説明

熱交換器

【課題】熱交換部に異種金属接触腐食が生ずることを防止して、熱交換能力が低下してしまうことを防止することができる熱交換器を提供すること。
【解決手段】冷媒の流路2411を構成し、かつ蛇行状に延設された冷媒通路管241と、冷媒通路管241と同一の金属材料から構成されて成り、冷媒通路管241における上流側部位と下流側部位との相互間に熱的に接続され、かつ冷媒通路管241を通過する冷媒と自身の周囲を通過する流体とを熱交換させるコルゲートフィン244とを備えた熱交換部24aを有し、かつ庫内床面30に設置された蒸発器24において、熱交換部24aと庫内床面30との間に介在し、かつ絶縁性材料から成る下側シート24cを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、より詳細には、例えば冷凍サイクルやヒートポンプサイクル等を構成する熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を販売する自動販売機では、自動販売機本体である本体キャビネットの商品収容庫の内部(庫内)における床面等の設置部位に、冷凍サイクル等の構成機器である蒸発器(熱交換器)が載置されている。
【0003】
このような蒸発器は、冷媒通路管とコルゲートフィンとを備えた熱交換部を有している。冷媒通路管は、冷媒の流路が複数並設された扁平状を成しており、上下に蛇行する態様で延設されている。この冷媒通路管の入口側には入口側ヘッダが接続され、かつ該冷媒通路の出口側には出口側ヘッダが接続されている。コルゲートフィンは、冷媒通路管と同一の金属材料(例えばアルミニウム)から構成されて成り、冷媒通路管の水平延在部位間に熱的に接続されている。より詳細には、コルゲートフィンは、波形状に屈曲されて形成されており、上記冷媒通路管の水平延在部位間に屈曲部外部が接合されて配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−29016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した蒸発器では、商品収容庫の内部空気を冷却することで熱交換部の表面に霜が付着することがある。このため、かかる霜を取り除く除霜運転を行うと、霜から融解した水が滴下して蒸発器の下部、すなわち商品収容庫の庫内床面との境界に水が溜まることがある。ここで、商品収容庫の庫内床面は、熱交換部とは異なる金属材料で構成されているのが一般的であり、これにより熱交換部と庫内床面との間に局所電池が形成されてしまい、熱交換部に異種金属接触腐食が生じてしまうことがある。
【0006】
このようにして熱交換部に異種金属接触腐食が生じてしまうと、腐食部分での風路抵抗が低下してしまうことで、他の熱交換部での風量低下を招き、この結果、伝熱性能の低下により熱交換能力が低下してしまう問題があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、熱交換部に異種金属接触腐食が生ずることを防止して、熱交換能力が低下してしまうことを防止することができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る熱交換器は、冷媒の流路を構成し、かつ蛇行状に延設された冷媒通路管と、前記冷媒通路管と同一の金属材料から構成されて成り、前記冷媒通路管における上流側部位と下流側部位との相互間に熱的に接続され、かつ該冷媒通路管を通過する冷媒と自身の周囲を通過する流体とを熱交換させるフィン部材とを備えた熱交換部を有し、かつ所定の設置部位に設置された熱交換器において、前記熱交換部と前記設置部位との間に介在し、かつ絶縁性材料から成るシート体を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る熱交換器は、上述した請求項1において、前記シート体は、前記熱交換部の表面に生じた水を通過させるための孔部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る熱交換器は、上述した請求項2において、前記孔部は、前記熱交換部から離隔するに連れて開口面積が漸次小さくなる形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁性材料から成るシート体が熱交換部と設置部位との間に介在するので、熱交換部の表面で生じた水が滴下して設置部位との間に溜まったとしても熱交換部と設置部位の間に局所電池が形成されてしまう虞れがない。これにより、熱交換部に異種金属接触腐食が生じてしまうことがなく、伝熱性能の低下を防止することができる。従って、熱交換部に異種金属接触腐食が生ずることを防止して、熱交換能力が低下してしまうことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である熱交換器が適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示す断面側面図である。
【図3】図3は、図2に示した蒸発器を拡大して模式的に示す側面図であり、一部を断面で示している。
【図4】図4は、図2に示した蒸発器を拡大して模式的に示す正面図であり、一部を断面で示している。
【図5】図5は、図3及び図4に示した冷媒通路管の縦断面図である。
【図6】図6は、図3及び図4に示した下側シートを上方から見た場合を示す平面図であり、一部を断面で示している。
【図7】図7は、図6におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る熱交換器の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である熱交換器が適用された自動販売機の内部構造を正面から見た場合を示す断面図である。ここで例示する自動販売機は、本体キャビネット1を備えている。
【0015】
本体キャビネット1は、前面が開口した直方状の形態を成すものである。この本体キャビネット1には、その内部に例えば2つの断熱仕切板2によって仕切られた3つの独立した商品収容庫3が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫3は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。
【0016】
図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示す断面側面図である。かかる図2に示すように、本体キャビネット1の前面には、外扉4及び内扉5が設けてある。外扉4は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、内扉5は、商品収容庫3の前面を開閉するためのものである。この内扉5は、上下に分割してあり、上側の扉5aは商品を補充する際に開閉するものである。
【0017】
上記商品収容庫3には、商品収納ラック6、搬出機構7及び搬出シュータ8が設けてある。商品収納ラック6は、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。搬出機構7は、商品収納ラック6の下部に設けてあり、この商品収納ラック6に収納された商品群の最下位にある商品を1つずつ搬出するためのものである。搬出シュータ8は、搬出機構7から搬出された商品を外扉4に設けられた商品取出口4aに導くためのものである。
【0018】
そして搬出シュータ8の下方域には蒸発器24及びヒータHが配設してある。蒸発器24は、本実施の形態である熱交換器であり、詳細は後述するが、背面ダクトDの前面側の庫内床面に設置してある。この蒸発器24は、機械室9に配設された圧縮機21、凝縮器22、膨張機構23と冷媒配管25を通じて順次接続されて冷媒回路(冷凍サイクル)20を形成している。
【0019】
圧縮機21は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態(高温高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。凝縮器22は、通過する冷媒を凝縮させるものである。より詳細に説明すると、圧縮機21で圧縮され、かつ吐出口から吐出されて冷媒配管25を通じて送出された冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。膨張機構23は、例えばキャピラリーチューブや膨張弁等で構成してあり、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0020】
これら冷媒回路20で冷媒を循環させることにより、圧縮機21で圧縮された冷媒が凝縮器22で凝縮され、その後に膨張機構23で断熱膨張されて蒸発器24を通過する。冷媒が蒸発器24を通過する際に、該蒸発器24が配設された商品収容庫3の内部空気(庫内空気)との間で熱交換が行われて、自身が蒸発して内部空気を冷却する。蒸発した冷媒は圧縮機21に吸引される。
【0021】
冷却された内部空気は庫内送風ファンF1の駆動により商品収容庫3の内部を移動し、これにより該商品収容庫3の商品収納ラック6に収納された商品は所望の温度(例えば5℃)に冷却されることになる。
【0022】
ヒータHは、庫内送風ファンF1の前方域に配設してある。このヒータHは通電状態となることにより周囲空気を加熱するものである。ヒータHにより加熱された空気は、庫内送風ファンF1の駆動により商品収容庫3の内部を移動し、これにより該商品収容庫3の商品収納ラック6に収納された商品は所望の温度(例えば55℃)に加熱されることになる。
【0023】
図3及び図4は、それぞれ図2に示した蒸発器24を拡大して模式的に示すものであり、図3は側面図であり、図4は正面図である。ここで例示する蒸発器24は、自身の上方域及び両側方域が風洞部材40に囲まれて設けてあり、商品収容庫3の庫内床面30に形成されたドレイン溝31を覆う態様で背面ダクトDの前面側の庫内床面30に設置してある。つまり、商品収容庫3の庫内床面30のうちドレイン溝31を含む部分が蒸発器24の設置部位である。ドレイン溝31は、ドレイン孔32に連通する凹み部分であり、蒸発器24の表面に生じた水をドレイン孔32に案内するものである。
【0024】
風洞部材40は、商品収容庫3を形成する床と同一の金属材料から構成されており、例えば亜鉛鋼板等の板状体を屈曲させて形成してある。この風洞部材40は、前面及び後面が開口した箱状を成しており、蒸発器24との間で背面ダクトDを通過した空気の風路を形成するものである。この風洞部材40の下面には、ドレイン溝31を臨む態様で矩形状の開口部41が形成してある。
【0025】
蒸発器24は、商品収容庫3の庫内床面30及び風洞部材40とは異なる例えばアルミニウム等の金属材料から構成された熱交換部24a、上側シート24b及び下側シート(シート体)24cを有している。
【0026】
熱交換部24aは、冷媒通路管241と、入口側ヘッダ242と、出口側ヘッダ243と、コルゲートフィン(フィン部材)244とを備えて構成してある。
【0027】
冷媒通路管241は、図5に示すように、複数の冷媒の流路2411が並設された扁平状の管であり、左右に蛇行して形成してある。本実施の形態である冷媒通路管241は、複数(図示の例では2つ)設けてあって、それぞれが内部空気の流れる方向に沿って並ぶ態様で左右に蛇行して形成してある。
【0028】
入口側ヘッダ242は、冷媒通路管241の入口側端部に接続してあり、冷媒通路管241の各流路2411に連通する態様で設けてある。この入口側ヘッダ242は、膨張機構23で断熱膨張され、かつ冷媒配管25を通じて供給された冷媒を各流路2411に送出するためのものである。
【0029】
出口側ヘッダ243は、冷媒通路管241の出口側端部に接続してあり、冷媒通路管241の各流路2411に連通する態様で設けてある。この出口側ヘッダ243は、各流路2411を通過した冷媒を、すなわち熱交換を行って蒸発した冷媒を圧縮機21に接続された冷媒配管25に送出するためのものである。
【0030】
コルゲートフィン244は、波形状に屈曲されて形成してあり、その屈曲部外部をロウ付け等により冷媒通路管241における水平延在部位2412間に接合して配設してある。つまり、コルゲートフィン244は、波形状に屈曲されて形成され、かつ冷媒通路管241における上流側部位と下流側部位との相互間に屈曲部外部が熱的に接続されて配設してある。このコルゲートフィン244は、互いに隣接する冷媒通路管241の水平延在部位2412どうしを跨る態様で配設してある。尚、図には明示していないが、コルゲートフィン244の表面には、細片状のルーバーが切り起こし形成されていてもよい。
【0031】
上側シート24bは、例えばポリエステル等の樹脂の絶縁性材料から構成したフィルム状のものであり、蒸発器24の熱交換部24aの上部を覆うのに十分な大きさを有している。この上側シート24bは、風洞部材40の上面42の内壁面に接着剤等により貼付することで、熱交換部24aと風洞部材40の上面42との間に介在してある。かかる上側シート24bは、所定温度帯(例えば−20℃〜80℃)で変形しないこと、難燃性を有することを満たすものである。
【0032】
下側シート24cは、上側シート24bと同様に、例えばポリエステル等の樹脂の絶縁性材料から構成したフィルム状のものであり、蒸発器24の熱交換部24aの下部を覆うのに十分な大きさを有している。この下側シート24cは、風洞部材40の下面の開口部41の縁部43の内壁面(折り返し部43の内壁面)に接着剤等により貼付することで、熱交換部24aと商品収容庫3の庫内床面30(設置部位)との間に介在してある。かかる下側シート24cは、上側シート24b同様に、所定温度帯(例えば−20℃〜80℃)で変形しないこと、難燃性を有することを満たすものである。
【0033】
また、下側シート24cには、図6に示すように、ドレイン溝31を臨む領域に複数の孔部24c1が形成してある。これら孔部24c1は、熱交換部24aに付着した霜の融解水、あるいは熱交換部24aの表面の結露水のような熱交換部24aの表面に生じた水を通過させるためのものである。このような孔部24c1は、図7に示すように、上面から下面に向かうに連れて開口面積が漸次小さくなる形状、すなわち熱交換部24aから離隔するに連れて開口面積が漸次小さくなる形状を有している。
【0034】
以上のような構成を有する蒸発器(本実施の形態である熱交換器)24においては、絶縁性材料から成る下側シート24cが、熱交換部24aと、設置部位である商品収容庫3の庫内床面30との間に介在しているので、熱交換部24aの表面で生じた水が滴下して庫内床面30との間に溜まったとしても熱交換部24aと庫内床面30との間に局所電池が形成されてしまう虞れがない。
【0035】
このように本願の実施の形態である蒸発器24によれば、熱交換部24aと庫内床面30との間に局所電池が形成されてしまう虞れがないので、熱交換部24aに異種金属接触腐食が生じてしまうことがなく、伝熱性能の低下を防止することができる。従って、熱交換部24aに異種金属接触腐食が生ずることを防止して、熱交換能力が低下してしまうことを防止することができる。
【0036】
このように熱交換部24aに異種金属接触腐食が生ずることがないので、結果的に熱交換部24aでの冷媒漏れ等の発生を防止することができ、所望の熱交換性能を保持することができる。
【0037】
また、上記下側シート24cには複数の孔部24c1が形成してあるので、熱交換部24aの表面で生じた水をドレイン溝31まで案内することができ、これによりかかる水を商品収容庫3の外部に排出することができる。特に、孔部24c1が、熱交換部24aから離隔するに連れて開口面積が漸次小さくなる形状を有しているので、熱交換部24aの表面で生じた水を孔部24c1に集まりやすくすることができ、ドレイン溝31への放出を速やかにすることができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0039】
上述した実施の形態では、上側シート24b及び下側シート24cに、樹脂から形成されたものを例示したが、本発明においては絶縁性材料から形成されるものであれば、樹脂以外のものから形成されたものであっても構わない。
【0040】
また、上述した実施の形態では、コルゲートフィン244をフィン部材として説明したが、本発明においては、フィン部材は、冷媒通路管241における上流側部位と下流側部位との相互間に熱的に接続され、該冷媒通路管241を通過する冷媒と、自身の周囲を通過する流体との熱交換を促進させることができればその形状は特に限定されるものではない。
【0041】
また、上述した実施の形態では、下側シート24cに形成した孔部24c1は、熱交換部24aから離隔するに連れて開口面積が漸次小さくなる形状を有していたが、本発明においては、かかる形状を有するものに限られず、熱交換部の表面で生じた水を通過させることができればその形状はどのようなものであってもよい。また、複数の孔部を設ける必要はなく、単数であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る熱交換器は、自動販売機等において商品を冷却等するのに用いられる冷凍サイクルやヒートポンプサイクル等を構成する冷媒回路に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 本体キャビネット
3 商品収容庫
20 冷媒回路
21 圧縮機
22 凝縮器
23 膨張機構
24 蒸発器
24a 熱交換部
24b 上側シート
24c 下側シート(シート体)
24c1 孔部
241 冷媒通路管
2411 流路
2412 水平延在部位
242 入口側ヘッダ
243 出口側ヘッダ
244 コルゲートフィン(フィン部材)
25 冷媒配管
30 庫内床面
31 ドレイン溝
32 ドレイン孔
40 風洞部材
41 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の流路を構成し、かつ蛇行状に延設された冷媒通路管と、
前記冷媒通路管と同一の金属材料から構成されて成り、前記冷媒通路管における上流側部位と下流側部位との相互間に熱的に接続され、かつ該冷媒通路管を通過する冷媒と自身の周囲を通過する流体とを熱交換させるフィン部材と
を備えた熱交換部を有し、かつ所定の設置部位に設置された熱交換器において、
前記熱交換部と前記設置部位との間に介在し、かつ絶縁性材料から成るシート体を備えたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記シート体は、前記熱交換部の表面に生じた水を通過させるための孔部を有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記孔部は、前記熱交換部から離隔するに連れて開口面積が漸次小さくなる形状を有することを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247173(P2012−247173A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121879(P2011−121879)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】