説明

照明装置

【課題】照明装置の照明光の輝度を損なうことなく色むらを低減する。
【解決手段】光源12の光軸Cを中心として対称に配置される複数のプリズムを有するレンズシート14の、光源12の光軸Cを基準位置として内側に配置される第1のレンズ群14Aに含まれる、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面16aを有する複数のプリズム16によって、光源12からの出射光Lが、レンズシート14から出射する際の光路は、光源12の光軸Cに対して外側へと偏向される。そして、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光と、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光との、混色が促される結果、照明装置10の光源12に、擬似白色発光ダイオード100を用いた場合に不可避の色むらが、軽減されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内照明等一般照明用の光源としては、白熱灯や蛍光灯を用いることが一般的であったが、今日の青色発光ダイオード(LED)の高性能化に伴い、シーリングライトやダウンライト等の光源にもLEDが用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
図7には、照明装置の光源として用いることが可能な、いわゆる擬似白色LED100が示されている。この擬似白色LED100は、発光素子としての青色発光LED102が底部に配置されたランプハウス104と、ランプハウス104の凹部を封止する透明樹脂106とを含み、透明樹脂106に、ガーネット(YAG)等の黄色蛍光体108を分散させたものである。そして、青色発光LED102から出射される青色光は、ランプハウス104の透明樹脂106内を拡散し、この際に黄色蛍光体108によって、黄色系の蛍光へと波長変換された状態で、便宜上、二点鎖線で示されるような出射光L(L1、L2)として、ランプハウス104の外部へと出射されるものである。なお、図7の符号103で示される部分は、電極端子である。
【0003】
又、擬似白色LED100からの出射光Lは、図8に示されるように、擬似白色LED100の前方に配置されたレンズシート110を介することで、必要な方向へと偏向され、照明装置として機能するものとなる。図8のレンズシート110は、擬似白色LED100の光軸Cを基準位置として、内側に配置される第1のレンズ群112が、屈折プリズムにより構成されている。又、第1のレンズ群112の外側に配置される第2のレンズ群114が、反射プリズム(TIR:Total Internal Reflection)レンズにより構成されているものである。
そして、第1のレンズ群112、第2のレンズ群114の双方によって、擬似白色LED100からの出射光Lの出射角度が、光軸Cと平行な方向へと偏向されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−220465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のごとく擬似白色LED100を光源として用いた照明装置の発光は、擬似白色LED100の光軸Cを基準として、中心部は若干青色を帯び、外縁部は若干黄色を帯びる傾向にある。これは、図7に符号L1で示される、擬似白色LED100の光軸Cと平行な光路をたどる出射光に対し、符号L2で示される、擬似白色LED100の光軸Cに対して傾斜した光路をたどる出射光の方が、黄色蛍光体108が分散された透明樹脂106を通過する光路長が長く、黄色蛍光体108によって黄色系の蛍光へと波長変換される割合が多くなることが原因である。
このような、照明光の色むらは、白熱灯や蛍光灯を用いた従来の照明装置では問題となっておらず、擬似白色LED100を光源として用いた照明装置特有の、品質低下要因となっている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、照明装置の照明光の輝度を損なうことなく色むらを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)発光素子及び蛍光体を有する光源と、該光源の光軸を中心として対称に配置される複数のプリズムを有するレンズシートとを含む照明装置であって、前記レンズシートは、少なくとも、前記光源の光軸を基準位置として内側に配置される第1のレンズ群と、該第1のレンズ群の外側に配置される第2のレンズ群とを含み、前記第1のレンズ群は、前記光源の光軸側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含む照明装置。(請求項1)。
【0009】
本項に記載の照明装置は、光源の光軸を中心として対称に配置される複数のプリズムを有するレンズシートの、光源の光軸を基準位置として内側に配置される第1のレンズ群に含まれる、光源の光軸側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムによって、光源からの出射光が、レンズシートから出射する際の光路が、光源の光軸に対して外側へと偏向される。ここで、偏向方向を制御するに際し、光源の光軸からの距離に応じて、傾斜面の傾斜角度を変化させるべくプリズムの高さを増大させる結果として、プリズムを構成する光軸と平行な面の面積を増大させることとなる。しかしながら、第1のレンズ群の傾斜面は、光源の光軸側を向いて傾斜していることから、プリズムを構成する光軸と平行な面に光源からの出射光が直接的に入射することはなく、光利用効率の低下を来たすものでもない。そして、レンズシートの、第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光と、第1のレンズ群の外側に配置される第2のレンズ群を介して出射される光源からの出射光との、混色が促されるものである。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記第1のレンズ群に含まれる複数のプリズムは、前記光源の光軸からの距離に応じて、前記傾斜面の傾斜角度が小さくなる態様で形成されている照明装置(請求項2)。
本項に記載の照明装置は、第1のレンズ群に含まれる複数のプリズムが、光源の光軸からの距離に応じて、傾斜面の傾斜角度が小さくなるように構成することで、第1のレンズ群に含まれる複数のプリズムによる、光源の光軸からの距離に応じた、偏向方向の制御がなされるものである。例えば、レンズシートの、第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光の出射角度が、光源の光軸からの距離に関わらず一定となるように、各プリズムの傾斜面の傾斜角度を、光源の光軸からの距離に応じて小さくするものである。
【0011】
(3)上記(1)(2)項において、前記第2のレンズ群は、複数の反射プリズムを含む照明装置(請求項3)。
本項に記載の照明装置は、第2のレンズ群に、複数の反射プリズムを含むことで、第1のレンズ群よりも光源の光軸から遠い領域において、第2のレンズ群を介して出射される光源からの出射光の出射角度が、光軸と平行な方向又は光源の光軸に接近する方向へと偏向されるものである。そして、レンズシートの、第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光と、第1のレンズ群の外側に配置される第2のレンズ群を介して出射される光源からの出射光との、混色が促されるものである。
【0012】
(4)上記(3)項において、前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群との間に、前記光源の光軸側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含む、第3のレンズ群が形成されている照明装置(請求項4)。
本項に記載の照明装置は、第1のレンズ群と第2のレンズ群との間の、第3のレンズ群によっても、光源からの出射光が偏向されるものである。ここで、第3のレンズ群は、光源の光軸側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面を有することから、光源からの出射光が、第3のレンズ群の傾斜面に照射されて屈折し、レンズシートから出射する際の光路が、第1のレンズ群を介する出射光とは逆に光源の光軸方向、又は、光源の光軸方向と平行な方向へと偏向されるものである。そして、レンズシートの、第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光と、第1のレンズ群の外側に配置される第2のレンズ群を介して出射される光源からの出射光に、更に、第1のレンズ群と第2のレンズ群との間の、第3のレンズ群を介して出射される光源からの出射光とが合わさり、更なる混色が促されるものである。
【0013】
(5)上記(1)(2)項において、前記第2のレンズ群は、前記光源の光軸側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含む照明装置(請求項5)。
本項に記載の照明装置は、第2のレンズ群に、光源の光軸側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含むことで、第1のレンズ群よりも光源の光軸から遠い領域において、光源からの出射光が、第2のレンズ群の傾斜面に照射されて屈折し、レンズシートから出射する際の光路が、第1のレンズ群を介する出射光とは逆に光源の光軸方向、又は、光源の光軸方向と平行な方向へと偏向されるものである。そして、レンズシートの、第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光と、第1のレンズ群の外側に配置される第2のレンズ群を介して出射される光源からの出射光との、混色が促されるものである。
【0014】
(6)上記(1)から(5)項において、前記各レンズ群に含まれる複数のプリズムが、前記光源の光軸を中心として、回転対称をなす照明装置(請求項6)。
本項に記載の照明装置は、レンズシートの各レンズ群に含まれる複数のプリズムが、光源の光軸を中心として回転対称をなすことで、光源の光軸を中心とする放射方向の全方向に対し、レンズシートを介して出射される光源からの出射光の、混色が促されるものである。
【0015】
(7)上記(1)から(6)項において、前記発光素子は青色発光ダイオードであり、前記蛍光体は前記青色発光ダイオードから出射される青色光を黄色系の蛍光へと波長変換するものである照明装置(請求項7)。
本項に記載の照明装置は、光源が、青色発光ダイオードから出射される青色光を蛍光体によって黄色系の蛍光へと波長変換し、擬似白色発光ダイオードを構成するものである。そして、擬似白色発光ダイオードから出射される光源からの出射光が、上述の如く、レンズシートのプリズムによって混色が促されることで、擬似白色発光ダイオードに不可避の色むらを、軽減ないし解消するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る、照明装置の構成を模式的に示す断面図であり、(a)は全体的構成を、(b)は、(a)に示されるレンズシートの、光源の光軸を基準位置として内側に配置される第1のレンズ群を、光軸の片側の半分のみ示すものである。
【図2】図1に示される照明装置の、レンズシートを、光軸の片側の半分のみ模式的に示す断面図であり、(a)は図1に係るレンズシート、(b)は応用例に係るレンズシート、(c)は更に別の応用例に係るレンズシートである。
【図3】(a)は図1に示される照明装置の、レンズシートの第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光の光路を示す断面図であり、(b)、(c)、(d)は、比較例に係る光路を示す断面図である。
【図4】図1に示される照明装置の、レンズシートの第1のレンズ群を介して出射される光源からの出射光の出射角度と、光源の光軸からの距離との関係を示すグラフを、レンズシートの模式図と共に図示したものである。
【図5】(a)は、図4のグラフのうち、レンズシートの第1のレンズ群を介して出射される光源に係る範囲を部分的に抽出した図であり、(b)は、同第2のレンズ群を介して出射される光源に係る範囲を部分的に抽出した図である。
【図6】図1に示される照明装置の照明光の色度分布を、参考例に係る照明装置の照明光の色度分布と比較したグラフである。
【図7】擬似白色LED及びその出射光を示す断面図である。
【図8】従来の、擬似白色LEDを光源に用いた照明装置の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1に示されるように、本発明の実施の形態に係る照明装置10は、光源12と、光源12の光軸Cを中心として、対称に配置される複数のプリズムを有するレンズシート14とを含むものである。光源12は、図7に示される従来と同様の擬似白色LED100の構成を有しており、各部の構成については図7と同一の符号を付している。
【0018】
レンズシート14は、光源12の発光面12aの前方(光の出射方向)に配置されている。そして、レンズシート14の光源12との対向面14aには、光源12の光軸Cを基準位置として内側に配置される第1のレンズ群14Aと、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bとが形成されている。又、レンズシート14は、光源12の光軸Cを中心とする円盤状に形成されている。そして、各レンズ群14A、14Bに含まれる複数のプリズム(後述する)が、光源12の光軸Cを中心として、回転対称をなすように形成されているものである。
更に、光源12及びレンズシート14の外縁部を一体に覆う椀状又は有底円筒状の反射鏡(図示省略)を備えることで、照明装置10が構成されている。
【0019】
ここで、第1のレンズ群14Aは、図1(b)に拡大図示されるように、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面16aを有する複数のプリズム16を含むものである。本説明ではこのように、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面16aを有する複数のプリズム16からなるレンズ群14Aを「凹フレネルレンズ」ともいう。
そして、第1のレンズ群14Aに含まれる複数のプリズム161、162、163‥‥は、図1(b)に示されるように、光源の光軸からの距離に応じて、傾斜面16aの傾斜角度θ1、θ2、θ3‥‥が小さくなる態様(θ1>θ2>θ3)で形成されている。なお、図1(a)(b)の例では、光源12の発光面12aと、レンズシート14の光源12との対向面14aとの距離L(又は、発光面12aおよび対向面14aを結ぶ仮想線と光軸とがなす角度)を考慮しつつ、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源からの出射光の出射角度が、光源12の光軸Cからの距離に関わらず20°で一定となるように、各プリズム161、162、163‥‥の傾斜面16aの傾斜角度θ1、θ2、θ3‥‥が設定されている。なお、各プリズム161、162、163‥‥の傾斜面16aの傾斜角度θ1、θ2、θ3は、公知の関係式から容易に求めることが可能である。
【0020】
一方、レンズシート14の第2のレンズ群14Bには、複数の反射プリズム18が形成されている。
なお、光源12の発光面12aと、レンズシート14の光源12との対向面14aとの距離Yは、本発明の実施の形態では、光源12の発光面12aの直径dと略一致するように設定されているが、照明装置の照明光の輝度を損なうことなく色むらを低減し、かつ、照明装置10の小型化を促進する観点から、0.5d≦Y≦1.5の範囲に設定することが望ましい。又、同様の観点から、レンズシート14の直径Dについては、TAN−1(D/2L)<80°に設定することが望ましい。
【0021】
図2には、本発明の実施の形態に係る照明装置10のレンズシート14として採用し得る、レンズ群の各態様が、模式的に例示されている。まず、図2(a)は、図1に示される態様と同様であることから、説明を省略する。
又、図2(b)は、図2(a)に示される第1のレンズ群14Aと第2のレンズ群14Bとの間に、光源の光軸C側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面20aを有する複数のプリズムを含む、第3のレンズ群14Cが形成されているものである。本説明では、このように、光源12の光軸C側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面20aを有する複数のプリズム20からなるレンズ群14Cを「凸フレネルレンズ」ともいう。
【0022】
なお、第3のレンズ群14Cの設置範囲は、図2(b)に示されるように、図2(a)の例との比較において、第1のレンズ群14Aと第2のレンズ群14Bとの双方の設置範囲を狭めるようにして設置されていても良い。又、第1のレンズ群14Aの一部、すなわち、第1のレンズ群14Aの、第2のレンズ群14Bと隣接する一定幅の範囲を、第3のレンズ群14Cと置換する態様で設置しても良い。更には、第2のレンズ群14Bの一部、すなわち、第2のレンズ群14Bの、第1のレンズ群14Aと隣接する一定幅の範囲を、第3のレンズ群14Cと置換する態様で設置しても良い。
一方、図2(c)は、図2(a)に示される第2のレンズ群14Bを、図2(b)で説明したように、光源12の光軸C側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面20aを有する複数のプリズム20からなる、凸フレネルレンズに置換したものである。
【0023】
ここで、図1及び図2(a)に示された態様のレンズシート14を採用した照明装置10の、第1のレンズ群14Aの複数のプリズム16によって、光源12からの出射光Lが、レンズシートから出射する際の光路が偏向される様子を、図3において、他の形態のレンズシートと比較しながら説明する。
まず、図3(a)に示されるように、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを構成する複数のプリズム16が、凹フレネルレンズである場合には、光源12からの出射光Lは、各プリズム16の、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面16aでの屈折により、レンズシート14から出射する際の光路が、光源12の光軸Cに対して外側へと偏向される。このため、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光Lは、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14B(図1、図2)の、複数の反射プリズム18を介して出射される、光源12の光軸Cと平行な出射光(図8参照)との、混色が促されるものである。
【0024】
一方、図3(b)に示されるように、レンズシート14の、第1のレンズ群14A’がプリズムを備えず、平坦面のみで形成されている場合を想定すると、光源12からの出射光Lは、レンズシート14への入射の際、及び、出射の際の屈折により、幾分光路が変化するが、概ね入射光と出射光の光路は同じ角度となる。このため、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bの、複数の反射プリズム18を介して出射される、光源12の光軸Cと平行な出射光(図8参照)との混色は、本発明の実施の形態に係る、図3(a)と同等程度には、期待できないものとなる。
【0025】
又、図3(c)に示されるように、レンズシート14の、第1のレンズ群14A”が、凸フレネルレンズからなり、かつ、各プリズム20の傾斜角度が、光源12の光軸Cからの距離に応じて、前記傾斜面の傾斜角度が大きくなる態様で形成されている場合を想定する。
この場合は、その傾斜角度にもよるが、光源12からの出射光Lは、各プリズム20の、光源12の光軸Cとは反対側を向いて傾斜する傾斜面20aでの屈折により、レンズシート14から出射する際の光路が、光源12の光軸Cと平行な方向へと偏向されることとなる。又、仮に、各プリズム20の傾斜面20aの傾斜角度を増大させても、レンズシート14からの出射光Lの出射角度は、図3(b)に示されるような、プリズムを備えず平坦面のみで形成されているものよりも、(光源12の光軸Cに対して外側への)出射角度を大きくすることは出来ない。すなわち、レンズシート14の、第1のレンズ群14A”を介して出射される光源12からの出射光Lは、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bの、複数の反射プリズム18を介して出射される、光源12の光軸Cと平行な出射光(図8参照)との混色が、殆ど期待できないものである。
【0026】
更に、図3(d)に示されるように、レンズシート14の、第1のレンズ群14A’”が、凸フレネルレンズからなり、かつ、各プリズム20の傾斜角度が、光源12の光軸Cからの距離に応じて、前記傾斜面の傾斜角度が小さくなる態様で形成されている場合を想定する。
この場合は、その傾斜角度にもよるが、光源12からの出射光Lは、各プリズム20の、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面20aでの屈折により、レンズシート14から出射する際の光路が、光源12の光軸Cに対して内側へと、明確に偏向されるものとなる。
【0027】
しかしながら、この偏向効果をより大きく得るために、傾斜面20aの傾斜角度を大きくすると、それに応じて各プリズム20の高さが大きくなり、光源12からの出射光Lのうち、光源12の光軸C側を向いた光軸Cと平行な面20bに入射する、光源12からの出射光Lの割合が増加することとなる。この、光源12の光軸C側を向いた光軸Cと平行な面20bに入射する光は、光源12の発光面12a(図1(a))の前方へとは向かわずに、いわゆる迷光となり、有効光として機能しないことから、光の利用効率の低下を招くことになってしまう。
従って、図3(d)の例では、レンズシート14の、第1のレンズ群14A’”を介して出射される光源12からの出射光Lと、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bの、複数の反射プリズム18を介して出射される、光源12の光軸Cと平行な出射光(図8参照)との混色は期待できるが、照明装置10の照明光の輝度を損なうことになってしまう。
【0028】
更に、図4、図5には、本発明の実施の形態に係る、図1及び図2(a)に示された態様のレンズシート14を採用した照明装置10の、第1のレンズ群14A及び第2のレンズ群14Bのレンズ中心(光源12の光軸C)からの距離r(mm)を横軸に、レンズシート14からの出射光出射角度α(°)を縦軸に示している。
なお、図4、図5において、本発明の実施の形態に係るデータは、符号凹で示されている。又、参考例として、第1のレンズ群14Aに係る、図3(b)の比較例に係るデータを符号FLで、図3(c)の比較例に係るデータを符号凸で、図3(d)の比較例に係るデータを符号凸2で、各々示している。更に、第2のレンズ群14Bに係る、傾斜面の傾斜角度がランダムに形成された反射プリズムのデータを符号TIR(RDM)で、従来の、傾斜面の傾斜角度が一定の反射プリズムに係るデータを符号TIR(PA)で、各々示している。
【0029】
本発明の実施の形態に係るレンズシート14の、第1のレンズ群14Aは、rが1mmまでの領域は、図1(a)(b)の例のごとく、光源12の発光面12aと、レンズシート14の光源12との対向面14aとの距離Lを考慮しつつ、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源からの出射光の出射角度が、光源の光軸からの距離に関わらず20°で一定となるように、各プリズム161、162、163‥‥の傾斜面16aの傾斜角度θ1、θ2、θ3‥‥が、光源12の光軸Cからの距離に応じて小さくなるように形成されている。このため、rが1mmまでの領域は、出射角度α=20°で一定となっていることが解る。一方、rが1mmから2mmの領域は、出射角度αが連続的に増大するように、各プリズム16の傾斜面16aの傾斜角度が設定されているものである。
そして、本発明の実施の形態に係る凹の出射角度は、第1のレンズ群14Aが形成されたrが2mmまでの全領域において、上記各比較例よりも、出射角度αが大きくなっていることが解る。
【0030】
又、本発明の実施の形態に係る凹の出射角度は、第2のレンズ群14Bが形成されたrが2mmよりも外側の全領域において、光源12の光軸Cからの距離と無関係に、ランダムな出射角度αが得られていることが解る。よって、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光と、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光との、混色が、より促されるものとなる。
【0031】
図6には、本発明の実施の形態に係る、図1及び図2(a)に示された態様のレンズシート14を採用した照明装置10の、指向角γ(deg)と色度Xとの関係(右図)を、図3(c)の比較例の構成を有するものと対比している。図6において、符号Vは縦方向、符号Hは横方向(発光面が四角形の擬似白色発光ダイオード100の縦方向と横方向)を示している。この比較図から、本発明の実施の形態に係る照明装置10は、中心(光源12の光軸C上)の色度が向上し、かつ、指向角±20(deg)付近の色度が低下して、中心からピークへの色度Xの変化ΔXが、0.53から0.34へと減少していることが解る。よって、照明装置10の光源12に擬似白色発光ダイオード100(図7参照)を用いた場合に不可避の色むらが、軽減されることとなる。
なお、本発明の実施の形態に係る、図2(b)(c)の例についての具体的数値の開示は省略するが、図2(a)の例と同様に、第1のレンズ群14Aに、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面16aを有する複数のプリズム16を含むことから、同様の色むら軽減効果が期待できるものである。
【0032】
上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、光源12の光軸Cを中心として対称に配置される複数のプリズムを有するレンズシート14の、光源12の光軸Cを基準位置として内側に配置される第1のレンズ群14Aに含まれる、光源12の光軸C側を向いて傾斜する傾斜面16aを有する複数のプリズム16によって、光源12からの出射光Lが、レンズシート14から出射する際の光路は、光源12の光軸Cに対して外側へと偏向されるものである。ここで、出射光Lの偏向方向を制御するに際し、光源12の光軸Cからの距離に応じて、傾斜面16aの傾斜角度θnを変化させるべくプリズム16の高さを増大させる結果として、プリズム16を構成する光軸と平行な面16b(図1(b)参照)の面積を増大させることとなる。しかしながら、第1のレンズ群14Aの傾斜面16aは、光源12の光軸C側を向いて傾斜していることから、プリズム16を構成する光軸Cと平行な面16bに、光源12からの出射光Lが直接的に入射することはなく、光利用効率の低下を来たすものでもない。そして、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光と、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光との、混色が促される結果、照明装置10の光源12に、擬似白色発光ダイオード100(図7参照)を用いた場合に不可避の色むらが、軽減されることとなる。
【0033】
又、第1のレンズ群14Aに含まれる複数のプリズム161、162、163‥‥が、光源12の光軸Cからの距離に応じて、傾斜面16aの角度θ1、θ2、θ3‥‥が小さくなる態様(θ1>θ2>θ3)で構成されていることから、第1のレンズ群に含まれる複数のプリズム16による、光源12の光軸Cからの距離に応じた、偏向方向の制御がなされるものである。そして、図1(b)に示されるように、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光Lの出射角度が、光源12の光軸からの距離に関わらず一定となるように、各プリズムの傾斜面の傾斜角度を、光源の光軸からの距離に応じて小さくすることで、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光との、混色を制御することが出来るものとなる。
【0034】
又、第2のレンズ群14Bに、複数の反射プリズム18を含むことで、第1のレンズ群14Aよりも光源12の光軸Cから遠い領域において、第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光Lの出射角度が、光源12の光軸Cと平行な方向又は光軸Cに接近する方向へと偏向されるものとなる。そして、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光と、第1のレンズ群14Aの外側に配置される第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光との、混色が促されるものとなる。
【0035】
又、図2(b)に示されるように、第1のレンズ群14Aと第2のレンズ群14Bとの間に、第3のレンズ群14Cを配置することで、第3のレンズ群14Cによっても、光源12からの出射光Lが偏向されるものである。ここで、第3のレンズ群14Cは、光源12の光軸C側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面20aを有することから、光源12からの出射光Lが、第3のレンズ群14Cの傾斜面20aに照射されて屈折し、レンズシートから出射する際の光路が、第1のレンズ群を介する出射光とは逆に光源12の光軸C方向、又は、光源12の光軸Cと平行な方向へと偏向されるものである。そして、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光と、第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光に、更に、第1のレンズ群14Aと第2のレンズ群14Bとの間の、第3のレンズ群14Cを介して出射される光源12からの出射光とが合わさり、更なる混色が促されるものとなる。
【0036】
更に、図2(c)に示されるように、第2のレンズ群14Bに、光源12の光軸C側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面20aを有する複数のプリズムを含むこととしても、上述のごとく、レンズシート14の、第1のレンズ群14Aを介して出射される光源12からの出射光と、第2のレンズ群14Bを介して出射される光源12からの出射光との、混色が促されるものとなり、同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態では、レンズシート14の各レンズ群14A、14B、14Cに含まれる複数のプリズム16、18、20が、光源12の光軸Cを中心として回転対称をなすことで、光源12の光軸Cを中心とする放射方向の全方向に対し、レンズシート14を介して出射される光源12からの出射光Lの、混色が促されるものである。しかしながら、例えば、レンズシート14の各レンズ群14A、14B、14Cが直線状に形成されたリニアプリズムであっても、ある程度の指向性をもって、同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0038】
又、光源12が、発光素子としての青色発光ダイオード102と、この発光素子102から出射される光を受けて蛍光を発する蛍光体108とを含むことから、青色発光ダイオード102から出射される青色光を蛍光体108によって黄色系の蛍光へと波長変換し、擬似白色発光ダイオード100を構成するものである。そして、擬似白色発光ダイオード100から出射される出射光が、上述の如く、レンズシート14の各レンズ群14A、14B、14Cの、プリズム16、18、20によって、混色が促され、擬似白色発光ダイオード100に不可避の色むらを、軽減ないし解消することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
10:照明装置、12:光源、14:レンズシート、14A:第1のレンズ群、14B:第2のレンズ群、14C:第3のレンズ群、16、18、20:プリズム、16a、20a:傾斜面、16b、20b:光源の光軸と平行な面、100:擬似白色LED、102:青色発光LED、108:黄色蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子及び蛍光体を有する光源と、該光源の光軸を中心として対称に配置される複数のプリズムを有するレンズシートとを含む照明装置であって、
前記レンズシートは、少なくとも、前記光源の光軸を基準位置として内側に配置される第1のレンズ群と、該第1のレンズ群の外側に配置される第2のレンズ群とを含み、
前記第1のレンズ群は、前記光源の光軸側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含むことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1のレンズ群に含まれる複数のプリズムは、前記光源の光軸からの距離に応じて、前記傾斜面の傾斜角度が小さくなる態様で形成されていることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記第2のレンズ群は、複数の反射プリズムを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1のレンズ群と前記第2のレンズ群との間に、前記光源の光軸側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含む第3のレンズ群が形成されていることを特徴とする請求項3記載の照明装置。
【請求項5】
前記第2のレンズ群は、前記光源の光軸側とは反対側を向いて傾斜する傾斜面を有する複数のプリズムを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。
【請求項6】
前記各レンズ群に含まれる複数のプリズムが、前記光源の光軸を中心として、回転対称をなすことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の照明装置。
【請求項7】
前記発光素子は青色発光ダイオードであり、前記蛍光体は前記青色発光ダイオードから出射される青色光を黄色系の蛍光へと波長変換するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248407(P2012−248407A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119312(P2011−119312)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】