説明

熱交換器用アルミニウムフィン及び熱交換器

【課題】フィン間隔の狭い(フィン間隔2mm以下)クロスフィンチューブ型熱交換器においても難着霜性に優れるアルミニウムフィンを提案すること。
【解決手段】アルミニウムよりなる基板10と、基板10の表面に形成した1層もしくは複数層の塗膜2からなる熱交換器用アルミニウムフィン1である。塗膜のうち、最外層の塗膜2に含有される成分は、固形分質量%で、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂をA、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の一方又は双方の合計をBとしたとき、A+B≧95%、A≧10%、B≧10%、である。最外層の塗膜2は、水滴接触角が90°〜150°であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用アルミニウムフィン及びそれを用いた熱交換器に関する。なお、本明細書中の「アルミニウム」は、アルミニウムを主体とする金属及び合金の総称であり、純アルミニウム及びアルミニウム合金を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
空調機や冷蔵庫における熱交換器としては、多数のプレートフィンとチューブ(伝熱管)とを組み合わせて構成されるクロスフィンチューブ型熱交換器が多用されている。
従来から、上記プレートフィンには、軽量で熱伝導性及び加工性に優れていることからアルミニウムが使用されている。
【0003】
クロスフィンチューブを作製するに当たっては、まず、アルミニウム板よりなる熱交換器用フィンに、上記伝熱管を挿通して固定するための1〜4mm程度の高さのフィンカラー部を有する組み付け孔をプレス加工して上記プレートフィンを作製する。
次いで、この得られたプレートフィンを積層した後に、組み付け孔の内部に、別途作製した伝熱管を挿通させる。
【0004】
伝熱管には、通常、銅管又は銅合金管の内面に転造加工等によって溝加工を施すと共に、定尺切断・ヘアピン曲げ加工を施したものが供される。
次に、伝熱管をアルミニウムプレートフィンに拡管固着し、ヘアピン曲げ加工を施した側と反対側の伝熱管端部にUベンド管をろう付け加工する工程を経て、熱交換器が作製される。
【0005】
このような空調機用熱交換器は、例えば暖房運転時の室外器では、空気中の水分がアルミニウムフィンの表面に凝縮水となって付着し、更には外気温度が低い場合(2℃以下)、その凝縮水が凍結し着霜する。金属材料の表面は、一般に親水性に乏しいため、この凝縮水はフィン表面に半円形もしくはフィン間にブリッジ状になって存在し、やがて着霜する。これはフィン間の空気の流れを妨げ、通風抵抗を増大させ、熱交換効率を著しく低下させる原因となる。熱交換器の熱効率を向上させるためには、フィン表面の凝縮水を氷結前に迅速に排除すると共に着霜しにくい表面にする必要がある。
【0006】
この解決法として、以下の2つの対策が考えられる。
(1)アルミニウム合金フィン表面に高親水性被膜を形成し、凝縮水を薄い水膜として流下させる。
(2)アルミニウム合金フィン表面に撥水性被膜を形成し、凝縮水を早期に排除して表面に残りにくいようにする。
【0007】
上記(2)のアルミニウム合金フィン表面を撥水化し、凝縮水が留まりにくくした撥水性被膜としては、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、シリコーン系または、フッ素系樹脂化合物からなる溶液と、前記溶液中の固形分に対する比率が10〜40重量%であり、比表面積が50m2/g以上、かつ平均粒子径4μm以下でさらに表面に疎水化処理を施した無機微粒子とからなる撥水性コーティング組成物が開示されている。
特許文献2には、シリコーン系樹脂化合物からなる溶液及び分子中に少なくとも2種の官能基を有する樹脂改質剤及び粒径が4μm以下であり、前記溶液中の固形分に対する構成比率が5〜60重量%である無機微粒子とからなる撥水性コーティング用組成物が開示されている。
【0008】
特許文献3には、アルミニウム板表面に、バインダーとしての熱硬化性樹脂1重量部に対し、フッ素系又はシリコン系の撥水化剤を0.2重量部以上、平均粒径が0.5〜5μmのアルミナ、ジルコニア、チタニア及び炭化ケイ素からなる群から選択された1種又は2種以上の混合粉末を4〜8重量部混合した混合物からなる皮膜を1mg/dm2以上設けたことを特徴とする表面処理アルミニウムフィン材が開示されている。
【0009】
特許文献4には、熱硬化性樹脂固形分1重量部に対して、疎水性シリカを0.2重量部以上と、パーフルオロアルキル基を有する撥水化剤を0.1重量部以上含むことを特徴とする撥水性塗料が開示されている。
特許文献5には、金属材の少なくとも一方の表面に、有機または無機の微粒子(A)を含む有機樹脂からなる下地被膜が形成され、該下地被膜の上に撥水性を示す仕上げ被膜が形成され、前記微粒子(A)の平均粒径は前記有機樹脂下地被膜の膜厚より1.5倍以上大きいことを特徴とする撥水性金属塗装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−2446807号公報
【特許文献2】特開平5−222339号公報
【特許文献3】特開平8−285491号公報
【特許文献4】特開平8−269367号公報
【特許文献5】特開2009−12238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記特許文献1〜5については、優れた撥水性を実現しているものの、必ずしも着霜を抑制する特性、つまり、難着霜性が十分に得られているとは言えない。さらに、撥水性を維持することが困難なものもある。
例えば、特許文献1、2に記載の技術では、撥水性被膜中の粒子が脱落しやすいという問題がある。特許文献3についても、特許文献1、2と同様、アルミナ等の粒子が脱落しやすいという問題がある。特許文献4の技術は、疎水性シリカが皮膜表面に露出した状態にある必要があり、やはり疎水シリカが脱落しやすいという問題がある。
【0012】
特許文献5の技術は、特許文献1、2などの粒子の脱落を防止するという課題の下になされたものであり、仕上げ被膜形成後の粒子脱落防止効果は期待できるが、下地被膜形成から仕上げ被膜形成までに粒子が脱落し、性能低下を招くうえ、生産ラインを汚染する恐れがある。
【0013】
このように、初期の性能を維持し、安定量産に適した撥水性被膜が得られていないというのが現状である。
さらに、近年、熱交換器の軽量化や熱効率の向上、さらにはコンパクト化等の要請に応えるために、アルミニウムフィンの間隔をますます狭くする設計が取り入れられている。このようなフィン間隔の狭いクロスフィンチューブ型熱交換器においては、特許文献1〜5に開示されている撥水性塗膜を塗布したアルミニウムフィン材では、水の接触角が大きいため、より小さい凝縮水でもフィン間に凝縮水のブリッジを形成し、通風抵抗を増大させるうえ、着霜も早い。
【0014】
そこで、これまでの水との接触角をできるだけ大きくするような撥水性塗膜を得ることを主眼とするのではなく、適切な塗膜の材質構成を選択することで、優れた難着霜性が得られるアルミニウムフィンの開発をすることが必要であるという新たな課題が見出された。
【0015】
本発明は、フィン間隔の狭い(フィン間隔2mm以下)クロスフィンチューブ型熱交換器においても、難着霜性に優れるアルミニウムフィン及びそれを用いた熱交換器を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明は、アルミニウムよりなる基板と、該基板の表面に形成した1層もしくは複数層の塗膜からなる熱交換器用アルミニウムフィンであって、
上記塗膜のうち、最外層の塗膜に含有される成分は、固形分質量%で、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂をA、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の一方又は双方の合計をBとしたとき、
A+B≧95%
A≧10%、B≧10%
であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィンにある(請求項1)。
【0017】
第2の発明は、アルミニウムからなるフィンを多数積層し、該フィンに設けられた円筒状のカラー部内に挿入配設することにより上記伝熱管と多数の上記フィンとを一体的に組み付けてなるクロスフィンチューブからなる熱交換器であって、
上記フィンは、第1の発明の熱交換器用アルミニウムフィンを用いて形成され、
上記フィンの積層ピッチが、2mm以下であることを特徴とする熱交換器にある(請求項4)。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明の熱交換器用アルミニウムフィン(以下、適宜、単に「フィン」という)は、上記最外層の塗膜が、上記特殊な成分構成になっており、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂と、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の一方又は双方とを主成分とするものである。これにより、本発明のフィンは、従来の撥水性のみを追求した塗膜に比べて、フィン間に凝縮水のブリッジが形成されにくく、さらに着霜しにくい特性を発揮する。そして、撥水性のパーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂を含むことで、粒子を添加することなく水との接触角を適正化し、通風抵抗の増大を抑制し、着霜しにくい塗膜表面を得ることが可能である。
【0019】
第2の発明の熱交換器は、上記の優れたフィンを用いて構成してある。そのため、難着霜性の持続性に優れ、フィンピッチが2mm以下の場合においても、着霜による通風抵抗増大が効果的に抑制され、良好な熱交換性能を長期間維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例における、熱交換器用アルミニウムフィンの塗膜構成を示す説明図。
【図2】実施例における、熱交換器用アルミニウムフィンの塗膜構成の別例を示す説明図。
【図3】実施例における、熱交換器の構成を示す説明図。
【図4】実施例における、水滴接触角αについて示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフィンは、上記のごとく、1層もしくは複数層の塗膜を有している。ここでいう1層は、同一種類の塗膜を塗っている層を意味し、同一種類の塗膜を1回塗った場合だけでなく、同一種類の塗膜を複数回塗り重ねて形成した塗膜も1層である。したがって、複数層とは、異なる種類の塗膜が積層された場合を意味する。
【0022】
複数層の塗膜の場合、例えば、第1層目として、エポキシ系塗膜を設け、その上に上記最外層を設けることができる。また、アルミニウム基板上の片面又は両面には、下地処理層を設けることが好ましい。下地処理層としては、例えば塗布型あるいは反応型のリン酸クロメート、またはクロムフリー化成皮膜層皮膜が採用される。
【0023】
そして、上記最外層の塗膜に含有される成分は、上述したごとく、固形分質量%で、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂をA、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の一方又は双方の合計をBとしたとき、A+B≧95%であり、かつ、A≧10%、B≧10%である。したがって、最外層の塗膜は、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂とウレタン樹脂とを主成分とするもの、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂とエポキシ樹脂とを主成分とするもの、あるいはパーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂とウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを主成分とするもののいずれかである。
【0024】
撥水性のパーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂を含むことで、粒子を添加することなく水との接触角を適正化し、通風抵抗をの増大を抑制し、着霜しにくい塗膜表面を得ることが可能である。
一方、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂は、基本的に親水性であるが、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂に適正量を含有させると、塗膜の密着性を高める他に、水滴接触角の顕著な低下なしに(=撥水性の顕著な低下なしに)効果的に難着霜性を向上させることが見出されたのである。親水性のウレタン樹脂及びエポキシ樹脂の少なくとも一方の添加により、パーフルオロアルキル基の撥水部分が塗膜表面に配向し、撥水効果を高めるものとも考えられる。
【0025】
上記A+Bが95%未満、つまり、A、B以外の成分が5%以上含まれる場合には、撥水性が低下したり、塗膜における上記難着霜性が十分に得られなくなる。一方、A、B以外の成分としては、5%未満であれば加えてもよい。好ましくは、A+B≧99%、さらに好ましくはA+B=100%であって、A+B以外は0であるのがよい。
また、従来技術にあるような、アルミナ等の粒子を含有させることも可能であるが、この含有量が多すぎると、脱落し易いという問題があり好ましくない。
【0026】
また、AとBとは、それぞれ最低でも10%は含有させることが必要である。Aが10%未満の場合、またはBが10%未満の場合には、塗膜における上記難着霜性が十分に得られない。
【0027】
好ましくは、A≧50%、B≧30%がよい(請求項2)。Aが50%以上である場合には、AとBとを混合した後、塗装までの間に塗料の一部が固化しにくく、基板面に均一に塗装しやすく、塗装性に優れる。また、Bが30%以上である場合には、形成した塗膜の密着性に優れる。特に、ロールコート法、バーコート法などの塗装方法を用いて、アルミニウム板上に事前に(フィン形状への切断を行う前に)塗料を塗装した、いわゆるプレコートフィンの場合には、プレス加工によるフィン形状への切断を行っても、塗膜の密着性に優れるため塗膜が剥がれにくくなる。
【0028】
上記パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂としては、例えば、パーフルオロアルキル基含有ポリエステルまたはパーフルオロアルキル基含有アクリル樹脂が望ましい。
上記ウレタン樹脂としては、鉛筆硬度HB以上のものが好ましい。
【0029】
また、上記最外層の塗膜は、水滴接触角が90°〜150°であることが好ましい(請求項3)。すなわち、上記最外層の塗膜は、適度な撥水性を有することが好ましい。上記水滴接触角が90°未満の場合には、塗膜が親水性の状態となり、塗膜表面において発生した凝着水の排除が遅くなるおそれがある。一方、上記水滴接触角が150°を超える場合には、撥水性が強すぎて、凝着水が少なくても球状に近くなって狭いフィン間においてブリッジを形成しやすくなるおそれがある。
【0030】
なお、上記塗膜を塗装する方法としては、特に制限されるものではないが、ロールコート法、バーコート法、浸漬塗布法、スプレー法等の公知の各種手法を採用しうる。また、塗料を上記基板の片面又は両面に塗布した後、硬化させるための硬化条件、即ち焼き付け条件等についても、各合成樹脂塗料の種類等に応じて種々の条件を選択することができる。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例にかかる熱交換器用アルミニウムフィンにつき説明する。
本例の熱交換器用アルミニウムフィン1は、図1に示すごとく、アルミニウムよりなる基板10と、該基板10の表面に形成した1層の撥水性の塗膜2からなる。なお、後述する試料No.3については、図2に示すごとく、撥水性の塗膜2と基板10との間に、耐食性の下塗り塗膜3を形成し、2層構造の塗膜とした。なお、基板10と塗膜2または塗膜3との間には、後述する試料No.4以外において、リン酸クロメートよりなる化成皮膜4が形成されている。
【0032】
本例では、上記最外層の塗膜2の成分を変更した複数の実施例(試料No.1〜5、10〜15)と比較例(試料No.6〜9、16、17)を準備して、その性能を評価した。具体的な評価は、後述するごとく、クロスフィンチューブよりなる熱交換器を作製して行う評価と、全く同様の塗膜構成を有する平板状のサンプルを作製して行う評価とを行った。
【0033】
まずは、表1に、各試料の塗膜の成分を示す。
本例では、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂として、具体的には下記の中から選択し組み合わせて使用した。
<パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂>
a.大原パラヂウム製 EC450
b.旭硝子製 AGE060
<ウレタン樹脂>
a.アデカ製 HUX350
b.アデカ製 H1
<エポキシ樹脂>
a.アデカ製 EM101−50
b.アデカ製 EM051R
【0034】
【表1】

【0035】
また、表1より知られるごとく、本発明の実施例である試料No.1〜5、10〜15は、最外層の塗膜2に含有される成分は、固形分質量%で、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂をA、ウレタン樹脂+エポキシ樹脂をBとしたとき、A+B≧95%、A≧10%、B≧10%をすべて満たしている。また、試料No.5、12は、上記フッ素樹脂及びウレタン樹脂のほかに架橋剤であるイソシアネートを2%含有し、上記A+B=98%である。試料No.1〜4、10、11、13〜15は、A+B=100%である。
【0036】
比較例としての試料No.6は、最外層の塗膜が、エポキシ樹脂を含有せずにウレタン樹脂を10%未満含有するものである。
比較例としての試料No.7は、最外層の塗膜が、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂を100%含有するものであり、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含んでいない。
比較例としての試料No.8は、最外層の塗膜が、ウレタン樹脂を100%含有するものであり、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂を含んでいない。
