説明

熱交換器、これを用いた冷凍サイクル回路及びこの冷凍サイクル回路を用いた冷蔵庫、空気調和機

【課題】伝熱管と板状フィンとの密着性の低下や非接触部の発生を防止することにより、伝熱管と板状フィンとの接触熱抵抗を低減することのできる熱交換器、これを用いた冷凍サイクル回路及び、冷蔵庫、空気調和機。
【解決手段】伝熱管3は、断面がほぼ楕円形状でその長軸方向が空気の流れ方向に沿って板状フィンに設置され、内部には中央部に設けた隔壁32の両側に断面ほぼD字状の第1、第2の冷媒流路31a,31bを有し、長軸壁3a,3bの肉厚TW1が長軸方向の短軸壁3c,3dの肉厚TW2より厚く形成され、長軸壁3a,3b及び短軸壁3c,3dの内壁面にはそれぞれ所定高さと間隔で複数の突条33が軸方向に設けられ、長軸壁3a,3bと隔壁32との接続部の根元に所定の平坦幅の突起部34が設けられ、第1、第2の冷媒流路31a,31bに突条33及び突起部34に接する拡管ビュレット玉を挿入して拡管し、伝熱管3を板状フィンに接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、この熱交換器を用いた冷凍サイクル回路及びこの冷凍サイクル回路を用いた冷蔵庫、空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫や空気調和機などを構成する熱交換器に、フィンチューブ型熱交換器と呼ばれるものがある。この熱交換器は、一定の間隔で配置されてその間を気体(空気)が流れる板状フィンと、この板状フィンに直交して挿入され、内部に冷媒が流れる円形断面の多数の伝熱管とによって構成されている。
【0003】
このようなフィンチューブ型熱交換器の伝熱性能に影響を与える因子としては、冷媒と伝熱管との間の冷媒側熱伝達率、伝熱管と板状フィンとの間の接触熱伝達率、及び空気と板状フィンとの間の空気側熱伝達率が知られている。
この場合、冷媒と伝熱管との間の冷媒側熱伝達率は、伝熱管の面積に影響され、伝熱管と板状フィンとの間の接触熱伝達率は、伝熱管と板状フィンとの接触状態に影響される。また、空気と板状フィンとの間の空気側熱伝達率は、外面側を通過する空気の圧力損失に影響される。
【0004】
そこで、伝熱管内の面積拡大と、外面側を通過する空気の圧力損失を低減するために、種々提案がされている。
例えば、チューブが断面楕円に形成されると共に、その長軸上及びその近傍の肉厚が短軸上及びその近傍の肉厚より厚く形成され、長軸が空気の流通方向に向けて配設された熱交換器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、扁平断面の内部に作動流体が通過する複数の流路が設けられ、U字状に曲げられた伝熱管を備えた熱交換器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、空気の流れに沿って配置される外面が平坦で、断面がほぼ小判型状の外形形状を有し、内部には隔壁を間にして2つの対称なほぼD字状の貫通穴からなる第1及び第2の冷媒流路を有し、この第1、第2の冷媒流路を拡管ビュレット玉を用いて拡管することにより板状フィンに接合された伝熱管を備えた熱交換器が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、銅又は銅合金製帯状平板部材を、この平板部材の一側端部が片面中央部に当接するように曲げ成形してこの一側端部を溶着すると共に、他側端部が他面中央部に当接するように曲げ成形してこの他側端部を溶着して長手方向にほぼ眼鏡状の断面形状が形成されるようにし、さらに外形を所定形状になるように成形して長手方向に2つの媒体通路が形成されるようにした伝熱管の製造方法について提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−283677号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特許第4055449号公報(第4−5頁、図1−2)
【特許文献3】特開2010−2093号公報(第4−5頁、図1−5)
【特許文献4】特許第3318096号公報(第2−3頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の熱交換器においては、伝熱管は内部に冷媒が流れる楕円形状の1つの貫通穴が形成されているので、伝熱管内の圧力によって伝熱管が変形し易く、このため伝熱管と板状フィンとの密着性が低下し、接触熱抵抗が増加して接触熱伝達率が低下するという問題点があった。
