説明

熱交換器および冷蔵庫

【課題】蛇行状に曲げ加工されたシームレス冷媒チューブをプレートフィンに挿入する熱交換器において、冷媒チューブ挿入穴を、熱交換能力低下を伴うことなく確保する。
【解決手段】プレートフィン2の冷媒チューブ挿入穴4は、矩形部5と、矩形部5の長辺方向両端に、矩形部短辺5aより大きな直径を有する円弧部6が当接し、円弧部6周縁にフィンカラー7を備え、矩形部5を、当該部分を充填するプレートフィン2を、矩形部長辺5b外側方向に、略Z形状折り曲げ部を設けることにより構成したので、伝熱面積低減、空気抵抗増大、着霜等の熱交換能力低下要素を抑制し、高性能な熱交換器となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル等に使用される熱交換器と、その熱交換器を用いた冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍空調機器に用いられる熱交換器の冷媒漏れは、冷凍空調機器自体の機能を喪失してしまうことから、熱交換器の冷媒漏れの低減が大きな課題である。
【0003】
また、地球温暖化対策として冷媒のノンフロン化が加速する中で、代替冷媒の大きな候補の可燃性であるHC(炭化水素)冷媒においては、製品安全の面からも熱交換器の冷媒漏れの防止は必要不可欠である。
【0004】
かかる構成の熱交換器において、冷媒漏れの発生箇所は主に配管の接合部分であり、かかる点から、冷媒回路を一本の連続した冷媒チューブで構成した接合部を有しない熱交換器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8は、このような従来の熱交換器を示す斜視図である。図8に示すように、熱交換器51は、冷媒チューブ53と、複数の冷媒チューブ挿入穴54を設けた一群のプレートフィン52を有している。
【0006】
熱交換器51の組立ては、まずプレートフィン52を所定の間隔に配置し、この状態において、冷媒チューブ53を、その配置された一群のプレートフィン52に貫通させる。冷媒チューブ53を一群のプレートフィン52を貫通した後、冷媒チューブ53管内に液圧を加える等して冷媒チューブ53の外径を拡大(拡管)する。これにより、冷媒チューブ53とプレートフィン52群を密着固定する。
【0007】
また、図9に示すように、冷媒チューブ挿入穴54加工の際に、当該部分を切り落とすことなく、折り曲げて開口させることにより、冷媒チューブ挿入穴54形成のために、冷媒チューブ挿入穴54相当の伝熱面積をロスすることなく、熱交換能力の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−86490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図10に示すように、上記従来の熱交換器51において、折り曲げ部55は、熱交換器51に提供される気流の流れ方向を遮断する位置関係で形成されているため、空気抵抗増大により風量が低下し、熱交換能力が低下するという問題がある。
【0010】
また、熱交換器51を蒸発器として使用する場合、プレートフィン52の表面温度が、周囲空気の露点温度より低下し、プレートフィン52表面が結露した場合、結露水が折り曲げ部55に滞留し、空気抵抗増加、または着霜により熱交換能力が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、熱交換能力低下を防止しつつ、折り曲げ
部による伝熱面積確保を図ることにより、高性能な熱交換器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の熱交換器は、直管部および曲管部が連続する如く蛇行状に形成された冷媒チューブと、前記冷媒チューブが貫通する冷媒チューブ挿入穴を複数有し、相互に間隔をおいて配置された多数のプレートフィンを備え、前記冷媒チューブ挿入穴は、矩形部と、前記矩形部の長辺方向両端に円弧部を有し、前記円弧部周縁にフィンカラーを備え、前記矩形部を、当該部分を充填するプレートフィンを、矩形部長辺外側方向に、略Z形状折り曲げ部を設けることにより構成したものである。
【0013】
冷媒チューブ挿入穴の矩形部は、当初、当該部分を充填していたプレートフィンを、略Z形状に扉状に折り曲げることで形成されているため、同等面積のプレートフィンを単に開閉扉状に折り曲げる場合と比較して、折り曲げ部高さを低く抑えることができる。
【0014】
これにより、折り曲げ部によって矩形部が形成され、当該部分のプレートフィンは切り落とされることがなく、伝熱面積は確保しつつ、かつ折り曲げ部による、空気抵抗増大、結露水滞留等も防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、プレートフィンに冷媒チューブ挿入用長穴を有する熱交換において、冷媒チューブ挿入穴の矩形部分を、伝熱面積をロスすることなく形成することにより、高性能な熱交換器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における熱交換器の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図
【図3】本発明の実施の形態1における熱交換器のプレートフィン間の気流通過形態を示す部分断面図
【図4】本発明の実施の形態2における熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図
【図5】本発明の実施の形態2における熱交換器のプレートフィン間の気流通過形態を示す部分断面図
【図6】本発明の実施の形態3における熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図
【図7】本発明の実施の形態3における熱交換器のプレートフィン間の気流通過形態を示す部分断面図
【図8】従来の熱交換器の斜視図
【図9】従来の熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図
【図10】従来の熱交換器のプレートフィン間の気流通過形態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、直管部および曲管部が連続する如く蛇行状に形成された冷媒チューブと、前記冷媒チューブが貫通する冷媒チューブ挿入穴を複数有し、相互に間隔をおいて配置された多数のプレートフィンを備え、前記冷媒チューブ挿入穴が、矩形部と、前記矩形部の長辺方向両端に円弧部を有し、前記円弧部周縁にフィンカラーを備え、前記矩形部を、当該部分を充填するプレートフィンを用いて、矩形部長辺外側方向に、略Z形状折り曲げ部を設けることにより構成した熱交換器である。
【0018】
上述の構成において、冷媒チューブ挿入穴の矩形部は、当初、当該部分を充填していたプレートフィンを、略Z形状に扉状に折り曲げることで形成されているため、同等面積のプレートフィンを単に開閉扉状に折り曲げる場合と比較して、折り曲げ部高さを低く抑えることができる。
【0019】
また、折り曲げ部形成によって矩形部が確保され、当該部分のプレートフィン2は切り落とされず、伝熱面積のロスが発生しないので、熱交換能力の低下を防止することができる。
【0020】
また、折り曲げ部は、略Z形状に扉状に折り曲げることで形成しているため、同等面積のプレートフィンを単に開閉扉状に折り曲げる場合と比較して、折り曲げ部高さを低く抑えることができ、折り曲げ部の立ち上りによる空気抵抗の増大を抑制し、高性能な熱交換能を提供することができる。
【0021】
また、折り曲げ部の高さを低く押さえることで、本発明の熱交換器を蒸発器として使用した際、プレートフィンの表面温度が、周囲空気の露点温度より低下し、プレートフィン表面が結露した場合でも、結露水が折り曲げ部に滞留を抑制でき、空気抵抗増加、さらには着霜により熱交換能力が低下するという事態を防止することができる。
【0022】
第2の発明は、第1の発明における前記略Z形状折り曲げ部を、両側の矩形部長辺部分に有するものである。
【0023】
上述の構成において、折り曲げ部を矩形部長辺の両側に配置することにより、折り曲げ部の立ち上がり高さを、両側の折り曲げ部でに分散して吸収することが可能となり、折り曲げ部を片側に配置する場合に比べて、立ち上がり高さをさらに低く抑えることができ、前述の効果を増幅させることができる。
【0024】
第3の発明は、第1または第2の発明における前記略Z形状折り曲げ部の気流を遮断する部分に、気流通過用開口部を設けたものである。
【0025】
上述の構成において、気流通過用開口部によって、折り曲げ部による気流の遮断を防止できるため、前述の効果をさらに増幅させることができる。
【0026】
また、本発明の熱交換器を蒸発器として使用した際、プレートフィン表面に発生する結露水が、折り曲げ部に滞留せず、気流通過用開口部を介して重力方向に落下するため、結露水滞留による、空気抵抗増大、着霜を防止することができる。
【0027】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明の熱交換器を搭載した冷蔵庫である。
