説明

熱交換器、該熱交換器を用いた冷凍回路及び車両用空調システム

【課題】非共沸の混合流体が効率的に冷却され且つ小型化に適した熱交換器、並びに、成績係数が高く且つ小型化に適した冷凍回路及び車両用空調システムを提供する。
【解決手段】非共沸の混合流体を冷却するための熱交換器(26)は、筒形状の本体(32a)及び本体(32a)の内部を並列な高温流路(48)と低温流路(50)とに仕切る仕切り壁(46)を有する第1のヘッダパイプ(32)と、第1のヘッダパイプ(32)から離間した第2のヘッダパイプ(34)と、第1のヘッダパイプ(32)の高温流路(48)と第2のヘッダパイプ(34)とを連通する複数の高温用チューブ(40)と、第1のヘッダパイプ(32)の低温流路(50)と第2のヘッダパイプ(34)とを連通する複数の低温用チューブ(42)と、高温用チューブ(40)及び低温用チューブ(42)の双方にそれぞれ接触する複数のフィン(44)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、該熱交換器を用いた冷凍回路及び車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍回路は、例えば車両用空調システムに用いられ、冷媒が循環する循環流路を備える。循環流路には、冷媒の流動方向でみて、圧縮機、熱交換器、膨張器及び蒸発器が順次介挿される。
熱交換器は、例えば2本のヘッダパイプを有し、ヘッダパイプ同士は複数のチューブによって連結される。チューブ間にはフィンが配置され、チューブ内を流れる冷媒の熱が、フィンを介して外気に放出される(特許文献1)。
【0003】
より詳しくは、ヘッダパイプの内部は仕切り板によって軸線方向に仕切られ、チューブは、冷媒の流動方向でみて複数の群に分けられる。各群において上下に隣り合うチューブでは、同一の方向に流体が流れる。
一方、冷媒には1種類の成分のみからなるものと、複数種類の成分を混合した混合冷媒があり、混合冷媒には、共沸混合冷媒と非共沸混合冷媒とがある。非共沸混合冷媒については、例えば従来のHFC系冷媒を代替するために、その研究・開発が進められている。
【特許文献1】特開昭63-34466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱交換器を用いて1種類の成分のみからなる冷媒を冷却して凝縮させる場合、その変化は潜熱変化であり、エンタルピが低下するのみで冷媒の温度は低下しない。
これに対し、熱交換器を用いて非共沸混合冷媒を冷却して凝縮させる場合、その変化は顕熱変化を伴い、エンタルピが低下するのみならず冷媒の温度も低下する。
本発明は、この点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、非共沸の混合流体が効率的に冷却され且つ小型化に適した熱交換器、並びに、成績係数が高く且つ小型化に適した冷凍回路及び車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねる過程において、非共沸の混合流体を冷却する際に、顕熱変化による流体自体の温度低下を利用して冷却効率を高めることに着想し、本発明に想到した。
すなわち、本発明によれば、非共沸の混合流体を冷却するための熱交換器において、筒形状の本体及び当該本体の内部を並列な高温流路と低温流路とに仕切る仕切り壁を有する第1のヘッダパイプと、前記第1のヘッダパイプから離間した第2のヘッダパイプと、前記第1のヘッダパイプの高温流路と前記第2のヘッダパイプとを連通する複数の高温用チューブと、前記第1のヘッダパイプの低温流路と前記第2のヘッダパイプとを連通する複数の低温用チューブと、前記高温用チューブ及び前記低温用チューブの双方にそれぞれ接触する複数のフィンとを備えることを特徴とする熱交換器が提供される(請求項1)。
【0006】
好ましくは、前記各フィンによって相互に連結されて対をなす高温用チューブ及び低温用チューブは、前記第1のヘッダパイプの幅方向に離間している(請求項2)。
好ましくは、前記各フィンによって相互に連結された高温用チューブ及び低温用チューブは、前記第1のヘッダパイプの長手方向に離間し、前記高温用チューブと前記高温流路との間及び前記低温用チューブと前記低温流路との間のうち一方は、前記仕切り壁を貫通して連通している(請求項3)。
【0007】
好ましくは、前記高温用チューブ及び低温用チューブは扁平な外形形状をそれぞれ有し、前記高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向は、前記第1のヘッダパイプの長手方向に対して傾斜している(請求項4)。
好ましくは、前記第1のヘッダパイプの一端側では、複数の対に渡って前記高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向は、前記第1のヘッダパイプの長手方向から、前記高温用チューブ及び低温用チューブの長手方向の回りにて一の方向に傾斜しており、前記第1のヘッダパイプの他端側では、複数の対に渡って前記高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向は、前記第1のヘッダパイプの長手方向から、前記高温用チューブ及び低温用チューブの長手方向の回りにて前記一の方向とは逆の方向に傾斜している(請求項5)。
【0008】
また、本発明によれば、前記非共沸の混合流体としての冷媒が循環する循環流路に、前記冷媒の流動方向でみて順次介挿された圧縮機、請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱交換器、膨張器及び蒸発器を備えたことを特徴とする冷凍回路が提供される(請求項6)。
更に、本発明によれば、請求項1乃至6の何れか1項に記載の冷凍回路を備えたことを特徴とする車両用空調システムが提供される(請求項7)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の熱交換器では、第1のヘッダパイプの本体の内部に、高温流路及び低温流路が並列に形成されている。高温流路と第2のヘッダパイプとの間は高温用チューブを通じて連通し、低温流路と第2のヘッダパイプとの間は低温用チューブを通じて連通している。これらの高温用チューブと低温用チューブとでは、それぞれを流れる非共沸の混合流体の温度が異なるが、これは非共沸の混合流体が冷却される場合、顕熱変化が生じることによる。
【0010】
そして、この熱交換器では、複数のフィンの各々が、高温用チューブ及び低温用チューブの双方に接触しており、各フィンは、2つの高温用チューブに接触している場合よりも熱くなり難い。つまり、高温用チューブとフィンとの間で温度差が確保される。このため、この熱交換器では、高温用チューブの熱が各フィンに効率的に伝達され、高温用チューブを流れる非共沸の混合流体が効率的に冷却される。この結果として、この熱交換器によれば、非共沸の混合流体が効率的に冷却される。
【0011】
また、この熱交換器によれば、非共沸の混合流体が効率的に冷却されるため、従来の熱交換器に比べ、冷却能力を保ちながら小型化及び軽量化が図られる。
請求項2の熱交換器では、第1のヘッダパイプの幅方向にて、対をなす高温用チューブと低温用チューブとが離間しており、簡単な構成にて、非共沸の混合流体が効率的に冷却される。
【0012】
請求項3の熱交換器では、高温用チューブ及び低温用チューブが第1のヘッダパイプの長手方向に並んでおり、簡単な構成にて、非共沸の混合流体が効率的に冷却される。
請求項4の熱交換器では、第1のヘッダパイプの長手方向に対して、扁平な高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向が傾斜していることで、より幅広な高温用チューブ及び低温用チューブを使用することができる。これにより高温用チューブ及び低温用チューブの表面積が増大され、非共沸の混合流体が一層効率的に冷却される。
【0013】
また、高温用チューブ及び低温用チューブを傾斜させることによって、従来の熱交換器に用いられていた高温用チューブ及び低温用チューブを採用可能であり、高温用チューブ及び低温用チューブの共通化により生産コストが削減される。
更に、高温用チューブ及び低温用チューブを傾斜させることによって、第1のヘッダパイプの幅を増大させる必要がなく、熱交換器の小型化が更に図られる。
【0014】
請求項5の熱交換器では、第1のヘッダパイプの一端側と他端側とで、高温用チューブ及び低温用チューブの傾斜する方向が異なることで、熱交換器を通過した風が集束させられる。このため、風の流れる方向でみて、熱交換器の下流に例えばラジエータ等の空冷が必要な機器を配置すれば、当該機器が集束された風によって効率的に冷却される。
請求項6の冷凍回路は、請求項1乃至5の何れかの熱交換器を有することにより、非共沸の冷媒が効率的に冷却されるため、成績係数において優れている。また、この冷凍回路では、熱交換器の小型化及び軽量化に伴い、小型化及び軽量化が図られる。
【0015】
請求項7の車両用空調システムは、請求項6の冷凍回路を有することによって、成績係数において優れている。また、この車両用空調システムは、冷凍回路の小型化及び軽量化が図られるため、車両への搭載性においても優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、第1実施形態に係る車両用空調システムの概略構成を示し、車両用空調システムは冷凍回路10を有する。冷凍回路10は、車室12へ送られる空気流の冷却又は除湿に利用される。
冷凍回路は循環流路14を有し、非共沸混合冷媒が、冷凍機油としての潤滑油を少量含んだ状態で循環流路14を循環する。非共沸混合冷媒(以下、単に冷媒ともいう)は、例えばR407Cであり、R407Cは、R134a、R125及びR32を混合したものである。R407Cは、例えば、R22の代替冷媒として用いられる。
【0017】
循環流路14は、エンジンルーム16から隔壁18を貫通して車室12の前方部分に渡り、車室12の前方部分は、インストルメントパネル20によって機器スペース22として区画されている。循環流路14には、冷媒の流動方向でみて、圧縮機24、凝縮器としての熱交換器26、膨張器(膨張弁)28及び蒸発器30が順次介挿されている。
以下、熱交換器26について説明する。
【0018】
図2に示したように、熱交換器26は、それぞれ円筒形状の第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34を有し、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34は相互に離間し且つ平行である。
第1のヘッダパイプ32の一端には、入口ポート36及び出口ポート38が設けられ、入口ポート36には循環流路14の一部を介して圧縮機24が接続されている。一方、出口ポート38には、循環流路14の一部を介して膨張器28が接続されている。
【0019】
第1のヘッダパイプ32と第2のヘッダパイプ34との間には、複数の扁平なチューブが設けられている。チューブには、高温用チューブ40と低温用チューブ42とがあり、第1のヘッダパイプ32と第2のヘッダパイプ34の長手方向にて、高温用チューブ40と低温用チューブ42が交互に配列されている。なお、高温用チューブ40と低温用チューブ42の厚さ方向は、第1のヘッダパイプ32と第2のヘッダパイプ34の長手方向に一致している。
【0020】
高温用チューブ40と低温用チューブ42との間には、放熱のためのフィン44が配置されている。これら複数のフィン44は、例えば波形のフィンであり、高温用チューブ40の外面及び低温用チューブ42の外面の双方にそれぞれ接触している。
図3は、熱交換器26の縦断面の一部を概略的に示している。第1のヘッダパイプ32の円筒形状の本体(周壁)32aの両端は閉塞されており、また図3に示したように、本体32aの内部は、仕切り壁46によって2つの領域に区画されている。
【0021】
具体的には、仕切り壁46は、第1のヘッダパイプ32の両端間に渡って長手方向に延び、第1のヘッダパイプ32の本体32aの内部を、それぞれ半円筒形状の高温流路48と低温流路50とに仕切っている。そして、仕切り壁46の法線方向(厚さ方向)は、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の長手方向に平行であり、例えば高温流路48が第2のヘッダパイプ34側に配置される。
【0022】
高温用チューブ40及び低温用チューブ42の両端部は、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34の周壁を気密に貫通しているけれども、第1のヘッダパイプ32側の高温用チューブ40の端部は、仕切り壁46までは貫通してはいない。一方、第1のヘッダパイプ32側の低温用チューブ42の端部は、仕切り壁46も気密に貫通している。
なお、前述した入口ポート36は高温流路48に直接連通しており、出口ポート38は低温流路50に直接連通している。
【0023】
上述した熱交換器26は、公知の方法によって製造することが可能である。例えば、第1のヘッダパイプ32、第2のヘッダパイプ34、高温用チューブ40、及び低温用チューブ42は、アルミ材料を押し出し成形することによって製造可能であり、これらの間の接続は、ろう付けによって行うことができる。
以下、上述した車両用空調システムの動作について説明する。
【0024】
圧縮機24はベルトを介して伝達されるエンジン51からの駆動力によって作動され、循環流路14の復路から気相の冷媒を吸い込んで圧縮し、高温高圧の冷媒にして循環流路14の往路に吐出する。つまり、圧縮機24は冷媒を圧縮しながらその流動を生起する。
圧縮機24からの冷媒は、熱交換器26の内部を通過する際、熱交換器26がプロペラファン52及び車両前方からの風を受けることで空冷される。この空冷により、気相の冷媒はそのエンタルピが減少して凝縮し、高温高圧の液相の冷媒になる。熱交換器26を通過した冷媒は、膨張器28を通過することにより膨張して圧力及び温度が低下し、気液混合状態の冷媒になる。膨張器28を通過した冷媒は、蒸発器30内にて気化熱を吸収して気化し、低圧低温の気相の冷媒になる。蒸発器30で気化した冷媒は圧縮機24に吸入され、上述したサイクルが繰り返される。
【0025】
このサイクルの間、ブロワファン53によって生成された空気流は、蒸発器30を通過する際に冷却されて冷風になり、この冷風が、必要に応じてヒータコア(図示せず)により加熱された後、車室12内に供給されて車室12が冷房又は除湿される。
より詳しくは、熱交換器26にあっては、入口ポート36から流入した冷媒が、高温流路48、高温用チューブ40、第2のヘッダパイプ34の内部、低温用チューブ42、低温流路50を順次流れて出口ポート38から流出する。冷媒の熱は、高温用チューブ40及び低温用チューブ42を流れる間にフィン44を介して外気に伝達される。
【0026】
なお、熱交換器26にあっては、入口ポート36を出口ポートとして使用し、出口ポート38を入口ポートとして使用してもよく、この場合、熱交換器26における非共沸混合冷媒の流れが逆向きになる。
上述した熱交換器26では、第1のヘッダパイプ32の内部に、高温流路48及び低温流路50が並列に形成されている。高温流路48と第2のヘッダパイプ34との間は高温用チューブ40を通じて連通し、低温流路50と第2のヘッダパイプ34との間は低温用チューブ42を通じて連通している。これらの高温用チューブ40と低温用チューブ42とでは、それぞれを流れる非共沸混合冷媒の温度が異なるが、これは非共沸混合冷媒が冷却される場合、顕熱変化が生じることによる。つまり、非共沸混合冷媒では、露点と沸点とが異なるため、気相の冷媒が冷却により凝縮する際に、冷媒の温度が徐々に低下することによる。
【0027】
そして、この熱交換器26では、複数のフィン44の各々が、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の双方に接触しており、各フィン44は、2つの高温用チューブ40に接触している場合よりも熱くなり難い。このため、この熱交換器26では、高温用チューブ40の熱が各フィン44に効率的に伝達され、高温用チューブ40を流れる非共沸の混合流体が効率的に冷却される。この結果として、この熱交換器26によれば、非共沸混合冷媒が効率的に冷却される。
【0028】
また、この熱交換器26によれば、非共沸混合冷媒が効率的に冷却されるため、従来の熱交換器に比べ、冷却能力を保ちながら小型化及び軽量化が図られる。
更に、熱交換器26では、高温用チューブ40及び低温用チューブ42が第1のヘッダパイプ32の長手方向に並んでおり、簡単な構成にて、非共沸混合冷媒が効率的に冷却される。
そして、上述した冷凍回路10は、熱交換器26を有することにより、非共沸混合冷媒が効率的に冷却されるため、成績係数において優れている。また、この冷凍回路10では、熱交換器26の小型化及び軽量化に伴い、小型化及び軽量化が図られる。
【0029】
更に、上述した車両用空調システムは、冷凍回路10を有することによって、成績係数において優れている。また、この車両用空調システムは、冷凍回路10の小型化及び軽量化が図られるため、車両への搭載性においても優れている。
図4は、第2実施形態に係る熱交換器54の断面の一部を示し、第2のヘッダパイプ34から第1のヘッダパイプ32に向かって、高温用チューブ40、低温用チューブ42及びフィン44の横断面を見た図である。
【0030】
熱交換器54を構成している部材は、熱交換器26を構成している部材と同じであるが、高温用チューブ40、低温用チューブ42及びフィン44が第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34に対して傾斜している点において、熱交換器54は熱交換器26と異なっている。
具体的には、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の厚さ方向が、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の長手方向の回りに、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34の長手方向から傾斜している。
【0031】
その上、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34の長手方向中央から一端にかけて設けられた高温用チューブ40及び低温用チューブ42の群と、長手方向中央から他端にかけて設けられた高温用チューブ40及び低温用チューブ42の群とでは、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の長手方向の回りでの傾斜方向が相互に逆向きである。換言すれば、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の傾斜角度θは、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34を長手方向中央にて横切る面に関して、鏡映対称となっている。
【0032】
なお、図4に示したように、各フィン44には、複数の切り起こしが形成されていてもよい。
上述した熱交換器54では、第1のヘッダパイプ32の長手方向に対して、扁平な高温用チューブ40及び低温用チューブ42の厚さ方向が傾斜していることで、より幅広な高温用チューブ40及び低温用チューブ42を使用することができる。これにより高温用チューブ40及び低温用チューブ42の表面積が増大され、非共沸混合冷媒が一層効率的に冷却される。
【0033】
あるいは、高温用チューブ40及び低温用チューブ42を傾斜させることによって、熱交換器26の場合に比べて、第1のヘッダパイプ32の幅(直径)を縮小することが可能であり。これにより熱交換器54にあっては、小型化が更に図られる。
また、熱交換器54では、第1のヘッダパイプ32の一端側と他端側とで、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の傾斜する方向が異なることで、熱交換器54を通過した風が集束させられる。このため、風の流れる方向でみて、熱交換器54の下流に例えばラジエータ等の空冷が必要な機器を配置すれば、当該機器が集束された風によって効率的に冷却される。
【0034】
なお、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の傾斜角度θは、特には限定されないが、好ましくは、30°〜60°に設定される。
図5は、第3実施形態に係る熱交換器55の斜視図であり、図6は、図5中のVI-VI線に沿う断面図である。
熱交換器55を構成する部材は、熱交換器26を構成する部材と同一であるけれども、熱交換器55と熱交換器26とでは部材の配置が異なっている。
【0035】
熱交換器55における第1のヘッダパイプ32は、熱交換器26における第1のヘッダパイプ32の場合に比べて、自身の長手方向の回りに90°回転している。つまり、仕切り壁46の幅方向は、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の長手方向と平行である。
1つのフィン44によって相互に連結された1対の高温用チューブ40及び低温用チューブ42は、第1のヘッダパイプ32の幅方向(直径方向)に離間している。各高温用チューブ40は、高温流路48を区画している第1のヘッダパイプ32の本体32aの部分を気密に貫通し、一方、各低温用チューブ42は、低温流路50を区画している第1のヘッダパイプ32の本体32aの部分を気密に貫通している。
【0036】
そして、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の厚さ方向は、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34の長手方向から、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の長手方向の回りにて傾斜している。この場合も、熱交換器54の場合と同様に、第1のヘッダパイプ32の一端側における高温用チューブ40及び低温用チューブ42の傾斜角度θは、他端側における高温用チューブ40及び低温用チューブ42の傾斜角度θと鏡映対称である。
【0037】
上述した熱交換器55では、第1のヘッダパイプ32の幅方向にて、対をなす高温用チューブ40と低温用チューブ42とが離間しており、簡単な構成にて、非共沸混合冷媒が効率的に冷却される。
また、第1のヘッダチューブ32の向きが、熱交換器26の場合とは90°異なり、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の長手方向でみたときの高温流路48及び低温流路50の見かけの面積(幅)が狭くても、高温用チューブ40及び低温用チューブ42を傾斜させることによって、従来の熱交換器に用いられていた高温用チューブ40及び低温用チューブ42を採用可能である。このため、熱交換器55によれば、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の共通化により生産コストが削減される。
【0038】
あるいは、高温用チューブ40及び低温用チューブ42を傾斜させることによって、第1のヘッダパイプ32の幅を増大させる必要がなく、熱交換器26の小型化が更に図られる。
また、熱交換器54の場合と同様に、第1のヘッダパイプ32の一端側と他端側とで、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の傾斜する方向が異なることで、熱交換器55を通過した風が集束させられる。
【0039】
図7は、第4実施形態に係る熱交換器56の断面の一部を示し、第2のヘッダパイプ34から第1のヘッダパイプ32に向かって、高温用チューブ40、低温用チューブ42及びフィン44の横断面を見た図である。
熱交換器56にあっては、高温用チューブ40及び低温用チューブ42の厚さ方向が第1のヘッダパイプ32の長手方向に揃っている点が熱交換器55とは異なる。また、熱交換器56のフィン58は、熱交換器55のフィン44に比べて幅広であり、1つのフィン58が、2つの高温用チューブ40及び2つの低温用チューブ42の外面に接触している点においても、熱交換器56は、熱交換器55とは異なっている。
【0040】
この熱交換器56の場合も、フィン58によって高温用チューブ40と低温用チューブ42とが熱的に接続されていることにより、フィン58が厚くなり難く、非共沸混合冷媒が効率的に冷却される。なお、熱交換器56の場合、フィン58が幅広であることによってフィン58の熱容量が増大されており、この点からもフィン58が熱くなり難い。
本発明は、上記した第1乃至第4実施形態に限定されることはなく、種々変形が可能であり、例えば熱交換器26,54,55,56は、R407C以外の非共沸混合冷媒の冷却に使用することが可能であるのは勿論、冷媒以外の非共沸の混合流体の冷却にも使用可能である。
