説明

熱交換器

【課題】熱電発電機の潜在能力を最大限することができるとともに、安価に生産可能である上、寿命の延長が図られた装置を提供すること。
【解決手段】冷却用ダクト2、ヒータライン3及び複数のパイプ5を備えた原動機付き車両に配置される熱交換器1であって、前記冷却用ダクト2が前記パイプ5を介して熱的に前記ヒータライン3に接続されており、少なくとも1つのパイプ5に熱電発電機11が配置されて成る前記熱交換器において、前記熱電発電機11を、流動媒体により前記パイプ5に結合させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した、原動機付き車両に配置される熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排ガス熱の再利用システムが従来から知られており、ここでは、排ガスの有する熱を再利用するために、内燃エンジンの排ガス管路に熱電発電機ユニットが配置されている。また、このような従来技術による方法においては、複数の熱素子が排ガス通路に配置されている。そして、この排ガス流及び排ガス管路の外部(外気)への接続により、温度差が生じる。熱電素子は、この温度差をゼーベック効果により直接電気エネルギーへ変換するものである。
【0003】
このような熱電素子において温度差が生じるよう、高温側と低温側が設けられている。また、熱電素子の動作において適切な温度勾配を維持できるよう、各熱電素子を適切な厚さで形成する必要がある。
【0004】
特に600〜1000℃以上の高い排ガス温度により、熱電素子の構成要素は極端な温度変化にさらされることになる。また、排ガスの高い腐食性により、熱電素子の寿命に悪影響が及んでしまう。従来技術においては、熱電素子が排ガス管路に直接設けられているため、この熱電素子が直接的に、又は間接的に排ガスにさらされることになる。例えば特許文献1に示されているように熱電素子が直接排ガスにさらされている場合には、熱電発電機も排ガスに直接さらされることになってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1475532号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、熱電発電機の潜在能力を最大限することができるとともに、安価に生産可能である上、寿命の延長が図られた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1の特徴を備えた、原動機付き車両に配置される熱交換器により達成される。また、本発明の好ましい実施形態は、各従属請求項に記載されている。
【0008】
そして、冷却用ダクト、ヒータライン及び複数のパイプを備えた原動機付き車両に配置される本発明による熱交換器は、前記冷却用ダクトが前記パイプを介して熱的に前記ヒータラインに接続されていることを特徴としている。
【0009】
本発明においては、前記パイプ自体が、材料の蒸発熱を利用しつつ高い熱流束密度が得られる伝熱体となっている。すなわち、比較的小さな断面においても大きな熱量を伝達することが可能である。このとき、前記パイプ内に存在する流体の蒸気が高温領域において生成され、この蒸気流が低温領域へ流入し、ここで凝縮される。また、この生成された蒸気により熱伝達が確実になされ、凝縮した水分の高温領域への逆流が毛細管現象によりなされる。このとき、熱電発電機は、前記パイプに溶着されている。このように、パイプを熱電発電機に溶着することによって、前記パイプによって伝達される熱の熱電発電機への最適な伝達が達成され、最適な効率を得ることができる。
【0010】
前記パイプの本発明による使用によれば、冷却用ダクトがヒータラインに結合される。すなわち、前記パイプの少なくとも一部がヒータラインへ突出しているとともに、他の部分が冷却用ダクトへ突出している。
【0011】
本発明によれば、前記パイプの様々な実施形態を通じて、熱電発電機として、低温領域のみで使用される熱電材料を使用することが考えられる。また、この熱電発電機を、前記パイプを介して高温用の機能にも応用することが可能である。さらに、前記パイプの結着により、低温領域においても、また高温領域においても熱電発電機を高い効率で動作させることが可能である。
【0012】
また、前記パイプは安全機能の1つを担うものであり、このパイプにより、所定の最大温度までしか熱伝達がなされないようになっている。すなわち、動作状態が制限されるため、熱電発電機のオーバヒートが防止されるようになっている。
【0013】
本発明の構成の利点は、熱電発電機とヒータライン又は流通する排ガスとが直接接しないことにある。すなわち、熱電発電機の熱的な接触は、前記パイプのみを介してなされている。したがって、温度差によるひずみに起因する亀裂及び/又は漏れが防止され、本発明による熱交換器の寿命延長を図ることが可能である。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、結合手段として液体金属を用いたことを特徴としている。このように、結合手段として液体金属を用いることで、前記パイプから熱電要素へ熱をほぼ他の作用なく(容易に)伝達することが可能であるとともに、高い熱伝達係数を得ることが可能である。また、液体金属による結合により、溶着による最適な熱伝達効率を害すことなく、異なる熱膨張係数により生じ得る部材内の熱ひずみ又は熱応力を防止することが可能である。
【0015】
液体金属としては、特にガリンスタン(登録商標)が使用され、特に熱伝達材料は、ガリウム及びインジウムを含む合金として形成されている。ガリウム(Ga)及びインジウム(In)においては、これらは、特殊鋼やセラミックと化合するとともに、互いにも化合する。上記合金成分を有する熱伝達材料は、セラミック層と熱交換器壁面の結合部の間の境界領域へ化合する。このように形成された溶着結合は、高い熱伝達性を有する一方、応力の影響を受けにくいものとなっている。
【0016】