【0028】
上述の構成において、搭載された熱交換器の高性能化により、冷蔵庫としての消費電力低減を図ることができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における熱交換器の斜視図である。図2は、同実施の形態の熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図である。図3は、同実施の形態の熱交換器のプレートフィン間の気流通過形態を示
す部分断面図である。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の熱交換器1は、直管部および曲管部3bが交互に繰り返されるように連続し、蛇行状に曲げ加工して形成した冷媒チューブ3と、蛇行状に曲げ加工して形成した冷媒チューブ3が挿入される長穴状の冷媒チューブ挿入穴4が複数形成され、互いに間隔をおいて配置され、冷媒チューブ3が挿入された一群のプレートフィン2を備えている。
【0032】
本実施の形態では、プレートフィン2の両側に、プレートフィン2よりも厚い金属板をL字型に折り曲げた熱交換器1を取り付けるための側板10を具備しているが、側板10が無い場合もありえる。
【0033】
冷媒チューブ3には、一般に銅あるいはアルミ材等の材料が用いられる。また、プレートフィン2にはアルミ材が用いられる。
【0034】
図2に示すように、プレートフィン2の冷媒チューブ挿入穴4は、矩形部5と、矩形部5の両端に矩形部短辺5aより長い直径の円弧部6を有し、円弧部6周縁にフィンカラー7を備え、矩形部長辺5b部分周縁に、折り曲げ部8を施している。
【0035】
折り曲げ部8形成前は、図2に示すように、矩形部5はプレートフィン2によって充填されており、折り曲げ部8を形成し、折り曲げ部8の立ち上がり高さhによって、矩形部5の開口寸法を確保する機構である。
【0036】
矩形部5をプレス加工によって切り落とすことなく形成するため、矩形部5相当の伝熱面積をロスすることなく確保することができる。またかかる機構であるため、図9に示す、従来の熱交換器の折り曲げ部55と比較した場合、折り曲げ部8の立上り高さhを低く抑えることができる。
【0037】
折り曲げ部8の形成は、プレートフィン2の形状をプレス成型する際の工程の一部として実施することが一般的であるが、例えば、プレートフィン2のプレス成型完成時点では、まだ図2の(折り曲げ部形成前)の状態のままで、冷媒チューブ3をプレートフィン2群に挿入する工程で、冷媒チューブ3が冷媒チューブ挿入穴4を通過しながら、折り曲げ部8を形成するという製造工程にすることで、プレートフィン2のプレス成型金型の構造を簡素化し、製造コスト低減を図ることもできる。
【0038】
上述の構成であることから、図3に示すように、折り曲げ部8による気流通過遮断を、図10に示す従来の熱交換器のそれと比較して減少させることができ、気流通過が促進され熱交換能力向上を図ることができる。
【0039】
また、上述の構成であることから、折り曲げ部8の立ち上り高さhを低く押さえることにより、熱交換器1を蒸発器として使用した場合、プレートフィン2表面の表面温度が、周囲空気の露点温度より低下し、プレートフィン2表面が結露した場合、結露水が折り曲げ部8に滞留する現象を抑制することができ、結露水滞留による空気抵抗増大、着霜による、熱交換能力低下を防止することができる。
【0040】
また、上述の構成の熱交換器1を、冷蔵庫に搭載することにより、冷蔵庫としての消費電力低減による省エネ促進、また、蒸発器着霜による鈍冷、不冷等の品質問題発生低減に寄与することができる。
【0041】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図である。図5は、同実施の形態の熱交換器のプレートフィン群間の気流通過形態を示す部分断面図である。
【0042】
本実施の形態と実施の形態1との相違点は、実施の形態1では、折り曲げ部8を片側の矩形部長辺5b部に設けたのに対して、本実施の形態(実施の形態2)では、折り曲げ部8を両側の矩形部長辺5b部に設けた点である。
【0043】
以下の本実施の形態の説明では、実施の形態1と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明は省略する。
【0044】
本実施の形態では、図4に示すように、折り曲げ部8を、矩形部5の両側の矩形部長辺5b部に設けている。
【0045】
