説明

熱交換器

【課題】設備費の高騰及び工数の増加を招くことなく、エンドプレートの端部をヘッダタンクの外面に確実にろう付けできるようにしてエンドプレートとヘッダタンクとを強固に結合する。
【解決手段】熱交換器1は、チューブ11及びフィン12が交互に配列されたコア10と、チューブ11端部に接続されるヘッダタンク20と、コア10のチューブ11及びフィン12の配列方向の外端部に設けられたエンドプレート40とを備えている。エンドプレート40には、コア10よりもヘッダタンク40側へ延び、ヘッダタンク40の外面に接触するように形成されて外面にろう付けされるろう付け部44と、ろう付け部44を補強するビード46とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用空調装置等に使用される熱交換器に関するものであり、特に、エンドプレートをヘッダタンクにろう付けする構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の熱交換器として、複数のチューブ及びフィンを交互に配列して構成されたコアと、コアのチューブ端部に設けられて該チューブが接続されるヘッダタンクと、コアのチューブ及びフィンの配列方向外端部に設けられたエンドプレートとを備えるものが知られている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1では、エンドプレートが一対の側板部を有する断面略コ字状に形成されている。一対の側板部の端部は、ヘッダタンクを径方向に挟むように形成されており、それぞれがヘッダタンクの外面にろう付けされている。
【0004】
特許文献2では、エンドプレートの端部が二股形状とされており、この二股形状の部分がヘッダタンクを径方向に挟んだ状態で該ヘッダタンクの外面にろう付けされている。
【0005】
特許文献3では、特許文献1と同様に断面略コ字状のエンドプレートの両側板部がヘッダタンクの外面に点溶接されるとともに、ろう付けされるようになっている。
【0006】
特許文献1〜3のようにエンドプレートの端部をヘッダタンクの外面にろう付けすることにより、エンドプレートとヘッダタンクとを強固に結合することが可能になり、熱交換器全体としての剛性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−304168号公報
【特許文献2】特開2002−213892号公報
【特許文献3】特開2002−323297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1、2の熱交換器を製造する際には、ヘッダタンクをエンドプレートの端部で径方向に挟み、この状態でろう付け用の炉内に搬入する。このとき、エンドプレートはろう材の溶融温度となるまで加熱されるので強度が低下し、ヘッダタンクの外面から離れるように変形することがある。特に、炉内における熱交換器の姿勢が、エンドプレートの一方の側板部がヘッダタンクの下に位置するような姿勢とされている場合には、重力の影響によってその側板部が下方向(ヘッダタンクの外面から離れる方向)に変形しがちになる。エンドプレートの側板部がヘッダタンクから離れてしまうと、エンドプレートとヘッダタンクとのろう付け不良が発生する。
【0009】
そこで、特許文献3のように炉内へ搬送する前にエンドプレートの側板部をヘッダタンクに点溶接することが考えられる。
【0010】
しかしながら、点溶接するには溶接設備が必要になって設備費が高騰するとともに、工数が増加するという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、設備費の高騰及び工数の増加を招くことなく、エンドプレートの端部をヘッダタンクの外面に確実にろう付けできるようにしてエンドプレートとヘッダタンクとを強固に結合することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、エンドプレートに補強構造を設けるようにした。
【0013】
第1の発明は、チューブ及びフィンが交互に配列されたコアと、上記コアのチューブ端部に設けられ、該チューブ端部に接続されるヘッダタンクと、上記コアのチューブ及びフィンの配列方向外端部に設けられたエンドプレートとを備えた熱交換器において、上記エンドプレートには、上記コアよりも上記ヘッダタンク側へ延び、該ヘッダタンクの外面に接触するように形成されて該外面にろう付けされるろう付け部と、該ろう付け部を補強する補強部とが設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、エンドプレートのろう付け部が補強部により補強されるので、ろう付け用の炉内で加熱された際に、ろう付け部の変形が抑制される。これにより、ろう付け部をヘッダタンクの外面に接触したままにすることが可能になるので、エンドプレートがヘッダタンクの外面に確実にろう付けされる。
【0015】
また、補強部によってエンドプレート自体の剛性も高まる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記エンドプレートには、熱交換器を車両に固定するための固定部材が取り付けられることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、熱交換器のエンドプレートが固定部材を介して車両に固定されることになるので、エンドプレートには大きな力が加わる。この場合にエンドプレートが補強部により補強されてヘッダタンクに確実にろう付けされてエンドプレートの剛性が高まっているので、エンドプレートの変形を低減することが可能になる。
【0018】
第3の発明は、第1または2の発明において、上記エンドプレートは、上記コアの外端部に沿って延びる底板部と、該底板部の両側縁部から立ち上がる第1及び第2側板部とを備えたプレス成形品とされ、上記ろう付け部は、上記第1及び第2側板部に設けられており、上記補強部は、上記第1及び第2側板部にプレス成形されたビードで構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、エンドプレートをプレス成形する際に補強部も一緒に得られるので、補強部を設けることによる工数の増加が回避される。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、上記エンドプレートの底板部は、上記ヘッダタンクに挿入されて該ヘッダタンクにろう付けされていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、エンドプレートとヘッダタンクとがより一層強固に結合される。
【0022】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記ヘッダタンクは、上記チューブ及びフィンの配列方向に延びる円筒形状とされ、上記ろう付け部は、上記ヘッダタンクの外面に沿って周方向に該ヘッダタンクの中心軸に対応する部位まで延びる沿い部と、該沿い部に連なり、該ヘッダタンクにおける上記コア側とは反対側へ直線状に延びる延長部とを有していることを特徴とするものである。
【0023】
この構成によれば、ろう付け部の沿い部をヘッダタンクの外面における中心軸に対応する部位まで広い範囲に亘ってろう付けすることが可能になる。そして、例えばヘッダタンクやエンドプレートに製造誤差が生じた場合には、沿い部に延長部が連なっているので、延長部をヘッダタンクの外面に接触させてろう付けすることが可能になる。
【0024】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、上記ヘッダタンクの外面又は上記エンドプレートにおけるヘッダタンクとの接触面には、ろう材がクラッドされていることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、エンドプレートとヘッダタンクとが確実にろう付けされる。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、エンドプレートのろう付け部を補強する補強部を設けたので、ろう付け部の点溶接を行わなくても、ろう付け用の炉内で加熱されたろう付け部の変形を抑制できる。これにより、設備費の高騰及び工数の増加を招くことなく、エンドプレートをヘッダタンクの外面に確実にろう付けでき、エンドプレートとヘッダタンクとを強固に結合できる。
【0027】
第2の発明によれば、エンドプレートを車両に固定するようにしたので、エンドプレートとヘッダタンクとを強固に結合できるという、本発明の効果を特に顕著なものとすることができる。
【0028】
第3の発明によれば、底板部と第1及び第2側板部とを備えたエンドプレートをプレス成形する際に補強部も一緒に成形することができる。これにより、補強部を安価に設けることができる。
【0029】
第4の発明によれば、エンドプレートの底板部をヘッダタンクに挿入してろう付けするようにしたので、エンドプレートとヘッダタンクとをより一層強固に結合できる。
【0030】
第5の発明によれば、エンドプレートのろう付け部が、ヘッダタンクの外面に沿って延びる沿い部と、沿い部に連なって延びる延長部とを有しているので、各部品に製造誤差が生じても、ろう付け部とヘッダタンクとのろう付け面積を十分に確保することができる。
【0031】
第6の発明によれば、ヘッダタンクの外面又はエンドプレートにおけるヘッダタンクとの接触面にろう材をクラッドしたので、両者を確実にろう付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態にかかる熱交換器の正面図である。
【図2】熱交換器の左側上部を拡大して示す正面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】上側エンドプレートの側面図である。
【図5】図4のV−V線における断面図である。
【図6】図4のVI−VI線における断面図である。
【図7】実施形態の変形例1にかかる図3相当図である。
【図8】実施形態の変形例1にかかる図2相当図である。
【図9】実施形態の変形例2にかかる図3相当図である。
【図10】実施形態の変形例2にかかる図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態にかかる熱交換器1を示すものである。この熱交換器1は、自動車に搭載される車両用空調装置の冷凍サイクルの一要素を構成する冷媒凝縮器である。熱交換器1は、車両の前部に設けられたエンジンルームに搭載される。
【0035】
熱交換器1は、コア10と、左側及び右側ヘッダタンク20,30と、上側及び下側エンドプレート40,50とを備えている。コア10は、多数のチューブ11及びフィン12を上下方向に交互に配列してなるものである。チューブ11は、車両の左右方向に長く延びており、断面形状が外部空気の流れ方向に長い、いわゆる扁平チューブである。フィン12は、外部空気の流れ方向から見たときに車両左右方向に連続するコルゲートフィンである。フィン12の車両左右方向の寸法は、チューブ11の同方向の寸法よりも短く設定されており、チューブ11の車両左右方向両端はフィン12の左右方向両端よりも突出している。
【0036】
尚、実施形態の説明では、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0037】
チューブ11及びフィン12は、共にアルミニウム合金製である。チューブ11及びフィン12の一方を構成する部材の外面にはろう材がクラッドされており、チューブ11の上面及び下面には、それぞれ隣接するフィン12がろう付けされてチューブ11及びフィン12が一体化されている。コア10における上下両端部には、それぞれフィン12が位置している。
【0038】
左側ヘッダタンク20は、図2にも示すように、コア10のチューブ11及びフィン12の配列方向(上下方向)に延びる円筒状に形成されたタンク本体21と、タンク本体21の上端及び下端開口部を閉塞するキャップ22、22とを備えている。左側ヘッダタンク20の外径は、コア10の外部空気流れ方向の寸法よりも大きく設定されている。
【0039】
タンク本体21及びキャップ22は、アルミニウム合金製である。タンク本体21を構成する部材の外面にはろう材がクラッドされている。キャップ22は、タンク本体21にろう付けされている。
【0040】
タンク本体21の上下寸法は、コア10の上下寸法よりも長く設定されており、タンク本体21の上部はコア10の上端よりも上方へ突出し、また、タンク本体21の下部はコア10の下端よりも下方へ突出している。
【0041】
タンク本体21におけるコア10側には、チューブ11の左端部が挿入されるチューブ挿入孔(図示せず)がチューブ11の間隔に対応して形成されている。チューブ11の左端部はチューブ挿入孔に挿入された状態で該チューブ挿入孔の周縁部にろう付けされている。
【0042】
タンク本体21のチューブ挿入孔よりも上側には、詳細は後述するが、上側エンドプレート40の底板部41が挿入されるエンドプレート挿入孔21b(図2に示す)が形成されている。このエンドプレート挿入孔21bは、タンク本体21の周方向に延びるスリット状に形成されている。
【0043】
また、タンク本体21の下側には、上側と同様に下側エンドプレート50の底板部(図示せず)が挿入されるエンドプレート挿入孔(図示せず)が形成されている。
【0044】
図1に示すように、右側ヘッダタンク30も左側ヘッダタンク20と同様にタンク本体31とキャップ32,32とを有している。右側ヘッダタンク30の上下方向中央部近傍には、仕切板33が設けられている。仕切板33は、右側ヘッダタンク30の内部空間を上下方向に2分割するためのものである。
【0045】
タンク本体31の上側には、冷媒を熱交換器1に導入するための冷媒導入孔(図示せず)を有する導入側接続ブロック34が取り付けられている。また、タンク本体31の下側には、熱交換器1の内部を流通した冷媒を排出するための冷媒排出孔(図示せず)を有する排出側接続ブロック35が設けられている。導入側接続ブロック34及び排出側接続ブロック35には、エンジンルーム内の冷媒配管(図示せず)が接続されるようになっている。従って、導入側接続ブロック34から流入した冷媒、仕切板33よりも上のチューブ11を左側へ流通して左側ヘッダタンク20に流入した後、仕切板33よりも下のチューブ11を右側へ流通して右側ヘッダタンク30に流入し、その後、排出側接続ブロック35から排出される。
【0046】
上側エンドプレート40は、コア10の上端部に位置するフィン12の上側に配置されており、チューブ11と同様に左右方向に長く延びている。また、下側エンドプレート50は、コア10の下端部に位置するフィン12の下側に配置されており、上側エンドプレート40と同様に延びている。つまり、エンドプレート40,50は、コア10のチューブ11及びフィン12の配列方向の外端部に設けられている。
【0047】
上側及び下側エンドプレート40,50は同じものであり、本実施形態では上下反転させて使用している。以下、主に上側エンドプレート40の構造について詳細に説明する。
【0048】
上側エンドプレート40は、アルミニウム合金製の1枚の板材をプレス成形してなるプレス成形品である。上側エンドプレート40を構成する板材の厚みは、チューブ11やフィン12を構成する板材の厚みよりも厚く設定されている。
【0049】
上側エンドプレート40は、図2及び図3に示すように、コア10の上端部のフィン12に沿って左右方向に延びる底板部41と、底板部41の両側縁部(外部空気の流れ方向両側縁部)からそれぞれ上方へ延びる第1及び第2側板部42,43とを備え、全体として上方に開放する略コ字状断面を有している。底板部41の外部空気流れ方向の寸法は、コア10の同方向の寸法と略同じに設定されており、図3に示すように、左側ヘッダタンク20の外径よりも短い。また、底板部41の下面は、コア10の上端部のフィン12にろう付けされている。
【0050】
上側エンドプレート40の左端部には、第1及び第2側板部42,43の左端部を底板部41から分離させるための切れ込み部45が形成されている。尚、上側エンドプレート40の右端部にも同様に切れ込み部(図示せず)が形成されている。底板部41の左右両端部は、左側及び右側ヘッダタンク20,30のエンドプレート挿入孔21bに挿入されて該エンドプレート挿入孔21bの周縁部にろう付けされている。
【0051】
上側エンドプレート40の第1側板部42の左端部には、左側ヘッダタンク20の外面にろう付けされる第1ろう付け部44が設けられている。第1ろう付け部44は、コア10よりも左側ヘッダタンク20側へ延び、左側ヘッダタンク20の外面に接触するように形成されている。第1ろう付け部44は、底板部41から分離しており、図3に示すように、第2側板部43から厚み方向に離れる方向に折り曲げられた折り曲げ部44aと、左側ヘッダタンク20の外面に沿って周方向に延びるとともに円弧状に湾曲した円弧状部44bとを有している。円弧状部44bは、折り曲げ部44aに連続している。
【0052】
円弧状部44bは、第1側板部42の左右方向中間部と比較して第2側板部43から厚み方向に離れている。第1円弧状部44bの左端部は、左側ヘッダタンク20を空気流れ方向から見たときに、該ヘッダタンク20の外面における左右方向の中央部(ヘッダタンク20の中心軸Zに対応する部位)に位置している。
【0053】
また、上側エンドプレート40の第1側板部42には、第1ろう付け部44を補強するための第1ビード(補強部)46が設けられている。第1ビード46は、第1側板部42の厚み方向について左側ヘッダタンク20の外面から離れる方向へ突出するように、第1側板部42の一部を成形して得られたものであり、本実施形態では上側エンドプレート40の底板部41、第1及び第2側板部42,43のプレス成形時に同時に成形されている。
【0054】
尚、第1ビード46は、底板部41、第1及び第2側板部42,43のプレス成形時とは別のタイミングでプレス成形するようにしてもよい。
【0055】
図2に示すように、第1ビード46は、第1側板部42の上下方向中央部に位置しており、第1側板部42の第1ろう付け部44から該第1側板部42の左右方向中間部の一部に亘って形成されている。図3にも示すように、第1ビード46の突出高さは、上下方向中央部が最も高く、上側及び下側へ行くほど低くなるように設定され、また、第1ビード46の左端に行くほど低く、右端に行くほど低く設定されている。従って、第1ビード46の縦断面は山型となっている。さらに、第1ビード46の上下寸法は、左側へ行くほど、及び、右側へ行くほど短くなっている。
【0056】
このように第1ビード46を第1ろう付け部44から第1側板部42の中間部に亘るように形成したことにより、第1ビード46がリブとして機能することになり、第1ろう付け部44の剛性が高まり、ひいては、上側エンドプレート40の剛性も高まる。
【0057】
図3に示すように、第2側板部43の左端部にも、第1ろう付け部44と同様な第2ろう付け部47と第2ビード48とが設けられている。すなわち、第2ろう付け部47は、左側ヘッダタンク20の外面に、第1ろう付け部47とは反対側から接触するように形成されている。また、第2ろう付け部47は、折り曲げ部47aと円弧状部47bとを有している。
【0058】
そして、第1ろう付け部44と、第2ろう付け部47とは、左側ヘッダタンク20を径方向に挟むように位置している。
【0059】
また、図1に示すように、第1側板部42の右端部にも、左端部と同様に、第1ろう付け部44及び第1ビード46が設けられ、また、図示しないが、第2側板部43の右端部にも、第2ろう付け部及び第2ビードが設けられている。
【0060】
下側エンドプレート50も、第1側板部52及び第2側板部(図1に第1側板部52のみ示す)を備えている。第1側板部52の左右両端部には、第1ろう付け部54及び第1ビード部56が設けられており、また、図示しないが、第2側板部には、第2ろう付け部及び第2ビード部が設けられている。
【0061】
上側及び下側エンドプレート40,50の左右両側には、それぞれ、ブラケット(固定部材)Bが取り付けられるようになっている。ブラケットBは、金属製の板材からなるものであり、エンドプレート40,50に締結部材により固定されている。ブラケットBは、熱交換器1を車両側の部材に取り付けるためのものである。ブラケットBは、樹脂製としてもよい。
【0062】
尚、ブラケットBをアルミニウム合金製とする場合には、上側及び下側エンドプレート40,50にろう付けするようにしてもよい。また、図2及び図3では、ブラケットBを省略している。
【0063】
次に、上記のように構成された熱交換器1の製造要領について説明する。まず、チューブ11及びフィン12を交互に配列してコア10を構成するとともに、コア10の外端部に上側及び下側エンドプレート40,50を配置し、チューブ11、フィン12及びエンドプレート40,50をワイヤ等の結束部材により結束する。
【0064】
その後、左側及び右側ヘッダタンク20,30のチューブ挿入孔にコア10のチューブ11の端部を挿入するとともに、エンドプレート40,50の底板部41を左側及び右側ヘッダタンク20,30のエンドプレート挿入孔21bに挿入し、ヘッダタンク20,30をコア10及びエンドプレート40,50と一体化する。この状態で、図3に示すように、上側エンドプレート40の左側の第1ろう付け部44と第2ろう付け部47とが左側ヘッダタンク20を径方向に挟み、また、図示しないが、右側の第1ろう付け部と第2ろう付け部とが右側ヘッダタンク30を径方向に挟む。下側エンドプレート50も同様に第1及び第2ろう付け部が左側ヘッダタンク20を挟むとともに、右側ヘッダタンク30を挟む。
【0065】
しかる後、コア10、ヘッダタンク20,30、エンドプレート40,50をろう付け用の炉内へ搬送する。
【0066】
炉内では各部材が加熱され、各部材にクラッドされているろう材が溶融する。このとき、上側及び下側エンドプレート40,50の強度が熱の影響によって低下することがあるが、これらエンドプレート40,50には第1ビード46,56、第2ビード48が設けられていて第1ろう付け部44,54及び第2ろう付け部47の強度が高められているので、第1ろう付け部44,54及び第2ろう付け部47が左側及び右側ヘッダタンク20,30の外面から離れるように変形するのが抑制される。よって、第1ろう付け部44,54及び第2ろう付け部47を左側及び右側ヘッダタンク20,30の外面に密着させたままにすることができ、確実にろう付けできる。
【0067】
以上説明したように、この実施形態にかかる熱交換器1によれば、上側及び下側エンドプレート40,50の第1ろう付け部44,54及び第2ろう付け部47を補強する第1ビード46,56及び第2ビード48を設けたので、第1ろう付け部44,54及び第2ろう付け部47の点溶接を行わなくても、ろう付け用の炉内で加熱された第1ろう付け部44,54及び第2ろう付け部47の変形を抑制できる。これにより、設備費の高騰及び工数の増加を招くことなく、上側及び下側エンドプレート40,50の端部を左側及び右側ヘッダタンク20,30の外面に確実にろう付けでき、上側及び下側エンドプレート40,50と左側及び右側ヘッダタンク20,30とを強固に結合できる。
【0068】
また、本実施形態では、熱交換器1を車両に固定する際に、上側及び下側エンドプレート40,50にブラケットBを取り付け、ブラケットBを介して固定するようにしているので、上側及び下側エンドプレート40,50には車両の走行振動等による力が作用する。この場合に、上述のように上側及び下側エンドプレート40,50を左側及び右側ヘッダタンク20,30に強固に結合してエンドプレート40,50の剛性を向上しているので、エンドプレート40,50の変形や破損を低減できる。
【0069】
また、上側及び下側エンドプレート40,50をプレス成形する際に第1ビード46,56及び第2ビード48も一緒に成形することができる。これにより、第1及び第2ビード46,47を低コストで設けることができる。
【0070】
また、上側及び下側エンドプレート40,50の底板部41を左側及び右側ヘッダタンク20,30に挿入してろう付けするようにしたので、エンドプレート40,50とヘッダタンク20,30とをより一層強固に結合できる。
【0071】
また、左側及び右側ヘッダタンク20,30の外面にろう材をクラッドしたので、上側及び下側エンドプレート40,50と左側及び右側ヘッダタンク20,30とを確実にろう付けすることができる。
【0072】
尚、第1及び第2ビード46,48の形状は上記した形状に限られるものではなく、例えば、図7及び図8に示す変形例1のように側板部42の下端部近傍から上端部に亘って形成してもよい。この変形例1では、第1ビード46の上下寸法を長く確保できるので、補強効果がより一層高まる。
【0073】
また、図9及び図10に示す変形例2のように第1ろう付け部44には、円弧状部44bから延長する延長部44cを設けてもよい。延長部44cは、円弧状部44bの左端部に連なってヘッダタンク20におけるコア10とは反対側(左側)へ直線状に延びている。この延長部44cは、左側ヘッダタンク20の外面における中心軸Zに対応する部位よりも左側へ直線状に延びており、従って、延長部44cの左端へいくほど左側ヘッダタンク20の外面から離れていくことになる。第2ろう付け部47にも同様に延長部47cを設けてもよい。
【0074】
変形例2では、例えば、左側ヘッダタンク20や上側エンドプレート40に製造誤差が生じて左側ヘッダタンク20が正規の位置から左側にずれた状態となっても、延長部44cを設けていることで、延長部44cをヘッダタンク20の外面に接触させることができ、第1ろう付け部44とヘッダタンク20との接触面積を広く確保できる。延長部44cの長さAは、任意に設定することができるが、例えば、ヘッダタンク20の外径の1/10程度確保すればよい。
【0075】
また、上記実施形態では、上側及び下側エンドプレート40,50にろう材をクラッドしているが、これに限らず、左側及び右側ヘッダタンク20,30を構成する部材にろう材をクラッドしてもよい。この場合、左側及び右側ヘッダタンク20,30の外面にろう材が位置するようにする。
【0076】
また、上記実施形態では、本発明を車両用空調装置の冷媒凝縮器に適用した場合について説明したが、本発明は、車両用以外にも、エンドプレートを有する各種熱交換器に適用することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、上側及び下側エンドプレート40,50の第1及び第2側板部42,43の各々に1つのビード46、47を設けているが、各々に設けられるビード46、47の数は2つ以上であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、上側及び下側エンドプレート40,50にブラケットBを取り付けるようにしているが、ブラケットBを省略してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、エンドプレート40,50が左右方向に延びるように配設されているが、これに限らず、コア10のチューブ11及びフィン12を上下方向に延びるように配置するとともに、ヘッダタンク20,30をコア10の上下に配置した上で、エンドプレート40,50を上下方向に延びるように配設してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ビード46,56,48を補強部としているが、これに限らず、例えば、肉厚を他の部位よりも厚くした厚肉部を補強部としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明にかかる熱交換器は、例えば、車両用空調装置の冷媒凝縮器に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 熱交換器
10 コア
11 チューブ
12 フィン
20、30 ヘッダタンク
40、50 エンドプレート
41 底板部
42、43 側板部
44 ろう付け部
44a 折り曲げ部
44b 円弧状部
44c 延長部
46 ビード(補強部)
B ブラケット(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ及びフィンが交互に配列されたコアと、
上記コアのチューブ端部に設けられ、該チューブ端部に接続されるヘッダタンクと、
上記コアのチューブ及びフィンの配列方向外端部に設けられたエンドプレートとを備えた熱交換器において、
上記エンドプレートには、上記コアよりも上記ヘッダタンク側へ延び、該ヘッダタンクの外面に接触するように形成されて該外面にろう付けされるろう付け部と、該ろう付け部を補強する補強部とが設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
上記エンドプレートには、熱交換器を車両に固定するための固定部材が取り付けられることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器において、
上記エンドプレートは、上記コアの外端部に沿って延びる底板部と、該底板部の両側縁部から立ち上がる第1及び第2側板部とを備えたプレス成形品とされ、
上記ろう付け部は、上記第1及び第2側板部に設けられており、上記補強部は、上記第1及び第2側板部にプレス成形されたビードで構成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器において、
上記エンドプレートの底板部は、上記ヘッダタンクに挿入されて該ヘッダタンクにろう付けされていることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の熱交換器において、
上記ヘッダタンクは、上記チューブ及びフィンの配列方向に延びる円筒形状とされ、
上記ろう付け部は、上記ヘッダタンクの外面に沿って周方向に該ヘッダタンクの中心軸に対応する部位まで延びる沿い部と、該沿い部に連なり、該ヘッダタンクにおける上記コア側とは反対側へ直線状に延びる延長部とを有していることを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の熱交換器において、
上記ヘッダタンクの外面又は上記エンドプレートにおけるヘッダタンクとの接触面には、ろう材がクラッドされていることを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−2772(P2013−2772A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136500(P2011−136500)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)