説明

照明装置

【課題】複数の発光ダイオードを用いた照明装置において、単一の光源を用いて得られる光束の制御性とほぼ同等の制御性能を実現する。
【解決手段】発光ダイオードアレイ1と、レンズアレイ2と、発光ダイオードアレイ1の中の各発光ダイオードの像を形成するための相対的に口径の大きい集光レンズ3と、レンズアレイ2と集光レンズ3とにより集光レンズ3の光軸31の上もしくは光軸31の近傍に結像され、その後発散する光束の伝搬方向を光軸31にほぼ沿う方向に偏向するための光束伝搬方向偏向素子4とを備える。これにより、複数の発光ダイオードからの光束を統合して比較的小さな領域に収束させた後、各発光ダイオードからの光束の伝搬方向を偏向可能として、光の進行方向を高精度に制御可能な光束が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関し、より詳しくは複数の発光ダイオードを用いて、スポットライトのように光束を制御した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドライト、劇場のスポットライトなど光束を投射する投射照明装置には、従来白熱電球やハロゲンランプが用いられてきた。また、液晶プロジェクタなど画像を投写する投射装置には、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀灯などが用いられている。しかしながらこれらの光源からの光には、必要とされる光の他に熱線とも呼ばれる赤外線が含まれているため、その除去が必要となる。また、白熱電球やハロゲンランプは寿命が数百時間以下と短い。一方キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀灯は、白熱電球やハロゲンランプよりは寿命が長いものの、常に予備のランプを用意しておく必要があり、さらに寿命が尽きるときに破裂する虞もあった。
【0003】
このような従来の投射照明装置用ランプあるいは画像投射装置用ランプが有する問題を解消するために、近年、低消費電力で長寿命である発光ダイオード(LED)が注目され、発光ダイオードを光源とする投射照明装置が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0004】
発光ダイオードは、低消費電力で長寿命であるが、投射照明装置用光源として用いる際の最大の問題点は、1個の発光ダイオード素子から得られる光量が少ないという点である。そのため、発光ダイオードを光源とする投射照明装置の場合、白熱電球やハロゲンランプを用いた投射照明装置と同等の光量を得るためには、多数の発光ダイオード素子を使用し、これらの光を統合して、1本の光束、あるいは1本の光束とみなせる光束にする必要がある。しかしながら従来の発光ダイオードを光源とする投射照明装置では、多数の発光ダイオードを曲面上に並べることにより発光ダイオード光を統合したり、多数の発光ダイオードを、放出する光の方向を変えて、平面上に配列することにより発光ダイオード光の統合を試みている。このような構成では、各発光ダイオードからの光束を同一点に十分集中させ難く、その結果、投射照明装置の光利用効率が低く、投射光束を制御するのが困難という問題があった。また、これらの投射照明装置の光利用効率を改善するために、複数の発光ダイオードを並列状に並べ、各発光ダイオードから放射された光をそれぞれレンズアレイでほぼ平行光にした後、集光レンズで収束することによって発光ダイオード光を統合する方法も提案されているが、この方法においても投射光束を十分制御するのが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−307502号公報
【特許文献2】特開2005−38605号公報
【特許文献3】特開2005−158699号公報
【特許文献4】特開2007−52957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。すなわち本発明の主な目的は、複数の発光ダイオードを用いて、光利用効率を改善し、投射光束を制御可能な照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第一の側面に係る照明装置は、複数の発光ダイオードを面状に配列した発光ダイオードアレイと、前記発光ダイオードアレイからの光の進行方向において、前記発光ダイオードアレイの前方に各発光ダイオードに対応して配置された、各発光ダイオードから出た光束を平行光に近付けるよう変換するためのマイクロレンズの集合体であるレンズアレイと、前記レンズアレイの前方に配置され、前記レンズアレイを通過する光束群を収束して、前記発光ダイオードアレイの像を形成するための、前記マイクロレンズよりも相対的に口径の大きい集光レンズと、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって、前記集光レンズの光軸上もしくは光軸の近傍に結像されようとする光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向するための光束伝搬方向偏向素子とを備えることができる。これにより、指向性の強い発光ダイオード素子を利用した照明装置において、出力光を偏向させてスポットライトのように光束を制御した照明光を得ることが可能となる。
【0008】
また、第2の側面に係る照明装置によれば、前記光束伝搬方向偏向素子を、前記発光ダイオードアレイを構成する任意の一の発光ダイオードから出射され、該任意の発光ダイオードと対応する前記マイクロレンズと前記集光レンズとにより決定される方向に進む光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向させるためのプリズムの集合体とできる。これにより、レンズなどの光学素子に比べ容易に構成可能なプリズムを、光束伝搬方向偏向素子として用いて出力光の偏向を行うため、簡素で安価なLED照明を実現できる。
【0009】
さらに、第3の側面に係る照明装置によれば、前記光束伝搬方向偏向素子を、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって、前記集光レンズの光軸上もしくは光軸の近傍に結像され、その後発散する光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向するよう構成できる。これにより、一旦結像された光束を光束伝搬方向偏向素子で偏向できるため、光束の制御が容易となる。
【0010】
さらにまた、第4の側面に係る照明装置によれば、前記光束伝搬方向偏向素子を、前記集光レンズの前方で、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって結像される仮想点光源よりも前方に配置できる。これにより、仮想点光源よりも前方に配置した光束伝搬方向偏向素子で光束を容易に制御できる。
【0011】
さらにまた、第5の側面に係る照明装置によれば、前記発光ダイオードアレイが、複数の発光ダイオードを略同一平面上に配置しており、前記レンズアレイが、各発光ダイオードから出射された光束を、前記マイクロレンズでほぼ平行光にすると共に、該平行光の各々が互いに平行となるよう構成できる。
【0012】
さらにまた、第6の側面に係る照明装置によれば、前記発光ダイオードアレイが、複数の発光ダイオードを略同一球面上に配置しており、前記レンズアレイが、各発光ダイオードから出射された光束を、前記マイクロレンズで拡散を抑制しつつ、前記集光レンズの光軸から離れる方向に放射させ、各マイクロレンズを透過する放射光の光軸の延長線が、前記発光ダイオードアレイの後方で略一致するよう構成できる。
【0013】
さらにまた、第7の側面に係る照明装置によれば、前記光束伝搬方向偏向素子が、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって、前記集光レンズの光軸上もしくは光軸の近傍に結像される前段で、光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向するよう構成できる。
【0014】
さらにまた、第8の側面に係る照明装置によれば、前記光束伝搬方向偏向素子を、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって結像される仮想点光源と、前記集光レンズとの間に配置できる。
【0015】
さらにまた、第9の側面に係る照明装置によれば、前記発光ダイオードアレイが、多数の発光ダイオードが同心円状に配列されたものであり、前記光束伝搬方向偏向素子を、角錘プリズム状とできる。
【0016】
さらにまた、第10の側面に係る照明装置によれば、前記発光ダイオードアレイが、多数の発光ダイオードが同心円状に配列されたものであり、前記光束伝搬方向偏向素子を、円錐プリズム状とできる。
【0017】
さらにまた、第11の側面に係る照明装置によれば、さらに前記光束伝搬方向偏向素子の前方に配置される、出力光の発散角を制御するための出力レンズを備えることができる。
【0018】
発光ダイオードは、一般に市販されている砲弾型発光ダイオードや表面実装型発光ダイオードが利用できる。好ましくは、投射光束の制御性を向上させるため、チップをプラスチックレンズで覆っていない形態や、プラスチックレンズ内に拡散剤を混入していないタイプのLED素子を利用する。
【0019】
レンズアレイは、各発光ダイオードの前方に配置され、各発光ダイオードから出た発散光束をほぼ平行光にするためのマイクロレンズの集合体である。
【0020】
集光レンズは、前記レンズアレイの前方に配置され、前記レンズアレイから出て来た光束群を収束して、発光ダイオードアレイの像をその光軸上もしくは光軸の近傍に形成するための相対的に口径の大きいレンズであり、基本的には単体レンズでよいが、小さなプリズムの集合体、角錘プリズム、円錘プリズム(一般には「アキシコン」と呼ばれている)のいずれかの屈折力に高精度で適合させる必要がある場合は、焦点距離を可変にできることが望ましい。
【0021】
光束伝搬方向偏向素子は、発光ダイオードアレイのなかの任意の一つの発光ダイオードから出て、その任意の発光ダイオードに対応させられているマイクロレンズと相対的に口径の大きい集光レンズにより決定される方向に進む光束の伝搬方向を前記集光レンズの光軸にほぼ沿う方向に偏向させるための小さなプリズムの集合体である。発光ダイオードアレイが、多数の発光ダイオードが同心円状に配列されたものである場合は、光束伝搬方向偏向素子として角錘プリズムを用いることができ、偏向される光束の質が若干低下しても構わない場合には、円錐プリズムを用いることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発光ダイオードを用いる投射型の照明装置において、複数の発光ダイオードを用いながら、単一の発光ダイオードを用いて得られる光束の制御性とほぼ同等の制御性能が得られる照明装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る照明装置の光学系を示す説明図である。
【図2】図1の光学系で仮想点光源近傍を拡大した拡大図である。
【図3】図1の光学系で発光ダイオードを同心円状に配列した発光ダイオードアレイを示す平面図である。
【図4】図3の発光ダイオードアレイに対応する角錐プリズムを示す斜視図である。
【図5】発光ダイオードを同心円状に2重に配列した発光ダイオードアレイを示す平面図である。
【図6】図5の発光ダイオードアレイに対応する角錐プリズムを示す斜視図である。
【図7】発光ダイオードを同心円状に配列した発光ダイオードアレイに対応する円錐プリズムを示す斜視図である。
【図8】発光ダイオードを同心円状に2重に配列した発光ダイオードアレイに対応する円錐プリズムを示す斜視図である。
【図9】実施形態1において、発光ダイオードアレイの像が集光レンズの光軸上に形成されない例を示す説明図である。
【図10】実施形態2に係る照明装置の光学系を示す説明図である。
【図11】図10の光学系で仮想点光源近傍を拡大した拡大図である。
【図12】図1の光学系で、光束伝搬方向偏向素子を発光ダイオードアレイの像が形成される前の位置に挿入した例を示す説明図である。
【図13】実施形態3に係る照明装置の光学系を示す説明図である。
【図14】図12の光束伝搬方向偏向素子の形状を示す説明図である。
【図15】図13の光束伝搬方向偏向素子の形状を示す説明図である。
【図16】図3の発光ダイオードアレイを用いた例で光束伝搬方向偏向素子として利用可能な凹型の角錐プリズムを示す斜視図である。
【図17】図5の発光ダイオードアレイを用いた例で光束伝搬方向偏向素子として利用可能な凹型の角錐プリズムの斜視図である。
【図18】図3の発光ダイオードアレイを用いた例で光束伝搬方向偏向素子として利用可能な凹型の円錐プリズムの斜視図である。
【図19】図5の発光ダイオードアレイを用いた例で光束伝搬方向偏向素子として利用可能な凹型の円錐プリズムの斜視図である。
【図20】図2の光束伝搬方向偏向素子の姿勢を逆向きとした配置例を示す説明図である。
【図21】図11の光束伝搬方向偏向素子の姿勢を逆向きとした配置例を示す説明図である。
【図22】図14の光束伝搬方向偏向素子の姿勢を逆向きとした配置例を示す説明図である。
【図23】図15の光束伝搬方向偏向素子の姿勢を逆向きとした配置例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、照明装置を例示するものであって、本発明は、照明装置を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。なお、光学系においては一般に光源側すなわち光の来る方向を前方と呼び、光源から離れる側すなわち光の進む方向を後方と呼ぶが、本明細書においては逆に光の進行方向を前方、光源側を後方と呼ぶことにする。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る照明装置の光学系を示す説明図である。この照明装置は、発光ダイオードアレイ1と、レンズアレイ2と、発光ダイオードアレイ1の中の各発光ダイオードの像を形成するための相対的に口径の大きい集光レンズ3と、レンズアレイ2と集光レンズ3とにより集光レンズ3の光軸31の上に結像され、その後発散する光束の伝搬方向を、光軸31にほぼ沿う方向に偏向するための光束伝搬方向偏向素子4とで構成されている。光束伝搬方向偏向素子4を通過した光束の発散角は、出力レンズ5により制御される。この出力レンズ5は、必要に応じて光束伝搬方向偏向素子4を通過した光束の発散角を制御するためのものであって、省略してもよい。
【0026】
発光ダイオードアレイ1は、複数の発光ダイオードを2次元に配列したもので、原理的にはどのように配列しても構わない。
【0027】
レンズアレイ2は、発光ダイオードアレイ1の前方(図1では上側)に、各発光ダイオードに対応するように配列されたマイクロレンズの集合体である。
【0028】
集光レンズ3は、レンズアレイ1の前方に置かれ、レンズアレイ1から出て来た光束群を収束して、各発光ダイオードの像を形成するための相対的に口径の大きいレンズである。
【0029】
発光ダイオードアレイ1、レンズアレイ2及び集光レンズ3は、本例の場合は、光学系の構築を容易にするために、以下のように配置されている。すなわち、発光ダイオードアレイ1の中の、例えば上端に位置する発光ダイオード11aに注目すると、この発光ダイオード11aから出る光束は集光レンズ3の光軸31に平行な方向に放射されるよう調整される。発光ダイオード11aに対応するマイクロレンズ21aは、集光レンズ3の光軸31に平行な方向に伝搬するよう、光束をほぼ平行な光に変換する。集光レンズ3はその光束を収束して、光軸31の上もしくは近傍に結像する。このようにして、発光ダイオードアレイ1から放射される全ての光束は、集光レンズ3の光軸31の上もしくは近傍に収束し、仮想点光源PSを形成する。ただ、このままでは、収束した後、各発光ダイオードからの光束は再び別々の方向に発散していく。光束は点光源PSから離間するほど広範囲に拡散してしまうので、そのままでは所定の領域において略均一な照度を提供できない。そこで、光束伝搬方向偏向素子4を用いて、発散する光束の伝搬方向を、集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向する。
【0030】
図2に、図1の仮想点光源PS近傍を拡大して光の進行方向を模式化した説明図を示す。この図に基づいて、光束伝搬方向偏光素子の動作原理を説明する。図2に示すように、光の進行方向において、仮想点光源PSの前方に配置された光束伝搬方向偏光素子4は、点光源PS側より入光した光の進行方向を屈折させる。具体的に光束伝搬方向偏光素子4は、発光ダイオードアレイ1の中の任意の一つの発光ダイオード、例えば発光ダイオード11aから出て、発光ダイオード11aに対応して設けられたマイクロレンズ21aと集光レンズ3により決定される方向に進む光束の伝搬方向を、集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向させる。この光束伝搬方向偏光素子4は、複数の発光ダイオードからの光束の伝搬方向を、光軸31に平行な方向に偏向するプリズム41aから構成される。プリズム41aは、光が入光される領域と、自身を通過後に誘導させたい屈折方向に応じて、その形状が決定される。光束伝搬方向偏向素子4は、そのようなプリズムを全ての発光ダイオードからの光束に対して設計製作し、それらを集合させることによって製作できる。
【0031】
光束伝搬方向偏向素子4は、種々の形状とできる。例えば発光ダイオードアレイ1として発光ダイオードを同心円状に配列したものを用いることによって、製作容易な光学素子とできる。すなわち、図3に示すように、発光ダイオードアレイ1を同心円状に配列したものにすれば、光束伝搬方向偏向素子4は、図4に示すように、角錐プリズムとできる。このような角錐プリズムは製造が比較的容易である。なお図3および図4には、発光ダイオードアレイ1が6個の発光ダイオードから成る例を示したが、該構成に限らず、発光ダイオードを5個以下、あるいは7個以上とすることも可能であることは言うまでもない。
【0032】
また他の例として、発光ダイオードを図5に示すように、同心円状に2重に配列した場合は、光束伝搬方向偏向素子4は、図6に示すような二段に屈曲した形状の角錐プリズムとできる。これによって、発光ダイオードアレイ1からの光束の伝搬方向を集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向することができる。なお、図5および図6には、発光ダイオードアレイ1が内側に6個、外側に6個の計12個の発光ダイオードから成る例を示したが、これも例示であって、発光ダイオードの数や配置例は、この構成に限定されるものでない。例えば、発光ダイオードを内周側と外周側で千鳥状となるようオフセット配置することもできる。
【0033】
さらに他の例として、図示しないが発光ダイオードを同心円状に3重以上に配列した場合も、同様の光束伝搬方向偏向素子を用いることによって、発光ダイオードアレイ1からの光束の伝搬方向を集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向することができる。もちろん、4重以上の同心円状に配置したり、あるいは円状でなく三角形、四角形、六角形状などの多角形状に配置することも可能であることは言うまでもない。
【0034】
一方でさらに他の例として、発光ダイオードアレイ1として発光ダイオードを同心円状に配列したものを用いた場合、光束伝搬方向偏向素子4として、図7に示すような円錐プリズムを用いても、実用上十分な程度に発光ダイオードアレイ1からの光束の伝搬方向を集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向することができる。
【0035】
また発光ダイオードを、図5に示すように、同心円状に2重に配列した場合は、図8に示すような二段に折曲した形状の円錐プリズムを用いることによって、発光ダイオードアレイ1からの光束の伝搬方向を集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向することができる。
【0036】
以上のようにして、発光ダイオードアレイ1からの光束を、光束伝搬方向偏向素子4で集光レンズ3の光軸31にほぼ沿う方向に偏向させることが可能となる。偏向された光はさらに、出力レンズ5により発散角を制御できる。
【0037】
図1に示した実施形態では、発光ダイオードアレイ1の像は、レンズアレイ2と集光レンズ3により集光レンズ3の光軸31上に形成する構成を示したが、これは必須ではない。例えば図9に示すように、発光ダイオードアレイ1の像が、レンズアレイ2と集光レンズ3により集光レンズ3の光軸31の上に形成されず、集光レンズ3の光軸31の近傍に形成された場合であっても、何ら支障なく、光束伝搬方向偏向素子4を通過した光束を、光軸31にほぼ沿う方向に伝搬させることができる。
【0038】
すなわちこの照明装置は、厳密に集光する点光源を得る必要がないため、発光ダイオードや集光レンズ3、光束伝搬方向偏光素子4の配置位置を高精度に制御する必要がないという優れた利点を有する。いいかえると、焦点を定位置に結ぶような像の形成が不要であることから、光学設計を柔軟に行うことができ、設計の労力や製造コストを大幅に低減できるという極めて実用的な利点を有する。例えば照明装置は、集光レンズ3と光束伝搬方向偏光素子4とを、それぞれの中心軸が離間するよう配置させてもよい。すなわち、照明装置の光束伝搬方向偏光素子4は、集光レンズ3と略並行に位置しながら、集光レンズ3の中心軸から偏位して配置できる。この集光レンズ3と光束伝搬方向偏光素子4との偏位は、光束伝搬方向偏光素子4が、少なくとも集光レンズ3を通過した略全ての光を入光できる程度とする。これにより最終的に得られる光束領域の照度をほぼ均一としながら、所定の領域における光束量を高められる。
【0039】
図10に、本発明の実施形態2に係る照明装置の光学系を示す。この照明装置は、発光ダイオードアレイ1と、レンズアレイ2と、各発光ダイオードの像を形成するための相対的に口径の大きい集光レンズ3と、レンズアレイ2と集光レンズ3とにより集光レンズ3の光軸31の上もしくは近傍に結像され、その後発散する光束の伝搬方向を光軸31にほぼ沿う方向に偏向するための光束伝搬方向偏向素子4とを備える。この照明装置も、図1および図9に示した照明装置とほぼ同様の構成であり、同じ部材については同じ符号を付して詳細説明を省略する。
【0040】
図10の照明装置では、各発光ダイオードに対応するマイクロレンズ21aの屈折方向が異なる。図1等の例では、発光ダイオードアレイ1の中の、例えば発光ダイオード11aから出る光束は集光レンズ3の光軸31に略平行な方向に放射され、レンズアレイ2の中の発光ダイオード11aに対応するマイクロレンズ21aにより集光レンズ3の光軸31に略平行な方向に伝搬するほぼ平行な光に変換されていた。これに対して図10の照明装置では、発光ダイオードアレイ1、レンズアレイ2および集光レンズ3において、発光ダイオードアレイ1の中の、例えば発光ダイオード11aから出る光束が集光レンズ3の光軸31から離れる方向に放射される。その後、レンズアレイ2の中の発光ダイオード11aに対応するマイクロレンズ21aと集光レンズ3により、集光レンズ3の光軸31上もしくは近傍に発光ダイオード11aの点像を形成するように、その位置や焦点距離が選択される。このような図10の構成では、図1等に比べ発光ダイオード同士の間隔を小さくできるので、小型化に適しており、設計の自由度が大きいという利点が得られる。すなわち、発光ダイオードアレイを構成する発光ダイオード同士の間隔が制限されている場合に、マイクロレンズの口径の選択の自由度が高いメリットがある。
【0041】
また、図1は図10の発光ダイオードアレイを無限遠に位置させた形態と捉えることができる。この観点からは、図1の構成では仮想点光源PSが光軸上からずれやすく、調整作業が複雑であるのに対し、図10の構成では集光レンズ3の焦点(集光レンズの前方側の仮想点光源PSと後方側の仮想点光源PS’)が1対1であるため、調整作業が容易であるという利点も得られる。
【0042】
この実施形態2に係る照明装置においても、上述した図1に対する図2と同様、発光ダイオードから放射されて、マイクロレンズと集光レンズによって決定される方向に進む光束の伝搬方向を、光束伝搬方向偏向素子により集光レンズの光軸にほぼ沿う方向に偏向させることができる。この様子を、図11の拡大図に示す。この図においては、図10の仮想の点光源PS近傍を拡大して、光の進行方向を模式化して説明している。この動作原理は、図2で説明したものと基本的に同じであるので、動作原理の説明は省略する。
【0043】
上記実施形態1及び2の例では、光束伝搬方向偏向素子4は、発光ダイオードアレイ1の像がレンズアレイ2と集光レンズ3により集光レンズ3の光軸31の上もしくは近傍に形成された後に、光束が入射するように挿入されている。ただ、この構成に限られず、例えば図12及び図13に示すように、発光ダイオードアレイ1の像が形成される手前の位置に光束伝搬方向偏向素子4を挿入しても構わない。この場合は、光束伝搬方向偏向素子4の形状を、それぞれ図14及び図15に示すように入射面側を凹状とする。
【0044】
発光ダイオードアレイ1として発光ダイオードを同心円状に配列したものを、図12及び図13の構成に用いる場合も同様となる。例えば図4に示す角錐プリズムに代えて、図16に示す凹型の角錐プリズム、あるいは図7に示す円錐プリズムの代わりに図17に示す凹型の円錐プリズムを用いる。また、発光ダイオードを同心円状に2重に配列した発光ダイオードアレイ1の場合は、図6に示す角錐プリズムに代えて図18に示す凹型の角錐プリズム、あるいは図8に示す円錐プリズムの代わりに図19に示す凹型の円錐プリズムを用いることができる。
【0045】
なお、上記実施形態1および2の例では、光束伝搬方向偏向素子4の動作原理の説明において、光束伝搬方向偏向素子4の形状として、下面側が凸状もしくは凹状になる場合を示した。ただ、光束伝搬方向偏向素子4の形状は、下面側で凸状もしくは凹状とした構成に限定するものではなく、例えば上面側を凸状もしくは凹状になるように設計製作しても同様に動作できることはいうまでもない。一例として、図2の光束伝搬方向偏向素子4に対して、上面側に凹凸を設けた例を図20に示す。この場合において、光束伝搬方向偏向素子4の上下を単に反転させた構成のみに限定するものでなく、光束の集束効果の得られる形状に適宜修正できる。同様に、図11の光束伝搬方向偏向素子4に対して図21、図14の光束伝搬方向偏向素子4に対して図22、図15の光束伝搬方向偏向素子4に対して図23に示すように構成することもできる。このように、光束伝搬方向偏向素子4として角錐プリズムもしくは円錐プリズムを使用する場合、それらの凸面あるいは凹面が上面側、下面側のいずれの姿勢としてもよい。
(実施形態3)
【0046】
さらにこのような凹状のプリズムで構成した光束伝搬方向偏向素子を、図10のような発光ダイオードアレイ1及びレンズアレイ2を傾斜させて配置した例に適用してもよい。このような変形例を実施の形態3として、図11、図13、図15、図21、図23に示す。これらの図に示す発光ダイオードアレイ1でも、各発光ダイオード11aから出る光束が集光レンズ3の光軸31から離れる方向に放射され、その後、レンズアレイ2の中の発光ダイオード11aに対応するマイクロレンズ21aと集光レンズ3により、集光レンズ3の光軸31上もしくは近傍に発光ダイオード11aの点像を形成するように、その位置や焦点距離が選択される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の照明装置は、自動車のヘッドライト、劇場のスポットライト等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1…発光ダイオードアレイ
2…レンズアレイ
3…集光レンズ
4…光束伝搬方向偏向素子
5…出力レンズ
11a、11b…発光ダイオード
21a、21b…マイクロレンズ
31…光軸
41a…プリズム
PS…仮想点光源
PS’…後方側の仮想点光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光ダイオードを面状に配列した発光ダイオードアレイと、
前記発光ダイオードアレイからの光の進行方向において、前記発光ダイオードアレイの前方に各発光ダイオードに対応して配置された、各発光ダイオードから出た光束を平行光に近付けるよう変換するためのマイクロレンズの集合体であるレンズアレイと、
前記レンズアレイの前方に配置され、前記レンズアレイを通過する光束群を収束して、前記発光ダイオードアレイの像を形成するための、前記マイクロレンズよりも相対的に口径の大きい集光レンズと、