折り曲げ部8形成前、矩形部5はプレートフィン2によって充填されており、矩形部5の矩形部長辺5bの両側に折り曲げ部8を形成し、2つの折り曲げ部8の立ち上がり高さhによって、矩形部5の開口寸法を確保する機構であるため、実施の形態1と比較して、折り曲げ部立ち上がり高さhを低く抑えることができるため、図5に示すような折り曲げ部8による気流通過遮断の抑制をはじめ、実施の形態1の効果をさらに増大させることができる。
【0046】
また、図4では、矩形部5の両側の矩形部長辺5bの折り曲げ部8の形状は、模式的に左右対称で両側とも同形状としているが、プレートフィン2の成型金型構造や、熱交換器1の製造工程等を考慮し、適宜最適化することもできる。
【0047】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における熱交換器のプレートフィンの折り曲げ部形成前後の正面図及び断面図を並べて示した説明図である。図7は、同実施の形態の熱交換器のプレートフィン群間の気流通過形態を示す部分断面図である。
【0048】
本実施の形態と、実施の形態1、実施の形態2との違いは、本実施の形態では、折り曲げ部8の気流を遮断する部分に、気流通過用開口部9を設けたことである。
【0049】
以下の本実施の形態の説明では、実施の形態1、実施の形態2と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明は省略する。
【0050】
図6に示すように、本実施の形態における熱交換器1は、折り曲げ部8の気流を遮断する部分に、気流通過用開口部9を設けている。
【0051】
折り曲げ部8形成前、矩形部5はプレートフィン2によって充填されており、折り曲げ部8を形成し、折り曲げ部8の立ち上がり高さhによって、矩形部5の開口寸法を確保する機構である。
【0052】
矩形部5をプレス加工によって切り落とすことなく形成するため、矩形部5相当の伝熱面積をロスすることなく確保することができるという作用については実施の形態1、実施の形態2と同様である。
【0053】
本実施の形態では、さらに折り曲げ部8形成後も、折り曲げ部8が気流を遮断しないように、折り曲げ部8を形成後、気流通過用開口部9が形成されるように、あらかじめプレートフィン2の矩形部5近傍の形状を細工している。
【0054】
上述の構成により、図7に示すように、プレートフィン2群間を通過する気流は、気流通過用開口部9を通過することが可能であるため、折り曲げ部8による気流通過遮断は、ほぼゼロに抑えることができる。また、熱交換器1を蒸発器として使用した際に発生する結露水についても、気流通過用開口部9を通過し、重力方向に落下させることが可能であるため、実施の形態1、実施の形態2の効果をさらに増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の熱交換器は、冷媒チューブ挿入穴の矩形部分を、伝熱面積をロスすることなく形成することにより、高性能であるので、冷蔵庫、自動販売機等の流体を冷媒とする熱交換機器の他に、ラジエターの如く水等の液体を流体とする熱交換機器を具備する産業機器分野にわたって広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 熱交換器
2 プレートフィン(プレートフィン群)
3 冷媒チューブ
3b 曲管部
4 冷媒チューブ挿入穴
5 矩形部
5a 矩形部短辺
5b 矩形部長辺
6 円弧部
7 フィンカラー
8 折り曲げ部
9 気流通過用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部および曲管部が連続する如く蛇行状に形成された冷媒チューブと、前記冷媒チューブが貫通する冷媒チューブ挿入穴を複数有し、相互に間隔をおいて配置された多数のプレートフィンを備え、前記冷媒チューブ挿入穴は、矩形部と、前記矩形部の長辺方向両端に、矩形部短辺より大きな直径を有する円弧部が当接し、前記円弧部周縁にフィンカラーを備え、前記矩形部を、当該部分を充填するプレートフィンを、矩形部長辺外側方向に、略Z形状折り曲げ部を設けることにより構成した熱交換器。
【請求項2】
前記略Z形状折り曲げ部を、両側の矩形部長辺部分に有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記略Z形状折り曲げ部の気流を遮断する部分に、気流通過用開口部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器を搭載した冷蔵庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate