説明

熱交換器のシール構造

【課題】タンク部を有する熱交換器を空気ダクトに対してパッキンを用いてシールするに際し、少ない工数で簡単かつ確実にシールできるようにするとともに、使用するパッキンの材料費を大幅に削減できるようにした熱交換器のシール構造を提供する。
【解決手段】ダクト内に配置された熱交換器のタンク部とダクトに形成された凹部の内面との間をパッキンでシールする構造であって、パッキンが、タンク部の空気流通方向の一方の肩部に対しては、タンク部の長手方向に実質的に全長にわたって連続的に配置されるとともに該肩部に沿って折り曲げられた形状の第1形状部に形成され、タンク部の他方の肩部に対しては、タンク部の長手方向に断続的に配置されるとともに該肩部に沿って折り曲げられた形状の第2形状部に形成され、第1形状部と第2形状部が両肩部間で一体に接続されて一つのパッキンを構成していることを特徴とする熱交換器のシール構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク部を有する熱交換器のシール構造に関し、とくに空気通路を形成するダクトの内面に対しパッキンを用いて熱交換器のタンク部をパッキンの材料費を削減した状態にて簡単かつ確実にシールできるようにした熱交換器のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用空調装置の空気ダクト内に配置される熱交換器、とくに蒸発器は、ダクト内流通空気の全量が蒸発器を通過できるように、ダクト内面に対して熱交換器が良好にシールされることが要求されることが多い。熱交換器の側面に対しては、単なる平板状のパッキンを用いて容易にシールできることが多いが、熱交換器のタンク部に対しては、通常、凹凸面や曲面を有するため、シール用パッキンの形状や配置に工夫を要求されることが多い。また、このような要求仕様で熱交換器がダクト内に配置される場合には、ダクトに凹部が形成され、その凹部の内面と熱交換器のタンク部との間をパッキンでシールするシール構造が採用されることが多い。
【0003】
従来、熱交換器のタンク部とダクトに形成された凹部の内面との間をパッキンでシールする場合、タンク部の長手方向に実質的に全長にわたって連続的に延びるパッキンが使用され、そのパッキンがタンク部のシール面全面を覆うとともに、空気流通方向におけるタンク部の両肩部で該両肩部に沿わせてパッキンが折り曲げられるように配置されている。タンク部の頂面と、両肩部で折り曲げられた後のタンク部の前後面の全域にわたってパッキンで覆われることになるので、パッキン全体のサイズが大きくなるとともに、パッキンを作製するための素材の使用量(材料の使用量)が多くなる。したがって、このような形態のままでは、パッキンの材料費の節減は望めない。
【0004】
一方、パッキンを複数のパッキン材に分割し、各分割材の形状等を工夫することにより、パッキン材の貼り付け作業を自動化可能とした提案も知られている(例えば、特許文献1)。しかしこの提案構造では、パッキンが複数のパッキン材に分割されており、貼り付けるべきパッキン材の数が多くなるので、人手により貼り付ける場合にはその作業工数の増加を招き、自動化する場合にはそのための装置が大がかりで複雑、高価なものになるという問題がある。
【特許文献1】特開2001−233047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、タンク部を有する熱交換器を空気ダクトに対してパッキンを用いてシールするに際し、少ない工数で簡単かつ確実にシールできるようにするとともに、使用するパッキンの材料費を大幅に削減できるようにした熱交換器のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る熱交換器のシール構造は、空気通路を形成するダクト内に配置された熱交換器のタンク部と前記ダクトに形成された凹部の内面との間をパッキンでシールする熱交換器のシール構造であって、前記パッキンが、タンク部の空気流通方向の一方の肩部に対しては、タンク部の長手方向に実質的に全長にわたって連続的に配置されるとともに該肩部に沿って折り曲げられた形状の第1形状部に形成され、タンク部の他方の肩部に対しては、タンク部の長手方向に断続的に配置されるとともに該肩部に沿って折り曲げられた形状の第2形状部に形成され、第1形状部と第2形状部が両肩部間で一体に接続されて一つのパッキンを構成していることを特徴とするものである。
【0007】