また、特許文献2の熱交換器においては、伝熱管の製作や伝熱管と板状フィンとの取付が炉中ロウ付け溶着によるため、製造コストが上昇するという問題点があった。
【0010】
また、特許文献3及び特許文献4の熱交換器においては、伝熱管が扁平形状を有し、内部の隔壁付近の外面が平坦であるため、伝熱管内に拡管ビュレット玉を挿入して管を広げ、板状フィンと密着させる拡管時に、伝熱管の隔壁付近で伝熱管と板状フィンとの間に密着性の低下や非接触部が生じて、接触熱抵抗が増加し接触熱伝達率が低下するという問題点があった。
【0011】
すなわち、特許文献3及び特許文献4の熱交換器は、図9(a)に示すように、伝熱管3は空気の流れ方向Aに沿って細長く、上下の外面3a,3bが平坦で断面がほぼ小判型状(あるいは、扁平長円形状)に形成されている。このように、従来の伝熱管3は、上下の外面が平坦で、風上側と風下側3c,3dは半円状をなす扁平な外形形状となっており、そして、伝熱管3の内部には、図の左右方向(以下、幅方向という)の両側に、隔壁32を間にして2つの対称的な断面ほぼD字状の貫通穴からなる第1、第2の冷媒流路31a,31bが軸方向に平行に設けられている。
【0012】
このような従来の伝熱管3において、第1、第2の冷媒流路31a,31b内に拡管ビュレット玉(詳細は後述)を挿入して拡管し、板状フィン2に接合させる場合、図9(b)に示すように、伝熱管3の外面3a,3bの隔壁32の付近に拡管によって平坦面に撓み(窪み)が生じ、伝熱管3と板状フィン2との間に密着性の低下や非接触部が生じることがある。伝熱管3と板状フィン2との間に密着性の低下や非接触部が生じると、伝熱管3と板状フィン2との間に接触熱抵抗が増加して接触熱伝達率が低下し、伝熱性能が低下することになる。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、伝熱管と板状フィンとの密着性の低下や非接触部の発生を防止することにより、伝熱管と板状フィンとの接触熱抵抗を低減し、伝熱性能を向上することのできる熱交換器、これを用いた冷凍サイクル回路、及びこの冷凍サイクル回路を用いた冷蔵庫、空気調和機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る熱交換器は、所定の間隔で配置された複数の板状フィンと、該板状フィンに直交する方向に挿通され、内部を冷媒が流れる複数の伝熱管とを備え、
前記伝熱管は、断面がほぼ楕円形状でその長軸方向が空気の流れ方向に沿って前記板状フィンに設置され、内部には長軸方向の中央部に設けた隔壁の両側において軸方向に形成された断面ほぼD字状の第1、第2の冷媒流路を有し、前記楕円形状の短軸方向の長軸壁の肉厚が前記長軸方向の短軸壁の肉厚より厚く形成され、
前記長軸壁及び短軸壁の内壁面にはそれぞれ所定高さと間隔で複数の突条が軸方向に設けられ、また前記長軸壁と隔壁との接続部の根元の軸方向には所定の平坦幅の突起部が設けられ、
前記第1、第2の冷媒流路に前記突条及び突起部に接する拡管ビュレット玉を挿入して拡管し、前記伝熱管を前記板状フィンに接合するようにしたものである。
【0015】
本発明に係る冷凍サイクル回路は、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を順次配管で接続してなり、前記凝縮器及び蒸発器の両者又はいずれか一方に、上記の熱交換器を用いたものである。
【0016】
本発明に係る冷蔵庫又は空気調和機は、上記の冷凍サイクル回路を用いたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る熱交換器によれば、伝熱管と板状フィンとの密着性を向上することができ、伝熱管と板状フィンとの間の接触熱抵抗を低減することができるので、両者の間の接触熱伝達率が向上し伝熱性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る熱交換器の概要を示す説明図である。
【図2】図1の伝熱管の平断面図である。
【図3】伝熱管の板状フィンへの接合方法の説明図である。
【図4】図3の拡管ビュレット玉のB−B断面図である。
【図5】拡管ビュレット玉により伝熱管を拡管した状態を示す説明図である。
【図6】実施の形態1に係る熱交換器の伝熱管の拡管後の突条の高さと熱交換率との関係を示す線図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る熱交換器の伝熱管の平断面図である。
【図8】図7の伝熱管の拡管後の断面図である。
【図9】従来の伝熱管の断面図及び拡管後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係る熱交換器の概要を示す図1において、1は熱交換器で、所定の間隔で配置された複数の板状フィン2と、この板状フィン2に直交する方向に挿通され、拡管(拡径ともいう)することにより板状フィン2に接合される断面楕円形状の複数の伝熱管3とから構成されている。
板状フィン2は、銅若しくは銅合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金などの金属板からなり(他の実施の形態においても同様である)、空気の流れ方向Aと平行に、かつ図の垂直方向(奥行方向)に所定の間隔で並設されている。
【0020】
また、この板状フィン2には、空気の流れ方向Aに垂直な方向(図の上下方向)に、断面楕円形状の伝熱管3が複数段、かつ1列以上で設けられている。
さらに、板状フィン2の各段の伝熱管3の間には、切り起こしにより複数のスリット4が設けられている。このスリット4は、スリット4の側端部が空気の流れ方向Aに対して対向するように設けられており、その側端部において空気流の速度境界層及び温度境界層を薄くすることにより伝熱が促進され、熱交換能力を増大することができる。
【0021】
伝熱管3は、図2に示すように、断面ほぼ楕円形状で、図の左右方向(以下、長軸という)が空気の流れ方向A(図1参照)に沿って板状フィン2に取付けられている。そして、伝熱管3の内部には長軸方向の中央部の軸方向には隔壁32が設けられており、隔壁32の両側には断面ほぼD字状の2つの貫通穴からなる冷媒流路31a,31bが、軸方向に平行かつ対称的に形成されている。この伝熱管3は、銅若しくは銅合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金などの金属材料からなり、押し出し材又は引き抜き材によって形成されている(他の実施の形態においても同様である)。
【0022】
また、楕円形状の伝熱管3の上下方向(以下、短軸という)の壁3a,3b(以下、長軸壁という)は、平行して直線状に平坦に形成されており、隔壁32と対向する長軸方向の壁3c,3d(以下、短軸壁という)は内面が半径rの半円状に形成されている。そして、長軸壁3a,3bの直線部分の平均肉厚TW1は、短軸壁3c,3dの円弧部分の肉厚TW2より厚く、TW1>TW2に形成されている。ここで、平均肉厚TW1は、長軸壁3a,3bの全肉厚の平均値である。
【0023】
さらに、伝熱管3の短軸方向に対向する長軸壁3a,3bと、長軸方向に対向する短軸壁3c,3dの内壁面には、所定の高さhと間隔gで、断面がほぼ四角形状(先端部に若干丸みをつけた形状となっている)の複数の突条33が軸方向に設けられており、隔壁32の両側と長軸壁3a,3bの内壁との境界部の根元の軸方向には、所定の平坦幅Wの段差を有する突起部34が形成されている。
【0024】
ここで、長軸壁3a,3bの平均肉厚TW1は、短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.04〜1.25倍となっている。これは、長軸壁3a,3bの平均肉厚TW1が短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.04倍未満であると、伝熱管3の隔壁32の付近の外面と、板状フィン2との密着性が低下し、結果として熱交換性能が低下するからである。
【0025】
一方、長軸壁3a,3bの平均肉厚TW1が短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.25倍を超えると、伝熱管3の短軸壁3c,3d部分における外面と板状フィン2との密着性が低化し、結果として熱交換性能が低下するからである。よって本実施の形態における長軸壁3a,3bの平均肉厚TW1を、短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.04〜1.25倍とした。
【0026】
上記の説明では、長軸壁3a,3bの平均肉厚TW1と短軸壁3c,3dの肉厚TW2とを比較したが、これに限定するものではなく、例えば、長軸壁3a,3bの肉厚の最大値又は最小値を短軸壁3c,3dの肉厚より厚くするなど、長軸壁3a,3bの肉厚が短軸壁3c,3dの肉厚より厚く形成されていればよい。なお、隔壁32の両側と長軸壁3a,3bの内壁との境界部の根元の軸方向に設けた突起部34の平坦幅Wは、実施例では0.27mmであったが、これに限定するものではない。
【0027】
また、隔壁32の肉厚TW3は、短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.0〜1.4倍である。これは、隔壁32の肉厚TW3が短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.0倍未満であると、伝熱管3の耐圧強度が低下するためである。また、隔壁32の肉厚TW3が短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.4倍を超えると、隔壁32の肉厚が厚くなって隔壁32付近の長軸壁3a,3bの拡管が不十分となり伝熱管3の外面と板状フィン2との密着性が低下し、結果として熱交換性能が低下するからである。よって、本実施の形態における第1、第2の冷媒流路31a,31bの間の隔壁32の肉厚TW3を、短軸壁3c,3dの肉厚TW2の1.0〜1.4倍とした。
【0028】
次に、上記のような断面楕円形状の伝熱管3の第1、第2の冷媒流路31a,31bの拡管手順、及び板状フィン2に設けられた取付穴(長穴)への取付手順の一例について説明する。
図3に示すように、板状フィン2には、プレス加工されて内周が円弧状に折曲げられたフィンカラー部21により、楕円形状の取付穴22(図1参照)が形成されており、各板状フィン2は、フィンカラー部21を同じ向きに揃え、フィンカラー部21によって規制された所定の間隔で治具等によって保持されている。
【0029】
そして、各板状フィン2のフィンカラー部21で形成された取付穴22に伝熱管3を挿入する。ついで、図4に示すように、超硬合金等の金属材料からなり、断面形状が伝熱管3の第1、第2の冷媒回路31a,31bと相似形(ほぼD字状)で、その外形が冷媒回路31a,31bの突条33の先端部を結ぶ線より若干大きく、対向面の両外端部がそれぞれ円弧状(以下、曲げR部という)に形成された一対の拡管ビュレット玉100を有する拡管装置により、一対の拡管ビュレット玉100を、機械的手段又は流体圧により、図3に示すように、その外周が内壁に設けた複数の突条33及び突起部34に接して第1、第2の冷媒流路31a,31b内に押し込まれる。なお拡管ビュレット玉100に設けた曲げR部は、長軸壁3a,3bの内壁と隔壁32との境界部に設けた突起部34の平坦幅Wより大きいことが望ましい。
【0030】
これにより、第1、第2の冷媒流路31a,31bは、突条33を介して同時に拡管され、伝熱管3は順次各板状フィン2のフィンカラー部21に接合され、各板状フィン2に一体に固定される。拡管ビュレット玉100により伝熱管3を拡管した状態を図5に示す。
【0031】
上記のようにして板状フィン2に伝熱管3が取付けられた熱交換器1においては、図6に示すように、伝熱管3の拡管後の突条33の高さh(突出長)が高いほど冷媒との接触面積が増大するため、熱伝達率(したがって熱交換率)が高くなる。しかし、拡管後の突条33の高さhが0.3mmを超えると、熱伝達率の増加量より圧力損失の増加量の方が大きくなり、結果として、熱交換率が低下する。一方、拡管後の突条33の高さが0.1mm未満の場合は、熱伝達率は向上しない。なお、突条33の間隔gは、実施例では0.38mmであったが、これに限定するものではない。
【0032】
よって、本実施の形態に係る伝熱管3においては、拡管後の突条33の高さhは、0.1〜0.3mm程度であることが望ましい。なお、突条33の断面形状は四角形に限定するものではなく、三角形状、台形状、半円形状など、適宜の断面形状とすることができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態に係る熱交換器は、伝熱管3の断面形状が楕円形状で、長軸方向の中央に設けた隔壁32の両側に断面ほぼD字状の第1、第2の冷媒流路31a,31bが対向して設けられている。そして、長軸壁3a,3bの肉厚TW1が短軸壁3c,3dの肉厚TW2より厚く形成され、短軸側に対向する長軸壁3a,3bと、長軸側に対向する短軸壁3c,3dの内壁面には、それぞれ所定高さhと間隔gで複数の突条33が軸方向に設けられ、長軸壁3a,3bの内壁と隔壁32の両側の境界部の根元の軸方向には、所定の平坦幅Wの段差を有する突起部34が設けられている。
【0034】
そして、伝熱管3は、隔壁32の両側に設けた第1、第2の冷媒流路31a,31bが、外周が複数の突条33に接する拡管ビュレット玉100によって拡管され、板状フィン2に接合されている。
このとき、突起部34は斜め上方に押圧されて拡管されるので、長軸壁3a,3bの平坦部に撓み(窪み)が生じることがなく、伝熱管3と板状フィン2との密着性を向上することができ、伝熱管3と板状フィン2との間の接触熱抵抗を低減することができるので、両者の間の接触熱伝達率が向上し、伝熱性能を高めることができる。
【0035】
また、第1、第2の冷媒流路31a,31bの間に設けられた隔壁32により、楕円形状の伝熱管3の耐圧強度を保持することができるため、伝熱管3内の圧力により伝熱管3が変形することがなく、板状フィン2との密着性を良好に保つことができるので、伝熱性能に優れた熱交換器を得ることができる。
【0036】
さらに、伝熱管3を拡管することにより板状フィン2に接合するようにしたので、ロウ付けにより接合する場合に比べてはるかに組付けが容易であり、製造コストを低減することができる。
また、各板状フィン2は同じ向きのフィンカラー部21によって間隔を一定に保持することができ、楕円形状の伝熱管3との密着性を良好に保つことができるため、伝熱管3を楕円形化、小型細径化することができ、これにより、通風抵抗が減少し、熱交換能力を増大できる熱交換器を得ることができる。
【0037】
また、第1、第2の冷媒流路31a,31bの内壁面の軸方向に複数の突条33を設けたので冷媒との接触面積が増大し、かつ突条33の高さhを0.1〜0.3mm程度としたので、流路内圧力が増大することなく伝熱性能をより向上することができる。
【0038】
[実施の形態2]
図7は本発明の実施の形態2に係る熱交換器の伝熱管の平断面図である。なお、実施の形態1の伝熱管と同じ部分には、これと同じ符号が付してある。
本実施の形態に係る熱交換器の伝熱管3は、実施の形態1の場合と同様に、長軸方向の中央部には隔壁32が設けられており、その両側には断面形状がほぼD字状の第1、第2の冷媒流路31a,31bが設けられている。そして、長軸壁3a,3bの直線部分の平均肉厚TW1と、短軸壁3c,3dの円弧部分の肉厚TW2とはほぼ等しく形成されている。
【0039】
また、長軸壁3a,3bの内壁面に設けられた断面ほぼ四角形状(先端部は若干丸みをつけた形状となっている)の突条33a,33b,33cの高さh1,h2,h3は、短軸壁3c,3dの内壁面に設けられたほぼ同形状の突条33dの高さh4より高く形成されており、さらに、長軸壁3a,3bの内壁面に設けた突条33bの高さh2は、突条33aの高さh1より高く形成されている。すなわち、長軸壁3a,3bの内壁面に設けた複数の突条33a,33b,33cの高さh1,h2,h3は、隔壁32に近いほど高く形成されている。
【0040】
これら複数の突条33a,33b,33c,33dの高さh1,h2,h3,h4は、拡管ビュレット玉100の外周面に接する高さに形成されている。なお、短軸壁3c,3dの内壁面に設けた突条33dの高さh4は、0.1〜0.3mm程度とすることが望ましく、また、各突条33a〜33dの断面形状は四角形に限定するものではなく、三角形状、台形状、半円形状など、適宜の断面形状とすることができる。
【0041】
本実施の形態に係る伝熱管3は、実施の形態1の場合と同様に、板状フィン2の取付穴22に挿入され、第1、第2の冷媒流路31a,31bをこれに挿入した拡管ビュレット玉100により突条33a,33bを介して拡管し、板状フィン2に固定する。このときの伝熱管3の状態を図8に示す。
【0042】
本実施の形態によれば、複数の突条33a〜33dの高さhが、隔壁32に近いほど高く形成されているので、伝熱管3の拡管後の長軸壁3a,3bに撓み(窪み)が生ずることがなく、拡管後の伝熱管3の外面と板状フィン2との密着性を向上することができ、このため、両者間の接触熱抵抗を低減することができる。よって、伝熱管3と板状フィン2との間の接触熱伝達率が向上し、伝熱性能を高めることができる。
【0043】
[実施の形態3]
本実施の形態は、実施の形態1又は2に係る熱交換器1を、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を順次配管で接続してなる冷凍サイクル回路において、凝縮器及び蒸発器の両者又はいずれか一方に使用したものである。この場合、作動流体として、HC単一冷媒若しくはHCを含む混合冷媒、又はR32、R410A、R407C、テトラフルオロプロペンと、このテトラフルオロプロペンより沸点の低いHFC系冷媒とからなる非共沸混合冷媒、あるいは二酸化炭素のいずれかの冷媒を使用する。
【0044】
[実施の形態4]
本実施の形態は、冷蔵庫又は空気調和機において、実施の形態3に係る冷凍サイクル回路を備えたものである。なお、実施の形態3に係る冷凍サイクル回路を使用する機器は、上記冷蔵庫、空気調和機に限定するものではなく、例えば、低温倉庫、ショーケース、冷凍機など、他の装置やシステムにも使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 熱交換器、2 板状フィン、3 伝熱管、3a,3b 長軸壁、3c,3d 短軸壁、4 スリット、21 フィンカラー部、22 取付穴、31a,31b 冷媒流路、32 隔壁、33,33a〜33d 突条、34 突起部、100 拡管ビュレット玉、TW1 長軸壁の平均肉厚、TW2 短軸壁の肉厚、TW3 隔壁の肉厚、h,h1〜h4 突条の高さ、W 突起部の平均幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で配置された複数の板状フィンと、該板状フィンに直交する方向に挿通され、内部を冷媒が流れる複数の伝熱管とを備え、
前記伝熱管は、断面がほぼ楕円形状でその長軸方向が空気の流れ方向に沿って前記板状フィンに設置され、内部には長軸方向の中央部に設けた隔壁の両側において軸方向に形成された断面ほぼD字状の第1、第2の冷媒流路を有し、前記楕円形状の短軸方向の長軸壁の肉厚が前記長軸方向の短軸壁の肉厚より厚く形成され、
前記長軸壁及び短軸壁の内壁面にはそれぞれ所定高さと間隔で複数の突条が軸方向に設けられ、また前記長軸壁と隔壁との接続部の根元の軸方向には所定の平坦幅の突起部が設けられ、
前記第1、第2の冷媒流路に前記突条及び突起部に接する拡管ビュレット玉を挿入して拡管し、前記伝熱管を前記板状フィンに接合することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記長軸壁は直線状に形成され、前記短軸壁は半円状に形成されて前記長軸壁の直線部分の平均肉厚が前記短軸壁の肉厚より厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記長軸壁の平均肉厚は、前記短軸壁の1.04〜1.25倍であることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
所定の間隔で配置された複数の板状フィンと、該板状フィンに直交する方向に挿通され、内部を冷媒が流れる複数の伝熱管とを備え、
前記伝熱管は、断面がほぼ楕円形状でその長軸方向が空気の流れ方向に沿って前記板状フィンに設置され、内部には長軸方向の中央部に設けた隔壁の両側において軸方向に形成された断面ほぼD字状の第1、第2の冷媒流路を有し、前記楕円形状の短軸方向の長軸壁の直線部分の平均肉厚と前記長軸方向の短軸壁の肉厚とはほぼ等しく形成され、
前記長軸壁及び短軸壁の内壁面にはそれぞれ所定の高さと間隔で複数の突条が軸方向に設けられ、かつこれら突条は、前記長軸壁の内壁面に設けた突条の高さが前記短軸壁の内壁面に設けた突条の高さより高く形成され、また前記長軸壁と隔壁との接続部の根元の軸方向には所定の平坦幅の突起部が設けられ、
前記第1、第2の冷媒流路に前記突条及び突起部に接する拡管ビュレット玉を挿入して拡管し、前記伝熱管を前記板状フィンに接合することを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
前記長軸壁の内壁面に設けた突条は、前記隔壁に近いほどその高さが高いことを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記隔壁の肉厚は、前記短軸壁の肉厚の1.0〜1.4倍であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記伝熱管の拡管後の突条の高さは0.1〜0.3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を順次配管で接続してなり、前記凝縮器及び蒸発器の両者又はいずれか一方に前記請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱交換器を用いたことを特徴とする冷凍サイクル回路。
【請求項9】
前記請求項8に記載の冷凍サイクル回路を用いたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項10】
前記請求項8に記載の冷凍サイクル回路を用いたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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