用いることで、前記シート状の部材を前記注光器の導光部の注光面に柔軟に沿わせることが可能となり、前記注光器の導光部の注光面と前記前記シート状の部材との接触面積を一定に保ち易くなる。
【0028】
請求項12に記載の照明装置は、請求項8〜11のいずれかに記載の発明において、前記シート状の部材は、表面に形成された光取り出し構造を有し、前記光取り出し構造は、前記シート状の部材の内部を導光した光を拡散させるものであることを特徴とする。
【0029】
このような光取り出し構造を設けることで、前記シート状の部材の外部への光取り出し効率を向上させることが出来る。尚、光取り出し構造は、前記シート状の部材の両面に設けても良いし、片面に設けても良く、又、全面に設けても良いし、一部に設けても良い。
【0030】
請求項13に記載の照明装置は、請求項12に記載の発明において、前記シート状の部材の光取り出し構造は、前記注光器の導光部が接触しない面に設けられていることを特徴とする。
【0031】
このような構成をとることで、前記光取り出し構造が前記注光器の導光部と接触することを防ぐことが出来、これにより双方の傷や汚れを防ぎ、長期間にわたって導光効率と光取り出し効率を維持することが出来る。
【0032】
請求項14に記載の照明装置は、請求項8〜13のいずれかに記載の発明において、前記注光器の導光部と前記シート状の部材との間に液体を介在させることを特徴とする。
【0033】
前記注光器の導光部と前記シート状の部材との間に液体を介在させることで、前記注光器の導光部の注光面と前記シート状の部材との間に隙間が生じた場合にも、前記液体を介して光伝達可能に接触させることが出来、導光効率を一定に保つことが可能となる。また、液体を介することで、前記シート状の部材と前記注光器に傷がつきにくいという効果もある。
【0034】
請求項15に記載の照明装置は、請求項8〜14のいずれかに記載の発明において、前記シート状の部材はロールカーテンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、曲げ可能なシート状の部材の引き出し位置に関わらず、均一に発光させることができる照明装置用の注光器及び照明装置を提供することができる。更に、シート状の部材に対し相対変位可能な注光面から、光源からの光を入射する構成をとることで、シート状の部材を自由に相対移動させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態における照明装置としてのロールカーテン装置の斜視図である。
【図2】図1の構成の矢印IIで示す部位を拡大した図である。
【図3】図1のIII-III線を含む面で切断し矢印方向に見た図である。
【図4】本実施の形態の変形例を示す概略図である。
【図5】本発明者のシミュレーション結果(比較例)を示す図である。
【図6】本発明者のシミュレーション結果(実施例)を示す図である。
【図7】導光部とカーテンの屈折率の差と、効率との関係を示す図である。
【図8】導光部とカーテンの厚みの差と、効率との関係を示す図である。
【図9】導光部の注光面形状と、導光効率との関係を示すグラフである。
【図10】導光部の注光面の曲率半径と、導光効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態における照明装置としてのロールカーテン装置の斜視図である。図2は、図1の構成の矢印IIで示す部位を拡大した図である。図3は、図1のIII-III線を含む面で切断し矢印方向に見た図である。
【0038】
図1において、ロールカーテン装置10は、壁面等に固定される支持部11と、支持部11に支持される軸部12と、透明樹脂(シリコン、ウレタン、アクリル、又はポリカーボネート)製のカーテン13と、注光器20とを有する。支持部11は、細長い板状の本体11aと、本体11aの両端から下方に短く突出したアーム部11b、11bとを有する。アーム部11b、11bは、軸部12を回転自在に支持している。軸部12は、一方のアーム部11bに設けたモータ14により回転駆動されるようになっている。モータ14を設けたアーム部11bとは反対側のアーム部11bには、軸部12の回転角度を検出するロータリーエンコーダ(不図示)が設けられている。軸部12の周囲から突出した突出部12a(図3)にカーテン13の上端が固定され、軸部12の周囲にカーテン13を巻き付け可能となっている。
【0039】
図3において、注光器20は、軸部12と平行に延在し、支持部11の本体11aに対して回転可能に保持された回転軸21と、回転軸に固定された筐体22と、筐体22内に配置されたLED光源23と、透明板状の導光部24とからなる。筐体22はスリット部22aを有し、このスリット部22aの底部にLED光源23を取り付けており、かかるスリット部22a内に導光板24の上端即ち入射面24aを導き、LED光源23の発光面23aに対向させている。LED光源23の発光面23aは真下を向くように配置されている。LED光源23の発光面23aと、入射面24aとの間を両側から挟むようにして一対の反射部材25が配置されている。反射部材25は、筐体22に対して導光部24を保持・補強する機能も有する。尚、反射部材25の下方には、筐体22に対して導光部24を補助的に保持する保持部26が設けられている。
【0040】
導光部24の下端は、巻かれたカーテン13の表面に対向して、斜めにカットされた形状を有し、このカットされた面即ち注光面24bは曲率半径Rの円筒面形状となっている。よって、カーテン13の表面が曲率半径Rとなるように曲げる(巻く)ことで、注光面24bはカーテン13の表面にスキマなく密着することとなる。注光器20は、筐体22と共に回転軸21の軸心回りに回動可能となっていて、押圧機構として回転軸21の周囲に配置されたスプリング27によって、支持部11に対して導光部24がカーテン13に押し付けられる方向に付勢されている。そして、導光部24がカーテン13に押し付けられた状態では、垂れ下っているカーテン13の略真上にLED光源23が位置するように、注光器20はカーテン13に対して位置づけられている。尚、押圧機構としては、これ以外にもモータ、圧電素子等を用いて、導光部24をカーテン13に向かって駆動することができる。また、保持部26としては弾性部材や、カーテン13を挟んで設けた一対の磁石等を用いても良い。
【0041】
カーテン13は本願発明に係るシート状の部材であって、一対のシート面を有し、導光部24が接するシート面と反対側のシート面に、図3に示すように、光取り出し構造13aを設けている。光取り出し構造13aとしては、例えばシリカ、酸化チタン等の拡散剤を混入したインクをカーテン13にドット状に塗布(印刷)することで得られる。尚、ドット径を0.3mm以下にすることで、肉眼で視認されないようにでき、ユーザー等に違和感を覚えさせないようにできるが、よりドット径を大きくして、図形や文字などのパターンを描くこともできる。
【0042】
尚、図2に示すように、導光部24の屈折率をn'、厚みをdとし、カーテン13の屈折率をn、厚みをDとし、幅をWとする。このとき、以下の式を満たすと好ましい。
0≦n'-n≦0.5 (1)
-0.9≦(d-D)/D≦0.05 (2)
【0043】
本実施の形態において、不図示のスイッチをオン操作することで、モータ14に外部電源から電力を供給して軸部12を回転させることで、カーテン13の引き出し位置を任意に変更できる。このとき、カーテン13の巻厚が変化しても、スプリング27に付勢力によって導光部24がカーテン13に向かって付勢されているので、導光部24の注光面24bがカーテン13の表面から離れることはない。
【0044】
一方、別の不図示のスイッチをオン操作することで、外部電源からLED光源23に電力を供給し、これを発光させると、図3に矢印で示すように、LED光源23から出射された光Lは、直接又は反射部材25で反射された後、導光部24の入射面24aから内部に進入し、導光部24の空気に接する界面で全反射しながら進行する。その後、注光面24bとカーテン13の表面が接しているので、ここからカーテン13の内部に光が入射し、更にカーテン13の空気に接する界面で全反射しながら進行するが、光取り出し構造13aの拡散部に入射した時点で拡散が生じ、一部の光の出射角が変化して、その後深い角度で反対側の界面に入射することにより、この界面を透過して外部を照明することができる。これにより引き出されたカーテン13の引き出し長さδの範囲にわたって、均一な照明を行うことができる。このように注光器20とカーテン13の下端との間、即ち導光させる必要のある部分だけを導光させることができ、効率のよい照明を行うことができる。尚、カーテン13の下端まで到達した光を反射する反射部を、カーテン13の下端に設けると好ましい。
【0045】
これに対し、LED光源23への電力供給を遮断すると、LED光源23の発光が停止するので、カーテン13の光取り出し構造13aの透明度が上がり、外光を柔らかく透過するため、適度な遮光を行うことができる。尚、光取り出し構造13aは両側に設けても良い。
【0046】
又、不図示のロータリーエンコーダにて、軸部12の回転角度を検出し、カーテン13の引き出し長さδを求めることで、それに応じた光量でLED光源23を発光するように制御できる。カーテンの引き出し長さδを検出する方法として、巻き取り装置としてのモータ14の回転位置を検出し、その検出値に応じた電流値をLED光源に適用することで、引き出し長さδに最適な光量を出射させ、更に効率の良い構成にすることが可能である。カーテンの長さ検出には、ポテンションメータ、ロータリーエンコーダ等の種々の検出機構を用いることができる。
【0047】
図4は、本実施の形態の変形例を示す概略図である。図4において、軸部12から引き出されたカーテン13を、それぞれ回転自在なロール29a,29cの対で挟み、ロール29a,29cの間から下方に垂下している。また、ロール29a,29cの上方で、ロール29bがカーテン13を下方から支持している。これによりロール29a,29cとロール29bとの間では、カーテン13の引き出し量に関わらず、カーテン13の表面の曲率半径Rを略無限大に維持している。このロール29a,29cとロール29bとの間で、注光器24の注光面24bをカーテン13に接触させることにより、カーテン13の引き出し量に関わらず、カーテン13と注光面24bとの接触状態を良好に維持することができる。
【0048】
又、支持部11を、全体を覆う筐体状にしてスリット11cからカーテン13を引き出すようにするが、スリット11cの近傍と、カーテン13の下端との間に蛇腹型のカバー28を設けて、引き出されたカーテン13を覆うようにし、これによりカーテン13を保護するようにしても良い。カーテン13が支持部11内に引き込まれたときは、カバー28は折り畳まれる。尚、カーテン13の下端に形成したストッパ13cが、スリット11cの周囲に当接し、それ以上カーテン13が引き込まれることを防止する。それ以外にも、カーテン13を保護するための保護シート、保護布を用いてもよい。又、注光器の導光部24のうち、光をカーテン13に注入する注光面24bが押圧機構によってカーテン13に接触させることが出来るように(巻かれすぎないように)、所定の位置でカーテン13の移動が制限されるストッパを持つようにしても良い。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様である。
【0049】
更に、別な変形例として、不図示のノズルから、注光面24bに接するカーテン13の表面との間に、液体としての水などを適量滴下するようにしても良い。これにより、注光面24bとカーテン13の表面とが空気を介さず接することで、境界面での全反射を抑えて導光効率を高めることができる。
【0050】
図5,6は、本発明者のシミュレーション結果を示す図であり、左側の図はカーテンの下端(地点A)側から発光光を入射させた場合の、カーテンの照度を色の濃淡で示している。また、図5,6の右側の図は、各地点における照度のヒストグラムであり、縦軸が照度、横軸が度数である。本発明者のシミュレーション結果によれば、カーテンの端部から、直接LED光源の発光光を入射させた場合、図5に示すように、端部近傍のみは明るく照明されるが、端部から少し離れると照度が顕著に低下することが分かった。一方、本実施の形態のように、注光器を設けてLED光源の発光光をカーテンに注光すると(地点Aを注光位置とする)、図6に示すように、比較的遠方も光が到達し、全体的に一様な照明が行われることが分かった。
【0051】
更に、本発明者の行った検討結果を示す。図7は、導光部とカーテンの屈折率の差と、効率との関係を示す図である。図7に示すように、導光部24の屈折率n'と、カーテン13の屈折率nとが、(1)式を満たす範囲で特に効率が高くなることが分かる。注光器の導光部にはポリカーボネート(n'=1.59)、アクリル(n'=1.49)を用いることで、安価に効率を向上することが出来る。また、他の屈折率の組み合わせについても検討した結果、同様の傾向が確認された。
0≦n'-n≦0.5 (1)
より望ましくは以下の式を満たすことである。
0.1≦n'-n≦0.2 (1’)
【0052】
図8(a)は、導光部とカーテンの厚みの差と、効率との関係を示す図である。図8(b)の実線で示すように、LED光源から出射した後、導光部の注光面を介してカーテン内に導光された光と、点線で示すように、カーテン内に導光されなかった光とを求め、(導光された光の量)/(導光された光の量+導光されなかった光の量)×100=(カーテン内を導光する光の量)/(LED光源の総発光量)×100として導光効率を計算したところ、図8(a)の結果を得た。
【0053】
図8(a)を考察するに、(d−D)/Dが小さいほど、導光効率が高くなることがわかった。しかるに、導光効率を50%以上確保しようとすると、(d-D)/Dは0.05以下とすることが望ましい。一方、下限については、(d-D)/Dの負の値が大きくなる(−1に近づく)ということは、dが小さくなる、あるいはDが大きくなるということであるが、LED光源の発光面の幅が0.2mm程度で、それよりもdを小さくすると、LED光源から出射する光のうち導光部に入射しない光が増えて、効率が悪くなる。又、Dについては、カーテンを巻き上げられるように可撓性を持たせるためには厚さ2mmが限度である。これらのことから、(d-D)/Dの下限については、-0.9以上が好ましいといえる。
【0054】
図9(a)は、導光部の注光面形状と、導光効率との関係を示すグラフであり、横軸は、図9(b)に示すように、導光部の理想先端形状に対してカットした長さを示す。ここで、注光器の導光部は、ロール部に接触する部分の先端が極限まで薄いことが望ましいが、成形性の向上と安全性の観点から、注光器の導光部先端を短くすることも可能である。具体的には、図9(a)に示すように注光器の導光部先端を1mmカット(即ちカット量S=1mm)することで、効率は最大値の約2%程度の低下に止まる。
【0055】
図10(a)は、カーテンの屈折率nを1.405に固定し、導光部の屈折率n’を種々に変えた際の、導光部の注光面の曲率半径と、導光効率との関係を示すグラフである。導光部とカーテンの屈折率との差が変化すると導光部の曲率半径に応じて、導光効率が変わりうる。但し、図10(b)に点線で示すように、光源と導光部とをまたぐようにして反射部材を設けると、導光効率は約6%向上し、更に光源と導光部との面間隔を0.3mmから0.1mmに近づけると、導光効率は約2%向上することが分かった。
【0056】
(実施例1)
実施例1にかかる照明装置の仕様を、表1に示す。実施例1の導光効率は61.131%である。
【0057】
【表1】


(実施例2)
実施例2にかかる照明装置の仕様を、表2に示す。実施例2の導光効率は65.354%である。
【0058】
【表2】


(実施例3)
実施例3にかかる照明装置の仕様を、表3に示す。実施例3の導光効率は66.78%である。
【0059】
【表3】


(実施例4)
実施例4にかかる照明装置の仕様を、表4に示す。実施例4は、反射部材付きの注光器であって、その導光効率は67.549%である。
【0060】
【表4】

【0061】
光源からカーテンに向かう方向の導光部の長さは、どのような長さでも本発明の効果が得られるが、より短い方が保持や押圧機構による調整が行いやすい。注光器の導光部のうち、光をカーテンに注入する注光面は必ずしも曲面でなくてもよく、例えば平面であってもよい。その場合、効率は低下するが、注光器の成形性は向上する。
【0062】
本発明は照明装置、ディスプレイ装置、表示装置に応用することが可能である。カーテン表面の光取り出し構造としては、光拡散ドット、屈折作用を持つ構造、反射作用をもつ構造があり、その何れを用いた場合でも本発明の効果はある。また、カーテンの内部に同様の構造を形成した場合にも、本発明は効果を発揮することは明白である。
【符号の説明】
【0063】
10 ロールカーテン装置
11 支持部
11a 本体
11b アーム部
11c スリット
12 軸部
12a 突出部
13 カーテン
13a 光取り出し構造
13c ストッパ
14 モータ
20 注光器
21 回転軸
22 筐体
22a スリット部
23 LED光源
24 導光部
24a 入射面
24b 注光面
25 反射部材
26 保持部
27 スプリング
29a、29b、29c ロール
28 カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ可能なシート状の部材の一方のシート面に光源からの光を注光する注光器であって、導光部を有し、
前記導光部は、前記光源から出射された光を入射する入射面と、前記シート状の部材を曲げることによって形成された面に相対変位可能に接触する注光面とを有することを特徴とする照明装置用の注光器。
【請求項2】
前記導光部の注光面と、前記シート状の部材とは、光伝達可能に接触することを特徴とする請求項1に記載の照明装置用の注光器。
【請求項3】
前記導光部の注光面と、前記シート状の部材とを、互いに接触する方向に相対的に押圧する押圧機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置用の注光器。
【請求項4】
前記注光器の導光部の屈折率n'と、前記シート状の部材の屈折率nとが、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の照明装置用の注光器。
0≦n'-n≦0.5 (1)
【請求項5】
前記シート状の部材の厚みDと、前記注光器の導光部の厚みdとが、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の照明装置用の注光器。
-0.9≦(d-D)/D≦0.05 (2)
【請求項6】
前記光源から出射された光を反射して前記導光部の入射面に向かわせる反射部材が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の照明装置用の注光器。
【請求項7】
前記注光器の導光部は樹脂またはガラスからなることを特徴とする請求項1から6に記載の照明装置用の注光器。
【請求項8】
光源と、請求項1から7のいずれかに記載の注光器と、シート状の部材とからなることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
前記光源は面発光光源であることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記照明装置に、前記シート状の部材の一部の曲率半径を維持する部材を備え、前記一部に前記注光器が接触していることを特徴とする前記請求項8又は9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記シート状の部材の素材は、シリコン、ウレタン、アクリル、又はポリカーボネートであることを特徴とする前記請求項8から10のいずれかに記載の照明装置。
【請求項12】
前記シート状の部材は、表面に形成された光取り出し構造を有し、前記光取り出し構造は、前記シート状の部材の内部を導光した光を拡散させるものであることを特徴とする前記請求項8から11のいずれかに記載の照明装置。
【請求項13】
前記シート状の部材の光取り出し構造は、前記注光器の導光部が接触しない面に設けられていることを特徴とする前記請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
前記注光器の導光部と前記シート状の部材との間に液体を介在させることを特徴とする前記請求項8から13のいずれかに記載の照明装置。
【請求項15】
前記シート状の部材はロールカーテンであることを特徴とする前記請求項8から14のいずれかに記載の注光器を含む照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−252850(P2012−252850A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123929(P2011−123929)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】