このようなシール構造においては、パッキンは分割構造とはされず、一つのタンク部についての目標とするシール部位に対しては1枚のパッキンを使用すればよいので、貼り付け作業工数は少なくて済む。また、自動化する場合にも、一つの対象部位に対して1枚のパッキンを取り扱えばよいので、大がかりな装置は不要であり、その自動化装置も簡素で安価な装置に構成可能である。また、使用するパッキンの形状が、タンク部の長手方向に連続的に延びる第1形状部と断続的に延びる第2形状部とを併せた形状であるので、タンク部の一方の肩部に沿わせて連続的に延びる第1形状部を折り曲げて配置することにより、対応するダクト凹部の内面部位との間がほぼ完全にシール可能となり、流通空気の流れがこのシール部位でほぼ完全に阻止され、タンク部の他方の肩部に沿わせて断続的に延びる第2形状部を折り曲げて配置することにより、前記第1形状部と第2形状部の共働によって、ダクト凹部とタンク部との間の間隙に確実にパッキンが介在されることになり、ダクト凹部に対してタンク部が所定姿勢にて確実に保持されることになる。つまり、目標とするタンク部における良好なシール性能が達成されるとともに、熱交換器の所望の保持も達成されることになる。そして、パッキンの第2形状部はタンク部の長手方向に断続的に配置される形状であればよいので、第1形状部部分と第2形状部部分がともに連続的に延びる形状のパッキンに比べ、パッキン形成のための材料の使用量を削減することが可能になる。
【0008】
このような本発明に係る熱交換器のシール構造においては、上記パッキンの第1形状部および第2形状部のタンク部の肩部に沿って折り曲げられる部位に、タンク部の長手方向に部分的に延びる第1のスリットが設けられていることが好ましい。このような第1のスリットを設けておくことにより、そのスリットを境にしてパッキンが容易に変形できるようになるので、所望の折り曲げ形態が極めて容易に得られる。
【0009】
また、このパッキンの第1のスリットの端部に、タンク部の長手方向と直交する方向に部分的に延びる第2のスリットが設けられていることが好ましい。このような第2のスリットを設けておくことで、第1のスリットを容易に複数の分割されたスリットにすることが可能になる。また、パッキンの第1のスリットとは反対側に位置する上記第2のスリットに隣接する部位が、タンク部の肩部に沿って折り曲げられる部位における折り曲げ両側の繋ぎ部となる構成とすることができ、この繋ぎ部の存在により、容易に、所望のシール形態を保つとともに所望のパッキン形態を維持できるようになる。
【0010】
また、本発明に係る熱交換器のシール構造においては、上記パッキンを、1枚のパッキン素材から、上記第2形状部側が互いに対向するように、かつ、一方のパッキンの第2形状部と他方のパッキンの第2形状部がタンク部の長手方向に交互に配列されるように、2枚のパッキンを切り出すことにより、作製することが可能である。このように本発明で使用するパッキンを作製すれば、後述の如く、タンク部の長手方向と直交する方向に関して、使用するパッキン素材の長さを大幅に短縮することが可能になり、パッキン作製のための材料費を大幅に削減できるようになる。
【0011】
本発明に係る熱交換器のシール構造の適用場所は特に限定されないが、上記ダクトが車両用空調装置に用いられるダクトからなる場合に好適なものである。中でも、ダクト中での高いシール性能が要求される場合、例えば、上記熱交換器が蒸発器からなる場合に特に好適なものである。
【0012】
このような本発明に係る熱交換器のシール構造は、例えば、熱交換器が上下にそれぞれタンク部を有する熱交換器からなり、上記パッキンが少なくとも一方のタンク部に対して設けられる場合に適用できる。もちろん、上下タンク部の両方に対して適用することもでき、さらには、サイドタンクを備えた形式の熱交換器に対しては、そのサイドタンクに対して本発明に係る熱交換器のシール構造を適用することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱交換器のシール構造によれば、適切な形状に形成されたパッキンを使用することにより、少ない工数で簡単かつ確実に目標とするシールを行うことができるようになり、かつ、使用するパッキンの材料費を大幅に削減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施態様に係る熱交換器のシール構造を示しており、本発明を、車両用空調装置に用いられるダクト内に熱交換器としての蒸発器を配置し、該ダクトに対しとくに蒸発器の上部タンク部の必要部位をシールするのに適用した場合を示している。図1に示すように、熱交換器としての蒸発器1は、空気通路2を形成するダクト3内に配置される。図1〜図4に示すように、蒸発器1は、上部タンク部4と下部タンク部5、その間の熱交換器コア部6を有する構造に構成されているが、本実施態様では、本発明に係るシール構造が上部タンク部4に対して適用されている。また本実施態様では、上部タンク部4に対して熱交換媒体(例えば、冷媒)の導入パイプ7、導出パイプ8が接続されており、熱交換器コア部6内を通過(例えば、循環)される熱交換媒体と、ダクト3内を蒸発器1を通過するように流通される空気9との間で熱交換されるようになっている。この空気9が所望の流れ形態にて蒸発器1を通過できるように(つまり、少なくとも上部タンク部4にて空気の流通が阻止されるように)、本発明に係るシール構造が適用されている。
【0015】
上記ダクト3には凹部11が形成されており、該凹部11の内面とタンク部4との間にタンク部4側に予め貼着されたパッキン12が介装され、このパッキン12でこの部位の必要なシール、つまり本発明で対象としているシールが行われるようになっている。また、タンク部4が凹部11内にパッキン12を介して嵌合されることにより、蒸発器1の上部側が保持されるようになっている。
【0016】
パッキン12は、空気流れ方向上流側に配置される第1形状部13と下流側に配置される第2形状部14が一体に接続された形状を有しており、第1形状部13と第2形状部14で一つのパッキン12が構成されている。第1形状部13は、タンク部4の長手方向に実質的に全長にわたって連続的に配置されており、タンク部4の空気流れ方向上流側の肩部(一方の肩部)に沿って折り曲げられている。第2形状部14は、タンク部4の長手方向に断続的に配置(配列)されており、タンク部4の空気流れ方向下流側の肩部(他方の肩部)に沿って折り曲げられている。
【0017】
パッキン12の第1形状部13および第2形状部14のタンク部4の肩部に沿って折り曲げられる部位には、タンク部4の長手方向に部分的に延びる第1のスリット15が複数設けられている。また、第1のスリット15の端部に(本実施態様では両端部に)、タンク部4の長手方向と直交する方向に部分的に短く延びる第2のスリット16が設けられている。
【0018】
なお、本実施態様においては、蒸発器1の両側面に、平板状のパッキン20が貼着され、下面側に、短く延びる平板状のパッキン21が貼着されている。これらパッキン20、21は、蒸発器1が空気通路2内に所定位置に配置された状態で、通路壁内面と蒸発器1との間をシールするとともに、蒸発器1を所定の姿勢に保持できるようになっている。
【0019】
本実施態様に係る上記のようなパッキン12を用いたシール構造においては、パッキン12は分割構造とはされずに、一つのタンク部4についての目標とするシール部位に対しては1枚のパッキン12を使用すればよく、貼り付け作業工数は少なくて済む。また、自動化する場合にも、一つの対象部位に対して1枚のパッキン12を取り扱えばよくなるので、大がかりな自動化装置は不要であり、その装置も簡素で安価なものに構成可能である。パッキン12によるシール性能に関しては、タンク部4の長手方向に連続的に延びる第1形状部13により空気の流れをほぼ完全に阻止できるので、空気流通に対しての目標とするシール性能は第1形状部13によってほぼ完全に達成される。ダクト凹部11とタンク部4との間の間隙にパッキン12が介在することにより、タンク部4の長手方向に断続的に延びる第2形状部14は、第1形状部13との共働によって、ダクト凹部11に対してタンク部4を所定姿勢にて確実に保持できるようになる。
【0020】
また、パッキン12の折り曲げ部に第1のスリット15を設けておくことにより、第1のスリット15を境にしてパッキン12がタンク部4の肩部に沿って容易に変形できるようになり、パッキン12の所望の折り曲げ形態が極めて容易に得られる。第1のスリット15の端部に第2のスリット16を設けることにより、第2のスリット16に隣接する部位(第2のスリット16間部位や、端部に位置する第2のスリット16に隣接する部位)を、タンク部4の長手方向と直交する方向に位置する折り曲げ両側に対しパッキン12内の繋ぎ部17を形成することができ、容易に、所望のシール形態と所望のパッキン形態を維持できるようになる。また、第2のスリット16は、パッキン12内で第1のスリット15が望ましくない長さまで走ってしまう(切れ目として走ってしまう)ことを阻止する役目も担っている。
【0021】
上記のような形状を有するパッキン12は、例えば図5に示すように作製できる。図6に示したような全体にわたって連続的に延びる平板状の従来のパッキンの作製と比較しながら説明する。まず、図6に示した従来のパッキンの作製について説明するに、パッキン素材41が、例えば折り目42が形成された2つのパッキン43に切り出され、上記のようなタンク部4のシールに用いられるパッキン43として使用される。これに対し、図5に示す本発明におけるパッキン12の作製においては、1枚のパッキン素材31から2つのパッキン12を切り出すに際し、第2形状部14側が互いに対向するように、かつ、一方のパッキン12の第2形状部14と他方のパッキン12の第2形状部14が前述のタンク部4の長手方向に交互に配列されるように、2枚のパッキン12が切り出される。切り出しを例えばパンチングで行う場合には、同時に第1のスリット15と第2のスリット16および繋ぎ部17を設けることが可能である。また、図5に示すように、交互に配列される第2形状部14を等ピッチで配列することにより、同時に作製される2つのパッキン12を完全に同一形状に形成できる。上記のようなパッキン12をこのような方法で作製すれば、タンク部4の長手方向と直交する方向に、使用されるパッキン素材31の要求長さを大幅に短縮することが可能になり、その分、パッキン作製のための材料費を大幅に削減できるようになる。
【0022】
このように、本発明に係る熱交換器のシール構造においては、前述の如く良好なシール性能、良好なパッキン装着作業性を達成しつつ、大幅なコストダウンをはかることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る熱交換器のシール構造は、タンク部を有する熱交換器をダクトに対しパッキンを用いてシールするあらゆる用途に適用可能であり、とくに車両用空調装置の空気ダクト内に配置される熱交換器、中で蒸発器に採用して好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施態様に係る熱交換器のシール構造の概略側面図である。
【図2】図1の熱交換器のパッキン貼着状態での上面図である。
【図3】図1の熱交換器のパッキン貼着状態での正面図である。
【図4】図1の熱交換器のパッキン貼着状態での背面図である。
【図5】図1のパッキンの作製方法の一例を示す平面図である。
【図6】従来のパッキンの作製方法の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 熱交換器としての蒸発器
2 空気通路
3 ダクト
4 タンク部(上部タンク部)
5 下部タンク部
6 熱交換器コア部
7 導入パイプ
8 導出パイプ
9 空気
11 凹部
12 パッキン
13 第1形状部
14 第2形状部
15 第1のスリット
16 第2のスリット
17 繋ぎ部
20、21 平板状のパッキン
31 パッキン素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を形成するダクト内に配置された熱交換器のタンク部と前記ダクトに形成された凹部の内面との間をパッキンでシールする熱交換器のシール構造であって、前記パッキンが、タンク部の空気流通方向の一方の肩部に対しては、タンク部の長手方向に実質的に全長にわたって連続的に配置されるとともに該肩部に沿って折り曲げられた形状の第1形状部に形成され、タンク部の他方の肩部に対しては、タンク部の長手方向に断続的に配置されるとともに該肩部に沿って折り曲げられた形状の第2形状部に形成され、第1形状部と第2形状部が両肩部間で一体に接続されて一つのパッキンを構成していることを特徴とする熱交換器のシール構造。
【請求項2】
前記パッキンの第1形状部および第2形状部のタンク部の肩部に沿って折り曲げられる部位に、タンク部の長手方向に部分的に延びる第1のスリットが設けられている、請求項1に記載の熱交換器のシール構造。
【請求項3】
前記パッキンの前記第1のスリットの端部に、タンク部の長手方向と直交する方向に部分的に延びる第2のスリットが設けられている、請求項2に記載の熱交換器のシール構造。
【請求項4】
前記パッキンの前記第1のスリットとは反対側に位置する前記第2のスリットに隣接する部位が、タンク部の肩部に沿って折り曲げられる部位における折り曲げ両側の繋ぎ部を構成している、請求項3に記載の熱交換器のシール構造。
【請求項5】
前記パッキンが、1枚のパッキン素材から、前記第2形状部側が互いに対向するように、かつ、一方のパッキンの第2形状部と他方のパッキンの第2形状部がタンク部の長手方向に交互に配列されるように、2枚のパッキンを切り出すことにより、作製されている、請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換器のシール構造。
【請求項6】
前記ダクトが車両用空調装置に用いられるダクトからなる、請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換器のシール構造。
【請求項7】
前記熱交換器が蒸発器からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の熱交換器のシール構造。
【請求項8】
前記熱交換器が上下にそれぞれタンク部を有する熱交換器からなり、前記パッキンが少なくとも一方のタンク部に対して設けられている、請求項1〜7のいずれかに記載の熱交換器のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−168311(P2009−168311A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5634(P2008−5634)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】