【0041】
また、高温用チューブ40及び低温用チューブ42は、必ずしも扁平でなくてもよいが、表面積を増大するためには、扁平であるのが好ましい。
更に、第1のヘッダパイプ32及び第2のヘッダパイプ34は、角筒形状であってもよい。
最後に、熱交換器26,54,55,56及び冷凍回路10は、車両用空調システムの他にも、室内用空調システム、冷凍冷蔵システム、給湯システム、廃熱回収システム等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調システムの概略構成図である。
【図2】図1の車両用空調システムに適用された熱交換器の概略を示す斜視図である。
【図3】図2の熱交換器の縦断面の一部を拡大して示す図である。
【図4】第2実施形態に係る熱交換器の横断面の一部を拡大して示す図である。
【図5】第3実施形態に係る熱交換器の概略を示す斜視図である。
【図6】図5中のVI-VI線に沿う断面の一部を拡大して示す図である。
【図7】第4実施形態に係る熱交換器の横断面の一部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0043】
26 熱交換器
32 第1のヘッダパイプ
34 第2のヘッダパイプ
32a 本体
40 高温用チューブ
42 低温用チューブ
44 フィン
46 仕切り壁
48 高温流路
50 低温流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共沸の混合流体を冷却するための熱交換器において、
筒形状の本体及び当該本体の内部を並列な高温流路と低温流路とに仕切る仕切り壁を有する第1のヘッダパイプと、
前記第1のヘッダパイプから離間した第2のヘッダパイプと、
前記第1のヘッダパイプの高温流路と前記第2のヘッダパイプとを連通する複数の高温用チューブと、
前記第1のヘッダパイプの低温流路と前記第2のヘッダパイプとを連通する複数の低温用チューブと、
前記高温用チューブ及び前記低温用チューブの双方にそれぞれ接触する複数のフィンと
を備えることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記各フィンによって相互に連結されて対をなす高温用チューブ及び低温用チューブは、前記第1のヘッダパイプの幅方向に離間していることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記各フィンによって相互に連結された高温用チューブ及び低温用チューブは、前記第1のヘッダパイプの長手方向に離間し、
前記高温用チューブと前記高温流路との間及び前記低温用チューブと前記低温流路との間のうち一方は、前記仕切り壁を貫通して連通している
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記高温用チューブ及び低温用チューブは扁平な外形形状をそれぞれ有し、前記高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向は、前記第1のヘッダパイプの長手方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項2又は3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1のヘッダパイプの一端側では、複数の対に渡って前記高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向は、前記第1のヘッダパイプの長手方向から、前記高温用チューブ及び低温用チューブの長手方向の回りにて一の方向に傾斜しており、
前記第1のヘッダパイプの他端側では、複数の対に渡って前記高温用チューブ及び低温用チューブの厚さ方向は、前記第1のヘッダパイプの長手方向から、前記高温用チューブ及び低温用チューブの長手方向の回りにて前記一の方向とは逆の方向に傾斜している
ことを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記非共沸の混合流体としての冷媒が循環する循環流路に、前記冷媒の流動方向でみて順次介挿された圧縮機、請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱交換器、膨張器及び蒸発器を備えたことを特徴とする冷凍回路。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の冷凍回路を備えたことを特徴とする車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−115430(P2009−115430A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291983(P2007−291983)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】