説明

照明装置

【課題】所望の配光が容易に得られ、光照射効率の向上も図れる照明装置を提供する。
【解決手段】光源としてLED素子29を有する発光モジュール26を用いる。LED素子29からの光に含まれる熱が少ないため、発光モジュール26とレンズ43との間であって、レンズ43の面の近傍に、樹脂または紙にて形成された拡散フィルタ44を着脱可能に配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを用いて光を所定の配光で照射する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スタジオや舞台などの演出空間で使用される照明装置として、レンズを用いて光源の光を所定の配光で照射するスポットライトがある。
【0003】
このようなスポットライトでは、一般に光源としてハロゲンランプが用いられているが、このハロゲンランプのフィラメントにレンズのピントを合わせた状態で使用する場合、ハロゲンランプのフィラメントの形状をそのまま投影してしまい、照射光に光むらが発生してしまう。そこで、レンズに例えば亀甲加工やシボ加工などにて拡散処理を施したり、ハロゲンランプのガラス面にフロスト加工にて拡散処理を施し(例えば、特許文献1参照。)、光むらの発生を抑制するようにしている。また、レンズの前方に拡散フィルタを配置する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−311175号公報(第1頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、拡散フィルタを用いる場合、せっかくレンズで制御した配光を拡散フィルタで拡散させてしまうことになり、レンズを用いる効果を低減させてしまうことになる。また、拡散フィルタとしては、ポリカーボネートのような樹脂製のものが使用されるが、ランプからの熱により劣化するため、頻繁に交換する必要があった。なお、レンズの後方すなわちランプ側に拡散フィルタを配置する場合、拡散フィルタは、ハロゲンランプの光を受けて温度が高くなるため、耐熱性に優れたガラス製以外のものは使用できなかった。
【0006】
また、ハロゲンランプのフィラメントにレンズのピントを合わせた状態で使用する場合に対応してレンズやハロゲンランプに拡散処理を施した場合、加工が面倒で、高価なものとなってしまう。また、レンズや拡散フィルタとして汎用性のないものとなってしまい、用途に応じて拡散フィルタを交換するといったことが実際上困難になる。
【0007】
このように、従来のスポットライトでは、ユーザーによって、所望の配光を容易に得ることができなかったり、高価になってしまったり、また、光照射効率の向上ができない問題がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、比較的簡単な構成で、所望の配光が容易に得られ、光照射効率の向上も図れる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の照明装置は、半導体発光素子を有する発光モジュールと;発光モジュールの半導体発光素子の光を所定の配光で照射するレンズと;発光モジュールとレンズとの間であって、レンズの面の近傍に配置される樹脂および紙の少なくともいずれか一方にて形成された拡散フィルタと;を具備しているものである。
【0010】
本発明および以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0011】
半導体発光素子は、例えば、LED素子やEL素子などが用いられる。
【0012】
発光モジュールは、例えば、アルミニウムなどの金属やセラミックスなどの熱伝導性のよい材料で形成された基板に、半導体発光素子が実装される。LED素子の場合には、複数のLED素子が基板上に実装されるCOB(Chip On Board)モジュールでもよいし、1つのLED素子が搭載された接続端子付きのSMD(Surface Mount Device)パッケージを実装したモジュールであってもよい。なお、発光モジュールを放熱体と組み合わせ、半導体発光素子から発生する熱を放熱体によって効率よく放熱させるようにしてもよい。
【0013】
レンズは、半導体発光素子からの光に含まれる熱が少ないことから樹脂にて形成されたものでもよいし、ガラスにて形成されたものでもよい。また、レンズは、1枚でもよいし、複数枚を光軸方向に沿って配置してもよい。
【0014】
拡散フィルタは、例えば、光を拡散するものであればカラーフィルタなどでもよく、材質についてはポリカーボネートなどの樹脂、または紙のいずれでもよく、あるいは樹脂と紙との複合材でもよく、一般に、市販されていて、安価で多く流通しているシート状フィルタを用いることができる。
【0015】
レンズの面の近傍とは、レンズの発光モジュール側の焦点よりレンズ側である。このように配置することにより、拡散フィルタにて拡散されてレンズに入光しない光を少なくすることができる。したがって、拡散フィルタがレンズの面に接触する状態や、拡散フィルタがレンズの面から少し離反して対向している状態が最も好ましい。また、複数のレンズを用いる場合には、拡散フィルタを最も発光モジュール側のレンズの近傍またはレンズとレンズとの間に設けることができるが、最も照射側のレンズの近傍に拡散フィルタを配置し、拡散フィルタで拡散された光の多くを最も照射側のレンズに入射させることで、光照射効率を向上させることが好ましい。
【0016】
請求項2記載の照明装置は、請求項1記載の照明装置において、拡散フィルタは、着脱可能に配置されるものである。
【0017】
拡散フィルタの着脱は、例えば、レンズを保持するホルダに着脱してもよいし、拡散フィルタ用に設けられたホルダに着脱してもよいし、接着テープで照明装置の筐体などに貼り付けるようにしてもよく、樹脂や紙であることから着脱の自由度が高い。
【0018】
請求項3記載の照明装置は、請求項1または2記載の照明装置において、レンズおよび拡散フィルタを一体に光軸方向に移動させる移動機構を具備しているものである。
【0019】
移動機構は、レンズを光軸方向に移動させてレンズと発光モジュールとの距離を可変させ、配光を調整するものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の照明装置によれば、半導体発光素子を有する発光モジュールを用いることにより、半導体発光素子からの光に含まれる熱が少ないことから、発光モジュールとレンズとの間であって、レンズの面の近傍に樹脂および紙の少なくともいずれか一方にて形成された拡散フィルタを配置することができるため、拡散フィルタを透過した光の多くをレンズに入射でき、光照射効率を向上でき、したがって、比較的簡単な構成で、所望の配光が容易に得られ、光照射効率の向上も図ることができる。
【0021】
請求項2記載の照明装置によれば、請求項1記載の照明装置の効果に加えて、拡散フィルタを着脱可能に配置するため、ユーザーによって、一般に市販されていて安価で多く流通している所望の拡散フィルタを容易に入手できるとともに容易に交換することができる。
【0022】
請求項3記載の照明装置によれば、請求項1または2記載の照明装置の効果に加えて、移動機構によってレンズを光軸方向に移動させて配光を調整する際、拡散フィルタもレンズと一体に移動させるため、レンズと拡散フィルタとの位置関係を常に一体に保ち、光照射効率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態を示す照明装置の一部を省略した側面方向から見た断面図である。
【図2】同上照明装置の一部を省略した平面方向から見た断面図である。
【図3】同上照明装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
図3に示すように、照明装置11は、例えばスタジオや舞台などの照明に用いられるもので、器具本体12、この器具本体12をスタジオや舞台などの天井に設置されるバトンに対して吊下げ支持する器具支持体13、および光照射範囲を制限するバンドア14を備えている。
【0026】
器具本体12は、器具支持体13によって支持される光源ユニット16、この光源ユニット16の前部に前後方向である光軸方向に沿って移動可能に支持された光学系ユニット17、およびこの光学系ユニット17を光源ユニット16に対して光軸方向に移動させる移動機構18を備えている。
【0027】
図1および図2に示すように、光源ユニット16は、放熱性に優れた例えば金属材料にて形成された光源ケース21を有し、この光源ケース21内に、光源22、電源ユニット23および点灯ユニット24が前側から後側に順に配置されている。
【0028】
光源22は、発光モジュール26、およびこの発光モジュール26を取り付けた放熱体27を備えている。発光モジュール26は、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウムなどの金属あるいはセラミックスなどの材料で形成されたモジュール基板28を有し、このモジュール基板28の前面に、複数の半導体発光素子としてのLEDチップであるLED素子29が実装され、さらに、複数のLED素子29を覆って蛍光体層30が形成されている。したがって、発光モジュール26は、COB(Chip On Board)モジュールで構成されている。そして、例えば、LED素子29は青色光を発し、蛍光体層30はLED素子29が発した青色光によって励起されて主に黄色光を発する蛍光体を含有したシリコーン樹脂で形成され、これにより、蛍光体層30の表面から青色光と黄色光とが混色された白色系の光が放出される。
【0029】
放熱体27は、例えば、熱伝導性および放熱性に優れたアルミダイカストで形成され、前面に発光モジュール26のモジュール基板28の背面が密着して取り付けられる。放熱体27の後部には、上下方向に沿って突出されるとともに水平方向に間隙を開けて突出される複数の放熱フィン32が形成されている。放熱体27の前面が光源ケース21の前面板の背面に取り付けられている。
【0030】
光源ケース21の前面には発光モジュール26が臨む開口部34が形成され、光源ケース21の上面および下面には通気口35が形成されている。これら上下の通気口35によって、光源ケース21内に放熱体27、電源ユニット23および点灯ユニット24を通じて上下方向に空気が流通する通気路が形成されている。また、光源ケース21の両外側面には、器具支持体13によって支持される支持部材36が取り付けられている。
【0031】
電源ユニット23は、光源ケース21に設けられた電源接続部37に接続される電源線を通じて交流電源を入力し、点灯用の直流電源に変換して点灯ユニット24に供給するように構成されている。
【0032】
点灯ユニット24は、電源ユニット23から点灯用の直流電源の供給を受け、光源ケース21に設けられたコネクタ38に接続される信号線を通じて調光信号を含む制御信号を入力し、PWM制御などでLED素子29を調光点灯させるように構成されている。
【0033】
また、光学系ユニット17は、例えば金属材料にて形成された光学系ケース41、およびこの光学系ケース41を光源ユニット16に対して光軸方向に移動可能に支持する支持機構42を有し、光学系ケース41内に、レンズ43および拡散フィルタ44が配置されている。
【0034】
光学系ケース41は、後方に開口する筒状で、光源ユニット16の光源ケース21の正面視の外形より少し大きく、後部側が光源ユニット16の光源ケース21の周囲に配置され、光軸方向に移動可能とする。光学系ケース41の両側面には、光源ケース21の両側の支持部材36との干渉を防ぐための溝部46が前後方向に沿って形成されている。
【0035】
光学系ケース41の前面には光が出射する円形の照射開口47が形成され、光学系ケース41の前端周囲にバンドア14を着脱可能に取り付けるバンドア取付部48(図3参照)が設けられている。
【0036】
支持機構42は、光源ユニット16の光源ケース21の前面に取り付けられたガイド板50、このガイド板50の周辺部の複数箇所に取り付けられた光軸方向に沿って円筒状のスライド受部材51、およびこれら各スライド受部材51に光軸方向に沿ってスライド可能に支持されたスライド軸52を備えている。ガイド板50には、発光モジュール26が臨む開口部50aが形成されている。各スライド軸52は、光の照射に障害とならない周辺域に配置されており、各スライド軸52の前端が光学系ケース41の前面にねじ止め固定され、各スライド軸52の後端にはガイド板50との当接によって光学系ユニット17の前進限界位置を規制するストッパとしてのねじ53が固定されている。
【0037】
レンズ43は、例えば、板状で、LED素子29からの光に含まれる熱が少ないことから透光性を有する樹脂材料によって形成することができるが、ガラス材料で形成してもよい。レンズ43は、支持部材としてのホルダ55の前面側に取り付けられ、このホルダ55によって光学系ケース41内に取り付けられている。ホルダ55の前面側にレンズ43の両側および下側の周辺部を支持するレンズ支持枠を設け、このレンズ支持枠の上方からレンズ43を着脱可能に支持するようにしてもよい。ホルダ55には、LED素子29からの光が通過する開口部56が形成されている。
【0038】
拡散フィルタ44は、例えば、光拡散性を有し、この拡散性を有すればカラーフィルタなどでもよく、材質についてはポリカーボネートなどの樹脂、または紙のいずれでもよく、あるいは樹脂と紙との複合材でもよく、一般に、市販されていて、安価で多く流通しているシート状フィルタを用いることができる。すなわち、発光モジュール26からの白色系の光には赤外線がほとんど含まれておらず、一方、ポリカーボネートなどの樹脂材の耐熱温度は120℃程度であるため、このようなシート状フィルタの使用が可能である。
【0039】
拡散フィルタ44は、光学系ケース41内に着脱可能で、発光モジュール26とレンズ43との間であって、レンズ43の面の近傍に配置されている。このレンズ43の面の近傍とはレンズ43の発光モジュール26側の焦点よりレンズ43側であり、レンズ43と接する場合も含まれる。
【0040】
拡散フィルタ44の取り付けは、例えば、ホルダ55の背面側に拡散フィルタ44の両側および下側の周辺部を支持するフィルタ支持枠を設け、このフィルタ支持枠の上方から拡散フィルタ44を着脱可能としてもよし、接着テープなどでホルダ55に貼り付けるようにしてもよい。
【0041】
拡散フィルタ44の着脱は、例えば、光学系ケース41の上面に設けられたスリットから拡散フィルタ44を着脱するようにしたり、光学系ケース41の上面に開閉可能に設けられたカバーを開けて着脱するようにしてもよい。
【0042】
また、移動機構18は、光学系ケース41の底部に前後方向に沿って取り付けられたラック61、光源ケース21の底部にブラケット62によって回転可能に取り付けられてラック61に噛合するピニオン63、およびこのピニオン63の軸に連結されてピニオン63を回転操作するハンドル64を備えている。ピニオン63の軸の下端は光学系ケース41の底部に光軸方向に沿って形成された長溝を貫通され、ハンドル64はそのピニオン63の軸の下端に取り付けられて光学系ケース41の下側に配置されている。
【0043】
そして、このように構成された照明装置11において、点灯ユニット24に、電源ユニット23から直流電源が供給されるとともに、調光信号を含む制御信号が入力されることにより、制御信号に応じて例えばPWM制御などで各発光モジュール26の各LED素子29を調光点灯させる。
【0044】
発光モジュール26の各LED素子29の点灯により放出される光は、光学系ユニット17の光学系ケース41内に入り、拡散フィルタ44およびレンズ43を順に透過することにより、拡散フィルタ44で例えば拡散されてレンズ43で集光された光が光照射対象に照射される。
【0045】
また、照明装置11からの光を照射する配光を変える場合には、移動機構18のハンドル64を回転操作することにより、ピニオン63とラック61との噛合を介して、光学系ユニット17が光源ユニット16に対して前後方向に移動し、これにより、レンズ43と発光モジュール26との距離が変化し、配光を調整できる。
【0046】
また、この照明装置11では、LED素子29を有する発光モジュール26を用いており、LED素子29からの光に含まれる熱が少ないことから、発光モジュール26とレンズ43との間に、樹脂または紙で形成されたシート状の拡散フィルタ44を配置することができる。
【0047】
この樹脂または紙で形成されたシート状の拡散フィルタ44は、一般に市販されていて安価で多く流通しているため、所望の拡散フィルタ44を容易に入手することができ、しかも、取扱性が容易で、ユーザーによって容易に交換することができる。
【0048】
そのため、例えば、発光モジュール26にレンズ43のピントを合わせた状態で使用する場合には、拡散性の高い拡散フィルタ44を用いることにより、照射光に光むらが生じるのを防止でき、また、発光モジュール26にレンズ43のピントが合わない状態で使用する場合には、拡散性の低い拡散フィルタ44を用いることにより、所定の配光範囲に照射する光量を増加し、光照射効率を向上できる。
【0049】
したがって、拡散フィルタ44の選択によって、所望の配光が容易に得られ、光照射効率の向上も図ることができる。
【0050】
また、拡散フィルタ44を発光モジュール26に対向するレンズ43の面の近傍に配置するため、拡散フィルタ44を透過した光の多くをレンズ43に入射でき、光照射効率を向上できる。
【0051】
また、移動機構18によってレンズ43を光軸方向に移動させて配光を調整する際、拡散フィルタ44もレンズ43と一体に移動させるため、レンズ43と拡散フィルタ44との位置関係を常に一体に保ち、光照射効率を維持できる。
【符号の説明】
【0052】
11 照明装置
18 移動機構
26 発光モジュール
29 半導体発光素子としてのLED素子
43 レンズ
44 拡散フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を有する発光モジュールと;
発光モジュールの半導体発光素子の光を所定の配光で照射するレンズと;
発光モジュールとレンズとの間であって、レンズの面の近傍に配置される樹脂および紙の少なくともいずれか一方にて形成された拡散フィルタと;
を具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
拡散フィルタは、着脱可能に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
レンズおよび拡散フィルタを一体に光軸方向に移動させる移動機構を具備している
ことを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−22874(P2012−22874A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159614(P2010−159614)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】