比較例としての試料No.9は、上記フッ素樹脂及びウレタン樹脂を含有するが、そのほかにアミノ樹脂、具体的には、メラミン樹脂(DIC製ベッカミンJ101)を25%含有し、上記A+B=75%である。
比較例としての試料No.16は、最外層の塗膜が、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂を10%未満含有するものである。
比較例としての試料No.17は、最外層の塗膜が、エポキシ樹脂を含有せずにウレタン樹脂を10%未満含有するものである。
【0037】
平板状のサンプルとしての上記試料を作製するに当たっては、まず、基板として、JIS A 1050−H26、厚み0.1mmのアルミニウム板を準備し、リン酸クロメートを浸漬処理することにより、基板の表面に化成皮膜を形成した。なお、試料No.4については、弱アルカリ系脱脂剤により脱脂のみを行ない化成皮膜は形成しなかった。
【0038】
その後、試料No.1、2、4〜17については、最外層の塗膜2となる塗料を、浸漬法により100℃に20分間保持する条件で焼き付けた。撥水性の塗膜2の厚さは1.5μmに設定した。
試料No.3については、耐食性の塗膜3となるエポキシ樹脂塗料を、浸漬法により塗装し、170℃に20分間保持する条件で焼き付けた。耐食性の塗膜3の厚さは1.0μmに設定した。塗膜3の上層には、上記と同様の条件により最外層の塗膜2を塗装した。
【0039】
次に、熱交換器の製造方法について説明する。
本例で用いる熱交換器6は、図3に示すごとく、上記熱交換器用アルミニウムフィン1よりなる多数のプレートフィンと、これらを貫通させた伝熱管61とを組み合わせたクロスフィンチューブタイプのものである。
【0040】
上記熱交換器6を作製するに当たっては、まず、上記と同様に、基板として、JIS A 1050−H26、厚み0.1mmのアルミニウム板を準備し、リン酸クロメートを浸漬処理することにより、基板の表面に化成皮膜を形成した。なお、試料No.4については、弱アルカリ系脱脂剤により脱脂のみを行なった。
【0041】
次いで、アルミニウム板よりなるフィン1に、上記伝熱管61を挿通して固定するための1〜4mm程度の高さのフィンカラー部を有する組み付け孔(図示略)をプレス加工して上記プレートフィンを作製する。
次いで、この得られたプレートフィンを積層した後に、組み付け孔の内部に、別途作製した伝熱管61を挿通させる。
【0042】
伝熱管61には、通常、銅管又は銅合金管の内面に転造加工等によって溝加工を施すと共に、定尺切断・ヘアピン曲げ加工を施したものが供される。
次に、伝熱管61をフィン1に拡管固着し、ヘアピン曲げ加工を施した側と反対側の伝熱管端部にUベンド管62をろう付け加工する工程を経て、熱交換器6が作製される。
各部のサイズは、フィン1の幅Wは25.4mm、長さLは294mm、フィンの積層ピッチPは1.4mm、熱交換器6全体の幅Dは300mmとした。
【0043】
伝熱管61としては、外径:7.0mm、底肉厚:0.45mm、フィン高さ:0.20mm、フィン頂角:15.0°、らせん角:10.0°のらせん溝付内面溝付銅管を採用した。
得られた熱交換器6は、脱脂のため140℃で20分加熱した。
脱脂後の熱交換器全体を塗料に浸漬する浸漬法を用いて、フィン1の表面を塗装した。塗装条件は、上述した平板状のサンプルの場合と同じにした。
【0044】
<水滴接触角の評価>
各試料につき、上述した平板状のサンプルを用いて、水滴接触角の評価を行った。
評価方法は、図4に示すごとく、フィン表面に2μlの純水を滴下し、その水滴8と塗膜2の表面との接触角αを測定するというものである。
評価結果は表2に示す。
【0045】
<難着霜性の評価>
各試料つき、上述した熱交換器を用いて、難着霜性の評価を行った。
評価は、雰囲気温度(乾球温度)が2℃、湿球温度が1℃の環境下に上記熱交換器を設置し、伝熱管内に、20kg/hrの流量で−5℃の冷媒91を流し、流通させる風の入り口風速を1.5m/secとするという運転条件で行った。そして、風92の通風抵抗を、熱交換器の入り側と出側での差圧によって測定し、その値が500Paになるまでの運転時間にて評価した。通風抵抗が500Paになるまでの運転時間が、比較のために別途準備した無塗装材を用いた熱交換器(アルミニウム基板表面を露出させ、一切塗膜等を形成していないフィンを採用)よりも20分以上延びたものを合格(○)とし、20分未満のものを不合格(×)とした。
評価結果は表2に示す。
【0046】
<塗膜密着性の評価>
各試料につき、上述した平板状のサンプルを用いて、塗膜密着性の評価を行った。
具体的には、先端重量が0.9kgのハンマー先端に日本製紙クレシア(株)製キムワイプを8枚重ねて巻きつけたものを、塗膜2の表面を上にした状態で設置したサンプル上に置き、塗膜2の表面を摺動させ、アルミニウム板が露出したときの摺動回数を測定した。上記摺動回数が5回以上であったものを密着性に優れるとして「a」と評価した。上記摺動回数が2回以上4回以下であったものを密着性を有するとして「b」と評価した。上記摺動回数が1回以下であったものを密着していないとして「c」と評価した。なお、本評価は、相対評価であり、実施例と比較例とを区別するものではない。
評価結果を表2に示す。
【0047】
<塗装性の評価>
各試料につき、塗料の塗装性を評価した。
具体的には、AとBとを混合した後、塗装までの間に塗料の一部に固化が見られなかったものを塗装性に優れるとして「a」とした。また、塗料の一部に固化が見られたものを塗装性が良好でないとして「b」とした。なお、本評価は、相対評価であり、実施例と比較例とを区別するものではない。
評価結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2より知られるごとく、本発明の実施例(試料No.1〜5、10〜15)は、難着霜性が良好であった。
一方、比較例の試料No.6は、最外層の塗膜2の成分としてウレタン樹脂+エポキシ樹脂の含有量(B)が少なく、難着霜性が良好でなかった。
比較例の試料No.7は、最外層の塗膜2の成分としてウレタン樹脂とエポキシ樹脂のいずれもが含有されておらず、難着霜性が良好でなかった。
比較例の試料No.8は、最外層の塗膜2の成分としてフッ素樹脂が含有されておらず、難着霜性が良好でなかった。
比較例の試料No.9は、最外層の塗膜2の成分としてフッ素樹脂とウレタン樹脂の合計量(A+B)が少なく、難着霜性が良好でなかった。
比較例の試料No.16は、最外層の塗膜2の成分としてフッ素樹脂の含有量(A)が少なく、難着霜性が良好でなかった。
比較例の試料No.17は、最外層の塗膜2の成分としてウレタン樹脂+エポキシ樹脂の含有量(B)が少なく、難着霜性が良好でなかった。
【0050】
また、水滴接触角については、本発明の実施例は、90°〜150°の範囲内の適度な撥水性を示す範囲内に止まっている。この範囲でも、非常に優れた難着霜性が得られることがわかる。
【0051】
また、本発明の実施例のうち、Bが30%以上であるもの(試料No.1〜5、10、13〜15)は、Bが30%未満であるもの(試料No.11、12)に比較して、形成した塗膜の密着性に優れることがわかる。
【0052】
また、本発明の実施例のうち、Aが50%以上であるもの(試料No.1〜5、11、12、14、15)は、Aが50%未満であるもの(試料No.10、13)に比較して、塗料の一部が固化しにくく、塗装性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0053】
1 熱交換器用アルミニウムフィン
10 基板
2 最外層の塗膜
6 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムよりなる基板と、該基板の表面に形成した1層もしくは複数層の塗膜からなる熱交換器用アルミニウムフィンであって、
上記塗膜のうち、最外層の塗膜に含有される成分は、固形分質量%で、パーフルオロアルキル基を含むフッ素樹脂をA、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の一方又は双方の合計をBとしたとき、
A+B≧95%
A≧10%、B≧10%
であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器用アルミニウムフィンにおいて、
A≧50%、B≧30%
であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器用アルミニウムフィンにおいて、上記最外層の塗膜は、水滴接触角が90°〜150°であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン。
【請求項4】
アルミニウムからなるフィンを多数積層し、該フィンに設けられた円筒状のカラー部内に挿入配設することにより上記伝熱管と多数の上記フィンとを一体的に組み付けてなるクロスフィンチューブからなる熱交換器であって、
上記フィンは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウムフィンを用いて形成され、
上記フィンの積層ピッチが、2mm以下であることを特徴とする熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate