説明

熱交換器

【課題】冷媒が冷媒流入口を通って流入する際の通路抵抗の上昇および冷媒流動音の発生を抑制しうる熱交換器を提供するを提供する。
【解決手段】エバポレータ1は、複数の熱交換管19を有する熱交換コア部4と、熱交換コア部4における熱交換管19の長手方向の両側に設けられかつ一端部に冷媒流入口8,17を有するヘッダ部5,14とを備えている。ヘッダ部5,14は、両端が開口したヘッダ部本体24,25、ヘッダ部本体24,25の両端開口を閉鎖するキャップ26,27,28,29、およびヘッダ部本体24,25内を熱交換管19が通じている第1空間31,32と第2空間33,34とに区画する仕切部材35,36からなる。冷媒流入口8,17を、一方のキャップ26,28に第2空間33,34内に通じるように形成する。冷媒流入口8,17の開口面積を、第2空間33,34における長手方向の中間部の通路断面積よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンのエバポレータに好適に使用される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能化および小型軽量化の要求を満たすエバポレータに用いられる熱交換器として、本出願人は、先に、長手方向を同一方向に向けて配置された複数の熱交換管を有する熱交換コア部と、熱交換コア部における熱交換管の長手方向両側にそれぞれ配置されたヘッダタンクとを備えており、両ヘッダタンクがそれぞれ風下側ヘッダ部および風上側ヘッダ部を有し、一方の第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部の一端部に冷媒流入口が形成されるとともに、第1ヘッダタンクの風上側ヘッダタンクにおける冷媒流入口と同一端部に冷媒流出口が形成され、第1ヘッダタンクにおける冷媒流入口および冷媒流出口が形成された側の端部に、冷媒流入口に通じる流入部および冷媒流出口に通じる流出部を有するジョイントプレートが接合され、熱交換コア部が、両ヘッダタンクの各ヘッダ部どうしの間に設けられ、かつ両ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換管からなる熱交換管群を有しているとともに、各熱交換管群の熱交換管の両端部が、第1ヘッダタンクの各ヘッダ部および第2ヘッダタンクの各ヘッダ部に接続され、各ヘッダ部が、両端が開口したヘッダ部本体、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖するキャップ、およびヘッダ部本体内を熱交換コア部側に位置しかつ熱交換管が通じている第1空間と熱交換コア部とは反対側に位置する第2空間とに区画する仕切部材からなり、仕切部材が平坦な板状であってヘッダ部本体の第1空間および第2空間の通路断面積がそれぞれ全長にわたって一定であり、冷媒流入口が、第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部の一方のキャップに、風下側ヘッダ部の第2空間に通じるように形成されるとともに、冷媒流出口が、同風上側ヘッダ部における冷媒流入口と同一端部のキャップに、風上側ヘッダ部の第2空間に通じるように形成され、冷媒流入口を有するキャップおよび冷媒流出口を有するキャップが、それぞれヘッダ部本体の第1空間内に嵌め入れられる第1突出部および同第2空間内に嵌め入れられる第2突出部を有しており、冷媒流入口および冷媒流出口がキャップの第2突出部の突出端壁に形成され、冷媒流入口の開口面積が、冷媒流入口が通じる第2空間における長手方向の中間部の通路断面積、およびジョイントプレートの流入部の通路断面積よりも小さくなっている熱交換器を提案した(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の熱交換器によれば、冷媒流入口が、キャップにおける第2空間内に嵌め入れられる第2突出部の突出端壁に形成されているので、冷媒流入口の開口面積が、冷媒流入口が通じる第2空間における長手方向の中間部の通路断面積、およびジョイントプレートの流入部の通路断面積よりも小さくなる。したがって、第2空間とジョイントプレートの流入部との間に位置する冷媒流入口の部分において冷媒の流路が絞られることになり、冷媒が、ジョイントプレートの流入部およびキャップの冷媒流入口を通ってヘッダ部本体の第2空間内に入る際の通路抵抗が上昇するとともに、冷媒流動音が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、上記問題を解決し、冷媒が冷媒流入口を通って流入する際の通路抵抗の上昇および冷媒流動音の発生を抑制しうる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0007】
1)長手方向を同一方向に向けて配置された複数の熱交換管を有する熱交換コア部と、熱交換コア部における熱交換管の長手方向の両側のうち少なくとも片側に設けられかつ一端部に冷媒流入口を有するヘッダ部とを備え、冷媒流入口を有するヘッダ部が、両端が開口したヘッダ部本体、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖するキャップ、およびヘッダ部本体内を熱交換コア部側に位置しかつ熱交換管が通じている第1空間と熱交換コア部とは反対側に位置する第2空間とに区画する仕切部材からなり、冷媒流入口が、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖する2つのキャップのうちの一方のキャップに、ヘッダ部本体の第2空間内に通じるように形成されている熱交換器であって、
冷媒流入口の開口面積が、冷媒流入口が通じる第2空間における長手方向の中間部の通路断面積よりも大きくなっている熱交換器。
【0008】
2)冷媒流入口が通じる第2空間における冷媒流入口側の所定長さ部分の通路断面積が、冷媒流入口側端部が最も大きくかつ内方に向かって徐々に小さくなっている上記1)記載の熱交換器。
【0009】
3)仕切部材に、ヘッダ部本体の長さ方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴が形成されており、熱交換管が通じる第1空間における冷媒流入口側の端部に位置する冷媒通過穴よりも冷媒流入口側の部分の通路断面積が、冷媒流入口に向かって徐々に小さくなっている上記2)記載の熱交換器。
【0010】
4)仕切部材における冷媒流入口側の所定長さ部分に、冷媒流入口側に向かって熱交換管側に曲がった屈曲部が設けられている上記2)または3)記載の熱交換器。
【0011】
5)屈曲部が、冷媒流入口に向かって熱交換管側に湾曲し、かつ熱交換管とは反対側の面が凸面となっている上記4)記載の熱交換器。
【0012】
6)冷媒流入口を有するヘッダ部の外部に、冷媒流入口に通じる冷媒流路が具備させられており、冷媒流入口に通じるヘッダ部本体の第2空間内から見た場合、冷媒流路のヘッダ部側端部開口が冷媒流入口の範囲内に位置している上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【発明の効果】
【0013】
上記1)〜6)の熱交換器によれば、冷媒流入口の開口面積が、冷媒流入口が通じる第2空間における長手方向の中間部の通路断面積よりも大きくなっているので、冷媒流入口の部分で冷媒の流路が絞られることがなく、冷媒が、キャップの冷媒流入口を通ってヘッダ部本体の第2空間内に入る際の通路抵抗の上昇および音の発生を抑制することができる。
【0014】
上記2)の熱交換器によれば、冷媒流入口が通じる第2空間における冷媒流入口側の所定長さ部分の通路断面積が、冷媒流入口側端部が最も大きくかつ内方に向かって徐々に小さくなっているので、通路断面積の変化が緩やかになり、通路抵抗の上昇および音の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
上記3)の熱交換器によれば、第1空間に通じる熱交換管への冷媒の分流を均一化することができる。すなわち、冷媒流入口から第2空間内に流入した後、冷媒流入口側の端部に位置する冷媒通過穴を通って第1空間内に入った冷媒は、冷媒流入口側に位置する熱交換管に流入しやすくなるが、この場合であっても、熱交換管が通じる第1空間における冷媒流入口側の端部に位置する冷媒通過穴よりも冷媒流入口側の部分の通路断面積が、冷媒流入口に向かって徐々に小さくなっていると、冷媒流入口側に位置する熱交換管への冷媒の流入が抑制され、その結果第1空間に通じる熱交換管への冷媒の分流を均一化することが可能になる。
【0016】
上記4)および5)の熱交換器によれば、比較的簡単に上記2)および3)の熱交換器を得ることができる。
【0017】
上記6)の熱交換器によれば、冷媒が、冷媒流路からキャップの冷媒流入口を通ってヘッダ部本体の第2空間内に流入する際の流路の断面積が増大するので、ヘッダ部本体の第2空間内に入る際の通路抵抗の上昇および音の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の熱交換器を適用したエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のエバポレータの後方から見た一部を省略した垂直断面図である。
【図3】一部を省略した図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】図2のD−D線拡大断面図である。
【図7】図4のE−E線断面図である。
【図8】図1のエバポレータの第1ヘッダタンクの分解斜視図である。
【図9】図1のエバポレータの第2ヘッダタンクの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による熱交換器を、カーエアコンのエバポレータに適用したものである。
【0020】
以下の説明において、隣接する熱交換管どうしの間の通風間隙を流れる空気の下流側(図1、図3〜図5に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後といい、図2の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0021】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0022】
図1〜図3はエバポレータの全体構成を示し、図4〜図9はエバポレータの要部の構成を示す。
【0023】
図1〜図5において、エバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置されかつ左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0024】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置しかつ左右方向にのびる冷媒入口ヘッダ部(5)(風下側ヘッダ部)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ左右方向にのびる冷媒出口ヘッダ部(6)(風上側ヘッダ部)と、両ヘッダ部(5)(6)を相互に連結一体化する連結部(7)とを備えている。第1ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(5)は右端部に冷媒流入口(8)を有するとともに左端部が閉鎖され、同じく冷媒出口ヘッダ部(6)は右端部に冷媒流出口(9)を有するとともに左端部が閉鎖されている。第1ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(5)にアルミニウム製冷媒入口管(11)が冷媒流入口(8)に通じるように接続され、同じく冷媒出口ヘッダ部(6)にアルミニウム製冷媒出口管(12)が冷媒流出口(9)に通じるように接続されており、冷媒入口管(11)内および冷媒出口管(12)内がそれぞれ冷媒流路(11a)(12a)となっている。すなわち、冷媒流入口(8)を有する冷媒入口ヘッダ部(5)の外部および冷媒流出口(9)を有する冷媒出口ヘッダ部(6)の外部に、それぞれ冷媒流入口(8)および冷媒流出口(9)に通じる冷媒流路(11a)(12a)が具備させられている。
【0025】
第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置しかつ左右方向にのびる第1中間ヘッダ部(13)(風下側ヘッダ部)と、後側に位置しかつ左右方向にのびる第2中間ヘッダ部(14)(風上側ヘッダ部)と、両ヘッダ部(13)(14)を相互に連結一体化する連結部(15)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(13)は右端部に冷媒流出口(16)を有するとともに左端部が閉鎖され、同じく第2中間ヘッダ部(14)は右端部に冷媒流入口(17)を有するとともに左端部が閉鎖されている。第1中間ヘッダ部(13)の冷媒流出口(16)と第2中間ヘッダ部(14)の冷媒流入口(17)とは、第2ヘッダタンク(3)の右端部において両中間ヘッダ部(13)(14)に跨ってろう付された連通部材(18)を介して通じさせられている。
【0026】
熱交換コア部(4)は、長手方向を上下方向に向けるとともに左右方向に間隔をおいて並列状に配置された複数の熱交換管(19)からなる熱交換管群(21)が、前後方向に並んで複数列、ここでは2列配置され、各熱交換管群(21)の隣接する熱交換管(19)どうしの間の通風間隙、および各熱交換管群(21)の左右両端の熱交換管(19)の外側にそれぞれコルゲートフィン(22)が配置されて熱交換管(19)にろう付され、さらに左右両端のコルゲートフィン(22)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(23)が配置されてコルゲートフィン(22)にろう付されることにより構成されている。そして、前側熱交換管群(21)の熱交換管(19)の上下両端は冷媒入口ヘッダ部(5)および第1中間ヘッダ部(13)に接続され、後側熱交換管群(21)の熱交換管(19)の上下両端部は冷媒出口ヘッダ部(6)および第2中間ヘッダ部(14)に接続されている。
【0027】
熱交換管(19)はアルミニウム押出形材で形成されたベア材からなり、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに幅方向に並んだ複数の冷媒通路を有する扁平状である。コルゲートフィン(22)は、前後の熱交換管群(21)を構成する前後両熱交換管(19)に共有されており、その前後方向の幅は前側熱交換管(19)の前側縁と後側熱交換管(19)の後側縁との間隔をほぼ等しくなっている。なお、1つのコルゲートフィン(22)が前後両熱交換管群(21)に共有される代わりに、両熱交換管群(21)の隣り合う熱交換管(19)どうしの間にそれぞれコルゲートフィンが配置されていてもよい。
【0028】
第1ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(5)および冷媒出口ヘッダ部(6)は、それぞれ両端が開口したヘッダ部本体(24)(25)と、両ヘッダ部本体(24)(25)の両端開口を閉鎖するキャップ(26)(27)(28)(29)と、両ヘッダ部本体(24)(25)内を熱交換コア部(4)側(下側)に位置しかつ熱交換管(19)が通じている第1空間(31)(32)と、熱交換コア部(4)とは反対側(上側)に位置した第2空間(33)(34)とに仕切る仕切部材(35)(36)とよりなる。
【0029】
各ヘッダ部本体(24)(25)は、熱交換コア部(4)側の部分(下側の部分)を形成しかつ前後の熱交換管群(21)の熱交換管(19)の上端部が接続された横断面略U字状の第1部材(37)(38)と、各ヘッダ部本体(24)(25)の残りの部分(上側の部分)を形成しかつ第1部材(37)(38)にろう付された横断面略逆U字状の第2部材(39)(41)とを備えており、仕切部材(35)(36)が第1部材(37)(38)と第2部材(39)(41)との間に配置されて両部材(37)(38)(39)(41)にろう付されている。冷媒入口ヘッダ部(5)および冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(24)(25)の第1部材(37)(38)に、それぞれ前後方向に長い複数の管挿通穴(42)が、左右方向に間隔をおきかつ左右方向に関して同一位置に来るように形成されており、熱交換管(19)の上端部が管挿通穴(42)に挿入されて第1部材(37)(38)にろう付されている。
【0030】
図2、図6〜図9に示すように、冷媒入口ヘッダ部(5)の仕切部材(35)における左端部に配置された熱交換管(19)よりも左側の部分には、平面から見て前後方向に長くかつヘッダ部本体(24)内の2つの空間(31)(33)を通じさせる方形状の連通口(45)が形成されている。仕切部材(35)における連通口(45)の左側縁部に、第1空間(31)側に突出し、かつ冷媒を右側に案内するガイド部(46)が一体に形成されている。また、仕切部材(35)の前後方向の中央部でかつ左右方向の中央部および左右両側部分には、円形冷媒通過穴(47)が形成されている。
【0031】
冷媒入口ヘッダ部(5)の仕切部材(35)における冷媒流入口(8)側の所定長さ部分に、冷媒流入口(8)側に向かって熱交換管(19)側(下側)に曲がった屈曲部(43)が設けられている。屈曲部(43)は、仕切部材(35)における冷媒流入口(8)側の端部(右端部)に位置する冷媒通過穴(47)よりも冷媒流入口(8)側に形成されており、屈曲部(43)は、冷媒流入口(8)に向かって熱交換管(19)側(下側)に湾曲し、かつ熱交換管(19)とは反対側の面(上面)が凸面となっている。屈曲部(43)の前後両側縁部および冷媒流入口(8)側縁部には、第1部材(37)の内面に沿うように密着して第1部材(37)にろう付された密着部分(44)が一体に設けられている。また、第1空間(31)の右端は屈曲部(43)により閉鎖されている。したがって、冷媒入口ヘッダ部(5)のヘッダ部本体(24)の第2空間(33)における冷媒流入口(8)側の所定長さ部分、ここでは右端部に位置する冷媒通過穴(47)よりも冷媒流入口(8)側の部分の通路断面積が、冷媒流入口(8)側端部が最も大きくかつ内方に向かって徐々に小さくなっているとともに、熱交換管(19)が通じる第1空間(31)における右端部に位置する冷媒通過穴(47)よりも冷媒流入口(8)側の部分の通路断面積が、冷媒流入口(8)に向かって徐々に小さくなっている。
【0032】
冷媒出口ヘッダ部(6)の仕切部材(36)における冷媒流出口(9)側の所定長さ部分、ここでは右端部に配置された熱交換管(19)よりも冷媒流出口(9)側の部分には、冷媒流出口(9)側に向かって熱交換管(19)側(下側)に傾斜した傾斜部(48)が形成されている。傾斜部(48)の前後両側縁部および冷媒流出口(9)側縁部には、第1部材(38)の内面に沿うように密着して第1部材(38)にろう付された密着部分(49)が一体に設けられている。したがって、冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(25)の第2空間(34)における冷媒流出口(9)側の所定長さ部分、ここでは右端部に配置された熱交換管(19)よりも冷媒流出口(9)側の部分の通路断面積が、冷媒流出口(9)に向かって徐々に大きくなっている。また、第1空間(32)の右端は傾斜部(48)により閉鎖されている。
【0033】
また、冷媒出口ヘッダ部(6)の仕切部材(36)の後側部分における左右両端寄りの部分を除いた部分には、ヘッダ部本体(25)の2つの空間(32)(34)を通じさせる複数の長円形冷媒通過穴(51A)(51B)が、左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0034】
冷媒入口ヘッダ部(5)および冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(24)(25)を形成する第1部材(37)(38)どうし、および第2部材(39)(41)どうしは、それぞれ連結部(7)を構成する連結壁(52)(53)により一体に連結されており、これにより第1タンク構成部材(55)および第2タンク構成部材(56)が形成されている。また、冷媒入口ヘッダ部(5)および冷媒出口ヘッダ部(6)の仕切部材(35)(36)どうしは、屈曲部(43)(48)および密着部分(44)(49)を含めて連結部(7)を構成する連結壁(54)により一体に連結されており、これにより第3タンク構成部材(57)が形成されている。ここで、両ヘッダ部本体(24)(25)の第1部材(37)(38)および連結壁(52)が一体化された第1タンク構成部材(55)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されている。なお、熱交換管(19)の上端部は第1タンク構成部材(55)のろう材層を利用して第1タンク構成部材(55)にろう付されている。また、両ヘッダ部本体(24)(25)の第2部材(39)(41)および連結壁(53)が一体化された第2タンク構成部材(56)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されている。さらに、両仕切部材(35)(36)および連結壁(54)が一体化された第3タンク構成部材(57)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートまたはアルミニウムベア材にプレス加工を施すことにより形成されている。
【0035】
両ヘッダ部本体(24)(25)の右端開口を閉鎖するキャップ(26)(28)は、それぞれヘッダ部本体(24)(25)の第2部材(39)(41)の右端寄りの所定長さ部分と仕切部材(35)(36)の密着部分(44)(49)とにより囲まれた空間、すなわちヘッダ部本体(24)(25)の第2空間(33)(34)の右端寄りの所定長さ部分内に嵌め入れられる突出部(26a)(28a)を有しており、両キャップ(26)(28)が連結部(58)により一体化されることによって両ヘッダ部本体(24)(25)に跨ってろう付された1つの右エンド部材(59)が形成されている。右エンド部材(59)の前キャップ(26)の突出部(26a)の突出端壁に、冷媒入口ヘッダ部(5)のヘッダ部本体(24)の第2空間(33)に通じる冷媒流入口(8)が形成され、同じく後キャップ(28)の突出部(28a)の突出端壁に、冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(25)の第2空間(34)に通じる冷媒流出口(9)が形成されている。
【0036】
冷媒流入口(8)の開口面積は、冷媒入口ヘッダ部(5)のヘッダ部本体(25)の第2空間(33)における仕切部材(35)の屈曲部(43)よりも左側部分(第2空間(33)の長手方向の中間部)の通路断面積よりも大きくなっている。
【0037】
冷媒流出口(9)の開口面積は、冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(25)の第2空間(34)における仕切部材(36)の傾斜部(48)よりも左側部分(第2空間(34)の長手方向の中間部)の通路断面積よりも大きくなっている。
【0038】
右エンド部材(59)に、冷媒流入口(8)に通じる冷媒流入部(62)および冷媒流出口(9)に通じる冷媒流出部(63)を有するアルミニウムベア材製ジョイントプレート(61)がろう付されている。ジョイントプレート(61)の冷媒流入部(62)に、冷媒入口管(11)の一端部が差し込まれてろう付され、同じく冷媒流出部(63)に、冷媒出口管(12)の一端部が差し込まれてろう付されている。
【0039】
ここで、図6に鎖線で示すように、冷媒入口ヘッダ部(5)のヘッダ部本体(25)の第2空間(33)内から見た場合、冷媒入口管(11)内の冷媒流路(11a)の冷媒入口ヘッダ部(5)側端部の開口は、冷媒流入口(8)の範囲内に位置している。また、冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(25)の第2空間(34)内から見た場合、冷媒出口管(12)内の冷媒流路(12a)の冷媒出口ヘッダ部(6)側端部の開口は、冷媒流出口(9)の範囲内に位置している。
【0040】
両ヘッダ部本体(24)(25)の左端開口を閉鎖するキャップ(27)(29)は、それぞれヘッダ部本体(24)(25)の第2空間(33)(34)の左端寄りの部分内に嵌め入れられる上側突出部(27a)(29a)と、同じく第1空間(31)(32)の左端寄りの部分内に嵌め入れられる下側突出部(27b)(29b)とを有しており、両キャップ(27)(29)が連結部(64)により一体化されることによって両ヘッダ部本体(24)(25)に跨ってろう付された1つの左エンド部材(65)が形成されている。
【0041】
第2ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(13)および第2中間ヘッダ部(14)は、それぞれ両端が開口したヘッダ部本体(24)(25)と、両ヘッダ部本体(24)(25)の両端開口を閉鎖するキャップ(26)(27)(28)(29)と、両ヘッダ部本体(24)(25)内を熱交換コア部(4)側(上側)に位置しかつ熱交換管(19)が通じている第1空間(31)(32)と熱交換コア部(4)とは反対側(下側)に位置した第2空間(33)(34)とに区画する仕切部材(35)(36)とよりなり、第1ヘッダタンク(2)とほぼ同様な構成であるとともに、第1ヘッダタンク(2)とは上下逆向きに配置されたものであり、同一部分には同一符号を付す。
【0042】
なお、第2ヘッダタンク(3)の各ヘッダ部本体(24)(25)の第1部材(37)(38)は、ヘッダ部本体(24)(25)の熱交換コア部(4)側の部分(上側の部分)を形成するとともに前後の熱交換管群(21)の熱交換管(19)の下端部が接続され、同じく第2部材(39)(41)は、各ヘッダ部本体(24)(25)の残りの部分(下側の部分)を形成している。
【0043】
図2、図3、図5、図7および図9に示すように、第2ヘッダタンク(3)の第1ヘッダタンク(2)との相違点は、次の通りである。
【0044】
第1の相違点は、第1中間ヘッダ部(13)のヘッダ部本体(24)の右端開口を閉鎖するキャップ(26)の突出部(26a)の突出端壁に冷媒流出口(16)が形成され、第2中間ヘッダ部(14)のヘッダ部本体(25)の右端開口を閉鎖するキャップ(28)の突出部(28a)の突出端壁に冷媒流入口(17)が形成されていることである。
【0045】
ここで、冷媒流入口(17)の開口面積は、冷媒流出口(9)の開口面積と同一であるから、冷媒流入口(17)の開口面積は、第2中間ヘッダ部(14)のヘッダ部本体(25)の第2空間(34)における仕切部材(36)の傾斜部(48)よりも左側部分(第2空間(34)の長手方向の中間部)の通路断面積よりも大きくなっている。
【0046】
第2の相違点は、第1および第2中間ヘッダ部(13)(14)のヘッダ部本体(24)(25)に跨ってろう付された右エンド部材(59)の外形が、冷媒入口ヘッダ部(5)および冷媒出口ヘッダ部(6)のヘッダ部本体(24)(25)に跨ってろう付された右エンド部材(59)の外形とは異なっており、右エンド部材(59)に、ジョイントプレート(61)に代えて、内部が第1中間ヘッダ部(13)の冷媒流出口(16)と第2中間ヘッダ部(14)の冷媒流入口(17)とを通じさせる通路(66)となった外方膨出部(18a)を有する連通部材(18)がろう付されていることにある。
【0047】
第3の相違点は、第1中間ヘッダ部(13)のヘッダ部本体(24)の仕切部材(35)に連通口(45)、ガイド部(46)および円形冷媒通過穴(47)は形成されておらず、第1中間ヘッダ部(13)のヘッダ部本体(24)の第1および第2空間(31)(33)を通じさせる前後方向に長い連通穴(67)が形成されていることにある。
【0048】
第4の相違点は、第2中間ヘッダ部(14)のヘッダ部本体(25)の仕切部材(36)に長円形冷媒通過穴(51A)(51B)は形成されておらず、複数の円形冷媒通過穴(68)が左右方向に間隔をおいて貫通状に形成されていることにある。
【0049】
上述したエバポレータ(1)は、入口管(11)および出口管(12)を除いたすべての部品を組み付けた後、適当な治具により仮止めし、炉内で全部品を一括してろう付することにより製造される。
【0050】
エバポレータ(1)は、圧縮機および冷媒冷却器としてのコンデンサとともに、フロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。
【0051】
上述したエバポレータ(1)においては、圧縮機のオン時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した気液混相の2相冷媒は、冷媒入口管(11)の冷媒流路(11a)からジョイントプレート(61)の冷媒流入部(62)を通り、右エンド部材(59)の前キャップ(26)の冷媒流入口(8)を経て冷媒入口ヘッダ部(5)の第2空間(33)内に入る。第2空間(33)内に入った冷媒は、第2空間(33)内を冷媒入口ヘッダ部(5)の長さ方向に流れ、連通口(45)を通って第1空間(31)内に流入するとともに、円形冷媒通過穴(47)を通って第1空間(31)内に流入し、分流して前側熱交換管群(21)の熱交換管(19)内に流入する。
【0052】
熱交換管(19)内に流入した冷媒は、熱交換管(19)内を下方に流れて第2ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(13)の第1空間(31)内に入り、第1中間ヘッダ部(13)の仕切部材(35)の連通穴(67)を通って第2空間(33)内に入る。第2空間(33)内に入った冷媒は、第2空間(33)内を第1中間ヘッダ部(13)の長さ方向に流れ、右エンド部材(59)の前キャップ(26)の冷媒流出口(16)を経て連通部材(18)の通路(66)内に入り、後キャップ(28)の冷媒流入口(17)を経て第2中間ヘッダ部(14)の第2空間(34)内に入る。第2中間ヘッダ部(14)の第2空間(34)内に入った冷媒は、仕切部材(36)の円形冷媒通過穴(68)を通って第1空間(32)内に入り、分流して後側熱交換管群(21)の熱交換管(19)内に流入する。
【0053】
熱交換管(19)内に流入した冷媒は、熱交換管(19)内を上方に流れて冷媒出口ヘッダ部(6)の第1空間(32)内に入り、仕切部材(36)の長円形冷媒通過穴(51A)(51B)を通って第2空間(34)内に入る。冷媒出口ヘッダ部(6)の第2空間(34)内に入った冷媒は右方に流れ、右エンド部材(59)の後キャップ(28)の冷媒流出口(9)およびジョイントプレート(61)の冷媒流出部(63)を通り、冷媒出口管(12)の冷媒流路(12a)に流出する。
【0054】
そして、冷媒が前後両熱交換管群(21)の熱交換管(19)内を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0055】
上記実施形態においては、第1ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(5)に冷媒入口管(11)が接続され、同じく冷媒出口ヘッダ部(6)に冷媒出口管(12)が接続されているが、これに限定されるものではなく、複数のプレートを積層することにより形成され、かつ隣り合うプレート間に冷媒入口ヘッダ部(5)の冷媒流入口(8)に通じる流入路および冷媒出口ヘッダ部(6)の冷媒流出口(9)に通じる流出路を有する冷媒入出部材が、第1ヘッダタンク(2)に接続されていてもよい。この場合、冷媒入出部材の流入路および流出路が、冷媒入口ヘッダ部(5)の外部および冷媒出口ヘッダ部(6)の外部に具備させられ、かつ冷媒流入口(8)および冷媒流出口(9)に通じるように設けられた冷媒流路となる。
【0056】
また、上記実施形態においては、第1ヘッダタンク(2)の風下側ヘッダ部の全体が冷媒入口ヘッダ部となるとともに、風上側ヘッダ部の全体が冷媒出口ヘッダ部となり、第2ヘッダタンク(3)の風下側ヘッダ部の全体が第1中間ヘッダ部となるとともに、風上側ヘッダ部の全体が第2中間ヘッダ部となっているが、これに限定されるものではない。たとえば、第1ヘッダタンク(2)の風下側ヘッダ部内に、第1ヘッダタンク(2)の長さ方向に並んで複数の区画が設けられるとともに、いずれか一端の区画が冷媒入口ヘッダ部となり、同じく風上側ヘッダ部内に、第1ヘッダタンク(2)の長さ方向に並んで複数の区画が設けられるとともに、いずれか一端の区画が冷媒出口ヘッダ部となっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明による熱交換器は、カーエアコンを構成する冷凍サイクルのエバポレータとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0058】
(1):エバポレータ(熱交換器)
(2):第1ヘッダタンク
(4):熱交換コア部
(6):冷媒入口ヘッダ部
(8):冷媒流入口
(11):冷媒入口管
(11a):冷媒流路
(14):第2中間ヘッダ部
(17):冷媒流入口
(19):熱交換管
(24)(25):ヘッダ部本体
(26)(27)(28)(29):キャップ
(31)(32):第1空間
(33)(34):第2空間
(35)(36):仕切部材
(43):屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を同一方向に向けて配置された複数の熱交換管を有する熱交換コア部と、熱交換コア部における熱交換管の長手方向の両側のうち少なくとも片側に設けられかつ一端部に冷媒流入口を有するヘッダ部とを備え、冷媒流入口を有するヘッダ部が、両端が開口したヘッダ部本体、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖するキャップ、およびヘッダ部本体内を熱交換コア部側に位置しかつ熱交換管が通じている第1空間と熱交換コア部とは反対側に位置する第2空間とに区画する仕切部材からなり、冷媒流入口が、ヘッダ部本体の両端開口を閉鎖する2つのキャップのうちの一方のキャップに、ヘッダ部本体の第2空間内に通じるように形成されている熱交換器であって、
冷媒流入口の開口面積が、冷媒流入口が通じる第2空間における長手方向の中間部の通路断面積よりも大きくなっている熱交換器。
【請求項2】
冷媒流入口が通じる第2空間における冷媒流入口側の所定長さ部分の通路断面積が、冷媒流入口側端部が最も大きくかつ内方に向かって徐々に小さくなっている請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
仕切部材に、ヘッダ部本体の長さ方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴が形成されており、熱交換管が通じる第1空間における冷媒流入口側の端部に位置する冷媒通過穴よりも冷媒流入口側の部分の通路断面積が、冷媒流入口に向かって徐々に小さくなっている請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
仕切部材における冷媒流入口側の所定長さ部分に、冷媒流入口側に向かって熱交換管側に曲がった屈曲部が設けられている請求項2または3記載の熱交換器。
【請求項5】
屈曲部が、冷媒流入口に向かって熱交換管側に湾曲し、かつ熱交換管とは反対側の面が凸面となっている請求項4記載の熱交換器。
【請求項6】
冷媒流入口を有するヘッダ部の外部に、冷媒流入口に通じる冷媒流路が具備させられており、冷媒流入口に通じるヘッダ部本体の第2空間内から見た場合、冷媒流路のヘッダ部側端部開口が冷媒流入口の範囲内に位置している請求項1〜5のうちのいずれかに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2652(P2013−2652A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131062(P2011−131062)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)