前記レンズアレイと前記集光レンズとによって、前記集光レンズの光軸上もしくは光軸の近傍に結像されようとする光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向するための光束伝搬方向偏向素子と、
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記光束伝搬方向偏向素子が、前記発光ダイオードアレイを構成する任意の一の発光ダイオードから出射され、該任意の発光ダイオードと対応する前記マイクロレンズと前記集光レンズとにより決定される方向に進む光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向させるためのプリズムの集合体であることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照明装置であって、
前記光束伝搬方向偏向素子が、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって、前記集光レンズの光軸上もしくは光軸の近傍に結像され、その後発散する光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向するよう構成してなることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置であって、
前記光束伝搬方向偏向素子が、前記集光レンズの前方で、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって結像される仮想点光源よりも前方に配置されてなることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置であって、
前記発光ダイオードアレイが、複数の発光ダイオードを略同一平面上に配置しており、
前記レンズアレイが、各発光ダイオードから出射された光束を、前記マイクロレンズでほぼ平行光にすると共に、該平行光の各々が互いに平行となるよう構成してなることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項4に記載の照明装置であって、
前記発光ダイオードアレイが、複数の発光ダイオードを略同一球面上に配置しており、
前記レンズアレイが、各発光ダイオードから出射された光束を、前記マイクロレンズで拡散を抑制しつつ、前記集光レンズの光軸から離れる方向に放射させ、各マイクロレンズを透過する放射光の光軸の延長線が、前記発光ダイオードアレイの後方で略一致するよう構成してなることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項2に記載の照明装置であって、
前記光束伝搬方向偏向素子が、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって、前記集光レンズの光軸上もしくは光軸の近傍に結像される前段で、光束の伝搬方向を、前記集光レンズの光軸に略沿う方向に偏向するよう構成してなることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項3に記載の照明装置であって、
前記光束伝搬方向偏向素子が、前記レンズアレイと前記集光レンズとによって結像される仮想点光源と、前記集光レンズとの間に配置されてなることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項5に記載の照明装置であって、
前記発光ダイオードアレイが、多数の発光ダイオードが同心円状に配列されたものであり、前記光束伝搬方向偏向素子が、角錘プリズム状であることを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項5に記載の照明装置であって、
前記発光ダイオードアレイが、多数の発光ダイオードが同心円状に配列されたものであり、前記光束伝搬方向偏向素子が、円錐プリズム状であることを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項9に記載の照明装置であって、さらに、
前記光束伝搬方向偏向素子の前方に配置される、出力光の発散角を制御するための出力レンズを備えてなることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−49001(P2011−49001A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195989(P2009−195989)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(595026911)ヒビノ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】