また、インジウムは、比較的小さな表面張力を有するため、他の金属、ガラス又はセラミックに対して良好な濡れ性を有するものとなっている。このインジウムは、合金の格子を埋めるものであるため、機械的な特性の向上に寄与するものとなっている。また、インジウムは、セラミックを金属に付着させる黄色の付着性酸化物(Haftoxid)を形成している。ここで、酸化状態は、基本的に、金属‐セラミック複合部材の形成に寄与するものとなっている。
【0017】
また、ガリウムは、合金の融点を低下させるものであるとともに、合金の流動性及び鋳造性を向上させるものとなっている。
【0018】
本発明の一実施形態においては、合金が更にすず(Sn)を含有している。すずは、炭素含有率を下げるとともに、結合される鋼合金から炭素が取り除かれないようにするものである。また、すずは、ガリウム及びインジウムの付着性酸化物生成を必要とする。そのため、上記合金成分について高い剛性が得られることになる。
【0019】
ところで、合金は、60〜80%のガリウム、10〜30%のインジウム、1〜20%のすず及び例えばビスマス、アンチモン等の他の元素で構成されている。これら合金の構成元素は、所定の溶融点を調整するのに重要である。これら合金の構成元素により決定される熱伝達要素の材料特性は、加工温度及び動作温度範囲を考慮に入れて選択する必要がある。そして、ガリンスタン及びナトリウムが特に熱伝達要素として使用される。
【0020】
さらに、前記パイプの壁面部は、金属の基層が塗布されている。ここで、この基層がオーステナイト特殊鋼合金で形成するのが好ましい。
【0021】
また、熱電発電機を前記パイプの低温側に配置するのが好ましい。こうすることで、熱電発電機と排ガス流通路であるヒータラインの熱的及び材料的な分離を達成することが可能である。また、前記パイプは、該パイプの材料あるいは該パイプ内の流体を選択することで、排ガスから熱電発電機への最適な熱伝達がなされるよう設定される。
【0022】
このとき、この設定は、熱交換器を適用する適当な内燃エンジンがサイクルにおいて規定以上の動作範囲で動作するようなされる。そして、前記パイプは、この動作範囲で最適となるよう設定される。仮に動作範囲が例えば定格出力範囲を超えるような範囲であると、熱電発電機のオーバヒートが生じないよう前記パイプが安全機能としての役割を果たす。
【0023】
さらに、前記パイプを使用することで、最適に熱エネルギーを熱電発電機へ供給することが可能であり、高い効率を得ることができる。特に、前記パイプが、その構造空間の長さ方向の半分より多くの部分についてヒータライン内に延出し、その長さよりも少ない部分が冷却用ダクトへ延出しているのが好ましい。また、前記パイプの約2/3をヒータラインへ延出させ、1/3を冷却用ダクトへ延出させるのが特に望ましい。
【0024】
本発明の好ましい実施形態においては、前記パイプの断面を、円形状、だ円状、長方形状及び/又は多角形状に形成している。なお、この断面形状を、様々なだ円、星形等に形成してもよい。したがって、流れ条件及び応用範囲に応じて、前記パイプの最適な流通状態を選択することができる。例えば、特に小さな反発圧力が必要な場合には前記パイプの断面形状を円形とし、流れ状態が乱雑である場合には前記パイプの断面形状を長方形とするのが好ましい。
【0025】
また、本発明の一実施形態は、前記パイプの高温側にフィンを設けるとともに、該フィンを熱媒体の流通方向に配向したことを特徴としている。この熱交換用のフィンにより、熱伝達に使用される表面積を拡大されることになる。また、このフィンの配向及び形状により、乱流への対応を行うことも可能である。なお、フィンに、熱伝達を行う例えば片状部材(Abrisskante)や流体力学的な部材を設けてもよい。
【0026】
また、本発明の一実施形態は、前記パイプを、冷却用ダクトにおける冷却剤の流通方向に対して直角に配向するか、又はヒータラインにおける熱媒体の流通方向に配向したことを特徴としている。このように、冷却用ダクトにおける冷却剤の流通方向に対して直角に配向するか、又はヒータラインにおける熱媒体の流通方向に配向したことにより、前記パイプにおいて最適な熱伝達がなされることになる。また、同時に、熱交換器を流通する冷却材又は熱媒体について生じる反発圧力あるいは圧力損失も小さく維持することが可能である。
【0027】
また、本発明の一実施形態は、熱電発電機を、前記パイプの外周部近傍に配置したことを特徴としている。すなわち、本発明においては、熱電発電機が各パイプをその外周部において包囲している。このような包囲は、少なくとも部分的になされる。本発明において、熱交換用パイプを、流れ方向とは反対の部分のみにおいて、又は流れ方向へ向いた部分において前記パイプ上に配置するのが好ましい。
【0028】
また、本発明の一実施形態は、前記パイプの動作状態を、熱電発電機と相互に適合させたことを特徴としている。すなわち、熱電発電機は、所定の温度差において最適な動作状態となる。このような動作状態あるいは動作点においては、熱電発電機が最適な効率を有している。このような効率は、例えば熱電発電機側において抵抗又はこれまでに行われた調整により得られる。ここで、熱交換用パイプは同様に適合された動作状態にあり、この動作状態は、常に熱電発電機の最適な動作状態をサポート又は確実なものとするものである。
【0029】
さらに、本発明の一実施形態は、前記パイプの動作状態を制御可能に構成したことを特徴としている。前記パイプ内のバルブを使用することにより、制御を確実に行うことが可能である。例えば、絞り弁により、前記パイプ内の熱搬送を制御することが可能である。また、例えば圧力弁又は絞り弁によって、前記パイプを介した熱搬送を例えば500℃より高い温度領域、特に600℃より高い温度領域、特に好ましくは700℃より高い温度領域において制御することが可能である。したがって、熱電発電機への過剰な熱負荷を避けることが可能である。
【0030】
