説明

熊避けベル

【解決手段】 熊避けベル1は、ワン状の音響ワン部2と、音響ワン部に衝突して警告音を発生させる打撃部3と、音響ワン部の底部に設けた筒状部材4と、該筒状部材の内部を進退動可能に設けられるとともに上記打撃部を揺動可能に保持する保持部材5と、該保持部材を上記筒状部材の下方に位置する前進位置と上方に位置する後退位置とに保持する切換手段10とを備えている。
上記警告音発生状態では、上記切換手段が保持部材を上記前進位置に位置させることにより、上記打撃部が上記筒状部材より離隔して音響ワン部の内面に衝突するのを許容する(a)。
上記警告音停止状態では、上記切換手段が保持部材を上記後退位置に位置させることにより、上記打撃部が上記筒状部材に接触して音響ワン部の内面に衝突するのが阻止される(c)。
【効果】 警告音発生状態と警告音停止状態とを片手でも容易に切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熊避けベルに関し、詳しくは打撃部と音響ワン部とが衝突して警告音を発生させる警告音発生状態と、衝突を阻止して警告音が発生しないようにした警告音停止状態とに切り換え可能な熊避けベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイキングや山野草採取を行う際、熊との遭遇を避けるための警告音を発生させる熊避けベルが知られており、このような熊避けベルは、音響ワン部状に形成された音響ワン部と、該音響ワン部の内部で揺動して音響ワン部との衝突により警告音を発生させる打撃部とを備えている。
このような熊避けベルは、例えば電車や市街地などにおいて警告音が発生すると他者への迷惑となることから、上記打撃部と音響ワン部とが衝突して警告音を発生させる警告音発生状態と、衝突を阻止して警告音が発生しないようにした警告音停止状態とに切り換え可能とした熊避けベルも知られている(特許文献1)。
この特許文献1の熊避けベルは、上記音響ワン部と上記打撃部とを螺合させる構成を有しており、警告音発生状態ではこれらを螺合させることにより打撃部の揺動を許容して警告音を発生させるようになっている。
一方、警告音停止状態では音響ワン部より打撃部を離脱させて該打撃部を音響ワン部の底部に常に接触させ、これにより警告音の発生を阻止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の熊避けベルの場合、警告音発生状態および警告音停止状態とする際には、音響ワン部と打撃部とを相互に回転させる必要があり、例えばリュックサックに熊避けベルを装着した際には、切り換えのたびにリュックサックを下ろして操作する必要があった。
このような問題に鑑み、本発明は警告音発生状態と警告音停止状態とを容易に切換可能な熊避けベルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明における熊避けベルは、開口部を有するワン状に形成された音響ワン部と、音響ワン部の内部に配置されて該音響ワン部に衝突して警告音を発生させる打撃部とを備えた熊避けベルであって、
上記打撃部と音響ワン部との衝突を許容して警告音を発生させる警告音発生状態と、衝突を阻止して警告音が発生しないようにした警告音停止状態とに切り換え可能な熊避けベルにおいて、
上記音響ワン部の底部中央に取り付けられた筒状の筒状部材と、該筒状部材の内部を進退動可能に設けられるとともに上記打撃部を揺動可能に保持する保持部材と、該保持部材を上記筒状部材の下方に位置する前進位置と上方に位置する後退位置とに保持する切換手段とを備え、
上記警告音発生状態では、上記切換手段が保持部材を上記前進位置に位置させることにより、上記打撃部が上記筒状部材より離隔して音響ワン部の内面に衝突するのを許容し、
上記警告音停止状態では、上記切換手段が保持部材を上記後退位置に位置させることにより、上記打撃部が上記筒状部材に接触して音響ワン部の内面に衝突するのが阻止されることを特徴
としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記筒状部材の内部に上記保持部材を設けるとともに、該保持部材を上記切換手段によって前進位置または後退位置とに移動させるだけで、警告音停止状態または警告音発生状態とすることが可能であることから、切り換えを容易に行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】熊避けベルの断面図
【図2】熊避けベルの動作を説明する図
【図3】筒状部材を説明する平面図
【図4】保持部材を説明する平面図
【図5】回転カムを説明する底面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について説明すると、図1は、ハイキング等の際に警告音を発生させることによって熊の接近を防止する熊避けベル1の断面図を示している。
熊避けベル1は、開口部を有するワン状に形成された音響ワン部2と、音響ワン部2の内部に配置されて該音響ワン部2に衝突して警告音を発生させる打撃部3と、上記音響ワン部2の底部に取り付けられた筒状の筒状部材4と、該筒状部材4の内部に設けられるとともに上記打撃部3を揺動可能に保持する保持部材5と、該保持部材5の上方に隣接した位置に設けられた回転カム6と、該回転カム6を下方に付勢するばね7と、音響ワン部2の上方に設けられるとともにワイヤー8を介して上記保持部材5に連結されるカラビナ9とから構成されている。
このような構成を有する本実施例の熊避けベル1は、上記カラビナ9をリュックサックやズボンのベルトループに装着することで、上記ワイヤー8により上記音響ワン部2や打撃部3を下方にぶら下げた状態で使用するようになっている。
また本実施例の熊避けベル1は、図2(a)に示す警告音が発生する警告音発生状態と、図2(c)に示す警告音が発生しない警告音停止状態とに切り換えることが可能な切換手段10を備えている。
図2(a)の警告音発生状態において、上記切換手段10は上記保持部材5を下方の前進位置に位置させるようになっており、これにより上記打撃部3を筒状部材4より離隔させて打撃部3の揺動を許容するようになっている。
一方、図2(c)の警告音停止状態において、上記切換手段10は上記保持部材5を上方の後退位置に位置させるようになっており、これにより上記打撃部3を筒状部材4に接触させて打撃部3の揺動を阻止するようになっている。
【0009】
上記音響ワン部2は有底筒状に形成された金属製の部材となっており、上方に位置する底部の中央には上記筒状部材4を装着するための貫通孔2aが形成されている。
上記打撃部3は略半球状に形成された金属製の部材となっており、その中央には筒状の被収容部3aが立設され、該被収容部3aに設けられた貫通孔には上方に向けて突出するワイヤー11が固定されている。
上記ワイヤー11は上記被収容部3aより上方に突出すると、上方でリング状に折り返されており、このリング状の部分が上記保持部材5の下方に設けられたピンに揺動可能に連結されるようになっている。
【0010】
上記筒状部材4は音響ワン部2の底部を上下に貫通するように設けられるとともに、外部に突出した部分には有底筒状で中央に貫通孔12aの形成されたケース12が装着されており、該筒状部材4とケース12とによって音響ワン部2を挟持するようになっている。
具体的には、筒状部材4における外部に突出した部分の外周面には係合溝4aが形成されており、上記ケース12をこの外部に突出した部分に装着した後、この係合溝4aの位置にあわせて上記ケース12を外側から変形させ、形成した変形部12bと係合溝4aとが係合することでケース12と筒状部材4とが固定されるようになっている。
また上記ケース12における上記音響ワン部2側の端部には、該音響ワン部2の直径方向に広がる傘状部12cが設けられており、この傘状部12cの直径は上記音響ワン部2の直径よりも大径となっている。
上記傘状部12cを設けることにより、熊避けベル1を上記カラビナ9によってぶら下げると、上記傘状部12cは上記音響ワン部2よりも大径となっていることから、該傘状部12cは音響ワン部2よりも先に上記リュックサックや使用者に接触するようになっている。
これにより、音響ワン部2がリュックサックや使用者に接触することが防止され、音響ワン部2に打撃部3が衝突した際に発生される警告音が損なわれないようになっている。
【0011】
図3は上記筒状部材4の断面図および上方から見た平面図を示し、筒状部材4の内面には、その下方から順に、保持部材5が摺動する大径部21と、下記切換手段10を構成する小径部22と、上記回転カム6が摺動する中径部23とが形成されている。
上記大径部21には、図2(b)(c)に示すように上記打撃部3に形成した被収容部3aが収容されるようになっており、該被収容部3aを収容することにより打撃部3の揺動を阻止するようになっている。
上記小径部22の内面には合計で6本の溝が等間隔に形成されており、このうち一つおきに形成された3本の溝は上記中径部23と同じ深さまで形成された深溝24となっており、その他の3本の溝は該深溝24より浅い浅溝25となっている。
さらに、上記小径部22の上方の端面には、隣接する深溝24と深溝24との間に同じ方向に傾斜する3組のカム斜面26が形成されており、このカム斜面26は、一方の深溝24に隣接した位置から浅溝25の上面にかけて形成された阻止部分26aと、浅溝25に隣接した位置から他方の深溝24に隣接した位置にかけて形成された許容部分26bとに分かれており、この阻止部分26aと許容部分26bとの境界には上下方向の段差26cが形成されるようになっている。
【0012】
上記保持部材5は、上記筒状部材4の内部を上下に進退動可能に設けられた筒状の部材であって、下方には上記打撃部3を揺動可能に保持する保持部5aが形成され、該保持部5aの上方には上記切換手段10を構成するカム部5bが形成されている。
上記保持部5aの下方には水平方向にピン5cが貫通しており、上記打撃部3に設けたワイヤー11が揺動可能に保持されている。
上記ワイヤー8は、上記筒状部材4、回転カム6、ケース12を貫通して上方に突出するとともに上方でリング状に折り返されており、このリング状の部分が上記カラビナ9に連結されるようになっている。
そして、このワイヤー11の下端部には保持部材5の内部に形成された段差に下方から係合するカシメ部材13が設けられており、これによりカラビナ9はこの保持部材5を介して熊避けベル1全体をぶら下げるようになっている。
図4は上記保持部材5の側面図および上方から見た平面図を示しており、上記保持部材5のカム部5bの側面には、上記筒状部材4の小径部22の内面に形成した深溝24および浅溝25に嵌合する6つの突起27が上下方向に向けて形成されている。
このように上記突起27が筒状部材4の深溝24および浅溝25に嵌合することで、保持部材5は筒状部材4に対して回転しないように保持され、上下方向のみの移動が許容されるようになっている。
さらに、カム部5bの上方の端面にはギザギザ状の環状の歯部28が形成され、図2(b)に示すように、保持部材5が筒状部材4に対して上方に移動すると、該歯部28が上記筒状部材4のカム斜面26よりも上方に突出するようになっている。
【0013】
上記回転カム6は、その中央を上記保持部材5に連結されたワイヤー8が貫通可能な筒状に形成された部材となっており、上記ワイヤー8に対して上下に移動可能となっている。
図5は上記回転カム6の側面図および平面図を示し、回転カム6の上方には上記筒状部材4の中径部23と同径に形成されたフランジ6aが形成され、該上記フランジ6a部の下方にはフランジ6aと同じ位置まで突出した3つの突起29と、上記保持部材5の貫通孔12aに挿入可能な小径部6bと、該小径部6bを囲繞するように形成されるとともに上記保持部材5の歯部28と嵌合するギザギザ状の歯部30とを備えている。
そして上記回転カム6のフランジ6a部と上記ケース12の底部との間に上記ばね7が弾装されており、このばね7の付勢力によって回転カム6は常時下方に向けて付勢されるようになっている。
上記突起29は、上記筒状部材4の小径部22に形成された3つの深溝24に係合するように設けられており、また該突起29の下端部には上記小径部22に形成されたカム斜面26に当接するカム斜面31が形成されている。
そして上記歯部30は、図2(b)に示すように上記保持部材5の上端に形成された歯部28と嵌合するように形成されているが、図4、図5に示すように、保持部材5の歯部28と上記回転カム6の歯部30とは、中心に対して若干角度がずれた位置に形成されている。
具体的に説明すると、上記保持部材5における突起27と歯部28との位置関係に対し、上記回転カム6における突起29と歯部30との位置関係は、一つの歯部30の約半分の角度だけずれている。
このため、図2(a)(c)に示すように、保持部材5の突起27と回転カム6の突起29とが上下に整列した際に、両歯部28、30が相互に密着できないようになっている。
【0014】
本実施例における上記切換手段10は、いわゆるノック式の回転カム機構となっており、上記筒状部材4の内部に設けた深溝24、浅溝25、カム斜面26と、上記保持部材5のカム部5bに設けた突起27および歯部28と、上記回転カム6の突起29、歯部30、カム斜面31と、該回転カム6を付勢するばね7とによって構成されている。
以下、この切換手段10の動作とともに、熊避けベル1の使用方法について説明する。
まず、熊避けベル1を上記カラビナ9によってリュックサックやズボンのベルトループなどに装着すると、自重により上記音響ワン部2や打撃部3がカラビナ9の下方にぶら下がるようになっている。
つまり、上記カラビナ9には上記ワイヤー8を介して保持部材5が連結されているため、保持部材5はワイヤー8によってカラビナ9にぶら下がっている状態となっている。
一方、この保持部材5は上記回転カム6に下方から当接して、該回転カム6を下方から支持しており、さらにこの回転カム6はばね7に下方から当接して、該ばね7はその付勢力によって上記ケース12ごと音響ワン部2および筒状部材4を下方から支持している。
【0015】
次に、図2(a)に示す警告音発生状態について説明すると、この警告音発生状態において、上記回転カム6の突起29は上記筒状部材4の深溝24に係合するようになっている。
その結果、上記ばね7の付勢力によって回転カム6は下方に付勢されて保持部材5を下方に押圧するようになっており、また回転カム6のフランジ6a部が筒状部材4に形成された中径部23と小径部22との段差に当接することで、これ以上の下降が阻止されるようになっている。
この回転カム6によって下方に押圧された保持部材5は、筒状部材4に対して相対的に下方に位置しており、その結果図2(a)に示す前進位置に位置することとなる。
保持部材5が前進位置に位置すると、上記保持部材5の下方に連結された打撃部3の被収容部3aが上記筒状部材4の大径部21より下方に離脱するため、打撃部3は上記ワイヤー11によって揺動が許容され、打撃部3が音響ワン部2に衝突することで警告音が発生されることとなる。
一方、この警告音発生状態において、上記回転カム6の突起29は筒状部材4の深溝24に係合し、また保持部材5の突起27は常時深溝24および浅溝25に係合していることから、上記保持部材5の歯部28と回転カム6の歯部39とは密着せず、両歯部28、30の一部分同士だけが接触した状態となっている。
【0016】
そして、この図2(a)に示す警告音発生状態から図2(c)に示す警告音停止状態とする場合、使用者は音響ワン部2を下方に向けて移動させて図2(b)の状態とする。
音響ワン部2を下方に向けて移動させると、上記ケース12が下方に移動して上記上記ばね7を下方に押圧し、その結果、上記ワイヤー8にぶら下げられた保持部材5の上方に接触している回転カム6との間で、ばね7が圧縮されることとなる。
換言すると、保持部材5はばね7の付勢力に抗して筒状部材4の内部を相対的に上方に移動し、最終的には図2(b)に示すように保持部材5の上端部が上記筒状部材4のカム斜面26の上端部より上方に突出するようになっている。
すると、それまで上記筒状部材4の深溝24に突起29が係合して回転が阻止されていた回転カム6は、該突起29が深溝24の上方に離脱することとなり、回転が許容されることとなる。
回転カム6は上記ばね7によって下方への付勢力が作用し、かつ回転カム6の歯部30は、それまで密着していなかった上記保持部材5の歯部28に沿って嵌合するように摺動するため、回転カム6は回転しながら下降することとなる。
図2(b)は両歯部28、30が密着した状態を示しており、これにより回転カム6の突起29は上記深溝24に対して偏倚することとなり、カム斜面26の阻止部分26aの上方に位置するようになっている。
【0017】
この図2(b)の状態まで音響ワン部2が引き下げられ、その後使用者が音響ワン部2を手放すと、熊避けベル1は図2(c)に示す警告音停止状態となる。
図2(b)の状態から音響ワン部2を手放すと、ばね7の付勢力によって音響ワン部2が上方に付勢され、これにより上記回転カム6と保持部材5とは一体的に筒状部材4に対して相対的に下降することとなる。
このとき上記回転カム6の突起29は、筒状部材4のカム斜面26における阻止部分26aの上方に位置しているため、回転カム6が下降することにより、突起29の下端に形成されたカム斜面31が筒状部材4の上記阻止部分26aに当接することとなる。
その後、上記回転カム6にはばね7の付勢力が作用することから、上記突起29のカム斜面31は上記阻止部分26aに沿って摺動し、回転カム6は回転しながら下降する。
そして、突起29がカム斜面26における阻止部分26aと許容部分26bとの境界に位置する段差26cに当接すると、これ以上の回転カム6の回転が阻止されるとともに、上記突起29は浅溝25に係合しないようになっていることから、回転カム6はこれ以上下降しないようになっている。
このようにして回転カム6の下降が阻止された状態において、上記保持部材5は上記ワイヤー8によってぶら下げられていることから、上記回転カム6を下方から支持するようになっており、保持部材5は筒状部材4に対して上方に位置する後退位置で保持されるようになっている。
保持部材5を筒状部材4に対して後退位置で保持すると、上記保持部材5の下方に連結された打撃部3が筒状部材4に接近して、上記被収容部3aが保持部材5の大径部21に収容されることとなる。
これにより打撃部3は揺動が阻止され、該打撃部3が音響ワン部2に衝突することは無いので、警告音の発生が阻止されるようになっている。
一方、この警告音停止状態において、上記回転カム6の突起29は筒状部材4の浅溝25の上方で停止しており、また保持部材5の突起27は常時深溝24および浅溝25に係合していることから、上記保持部材5の歯部28と回転カム6の歯部30とは密着しないようになっている。
【0018】
そして図2(c)の警告音停止状態から、再び図2(a)の警告音発生状態とするには、再度音響ワン部2を下方に引き下げればよい。
すると、図2(b)とは異なるが、上記保持部材5の先端が再び小径部22のカム斜面26より上方に突出して回転カム6が回転し、回転カム6の歯部30と保持部材5の歯部28とが密着する。
その結果、回転カム6の突起29は上記浅溝25に対して偏倚し、カム斜面26の許容部分26bの上方に位置する。
その後使用者が音響ワン部2を手放すと、ばね7の付勢力により回転カム6が下降してカム斜面31が上記カム斜面26の許容部分26bに当接するため、突起29は回転カム6の回転に伴って深溝24の位置まで移動する。
一方、回転カム6はばね7によって下方に付勢されていることから、上記突起29が深溝24の位置まで到達すると、ばね7の付勢力によって回転カム6は図2(a)に示す位置まで下降され、該回転カム6に押圧された保持部材5は筒状部材4に対して上記前進位置まで下降することとなる。
これにより、上記保持部材5の収容部から打撃部3の被収容部3aが離脱し、打撃部3は揺動可能となるため、上記音響ワン部2に衝突して警告音を発生させることが可能となる。
【0019】
上記実施例における熊避けベル1によれば、上記警告音発生状態または警告音停止状態とする際に、使用者はこの熊避けベル1の音響ワン部2を下方に移動させればよいため、この切り換え操作を片手で操作することができ、また使用者は熊避けベル1がリュックサックに装着されるなど視認できない状態であっても、これを操作することができる。
これにより、例えば電車や市街地など、警告音が他の通行人等に対して迷惑となる場合や、熊が発生しそうな地域に侵入した場合において、使用者はいちいちリュックサックを下ろす必要がなく、手探りで警告音発生状態または警告音停止状態に切り換えることができる。
【0020】
なお、上記実施例における上記切換手段10は、上記回転カム6を用いた回転カム機構となっているが、その他、上記保持部材6または筒状部材4のいずれか一方に係合突起を設け、他方に該係合突起が係合する被係合部を形成し、さらにこの係合突起と被係合部との係合状態を解除する解除手段を備えた機構であっても良い。
例えば、上記保持部材6を筒状部材4に対して後退位置に位置させた際に係合突起と被係合部とが係合するようにし、その状態で上記解除手段がこれらの係合状態を解除すると、上記ばね7の付勢力によって保持部材6が筒状部材4に対して下降した前進位置に位置させることができる。
その他の切換手段10として、筒状部材の内面と保持部材の外面にそれぞれらせん状のカム斜面を設け、上記保持部材をこのカム斜面に沿って所定角度回転させることにより、保持部材が筒状部材に対して上下に移動するようにした構成も考えられる。
【符号の説明】
【0021】
1 熊避けベル 2 音響ワン部
3 打撃部 4 筒状部材
5 保持部材 6 回転カム
7 ばね 10 切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するワン状に形成された音響ワン部と、音響ワン部の内部に配置されて該音響ワン部に衝突して警告音を発生させる打撃部とを備えた熊避けベルであって、
上記打撃部と音響ワン部との衝突を許容して警告音を発生させる警告音発生状態と、衝突を阻止して警告音が発生しないようにした警告音停止状態とに切り換え可能な熊避けベルにおいて、
上記音響ワン部の底部中央に取り付けられた筒状の筒状部材と、該筒状部材の内部を進退動可能に設けられるとともに上記打撃部を揺動可能に保持する保持部材と、該保持部材を上記筒状部材の下方に位置する前進位置と上方に位置する後退位置とに保持する切換手段とを備え、
上記警告音発生状態では、上記切換手段が保持部材を上記前進位置に位置させることにより、上記打撃部が上記筒状部材より離隔して音響ワン部の内面に衝突するのを許容し、
上記警告音停止状態では、上記切換手段が保持部材を上記後退位置に位置させることにより、上記打撃部が上記筒状部材に接触して音響ワン部の内面に衝突するのが阻止されることを特徴とする熊避けベル。
【請求項2】
上記切換手段は、上記筒状部材の内部を進退動するとともに上記保持部材の上方に設けられた回転カムと、該回転カムの外面に上下方向に向けて形成された突起と、該突起の下端部に形成されたカム斜面と、上記回転カムを下方に付勢するばねと、上記筒状部材の内面に形成されて上記回転カムおよび保持部材が通過可能に設けられた小径部と、該小径部の内面に上下方向に向けて形成されるとともに上記回転カムの突起が係合する複数の溝と、該小径部の上端部分に形成されるとともに一方の溝から他方の溝へと傾斜して上記回転カムのカム斜面が当接するカム斜面とを備え、
さらに上記保持部材は、一端が該保持部材に連結されるとともに他端が上記回転カムおよび筒状部材を貫通して音響ワン部の上方に突出したワイヤーによってぶら下げられ、
上記ばねによって下方に付勢された回転カムのカム斜面と筒状部材のカム斜面とが摺動して回転カムが回転し、
上記回転カムの突起が上記筒状部材の溝に係合すると、回転カムが上記ばねの付勢力によって前進して上記保持部材を下方に押圧し、保持部材が上記前進位置に保持されて警告音発生状態となり、
上記回転カムの突起が上記筒状部材の溝に係合せずに上記カム斜面に係合した状態では、回転カムの前進が阻止されるとともに、上記ワイヤーにぶら下げられた保持部材が下方より回転カムに当接して上記後退位置に保持され、警告音停止状態となることを特徴とする請求項1に記載の熊避けベル。
【請求項3】
音響ワン部の上部から該音響ワン部の直径方向に広がる傘状部を設け、該傘状部の直径を上記音響ワン部の直径よりも大径としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の熊避けベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−85562(P2012−85562A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233673(P2010−233673)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(391041305)株式会社東京ベル製作所 (7)
【Fターム(参考)】