照明装置
【課題】炭素繊維を電子放出源として使用した照明装置を提供する。
【解決手段】炭素繊維100が成長した触媒を配置した成長領域、及び触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面200を有するカソード電極10と、電子放出面200に対向して配置された透明のアノード電極30と、アノード電極30の電子放出面200に対向する主面310に配置され、炭素繊維100から放出された電子により励起発光する蛍光体膜40とを備える。
【解決手段】炭素繊維100が成長した触媒を配置した成長領域、及び触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面200を有するカソード電極10と、電子放出面200に対向して配置された透明のアノード電極30と、アノード電極30の電子放出面200に対向する主面310に配置され、炭素繊維100から放出された電子により励起発光する蛍光体膜40とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源を用いた照明装置に係り、特に炭素繊維を電子放出源として用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイトナノファイバ(GNF)等のナノスケールの炭素繊維(カーボンファイバ)が、フィールドエミッションアレイ(FEA)や、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の炭素繊維装置に使用されている。これらの炭素繊維装置は、炭素繊維を電子放出源として使用している。電子放出源から放出された電子に衝突されて蛍光体膜が励起され、発光する。
【0003】
一方、照明装置として、従来から、蛍光灯、発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネセンス(OEL)等が使用されている。例えば、蛍光灯に代えてLEDを光源とする照明の実用化が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−192833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蛍光灯は水銀を使用しているため、環境に影響を与える問題がある。LEDは点発光素子であるため、照明装置として使用する場合には、複数のLEDを配列して発光面が均一に発光するための構造上の工夫等が必要である。OELを照明として使用するためには、素子の大型化や発熱量の低減、コストダウン等が課題である。
【0005】
一方、炭素繊維装置は水銀を使用しない。また、炭素繊維を電子放出源として使用すれば、小型の面発光素子を容易に且つ安価に製造できる。本発明は、炭素繊維を電子放出源として使用した照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(イ)炭素繊維が成長した触媒を配置した成長領域、及び触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面を有するカソード電極と、(ロ)電子放出面に対向して配置された透明のアノード電極と、(ハ)アノード電極の電子放出面に対向する主面上に配置され、炭素繊維から放出された電子の衝突により励起発光する蛍光体膜とを備える照明装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭素繊維を電子放出源として使用した照明装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第4の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
又、以下に示す第1乃至第4の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1は、図1に示すように、炭素繊維100が成長した触媒を配置した成長領域、及び触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面200を有するカソード電極10と、電子放出面200に対向して配置された透明のアノード電極30と、アノード電極30の電子放出面200に対向する主面310上に配置され、炭素繊維100から放出された電子の衝突により励起発光する蛍光体膜40とを備える。図1において、電子放出面200の炭素繊維100が配置されている領域が触媒を配置した成長領域であり、炭素繊維100が配置されていない領域が非成長領域である。
【0011】
照明装置1では、炭素繊維100は電子放出源である。炭素繊維100は、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイトナノファイバ(GNF)、カーボンナノファイバ(CNF)、カーボンナノコイル等を含むナノスケールのカーボンファイバである。
【0012】
電子放出面200の例を図2に示す。図2は、電子放出面200をアノード電極30側からみた上面図である。図2に示すように、電子放出面200は、炭素繊維100が成長した触媒を配置した成長領域210、及び触媒を配置していない非成長領域220を含む。図2に示した例では、電子放出面200に複数の円状の成長領域210が互いに離間して配置されている。成長領域210が配置されていない、残余の領域が非成長領域220である。つまり、複数の成長領域210が非成長領域220によって互いに離間して配置されている。成長領域210の直径Rは、例えば100nm〜200nm程度であり、成長領域210間の最短距離dは、例えば1mm程度である。電子放出面200に触媒を配置する領域と配置しない領域を設定することにより、成長領域210と非成長領域220の配置が決定される。
【0013】
図2に示したように、電子放出面200を、触媒を配置した成長領域210と触媒を配置していない非成長領域220とに分離して、成長領域210の形状、配置、面積等を制限することにより、炭素繊維100の電子放出効率の低下を防止できる。この理由を以下に説明する。
【0014】
電子放出源である炭素繊維100から電子を放出させるためには、炭素繊維100の先端に電界を集中させる必要がある。しかし、広範囲に多数の炭素繊維100が密集して成長している場合には、炭素繊維100の各先端に電界が集中しづらい。このため、炭素繊維100が成長する成長領域210を密集させずに配置することにより、炭素繊維100の各先端に電界が集中しやすくなる。したがって、電子放出面200の全面に炭素繊維100を成長させずに、例えば複数の成長領域210を非成長領域220で囲むように電子放出面200を構成することにより、炭素繊維100の電子放出効率が向上する。
【0015】
具体的には、電子放出面200に対する成長領域210の面積の割合を25%程度以下にすることにより、炭素繊維100の電子放出効率が向上する効果が得られる。つまり、炭素繊維100が密集して配置された領域の面積を小さくすることにより、炭素繊維100の電子放出効率の低下を防止できる。
【0016】
図1に示すように、照明装置1のカソード電極10は、カソード基板11と、カソード基板11の上面110上に配置されたカソード層12を含む。カソード層12の表面が、電子放出面200である。つまり、電子放出面200は、カソード基板11の上面110に接する面(裏面)に対向するカソード層12の表面である。カソード基板11には、例えばニッケル(Ni)基板や、ステンレス(SUS鋼)基板等の金属プレートが採用可能である。カソード層12には、クロム(Cr)膜等が採用可能である。
【0017】
照明装置1のアノード電極30は、アノード基板32と、アノード基板32の下面320上に配置されたアノード層31を含む。そして、アノード基板32と接する主面(裏面)に対向するアノード層31の主面310(表面)に、蛍光体膜40が配置される。アノード基板32及びアノード層31には、蛍光体膜40から出力される光が透過可能な材料が選択される。例えば、ガラス板等がアノード基板32に採用可能である。アノード層31には、例えば酸化インジウムスズ(ITO)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜等が採用可能である。
【0018】
蛍光体膜40の材料は、照明装置1の所望の発光色等に応じて選択される。例えば、青色光を発光する場合にはZnS:Ag蛍光体、緑色光を発光する場合にはZnS:Au、Al蛍光体、赤光を発光する場合にはY2O2S:Eu3+蛍光体等が蛍光体膜40に採用可能である。
【0019】
また、カソード電極10とアノード電極30との間に空間をなすように、カソード基板11の周辺部とアノード基板32の周辺部は、環状のスペーサ50に接合される。つまり、照明装置1の側面はスペーサ50により構成される。スペーサ50には、例えばガラス等が採用可能である。
【0020】
カソード電極10、アノード電極30及びスペーサ50により、カソード電極10とアノード電極30間の空間は外部と遮断される。カソード電極10とアノード電極30間の空間は、例えば1×10-3〜1×10-4Pa程度の真空状態に保たれる。スペーサ50は、例えばガラスフリットによってカソード電極10及びアノード電極30と接合される。
【0021】
以下に、図1に示した照明装置1の動作について説明する。カソード電極10とアノード電極30間に電圧(以下において、「アノード電圧」という。)Vを印加することにより、カソード電極10の電子放出面200に配置された電子放出源である炭素繊維100から、アノード電極30に向かって電子が放出される。カソード電極10とアノード電極30間に印加するアノード電圧Vは、例えば8kV程度である。炭素繊維100から放出された電子は、アノード層31の主面310に配置された蛍光体膜40に衝突する。この衝突により、蛍光体膜40は励起され発光する。蛍光体膜40が発光した出力光Lは、アノード層31及びアノード基板32を透過して、アノード基板32の出力面30aから照明装置1の外部に出力される。
【0022】
なお、蛍光体膜40からアノード基板32に入射した出力光Lの一部はそのまま出力面30aから照明装置1の外部に出力される。また、アノード基板32に入射した出力光Lの他の一部は、アノード基板32内部を拡散した後、照明装置1の外部に出力される。
【0023】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1は、炭素繊維100を電子放出源とし、炭素繊維100が放出する電子の衝突により蛍光体膜40が励起されて発光する。照明装置1は水銀を使用しないため、環境問題が生じない。また、以下に照明装置1の製造法を説明するように、小型の面発光素子を容易に、且つ安価に製造できる。
【0024】
図3〜図7を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1の製造方法を説明する。なお、以下に述べる照明装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0025】
(イ)図3に示すように、カソード基板11の上面110上にカソード層12を形成する。例えば、厚さ0.1mm〜0.5mm程度のSUS鋼板であるカソード基板11上に、スパッタ法等により、膜厚0.1μm〜0.5μm程度のCr膜をカソード層12として形成する。
【0026】
(ロ)図4に示すように、カソード層12の上面、即ち電子放出面200上に、炭素繊維100の核となる触媒150を形成する。例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)からなる426合金膜を、スパッタ法により膜厚1〜5nm程度の膜厚で形成する。触媒150の膜厚が薄いために図1では触媒150の図示を省略したが、図4では説明をわかりやすくするために触媒150を図示している。このとき、例えばガラスマスクを使用して、電子放出面200上に触媒150を配置した成長領域210と、触媒150を配置していない非成長領域220とを形成する。或いは、非成長領域220上にマスクテープを配置した後に触媒150を形成し、マスクテープをはがして非成長領域220を形成するリフトオフ法を採用してもよい。
【0027】
(ハ)熱化学気相成長(熱CVD)法により、図5に示すように、炭素繊維100を成長させる。具体的には、炭素繊維100の原料ガスを熱CVD装置のチャンバー内に導入する。原料ガスとしては、例えば一酸化炭素/水素(CO/H2)混合ガスが採用可能であるが、他にも、二酸化炭素(CO2)ガス、メタン(CH4)ガス等の炭素(C)を供給可能なガスが採用可能である。そして、例えば550℃〜600℃の成長温度、30分の成長時間で、長さ1〜3μm程度の炭素繊維100を成長領域210に成長させる。
【0028】
(ニ)図6に示すように、電子放出面200を囲むようにスペーサ50をカソード電極10の周面部上に配置する。スペーサ50は、例えばカソード電極10上にスクリーン印刷されたガラスフリットによって、カソード電極10と接合される。ガラスフリットは、脱泡された後、1×10-1〜1×10-3Paの真空状態において400℃〜550℃で焼成される。
【0029】
(ホ)アノード基板32の下面320上にアノード層31を配置してアノード電極30を形成する。例えば、ガラス板からなるアノード基板32上に、ITO膜をアノード層31として形成する。更に、スクリーン印刷法等によりアノード層31の主面310上に蛍光体膜40を配置する。その後、図7に示すように、蛍光体膜40がカソード電極10に対向するように、アノード電極30をスペーサ50上に配置する。例えばアノード電極30上にスクリーン印刷されたガラスフリットによって、スペーサ50とアノード電極30とが接合される。既に述べたように、カソード電極10とアノード電極30間の空間は、1×10-3〜1×10-4Pa程度の真空状態に保つ必要がある。このため、カソード電極10、アノード電極30及びスペーサ50により囲まれる空間内の不要なガスを吸着する吸着剤を配置してもよい。以上により、図1に示した照明装置1が完成する。
【0030】
熱CVD法で成長させる炭素繊維100の長さは、上記のように1〜3μm程度が望ましい。これは、炭素繊維100の長さが長すぎると、電子が放出される炭素繊維100の先端が垂れてアノード電極30方向に向かず、電子放出効率が低下するためである。炭素繊維100の長さが1〜3μm程度の場合には、炭素繊維100は直立し、先端がアノード電極30方向に向く。炭素繊維100がCNTの場合、炭素繊維100の直径は20nm程度である。
【0031】
上記では、ガラスマスクやリフトオフ工程を使用して電子放出面200上に成長領域210と非成長領域220を形成する方法を示した。他の方法として、電子放出面200の全面に触媒150を形成した後、カソード電極10を加熱することにより、電子放出面200上に成長領域210と非成長領域220を形成してもよい。つまり、カソード電極10を加熱することにより、触媒150の粒子を電子放出面200上で拡散させ、互いに離間した複数の領域で触媒150を凝縮させる。その結果、複数の成長領域210を互いに離間して配置することができる。この成長領域210の形成方法によれば、ガラスマスクを配置する工程やリフトオフ工程が不要であるため、製造工程数を減らすことができる。
【0032】
なお、成長領域210の形状は、図2に示したような円形ではなく、例えば、成長領域210を矩形にしてもよい。図8は、矩形の成長領域210をマトリクス状に配置した例である。
【0033】
また、電子放出面200上の成長領域210と非成長領域220の配置方法は、複数の成長領域210を非成長領域220によって互いに離間して配置する方法に限られない。つまり、炭素繊維100の電子放出効率を向上させるために、炭素繊維100の各先端に電界が集中しやすい状態になるように電子放出面200に成長領域210を配置するのであれば、電子放出面200上の成長領域210と非成長領域220の配置方法はどのような配置であってもよい。例えば、図9は、電子放出面200上に、成長領域210を格子状に配置した例を示す。
【0034】
以上に説明した照明装置の製造方法により、照明装置1を容易に、且つ安価に製造できる。本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1の製造方法によれば、炭素繊維100を電子放出源とし、炭素繊維100が放出する電子で蛍光体膜40を励起して発光する照明装置を提供できる。
【0035】
<変形例>
図10に示す本発明の第1の実施の形態の変形例に係る照明装置1は、電子放出面200に対向して、電子が入射する蛍光体膜40の入射面41上に配置された反射膜60を更に有する。反射膜60には、例えばアルミニウム(Al)膜等の金属膜が採用可能である。
【0036】
反射膜60の膜厚が薄い場合には、炭素繊維100から放出された電子は反射膜60を通過する。具体的には、反射膜60が膜厚100nm程度のAl膜である場合には、アノード電圧Vが5kV程度以上であれば、炭素繊維100から放出された電子は反射膜60を通過し、蛍光体膜40に衝突する。
【0037】
図10に示した照明装置1では、蛍光体膜40からカソード基板11方向に進行する光が反射膜60で反射し、アノード層31及びアノード基板32を透過して、出力面30aから照明装置1の外部に出力する。その結果、反射膜60を配置しない場合に比べて、蛍光体膜40で励起した光のうちの出力面30aから出力される光の割合を示す光取り出し効率が向上する。
【0038】
(第2の実施の形態)
図11に示す本発明の第2の実施の形態に係る照明装置1Aでは、カソード電極10が、第1の主面201及び第1の主面201に対向する第2の主面202を有する。図11に示す照明装置1Aでは、第1の主面201及び第2の主面202それぞれが電子放出面である。以下では、第1の主面201を「第1の電子放出面」201、第2の主面202を「第2の電子放出面」202という。
【0039】
カソード電極10は、カソード基板11の上面110上にカソード層121が配置され、下面111上にカソード層122が配置された構造である。つまり、カソード基板11の上面110に接する面(裏面)に対向するカソード層121の表面が第1の電子放出面201である。カソード基板11の下面111に接する面(裏面)に対向するカソード層122の表面が第2の電子放出面202である。例えば、SUS鋼であるカソード基板11の上面110と下面111に、カソード層121及びカソード層122としてCr膜をそれぞれ配置して、カソード電極10が形成される。
【0040】
第1の電子放出面201及び第2の電子放出面202には、図2、或いは図8、図9に例示したように、炭素繊維100の各先端に電界が集中しやすいように形状、配置、及び面積等が設定されて、成長領域210が配置される。これにより、第1の電子放出面201及び第2の電子放出面202に配置された炭素繊維100の電子放出効率が向上する。
【0041】
図11に示すように、第1の電子放出面201及び第2の主面202にそれぞれ対向して、第1のアノード電極301及び第2のアノード電極302が配置される。図1に示したアノード電極30と同様に、第1のアノード電極301は、アノード基板321とアノード層311を積層して形成される。第2のアノード電極302は、アノード基板322とアノード層312を積層して形成される。アノード基板321及びアノード基板322には、ガラス板等が採用可能である。アノード層311及びアノード層312には、例えばITO膜が採用可能である。
【0042】
第1のアノード電極301の第1の電子放出面201と対向する面上に、蛍光体膜401が配置される。第2のアノード電極302の第2の電子放出面202と対向する面上に、蛍光体膜402が配置される。
【0043】
カソード電極10と第1のアノード電極301との間にスペーサ501を接続し、カソード電極10と第2のアノード電極302との間にスペーサ502を接続して、図11に示す照明装置1Aが完成する。スペーサ501及びスペーサ502には、図1に示したスペーサ50と同様に、ガラス等が採用可能である。
【0044】
照明装置1Aを動作させるために、カソード電極10と第1のアノード電極301間、及びカソード電極10と第2のアノード電極302間に、それぞれアノード電圧Vを印加する。カソード電極10の第1の電子放出面201の成長領域210に配置された炭素繊維100から、第1のアノード電極301に向かって電子が放出される。炭素繊維100から放出された電子は、蛍光体膜401に衝突し、蛍光体膜401は励起され発光する。蛍光体膜401が発光した出力光L1は、アノード層311及びアノード基板321を透過して、アノード基板321の出力面31aから照明装置1Aの外部に出力される。同様に、第2の電子放出面202から放出された電子によって蛍光体膜402が励起され発光する。蛍光体膜402が発光した出力光L2が、アノード基板322の出力面32aから照明装置1Aの外部に出力される。
【0045】
なお、蛍光体膜401の第1の電子放出面201に対向する面、及び蛍光体膜402の第2の電子放出面202に対向する面に、図10に示した照明装置1と同様に反射膜60を配置してもよい。反射膜60により、蛍光体膜401から発光する出力光L1、及び蛍光体膜402から発光する出力光L2の光取り出し効率が向上する。
【0046】
以上に説明したように、図1に示した照明装置1が1つの出力面30aから発光するのに対し、図11に示した照明装置1Aは、2つの出力面31a、32aから発光する。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0047】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る照明装置1Bは、図12(a)〜図12(b)に示すように、円柱状のカソード電極10Bと、カソード電極10Bを囲んで配置された管状のアノード電極30Bを有する。図12(a)は、カソード電極10Bが延伸する方向に沿った断面図である。図12(b)は、図12(a)に示す切断面に垂直方向(XII−XII方向)に沿った切断面である。
【0048】
カソード電極10Bは、円柱状のカソード基板11の表面にカソード層123を配置した構造である。カソード層123の表面が電子放出面203である。電子放出面203に、炭素繊維100の各先端に電界が集中するように形状、配置及び面積等が設定された成長領域210が配置される。これにより、電子放出面203に配置された炭素繊維100の電子放出効率が向上する。
【0049】
円柱状のカソード層123の表面の一部に炭素繊維100を配置するためには、例えばマスクテープを使用したリフトオフ法等が採用可能である。つまり、カソード層123の成長領域210以外の場所にマスクテープを巻き、触媒を形成した後にマスクテープを剥がすことにより、カソード層123の成長領域210のみに炭素繊維100を配置できる。
【0050】
アノード電極30Bは、例えばガラス管であるアノード基板323の内側に、ITO膜等のアノード層313を配置して形成される。アノード層313のカソード電極10Bに対向する面に、蛍光体膜403が配置される。アノード基板323の外側表面が出力面33aである。アノード電極30Bの一方の端部は封止部材503で封止され、他方の端部は曲面である。カソード電極10Bはアノード電極30Bに囲まれた空間内に配置され、アノード電極30Bに囲まれた空間は、封止部材710によって1×10-3〜1×10-4Pa程度の真空状態を保って封止される。
【0051】
カソード電極10Bとアノード電極30B間にアノード電圧Vを印加すると、カソード電極10Bの電子放出面203の成長領域210に配置された炭素繊維100から、アノード電極30Bに向かって電子が放出される。炭素繊維100から放出された電子は、蛍光体膜403に衝突し、蛍光体膜403は励起され発光する。蛍光体膜403が発光した出力光L3は、アノード層313及びアノード基板323を透過して、出力面33aから照明装置1Bの外部に出力される。
【0052】
図12(a)〜図12(b)に示した照明装置1Bによれば、全方位に出力光L3を発光可能な照明装置を提供できる。なお、カソード電極10Bの形状は、円柱以外の、例えば四角柱や三角柱等の多角柱であってもよい。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0053】
<第1の変形例>
第3の実施の形態の第1の変形例に係る照明装置1Bを図13に示す。図12(a)に示した照明装置1Bは、アノード電極30Bの一方の端部からカソード電極10Bとアノード電極30Bに電圧が印加され、他方の端部が閉じた形状である。これに対し、図13に示した照明装置1Bは、アノード電極30Bが筒状であり、両端部が封止部材503で封止されている点が、図12(a)に示した照明装置1Bと異なる。
【0054】
図13に示した照明装置1Bでは、アノード電極30Bの両端からカソード電極10B又はアノード電極30Bに電圧を印加できる。例えば、図13に示したように、照明装置1Bの一方の端部からカソード電極10Bに電圧を印加し、他方の端部からアノード電極30Bに電圧を印加できる。
【0055】
<第2の変形例>
第3の実施の形態の第2の変形例に係る照明装置1Bを図14に示す。図14に示した照明装置1Bは、アノード電極30Bの形状が電球形状であることが、図12(a)に示した照明装置1Bと異なる点である。その他の構成については、図12(a)に示した照明装置1Bの形態と同様である。
【0056】
照明装置1Bから出力される出力光L3の輝度が出力面33a上で均一であるためには、アノード電極30Bとカソード電極10B間の距離がアノード電極30B上の場所に依存せずに一定である必要がある。そのため、アノード電極30Bの形状が電球形状である場合には、図14に示すように、照明装置1Bのカソード電極10Bの形状も電球形状であることが好ましい。
【0057】
図14に示した照明装置1Bによれば、炭素繊維100を電子放出源とする電球形状の照明装置を提供できる。
【0058】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る照明装置1Cは、図15に示すように、カソード電極10とアノード電極30間に配置され、炭素繊維100から電子を引き出すゲート電極70を更に備えることが、図1に示した照明装置1と異なる点である。その他の構成については、図1に示した照明装置1の形態と同様である。
【0059】
ゲート電極70は、例えばメッシュ状の金属部材を採用可能である。図16にメッシュ状のゲート電極70の例を示す。図16は、カソード電極10方向からゲート電極70をみた例である。カソード電極10とゲート電極70に電圧(以下において、「ゲート電圧」という。)VGを印加することにより、電子放出面200に配置された炭素繊維100から電子が引き出される。炭素繊維100から引き出された電子は、メッシュ状のゲート電極70の隙間を通過して、アノード電圧Vが印加されたアノード電極30上に配置された蛍光体膜40に衝突する。この衝突により、蛍光体膜40は励起され発光する。蛍光体膜40が発光した出力光Lは、アノード層31及びアノード基板32を透過して、アノード基板32の出力面30aから照明装置1Cの外部に出力される。
【0060】
図10に示した照明装置1と同様に、蛍光体膜40の電子放出面200に対向する面に反射膜60を配置してもよい。反射膜60により、蛍光体膜40から発光する出力光Lの光取り出し効率が向上する。
【0061】
図11に示した照明装置1Aと同様に、照明装置1Cのカソード電極10の両面に電子放出面を配置してもよい。或いは、照明装置1Cのカソード電極10の形状を、図12(a)〜図14に示した照明装置1Bと同様に、円柱状或いは電球形状にしてもよい。
【0062】
カソード電極10とゲート電極70間に印加されるゲート電圧VGは100V程度であり、例えば30V〜40Vである。一方、カソード電極10とアノード電極30間のアノード電圧Vは、8kV程度である。このため、アノード電圧Vを制御するよりも、ゲート電圧VGを制御することにより、炭素繊維100から放出される電子数を細かく制御できる。つまり、図15に示した照明装置1Cによれば、ゲート電圧VGを制御することにより、出力光Lの輝度をより細かく調整できる。
【0063】
図17に、ゲート電圧VGと炭素繊維100から放出される電子数に依存する電流(放出電流)密度との関係を示す。図17は、アノード電圧Vが7kVの場合における、ゲート電圧VGと放出電流密度との関係を示したグラフである。図17に示すように、ゲート電圧VGを増加することにより、放出電流密度は指数関数的に増大する。このように、ゲート電圧VGを制御することにより、出力光Lの輝度を細かく調整できる。
【0064】
図15にはゲート電極70がメッシュ上の金属部材である例を示したが、ゲート電極70は半導体プロセスを使用して形成してもよい。例えば、図18に示すように、電子放出面200の非成長領域220上に絶縁膜80を形成し、絶縁膜80上にゲート電極70を形成する。つまり、成長領域210は、絶縁膜80及びゲート電極70によって囲まれた空間であるホール90の底面に露出した領域である。図18に示したゲート電極70には、例えばCr膜等が採用可能である。絶縁膜80には、例えば酸化シリコン(Si2O)等が採用可能である。
【0065】
以上に説明したように、本発明の第4の嫉視の形態に係る照明装置1Cによれば、炭素繊維100を電子放出源とし、出力光Lの輝度を細かく調整できる照明装置を提供できる。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0066】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第4の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0067】
既に述べた第1乃至第4の実施の形態の説明においては、炭素繊維100を成長させる際の触媒150に426合金膜を使用する例を示したが、他の触媒を用いてもよいことはもちろんである。例えば、Fe膜を触媒150に使用してもよい。
【0068】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の成長領域及び非成長領域の例を示す上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の成長領域及び非成長領域の他の例を示す上面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の成長領域及び非成長領域の他の例を示す上面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図であり、図12(a)はカソード電極が延伸する方向に沿った断面図でり、図12(b)は図12(a)のXII−XII方向に沿った断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の第1の変形例に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態の第2の変形例に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る照明装置のゲート電極の構造例を示す模式図である。
【図17】ゲート電圧と炭素繊維から放出される電子数との関係を示すグラフである。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る照明装置のゲート電極の他の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1…照明装置
10…カソード電極
11…カソード基板
12、121〜123…カソード層
30、301、302…アノード電極
31、311〜313…アノード層
32、321〜323…アノード基板
40、401〜403…蛍光体膜
50、501〜502…スペーサ
60…反射膜
70…ゲート電極
100…炭素繊維
150…触媒
200〜203…電子放出面
210…成長領域
220…非成長領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源を用いた照明装置に係り、特に炭素繊維を電子放出源として用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイトナノファイバ(GNF)等のナノスケールの炭素繊維(カーボンファイバ)が、フィールドエミッションアレイ(FEA)や、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の炭素繊維装置に使用されている。これらの炭素繊維装置は、炭素繊維を電子放出源として使用している。電子放出源から放出された電子に衝突されて蛍光体膜が励起され、発光する。
【0003】
一方、照明装置として、従来から、蛍光灯、発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネセンス(OEL)等が使用されている。例えば、蛍光灯に代えてLEDを光源とする照明の実用化が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−192833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蛍光灯は水銀を使用しているため、環境に影響を与える問題がある。LEDは点発光素子であるため、照明装置として使用する場合には、複数のLEDを配列して発光面が均一に発光するための構造上の工夫等が必要である。OELを照明として使用するためには、素子の大型化や発熱量の低減、コストダウン等が課題である。
【0005】
一方、炭素繊維装置は水銀を使用しない。また、炭素繊維を電子放出源として使用すれば、小型の面発光素子を容易に且つ安価に製造できる。本発明は、炭素繊維を電子放出源として使用した照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(イ)炭素繊維が成長した触媒を配置した成長領域、及び触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面を有するカソード電極と、(ロ)電子放出面に対向して配置された透明のアノード電極と、(ハ)アノード電極の電子放出面に対向する主面上に配置され、炭素繊維から放出された電子の衝突により励起発光する蛍光体膜とを備える照明装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭素繊維を電子放出源として使用した照明装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第4の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
又、以下に示す第1乃至第4の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1は、図1に示すように、炭素繊維100が成長した触媒を配置した成長領域、及び触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面200を有するカソード電極10と、電子放出面200に対向して配置された透明のアノード電極30と、アノード電極30の電子放出面200に対向する主面310上に配置され、炭素繊維100から放出された電子の衝突により励起発光する蛍光体膜40とを備える。図1において、電子放出面200の炭素繊維100が配置されている領域が触媒を配置した成長領域であり、炭素繊維100が配置されていない領域が非成長領域である。
【0011】
照明装置1では、炭素繊維100は電子放出源である。炭素繊維100は、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイトナノファイバ(GNF)、カーボンナノファイバ(CNF)、カーボンナノコイル等を含むナノスケールのカーボンファイバである。
【0012】
電子放出面200の例を図2に示す。図2は、電子放出面200をアノード電極30側からみた上面図である。図2に示すように、電子放出面200は、炭素繊維100が成長した触媒を配置した成長領域210、及び触媒を配置していない非成長領域220を含む。図2に示した例では、電子放出面200に複数の円状の成長領域210が互いに離間して配置されている。成長領域210が配置されていない、残余の領域が非成長領域220である。つまり、複数の成長領域210が非成長領域220によって互いに離間して配置されている。成長領域210の直径Rは、例えば100nm〜200nm程度であり、成長領域210間の最短距離dは、例えば1mm程度である。電子放出面200に触媒を配置する領域と配置しない領域を設定することにより、成長領域210と非成長領域220の配置が決定される。
【0013】
図2に示したように、電子放出面200を、触媒を配置した成長領域210と触媒を配置していない非成長領域220とに分離して、成長領域210の形状、配置、面積等を制限することにより、炭素繊維100の電子放出効率の低下を防止できる。この理由を以下に説明する。
【0014】
電子放出源である炭素繊維100から電子を放出させるためには、炭素繊維100の先端に電界を集中させる必要がある。しかし、広範囲に多数の炭素繊維100が密集して成長している場合には、炭素繊維100の各先端に電界が集中しづらい。このため、炭素繊維100が成長する成長領域210を密集させずに配置することにより、炭素繊維100の各先端に電界が集中しやすくなる。したがって、電子放出面200の全面に炭素繊維100を成長させずに、例えば複数の成長領域210を非成長領域220で囲むように電子放出面200を構成することにより、炭素繊維100の電子放出効率が向上する。
【0015】
具体的には、電子放出面200に対する成長領域210の面積の割合を25%程度以下にすることにより、炭素繊維100の電子放出効率が向上する効果が得られる。つまり、炭素繊維100が密集して配置された領域の面積を小さくすることにより、炭素繊維100の電子放出効率の低下を防止できる。
【0016】
図1に示すように、照明装置1のカソード電極10は、カソード基板11と、カソード基板11の上面110上に配置されたカソード層12を含む。カソード層12の表面が、電子放出面200である。つまり、電子放出面200は、カソード基板11の上面110に接する面(裏面)に対向するカソード層12の表面である。カソード基板11には、例えばニッケル(Ni)基板や、ステンレス(SUS鋼)基板等の金属プレートが採用可能である。カソード層12には、クロム(Cr)膜等が採用可能である。
【0017】
照明装置1のアノード電極30は、アノード基板32と、アノード基板32の下面320上に配置されたアノード層31を含む。そして、アノード基板32と接する主面(裏面)に対向するアノード層31の主面310(表面)に、蛍光体膜40が配置される。アノード基板32及びアノード層31には、蛍光体膜40から出力される光が透過可能な材料が選択される。例えば、ガラス板等がアノード基板32に採用可能である。アノード層31には、例えば酸化インジウムスズ(ITO)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜等が採用可能である。
【0018】
蛍光体膜40の材料は、照明装置1の所望の発光色等に応じて選択される。例えば、青色光を発光する場合にはZnS:Ag蛍光体、緑色光を発光する場合にはZnS:Au、Al蛍光体、赤光を発光する場合にはY2O2S:Eu3+蛍光体等が蛍光体膜40に採用可能である。
【0019】
また、カソード電極10とアノード電極30との間に空間をなすように、カソード基板11の周辺部とアノード基板32の周辺部は、環状のスペーサ50に接合される。つまり、照明装置1の側面はスペーサ50により構成される。スペーサ50には、例えばガラス等が採用可能である。
【0020】
カソード電極10、アノード電極30及びスペーサ50により、カソード電極10とアノード電極30間の空間は外部と遮断される。カソード電極10とアノード電極30間の空間は、例えば1×10-3〜1×10-4Pa程度の真空状態に保たれる。スペーサ50は、例えばガラスフリットによってカソード電極10及びアノード電極30と接合される。
【0021】
以下に、図1に示した照明装置1の動作について説明する。カソード電極10とアノード電極30間に電圧(以下において、「アノード電圧」という。)Vを印加することにより、カソード電極10の電子放出面200に配置された電子放出源である炭素繊維100から、アノード電極30に向かって電子が放出される。カソード電極10とアノード電極30間に印加するアノード電圧Vは、例えば8kV程度である。炭素繊維100から放出された電子は、アノード層31の主面310に配置された蛍光体膜40に衝突する。この衝突により、蛍光体膜40は励起され発光する。蛍光体膜40が発光した出力光Lは、アノード層31及びアノード基板32を透過して、アノード基板32の出力面30aから照明装置1の外部に出力される。
【0022】
なお、蛍光体膜40からアノード基板32に入射した出力光Lの一部はそのまま出力面30aから照明装置1の外部に出力される。また、アノード基板32に入射した出力光Lの他の一部は、アノード基板32内部を拡散した後、照明装置1の外部に出力される。
【0023】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1は、炭素繊維100を電子放出源とし、炭素繊維100が放出する電子の衝突により蛍光体膜40が励起されて発光する。照明装置1は水銀を使用しないため、環境問題が生じない。また、以下に照明装置1の製造法を説明するように、小型の面発光素子を容易に、且つ安価に製造できる。
【0024】
図3〜図7を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1の製造方法を説明する。なお、以下に述べる照明装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0025】
(イ)図3に示すように、カソード基板11の上面110上にカソード層12を形成する。例えば、厚さ0.1mm〜0.5mm程度のSUS鋼板であるカソード基板11上に、スパッタ法等により、膜厚0.1μm〜0.5μm程度のCr膜をカソード層12として形成する。
【0026】
(ロ)図4に示すように、カソード層12の上面、即ち電子放出面200上に、炭素繊維100の核となる触媒150を形成する。例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)からなる426合金膜を、スパッタ法により膜厚1〜5nm程度の膜厚で形成する。触媒150の膜厚が薄いために図1では触媒150の図示を省略したが、図4では説明をわかりやすくするために触媒150を図示している。このとき、例えばガラスマスクを使用して、電子放出面200上に触媒150を配置した成長領域210と、触媒150を配置していない非成長領域220とを形成する。或いは、非成長領域220上にマスクテープを配置した後に触媒150を形成し、マスクテープをはがして非成長領域220を形成するリフトオフ法を採用してもよい。
【0027】
(ハ)熱化学気相成長(熱CVD)法により、図5に示すように、炭素繊維100を成長させる。具体的には、炭素繊維100の原料ガスを熱CVD装置のチャンバー内に導入する。原料ガスとしては、例えば一酸化炭素/水素(CO/H2)混合ガスが採用可能であるが、他にも、二酸化炭素(CO2)ガス、メタン(CH4)ガス等の炭素(C)を供給可能なガスが採用可能である。そして、例えば550℃〜600℃の成長温度、30分の成長時間で、長さ1〜3μm程度の炭素繊維100を成長領域210に成長させる。
【0028】
(ニ)図6に示すように、電子放出面200を囲むようにスペーサ50をカソード電極10の周面部上に配置する。スペーサ50は、例えばカソード電極10上にスクリーン印刷されたガラスフリットによって、カソード電極10と接合される。ガラスフリットは、脱泡された後、1×10-1〜1×10-3Paの真空状態において400℃〜550℃で焼成される。
【0029】
(ホ)アノード基板32の下面320上にアノード層31を配置してアノード電極30を形成する。例えば、ガラス板からなるアノード基板32上に、ITO膜をアノード層31として形成する。更に、スクリーン印刷法等によりアノード層31の主面310上に蛍光体膜40を配置する。その後、図7に示すように、蛍光体膜40がカソード電極10に対向するように、アノード電極30をスペーサ50上に配置する。例えばアノード電極30上にスクリーン印刷されたガラスフリットによって、スペーサ50とアノード電極30とが接合される。既に述べたように、カソード電極10とアノード電極30間の空間は、1×10-3〜1×10-4Pa程度の真空状態に保つ必要がある。このため、カソード電極10、アノード電極30及びスペーサ50により囲まれる空間内の不要なガスを吸着する吸着剤を配置してもよい。以上により、図1に示した照明装置1が完成する。
【0030】
熱CVD法で成長させる炭素繊維100の長さは、上記のように1〜3μm程度が望ましい。これは、炭素繊維100の長さが長すぎると、電子が放出される炭素繊維100の先端が垂れてアノード電極30方向に向かず、電子放出効率が低下するためである。炭素繊維100の長さが1〜3μm程度の場合には、炭素繊維100は直立し、先端がアノード電極30方向に向く。炭素繊維100がCNTの場合、炭素繊維100の直径は20nm程度である。
【0031】
上記では、ガラスマスクやリフトオフ工程を使用して電子放出面200上に成長領域210と非成長領域220を形成する方法を示した。他の方法として、電子放出面200の全面に触媒150を形成した後、カソード電極10を加熱することにより、電子放出面200上に成長領域210と非成長領域220を形成してもよい。つまり、カソード電極10を加熱することにより、触媒150の粒子を電子放出面200上で拡散させ、互いに離間した複数の領域で触媒150を凝縮させる。その結果、複数の成長領域210を互いに離間して配置することができる。この成長領域210の形成方法によれば、ガラスマスクを配置する工程やリフトオフ工程が不要であるため、製造工程数を減らすことができる。
【0032】
なお、成長領域210の形状は、図2に示したような円形ではなく、例えば、成長領域210を矩形にしてもよい。図8は、矩形の成長領域210をマトリクス状に配置した例である。
【0033】
また、電子放出面200上の成長領域210と非成長領域220の配置方法は、複数の成長領域210を非成長領域220によって互いに離間して配置する方法に限られない。つまり、炭素繊維100の電子放出効率を向上させるために、炭素繊維100の各先端に電界が集中しやすい状態になるように電子放出面200に成長領域210を配置するのであれば、電子放出面200上の成長領域210と非成長領域220の配置方法はどのような配置であってもよい。例えば、図9は、電子放出面200上に、成長領域210を格子状に配置した例を示す。
【0034】
以上に説明した照明装置の製造方法により、照明装置1を容易に、且つ安価に製造できる。本発明の第1の実施の形態に係る照明装置1の製造方法によれば、炭素繊維100を電子放出源とし、炭素繊維100が放出する電子で蛍光体膜40を励起して発光する照明装置を提供できる。
【0035】
<変形例>
図10に示す本発明の第1の実施の形態の変形例に係る照明装置1は、電子放出面200に対向して、電子が入射する蛍光体膜40の入射面41上に配置された反射膜60を更に有する。反射膜60には、例えばアルミニウム(Al)膜等の金属膜が採用可能である。
【0036】
反射膜60の膜厚が薄い場合には、炭素繊維100から放出された電子は反射膜60を通過する。具体的には、反射膜60が膜厚100nm程度のAl膜である場合には、アノード電圧Vが5kV程度以上であれば、炭素繊維100から放出された電子は反射膜60を通過し、蛍光体膜40に衝突する。
【0037】
図10に示した照明装置1では、蛍光体膜40からカソード基板11方向に進行する光が反射膜60で反射し、アノード層31及びアノード基板32を透過して、出力面30aから照明装置1の外部に出力する。その結果、反射膜60を配置しない場合に比べて、蛍光体膜40で励起した光のうちの出力面30aから出力される光の割合を示す光取り出し効率が向上する。
【0038】
(第2の実施の形態)
図11に示す本発明の第2の実施の形態に係る照明装置1Aでは、カソード電極10が、第1の主面201及び第1の主面201に対向する第2の主面202を有する。図11に示す照明装置1Aでは、第1の主面201及び第2の主面202それぞれが電子放出面である。以下では、第1の主面201を「第1の電子放出面」201、第2の主面202を「第2の電子放出面」202という。
【0039】
カソード電極10は、カソード基板11の上面110上にカソード層121が配置され、下面111上にカソード層122が配置された構造である。つまり、カソード基板11の上面110に接する面(裏面)に対向するカソード層121の表面が第1の電子放出面201である。カソード基板11の下面111に接する面(裏面)に対向するカソード層122の表面が第2の電子放出面202である。例えば、SUS鋼であるカソード基板11の上面110と下面111に、カソード層121及びカソード層122としてCr膜をそれぞれ配置して、カソード電極10が形成される。
【0040】
第1の電子放出面201及び第2の電子放出面202には、図2、或いは図8、図9に例示したように、炭素繊維100の各先端に電界が集中しやすいように形状、配置、及び面積等が設定されて、成長領域210が配置される。これにより、第1の電子放出面201及び第2の電子放出面202に配置された炭素繊維100の電子放出効率が向上する。
【0041】
図11に示すように、第1の電子放出面201及び第2の主面202にそれぞれ対向して、第1のアノード電極301及び第2のアノード電極302が配置される。図1に示したアノード電極30と同様に、第1のアノード電極301は、アノード基板321とアノード層311を積層して形成される。第2のアノード電極302は、アノード基板322とアノード層312を積層して形成される。アノード基板321及びアノード基板322には、ガラス板等が採用可能である。アノード層311及びアノード層312には、例えばITO膜が採用可能である。
【0042】
第1のアノード電極301の第1の電子放出面201と対向する面上に、蛍光体膜401が配置される。第2のアノード電極302の第2の電子放出面202と対向する面上に、蛍光体膜402が配置される。
【0043】
カソード電極10と第1のアノード電極301との間にスペーサ501を接続し、カソード電極10と第2のアノード電極302との間にスペーサ502を接続して、図11に示す照明装置1Aが完成する。スペーサ501及びスペーサ502には、図1に示したスペーサ50と同様に、ガラス等が採用可能である。
【0044】
照明装置1Aを動作させるために、カソード電極10と第1のアノード電極301間、及びカソード電極10と第2のアノード電極302間に、それぞれアノード電圧Vを印加する。カソード電極10の第1の電子放出面201の成長領域210に配置された炭素繊維100から、第1のアノード電極301に向かって電子が放出される。炭素繊維100から放出された電子は、蛍光体膜401に衝突し、蛍光体膜401は励起され発光する。蛍光体膜401が発光した出力光L1は、アノード層311及びアノード基板321を透過して、アノード基板321の出力面31aから照明装置1Aの外部に出力される。同様に、第2の電子放出面202から放出された電子によって蛍光体膜402が励起され発光する。蛍光体膜402が発光した出力光L2が、アノード基板322の出力面32aから照明装置1Aの外部に出力される。
【0045】
なお、蛍光体膜401の第1の電子放出面201に対向する面、及び蛍光体膜402の第2の電子放出面202に対向する面に、図10に示した照明装置1と同様に反射膜60を配置してもよい。反射膜60により、蛍光体膜401から発光する出力光L1、及び蛍光体膜402から発光する出力光L2の光取り出し効率が向上する。
【0046】
以上に説明したように、図1に示した照明装置1が1つの出力面30aから発光するのに対し、図11に示した照明装置1Aは、2つの出力面31a、32aから発光する。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0047】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る照明装置1Bは、図12(a)〜図12(b)に示すように、円柱状のカソード電極10Bと、カソード電極10Bを囲んで配置された管状のアノード電極30Bを有する。図12(a)は、カソード電極10Bが延伸する方向に沿った断面図である。図12(b)は、図12(a)に示す切断面に垂直方向(XII−XII方向)に沿った切断面である。
【0048】
カソード電極10Bは、円柱状のカソード基板11の表面にカソード層123を配置した構造である。カソード層123の表面が電子放出面203である。電子放出面203に、炭素繊維100の各先端に電界が集中するように形状、配置及び面積等が設定された成長領域210が配置される。これにより、電子放出面203に配置された炭素繊維100の電子放出効率が向上する。
【0049】
円柱状のカソード層123の表面の一部に炭素繊維100を配置するためには、例えばマスクテープを使用したリフトオフ法等が採用可能である。つまり、カソード層123の成長領域210以外の場所にマスクテープを巻き、触媒を形成した後にマスクテープを剥がすことにより、カソード層123の成長領域210のみに炭素繊維100を配置できる。
【0050】
アノード電極30Bは、例えばガラス管であるアノード基板323の内側に、ITO膜等のアノード層313を配置して形成される。アノード層313のカソード電極10Bに対向する面に、蛍光体膜403が配置される。アノード基板323の外側表面が出力面33aである。アノード電極30Bの一方の端部は封止部材503で封止され、他方の端部は曲面である。カソード電極10Bはアノード電極30Bに囲まれた空間内に配置され、アノード電極30Bに囲まれた空間は、封止部材710によって1×10-3〜1×10-4Pa程度の真空状態を保って封止される。
【0051】
カソード電極10Bとアノード電極30B間にアノード電圧Vを印加すると、カソード電極10Bの電子放出面203の成長領域210に配置された炭素繊維100から、アノード電極30Bに向かって電子が放出される。炭素繊維100から放出された電子は、蛍光体膜403に衝突し、蛍光体膜403は励起され発光する。蛍光体膜403が発光した出力光L3は、アノード層313及びアノード基板323を透過して、出力面33aから照明装置1Bの外部に出力される。
【0052】
図12(a)〜図12(b)に示した照明装置1Bによれば、全方位に出力光L3を発光可能な照明装置を提供できる。なお、カソード電極10Bの形状は、円柱以外の、例えば四角柱や三角柱等の多角柱であってもよい。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0053】
<第1の変形例>
第3の実施の形態の第1の変形例に係る照明装置1Bを図13に示す。図12(a)に示した照明装置1Bは、アノード電極30Bの一方の端部からカソード電極10Bとアノード電極30Bに電圧が印加され、他方の端部が閉じた形状である。これに対し、図13に示した照明装置1Bは、アノード電極30Bが筒状であり、両端部が封止部材503で封止されている点が、図12(a)に示した照明装置1Bと異なる。
【0054】
図13に示した照明装置1Bでは、アノード電極30Bの両端からカソード電極10B又はアノード電極30Bに電圧を印加できる。例えば、図13に示したように、照明装置1Bの一方の端部からカソード電極10Bに電圧を印加し、他方の端部からアノード電極30Bに電圧を印加できる。
【0055】
<第2の変形例>
第3の実施の形態の第2の変形例に係る照明装置1Bを図14に示す。図14に示した照明装置1Bは、アノード電極30Bの形状が電球形状であることが、図12(a)に示した照明装置1Bと異なる点である。その他の構成については、図12(a)に示した照明装置1Bの形態と同様である。
【0056】
照明装置1Bから出力される出力光L3の輝度が出力面33a上で均一であるためには、アノード電極30Bとカソード電極10B間の距離がアノード電極30B上の場所に依存せずに一定である必要がある。そのため、アノード電極30Bの形状が電球形状である場合には、図14に示すように、照明装置1Bのカソード電極10Bの形状も電球形状であることが好ましい。
【0057】
図14に示した照明装置1Bによれば、炭素繊維100を電子放出源とする電球形状の照明装置を提供できる。
【0058】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る照明装置1Cは、図15に示すように、カソード電極10とアノード電極30間に配置され、炭素繊維100から電子を引き出すゲート電極70を更に備えることが、図1に示した照明装置1と異なる点である。その他の構成については、図1に示した照明装置1の形態と同様である。
【0059】
ゲート電極70は、例えばメッシュ状の金属部材を採用可能である。図16にメッシュ状のゲート電極70の例を示す。図16は、カソード電極10方向からゲート電極70をみた例である。カソード電極10とゲート電極70に電圧(以下において、「ゲート電圧」という。)VGを印加することにより、電子放出面200に配置された炭素繊維100から電子が引き出される。炭素繊維100から引き出された電子は、メッシュ状のゲート電極70の隙間を通過して、アノード電圧Vが印加されたアノード電極30上に配置された蛍光体膜40に衝突する。この衝突により、蛍光体膜40は励起され発光する。蛍光体膜40が発光した出力光Lは、アノード層31及びアノード基板32を透過して、アノード基板32の出力面30aから照明装置1Cの外部に出力される。
【0060】
図10に示した照明装置1と同様に、蛍光体膜40の電子放出面200に対向する面に反射膜60を配置してもよい。反射膜60により、蛍光体膜40から発光する出力光Lの光取り出し効率が向上する。
【0061】
図11に示した照明装置1Aと同様に、照明装置1Cのカソード電極10の両面に電子放出面を配置してもよい。或いは、照明装置1Cのカソード電極10の形状を、図12(a)〜図14に示した照明装置1Bと同様に、円柱状或いは電球形状にしてもよい。
【0062】
カソード電極10とゲート電極70間に印加されるゲート電圧VGは100V程度であり、例えば30V〜40Vである。一方、カソード電極10とアノード電極30間のアノード電圧Vは、8kV程度である。このため、アノード電圧Vを制御するよりも、ゲート電圧VGを制御することにより、炭素繊維100から放出される電子数を細かく制御できる。つまり、図15に示した照明装置1Cによれば、ゲート電圧VGを制御することにより、出力光Lの輝度をより細かく調整できる。
【0063】
図17に、ゲート電圧VGと炭素繊維100から放出される電子数に依存する電流(放出電流)密度との関係を示す。図17は、アノード電圧Vが7kVの場合における、ゲート電圧VGと放出電流密度との関係を示したグラフである。図17に示すように、ゲート電圧VGを増加することにより、放出電流密度は指数関数的に増大する。このように、ゲート電圧VGを制御することにより、出力光Lの輝度を細かく調整できる。
【0064】
図15にはゲート電極70がメッシュ上の金属部材である例を示したが、ゲート電極70は半導体プロセスを使用して形成してもよい。例えば、図18に示すように、電子放出面200の非成長領域220上に絶縁膜80を形成し、絶縁膜80上にゲート電極70を形成する。つまり、成長領域210は、絶縁膜80及びゲート電極70によって囲まれた空間であるホール90の底面に露出した領域である。図18に示したゲート電極70には、例えばCr膜等が採用可能である。絶縁膜80には、例えば酸化シリコン(Si2O)等が採用可能である。
【0065】
以上に説明したように、本発明の第4の嫉視の形態に係る照明装置1Cによれば、炭素繊維100を電子放出源とし、出力光Lの輝度を細かく調整できる照明装置を提供できる。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0066】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第4の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0067】
既に述べた第1乃至第4の実施の形態の説明においては、炭素繊維100を成長させる際の触媒150に426合金膜を使用する例を示したが、他の触媒を用いてもよいことはもちろんである。例えば、Fe膜を触媒150に使用してもよい。
【0068】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の成長領域及び非成長領域の例を示す上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の成長領域及び非成長領域の他の例を示す上面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る照明装置の成長領域及び非成長領域の他の例を示す上面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図であり、図12(a)はカソード電極が延伸する方向に沿った断面図でり、図12(b)は図12(a)のXII−XII方向に沿った断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の第1の変形例に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態の第2の変形例に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係る照明装置の構成例を示す模式図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る照明装置のゲート電極の構造例を示す模式図である。
【図17】ゲート電圧と炭素繊維から放出される電子数との関係を示すグラフである。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る照明装置のゲート電極の他の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1…照明装置
10…カソード電極
11…カソード基板
12、121〜123…カソード層
30、301、302…アノード電極
31、311〜313…アノード層
32、321〜323…アノード基板
40、401〜403…蛍光体膜
50、501〜502…スペーサ
60…反射膜
70…ゲート電極
100…炭素繊維
150…触媒
200〜203…電子放出面
210…成長領域
220…非成長領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維が成長した触媒を配置した成長領域、及び前記触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面を有するカソード電極と、
前記電子放出面に対向して配置された透明のアノード電極と、
前記アノード電極の前記電子放出面に対向する主面上に配置され、前記炭素繊維から放出された電子の衝突により励起発光する蛍光体膜と
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記電子放出面に対する前記成長領域の面積比率が25%以下であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記電子放出面において、前記成長領域が前記非成長領域によって互いに離間された複数の領域として配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記電子放出面において、前記成長領域が格子状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記蛍光体膜の前記カソード電極に対向する面上に配置された反射膜を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記反射膜がアルミニウム膜であることを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記カソード電極と前記アノード電極間に配置され、前記炭素繊維から電子を引き出すゲート電極を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記ゲート電極が、メッシュ状の金属部材であることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記カソード電極が、第1の主面及び該第1の主面に対向する第2の主面を有し、前記第1及び第2の主面それぞれが前記電子放出面であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記カソード電極の形状が円柱形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記カソード電極の形状が電球形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記炭素繊維が、カーボンナノチューブ又はグラファイトナノファイバであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項1】
炭素繊維が成長した触媒を配置した成長領域、及び前記触媒を配置していない非成長領域を含む電子放出面を有するカソード電極と、
前記電子放出面に対向して配置された透明のアノード電極と、
前記アノード電極の前記電子放出面に対向する主面上に配置され、前記炭素繊維から放出された電子の衝突により励起発光する蛍光体膜と
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記電子放出面に対する前記成長領域の面積比率が25%以下であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記電子放出面において、前記成長領域が前記非成長領域によって互いに離間された複数の領域として配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記電子放出面において、前記成長領域が格子状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記蛍光体膜の前記カソード電極に対向する面上に配置された反射膜を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記反射膜がアルミニウム膜であることを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記カソード電極と前記アノード電極間に配置され、前記炭素繊維から電子を引き出すゲート電極を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記ゲート電極が、メッシュ状の金属部材であることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記カソード電極が、第1の主面及び該第1の主面に対向する第2の主面を有し、前記第1及び第2の主面それぞれが前記電子放出面であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記カソード電極の形状が円柱形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記カソード電極の形状が電球形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記炭素繊維が、カーボンナノチューブ又はグラファイトナノファイバであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−62070(P2010−62070A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228353(P2008−228353)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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