本発明のその他の利点、特徴、特性、観点等は、図面を参照した以下の説明において示されている。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、熱電発電機の潜在能力を最大限することができるとともに、安価に生産可能である上、寿命の延長が図られた装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による、パイプを備えた熱交換器の概略断面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明による熱交換器の断面の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。各図においては同様又は類似の効果を生じさせる部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0034】
図1には本発明による熱交換器1の概略断面図が示されており、冷却用ダクト2とヒータライン3の間には分離層4が配置されている。この冷却用ダクト2及びヒータライン3は、複数のパイプ5を介して互いに接続されている。また、冷却用ダクト2における流通方向Skはヒータライン3における流通方向Shと平行となっている。そして、熱伝達は、分離層4においてなされる一方、パイプ5自体によってもなされるようになっている。
【0035】
ここで、このパイプ5は、冷却用ダクト2の内部において低温部6と共に配置されているか、又はヒータライン3の内部において高温部7と共に配置されている。したがって、このパイプ5は、冷却用ダクト2の側部において冷却剤(冷媒)8の周囲を流れ、ヒータライン3の側部において熱媒体(伝熱媒体)9の周囲を流れるようになっている。
【0036】
また、高温部7の表面積を拡大するために、熱を粗く包囲するフィン10が設けられている。さらに、低温部6には熱電発電機11が設けられており、この熱電発電機11は、該熱電発電機11によって発生した電気エネルギーを伝送するための不図示のコネクタ手段を備えている。
【0037】
図2には図1におけるA−A線に沿った断面図が示されており、ここでは、パイプ5の低温部6における熱電発電機11の3つの異なる配置態様が例示されている。
【0038】
図2における2aには、外側において、冷却剤8の流通方向Skに見て前側の熱電発電機11と、この流通方向Skに見て後側の熱電発電機11を備えた、内部に位置するパイプ5が示されている。
【0039】
図2における2bには、パイプ5における、流通方向Skに見た前側のみに熱電発電機11を備えた態様が示されている。また、図2における2cには、パイプ5を完全に包囲する熱電発電機11が示されている。
【0040】
図3には本発明による一配置構造が示されており、この配置構造においては、パイプ5がヒータライン3の両側に差込可能であり、これらパイプ5は互いに重なるようになっている。このような図3に示す実施形態はコンパクトなものであり、この実施形態におけるパイプ5を、例えば排ガス管路としてのヒータライン3において上側及び下側に、星型(放射状)に、又は互いに角度をずらして配置することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 熱交換器
2 冷却用ダクト
3 ヒータライン
4 分離層
5 パイプ
6 低音部
7 高音部
8 冷却剤
9 伝熱媒体
10 フィン
11 熱電発電機
Sk 冷却用ダクトにおける流通方向
Sh ヒータラインにおける流通方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用ダクト(2)、ヒータライン(3)及び複数のパイプ(5)を備えた原動機付き車両に配置される熱交換器(1)であって、前記冷却用ダクト(2)が前記パイプ(5)を介して熱的に前記ヒータライン(3)に接続されており、少なくとも1つのパイプ(5)に熱電発電機(11)が配置されて成る前記熱交換器において、
前記熱電発電機(11)を、流動媒体により前記パイプ(5)に結合させたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
結合手段として液体金属を用いたことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記熱電発電機(11)を、前記パイプ(5)における低温側(6)に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記パイプ(5)の断面を、円形状、だ円状、長方形状及び/又は多角形状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記パイプ(5)の高温側(7)にフィン(10)を設けるとともに、該フィン(10)を熱媒体の流通方向(Sh)に配向したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記パイプ(5)を、冷却用ダクト(2)における冷却剤(8)の流通方向(Sk)に対して直角に配向するか、又はヒータライン(3)における熱媒体(9)の流通方向(Sh)に配向したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱電発電機(11)を、前記パイプ(5)の外周部近傍に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記パイプ(5)の動作状態を、前記熱電発電機(11)と相互に適合させたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記パイプ(5)の動作状態を制御可能に構成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−130242(P2012−130242A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270841(P2011−270841)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany