熱交換装置および、熱除去または伝熱のための方法
強制対流熱交換器のためのシステムおよび方法が提供される。ある実施形態で、熱は、熱伝導構造体と熱接触する熱負荷へまたは熱負荷から、狭い空気隙間を渡り、空気といった周囲媒体に浸された(immersed)回転する伝熱構造体に伝達される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、従来技術のいくつかの制約を克服するように設計された新しいタイプの強制空気熱交換器(forced−air heat exchanger)のための装置、方法、およびシステムに関する実施形態を含む。
【0002】
<関連出願の相互参照>
本出願は、「熱交換装置および熱除去または伝熱のための方法」とタイトルされ2008年8月4日に出願された、先の同時係属中の米国特許出願シリアル番号12/185,570、および、「熱交換器および熱除去または伝熱のための方法」とタイトルされ2009年3月27日に出願された、先の同時係属中の米国仮特許出願シリアル番号61/164,188、に基づく優先権を主張する。
【0003】
<政府による支援の記述>
米国政府はこの技術における一括払いライセンスを有しており、また、米国エネルギ省によってサンディア社に裁定された契約番号DE−AC04−94AL85000の契約の条件によって規定された正等な条件で他人に対し実施許諾することを限定された条件下で特許権者に要求する権利を有する。
【背景技術】
【0004】
熱管理の問題を説明するために、コンピュータおよびマイクロエレクトロニクスの産業に言及する。VLSI(超大規模集積回路)半導体技術の進歩は、もっとも一般的な定義ではCPU(中央処理装置)あたりのトランジスタの数は18ヶ月ごとに2倍になると予測するムーアの法則の観点からしばしば議論される。1971年、2300個のトランジスタを搭載し740kHzのクロック速度で動作する「4004」プロセッサをインテルは発表した。10億個を超えるトランジスタを持ち3GHzを超えるクロック速度で動作するプロセッサが2006年までに市販されている。このような近代のCPUの多くは、100Wを優に超える廃熱を発生させる。CPU能力を向上させる継続的な進歩は、熱管理の問題によって現在深刻に妨げられている。最先端の熱管理技術の限界は、ムーアの法則の成長曲線に沿って進み続けるのに必要とされるものに遠く及ばず、この状況は「サーマルブリックウオール(thermal brick wall)」問題と呼ばれてきた。
【0005】
現在の技術によるCPUクーラーの例が図1に示され、このCPUクーラーは、(熱負荷への低熱抵抗の接続を容易にするための)平坦な底面を有する、フィン付で金属製のヒートシンク1と、ヒートシンクのフィンに影響する気流を発生させるための軸流ファン2を含む。ヒートシンク1は、熱交換面積を大きくするために複数のフィンを持ち、また、アルミニウムといった高い熱伝導率をもつ材料から作られる。金属製ヒートシンクのために使用される材料の選択は、ヒートシンクを軽量にする、低コストにする、(例えば、良好な機械的形成性(mechanical forming properties)をもつ合金を使用するなどといったように)容易に製造できるようにする、その他といた他の必要条件を反映することもあり得る。ファン2をヒートシンク1に固定するための締結手段3および4も含まれる。
【0006】
大部分のデスクトップ型およびラップトップ型のコンピュータでは、CPUは、図1に示されるもののようなCPUクーラーと直接的に熱接触する形で搭載されているか、ヒートパイプといった熱除去装置を通して非直接的に接続されている。電子機器の熱管理における現在の技術は、米国特許分類クラスおよびサブクラス165/121、165/104.33、および361/697、および特に、米国特許シリアル番号7,349,212、7,304,845、7,265,975、7,035,102、6,860,323、6,356,435、および、米国特許公開番号2004/0109291、2005/0195573、および2007/0041158によって扱われている技術を参照してさらに説明され得る。
【0007】
半導体産業の初期において、パワートランジスタといった多くの機器は、機器の適切な温度動作マージンを維持するために何らかの形の熱管理を必要としている、ということを部品設計者は認識していた(米国特許番号5,736,787を参照)。この問題を解決するために、そのような部品は、典型的には、フィン付で金属製のヒートシンクに直接接触する形で搭載された。そのようなフィン付きヒートシンクは、冷却フィンの間を通して空気を循環させるために、主として自然対流に依存していた。結局は、ヒートシンクからの熱除去の速度と効率を向上させるためにヒートシンクの上のおよびその周囲の空気の移動を助けるためのファンを使うことが常套的になった。時の経過とともに、ヒートシンクと周囲空気との間の熱交換をより向上させる目的で、電子機器冷却のためのヒートシンクはサイズが大きくなり、より多くのフィンを含むようになり、また、より複雑な外形のフィンを使用するようになった。この「ヒートシンクプラスファン(heat−sink−plus−fan)」構造(図1を参照)は空冷熱交換器技術における現在の技術をやはり表している(Incropera F. P., Dewitt D. P., Bergman, T. L. and Levine, A. S., Fundamentals of Heat and Mass Transfer, 6th Edition, John Wiley & Sons, New York, 2007を参照)。
【0008】
1990年代の中ごろまで、CPU冷却に使用される空冷熱交換器の性能には比較的わずかしか関心が払われなかった。このような「ヒートシンクプラスファン」(HSPF)装置の冷却能力は大多数のCPU用途にとっては十分以上であり、また、初期のHSPF装置の電力消費は比較的低かった(典型的には1ワット程度)。しかし、結局、トランジスタの集積度の上昇とクロック速度の高速化によって、より良好な熱管理技術に対する要求が生まれ始めた。これによって、廃熱除去のための大幅に向上した技術、実用性第一のヒートパイプの技術、および熱界面材料の改良の発展がもたらされた。一方、廃熱処理における性能向上のほとんど全ては、標準的なHSPF構造に基づいた装置の大型化によって成されてきた。すなわち、増大してゆくCPUの電力損失の問題に取り組むために、ファンと、フィン付で金属製のヒートシンクの両方を単に大型化したのである。
【0009】
「廃熱除去」と「廃熱処理」の区別に注意されたい。上記されたように、1990年台中ごろより前はHSPF装置の冷却能力は大多数のCPU用途にとっては十分以上であった。典型的には、主な関心事は低熱抵抗接合を生み出し、維持することにあり、そのような熱伝導の接合のために利用可能な表面面積は比較的小さくあり得るため、およびそのような接合は熱サイクルに繰り返しさらされ得るために、低熱抵抗接合を生み出し維持することは課題を提示していた。この理由のため、多くの人によって、熱管理の問題は長い間主として廃熱除去の工程として考えられてきており、実際に熱管理は廃熱処理の第二ステップをも含む。熱除去ステップでは、熱は、CPUチップといった高熱密度領域(high−thermal−density region)から取り除かれ、熱処理の第二ステップを容易にするためにより広いエリアにわたって再分布され、その過程で廃熱は周囲空気に伝達される。しかし、熱除去と熱処理との区別はしばしば混乱の元となる。例えば、ラップトップ型コンピュータに使用されるようなヒートパイプは、熱処理に関するいかなる機能をも提供しないことがあり得る。ヒートパイプの目的は、接触部分の小さなエリアを通して大量の熱を除去し、ファンと共に使用されるフィン付きヒートシンクまたはラップトップ型コンピュータの金属製の筐体といった受動ヒートシンクといった熱交換器に、その熱を運ぶことであり得る。同じことが、熱負荷と熱交換器との間の熱の輸送を促進するために使われ得る電動ヒートポンプである、ペルチェ効果に基づいた熱電「冷却器」にも言い得る。これは、実質的に全ての廃熱を周囲空気(または、大量の熱を吸収することが可能な熱リザーバ)に送り出す機能を最終的に果たす熱交換器である。
【0010】
当然、熱処理は、水または別の冷却液への伝達をも含み得るが、大多数の実践的用途にとっては、目的は周囲の外気によって提供される大規模な熱リザーバに廃熱を伝達することである。密閉された金属製のエンクロージャの形で実施可能であるヒートパイプは例外として、なんらかの形で液体を扱うことおよび/または液体を収容することが必要となる冷却方法論を採用することには強いためらいがあった。サーマルブリックウオール問題は、熱伝導液の使用に訴えることによって、その優れた熱輸送特性のために、高い度合いで取り組むことが可能であることが実際に知られている。それにもかかわらず、液体の使用を必要とする冷却システムは、大量に市場に出回るパーソナルコンピュータといった用途には、性能の配慮よりも実用性の配慮のために、浸透していない。
【0011】
近年、CPU冷却に使用される空冷熱交換器のサイズ、重量および消費電力における大幅な増大は、ほとんどの商用の用途(最も顕著には、家庭環境またはオフィス環境で使用されるために大量生産されるパーソナルコンピュータ)にとって、実用性の面で限界に達し始めている。より大きくより強力なファンが発生させる耳に聞こえる大きい音量の騒音は、HSPF装置のさらなる設計(scaling)の障害になるということも分かっている(Thompson, R. J. and Thompson B. F., Building the Perfect PC, O’Reilly Media, Inc., Sebastapol, CA, 2004を参照)。
【0012】
一方、VLSI技術の進歩は続いてきた。多くの現実の用途において、空冷熱交換器の技術の性能は、現在ではCPU性能の更なる向上を制限する主要な要因である。ムーアの法則の成長曲線に沿って継続する進歩がVLSI技術における向上のみによって決定(Dictate)されることはもはやない。トランジスタの集積度の上昇およびより高速なクロック速度で動作する能力といったVLSIの利点をそのまま利用することは、熱限界のために、もはや不可能である。
【0013】
熱交換器の冷却能力は、その熱伝導性、すなわちPを熱負荷の電力損失、Tを熱交換器と熱負荷の間の境界面における熱交換器の温度とした場合のG=dP/dT、の観点から定義することができ、熱伝導性の国際単位系はWK−1である。しかしながら、慣例により、CPUクーラーに関する殆ど全てのデータシートでは、性能は熱伝導性の逆数である熱抵抗R(KW−1)の観点で記載される。上記の、熱抵抗および熱伝導性に関するIUPAC(国際純正応用化学連合)による定義(WWW.iupac.org参照)に加えて、他の名称および記号もこれらの数量を表すために従来技術において使用される場合がある(例えば、熱抵抗としての記号「q」の使用)ことに留意すべきである。
【0014】
図1に示されるような中程度のサイズのCPUクーラーの熱抵抗は典型的には1KW−1程度である。0.3KW−1もの低さの熱抵抗を提供するはるかに大型で重量の重い高能力なCPUクーラーがいくつか市販されている。しかし、空冷ヒートシンクのサイズ、重量、および電力消費におけるさらなる上昇がパーソナルコンピュータといった用途に使いづらくなってきた(Prohibitive)程度と同じ程度まで、熱交換器の3つの特定の冷却能力基準を向上させることに今度は努力を向けなければならない。3つの特定の冷却能力基準とはすなわち、単位体積あたりの冷却能力(WK−1m−3)、単位重量あたりの冷却能力(WK−1Kg−1)、および単位消費電力あたりの冷却能力(K−1)である。
【0015】
「サーマルブリックウオール」問題の本質は、CPUクーラーといった装置の特定の能力を向上させるための現実的な選択肢は全てすでに検討し尽されているように見えることである。例えば、過去20年間にわたる安定した進歩は、多くの冷却ファンに使用されるブラシレスモータの電気―機械効率を、95%という標準値まで上昇させた。これによって向上の余地は殆ど残されていない。同様に、ヒートシンクフィンの外形、および気流とヒートシンクの相互作用を主題とした、科学および工学の文献に数千もの参照箇所がある。この研究は、流動場とヒートシンクの相互作用のより深い理解をもたらしたが、流動場とヒートシンクの相互作用のこのより深い理解は、装置の構造と性能の漸進的な改良につながっただけだった。
【0016】
2008年1月の空冷熱交換器技術のための新規のアイディアに関する調査企画書に対する呼びかけ(call for)において、電子部品の熱管理技術の現状がDARPA(国防総省国防高等研究事業局)によって要約された。
【0017】
「過去40年にわたって、CMOS、電気通信、能動センシング、能動画像化、および他の技術は途轍もない技術革新を経てきた。これと同じ歴史上の期間にわたって、空冷の熱交換器の技術、設計、および性能は変化することが無かった。多くの場合、最新の熱交換器および送風機の性能データは1960年代に行われた測定に基づいている」
【0018】
1970年代にインターネットの開発を始めたとしておそらく最も知られるDARPAは、かなりの資源を空冷問題の解決に向けなければならないと現在は判断している(www.darpa.mil/baa, DARPA Broad Agency Announcement 08−15, January 8, 2008を参照)。
【0019】
VLSI技術における進歩が空冷熱交換器技術の向上への途轍もない経済的動機を生み出してきたことを考えると、この技術的停滞が起きるとは考えにくいはずである。電子部品の熱管理技術の現在の市場は年間約50億ドルである。このような強い経済的動機があるにもかかわらず進歩が欠如していることの説明の一部は、HSPF構造の性能を限定する物理的効果の基礎的な性質に関連し、このことは後に詳述される。
【0020】
技術的停滞を招くもう一つの重大な要因は、この問題を全体として再考慮することにではなく、熱管理技術の特定の側面を最適化することに向いている傾向であると思われる。従来のCPUクーラーといった装置の動作は多様な加工の訓練(disciplines)に渡る物理的過程によって支配される。結果として、ファン技術をより精巧にすることに取り組んでいる個人は、全ての意図および目的のために考慮することが可能な標準的な基礎的要素(standardized building block)としてのフィン付きで金属製のヒートシンクを、「ブラックボックス」とみなし得る。同様に、押し出しアルミニウムヒートシンク技術の進歩に注力している個人は、ファンを、電量を消費して気流を提供するブラックボックスであるとみなし得る。特定の分野に専門的に従事すると、最適化された熱管理の問題を全体として認識することが難しくなる場合がある。例えば、一つの興味深い観察によれば、CPU冷却に使用される市販のファンのデータシートは、そのファンの(例えば、回転機械力を気流に変換する効率といった)機械効率に関していかなる記載も全く提供しないか滅多に提供しない。このことは不適切である。なぜなら、下記に論じられるように、CPUクーラーといった装置で使用されるファンの機械効率は、装置の構造全体の問題に関する深い関わりを持つことになるからである。より一般的には、強制空冷の問題を考え直すには、従来のHSPF構造の根底にある前提とそれに伴う空冷熱交換器技術における停滞を再検討する必要がある。
【0021】
伝熱は重要な基盤技術の分野であるため、本書類に記載される実施形態の利用分野はきわめて広い。先行する議論は、抵抗器、コンデンサ、誘導子、変圧器、ダイオード、整流器、サイリスター、トランジスタ、増幅器、集積回路、ディスプレイドライバ、ラインドライバ、バッファ、マイクロプロセッサ、中央処理装置、グラフィックス・プロセッシング・ユニット、コプロセッサ、トランスデューサ、センサ、アクチュエータ、電源、AC−DCコンバータ、DC−ACコンバータ、DC−DCコンバータ、AC−ACコンバータ、またはプリント基板アセンブリ、を非限定的に含む一つ以上の能動電子素子および/または受動電子素子に熱管理が適応され得る電子部品の冷却の分野での利用を強調してきた。しかし、当然のことながら、本書類に記載される実施形態は(例えば、エネルギ分野といった)多種多様な他の技術分野に適応可能であり得る。明らかに、一つ以上の強制空気熱交換器を有する任意の装置は、そのような熱交換器のサイズ、重量、エネルギ消費および/または騒音、の減少から重大な利益を受け得る。しかし、それに加えて、そのような装置のエネルギ効率は、熱交換器の熱抵抗を低減することによって、大きく向上し得る。
【0022】
例えば、エネルギ分野では、熱と機械的作用とを交換するために使用される多種多様な装置は、2つの熱交換器にはさまれた熱機関の形態を取る。そのような熱機関は、高温源(以下、「熱源」と呼ぶ。)から低温シンク(以下、「熱シンク」と呼ぶ。)への熱の自然発生的流れから機械的作用を発生させるために使用され得る。例えば、蒸気タービンは、燃料の燃焼といった熱源から周囲の外気といった熱シンクへの熱の自然発生的流れから機械的作用を発生させ得る。このような熱機関の最大理論効率は、Tを全体温度、ΔTを熱源と熱シンクとの間の温度差とした場合の下記数式に示されるカルノー効率として知られる。
【0023】
【数1】
【0024】
図2は、機械的作用の入力または出力のための入力シャフト5、熱源と熱接触している第一の熱交換器6、熱シンクと熱接触している、同一の第二の熱交換器7を含む熱機関を例示する。理想的な熱機関では、熱源と熱シンクの間を流れる熱の全ては熱機関を通って流れ、熱機関の機械部分での摩擦のといった損失がなく、熱の流れは可逆的な過程としてなされ、そして熱機関は熱源および熱シンクに熱抵抗ゼロで熱的に結合している。図2に示される現実の世界の熱機関では、熱源と熱シンクの間を伝達される熱のうちのある部分は熱漏れ経路を通って流れ、熱機関内ではゼロでない摩擦損失があり、熱と作用との間の変換の理にかなった割合を提供するために熱の流れはある程度は不可逆な過程としてなされなければならず、熱源と熱シンクに熱機関を熱的に結合させる熱交換器はゼロではない熱抵抗を有する。これらの4つの非理想的効果のために、そのような熱機関で達成される実際の効率はカルノー効率に満たない(Kittel, C. and Kroemer, H., Thermal Physics, 2nd Edition, W. H. Freeman & Company, New York, 1997を参照)。これら4つの非効率性の原因のどれかでも従来技術と比べて実質的に低減することが可能な方法は、技術的および経済的に非常に重要である。
【0025】
そのような熱機関は、低温シンクから高温源までの熱の非自然発生的流れを発生させるのに機械的作用が利用される「ヒートポンプ」としても使用され得る。例えば、冷蔵庫は、電気モータによって供給された機械的作用を利用し、(例えば冷蔵庫内の空気といった)低温シンクから(例えば冷蔵庫外の空気といった)高温源への熱の非自然発生的流れを発生させ得る。伝達される熱と供給される機械的作用の比率は、冷蔵庫の性能のカルノー係数(the Carnot coefficient of refrigerator performance):
【0026】
【数2】
として知られる最大理論値も持つ。
【0027】
熱交換器の性能の重要性を説明するために、我々は窓に取り付けられたエアーコンディショナーといった装置を考慮し得る。そのような装置は、2つの強制空気熱交換器にはさまれたヒートポンプからなる。熱シンクは部屋の空気であり得(例えば、TSINK=300K)、熱源は夏の暑い日の外気であり得る(例えば、TSOURCE=320K)。2つの熱交換器は、非ゼロでかつ、この例では、等しい熱抵抗を有する。運転中に、2つの熱交換器の有限の熱抵抗(R)を流れる熱の量(q)によって、各熱交換器にわたってqRの温度降下が結果として生じる。そのような条件下で、熱機関の最大効率は、q(単位はW)がエアーコンディショナーを通って流れる熱流束であり、R(単位はKW−1)が熱交換器の熱抵抗である下記の式によって求められる値まで低減される。
【0028】
【数3】
TSINK=300KでTSOURCE=320Kの場合、各熱交換器にわたる10Kの温度降下によって、冷蔵庫の性能のカルノー係数は約2分の1に減少し、したがって、電力消費が約2倍に上昇し得る。従って、熱源と熱シンクの間の温度差が比較的小さい、エアーコンディショニングといった用途では、そのような空冷熱交換器の熱抵抗を低減することによって、電力消費を顕著に低減すること(あるいは性能に関する所与の係数に対する冷却能力を向上させること)が可能である。最後に、そのような改良された任意の熱交換器は、エアーコンディショニングに加えて、ヒータ、冷蔵庫、冷凍庫、吸収式冷凍機、蒸発冷却器、熱リザーバ、コンデンサ、ラジエータ、ヒートポンプ、熱機関、モータ、あるいは発電機といった用途に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は本出願の1つ以上の実施形態を例示し、記載と共に種々の実施形態の原理を説明する役割を果たす。図面は種々の実施形態を例示する目的のみにあり、限定するものとして解釈されるべきでない。
【図1】従来技術の例である、伝統的なヒートシンクプラスファン(HSPF)装置の構造に基づく強制空気熱交換機を例示する。
【図2】熱機関を例示する。
【図3】パーソナルコンピュータのCPUの冷却のために使用される、直径が60mmで4800rpmの典型的な冷却ファンの圧力/流量曲線を示す。
【図4】ベーン軸ファンの体積流量容量の関数としての機械効率と電力消費の図を示す。
【図5】代表的な実施形態を等積曲線図(Isometirc line drawing)の形式で示す。
【図6】z5の代表的実施形態をヒートシンクインペラを省略し、等積曲線図の形式で示す。
【図7】別の代表的な実施形態を等積曲線図の形式で示す。
【図8】別の代表的な実施形態を等積曲線図の形式で示す。
【図9】市販の空気ベアリングの例を示す。
【図10】集積回路パッケージを含む代表的な実施形態を示す。
【図11】本書類に記載される1つ以上の実施形態に基づく熱管理の仕組みを例示する。
【図12】従来技術による典型的なHVACブロウを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本書類の一部を成し、かつ特定の実施形態およびそれら実施形態が実施され得る方法を例示目的で示す添付の図面が以下の詳細な説明において参照される。これらの実施形態は当業者がこれら実施形態を実施することができる程度に十分に詳細に記載されており、また、当然のことながら、他の実施形態が利用され得、かつ本書類に記載されている実施形態の精神および範囲から逸脱することなく構造的変更がなされ得る。従って、以下の詳細な説明は限定の意味に解釈されるべきでなく、本願の範囲は添付の請求項によって定められる。
【0031】
上記で議論されたように、強制空気熱交換器技術の進歩は伝統的な「ヒートシンクプラスファン」(HSPF)装置の構造の基礎的な物理的制約によって妨げられている。特に、境界層効果はHSPF装置の性能に基礎的な制約を課すことがよく知られている(Kutz, M., Heat Transfer Calculations, McGraw−Hill, New York, 2005を参照)。性質の観点から見れば、「境界層」は、(例えばフィン付きヒートシンクといった)構造体の表面に密着し、断熱毛布のような働きをする「断熱空気(dead air)」の固定層(stationary layer)であると考えることができる。従来のHSPF装置では、フィン付きヒートシンクの基部と周囲空気との温度差は、そのような境界層にわたる温度降下によってほとんど完全に説明され得る。そのような境界層内では、典型的には分子拡散が熱の伝導のための主な輸送メカニズムであり、その結果として伝熱は非常に乏しい。
【0032】
従って、多くの高性能空冷装置の設計は境界層の破壊(disruption)を非常に重要視している。例えば、ヒートシンクの表面に向けられた圧縮空気のジェットを高圧ポンプが発生させる空気ジェット衝突冷却は境界層の厚さを縮減する上で非常に効果的である。しかし、空気ジェット衝突冷却の電力消費とコストはほとんどの用途には不向きなほど高い。図1に示されるCPUクーラーのような装置では、ファンが大量の乱流を発生させるが、層流の場合と比較して、有効境界層厚さ(effective boundary layer thickness)のささやかな縮減しか観察されない。この境界層破壊の効果は、ファンをより高速で動作させることで、幾分高めることが可能だが、電力消費とのトレードオフは急激に不利になる。
【0033】
熱交換プロセスの効率(eG)は、伝熱が空気流の熱容量によってのみ限定される理想的な熱交換器の熱伝導性(G)の最大理論値に注目することによって、定量化することが以下の式の通り可能である。
【0034】
【数4】
上記数式においてGおよびRはそれぞれ(すでに定義されたように)熱伝導性および熱抵抗、CPは定圧下における空気の熱容量、rは空気密度、Φはフィン付きヒートシンクを通る空気の体積流量である。図1に示される従来技術の装置にあってはeGは約10%であり、例えば、以下の数式として表される。
【0035】
【数5】
【0036】
従って、CPUが非常に高温で動作しているとしても、CPUクーラーによって排出される空気の温度は、周囲の外気の温度より少し高いだけであり得る。上記計算は、空気とヒートシンクの相互作用の効率における向上の余地に関して多くを示唆するので、有益である。この問題に取り組むために必要なことは、電力消費、サイズ、重量、コスト、複雑さ、その他における実質的な不利益を被らずにヒートシンクの境界層の厚さを実質的に縮減するための方法である。
【0037】
空気とヒートシンクの相互作用の効率の向上に加えて、熱交換器を通る空気の体積流量の上昇に、特定の実施形態は向けられる。標準的なHSPF構造に基づいた装置にとって、空気の流量はファンの電力消費に限定され得る。原則的に流量はファンの速度を上昇させることによって常に上昇させることが可能であるが、既に述べられたように、高い回転数(rpm)でファンを動作させることは、非常に不利に急激になる電力消費とのトレードオフを抱える(Bleier, F. P., Fan Handbook, Selection, Application and Design, McGraw−Hill, New York, 1997を参照)。
【0038】
ファンの性能が持つ役割をよりよく理解する上で、ファンの機械効率に絶対量の観点で着目することは有益であり得る。ここで、ファンの機械効率は、時間あたりに気流に与えられる運動エネルギを時間当たりにファンのロータに伝えられる機械的エネルギで割ったものとして表現され得る。空気に流量制限部分を強制的に通過させるのに必要な力は、流量制限部分にわたる圧力降下と体積流量によって決定される。「圧容積仕事」の概念を使って、pがファンによって伝えられる圧力でΦがファンによって伝えられる体積流量である場合の「p−F power」の観点からファンの出力を考えることが可能である(Fox, R. W. and McDonald, A. T., Introduction to Fluid Dynamics, 4th edition, John Wiley & Sons, New York, 1992を参照)。従って、Pmech,flowはファンによって発生させられた空気流に含まれる機械力であり、Pmech,motorはモータのシャフトにて利用可能な機械力であり、emotorはモータの電気機械変換効率であり、Pelec,motorはモータに伝えられる電力であり、Vmotorはモータに伝えられる直流電圧またはrms電圧であり、かつImotorはモータに伝えられる直流電流またはrms電流とする場合にファンの機械効率は以下の数式として表現され得る。
【0039】
【数6】
図3は、CPU冷却用途で使用される、直径が60mmの典型的な軸流ファンの圧力/流量曲線を示す。そのようなファンの圧力/流量曲線は典型的には以下の形式の概ね直線である。
【0040】
【数7】
p(F)曲線は、Fとpの積が最大になる点で最大効率動作点を持つ。
【0041】
【数8】
【0042】
従って、最大効率の推定値は以下のようになる。
【0043】
【数9】
従って、典型的な動作条件の下にある、図3に表される直径60mmで4800回転(rpm)の冷却ファンの機械効率は約2.0%である。
【0044】
【数10】
【0045】
これは、電子機器および他の小型装置の冷却に使用される小面積かつ高速のファンの性質である。モータのシャフトにて利用可能な機械力のうち、典型的には2%のみがファンによって発生させられる気流に与えられ、電気モータによって発生させられた機械力の残りの98%はファンのブレードの粘性抵抗に浪費される(動作速度においては、ファンモータのベアリングの機械抵抗は、ファンのブレードに加えられる抵抗全体に比べれば取るに足らない)。機械的エネルギのこの大きな非生産的消費はファンの主な騒音源でもある。(R. Jorgensen, Fan Engineering, 7th edition, Buffalo Forge Company, Buffalo, NY, 1970より転載された)図4に示されるように、はるかに大きく低回転(rpm)のファンは、はるかに良好な機械効率、すなわち、80%という高い機械効率を、5kWを超える電力を消費する大型工業用送風機で達成する。しかし、これらのはるかに大型のファンは、多くの用途(例えばデスクトップ型パーソナルコンピュータのCPUの熱管理)の、サイズ、重量、及び電力消費における制約を大幅に超える。
【0046】
上記計算の重要な意味は、CPUクーラーの特定の冷却能力は、物理的には可能なものに遠く及んでいないということである。2.0%という機械効率は、原理上は50倍もの大きな進歩を設計の向上を通して成し得ること意味する。したがって、我々は、HSPF装置の構造の性能の制限は、境界層効果に加えて、(そのような装置によって発生させられる可聴な騒音の実質的な音量がそうであるように)小型で高速のファンの本来的な低効率性に由来すると結論付ける。これらの制約のため、この技術分野における向上が必要とされていると考えられる。
【0047】
さらに、これら2つの物理的効果に対しする本来的な脆弱さがはるかに少ない新規の装置の構造の開発によって、強制空気熱交換器技術における進歩が達成されることが可能であろう。特に、本書類に記載される実施形態のうちのいくつかは、従来のHSPF技術に伴う境界層効果を顕著に低減させることおよび小型で高速のターボ機械に伴う低効率の問題を軽減することによって、熱負荷から廃熱を除去するための効果的な手段を提供しようと試みる。
【0048】
熱交換器フィンの間を通して空気を循環させるための効率的な仕組みを使用し、かつ、境界層の厚さを縮減するための効率的な機構を含む、空冷熱交換器のための新しい構造が本書類に記載される。この新しい装置の構造の一つの代表的な実施形態が図5および図6に例示される。種々の他の目的および利点が、明細書から、添付の図面と共に読まれるときに、よりよく理解される。以下の記載は、本願に記載された実施形態および原理のさらなる説明を提供するための例示および説明であることのみが意図される。添付の図面は、本書類に記載される実施形態を例示しかつ当該実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、また、当該図面はこの明細書に組み込まれ、かつこの明細書の一部を成す。実施形態の範囲は提示された実施例ではなく添付の請求項およびそれらの法律上の均等物によって決定されるべきである。
【0049】
図5および以下に続く議論を通して、「z−軸」という語はヒートシンクインペラ構造体13の回転軸を指すために使用され、「x−y面」という語はベースプレート11の面に実質的に平行な任意の面を指すために使用され、「アジマス(azimuthal)」という語はz−軸を中心としx−y面に平行な円運動を指すために使用される。ベースプレートおよびヒートシンクインペラ構造体の「底面」「上面」といった語は図5および図6に示される装置の配向に対応する。
【0050】
本書類では、「熱負荷」という語は、そこから又はそこに熱が伝達され得る単数または複数の任意の物体を意味すると解釈され得る。熱負荷の例は、廃熱を発生させ得る(CPUといった)装置、そのような装置にまたはそのような装置から熱を伝達させるために使用され得る(ヒートパイプといった)装置、ヒートポンプあるいは熱機関の「低温側(Cool side)」または「高温側(Hot side)」および、任意の組み合わせのおよび/または複数のそのような熱負荷を含む。本書類では、「熱接触」という語は、2つの物体の間で熱が容易に流れるならばその2つの物体は互いに熱接触しているということを意味すると解釈するべきである。例えば、熱流のメカニズムが伝導である場合、「熱接触」は、伝導熱流のための流路が実質的に低い熱抵抗で2つの物体の間に存在することを示す。しかし、これは単に、熱接触する二つの物体の例に過ぎず、この点で請求項にかかる主題が限定されることは無い。ここで留意すべきことは、二つの物体間における熱接触は、その二つの物体が物理的に接触している(つまり触れている)ことを必要としていないという点である。例えば、高い熱伝導率のヒートシンク用の糊(high−thermal−conductivity heat sink paste)の層によって隔てられている熱負荷とヒートシンクは、それらが物理的に接触していなくても熱接触している。本書類では、熱接触する2つの物体は、「熱結合している」とも呼ばれ得る。本書類でのこの議論を通して、他に定義されない限り、「ヒートシンク」という語は実質的に高い内部熱伝導率を提供する構造体および、(例えば、空気、空気以外の気体の混合物、純ガス、流動体、その他といった)周囲媒体へのまたは周囲媒体からの熱の伝達のための表面エリアを意味すると解釈されるべきである。
【0051】
図5および図6の特定の実施を参照すると、熱負荷からの熱は、熱負荷に面している面を通ってベースプレート11に入り、ベースプレート11およびヒートシンクインペラ構造体13の隣接している面と面との間の空気隙間(air gap)12に渡って、ベースプレートの内部領域を通って、回転するヒートシンクインペラ構造体の内部領域に流れ込み、そして、インペラファンを通って循環する空気に届けられる。ベースプレート11は、熱負荷が小さいエリアに集中しているおよび/またはそうでなければ熱負荷が均等に分布されている用途ではヒートスプレッダーのとしても機能する。ヒートシンクインペラ構造体13は高速で回転し得、ヒートシンクおよび遠心ポンプの両方として機能し得る。この特定の実施形態ではファンは必要ない。ここで、空気は回転の中心付近で下方向に引かれ、そしてインペラのブレードの間を通して容易に放出される。
【0052】
図5および図6に例示されるように、回転ヒートシンク構造体は、当該構造体が動作中にベースプレートに物理的に接触することを阻止する空気ベアリングによって支持される。ヒートシンクインペラ構造体は、ヒートシンクインペラ構造体に組み込まれた希土類磁石14およびベースプレート内に埋め込まれた第二の希土類磁石15(図16に示される)の磁気吸引の相互作用によってベースプレートの中央に位置され続け得る。これらの磁石は、装置を上下逆の配向で、あるいは任意の配向で、動作させることも可能にする。回転機構は、固定子鉄心16、固定子鉄心巻線17、および回転子歯18がベースプレートインペラアセンブリに直接組み込まれ得る可変磁気抵抗モータを含む。
【0053】
図7は、他の実施形態の等積曲線(Isometirc line)による図である。図7のモータアセンブリ46は、ヒートシンク構造体47の、周囲というよりはむしろ、内部に置かれ得る。他の実施形態では、モータアセンブリは他の場所に配置され得る。通常、ヒートシンク構造体の、ベースプレートに対する相対的な回転または他の運動を引き起こすために、モータアセンブリ46の固定子はベースプレート49に取り付けられ得、モータアセンブリ46の回転子はヒートシンク構造体47に結合され得る。
【0054】
図8は、シュラウド48を含む図7のアセンブリの等積曲線による図である。シュラウド48は気流をヒートシンク構造体47内におよびその周囲に方向付けるために配置され得る。従って、例えば、図8に示されるように配置されたシュラウド48は、気流をヒートシンク構造体47のフィンの間を通しながら、図示されるように上方への気流を減らし得る。シュラウド48はヒートシンク構造体47に直接に結合され得、また、動作中は、ヒートシンク構造体47と同様の方法で回転または運動し得る。しかし、他の実施形態では、シュラウドはカバーにより似ており、ヒートシンク構造体47に直接に取り付けられないことが有り得、また、動作中に運動しない場合が有り得る。シュラウド48がヒートシンク構造体47に熱結合している場合の実施形態では、シュラウドは、周囲環境への伝熱のための追加の表面を有利に提供し得る。
【0055】
図9は特定の実施に使用され得る空気ベアリングのタイプを示す。そのような静圧(外部より加圧されている)空気ベアリングは、New Way Air Bearings (Ashton, PA, www.newwayairbearings.com)によって販売されているもののようないくつかの空気ベアリングアセンブリのうちの一つを含み得る。図9の左下には、空気ベアリング「パッド」21があり、図9の右上には空気ベアリング「パック」22がある。入力ポート23は出力オリフィス24に圧縮空気を伝える。動作中、空気ベアリングパッドの接触面と空気ベアリングパックの接触面(それぞれ25および26)は、圧縮空気の薄いクッションによって隔てられる。圧縮空気はオリフィス24から、面25および26によって画定される狭い空気隙間領域と通って放射線方向に、流れ、そして空気ベアリングアセンブリの外周部にて排出される。図5および図6に例示される代用的な実施形態では、ベースプレート11は空気ベアリングパッドとして機能し、回転するフィン付きヒートシンク13は空気ベアリングパックとして機能する。回転するヒートシンクインペラ構造体とベースプレートの間の超低摩擦な境界面は、エアホッケーパックとエアホッケーテーブルの境界面に類似する。動作中、静止しているベースプレートと回転しているヒートシンクインペラ構造体を隔てる空気層12の厚さは5μm程度であり、これは市販の空気ベアリングの空気層の厚さと同程度である。
【0056】
図5および図6に例示される代表的な実施形態では、静圧空気ベアリングよりむしろ、動圧空気ベアリング(「自己圧力空気ベアリング(self−pressurizing air bearingと呼ばれる場合もある。)が使用される。動圧空気ベアリングの使用によって、圧縮空気の外部源の必要性を無くすことが可能である。そのような動圧ベアリングにおいて、回転構造体に伝えられる機械力のうちの小さい部分が回転面と静止面の間に要求される空気の膜を発生させるために使用され得る(G. W. Stachowick and A. W. Batchelor, Engineering Tribology, 3rd edition, Elsevier Butterworth−Heinmann, Burlington, MA, 2005を参照)。
【0057】
動圧ベアリングの動作は、乗り物が高速で走行している場合の湿った舗装路面上の車のタイヤのハイドロプレーニングに似ていると考えられ得る。低速では、タイヤが前方に向かって進むにつれてタイヤの前にたまった水は、一部はタイヤの周囲を流れ、また一部はタイヤのトレッドの溝を通って流れて、舗装路面とタイヤとが接触する領域から放逐されるのでハイドロプレーニングは発生しない。しかし、その乗り物が十分に高速で移動している場合、タイヤの前面に当たる水の流量は、そのタイヤの周囲をおよびそのタイヤのトレッドの溝を通って流れることが可能な水の量を、超える。このような条件下で、水のくさびの様な膜がタイヤのトレッドの下に形成され、路面からタイヤを引き上げる。物理的接触をしなくなった舗装路面とタイヤのトレッドでは、静止摩擦は激減する。従来の動圧ベアリングでは、同様の効果が、互いに対して相対的に移動する2つの面の間の低摩擦ベアリングを発生させるために使用され得た。
【0058】
図5および図6に例示される各実施形態で使用される動圧空気ベアリングのタイプは、「レイリーステップベアリング」と呼ばれることがあり、ベースプレート11の上面に刻まれた一連の半径方向溝 19(図6に表示)を含む。動作中、回転するヒートシンクインペラ構造体13の底面との粘性相互作用によって、空気は連続する溝の間のアジマス方向に送り出される(pumped)。連続する溝19の間のアジマス方向への気流は、静止面と回転面を隔てることを可能にし得る。回転の速度が十分に速い場合、一連の半径方向溝によって発生させられる静的空気圧はヒートシンクインペラ構造体を引き上げることおよび静止面と回転面を隔てることに十分であり得る。
【0059】
ベースプレートの上面に半径方向溝があるために、狭い空気隙間領域(narrow air gap region)のための面積が少し縮減される。このことは空気隙間領域の熱抵抗を上昇させ得るが、それは非常に小さな効果である。溝付きの動圧空気ベアリング構造体に発生した乱流はベースプレート11と伝熱構造体13の間の対流による伝熱を促進することが期待されることに留意することも重要である。
【0060】
空気ベアリングの一つの性質は、空気隙間の距離が非常に短くかつ自己調節性を有するということである。図5および図6に示される装置の配向を「表側を上にした(right−side−up)」配向で考えた場合、空気ベアリングによって加えられる上向きの力は磁場によって加えられる下向きの力および、それよりははるかに少ない程度で、重力(図5および図6に示される装置に使用される直径0.125インチ、長さ0.100インチの非常に小型の円筒形の希土類磁石においてでさえ、磁力は重力の約10倍強くあり得る)と均衡し得る。平衡空気隙間の距離は、空気隙間領域を通る空気の流量および磁力の強度によって決定される。極度に厳しい機械公差を保持することによって約5μmの空気隙間を維持しようと試みるかわりに、特定の実施形態は空気隙間の距離と空気隙間の圧力との間の内蔵型負帰還(built−in negative feedback)を信頼する。
【0061】
性質の観点から見れば、空気隙間が負帰還によって自動的に安定し得る方法は容易に説明され得る。より鋭く考えるべき点は、性質の観点から見て、空気ベアリングはきわめて高い剛性を提供し得ることである。空気ベアリングの有効「ばね定数」は、平衡空気隙間圧力は空気隙間の距離の極めて感度の高い感度関数(extremely sensitive function)であるため、非常に高くあり得る。ばね定数は、Fがヒートシンクインペラ構造体の底面に作用する圧力でありhが空気隙間の距離である場合のdF/dhとして定義され得る。特に、図5および図6に示される装置の場合、希土類磁石14および15を有する実施形態は、ヒートシンクインペラ構造体13の100グラムの有効重量を1.0キログラムにし得る。空気隙間の距離が、x−y面の磁場の大きさよりも小さい規模の程度(orders of magnitude)の場合、磁力は、z方向への小さな変位に対してはおおよそ一定であると考え得る。
【0062】
しかし、空気隙間の距離と圧力の間には、おおよそ3次の関係(approximately third−order relationship)がある。このことは、5±1μmの範囲にわたる変位におけるばらつきは、概ね±50%の圧力の変化を引き起こすはずであることを含意し得る。図5および図6に示される装置においては、これは、約5N/μmのばね係数に該当し得る。100グラムのヒートシンクインペラ構造体に作用する1gの加速力は約1Nである。従って、z軸に沿った10gの加速は、2μm程度の変位を引き起こすのみであり得ることが期待される。空気ベアリングは極めて低い摩擦性能を提供し得ることはよく知られているが、空気ベアリングによって実現され得る非常に高い機械的剛性は多くの用途で重要な役割を果たす。
【0063】
空気ベアリングの使用に関して成され得る、別の量的な評価は、ヒートシンクインペラ構造体を浮上させるために費やされ得る力(Power)に関する。静圧空気ベアリングにとって、空気に隙間領域の流量制限部分(flow restriction)を強制的に通過させるために費やされる力は、この流量制限部分に渡る圧力降下と体積流量の積であり得る。図9に示されるような静圧空気ベアリングの圧力および体積流量の等式は、下記の通りである(Whitney, W. M., Theory of the Air−Supported Puck, Amer. J. Physics, Vol. 32, No. 4, pp. 306−312, 1964参照)。
【0064】
【数11】
【0065】
【数12】
上記等式において、pは圧力、Φは体積流量、meffはパックの(磁力と重力の組み合わせに関連する)有効質量、gは重力加速定数、bはヒートシンクパックの外半径、aはオリフィスによって画定される概ね等圧の領域の半径、rは空気密度、hは空気隙間の距離、そしてμは空気の動的(または絶対)粘度である。図5および図6に示される装置に関し、我々は、下記の数式の圧力および体積流量を計算した。
【0066】
【数13】
【0067】
【数14】
従って、空気ベアリングを動作させるために必要な力は(例えば最も小型の市販のブラシレスモータファンの電力消費と比べても)下記の数式に示されるようにとるに足らない。
【0068】
【数15】
この小さな数字は、ヒートシンクインペラ構造体の下から逃げるために空気が流れなければならない距離と比べて空気隙間の距離が極めて短いという事実、および空気によって加えられる上向きの圧力が比較的大きい面積にわたって作用するという事実に起因する。
【0069】
動圧空気ベアリングの場合、電量消費の推測値は、理論的に計算可能だが実験を通してより正確に測定可能なベアリングの摩擦係数から直接的に決定される。実験を通して測定された、多種多様な動圧空気ベアリングのそのような摩擦係数は同程度のサイズのボールベアリングアセンブリの摩擦係数と比較して典型的には極めて低い(Fuller, D. D., 「A Review of the State−of−the−Art for the Design of Self−Acting Gas−Lubricated Bearings,」 Journal of. Lubrication Technology, Vol. 91, pp. 1−16, 1969参照)。従って、そのような動圧空気ベアリングの実施による電力消費は極めて低くあり得る。
【0070】
動圧の引き上げ力はヒートシンクインペラ構造体が回転しているときにのみ発生するため、特定の実施では、動圧空気ベアリングは起動と終了のための設備を含み得る。一つの実施において、ベースプレートとヒートシンクインペラ構造体の表面同士の間のすべり接触は、モータがONまたはOFFされる間の数秒間可能であり得る。特に特定の用途で、モータが通常の動作をしている間にスイッチONおよびOFFを繰り返すことが要求されない場合には、この技術は表面積が大きく軽量の負荷を支える動圧空気ベアリングに応用され得る。減摩コーティングおよび/または潤滑油膜の使用がそのような空気ベアリングシステムにおいて提供され得る。
【0071】
ベースプレートとヒートシンクインペラ構造体の表面同士の間で不定期に起こるすべり接触にともなう累積的な磨耗が目的に沿わない場合、起動や終了を行う間に代替の浮上力を提供するために使用され得る機構が導入され得る。例えば、図5および図6に例示される代表的な実施形態で、回転面に直交する磁力部品を提供するように固定子/回転子の歯の外形を構成することは一つの方法であろう。起動および終了の間に、大量の直流バイアス電流が固定子コイルに印加され浮上力を発生させ得る。そのような直流バイアス電流は、短い間隔の間に印加されるのみなので、固定子巻き線を過度に加熱することなくモータの通常のrms動作電流よりはるかに大きく成り得る。
【0072】
従来技術の観点から見れば、熱負荷とヒートシンク構造体の間に空気隙間を意図的に導入する考えは賢明ではないように見えるだろう。従来技術の多くは、隙間が全く無く、連続的で低熱抵抗の接合が成されるような方法で熱負荷と金属製のヒートシンクをつなぐための材料および技術に関心があるからである。そのような熱界面の技術は研究の活発な分野であり続けている。さらに、従来のHSPF装置における熱流に対する熱ボトルネック(thermal bottleneck)はフィン付きヒートシンクの表面を包む、境界層の空気の薄い断熱膜であることは良く知られている。したがって、空気の隙間を導入することは空気の非常に低い熱輸送特性のために非生産的であるという議論は、性質の観点から見て、説得的かつ/または明白であると考えられ得る。しかし、本書類に記載される特定の実施形態は、特に気体ベアリング構造体での伝熱の定量的な分析が行われる場合、気体ベアリングの独特の特性を利用して全く別の結論を導き出す。
【0073】
例えば、図5および図6に例示される特定の実施形態では、平面の空気隙間12にわたる熱抵抗は非常に低く(£0.03KW−1)なり得る。空気隙間領域の熱抵抗の絶対的な上限は、当該隙間領域にある空気は動くことが全く無いと過程することで計算することが可能である。特定の実施形態によれば、図5および図6に示されるシステムにおいて、ヒートシンクインペラ構造体の直系は3.6インチ(0.092m)であり、空気隙間の距離は5.0μmである。このような寸法の空気隙間にとって、熱抵抗(Rair gap)の最悪の場合の値は下記の数式によって与えられ得る。
【0074】
【数16】
これは既に論じられた市販の高性能CPUクーラーの熱抵抗の10分の1程度の低さである。当然のことながら、特定の寸法および測定でのこの例示は単に特定の実施の例であり、請求に係る主題はこの点で限定されない。
【0075】
さらに、静止しているベースプレートの上面と高速で回転しているヒートシンクインペラ構造体の底面の間の気流が激しくせん断される(violent shearing)ために(Tennekes, H. and Lumley, J. L., A First Course in Turbulence, The MIT Press, Cambridge, MA, 1972参照)、動圧空気ベアリングの半径方向溝によって発生させられた対流のために(Faria, M. T. C. and Andres, L. S., 「On the Numerical Modeling of High−Speed Hydrodynamic Gas Bearings」, Journal of Tribology, Vol. 122, No. 1, pp. 124−130,2000を参照)、および/または、空気隙間領域における乱流および/または対流を発生させるように適応された表面隆起といった追加の構造体のために、そのような空気隙間領域の熱抵抗は、実際に、顕著により低くあり得る(例えば0.01K/W未満)。
【0076】
熱管理技術の分野における従来技術による教示は、(例えばヒートシンクと熱負荷の間の)低熱抵抗接合を提供するための空気隙間やそれに相当するような構造体の使用に触れていない。既に書かれているように、この理由の一つは明白であると思われる。つまり、水や油といった一般に入手可能な流動体は、気体の媒体と比べてはるかに優れた熱輸送特性(例えば100倍の高さの熱伝導率)を有するということである。従って、そのような流動体媒体は、静止している熱伝導構造体から回転している伝熱構造体への熱の輸送といった用途に適していると憶測され得る。さらに、従来技術では、そのような用途に気体媒体を使用することでもたらされる他の数多くの利点(例えば、高速回転における極めて低い摩擦損失)によって低熱伝導率の明白な不利な点がどの程度相殺されるかを予期していない。
【0077】
本書類に記載される実施形態の目的は、液体の伝熱界面を使用することに伴い得る数多くのかつ非常に深刻な欠点を回避することである。最も深刻な欠点のうちのいくつかは、そのような液体の絶対粘度は典型的には空気の絶対粘度の1000倍から10000倍程度であるという事実と関係している(Fox, R. W. and McDonald, A. T., Introduction to Fluid Dynamics,4th edition, John Wiley & Sons, New York, 1992を参照)。その結果、伝熱流動体の粘性せん断(viscous shearing)が実質的な熱量を生み出し得る。これらの摩擦損失は、伝熱構造体を高速で回転させようとするときに特に大きいが、伝熱構造体を高速で回転させようとすることは、回転する伝熱構造体と、空気といった周囲の媒体の間の低熱抵抗の実現にとって必要不可欠であり得る。高い摩擦損失は、電力消費の観点から見ても非常に有害であり得る。
【0078】
任意のそのような伝熱液の使用によって、いくつかの現実的な問題も避け得る。それらのうちの第一は、流動体の閉じ込めである。流動体に対して放射方向に作用する遠心ポンプ力(centrifugal pumping force)、(例えば上下逆の配向といった)任意の配向でそのような冷却装置を動作させるおよび/または保存する必要性、および流動体の(例えば伸縮が繰り返されることといった)熱サイクルに関連する事柄の全てが流動体の封じ込めの問題の要因となることが考えられる。流動体の漏れを低減する可能なアプローチは、伝熱流動体の粘度を高めることおよび/または一つ以上の回転シールを含むこと、を含み得る。伝熱流動体の粘度を高めることは、摩擦熱および電力消費の観点から見て望ましくあり得る。回転シールを含むことは、コスト、複雑さ、信頼性、耐用寿命、およびさらなる摩擦損失の観点から見て、望ましくなくあり得る。さらに、回転シールの実施は、広い温度範囲にわたって作動する必要性のために、複雑化し得る。さらなる難点は、熱分解、汚染物質が入ってくること、酸化、その他のために、そのような流動体が時間の経過とともに劣化する傾向を持つということであり得る。最後に、そのような液の粘度が持つ非常に高い温度依存性は、例えば、非常に高い始動トルクが必要であること、あるいは低温で流動体接合しなくなることといった、深刻な現実的問題をも引き起こし得る。
【0079】
既に記載されたように、HSPF装置の構造の重要な欠点は高い電力消費の問題である。伝統的な空冷熱交換器では、ファンの目的は、空気を強制的に熱交換器のフィンの間を通って流れさすことである。ファンのモータの電力消費と比べて、強制的に空気を熱交換器のフィンの間を通って流れさすのに必要な力の量(圧力と体積流量の積)は極めて小さい。既に示されたように、典型的なCPUクーラーでは、ファンのモータによって発生させられた機械力の2%のみがこの目的のために使われ得る。ファンのモータによって発生させられた機械力のうちの残りの98%はファンのブレードの粘性抵抗に非生産的に費やされる。特定の実施形態では、力のこの非生産的な消費は、実質的に低減されるかあるいは完全に無くなる。空気をフィン付きヒートシンク構造体を通して動かすことでなく空気を通してフィン付きヒートシンク構造体を動かすことで、モータによって伝えられる機械力の実質的により多くをまたは実質的に全を、ヒートシンクのフィンと周囲空気の間の相対的な運動を発生させるという目的のために使用することが可能になる。従来のCPUクーラーといった装置で使用されるファンの極めて低い機械効率は、実施形態によるそのような特定の装置の構造は、電力消費の顕著な低減、雑音の低減および/または、はるかに高い体積流量での動作を可能にし得るということを示唆する。以降、我々は、本書類に記載される(ファンの低い機械効率の問題を実質的に緩和する)実施形態のそのような側面を「直接駆動による優位性」と呼ぶ。
【0080】
ある実施形態の別の重要な目的はHSPF装置の構造に本来的に備わる境界層効果に伴う問題を緩和することである。例えば、従来のHSPF装置では、圧力勾配力および粘性抵抗力の観点が流れのナビエ・ストークス方程式の基準となっている(Schlichting H., Boundary Layer Theory, McGraw−Hill, New York, 1979を参照)。既に言及されているように、そのような境界層は、ヒートシンクのフィンの表面に密着する空気の断熱層として形成されることが可能である。特定の実施形態で、ヒートシンクのフィン、およびヒートシンクに粘着する境界層の空気のエンベロープ(envelope)は、加速する(高速で回転する)基準系(frame of reference)内に配置され得る。そのようなヒートシンクインペラ構造体の、非慣性の回転基準系では、境界層にある空気の体積要素(dV)は、dFが空気の体積要素に作用する力で、rが空気の密度、wがヒートシンクインペラ構造体の角速度、rが半径方向位置である場合のdF=rw2rdVの外向きの遠心力の影響を受け得る。この遠心ポンプ力は、非回転基準系の場合と比べて、境界層の厚さを顕著に(例えば10分の1に)縮減し得る方法で流動場を歪ませる。
【0081】
境界層を薄くするこの効果の副産物(ramification)は伝熱に関して非常に重要である。既に記されたように、従来のHSPF装置では、フィン付きヒートシンクと周囲空気の間の温度差は、境界層にわたる温度降下によって殆ど完全に説明され得た。換言すれば、境界層は、熱負荷から周囲空気に熱を輸送するために必要な一連のステップにおいて、熱ボトルネックとして機能し得る。境界層の熱抵抗は、境界層の厚さに概ね比例し得る。従って、上記されたような遠心ポンプ効果は、そのような境界層の熱抵抗をおおよそ10分の1に低減する。以降、我々は、本書類に記載される(加速する基準系に境界層を置くことによって境界層の熱抵抗の長年の問題が緩和され得る)実施形態のそのような側面を「境界層薄化効果」と呼ぶ。
【0082】
高速の回転速度および/または並進速度において重要であり得るさらなる効果は層流から乱流(例えばヒートシンクインペラの隣り合うフィンの間の空気の流れ)への移行に関する。例えば、そのような伝熱構造体の角速度が、そのような伝熱構造体近くの流動場の部分にわたって乱流を引き起こすために十分に早い場合、そのような伝熱構造体と周囲の媒体の間の熱抵抗の低減が実現され得る。そのような乱流の効果は、伝熱構造体と熱伝導構造体の間でも熱抵抗の低減を引き起こし得る。特定の実施形態では、そのような乱流の効果は本書類に記載される実施形態を含む熱交換器の性能を向上させるために適応され得る。以降、我々は、本書類に記載される(乱流の状況での伝熱構造体またはそのような伝熱構造体の部分の動作によって伝熱が層流の場合と比べて向上する)実施形態のそのような側面を「乱流効果」と呼ぶ。
【0083】
図5および図6に例示される代表的な実施形態は、以下のもののうちの1つ以上を含み得る装置の構造の、多くの可能な実施形態のうちの一つであり、それぞれが上記された、「直接駆動による優位性」および/または「境界層薄化効果」および/または「乱流効果」の利益をもたらす。「装置の構造」という上記記載はいかなる形であれ限定を意味したものでないということに留意すべきである。反対に、「装置の構造」という上記記載は、あとに続く代替の実施形態の記載のための基準点として本書類に提供されている。
1.熱伝導構造体(例えば代表的な実施形態の「ベースプレート」)
2.伝熱構造体(例えば代表的な実施形態の「ヒートシンクインペラ」)
3.熱伝導構造体と伝熱構造体にはさまれた、気体で満たされた領域
4.伝熱構造体に回転および/または並進を与えるように適応された一つまたは複数の要素
5.伝熱構造体の回転軸を制御するように適応された一つまたは複数の要素
7.熱がそこにまたはそこから伝達される周囲の媒体
【0084】
空冷熱交換器のための改良された装置の構造の実施形態がこれまで記載されてきた。熱負荷からの熱は、(例えば熱伝導性のグリースといった)相応しい熱界面材料を通る伝導によってベースプレートに伝えられ、このベースプレートは、気体ベアリング界面全体から熱がフィン付きヒートシンクおよびインペラの両方として機能する構造体へ伝えられるヒートスプレッダーとして機能する。
【0085】
使用される熱交換器の装置の構造に関わらず、熱源とヒートシンクの間の低熱抵抗接合を達成するための熱界面材料を使用することは従来技術で広く実施されている。通常、そのような熱界面材料は、通常、熱伝導性のグリース、糊、接着剤、あるいは、適合性が高く熱伝導性を有する材料の薄いシートの形態を取る。そのような熱界面材料がないと、2つの連続的な表面が合わさって接合を形成する場合、凹凸や平面でないことといった表面の不規則性のために、実際の機械的接触が達成されるエリアは、接合の幾何学的エリアの約1%のみを含み得る。熱界面材料の目的は、熱界面材料が無い場合に比較的高い熱伝導率を有する固体、半固体、あるいは液体の材料を一つ以上使用すると存在するであろう隙間を埋めることにある。
【0086】
任意のそのような熱接合は、温度の関数としてのヒートシンクおよび熱源の両方の寸法(Dimension)における変化に対応しなければならない。この理由により、熱界面材料が無ければ存在したであろう隙間の全体積と単純に等しい量の熱界面材料を使用することは一般的に不可能である。むしろ、周囲の材料における寸法の変化を相殺する機械的変形が可能な、幾分より厚い熱接合を作り出すために過度の熱界面材料の十分な量を使用する。適切な流動学的特性および潤滑特性を持つ既知の材料は典型的には比較的低い熱伝導率を有するために、向上した特性を持つ熱界面材料の研究は、研究の盛んな分野であり続けている。
【0087】
従って、本発明の別の実施形態がここで、そのような熱界面材料の必要性を無くすことあるいは低減することに部分的に向けられた図10を参照して記載される。図10の代表的な実施形態では、図5および図6に示されたように、ヒートシンクインペラ41は集積回路パッケージ42である熱負荷のきわめて近傍に、熱界面材料およびベースプレートの必要性なしに置かれる。ヒートシンクインペラ41は本書類で一般的に記載されているように、伝熱構造体の1つのタイプである。別の実施形態では、別の伝熱構造体が使用され得る。上記されるように、ヒートシンクインペラ41は気体ベアリングによって支持され得る。熱源とヒートシンクインペラ構造体の間の低熱抵抗界面は、熱源とヒートシンクインペラ構造体の間の、気体で満たされた隙間領域43を有する。図10は、恒例により、多重はんだ接合45によって回路基板44に結合される、そのような集積回路を更に例示する。当然のことながら、多岐にわたる集積回路以外の熱負荷も同じ方法で冷却されることが可能である。同様に、集積回路パッケージ42の表面、ヒートシンクインペラ41の表面あるいはそれらの両方は、図6を参照して上記されたように、インペラへの上向きの力を助長するため、1つ以上の溝または他のざらつきのある表面を画定し得る。
【0088】
上記されたように、多岐にわたる手段が、ヒートシンクインペラ構造体41に回転または他の運動を与えるために使用されることが可能である。一般に、本書類に記載されるように、いくつかの例では伝熱構造体はモータによって回転させられるかあるいは運動させられる。従って、ヒートシンクインペラ41のような伝熱構造体はロータとして機能するかあるいはロータに結合される。対応する固定子構造体はモータを駆動するために提供され得る。1つの実施形態で、ヒートシンクインペラ構造体に回転を与えるための手段は、集積回路パッケージ42に直接組み込まれ得る。そのような手段は、駆動回路、固定子コイルといった電気機械アクチュエータ、および、(本書類に記載されるように)実質的に一定の回転軸を維持するように適応された1つ以上の部品を含み得る。例えば、固定子構造体の全部または一部を形成するコイルは、集積回路パッケージ42内に置かれ得、かつ、例えば、パッケージ内の集積回路チップに、またはパッケージ内のエポキシに、埋め込まれ得る。モータを動作させ、ヒートシンクインペラを動かすために使用される駆動回路はパッケージ42内の集積回路に組み込まれ得る。別の実施形態では、ヒートシンクインペラ構造体に回転または動きを与えるための手段の一部または全部は、集積回路パッケージの外部の1つ以上の部品に組み込まれ得る。別の実施形態では、ヒートシンクインペラは誘導モータの回転子として機能し得、従って、永久磁石材料および/または高透磁率材料をヒートシンクインペラ構造体に組み込む必要性を無くす。
【0089】
以下に、数多くの代替の実施形態が記載され、それらの実施形態では、1つ以上の上記された要素が、図5、図6、および図10の代表的実施形態で示された要素と異なり得る。これらの代替の実施形態は包括的であることが意図されておらず、他の変形例が起こり得る。
【0090】
図5および図6に示される代表的な実施形態では、熱伝導構造体11および/または伝熱構造体13は、MIC6(登録商標)(Alcoa社)アルミニウム合金から製造され得る。しかし、アルミ二ウムの他の合金、アルミ二ウム以外の金属、アルミニウム以外の金属の合金、あるいは非金属の材料が、請求項に係る主題から逸脱することなく、使用され得る。材料の特徴は、高い熱伝導率、低い密度、高い剛性、および、機械加工、鋳造、研磨その他といった製造の観点からみて好ましい属性を含む。少量では、そのような構造体は、アルミニウムの開口部のない(solid)ブロックから機械加工され得る。大量の生産のためには、そのような熱伝導構造体および/または伝熱構造体は、1つ以上の表面がその後に半精密プランニング/研磨作業(semi−precision planning/polishing operation)を受ける一体構造のダイキャストアルミニウム部分として製造され得る。ダイキャストアルミニウムは低コストの製造を可能にし得、また、特に高い熱伝統率を有する合金の作成を可能にし得る。インベストメント鋳造、鍛造、押し出し加工、延圧、引き抜き、ろう付け、化学研磨、その他といった他の製造プロセスは、請求項に係る主題から逸脱することなく、熱伝導構造体を製造するために部分的にまたは全体的に使用され得る。請求項に係る主題から逸脱することなく、製造には、フライカッティング、研削、研磨、その他をこれらに限定されることなく含む仕上げ作業も伴い得る。
【0091】
機械加工、ダイキャスティングまたは他の技術で製造されるかを問わず、そのような伝熱構造体では、テーパ状の横断面を持つフィンを使用することが有利であり得る。例えば、ダイキャスティングの場合、垂直(z)方向にテーパするフィンはモールドからキャスト部分が取れやすくなり得る。機械加工された伝熱構造体の場合、テーパ付きのエンドミルでの製造はよりよい仕上げを提供し、かつ、テーパなしのエンドミルの場合と比べて切りくずの排出を容易にし得る。それに加えて、作業中に内部の熱流束がz方向において単調に低下した場合、最適かされた伝熱構造体は、フィンのz方向へのテーパリングをある程度採用し得、これによって、当該採用がなければ重量と抵抗を上昇させたであろう不要で大量すぎる材料を無くす。図5および図6に示されないが、ヒートシンクインペラの円盤型の基部と交差する各フィンの基部で隅肉(フィレット)が使用され得る。隅肉の使用は機械的強度を向上させ得、また、フィンと、そのような伝熱構造の円盤型基部の間での熱の流れを容易にし得る。そのような伝熱構造体は、機械的剛性を向上させ得る桁、梁、ガセット板、隅肉、その他といった構造体をも組み込み得る。
【0092】
図5および図6に示される代表的実施形態で、熱伝導構造体は、正方形の設置面積を有するものとして示されている。しかし、請求項に係る主題から逸脱することなく多くの他の形状を使用することが可能である。図5および図6に示される代表的な実施形態では、伝熱構造体は円形の設置面積を有する。しかし、正多角形といった多くの他の形状を使用することが可能である。各実施形態で、伝熱構造体の回転の中心は熱伝導構造体の中心と一致するが、これは必須条件ではない。
【0093】
図9に示されるような市販の空気ベアリング部品の表面仕上げ仕様は、より粗い表面が使用され得るが、約0.4μm rms(二乗平均平方根)の粗度であり得る(Air Bearing Application and Design Guide, www.newwayairbearings.com, New Way Air Bearings, Ashton, PAを参照)。ここで、熱伝導構造体および/または伝熱構造体は、MIC6(登録商標)(Alcoa社)のような精密鋳造アルミニウムプレートから機械加工され得る。MIC6(登録商標)の表面粗度仕様は最大値で0.5μm rmsであり、その典型的な値は0.3μm rms以下である。MIC6(登録商標)のさらなる特徴は、良好な機械加工性および高い熱伝導率(142Wm−1K−1)である。
【0094】
図5、図6、および図10に示される代表的実施形態で、そのような熱伝導構造体および/または伝熱構造体の表面はコーティングを施されていないことがあり得る。しかし、そのような熱伝導構造体および/または伝熱構造体の1つ以上の表面には、減摩性、対磨耗性、防食性、高い放射率、その他といった望ましい特質を与えるために、および/または研磨といった製造工程の、1つ以上の側面にとってより相応しい外側の面を提供するために、コーティングを施されることが可能である。
【0095】
図5、図6、および図10に示される代表的実施形態で、伝熱構造体のフィンは、垂直に突起し従来のインペラの羽根と同様の方法で機能するように設計された、曲げられ、湾曲したブレードの形態を取る。しかし、幅広い他の構造を請求項に係る主題から逸脱することなく使用することが可能であり、他の構造とは、湾曲していないブレード、曲げられていない(すなわち、半径方向溝の)ブレード、前方に曲げられているブレード、後方に曲げられているブレード、回転面に直交する面で湾曲(curvature)を含むブレード、回転軸に沿う高さが半径方向位置のように(as of radial position)一定でないブレード、横断面エリアが高さおよび/または半径方向位置の関数として可変なブレード、およびこれらの各種の組み合わせを、これらに限定されることなく、含む。複数のまたは全てのフィンにかかる補強部材を追加することは、ある環境下では推奨され得る。しかし、ブレードの代わりに、フィン、ピン、支柱、羽根、流路(channel)、あるいはダクト、またはこれらの組み合わせといった他の構造体を使用し得、また、任意のそのような構造体は、スロットが付けられ、孔を開けられ、ざらつきを付けられ、部分に分けられ、ジグザグにされ、また、その他のことをされ得る。さらに、これらの突起する表面のうちのいくつかは伝熱構造の他の部分と相互作用する伴流渦の発生に適応され得る。
【0096】
回転するそのような伝熱構造体が周囲の媒体に動きを与える度合いは、種々の用途において実質的に異なる。例えば、そのような伝熱構造体が構造においてインペラと同様の場合、そのような伝熱構造体の回転は、インペラと同様の方法で周囲の媒体に実質的な動きを与え得る。他方で、ある用途においては、回転する伝熱構造体が平坦な円盤または、滑らかな上面を持つ他の形状の形態を取るように、ブレード、フィン、支柱、およびその他といった特徴を完全に省略することが望ましい場合があり得る。
【0097】
主な目的が(例えば低熱抵抗といった)熱交換性能である場合、そのような伝熱構造体の回転に関連する遠心ポンプ効果の、圧力特性/流量特性は、同一であり、特に重要ではないと考えられ得る。しかし、他の用途では、熱交換器の良好な性能および、流入空気流および/または流出空気流を、ダクトおよび/または他のそのような流れを制限するものを通して、強制的に流す能力の両方を獲得することに設計および最適化は向けられ得る。
【0098】
例えば、我々は、数百あるいは数千のコンピュータを収容する大きな部屋の形態を取る商業用データセンターまたはサーバーファームといった冷却の用途を考え得る。これらのコンピュータのうちのそれぞれは、周囲空気を取り込み、温度上昇したその空気を部屋に戻す。部屋の空気は大型の集中空調システムによって低温に維持され得る。そのような空調システムは大量の電力を消費し得る。代わりに、図5および図6に示されるような装置の構造が、空調システムを使用せずに、そのような熱負荷から廃熱を効率的に除去し外部の空気へと処理するために適応され得る。
【0099】
図11に示されるような熱管理の仕組みでは、外形が流入ポート31および流出ポート32を画定するマニホールド30にヒートシンクインペラは囲まれ得る。そのような流入ポートはそのようなヒートシンクインペラの回転の中心の上に置かれ得、そこで空気はインペラ内に吹き下げられ得る。(例えば、建築物の北側の場所から取り込まれた比較的低温の空気といった)外部の空気は、そのような流入ポートに直接的に取り付けられた空気ダクト33を通って送られ得る。そのようなインペラによって半径方向に排出される過熱された空気はそのような流出ポートに導かれ得る。そのような流出ポートは、(例えば建築物の屋根の上にあるような)外部の空気に排出する第二のダクト34に取り付けられ得る。そのような仕組みでは、外部の空気が建築物36に入ることは実質的にない場合が有り得、また、熱負荷35によって発生させられた熱も極めて少量が建築物36入るのみである場合が有り得る。これによって、そのような設備で発生させられた大量の排熱をそのような建築物の空調システムで処理する必要性が実質的に低減され得、または無くなり得る。
【0100】
そのような熱管理の仕組みは、図5に示されるようなインペラは商業目的の加熱、換気、および空調(HVAC)システムで広く使用される遠心ブロウに匹敵する(あるいは必要であればそれを超える)比較的高い静圧を発生させ得るという事実を利用する。典型的なHVACブロウは図12に示される。上記された熱管理システムと同様に、典型的なHVACブロウは、空気配送器(air delivery)および排気ダクトにそれぞれ直接取り付け可能な流入ポート39および流出ポート40を外形が画定するマニホールド38に囲まれたインペラ37の形態を取る。上記の熱管理の仕組みは、そのような空冷熱交換器の熱抵抗は伝統的なHSPF装置の熱抵抗よりはるかに低いという事実も利用する。このずっと低い熱抵抗は、外部の空気が室温よりも(例えば20°Cと比べて40°Cというように)十分により暖かい場合、そのような空冷熱交換器は、熱負荷の温度を(例えば80°Cといった)あらかじめ決められたある値より低く維持するという意図された機能を依然として果たす、ということを意味し得る。いうまでもなく、そのような熱管理の仕組みは、発電所、工場、コンピュータデータセンター、コンピュータサーバファーム、商業用建築物、研究所、事務所、公共の空間、住宅用居住施設、輸送車両、機器または機械をこれらに限定されることなく含む1つ以上の熱負荷を収容する任意の建築物、エンクロージャ、あるいは装置により一般的に適応され得る。
【0101】
特定の実施形態で、本書類に記載される実施形態を含む熱交換器の熱抵抗は伝熱構造体の回転および/または並進の速度を調整することにより調整され得る。さらなる実施形態で、調整可能な熱抵抗を有するそのような熱交換器は温度制御システムの一部を含む。
【0102】
CPU冷却といった用途では、冷却システムの流入孔に取り込まれた空気は、かなりの量の、ちり、微粒子物質および/または他の汚染物質を含み得、それら含まれるもののうちの一部は、フィン付きヒートシンクの表面に堆積され得る。結果として、HSPF構造に基づく従来のCPUクーラーの性能は時間の経過とともに低下し得、結局CPUの誤動作を引き起こし得る。伝熱構造体が高速で回転する場合、従来技術に無いさらなる利点がちりの体積によって大幅に低減され得る。ちりが体積する度合い分、そのような伝熱構造体の高速回転の方向は時々、短時間の間逆方向にもなることが可能であり、これによって「自己洗浄」運転モードを提供し得る。そのような機能は、(例えばコンピュータのオペレーティングシステムといった)ソフトウエアか(例えばブラシレスモータ駆動回路といった)ハードウエア、あるいはそれらの両方によって制御することが可能である。熱交換器の性能が伝熱構造体での縮合および/または氷生成によって低下する用途では、高速で回転する伝熱構造体を使用することでそのような問題は大部分が解消され得る。最後に、そのような伝熱構造体が接着剤、ヒートシンク用の糊、その他ではなく磁石によって所定の位置に保持される場合、このことは、望まれる場合には(例えば、超音波浴での洗浄といった)極めて完全な洗浄のためのフィン付き伝熱構造体の手軽な取り外しを容易にし得る。
【0103】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態では、隙間領域12および43はそれぞれ空気で満たされ得る。しかし、そのような隙間領域は気体の任意の混合物、あるいは、純ガスを含み得る。例えば、空気の代わりにヘリウムを使用することは、ヘリウムは空気の約6倍の熱伝導率を有するため、いくつかの用途では価値があるであろう。それに加え、そのようシステムは大気圧の下またはそれに近い圧力の下で動作する必要が無い。いくつかの用途では、大気圧より高いまたは低い圧力下での動作はある有利点を生み出し得る。
【0104】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態で、熱伝導構造体11と伝熱構造体13の間の空気隙間12の形状と、ICパッケージ42とインペラ構造体41の間の空気隙間43の形状は、直径に対する高さの比が非常に小さい円筒の形状であり得る。しかし、請求項に係る主題から逸脱することなく隙間領域の(例えば非円筒形の回転体といった)別の外形を使用し得る。例えば、熱伝導構造体と伝熱構造体は、実質的に同軸の外形を持つように構成されることが可能であり、その場合は、隙間領域は概ね円筒シェルの形状を有するように記載され得る。位置の関数として実質的に一定でない距離によって隔てられる熱伝導構造体および伝熱構造体によって画定される隙間領域も使用され得る。
【0105】
特定の実施形態では、そのような隙間領域は実質的に低熱抵抗を提供するために適応され得る。この文脈で、「実質的に低熱抵抗」とは、熱伝導構造体と伝熱構造体の間の熱抵抗がある動作条件下で前記伝熱構造体と周囲の媒体の間の熱抵抗よりも実質的に低いということを意味する。例えば、図5を参照すると、ヒートシンクインペラが1000rpmで回転する場合、ヒートシンクインペラとベースプレートの間の熱抵抗は前記ヒートシンクインペラと周囲空気の間の熱抵抗よりも実質的に低くあり得る。特定の実施形態では、そのような隙間領域は、伝熱構造体と熱伝導構造体の間の実質的に低い摩擦を提供するように適応され得る。この文脈で、「実質的に低摩擦」とは、熱伝導構造体と伝熱構造体の間の摩擦がある動作条件下で前記伝熱構造体と周囲の媒体の間の摩擦よりも実質的に低いということを意味する。例えば、図5を参照すると、ヒートシンクインペラが(例えば空気抵抗のために)1000rpmで回転する場合、ヒートシンクインペラとベースプレートの間の(例えば回転に対する抵抗といった)抵抗量は前記ヒートシンクインペラと周囲空気の間の抵抗量よりも実質的に低くあり得る。
【0106】
図5、図6、および図10に示される代表的実施形態で、公称の空気隙間分離距離は約5μmであり得る。しかし、この隙間の距離が、装置のサイズ、動作環境、その他によって、より小さくあるいはより大きくなる状況がある。例えば、磁気メモリ装置のある種類で使用される気体ベアリングに匹敵するサブミクロンの隙間距離を使用することが可能であり得る。気体で満たされた隙間領域で対流による混合を発生させるように適応された構造体を含むことは、大幅により大きな空気隙間の距離の使用を可能とし得る。従って、本書類の代表的な実施形態で挙げられた5μmの分離距離は説明目的のみにあり、かつこれをかたくなな方針または限定と解釈するべきはない。
【0107】
図5および図6に示される代表的な実施形態で、熱伝導構造体11と伝熱構造体13の間の界面(interface)は動圧空気ベアリングとして構成され得る。ここで、代表的な実施形態に例示されるレイリーステップベアリングのかわりに多種多様な動圧気体ベアリング設計を採用し得る。例えば、上に例示される特定の実施形態は、それぞれが平坦な底部、垂直な壁、および半径方向溝の配向を持つ6つの同一の溝を使用し得る。しかし、これらの仕様はどれも、請求項に係る主題から逸脱することなく変更され得る。任意のそのような動圧気体ベアリングを使用すると、そのような熱伝導構造体の表面に溝を配置する代わりに、回転する伝熱構造体の表面にそのような溝を配置することが可能であり、あるいはそのような溝を両者の表面に含ませることが可能である。最後に、接線方向の溝、半径方向溝と接線方向の溝の組み合わせ、または、溝付きの表面ではなく(例えばエッチングを受けた)ざらつきのある表面、といった、放射上の溝を含む構造体以外のもの、あるいはこれらの任意の組み合わせが使用され得る。
【0108】
静圧(外部より加圧されている)空気ベアリングも使用可能であろう。そのような動圧気体ベアリングまたは静圧気体ベアリングは、隙間領域に微粒子または汚染の他の原因が侵入することを防ぐために1つ以上のフィルタをも備え得る。磁気浮上ベアリングまたは静電浮上ベアリングも使用され得る。最後に、高流速静圧ベアリングは、そのような装置によって提供される熱処理の大部分が狭い隙間領域を通る気流と関連するように、実施可能であろう。
【0109】
別の実施形態で、1つ以上の引き上げ表面(lifting surfaces)(固定または可変のエーロフォイル)が、正のz方向への引き上げ力または負のz方向への下向きの復元力を生み出し得る回転伝達シンク構造体に組み込まれ得る。また別の実施形態では、回転子/固定子アセンブリは、正のz方向への引き上げ力または負のz方向への下向きの復元力として使用可能でz軸に沿った実質的に非ゼロの磁気分力を発生させるように設計され得る。また別の実施形態では、負のz方向への下向きの復元力は、外部のポンプ、回転伝熱構造体と一体かつ当該構造体から電力供給を受けるポンプ、またはそれら両方のポンプ、によって真空状態が発生させられ得る「真空圧密(vacuum preloading)」を使って、熱伝導構造体と伝熱構造体の間の領域が実質的に真空になることによって発生させられ得る。最後に、さらなる実施形態では、隙間の距離は実質的にゼロであり、伝熱構造体の表面と熱伝導構造体の表面の間には、潤滑剤および/または減摩コーティングが全面的にまたは部分的にこれらの表面のうちの、両方に施され、どちらか一方に施され、またはどちらにも施されていない、すべり接触が存在する。
【0110】
特定の用途の要件に応じて、隙間の距離は(例えば、図5および図6に示される代表的な実施形態におけるように、伝熱構造体に作用する磁力と圧力のバランスによって)受動的に調節され得、(例えば隙間の距離用のセンサと隙間の距離を変更するように適応されたアクチュエータを使用して)能動的に調節され得、あるいは調節されない(その場合、いかなる特定の方法によっても、隙間の距離は制御されることも、調節されることも、事前に決められることも無い場合が有り得る)こともあり得る。異なる調節の仕組みの組み合わせも使用し得る。隙間の距離を決定する1つ以上の構成部分または規定要因も調整可能であり得る。例えば、図5および図6に示される代表的な実施形態では、希土類磁石(14および15)の一方または両方は2つの磁石の間の距離(従って吸引力)を調整するための提供を含むことが可能であろう。一つの永久磁石と、高透磁率磁性鋼といった磁性を有する材料が使用され得る場合、そのような調整はネジ式の鋼のプランジャーの形態で実施されることが可能であろう。
【0111】
気体ベアリングシステムが、熱伝導構造体と伝熱構造体の(例えば起動時および終了時の)低回転速度での分離を維持するために補助の引き上げ力を提供する機構を必要とするときは、多種多様な実施が可能である。代わりに、そのような引き上げ力は継続的に加えられ得、高回転速度で加えられ得る代わりの下方への力によって対抗され得る。可能な実施は、動圧フォイル/気体ベアリングの使用(Agrawal, G. L., 「Foil/Gas Bearing Technology, An Overview,」 American Society of Mechanical Engineering, Publication 97−GT−347, 1997を参照)、外部より加圧される気体ベアリング、電磁引き上げ力を提供するための(モータに組み込まれたおよび/または独立した構造体として実施される)手段、(例えば導電性金属でできた伝熱構造体といった)導電構造体に、過度な渦電流を発生させる過渡磁場をレンツの法則に従って印加することによって発生させられる過度の反発力(Griffiths, D. G., Introduction to Electrodynamics, Prentice−Hall Inc., Englewood Cliffs, NJ, 1981を参照)、回転速度の上昇および/または下降に伴って自動的に利用可能になる又は収納される、遠心的に起動される補助のベアリング、ブシュ、あるいは他の構造体、および、多種多様な自動または手動で起動される機械的装置、任意の均等な構造体あるいはそれらの組み合わせの使用を、をこれらに限定されることなく、含む。
【0112】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態で、伝熱構造体13またはインペラ41の、それぞれ熱伝導構造体11またはパッケージ42に対する相対的な並進を提供するように適応された機構が無い場合があり得る。図5、図6,および図10に例示される代表的な実施形態で、伝熱構造体に回転を与えるように適応された機構は二相、二重突極、同期、可変リラクタンスモータを含み得る。そのようなモータは、それぞれが、熱伝導構造体11および伝熱構造体13に直接的に組み込まれた4つの固定子鉄心16、4組の固定子巻き線17、および4枚の回転子歯18を持ち得る。固定子鉄心および固定子歯は、実質的に高い透磁率を有し、耐食性があり、良好な加工性を有するAISI416ステンレス鋼から製造され得る。各相は、逆の極の固定子ペアを含み得、また、2つの相を励磁するために相から約90度はずれた交流波形使用し得る(Chapman, S. J., Electric Machinery Fundamentals, 4th edition, McGraw−Hill, New York, 2005を参照)。この設計の有利な点は、製造という観点からみた場合の、単純さである。しかし、この特定のモータの構造はいくつかの欠点を有する。すなわち、自己起動型でないこと(例えば、静止状態にある場合に、回転子に作用する正味のトルクが常にゼロである回転子の位置が4つある)および、特にそのようなモータが高速(高い励磁の頻度)で動作している場合に、薄層状ではない固定子鉄心および回転子のブレードを使用が使用されていると実質的に大きな渦電流損失が生じる、ということである。
【0113】
しかし、当然のことながら、これらは、固定子および回転子が特定の実施形態に従ってどのように製造され得るのかの単なる例にすぎず、また、現在の技術によって製造されたものであれ未来の技術によって製造されるものであれ、他の回転子および固定子が、請求に係る主題から逸脱することなく使用され得る。例えば、他の特定の実施では、回転子は、(例えばN極部分とS極部分が交互に入れ替わる磁気材料で出来た輪といった)磁気的に分極され、高い電気抵抗を持つ材料および/または薄層材料から製造され得、固定子は、高い電気抵抗を持つ材料および/または薄層材料から製造され得る。磁気的に分極された回転子は、任意の初期位置から自己起動する単純な2相モータの組立を可能にする。高い電気抵抗を持つ材料のおよび/または薄層型の、固定子および回転子のポールの使用は、渦電流損失を最小限にし得る。そのような伝熱構造体に回転および/または並進を与えるための多種多様な他の手段が、請求に係る主題から逸脱することなく使用され得るということも当然である。これらは、本書類に記載されるモータとは違うタイプの熱伝導構造体および伝熱構造体を含むアセンブリと一体となったモータ、あるいは、トルクが任意の手段によって伝熱構造体に伝達される任意のタイプの非一体型、つまり、分離したモータの使用、をこれらに限定されることなく含む。さらに一般的には、電気モータ、内燃機関、空気圧モータ、水力モータ(water−powered motor)、その他、あるいはこれらの任意の組み合わせを、これらに限定されることなく含む機械的作動を引き起こす任意のものが使用され得る。
【0114】
そのようなモータは、ラジアルベアリング、スラストベアリング、またはそれらの両方の追加の機能をも提供し得る。例えば、静圧気体ベアリングを使用するシステムは、伝熱構造体に回転を与えるために、らせん状のまたは他の相応しい形状の溝または流路を伝熱構造体の底面、伝熱構造体の内部領域、またはその両方に含み得る(Satomi T. and Lin G., 「Design Optimization of Spirally Grooved Thrust Air Bearings for Polygon Mirror Laser Scanners,」 JSME, International Journal, Series C, Vol. 36, No. 3, pp. 393−399, 1993を参照)。
【0115】
図5および図6に例示される代表的な実施形態で、回転の軸は伝熱構造体13と一体化された第一の希土類磁石14と、熱伝導構造体11に埋め込まれた第二の希土類磁石15(図6に示される)の磁気吸引の相互作用によって実質的に一定に維持され得る。このことによって、ベースプレートが傾き得る場合あるいは水平に設置されていないことがあり得る場合でも、回転する伝熱構造体13はベースプレート11上の略中心に保持される。代わりに、希土類磁石の一つを、高透磁率鋼といった軟質磁性材料と交換することが可能であろう。別の実施形態では、動圧ベアリングは、(例えば、回転する伝熱構造体を、サイズがちょうど合い、溝付きの円筒形のキャビティに配置することによって)スラスト/ラジアルハイブリッド気体ベアリングとして構成され得る。回転の軸を実質的に一定に維持するように適応されたそのような機構は、従来型の機械ラジアルベアリング、ブシュ、スピンドル、静圧ラジアル気体ベアリングまたは動圧ラジアル気体ベアリング、(例えば、代表的な実施形態で使用されているものとは違うものといった)磁気ラジアルベアリングの別の形態、その他、をこれらに限定されることなく含むラジアルベアリングのある形態を取る。さらに、そのようなラジアルベアリング構造体はスラストベアリングの機能をも含み得る。
【0116】
熱負荷は任意の形態を取り得、(例えば熱伝導構造体に直接的に搭載されたCPUのように)直接的に熱伝導構造体に熱的に結合され得、または(例えば熱伝導構造体に搭載されたヒートパイプ構造体の表面に搭載されたCPUのように)非直接的に熱伝導構造体に熱的に結合され得る。そのような熱負荷は(例えば伝導、対流、放射、物質伝達、あるいはこれらの任意の組み合わせといった)伝熱の任意の手段によっても熱伝導構造体に熱的に結合され得る。熱の流れは、熱負荷内に向かうものあるいは熱負荷から出るもので有り得、本書類に記載される実施形態は冷却の用途と過熱の用途の両方に使用され得る。特定の実施形態で、熱伝導構造体と熱負荷は、一つ以上の低熱抵抗接合によって接続された別個の要素である。代替の実施形態では、熱伝導構造体と熱負荷は、一体構造のアセンブリとして組立てられ得、その場合はそのような低熱抵抗接合は必要ない場合が有り得る。
【0117】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態で、熱処理のための大規模な熱リザーバを提供する伝熱構造体13または41の周囲にある媒体は空気を含み得る。しかし、そのような熱リザーバは、任意の気体か空気以外の気体の混合物、あるいは、(例えば水、油、溶剤、潤滑剤、その他のような)液体といった凝縮相媒体、懸濁液、スラリー、粉末または、任意の他の非固体の凝縮相媒体またはそれらの組み合わせ、でもあり得る。
【0118】
図5、図6、図10に例示される代表的な実施形態における規定要因の特定の値は、特定の実施形態による例としてのみ提供されてきた。したがって、性能要件、望まれる工学上のトレードオフ、その他によって、そのような規定要因が別の値を取り得ることは言うまでもない。
【0119】
例えば、図5に示される特定の装置で、ヒートシンクインペラは100枚のフィンを有する。しかし、より一般的には、フィンの数の選択には、回転する伝熱構造体の近傍での長時間にわたる一連の実験的測定および/または流動場のモデリングがともなわれ得る。どの熱交換機においてもそうであるように、フィンの全体の表面積を増やすという観点からみれば、より多くのフィンを付けたすことが望ましくあり得る。しかし、同時に、より多くのフィンを付け足すことは抵抗を増加させ得、また、x−y平面におけるフィンの横断面の面積は、フィンの基部からフィンの先端までの熱の適切な伝導を提供する上で十分に大きくない場合があり得る。抵抗が増加することに関連するさらなる不利益は、低いrpmでの動作によって、加速する基準系に境界層を設置することによって提供される境界層薄化効果が低減することである。
【0120】
回転する伝熱構造体の近傍での実験的測定および/または流動場のモデリングは、フィンの最適な「デューティーサイクル」を決定するためにも要求され得る。ここで、フィンのデューティーサイクルは、フィンの厚みを、アジマス方向でのフィンとフィンの周期で割ったものとして定義され得る。図5に示される装置ではそのようなフィンのデューティーサイクルは約35%である。内部の熱抵抗を低減するためにアジマス方向により厚いフィンを使用することによって、フィンとフィンの間の空気のスロットの幅を縮減し得、これによって、空気の流れが制限され得る。フィンの曲げの角度と曲げの曲率の外形は特定の用途のために変更され得る。図5に示される装置は60度の曲げの角度と、x−y平面での曲げの曲率の一定の半径を有する。フィンの外形の問題に関連して、考慮すべき別の対象は、フィンが置かれる回転ディスクでエリアが細分化されることである。図5に示される装置で、フィンを含む環状の領域は、回転するディスクの全エリアの80%に相当する。フィンのエリアの範囲を拡げることは、より良好な熱処理を提供し得る。しかし、インペラの中心領域での空気の取り入れを制限することの効果を再び考慮しなければならない場合があり得る。
【0121】
回転する伝熱構造体の近傍での実験的測定および/または流動場のモデリングは、動圧気体ベアリングの設計の規定要因を最適化するためにも要求され得る。例えば、代表的な実施形態で使用される半径方向の溝の数と外形は、最適でない場合があり得る。
【0122】
最後に、本書類で言及される全ての公開、特許および特許出願はその各々が個々に、本書類での開示を理解しまたは実施するために必要な程度に、組み込まれているものとして、本書類に参照によって明確に組み込まれる。
【0123】
本出願の例示的実施形態をそのように記載してきたところで、当業者が注目すべきは、この書類での開示は例示としてのみあること、および他の様々な代替、適合、および変更が、本出願の範囲内で行われ得ることである。従って、本出願は、本書類で例示された具体的な実施形態に限定されず、添付の請求項によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、従来技術のいくつかの制約を克服するように設計された新しいタイプの強制空気熱交換器(forced−air heat exchanger)のための装置、方法、およびシステムに関する実施形態を含む。
【0002】
<関連出願の相互参照>
本出願は、「熱交換装置および熱除去または伝熱のための方法」とタイトルされ2008年8月4日に出願された、先の同時係属中の米国特許出願シリアル番号12/185,570、および、「熱交換器および熱除去または伝熱のための方法」とタイトルされ2009年3月27日に出願された、先の同時係属中の米国仮特許出願シリアル番号61/164,188、に基づく優先権を主張する。
【0003】
<政府による支援の記述>
米国政府はこの技術における一括払いライセンスを有しており、また、米国エネルギ省によってサンディア社に裁定された契約番号DE−AC04−94AL85000の契約の条件によって規定された正等な条件で他人に対し実施許諾することを限定された条件下で特許権者に要求する権利を有する。
【背景技術】
【0004】
熱管理の問題を説明するために、コンピュータおよびマイクロエレクトロニクスの産業に言及する。VLSI(超大規模集積回路)半導体技術の進歩は、もっとも一般的な定義ではCPU(中央処理装置)あたりのトランジスタの数は18ヶ月ごとに2倍になると予測するムーアの法則の観点からしばしば議論される。1971年、2300個のトランジスタを搭載し740kHzのクロック速度で動作する「4004」プロセッサをインテルは発表した。10億個を超えるトランジスタを持ち3GHzを超えるクロック速度で動作するプロセッサが2006年までに市販されている。このような近代のCPUの多くは、100Wを優に超える廃熱を発生させる。CPU能力を向上させる継続的な進歩は、熱管理の問題によって現在深刻に妨げられている。最先端の熱管理技術の限界は、ムーアの法則の成長曲線に沿って進み続けるのに必要とされるものに遠く及ばず、この状況は「サーマルブリックウオール(thermal brick wall)」問題と呼ばれてきた。
【0005】
現在の技術によるCPUクーラーの例が図1に示され、このCPUクーラーは、(熱負荷への低熱抵抗の接続を容易にするための)平坦な底面を有する、フィン付で金属製のヒートシンク1と、ヒートシンクのフィンに影響する気流を発生させるための軸流ファン2を含む。ヒートシンク1は、熱交換面積を大きくするために複数のフィンを持ち、また、アルミニウムといった高い熱伝導率をもつ材料から作られる。金属製ヒートシンクのために使用される材料の選択は、ヒートシンクを軽量にする、低コストにする、(例えば、良好な機械的形成性(mechanical forming properties)をもつ合金を使用するなどといったように)容易に製造できるようにする、その他といた他の必要条件を反映することもあり得る。ファン2をヒートシンク1に固定するための締結手段3および4も含まれる。
【0006】
大部分のデスクトップ型およびラップトップ型のコンピュータでは、CPUは、図1に示されるもののようなCPUクーラーと直接的に熱接触する形で搭載されているか、ヒートパイプといった熱除去装置を通して非直接的に接続されている。電子機器の熱管理における現在の技術は、米国特許分類クラスおよびサブクラス165/121、165/104.33、および361/697、および特に、米国特許シリアル番号7,349,212、7,304,845、7,265,975、7,035,102、6,860,323、6,356,435、および、米国特許公開番号2004/0109291、2005/0195573、および2007/0041158によって扱われている技術を参照してさらに説明され得る。
【0007】
半導体産業の初期において、パワートランジスタといった多くの機器は、機器の適切な温度動作マージンを維持するために何らかの形の熱管理を必要としている、ということを部品設計者は認識していた(米国特許番号5,736,787を参照)。この問題を解決するために、そのような部品は、典型的には、フィン付で金属製のヒートシンクに直接接触する形で搭載された。そのようなフィン付きヒートシンクは、冷却フィンの間を通して空気を循環させるために、主として自然対流に依存していた。結局は、ヒートシンクからの熱除去の速度と効率を向上させるためにヒートシンクの上のおよびその周囲の空気の移動を助けるためのファンを使うことが常套的になった。時の経過とともに、ヒートシンクと周囲空気との間の熱交換をより向上させる目的で、電子機器冷却のためのヒートシンクはサイズが大きくなり、より多くのフィンを含むようになり、また、より複雑な外形のフィンを使用するようになった。この「ヒートシンクプラスファン(heat−sink−plus−fan)」構造(図1を参照)は空冷熱交換器技術における現在の技術をやはり表している(Incropera F. P., Dewitt D. P., Bergman, T. L. and Levine, A. S., Fundamentals of Heat and Mass Transfer, 6th Edition, John Wiley & Sons, New York, 2007を参照)。
【0008】
1990年代の中ごろまで、CPU冷却に使用される空冷熱交換器の性能には比較的わずかしか関心が払われなかった。このような「ヒートシンクプラスファン」(HSPF)装置の冷却能力は大多数のCPU用途にとっては十分以上であり、また、初期のHSPF装置の電力消費は比較的低かった(典型的には1ワット程度)。しかし、結局、トランジスタの集積度の上昇とクロック速度の高速化によって、より良好な熱管理技術に対する要求が生まれ始めた。これによって、廃熱除去のための大幅に向上した技術、実用性第一のヒートパイプの技術、および熱界面材料の改良の発展がもたらされた。一方、廃熱処理における性能向上のほとんど全ては、標準的なHSPF構造に基づいた装置の大型化によって成されてきた。すなわち、増大してゆくCPUの電力損失の問題に取り組むために、ファンと、フィン付で金属製のヒートシンクの両方を単に大型化したのである。
【0009】
「廃熱除去」と「廃熱処理」の区別に注意されたい。上記されたように、1990年台中ごろより前はHSPF装置の冷却能力は大多数のCPU用途にとっては十分以上であった。典型的には、主な関心事は低熱抵抗接合を生み出し、維持することにあり、そのような熱伝導の接合のために利用可能な表面面積は比較的小さくあり得るため、およびそのような接合は熱サイクルに繰り返しさらされ得るために、低熱抵抗接合を生み出し維持することは課題を提示していた。この理由のため、多くの人によって、熱管理の問題は長い間主として廃熱除去の工程として考えられてきており、実際に熱管理は廃熱処理の第二ステップをも含む。熱除去ステップでは、熱は、CPUチップといった高熱密度領域(high−thermal−density region)から取り除かれ、熱処理の第二ステップを容易にするためにより広いエリアにわたって再分布され、その過程で廃熱は周囲空気に伝達される。しかし、熱除去と熱処理との区別はしばしば混乱の元となる。例えば、ラップトップ型コンピュータに使用されるようなヒートパイプは、熱処理に関するいかなる機能をも提供しないことがあり得る。ヒートパイプの目的は、接触部分の小さなエリアを通して大量の熱を除去し、ファンと共に使用されるフィン付きヒートシンクまたはラップトップ型コンピュータの金属製の筐体といった受動ヒートシンクといった熱交換器に、その熱を運ぶことであり得る。同じことが、熱負荷と熱交換器との間の熱の輸送を促進するために使われ得る電動ヒートポンプである、ペルチェ効果に基づいた熱電「冷却器」にも言い得る。これは、実質的に全ての廃熱を周囲空気(または、大量の熱を吸収することが可能な熱リザーバ)に送り出す機能を最終的に果たす熱交換器である。
【0010】
当然、熱処理は、水または別の冷却液への伝達をも含み得るが、大多数の実践的用途にとっては、目的は周囲の外気によって提供される大規模な熱リザーバに廃熱を伝達することである。密閉された金属製のエンクロージャの形で実施可能であるヒートパイプは例外として、なんらかの形で液体を扱うことおよび/または液体を収容することが必要となる冷却方法論を採用することには強いためらいがあった。サーマルブリックウオール問題は、熱伝導液の使用に訴えることによって、その優れた熱輸送特性のために、高い度合いで取り組むことが可能であることが実際に知られている。それにもかかわらず、液体の使用を必要とする冷却システムは、大量に市場に出回るパーソナルコンピュータといった用途には、性能の配慮よりも実用性の配慮のために、浸透していない。
【0011】
近年、CPU冷却に使用される空冷熱交換器のサイズ、重量および消費電力における大幅な増大は、ほとんどの商用の用途(最も顕著には、家庭環境またはオフィス環境で使用されるために大量生産されるパーソナルコンピュータ)にとって、実用性の面で限界に達し始めている。より大きくより強力なファンが発生させる耳に聞こえる大きい音量の騒音は、HSPF装置のさらなる設計(scaling)の障害になるということも分かっている(Thompson, R. J. and Thompson B. F., Building the Perfect PC, O’Reilly Media, Inc., Sebastapol, CA, 2004を参照)。
【0012】
一方、VLSI技術の進歩は続いてきた。多くの現実の用途において、空冷熱交換器の技術の性能は、現在ではCPU性能の更なる向上を制限する主要な要因である。ムーアの法則の成長曲線に沿って継続する進歩がVLSI技術における向上のみによって決定(Dictate)されることはもはやない。トランジスタの集積度の上昇およびより高速なクロック速度で動作する能力といったVLSIの利点をそのまま利用することは、熱限界のために、もはや不可能である。
【0013】
熱交換器の冷却能力は、その熱伝導性、すなわちPを熱負荷の電力損失、Tを熱交換器と熱負荷の間の境界面における熱交換器の温度とした場合のG=dP/dT、の観点から定義することができ、熱伝導性の国際単位系はWK−1である。しかしながら、慣例により、CPUクーラーに関する殆ど全てのデータシートでは、性能は熱伝導性の逆数である熱抵抗R(KW−1)の観点で記載される。上記の、熱抵抗および熱伝導性に関するIUPAC(国際純正応用化学連合)による定義(WWW.iupac.org参照)に加えて、他の名称および記号もこれらの数量を表すために従来技術において使用される場合がある(例えば、熱抵抗としての記号「q」の使用)ことに留意すべきである。
【0014】
図1に示されるような中程度のサイズのCPUクーラーの熱抵抗は典型的には1KW−1程度である。0.3KW−1もの低さの熱抵抗を提供するはるかに大型で重量の重い高能力なCPUクーラーがいくつか市販されている。しかし、空冷ヒートシンクのサイズ、重量、および電力消費におけるさらなる上昇がパーソナルコンピュータといった用途に使いづらくなってきた(Prohibitive)程度と同じ程度まで、熱交換器の3つの特定の冷却能力基準を向上させることに今度は努力を向けなければならない。3つの特定の冷却能力基準とはすなわち、単位体積あたりの冷却能力(WK−1m−3)、単位重量あたりの冷却能力(WK−1Kg−1)、および単位消費電力あたりの冷却能力(K−1)である。
【0015】
「サーマルブリックウオール」問題の本質は、CPUクーラーといった装置の特定の能力を向上させるための現実的な選択肢は全てすでに検討し尽されているように見えることである。例えば、過去20年間にわたる安定した進歩は、多くの冷却ファンに使用されるブラシレスモータの電気―機械効率を、95%という標準値まで上昇させた。これによって向上の余地は殆ど残されていない。同様に、ヒートシンクフィンの外形、および気流とヒートシンクの相互作用を主題とした、科学および工学の文献に数千もの参照箇所がある。この研究は、流動場とヒートシンクの相互作用のより深い理解をもたらしたが、流動場とヒートシンクの相互作用のこのより深い理解は、装置の構造と性能の漸進的な改良につながっただけだった。
【0016】
2008年1月の空冷熱交換器技術のための新規のアイディアに関する調査企画書に対する呼びかけ(call for)において、電子部品の熱管理技術の現状がDARPA(国防総省国防高等研究事業局)によって要約された。
【0017】
「過去40年にわたって、CMOS、電気通信、能動センシング、能動画像化、および他の技術は途轍もない技術革新を経てきた。これと同じ歴史上の期間にわたって、空冷の熱交換器の技術、設計、および性能は変化することが無かった。多くの場合、最新の熱交換器および送風機の性能データは1960年代に行われた測定に基づいている」
【0018】
1970年代にインターネットの開発を始めたとしておそらく最も知られるDARPAは、かなりの資源を空冷問題の解決に向けなければならないと現在は判断している(www.darpa.mil/baa, DARPA Broad Agency Announcement 08−15, January 8, 2008を参照)。
【0019】
VLSI技術における進歩が空冷熱交換器技術の向上への途轍もない経済的動機を生み出してきたことを考えると、この技術的停滞が起きるとは考えにくいはずである。電子部品の熱管理技術の現在の市場は年間約50億ドルである。このような強い経済的動機があるにもかかわらず進歩が欠如していることの説明の一部は、HSPF構造の性能を限定する物理的効果の基礎的な性質に関連し、このことは後に詳述される。
【0020】
技術的停滞を招くもう一つの重大な要因は、この問題を全体として再考慮することにではなく、熱管理技術の特定の側面を最適化することに向いている傾向であると思われる。従来のCPUクーラーといった装置の動作は多様な加工の訓練(disciplines)に渡る物理的過程によって支配される。結果として、ファン技術をより精巧にすることに取り組んでいる個人は、全ての意図および目的のために考慮することが可能な標準的な基礎的要素(standardized building block)としてのフィン付きで金属製のヒートシンクを、「ブラックボックス」とみなし得る。同様に、押し出しアルミニウムヒートシンク技術の進歩に注力している個人は、ファンを、電量を消費して気流を提供するブラックボックスであるとみなし得る。特定の分野に専門的に従事すると、最適化された熱管理の問題を全体として認識することが難しくなる場合がある。例えば、一つの興味深い観察によれば、CPU冷却に使用される市販のファンのデータシートは、そのファンの(例えば、回転機械力を気流に変換する効率といった)機械効率に関していかなる記載も全く提供しないか滅多に提供しない。このことは不適切である。なぜなら、下記に論じられるように、CPUクーラーといった装置で使用されるファンの機械効率は、装置の構造全体の問題に関する深い関わりを持つことになるからである。より一般的には、強制空冷の問題を考え直すには、従来のHSPF構造の根底にある前提とそれに伴う空冷熱交換器技術における停滞を再検討する必要がある。
【0021】
伝熱は重要な基盤技術の分野であるため、本書類に記載される実施形態の利用分野はきわめて広い。先行する議論は、抵抗器、コンデンサ、誘導子、変圧器、ダイオード、整流器、サイリスター、トランジスタ、増幅器、集積回路、ディスプレイドライバ、ラインドライバ、バッファ、マイクロプロセッサ、中央処理装置、グラフィックス・プロセッシング・ユニット、コプロセッサ、トランスデューサ、センサ、アクチュエータ、電源、AC−DCコンバータ、DC−ACコンバータ、DC−DCコンバータ、AC−ACコンバータ、またはプリント基板アセンブリ、を非限定的に含む一つ以上の能動電子素子および/または受動電子素子に熱管理が適応され得る電子部品の冷却の分野での利用を強調してきた。しかし、当然のことながら、本書類に記載される実施形態は(例えば、エネルギ分野といった)多種多様な他の技術分野に適応可能であり得る。明らかに、一つ以上の強制空気熱交換器を有する任意の装置は、そのような熱交換器のサイズ、重量、エネルギ消費および/または騒音、の減少から重大な利益を受け得る。しかし、それに加えて、そのような装置のエネルギ効率は、熱交換器の熱抵抗を低減することによって、大きく向上し得る。
【0022】
例えば、エネルギ分野では、熱と機械的作用とを交換するために使用される多種多様な装置は、2つの熱交換器にはさまれた熱機関の形態を取る。そのような熱機関は、高温源(以下、「熱源」と呼ぶ。)から低温シンク(以下、「熱シンク」と呼ぶ。)への熱の自然発生的流れから機械的作用を発生させるために使用され得る。例えば、蒸気タービンは、燃料の燃焼といった熱源から周囲の外気といった熱シンクへの熱の自然発生的流れから機械的作用を発生させ得る。このような熱機関の最大理論効率は、Tを全体温度、ΔTを熱源と熱シンクとの間の温度差とした場合の下記数式に示されるカルノー効率として知られる。
【0023】
【数1】
【0024】
図2は、機械的作用の入力または出力のための入力シャフト5、熱源と熱接触している第一の熱交換器6、熱シンクと熱接触している、同一の第二の熱交換器7を含む熱機関を例示する。理想的な熱機関では、熱源と熱シンクの間を流れる熱の全ては熱機関を通って流れ、熱機関の機械部分での摩擦のといった損失がなく、熱の流れは可逆的な過程としてなされ、そして熱機関は熱源および熱シンクに熱抵抗ゼロで熱的に結合している。図2に示される現実の世界の熱機関では、熱源と熱シンクの間を伝達される熱のうちのある部分は熱漏れ経路を通って流れ、熱機関内ではゼロでない摩擦損失があり、熱と作用との間の変換の理にかなった割合を提供するために熱の流れはある程度は不可逆な過程としてなされなければならず、熱源と熱シンクに熱機関を熱的に結合させる熱交換器はゼロではない熱抵抗を有する。これらの4つの非理想的効果のために、そのような熱機関で達成される実際の効率はカルノー効率に満たない(Kittel, C. and Kroemer, H., Thermal Physics, 2nd Edition, W. H. Freeman & Company, New York, 1997を参照)。これら4つの非効率性の原因のどれかでも従来技術と比べて実質的に低減することが可能な方法は、技術的および経済的に非常に重要である。
【0025】
そのような熱機関は、低温シンクから高温源までの熱の非自然発生的流れを発生させるのに機械的作用が利用される「ヒートポンプ」としても使用され得る。例えば、冷蔵庫は、電気モータによって供給された機械的作用を利用し、(例えば冷蔵庫内の空気といった)低温シンクから(例えば冷蔵庫外の空気といった)高温源への熱の非自然発生的流れを発生させ得る。伝達される熱と供給される機械的作用の比率は、冷蔵庫の性能のカルノー係数(the Carnot coefficient of refrigerator performance):
【0026】
【数2】
として知られる最大理論値も持つ。
【0027】
熱交換器の性能の重要性を説明するために、我々は窓に取り付けられたエアーコンディショナーといった装置を考慮し得る。そのような装置は、2つの強制空気熱交換器にはさまれたヒートポンプからなる。熱シンクは部屋の空気であり得(例えば、TSINK=300K)、熱源は夏の暑い日の外気であり得る(例えば、TSOURCE=320K)。2つの熱交換器は、非ゼロでかつ、この例では、等しい熱抵抗を有する。運転中に、2つの熱交換器の有限の熱抵抗(R)を流れる熱の量(q)によって、各熱交換器にわたってqRの温度降下が結果として生じる。そのような条件下で、熱機関の最大効率は、q(単位はW)がエアーコンディショナーを通って流れる熱流束であり、R(単位はKW−1)が熱交換器の熱抵抗である下記の式によって求められる値まで低減される。
【0028】
【数3】
TSINK=300KでTSOURCE=320Kの場合、各熱交換器にわたる10Kの温度降下によって、冷蔵庫の性能のカルノー係数は約2分の1に減少し、したがって、電力消費が約2倍に上昇し得る。従って、熱源と熱シンクの間の温度差が比較的小さい、エアーコンディショニングといった用途では、そのような空冷熱交換器の熱抵抗を低減することによって、電力消費を顕著に低減すること(あるいは性能に関する所与の係数に対する冷却能力を向上させること)が可能である。最後に、そのような改良された任意の熱交換器は、エアーコンディショニングに加えて、ヒータ、冷蔵庫、冷凍庫、吸収式冷凍機、蒸発冷却器、熱リザーバ、コンデンサ、ラジエータ、ヒートポンプ、熱機関、モータ、あるいは発電機といった用途に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は本出願の1つ以上の実施形態を例示し、記載と共に種々の実施形態の原理を説明する役割を果たす。図面は種々の実施形態を例示する目的のみにあり、限定するものとして解釈されるべきでない。
【図1】従来技術の例である、伝統的なヒートシンクプラスファン(HSPF)装置の構造に基づく強制空気熱交換機を例示する。
【図2】熱機関を例示する。
【図3】パーソナルコンピュータのCPUの冷却のために使用される、直径が60mmで4800rpmの典型的な冷却ファンの圧力/流量曲線を示す。
【図4】ベーン軸ファンの体積流量容量の関数としての機械効率と電力消費の図を示す。
【図5】代表的な実施形態を等積曲線図(Isometirc line drawing)の形式で示す。
【図6】z5の代表的実施形態をヒートシンクインペラを省略し、等積曲線図の形式で示す。
【図7】別の代表的な実施形態を等積曲線図の形式で示す。
【図8】別の代表的な実施形態を等積曲線図の形式で示す。
【図9】市販の空気ベアリングの例を示す。
【図10】集積回路パッケージを含む代表的な実施形態を示す。
【図11】本書類に記載される1つ以上の実施形態に基づく熱管理の仕組みを例示する。
【図12】従来技術による典型的なHVACブロウを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本書類の一部を成し、かつ特定の実施形態およびそれら実施形態が実施され得る方法を例示目的で示す添付の図面が以下の詳細な説明において参照される。これらの実施形態は当業者がこれら実施形態を実施することができる程度に十分に詳細に記載されており、また、当然のことながら、他の実施形態が利用され得、かつ本書類に記載されている実施形態の精神および範囲から逸脱することなく構造的変更がなされ得る。従って、以下の詳細な説明は限定の意味に解釈されるべきでなく、本願の範囲は添付の請求項によって定められる。
【0031】
上記で議論されたように、強制空気熱交換器技術の進歩は伝統的な「ヒートシンクプラスファン」(HSPF)装置の構造の基礎的な物理的制約によって妨げられている。特に、境界層効果はHSPF装置の性能に基礎的な制約を課すことがよく知られている(Kutz, M., Heat Transfer Calculations, McGraw−Hill, New York, 2005を参照)。性質の観点から見れば、「境界層」は、(例えばフィン付きヒートシンクといった)構造体の表面に密着し、断熱毛布のような働きをする「断熱空気(dead air)」の固定層(stationary layer)であると考えることができる。従来のHSPF装置では、フィン付きヒートシンクの基部と周囲空気との温度差は、そのような境界層にわたる温度降下によってほとんど完全に説明され得る。そのような境界層内では、典型的には分子拡散が熱の伝導のための主な輸送メカニズムであり、その結果として伝熱は非常に乏しい。
【0032】
従って、多くの高性能空冷装置の設計は境界層の破壊(disruption)を非常に重要視している。例えば、ヒートシンクの表面に向けられた圧縮空気のジェットを高圧ポンプが発生させる空気ジェット衝突冷却は境界層の厚さを縮減する上で非常に効果的である。しかし、空気ジェット衝突冷却の電力消費とコストはほとんどの用途には不向きなほど高い。図1に示されるCPUクーラーのような装置では、ファンが大量の乱流を発生させるが、層流の場合と比較して、有効境界層厚さ(effective boundary layer thickness)のささやかな縮減しか観察されない。この境界層破壊の効果は、ファンをより高速で動作させることで、幾分高めることが可能だが、電力消費とのトレードオフは急激に不利になる。
【0033】
熱交換プロセスの効率(eG)は、伝熱が空気流の熱容量によってのみ限定される理想的な熱交換器の熱伝導性(G)の最大理論値に注目することによって、定量化することが以下の式の通り可能である。
【0034】
【数4】
上記数式においてGおよびRはそれぞれ(すでに定義されたように)熱伝導性および熱抵抗、CPは定圧下における空気の熱容量、rは空気密度、Φはフィン付きヒートシンクを通る空気の体積流量である。図1に示される従来技術の装置にあってはeGは約10%であり、例えば、以下の数式として表される。
【0035】
【数5】
【0036】
従って、CPUが非常に高温で動作しているとしても、CPUクーラーによって排出される空気の温度は、周囲の外気の温度より少し高いだけであり得る。上記計算は、空気とヒートシンクの相互作用の効率における向上の余地に関して多くを示唆するので、有益である。この問題に取り組むために必要なことは、電力消費、サイズ、重量、コスト、複雑さ、その他における実質的な不利益を被らずにヒートシンクの境界層の厚さを実質的に縮減するための方法である。
【0037】
空気とヒートシンクの相互作用の効率の向上に加えて、熱交換器を通る空気の体積流量の上昇に、特定の実施形態は向けられる。標準的なHSPF構造に基づいた装置にとって、空気の流量はファンの電力消費に限定され得る。原則的に流量はファンの速度を上昇させることによって常に上昇させることが可能であるが、既に述べられたように、高い回転数(rpm)でファンを動作させることは、非常に不利に急激になる電力消費とのトレードオフを抱える(Bleier, F. P., Fan Handbook, Selection, Application and Design, McGraw−Hill, New York, 1997を参照)。
【0038】
ファンの性能が持つ役割をよりよく理解する上で、ファンの機械効率に絶対量の観点で着目することは有益であり得る。ここで、ファンの機械効率は、時間あたりに気流に与えられる運動エネルギを時間当たりにファンのロータに伝えられる機械的エネルギで割ったものとして表現され得る。空気に流量制限部分を強制的に通過させるのに必要な力は、流量制限部分にわたる圧力降下と体積流量によって決定される。「圧容積仕事」の概念を使って、pがファンによって伝えられる圧力でΦがファンによって伝えられる体積流量である場合の「p−F power」の観点からファンの出力を考えることが可能である(Fox, R. W. and McDonald, A. T., Introduction to Fluid Dynamics, 4th edition, John Wiley & Sons, New York, 1992を参照)。従って、Pmech,flowはファンによって発生させられた空気流に含まれる機械力であり、Pmech,motorはモータのシャフトにて利用可能な機械力であり、emotorはモータの電気機械変換効率であり、Pelec,motorはモータに伝えられる電力であり、Vmotorはモータに伝えられる直流電圧またはrms電圧であり、かつImotorはモータに伝えられる直流電流またはrms電流とする場合にファンの機械効率は以下の数式として表現され得る。
【0039】
【数6】
図3は、CPU冷却用途で使用される、直径が60mmの典型的な軸流ファンの圧力/流量曲線を示す。そのようなファンの圧力/流量曲線は典型的には以下の形式の概ね直線である。
【0040】
【数7】
p(F)曲線は、Fとpの積が最大になる点で最大効率動作点を持つ。
【0041】
【数8】
【0042】
従って、最大効率の推定値は以下のようになる。
【0043】
【数9】
従って、典型的な動作条件の下にある、図3に表される直径60mmで4800回転(rpm)の冷却ファンの機械効率は約2.0%である。
【0044】
【数10】
【0045】
これは、電子機器および他の小型装置の冷却に使用される小面積かつ高速のファンの性質である。モータのシャフトにて利用可能な機械力のうち、典型的には2%のみがファンによって発生させられる気流に与えられ、電気モータによって発生させられた機械力の残りの98%はファンのブレードの粘性抵抗に浪費される(動作速度においては、ファンモータのベアリングの機械抵抗は、ファンのブレードに加えられる抵抗全体に比べれば取るに足らない)。機械的エネルギのこの大きな非生産的消費はファンの主な騒音源でもある。(R. Jorgensen, Fan Engineering, 7th edition, Buffalo Forge Company, Buffalo, NY, 1970より転載された)図4に示されるように、はるかに大きく低回転(rpm)のファンは、はるかに良好な機械効率、すなわち、80%という高い機械効率を、5kWを超える電力を消費する大型工業用送風機で達成する。しかし、これらのはるかに大型のファンは、多くの用途(例えばデスクトップ型パーソナルコンピュータのCPUの熱管理)の、サイズ、重量、及び電力消費における制約を大幅に超える。
【0046】
上記計算の重要な意味は、CPUクーラーの特定の冷却能力は、物理的には可能なものに遠く及んでいないということである。2.0%という機械効率は、原理上は50倍もの大きな進歩を設計の向上を通して成し得ること意味する。したがって、我々は、HSPF装置の構造の性能の制限は、境界層効果に加えて、(そのような装置によって発生させられる可聴な騒音の実質的な音量がそうであるように)小型で高速のファンの本来的な低効率性に由来すると結論付ける。これらの制約のため、この技術分野における向上が必要とされていると考えられる。
【0047】
さらに、これら2つの物理的効果に対しする本来的な脆弱さがはるかに少ない新規の装置の構造の開発によって、強制空気熱交換器技術における進歩が達成されることが可能であろう。特に、本書類に記載される実施形態のうちのいくつかは、従来のHSPF技術に伴う境界層効果を顕著に低減させることおよび小型で高速のターボ機械に伴う低効率の問題を軽減することによって、熱負荷から廃熱を除去するための効果的な手段を提供しようと試みる。
【0048】
熱交換器フィンの間を通して空気を循環させるための効率的な仕組みを使用し、かつ、境界層の厚さを縮減するための効率的な機構を含む、空冷熱交換器のための新しい構造が本書類に記載される。この新しい装置の構造の一つの代表的な実施形態が図5および図6に例示される。種々の他の目的および利点が、明細書から、添付の図面と共に読まれるときに、よりよく理解される。以下の記載は、本願に記載された実施形態および原理のさらなる説明を提供するための例示および説明であることのみが意図される。添付の図面は、本書類に記載される実施形態を例示しかつ当該実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、また、当該図面はこの明細書に組み込まれ、かつこの明細書の一部を成す。実施形態の範囲は提示された実施例ではなく添付の請求項およびそれらの法律上の均等物によって決定されるべきである。
【0049】
図5および以下に続く議論を通して、「z−軸」という語はヒートシンクインペラ構造体13の回転軸を指すために使用され、「x−y面」という語はベースプレート11の面に実質的に平行な任意の面を指すために使用され、「アジマス(azimuthal)」という語はz−軸を中心としx−y面に平行な円運動を指すために使用される。ベースプレートおよびヒートシンクインペラ構造体の「底面」「上面」といった語は図5および図6に示される装置の配向に対応する。
【0050】
本書類では、「熱負荷」という語は、そこから又はそこに熱が伝達され得る単数または複数の任意の物体を意味すると解釈され得る。熱負荷の例は、廃熱を発生させ得る(CPUといった)装置、そのような装置にまたはそのような装置から熱を伝達させるために使用され得る(ヒートパイプといった)装置、ヒートポンプあるいは熱機関の「低温側(Cool side)」または「高温側(Hot side)」および、任意の組み合わせのおよび/または複数のそのような熱負荷を含む。本書類では、「熱接触」という語は、2つの物体の間で熱が容易に流れるならばその2つの物体は互いに熱接触しているということを意味すると解釈するべきである。例えば、熱流のメカニズムが伝導である場合、「熱接触」は、伝導熱流のための流路が実質的に低い熱抵抗で2つの物体の間に存在することを示す。しかし、これは単に、熱接触する二つの物体の例に過ぎず、この点で請求項にかかる主題が限定されることは無い。ここで留意すべきことは、二つの物体間における熱接触は、その二つの物体が物理的に接触している(つまり触れている)ことを必要としていないという点である。例えば、高い熱伝導率のヒートシンク用の糊(high−thermal−conductivity heat sink paste)の層によって隔てられている熱負荷とヒートシンクは、それらが物理的に接触していなくても熱接触している。本書類では、熱接触する2つの物体は、「熱結合している」とも呼ばれ得る。本書類でのこの議論を通して、他に定義されない限り、「ヒートシンク」という語は実質的に高い内部熱伝導率を提供する構造体および、(例えば、空気、空気以外の気体の混合物、純ガス、流動体、その他といった)周囲媒体へのまたは周囲媒体からの熱の伝達のための表面エリアを意味すると解釈されるべきである。
【0051】
図5および図6の特定の実施を参照すると、熱負荷からの熱は、熱負荷に面している面を通ってベースプレート11に入り、ベースプレート11およびヒートシンクインペラ構造体13の隣接している面と面との間の空気隙間(air gap)12に渡って、ベースプレートの内部領域を通って、回転するヒートシンクインペラ構造体の内部領域に流れ込み、そして、インペラファンを通って循環する空気に届けられる。ベースプレート11は、熱負荷が小さいエリアに集中しているおよび/またはそうでなければ熱負荷が均等に分布されている用途ではヒートスプレッダーのとしても機能する。ヒートシンクインペラ構造体13は高速で回転し得、ヒートシンクおよび遠心ポンプの両方として機能し得る。この特定の実施形態ではファンは必要ない。ここで、空気は回転の中心付近で下方向に引かれ、そしてインペラのブレードの間を通して容易に放出される。
【0052】
図5および図6に例示されるように、回転ヒートシンク構造体は、当該構造体が動作中にベースプレートに物理的に接触することを阻止する空気ベアリングによって支持される。ヒートシンクインペラ構造体は、ヒートシンクインペラ構造体に組み込まれた希土類磁石14およびベースプレート内に埋め込まれた第二の希土類磁石15(図16に示される)の磁気吸引の相互作用によってベースプレートの中央に位置され続け得る。これらの磁石は、装置を上下逆の配向で、あるいは任意の配向で、動作させることも可能にする。回転機構は、固定子鉄心16、固定子鉄心巻線17、および回転子歯18がベースプレートインペラアセンブリに直接組み込まれ得る可変磁気抵抗モータを含む。
【0053】
図7は、他の実施形態の等積曲線(Isometirc line)による図である。図7のモータアセンブリ46は、ヒートシンク構造体47の、周囲というよりはむしろ、内部に置かれ得る。他の実施形態では、モータアセンブリは他の場所に配置され得る。通常、ヒートシンク構造体の、ベースプレートに対する相対的な回転または他の運動を引き起こすために、モータアセンブリ46の固定子はベースプレート49に取り付けられ得、モータアセンブリ46の回転子はヒートシンク構造体47に結合され得る。
【0054】
図8は、シュラウド48を含む図7のアセンブリの等積曲線による図である。シュラウド48は気流をヒートシンク構造体47内におよびその周囲に方向付けるために配置され得る。従って、例えば、図8に示されるように配置されたシュラウド48は、気流をヒートシンク構造体47のフィンの間を通しながら、図示されるように上方への気流を減らし得る。シュラウド48はヒートシンク構造体47に直接に結合され得、また、動作中は、ヒートシンク構造体47と同様の方法で回転または運動し得る。しかし、他の実施形態では、シュラウドはカバーにより似ており、ヒートシンク構造体47に直接に取り付けられないことが有り得、また、動作中に運動しない場合が有り得る。シュラウド48がヒートシンク構造体47に熱結合している場合の実施形態では、シュラウドは、周囲環境への伝熱のための追加の表面を有利に提供し得る。
【0055】
図9は特定の実施に使用され得る空気ベアリングのタイプを示す。そのような静圧(外部より加圧されている)空気ベアリングは、New Way Air Bearings (Ashton, PA, www.newwayairbearings.com)によって販売されているもののようないくつかの空気ベアリングアセンブリのうちの一つを含み得る。図9の左下には、空気ベアリング「パッド」21があり、図9の右上には空気ベアリング「パック」22がある。入力ポート23は出力オリフィス24に圧縮空気を伝える。動作中、空気ベアリングパッドの接触面と空気ベアリングパックの接触面(それぞれ25および26)は、圧縮空気の薄いクッションによって隔てられる。圧縮空気はオリフィス24から、面25および26によって画定される狭い空気隙間領域と通って放射線方向に、流れ、そして空気ベアリングアセンブリの外周部にて排出される。図5および図6に例示される代用的な実施形態では、ベースプレート11は空気ベアリングパッドとして機能し、回転するフィン付きヒートシンク13は空気ベアリングパックとして機能する。回転するヒートシンクインペラ構造体とベースプレートの間の超低摩擦な境界面は、エアホッケーパックとエアホッケーテーブルの境界面に類似する。動作中、静止しているベースプレートと回転しているヒートシンクインペラ構造体を隔てる空気層12の厚さは5μm程度であり、これは市販の空気ベアリングの空気層の厚さと同程度である。
【0056】
図5および図6に例示される代表的な実施形態では、静圧空気ベアリングよりむしろ、動圧空気ベアリング(「自己圧力空気ベアリング(self−pressurizing air bearingと呼ばれる場合もある。)が使用される。動圧空気ベアリングの使用によって、圧縮空気の外部源の必要性を無くすことが可能である。そのような動圧ベアリングにおいて、回転構造体に伝えられる機械力のうちの小さい部分が回転面と静止面の間に要求される空気の膜を発生させるために使用され得る(G. W. Stachowick and A. W. Batchelor, Engineering Tribology, 3rd edition, Elsevier Butterworth−Heinmann, Burlington, MA, 2005を参照)。
【0057】
動圧ベアリングの動作は、乗り物が高速で走行している場合の湿った舗装路面上の車のタイヤのハイドロプレーニングに似ていると考えられ得る。低速では、タイヤが前方に向かって進むにつれてタイヤの前にたまった水は、一部はタイヤの周囲を流れ、また一部はタイヤのトレッドの溝を通って流れて、舗装路面とタイヤとが接触する領域から放逐されるのでハイドロプレーニングは発生しない。しかし、その乗り物が十分に高速で移動している場合、タイヤの前面に当たる水の流量は、そのタイヤの周囲をおよびそのタイヤのトレッドの溝を通って流れることが可能な水の量を、超える。このような条件下で、水のくさびの様な膜がタイヤのトレッドの下に形成され、路面からタイヤを引き上げる。物理的接触をしなくなった舗装路面とタイヤのトレッドでは、静止摩擦は激減する。従来の動圧ベアリングでは、同様の効果が、互いに対して相対的に移動する2つの面の間の低摩擦ベアリングを発生させるために使用され得た。
【0058】
図5および図6に例示される各実施形態で使用される動圧空気ベアリングのタイプは、「レイリーステップベアリング」と呼ばれることがあり、ベースプレート11の上面に刻まれた一連の半径方向溝 19(図6に表示)を含む。動作中、回転するヒートシンクインペラ構造体13の底面との粘性相互作用によって、空気は連続する溝の間のアジマス方向に送り出される(pumped)。連続する溝19の間のアジマス方向への気流は、静止面と回転面を隔てることを可能にし得る。回転の速度が十分に速い場合、一連の半径方向溝によって発生させられる静的空気圧はヒートシンクインペラ構造体を引き上げることおよび静止面と回転面を隔てることに十分であり得る。
【0059】
ベースプレートの上面に半径方向溝があるために、狭い空気隙間領域(narrow air gap region)のための面積が少し縮減される。このことは空気隙間領域の熱抵抗を上昇させ得るが、それは非常に小さな効果である。溝付きの動圧空気ベアリング構造体に発生した乱流はベースプレート11と伝熱構造体13の間の対流による伝熱を促進することが期待されることに留意することも重要である。
【0060】
空気ベアリングの一つの性質は、空気隙間の距離が非常に短くかつ自己調節性を有するということである。図5および図6に示される装置の配向を「表側を上にした(right−side−up)」配向で考えた場合、空気ベアリングによって加えられる上向きの力は磁場によって加えられる下向きの力および、それよりははるかに少ない程度で、重力(図5および図6に示される装置に使用される直径0.125インチ、長さ0.100インチの非常に小型の円筒形の希土類磁石においてでさえ、磁力は重力の約10倍強くあり得る)と均衡し得る。平衡空気隙間の距離は、空気隙間領域を通る空気の流量および磁力の強度によって決定される。極度に厳しい機械公差を保持することによって約5μmの空気隙間を維持しようと試みるかわりに、特定の実施形態は空気隙間の距離と空気隙間の圧力との間の内蔵型負帰還(built−in negative feedback)を信頼する。
【0061】
性質の観点から見れば、空気隙間が負帰還によって自動的に安定し得る方法は容易に説明され得る。より鋭く考えるべき点は、性質の観点から見て、空気ベアリングはきわめて高い剛性を提供し得ることである。空気ベアリングの有効「ばね定数」は、平衡空気隙間圧力は空気隙間の距離の極めて感度の高い感度関数(extremely sensitive function)であるため、非常に高くあり得る。ばね定数は、Fがヒートシンクインペラ構造体の底面に作用する圧力でありhが空気隙間の距離である場合のdF/dhとして定義され得る。特に、図5および図6に示される装置の場合、希土類磁石14および15を有する実施形態は、ヒートシンクインペラ構造体13の100グラムの有効重量を1.0キログラムにし得る。空気隙間の距離が、x−y面の磁場の大きさよりも小さい規模の程度(orders of magnitude)の場合、磁力は、z方向への小さな変位に対してはおおよそ一定であると考え得る。
【0062】
しかし、空気隙間の距離と圧力の間には、おおよそ3次の関係(approximately third−order relationship)がある。このことは、5±1μmの範囲にわたる変位におけるばらつきは、概ね±50%の圧力の変化を引き起こすはずであることを含意し得る。図5および図6に示される装置においては、これは、約5N/μmのばね係数に該当し得る。100グラムのヒートシンクインペラ構造体に作用する1gの加速力は約1Nである。従って、z軸に沿った10gの加速は、2μm程度の変位を引き起こすのみであり得ることが期待される。空気ベアリングは極めて低い摩擦性能を提供し得ることはよく知られているが、空気ベアリングによって実現され得る非常に高い機械的剛性は多くの用途で重要な役割を果たす。
【0063】
空気ベアリングの使用に関して成され得る、別の量的な評価は、ヒートシンクインペラ構造体を浮上させるために費やされ得る力(Power)に関する。静圧空気ベアリングにとって、空気に隙間領域の流量制限部分(flow restriction)を強制的に通過させるために費やされる力は、この流量制限部分に渡る圧力降下と体積流量の積であり得る。図9に示されるような静圧空気ベアリングの圧力および体積流量の等式は、下記の通りである(Whitney, W. M., Theory of the Air−Supported Puck, Amer. J. Physics, Vol. 32, No. 4, pp. 306−312, 1964参照)。
【0064】
【数11】
【0065】
【数12】
上記等式において、pは圧力、Φは体積流量、meffはパックの(磁力と重力の組み合わせに関連する)有効質量、gは重力加速定数、bはヒートシンクパックの外半径、aはオリフィスによって画定される概ね等圧の領域の半径、rは空気密度、hは空気隙間の距離、そしてμは空気の動的(または絶対)粘度である。図5および図6に示される装置に関し、我々は、下記の数式の圧力および体積流量を計算した。
【0066】
【数13】
【0067】
【数14】
従って、空気ベアリングを動作させるために必要な力は(例えば最も小型の市販のブラシレスモータファンの電力消費と比べても)下記の数式に示されるようにとるに足らない。
【0068】
【数15】
この小さな数字は、ヒートシンクインペラ構造体の下から逃げるために空気が流れなければならない距離と比べて空気隙間の距離が極めて短いという事実、および空気によって加えられる上向きの圧力が比較的大きい面積にわたって作用するという事実に起因する。
【0069】
動圧空気ベアリングの場合、電量消費の推測値は、理論的に計算可能だが実験を通してより正確に測定可能なベアリングの摩擦係数から直接的に決定される。実験を通して測定された、多種多様な動圧空気ベアリングのそのような摩擦係数は同程度のサイズのボールベアリングアセンブリの摩擦係数と比較して典型的には極めて低い(Fuller, D. D., 「A Review of the State−of−the−Art for the Design of Self−Acting Gas−Lubricated Bearings,」 Journal of. Lubrication Technology, Vol. 91, pp. 1−16, 1969参照)。従って、そのような動圧空気ベアリングの実施による電力消費は極めて低くあり得る。
【0070】
動圧の引き上げ力はヒートシンクインペラ構造体が回転しているときにのみ発生するため、特定の実施では、動圧空気ベアリングは起動と終了のための設備を含み得る。一つの実施において、ベースプレートとヒートシンクインペラ構造体の表面同士の間のすべり接触は、モータがONまたはOFFされる間の数秒間可能であり得る。特に特定の用途で、モータが通常の動作をしている間にスイッチONおよびOFFを繰り返すことが要求されない場合には、この技術は表面積が大きく軽量の負荷を支える動圧空気ベアリングに応用され得る。減摩コーティングおよび/または潤滑油膜の使用がそのような空気ベアリングシステムにおいて提供され得る。
【0071】
ベースプレートとヒートシンクインペラ構造体の表面同士の間で不定期に起こるすべり接触にともなう累積的な磨耗が目的に沿わない場合、起動や終了を行う間に代替の浮上力を提供するために使用され得る機構が導入され得る。例えば、図5および図6に例示される代表的な実施形態で、回転面に直交する磁力部品を提供するように固定子/回転子の歯の外形を構成することは一つの方法であろう。起動および終了の間に、大量の直流バイアス電流が固定子コイルに印加され浮上力を発生させ得る。そのような直流バイアス電流は、短い間隔の間に印加されるのみなので、固定子巻き線を過度に加熱することなくモータの通常のrms動作電流よりはるかに大きく成り得る。
【0072】
従来技術の観点から見れば、熱負荷とヒートシンク構造体の間に空気隙間を意図的に導入する考えは賢明ではないように見えるだろう。従来技術の多くは、隙間が全く無く、連続的で低熱抵抗の接合が成されるような方法で熱負荷と金属製のヒートシンクをつなぐための材料および技術に関心があるからである。そのような熱界面の技術は研究の活発な分野であり続けている。さらに、従来のHSPF装置における熱流に対する熱ボトルネック(thermal bottleneck)はフィン付きヒートシンクの表面を包む、境界層の空気の薄い断熱膜であることは良く知られている。したがって、空気の隙間を導入することは空気の非常に低い熱輸送特性のために非生産的であるという議論は、性質の観点から見て、説得的かつ/または明白であると考えられ得る。しかし、本書類に記載される特定の実施形態は、特に気体ベアリング構造体での伝熱の定量的な分析が行われる場合、気体ベアリングの独特の特性を利用して全く別の結論を導き出す。
【0073】
例えば、図5および図6に例示される特定の実施形態では、平面の空気隙間12にわたる熱抵抗は非常に低く(£0.03KW−1)なり得る。空気隙間領域の熱抵抗の絶対的な上限は、当該隙間領域にある空気は動くことが全く無いと過程することで計算することが可能である。特定の実施形態によれば、図5および図6に示されるシステムにおいて、ヒートシンクインペラ構造体の直系は3.6インチ(0.092m)であり、空気隙間の距離は5.0μmである。このような寸法の空気隙間にとって、熱抵抗(Rair gap)の最悪の場合の値は下記の数式によって与えられ得る。
【0074】
【数16】
これは既に論じられた市販の高性能CPUクーラーの熱抵抗の10分の1程度の低さである。当然のことながら、特定の寸法および測定でのこの例示は単に特定の実施の例であり、請求に係る主題はこの点で限定されない。
【0075】
さらに、静止しているベースプレートの上面と高速で回転しているヒートシンクインペラ構造体の底面の間の気流が激しくせん断される(violent shearing)ために(Tennekes, H. and Lumley, J. L., A First Course in Turbulence, The MIT Press, Cambridge, MA, 1972参照)、動圧空気ベアリングの半径方向溝によって発生させられた対流のために(Faria, M. T. C. and Andres, L. S., 「On the Numerical Modeling of High−Speed Hydrodynamic Gas Bearings」, Journal of Tribology, Vol. 122, No. 1, pp. 124−130,2000を参照)、および/または、空気隙間領域における乱流および/または対流を発生させるように適応された表面隆起といった追加の構造体のために、そのような空気隙間領域の熱抵抗は、実際に、顕著により低くあり得る(例えば0.01K/W未満)。
【0076】
熱管理技術の分野における従来技術による教示は、(例えばヒートシンクと熱負荷の間の)低熱抵抗接合を提供するための空気隙間やそれに相当するような構造体の使用に触れていない。既に書かれているように、この理由の一つは明白であると思われる。つまり、水や油といった一般に入手可能な流動体は、気体の媒体と比べてはるかに優れた熱輸送特性(例えば100倍の高さの熱伝導率)を有するということである。従って、そのような流動体媒体は、静止している熱伝導構造体から回転している伝熱構造体への熱の輸送といった用途に適していると憶測され得る。さらに、従来技術では、そのような用途に気体媒体を使用することでもたらされる他の数多くの利点(例えば、高速回転における極めて低い摩擦損失)によって低熱伝導率の明白な不利な点がどの程度相殺されるかを予期していない。
【0077】
本書類に記載される実施形態の目的は、液体の伝熱界面を使用することに伴い得る数多くのかつ非常に深刻な欠点を回避することである。最も深刻な欠点のうちのいくつかは、そのような液体の絶対粘度は典型的には空気の絶対粘度の1000倍から10000倍程度であるという事実と関係している(Fox, R. W. and McDonald, A. T., Introduction to Fluid Dynamics,4th edition, John Wiley & Sons, New York, 1992を参照)。その結果、伝熱流動体の粘性せん断(viscous shearing)が実質的な熱量を生み出し得る。これらの摩擦損失は、伝熱構造体を高速で回転させようとするときに特に大きいが、伝熱構造体を高速で回転させようとすることは、回転する伝熱構造体と、空気といった周囲の媒体の間の低熱抵抗の実現にとって必要不可欠であり得る。高い摩擦損失は、電力消費の観点から見ても非常に有害であり得る。
【0078】
任意のそのような伝熱液の使用によって、いくつかの現実的な問題も避け得る。それらのうちの第一は、流動体の閉じ込めである。流動体に対して放射方向に作用する遠心ポンプ力(centrifugal pumping force)、(例えば上下逆の配向といった)任意の配向でそのような冷却装置を動作させるおよび/または保存する必要性、および流動体の(例えば伸縮が繰り返されることといった)熱サイクルに関連する事柄の全てが流動体の封じ込めの問題の要因となることが考えられる。流動体の漏れを低減する可能なアプローチは、伝熱流動体の粘度を高めることおよび/または一つ以上の回転シールを含むこと、を含み得る。伝熱流動体の粘度を高めることは、摩擦熱および電力消費の観点から見て望ましくあり得る。回転シールを含むことは、コスト、複雑さ、信頼性、耐用寿命、およびさらなる摩擦損失の観点から見て、望ましくなくあり得る。さらに、回転シールの実施は、広い温度範囲にわたって作動する必要性のために、複雑化し得る。さらなる難点は、熱分解、汚染物質が入ってくること、酸化、その他のために、そのような流動体が時間の経過とともに劣化する傾向を持つということであり得る。最後に、そのような液の粘度が持つ非常に高い温度依存性は、例えば、非常に高い始動トルクが必要であること、あるいは低温で流動体接合しなくなることといった、深刻な現実的問題をも引き起こし得る。
【0079】
既に記載されたように、HSPF装置の構造の重要な欠点は高い電力消費の問題である。伝統的な空冷熱交換器では、ファンの目的は、空気を強制的に熱交換器のフィンの間を通って流れさすことである。ファンのモータの電力消費と比べて、強制的に空気を熱交換器のフィンの間を通って流れさすのに必要な力の量(圧力と体積流量の積)は極めて小さい。既に示されたように、典型的なCPUクーラーでは、ファンのモータによって発生させられた機械力の2%のみがこの目的のために使われ得る。ファンのモータによって発生させられた機械力のうちの残りの98%はファンのブレードの粘性抵抗に非生産的に費やされる。特定の実施形態では、力のこの非生産的な消費は、実質的に低減されるかあるいは完全に無くなる。空気をフィン付きヒートシンク構造体を通して動かすことでなく空気を通してフィン付きヒートシンク構造体を動かすことで、モータによって伝えられる機械力の実質的により多くをまたは実質的に全を、ヒートシンクのフィンと周囲空気の間の相対的な運動を発生させるという目的のために使用することが可能になる。従来のCPUクーラーといった装置で使用されるファンの極めて低い機械効率は、実施形態によるそのような特定の装置の構造は、電力消費の顕著な低減、雑音の低減および/または、はるかに高い体積流量での動作を可能にし得るということを示唆する。以降、我々は、本書類に記載される(ファンの低い機械効率の問題を実質的に緩和する)実施形態のそのような側面を「直接駆動による優位性」と呼ぶ。
【0080】
ある実施形態の別の重要な目的はHSPF装置の構造に本来的に備わる境界層効果に伴う問題を緩和することである。例えば、従来のHSPF装置では、圧力勾配力および粘性抵抗力の観点が流れのナビエ・ストークス方程式の基準となっている(Schlichting H., Boundary Layer Theory, McGraw−Hill, New York, 1979を参照)。既に言及されているように、そのような境界層は、ヒートシンクのフィンの表面に密着する空気の断熱層として形成されることが可能である。特定の実施形態で、ヒートシンクのフィン、およびヒートシンクに粘着する境界層の空気のエンベロープ(envelope)は、加速する(高速で回転する)基準系(frame of reference)内に配置され得る。そのようなヒートシンクインペラ構造体の、非慣性の回転基準系では、境界層にある空気の体積要素(dV)は、dFが空気の体積要素に作用する力で、rが空気の密度、wがヒートシンクインペラ構造体の角速度、rが半径方向位置である場合のdF=rw2rdVの外向きの遠心力の影響を受け得る。この遠心ポンプ力は、非回転基準系の場合と比べて、境界層の厚さを顕著に(例えば10分の1に)縮減し得る方法で流動場を歪ませる。
【0081】
境界層を薄くするこの効果の副産物(ramification)は伝熱に関して非常に重要である。既に記されたように、従来のHSPF装置では、フィン付きヒートシンクと周囲空気の間の温度差は、境界層にわたる温度降下によって殆ど完全に説明され得た。換言すれば、境界層は、熱負荷から周囲空気に熱を輸送するために必要な一連のステップにおいて、熱ボトルネックとして機能し得る。境界層の熱抵抗は、境界層の厚さに概ね比例し得る。従って、上記されたような遠心ポンプ効果は、そのような境界層の熱抵抗をおおよそ10分の1に低減する。以降、我々は、本書類に記載される(加速する基準系に境界層を置くことによって境界層の熱抵抗の長年の問題が緩和され得る)実施形態のそのような側面を「境界層薄化効果」と呼ぶ。
【0082】
高速の回転速度および/または並進速度において重要であり得るさらなる効果は層流から乱流(例えばヒートシンクインペラの隣り合うフィンの間の空気の流れ)への移行に関する。例えば、そのような伝熱構造体の角速度が、そのような伝熱構造体近くの流動場の部分にわたって乱流を引き起こすために十分に早い場合、そのような伝熱構造体と周囲の媒体の間の熱抵抗の低減が実現され得る。そのような乱流の効果は、伝熱構造体と熱伝導構造体の間でも熱抵抗の低減を引き起こし得る。特定の実施形態では、そのような乱流の効果は本書類に記載される実施形態を含む熱交換器の性能を向上させるために適応され得る。以降、我々は、本書類に記載される(乱流の状況での伝熱構造体またはそのような伝熱構造体の部分の動作によって伝熱が層流の場合と比べて向上する)実施形態のそのような側面を「乱流効果」と呼ぶ。
【0083】
図5および図6に例示される代表的な実施形態は、以下のもののうちの1つ以上を含み得る装置の構造の、多くの可能な実施形態のうちの一つであり、それぞれが上記された、「直接駆動による優位性」および/または「境界層薄化効果」および/または「乱流効果」の利益をもたらす。「装置の構造」という上記記載はいかなる形であれ限定を意味したものでないということに留意すべきである。反対に、「装置の構造」という上記記載は、あとに続く代替の実施形態の記載のための基準点として本書類に提供されている。
1.熱伝導構造体(例えば代表的な実施形態の「ベースプレート」)
2.伝熱構造体(例えば代表的な実施形態の「ヒートシンクインペラ」)
3.熱伝導構造体と伝熱構造体にはさまれた、気体で満たされた領域
4.伝熱構造体に回転および/または並進を与えるように適応された一つまたは複数の要素
5.伝熱構造体の回転軸を制御するように適応された一つまたは複数の要素
7.熱がそこにまたはそこから伝達される周囲の媒体
【0084】
空冷熱交換器のための改良された装置の構造の実施形態がこれまで記載されてきた。熱負荷からの熱は、(例えば熱伝導性のグリースといった)相応しい熱界面材料を通る伝導によってベースプレートに伝えられ、このベースプレートは、気体ベアリング界面全体から熱がフィン付きヒートシンクおよびインペラの両方として機能する構造体へ伝えられるヒートスプレッダーとして機能する。
【0085】
使用される熱交換器の装置の構造に関わらず、熱源とヒートシンクの間の低熱抵抗接合を達成するための熱界面材料を使用することは従来技術で広く実施されている。通常、そのような熱界面材料は、通常、熱伝導性のグリース、糊、接着剤、あるいは、適合性が高く熱伝導性を有する材料の薄いシートの形態を取る。そのような熱界面材料がないと、2つの連続的な表面が合わさって接合を形成する場合、凹凸や平面でないことといった表面の不規則性のために、実際の機械的接触が達成されるエリアは、接合の幾何学的エリアの約1%のみを含み得る。熱界面材料の目的は、熱界面材料が無い場合に比較的高い熱伝導率を有する固体、半固体、あるいは液体の材料を一つ以上使用すると存在するであろう隙間を埋めることにある。
【0086】
任意のそのような熱接合は、温度の関数としてのヒートシンクおよび熱源の両方の寸法(Dimension)における変化に対応しなければならない。この理由により、熱界面材料が無ければ存在したであろう隙間の全体積と単純に等しい量の熱界面材料を使用することは一般的に不可能である。むしろ、周囲の材料における寸法の変化を相殺する機械的変形が可能な、幾分より厚い熱接合を作り出すために過度の熱界面材料の十分な量を使用する。適切な流動学的特性および潤滑特性を持つ既知の材料は典型的には比較的低い熱伝導率を有するために、向上した特性を持つ熱界面材料の研究は、研究の盛んな分野であり続けている。
【0087】
従って、本発明の別の実施形態がここで、そのような熱界面材料の必要性を無くすことあるいは低減することに部分的に向けられた図10を参照して記載される。図10の代表的な実施形態では、図5および図6に示されたように、ヒートシンクインペラ41は集積回路パッケージ42である熱負荷のきわめて近傍に、熱界面材料およびベースプレートの必要性なしに置かれる。ヒートシンクインペラ41は本書類で一般的に記載されているように、伝熱構造体の1つのタイプである。別の実施形態では、別の伝熱構造体が使用され得る。上記されるように、ヒートシンクインペラ41は気体ベアリングによって支持され得る。熱源とヒートシンクインペラ構造体の間の低熱抵抗界面は、熱源とヒートシンクインペラ構造体の間の、気体で満たされた隙間領域43を有する。図10は、恒例により、多重はんだ接合45によって回路基板44に結合される、そのような集積回路を更に例示する。当然のことながら、多岐にわたる集積回路以外の熱負荷も同じ方法で冷却されることが可能である。同様に、集積回路パッケージ42の表面、ヒートシンクインペラ41の表面あるいはそれらの両方は、図6を参照して上記されたように、インペラへの上向きの力を助長するため、1つ以上の溝または他のざらつきのある表面を画定し得る。
【0088】
上記されたように、多岐にわたる手段が、ヒートシンクインペラ構造体41に回転または他の運動を与えるために使用されることが可能である。一般に、本書類に記載されるように、いくつかの例では伝熱構造体はモータによって回転させられるかあるいは運動させられる。従って、ヒートシンクインペラ41のような伝熱構造体はロータとして機能するかあるいはロータに結合される。対応する固定子構造体はモータを駆動するために提供され得る。1つの実施形態で、ヒートシンクインペラ構造体に回転を与えるための手段は、集積回路パッケージ42に直接組み込まれ得る。そのような手段は、駆動回路、固定子コイルといった電気機械アクチュエータ、および、(本書類に記載されるように)実質的に一定の回転軸を維持するように適応された1つ以上の部品を含み得る。例えば、固定子構造体の全部または一部を形成するコイルは、集積回路パッケージ42内に置かれ得、かつ、例えば、パッケージ内の集積回路チップに、またはパッケージ内のエポキシに、埋め込まれ得る。モータを動作させ、ヒートシンクインペラを動かすために使用される駆動回路はパッケージ42内の集積回路に組み込まれ得る。別の実施形態では、ヒートシンクインペラ構造体に回転または動きを与えるための手段の一部または全部は、集積回路パッケージの外部の1つ以上の部品に組み込まれ得る。別の実施形態では、ヒートシンクインペラは誘導モータの回転子として機能し得、従って、永久磁石材料および/または高透磁率材料をヒートシンクインペラ構造体に組み込む必要性を無くす。
【0089】
以下に、数多くの代替の実施形態が記載され、それらの実施形態では、1つ以上の上記された要素が、図5、図6、および図10の代表的実施形態で示された要素と異なり得る。これらの代替の実施形態は包括的であることが意図されておらず、他の変形例が起こり得る。
【0090】
図5および図6に示される代表的な実施形態では、熱伝導構造体11および/または伝熱構造体13は、MIC6(登録商標)(Alcoa社)アルミニウム合金から製造され得る。しかし、アルミ二ウムの他の合金、アルミ二ウム以外の金属、アルミニウム以外の金属の合金、あるいは非金属の材料が、請求項に係る主題から逸脱することなく、使用され得る。材料の特徴は、高い熱伝導率、低い密度、高い剛性、および、機械加工、鋳造、研磨その他といった製造の観点からみて好ましい属性を含む。少量では、そのような構造体は、アルミニウムの開口部のない(solid)ブロックから機械加工され得る。大量の生産のためには、そのような熱伝導構造体および/または伝熱構造体は、1つ以上の表面がその後に半精密プランニング/研磨作業(semi−precision planning/polishing operation)を受ける一体構造のダイキャストアルミニウム部分として製造され得る。ダイキャストアルミニウムは低コストの製造を可能にし得、また、特に高い熱伝統率を有する合金の作成を可能にし得る。インベストメント鋳造、鍛造、押し出し加工、延圧、引き抜き、ろう付け、化学研磨、その他といった他の製造プロセスは、請求項に係る主題から逸脱することなく、熱伝導構造体を製造するために部分的にまたは全体的に使用され得る。請求項に係る主題から逸脱することなく、製造には、フライカッティング、研削、研磨、その他をこれらに限定されることなく含む仕上げ作業も伴い得る。
【0091】
機械加工、ダイキャスティングまたは他の技術で製造されるかを問わず、そのような伝熱構造体では、テーパ状の横断面を持つフィンを使用することが有利であり得る。例えば、ダイキャスティングの場合、垂直(z)方向にテーパするフィンはモールドからキャスト部分が取れやすくなり得る。機械加工された伝熱構造体の場合、テーパ付きのエンドミルでの製造はよりよい仕上げを提供し、かつ、テーパなしのエンドミルの場合と比べて切りくずの排出を容易にし得る。それに加えて、作業中に内部の熱流束がz方向において単調に低下した場合、最適かされた伝熱構造体は、フィンのz方向へのテーパリングをある程度採用し得、これによって、当該採用がなければ重量と抵抗を上昇させたであろう不要で大量すぎる材料を無くす。図5および図6に示されないが、ヒートシンクインペラの円盤型の基部と交差する各フィンの基部で隅肉(フィレット)が使用され得る。隅肉の使用は機械的強度を向上させ得、また、フィンと、そのような伝熱構造の円盤型基部の間での熱の流れを容易にし得る。そのような伝熱構造体は、機械的剛性を向上させ得る桁、梁、ガセット板、隅肉、その他といった構造体をも組み込み得る。
【0092】
図5および図6に示される代表的実施形態で、熱伝導構造体は、正方形の設置面積を有するものとして示されている。しかし、請求項に係る主題から逸脱することなく多くの他の形状を使用することが可能である。図5および図6に示される代表的な実施形態では、伝熱構造体は円形の設置面積を有する。しかし、正多角形といった多くの他の形状を使用することが可能である。各実施形態で、伝熱構造体の回転の中心は熱伝導構造体の中心と一致するが、これは必須条件ではない。
【0093】
図9に示されるような市販の空気ベアリング部品の表面仕上げ仕様は、より粗い表面が使用され得るが、約0.4μm rms(二乗平均平方根)の粗度であり得る(Air Bearing Application and Design Guide, www.newwayairbearings.com, New Way Air Bearings, Ashton, PAを参照)。ここで、熱伝導構造体および/または伝熱構造体は、MIC6(登録商標)(Alcoa社)のような精密鋳造アルミニウムプレートから機械加工され得る。MIC6(登録商標)の表面粗度仕様は最大値で0.5μm rmsであり、その典型的な値は0.3μm rms以下である。MIC6(登録商標)のさらなる特徴は、良好な機械加工性および高い熱伝導率(142Wm−1K−1)である。
【0094】
図5、図6、および図10に示される代表的実施形態で、そのような熱伝導構造体および/または伝熱構造体の表面はコーティングを施されていないことがあり得る。しかし、そのような熱伝導構造体および/または伝熱構造体の1つ以上の表面には、減摩性、対磨耗性、防食性、高い放射率、その他といった望ましい特質を与えるために、および/または研磨といった製造工程の、1つ以上の側面にとってより相応しい外側の面を提供するために、コーティングを施されることが可能である。
【0095】
図5、図6、および図10に示される代表的実施形態で、伝熱構造体のフィンは、垂直に突起し従来のインペラの羽根と同様の方法で機能するように設計された、曲げられ、湾曲したブレードの形態を取る。しかし、幅広い他の構造を請求項に係る主題から逸脱することなく使用することが可能であり、他の構造とは、湾曲していないブレード、曲げられていない(すなわち、半径方向溝の)ブレード、前方に曲げられているブレード、後方に曲げられているブレード、回転面に直交する面で湾曲(curvature)を含むブレード、回転軸に沿う高さが半径方向位置のように(as of radial position)一定でないブレード、横断面エリアが高さおよび/または半径方向位置の関数として可変なブレード、およびこれらの各種の組み合わせを、これらに限定されることなく、含む。複数のまたは全てのフィンにかかる補強部材を追加することは、ある環境下では推奨され得る。しかし、ブレードの代わりに、フィン、ピン、支柱、羽根、流路(channel)、あるいはダクト、またはこれらの組み合わせといった他の構造体を使用し得、また、任意のそのような構造体は、スロットが付けられ、孔を開けられ、ざらつきを付けられ、部分に分けられ、ジグザグにされ、また、その他のことをされ得る。さらに、これらの突起する表面のうちのいくつかは伝熱構造の他の部分と相互作用する伴流渦の発生に適応され得る。
【0096】
回転するそのような伝熱構造体が周囲の媒体に動きを与える度合いは、種々の用途において実質的に異なる。例えば、そのような伝熱構造体が構造においてインペラと同様の場合、そのような伝熱構造体の回転は、インペラと同様の方法で周囲の媒体に実質的な動きを与え得る。他方で、ある用途においては、回転する伝熱構造体が平坦な円盤または、滑らかな上面を持つ他の形状の形態を取るように、ブレード、フィン、支柱、およびその他といった特徴を完全に省略することが望ましい場合があり得る。
【0097】
主な目的が(例えば低熱抵抗といった)熱交換性能である場合、そのような伝熱構造体の回転に関連する遠心ポンプ効果の、圧力特性/流量特性は、同一であり、特に重要ではないと考えられ得る。しかし、他の用途では、熱交換器の良好な性能および、流入空気流および/または流出空気流を、ダクトおよび/または他のそのような流れを制限するものを通して、強制的に流す能力の両方を獲得することに設計および最適化は向けられ得る。
【0098】
例えば、我々は、数百あるいは数千のコンピュータを収容する大きな部屋の形態を取る商業用データセンターまたはサーバーファームといった冷却の用途を考え得る。これらのコンピュータのうちのそれぞれは、周囲空気を取り込み、温度上昇したその空気を部屋に戻す。部屋の空気は大型の集中空調システムによって低温に維持され得る。そのような空調システムは大量の電力を消費し得る。代わりに、図5および図6に示されるような装置の構造が、空調システムを使用せずに、そのような熱負荷から廃熱を効率的に除去し外部の空気へと処理するために適応され得る。
【0099】
図11に示されるような熱管理の仕組みでは、外形が流入ポート31および流出ポート32を画定するマニホールド30にヒートシンクインペラは囲まれ得る。そのような流入ポートはそのようなヒートシンクインペラの回転の中心の上に置かれ得、そこで空気はインペラ内に吹き下げられ得る。(例えば、建築物の北側の場所から取り込まれた比較的低温の空気といった)外部の空気は、そのような流入ポートに直接的に取り付けられた空気ダクト33を通って送られ得る。そのようなインペラによって半径方向に排出される過熱された空気はそのような流出ポートに導かれ得る。そのような流出ポートは、(例えば建築物の屋根の上にあるような)外部の空気に排出する第二のダクト34に取り付けられ得る。そのような仕組みでは、外部の空気が建築物36に入ることは実質的にない場合が有り得、また、熱負荷35によって発生させられた熱も極めて少量が建築物36入るのみである場合が有り得る。これによって、そのような設備で発生させられた大量の排熱をそのような建築物の空調システムで処理する必要性が実質的に低減され得、または無くなり得る。
【0100】
そのような熱管理の仕組みは、図5に示されるようなインペラは商業目的の加熱、換気、および空調(HVAC)システムで広く使用される遠心ブロウに匹敵する(あるいは必要であればそれを超える)比較的高い静圧を発生させ得るという事実を利用する。典型的なHVACブロウは図12に示される。上記された熱管理システムと同様に、典型的なHVACブロウは、空気配送器(air delivery)および排気ダクトにそれぞれ直接取り付け可能な流入ポート39および流出ポート40を外形が画定するマニホールド38に囲まれたインペラ37の形態を取る。上記の熱管理の仕組みは、そのような空冷熱交換器の熱抵抗は伝統的なHSPF装置の熱抵抗よりはるかに低いという事実も利用する。このずっと低い熱抵抗は、外部の空気が室温よりも(例えば20°Cと比べて40°Cというように)十分により暖かい場合、そのような空冷熱交換器は、熱負荷の温度を(例えば80°Cといった)あらかじめ決められたある値より低く維持するという意図された機能を依然として果たす、ということを意味し得る。いうまでもなく、そのような熱管理の仕組みは、発電所、工場、コンピュータデータセンター、コンピュータサーバファーム、商業用建築物、研究所、事務所、公共の空間、住宅用居住施設、輸送車両、機器または機械をこれらに限定されることなく含む1つ以上の熱負荷を収容する任意の建築物、エンクロージャ、あるいは装置により一般的に適応され得る。
【0101】
特定の実施形態で、本書類に記載される実施形態を含む熱交換器の熱抵抗は伝熱構造体の回転および/または並進の速度を調整することにより調整され得る。さらなる実施形態で、調整可能な熱抵抗を有するそのような熱交換器は温度制御システムの一部を含む。
【0102】
CPU冷却といった用途では、冷却システムの流入孔に取り込まれた空気は、かなりの量の、ちり、微粒子物質および/または他の汚染物質を含み得、それら含まれるもののうちの一部は、フィン付きヒートシンクの表面に堆積され得る。結果として、HSPF構造に基づく従来のCPUクーラーの性能は時間の経過とともに低下し得、結局CPUの誤動作を引き起こし得る。伝熱構造体が高速で回転する場合、従来技術に無いさらなる利点がちりの体積によって大幅に低減され得る。ちりが体積する度合い分、そのような伝熱構造体の高速回転の方向は時々、短時間の間逆方向にもなることが可能であり、これによって「自己洗浄」運転モードを提供し得る。そのような機能は、(例えばコンピュータのオペレーティングシステムといった)ソフトウエアか(例えばブラシレスモータ駆動回路といった)ハードウエア、あるいはそれらの両方によって制御することが可能である。熱交換器の性能が伝熱構造体での縮合および/または氷生成によって低下する用途では、高速で回転する伝熱構造体を使用することでそのような問題は大部分が解消され得る。最後に、そのような伝熱構造体が接着剤、ヒートシンク用の糊、その他ではなく磁石によって所定の位置に保持される場合、このことは、望まれる場合には(例えば、超音波浴での洗浄といった)極めて完全な洗浄のためのフィン付き伝熱構造体の手軽な取り外しを容易にし得る。
【0103】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態では、隙間領域12および43はそれぞれ空気で満たされ得る。しかし、そのような隙間領域は気体の任意の混合物、あるいは、純ガスを含み得る。例えば、空気の代わりにヘリウムを使用することは、ヘリウムは空気の約6倍の熱伝導率を有するため、いくつかの用途では価値があるであろう。それに加え、そのようシステムは大気圧の下またはそれに近い圧力の下で動作する必要が無い。いくつかの用途では、大気圧より高いまたは低い圧力下での動作はある有利点を生み出し得る。
【0104】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態で、熱伝導構造体11と伝熱構造体13の間の空気隙間12の形状と、ICパッケージ42とインペラ構造体41の間の空気隙間43の形状は、直径に対する高さの比が非常に小さい円筒の形状であり得る。しかし、請求項に係る主題から逸脱することなく隙間領域の(例えば非円筒形の回転体といった)別の外形を使用し得る。例えば、熱伝導構造体と伝熱構造体は、実質的に同軸の外形を持つように構成されることが可能であり、その場合は、隙間領域は概ね円筒シェルの形状を有するように記載され得る。位置の関数として実質的に一定でない距離によって隔てられる熱伝導構造体および伝熱構造体によって画定される隙間領域も使用され得る。
【0105】
特定の実施形態では、そのような隙間領域は実質的に低熱抵抗を提供するために適応され得る。この文脈で、「実質的に低熱抵抗」とは、熱伝導構造体と伝熱構造体の間の熱抵抗がある動作条件下で前記伝熱構造体と周囲の媒体の間の熱抵抗よりも実質的に低いということを意味する。例えば、図5を参照すると、ヒートシンクインペラが1000rpmで回転する場合、ヒートシンクインペラとベースプレートの間の熱抵抗は前記ヒートシンクインペラと周囲空気の間の熱抵抗よりも実質的に低くあり得る。特定の実施形態では、そのような隙間領域は、伝熱構造体と熱伝導構造体の間の実質的に低い摩擦を提供するように適応され得る。この文脈で、「実質的に低摩擦」とは、熱伝導構造体と伝熱構造体の間の摩擦がある動作条件下で前記伝熱構造体と周囲の媒体の間の摩擦よりも実質的に低いということを意味する。例えば、図5を参照すると、ヒートシンクインペラが(例えば空気抵抗のために)1000rpmで回転する場合、ヒートシンクインペラとベースプレートの間の(例えば回転に対する抵抗といった)抵抗量は前記ヒートシンクインペラと周囲空気の間の抵抗量よりも実質的に低くあり得る。
【0106】
図5、図6、および図10に示される代表的実施形態で、公称の空気隙間分離距離は約5μmであり得る。しかし、この隙間の距離が、装置のサイズ、動作環境、その他によって、より小さくあるいはより大きくなる状況がある。例えば、磁気メモリ装置のある種類で使用される気体ベアリングに匹敵するサブミクロンの隙間距離を使用することが可能であり得る。気体で満たされた隙間領域で対流による混合を発生させるように適応された構造体を含むことは、大幅により大きな空気隙間の距離の使用を可能とし得る。従って、本書類の代表的な実施形態で挙げられた5μmの分離距離は説明目的のみにあり、かつこれをかたくなな方針または限定と解釈するべきはない。
【0107】
図5および図6に示される代表的な実施形態で、熱伝導構造体11と伝熱構造体13の間の界面(interface)は動圧空気ベアリングとして構成され得る。ここで、代表的な実施形態に例示されるレイリーステップベアリングのかわりに多種多様な動圧気体ベアリング設計を採用し得る。例えば、上に例示される特定の実施形態は、それぞれが平坦な底部、垂直な壁、および半径方向溝の配向を持つ6つの同一の溝を使用し得る。しかし、これらの仕様はどれも、請求項に係る主題から逸脱することなく変更され得る。任意のそのような動圧気体ベアリングを使用すると、そのような熱伝導構造体の表面に溝を配置する代わりに、回転する伝熱構造体の表面にそのような溝を配置することが可能であり、あるいはそのような溝を両者の表面に含ませることが可能である。最後に、接線方向の溝、半径方向溝と接線方向の溝の組み合わせ、または、溝付きの表面ではなく(例えばエッチングを受けた)ざらつきのある表面、といった、放射上の溝を含む構造体以外のもの、あるいはこれらの任意の組み合わせが使用され得る。
【0108】
静圧(外部より加圧されている)空気ベアリングも使用可能であろう。そのような動圧気体ベアリングまたは静圧気体ベアリングは、隙間領域に微粒子または汚染の他の原因が侵入することを防ぐために1つ以上のフィルタをも備え得る。磁気浮上ベアリングまたは静電浮上ベアリングも使用され得る。最後に、高流速静圧ベアリングは、そのような装置によって提供される熱処理の大部分が狭い隙間領域を通る気流と関連するように、実施可能であろう。
【0109】
別の実施形態で、1つ以上の引き上げ表面(lifting surfaces)(固定または可変のエーロフォイル)が、正のz方向への引き上げ力または負のz方向への下向きの復元力を生み出し得る回転伝達シンク構造体に組み込まれ得る。また別の実施形態では、回転子/固定子アセンブリは、正のz方向への引き上げ力または負のz方向への下向きの復元力として使用可能でz軸に沿った実質的に非ゼロの磁気分力を発生させるように設計され得る。また別の実施形態では、負のz方向への下向きの復元力は、外部のポンプ、回転伝熱構造体と一体かつ当該構造体から電力供給を受けるポンプ、またはそれら両方のポンプ、によって真空状態が発生させられ得る「真空圧密(vacuum preloading)」を使って、熱伝導構造体と伝熱構造体の間の領域が実質的に真空になることによって発生させられ得る。最後に、さらなる実施形態では、隙間の距離は実質的にゼロであり、伝熱構造体の表面と熱伝導構造体の表面の間には、潤滑剤および/または減摩コーティングが全面的にまたは部分的にこれらの表面のうちの、両方に施され、どちらか一方に施され、またはどちらにも施されていない、すべり接触が存在する。
【0110】
特定の用途の要件に応じて、隙間の距離は(例えば、図5および図6に示される代表的な実施形態におけるように、伝熱構造体に作用する磁力と圧力のバランスによって)受動的に調節され得、(例えば隙間の距離用のセンサと隙間の距離を変更するように適応されたアクチュエータを使用して)能動的に調節され得、あるいは調節されない(その場合、いかなる特定の方法によっても、隙間の距離は制御されることも、調節されることも、事前に決められることも無い場合が有り得る)こともあり得る。異なる調節の仕組みの組み合わせも使用し得る。隙間の距離を決定する1つ以上の構成部分または規定要因も調整可能であり得る。例えば、図5および図6に示される代表的な実施形態では、希土類磁石(14および15)の一方または両方は2つの磁石の間の距離(従って吸引力)を調整するための提供を含むことが可能であろう。一つの永久磁石と、高透磁率磁性鋼といった磁性を有する材料が使用され得る場合、そのような調整はネジ式の鋼のプランジャーの形態で実施されることが可能であろう。
【0111】
気体ベアリングシステムが、熱伝導構造体と伝熱構造体の(例えば起動時および終了時の)低回転速度での分離を維持するために補助の引き上げ力を提供する機構を必要とするときは、多種多様な実施が可能である。代わりに、そのような引き上げ力は継続的に加えられ得、高回転速度で加えられ得る代わりの下方への力によって対抗され得る。可能な実施は、動圧フォイル/気体ベアリングの使用(Agrawal, G. L., 「Foil/Gas Bearing Technology, An Overview,」 American Society of Mechanical Engineering, Publication 97−GT−347, 1997を参照)、外部より加圧される気体ベアリング、電磁引き上げ力を提供するための(モータに組み込まれたおよび/または独立した構造体として実施される)手段、(例えば導電性金属でできた伝熱構造体といった)導電構造体に、過度な渦電流を発生させる過渡磁場をレンツの法則に従って印加することによって発生させられる過度の反発力(Griffiths, D. G., Introduction to Electrodynamics, Prentice−Hall Inc., Englewood Cliffs, NJ, 1981を参照)、回転速度の上昇および/または下降に伴って自動的に利用可能になる又は収納される、遠心的に起動される補助のベアリング、ブシュ、あるいは他の構造体、および、多種多様な自動または手動で起動される機械的装置、任意の均等な構造体あるいはそれらの組み合わせの使用を、をこれらに限定されることなく、含む。
【0112】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態で、伝熱構造体13またはインペラ41の、それぞれ熱伝導構造体11またはパッケージ42に対する相対的な並進を提供するように適応された機構が無い場合があり得る。図5、図6,および図10に例示される代表的な実施形態で、伝熱構造体に回転を与えるように適応された機構は二相、二重突極、同期、可変リラクタンスモータを含み得る。そのようなモータは、それぞれが、熱伝導構造体11および伝熱構造体13に直接的に組み込まれた4つの固定子鉄心16、4組の固定子巻き線17、および4枚の回転子歯18を持ち得る。固定子鉄心および固定子歯は、実質的に高い透磁率を有し、耐食性があり、良好な加工性を有するAISI416ステンレス鋼から製造され得る。各相は、逆の極の固定子ペアを含み得、また、2つの相を励磁するために相から約90度はずれた交流波形使用し得る(Chapman, S. J., Electric Machinery Fundamentals, 4th edition, McGraw−Hill, New York, 2005を参照)。この設計の有利な点は、製造という観点からみた場合の、単純さである。しかし、この特定のモータの構造はいくつかの欠点を有する。すなわち、自己起動型でないこと(例えば、静止状態にある場合に、回転子に作用する正味のトルクが常にゼロである回転子の位置が4つある)および、特にそのようなモータが高速(高い励磁の頻度)で動作している場合に、薄層状ではない固定子鉄心および回転子のブレードを使用が使用されていると実質的に大きな渦電流損失が生じる、ということである。
【0113】
しかし、当然のことながら、これらは、固定子および回転子が特定の実施形態に従ってどのように製造され得るのかの単なる例にすぎず、また、現在の技術によって製造されたものであれ未来の技術によって製造されるものであれ、他の回転子および固定子が、請求に係る主題から逸脱することなく使用され得る。例えば、他の特定の実施では、回転子は、(例えばN極部分とS極部分が交互に入れ替わる磁気材料で出来た輪といった)磁気的に分極され、高い電気抵抗を持つ材料および/または薄層材料から製造され得、固定子は、高い電気抵抗を持つ材料および/または薄層材料から製造され得る。磁気的に分極された回転子は、任意の初期位置から自己起動する単純な2相モータの組立を可能にする。高い電気抵抗を持つ材料のおよび/または薄層型の、固定子および回転子のポールの使用は、渦電流損失を最小限にし得る。そのような伝熱構造体に回転および/または並進を与えるための多種多様な他の手段が、請求に係る主題から逸脱することなく使用され得るということも当然である。これらは、本書類に記載されるモータとは違うタイプの熱伝導構造体および伝熱構造体を含むアセンブリと一体となったモータ、あるいは、トルクが任意の手段によって伝熱構造体に伝達される任意のタイプの非一体型、つまり、分離したモータの使用、をこれらに限定されることなく含む。さらに一般的には、電気モータ、内燃機関、空気圧モータ、水力モータ(water−powered motor)、その他、あるいはこれらの任意の組み合わせを、これらに限定されることなく含む機械的作動を引き起こす任意のものが使用され得る。
【0114】
そのようなモータは、ラジアルベアリング、スラストベアリング、またはそれらの両方の追加の機能をも提供し得る。例えば、静圧気体ベアリングを使用するシステムは、伝熱構造体に回転を与えるために、らせん状のまたは他の相応しい形状の溝または流路を伝熱構造体の底面、伝熱構造体の内部領域、またはその両方に含み得る(Satomi T. and Lin G., 「Design Optimization of Spirally Grooved Thrust Air Bearings for Polygon Mirror Laser Scanners,」 JSME, International Journal, Series C, Vol. 36, No. 3, pp. 393−399, 1993を参照)。
【0115】
図5および図6に例示される代表的な実施形態で、回転の軸は伝熱構造体13と一体化された第一の希土類磁石14と、熱伝導構造体11に埋め込まれた第二の希土類磁石15(図6に示される)の磁気吸引の相互作用によって実質的に一定に維持され得る。このことによって、ベースプレートが傾き得る場合あるいは水平に設置されていないことがあり得る場合でも、回転する伝熱構造体13はベースプレート11上の略中心に保持される。代わりに、希土類磁石の一つを、高透磁率鋼といった軟質磁性材料と交換することが可能であろう。別の実施形態では、動圧ベアリングは、(例えば、回転する伝熱構造体を、サイズがちょうど合い、溝付きの円筒形のキャビティに配置することによって)スラスト/ラジアルハイブリッド気体ベアリングとして構成され得る。回転の軸を実質的に一定に維持するように適応されたそのような機構は、従来型の機械ラジアルベアリング、ブシュ、スピンドル、静圧ラジアル気体ベアリングまたは動圧ラジアル気体ベアリング、(例えば、代表的な実施形態で使用されているものとは違うものといった)磁気ラジアルベアリングの別の形態、その他、をこれらに限定されることなく含むラジアルベアリングのある形態を取る。さらに、そのようなラジアルベアリング構造体はスラストベアリングの機能をも含み得る。
【0116】
熱負荷は任意の形態を取り得、(例えば熱伝導構造体に直接的に搭載されたCPUのように)直接的に熱伝導構造体に熱的に結合され得、または(例えば熱伝導構造体に搭載されたヒートパイプ構造体の表面に搭載されたCPUのように)非直接的に熱伝導構造体に熱的に結合され得る。そのような熱負荷は(例えば伝導、対流、放射、物質伝達、あるいはこれらの任意の組み合わせといった)伝熱の任意の手段によっても熱伝導構造体に熱的に結合され得る。熱の流れは、熱負荷内に向かうものあるいは熱負荷から出るもので有り得、本書類に記載される実施形態は冷却の用途と過熱の用途の両方に使用され得る。特定の実施形態で、熱伝導構造体と熱負荷は、一つ以上の低熱抵抗接合によって接続された別個の要素である。代替の実施形態では、熱伝導構造体と熱負荷は、一体構造のアセンブリとして組立てられ得、その場合はそのような低熱抵抗接合は必要ない場合が有り得る。
【0117】
図5、図6、および図10に示される代表的な実施形態で、熱処理のための大規模な熱リザーバを提供する伝熱構造体13または41の周囲にある媒体は空気を含み得る。しかし、そのような熱リザーバは、任意の気体か空気以外の気体の混合物、あるいは、(例えば水、油、溶剤、潤滑剤、その他のような)液体といった凝縮相媒体、懸濁液、スラリー、粉末または、任意の他の非固体の凝縮相媒体またはそれらの組み合わせ、でもあり得る。
【0118】
図5、図6、図10に例示される代表的な実施形態における規定要因の特定の値は、特定の実施形態による例としてのみ提供されてきた。したがって、性能要件、望まれる工学上のトレードオフ、その他によって、そのような規定要因が別の値を取り得ることは言うまでもない。
【0119】
例えば、図5に示される特定の装置で、ヒートシンクインペラは100枚のフィンを有する。しかし、より一般的には、フィンの数の選択には、回転する伝熱構造体の近傍での長時間にわたる一連の実験的測定および/または流動場のモデリングがともなわれ得る。どの熱交換機においてもそうであるように、フィンの全体の表面積を増やすという観点からみれば、より多くのフィンを付けたすことが望ましくあり得る。しかし、同時に、より多くのフィンを付け足すことは抵抗を増加させ得、また、x−y平面におけるフィンの横断面の面積は、フィンの基部からフィンの先端までの熱の適切な伝導を提供する上で十分に大きくない場合があり得る。抵抗が増加することに関連するさらなる不利益は、低いrpmでの動作によって、加速する基準系に境界層を設置することによって提供される境界層薄化効果が低減することである。
【0120】
回転する伝熱構造体の近傍での実験的測定および/または流動場のモデリングは、フィンの最適な「デューティーサイクル」を決定するためにも要求され得る。ここで、フィンのデューティーサイクルは、フィンの厚みを、アジマス方向でのフィンとフィンの周期で割ったものとして定義され得る。図5に示される装置ではそのようなフィンのデューティーサイクルは約35%である。内部の熱抵抗を低減するためにアジマス方向により厚いフィンを使用することによって、フィンとフィンの間の空気のスロットの幅を縮減し得、これによって、空気の流れが制限され得る。フィンの曲げの角度と曲げの曲率の外形は特定の用途のために変更され得る。図5に示される装置は60度の曲げの角度と、x−y平面での曲げの曲率の一定の半径を有する。フィンの外形の問題に関連して、考慮すべき別の対象は、フィンが置かれる回転ディスクでエリアが細分化されることである。図5に示される装置で、フィンを含む環状の領域は、回転するディスクの全エリアの80%に相当する。フィンのエリアの範囲を拡げることは、より良好な熱処理を提供し得る。しかし、インペラの中心領域での空気の取り入れを制限することの効果を再び考慮しなければならない場合があり得る。
【0121】
回転する伝熱構造体の近傍での実験的測定および/または流動場のモデリングは、動圧気体ベアリングの設計の規定要因を最適化するためにも要求され得る。例えば、代表的な実施形態で使用される半径方向の溝の数と外形は、最適でない場合があり得る。
【0122】
最後に、本書類で言及される全ての公開、特許および特許出願はその各々が個々に、本書類での開示を理解しまたは実施するために必要な程度に、組み込まれているものとして、本書類に参照によって明確に組み込まれる。
【0123】
本出願の例示的実施形態をそのように記載してきたところで、当業者が注目すべきは、この書類での開示は例示としてのみあること、および他の様々な代替、適合、および変更が、本出願の範囲内で行われ得ることである。従って、本出願は、本書類で例示された具体的な実施形態に限定されず、添付の請求項によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
熱負荷と熱接触するように適応可能な熱伝導構造体、および
周囲媒体に浸された伝熱構造体であって、前記伝熱構造体は、前記熱伝導構造体と前記伝熱構造体に挟まれ気体で満たされた隙間領域を形成するように前記熱伝導構造体に結合され、前記気体で満たされた隙間領域は実質的に低熱抵抗を有し、前記伝熱構造体は前記熱伝導構造体に対して相対的に移動可能である、伝熱構造体、
を含む、装置。
【請求項2】
前記伝熱構造体は、フィン、羽根、ブレード、流路、ダクト、ピン、支柱、プレート、スロット、突出部、凹部、孔、穴、ざらつきを付けられた表面、部分に分けられた要素、ジグザグにされた要素、および滑らかな表面のうちの一つ以上を含む表面特徴物を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記気体で満たされた隙間領域を維持するように適応されたベアリング構造体を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記周囲媒体および/または熱伝導構造体に対して相対的に前記伝熱構造体を回転および/または並進させるように適応された機構を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記気体で満たされた隙間領域の寸法を調整するための手段を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記気体で満たされた隙間領域の寸法は、調節されない、受動的に調節される、能動的に調節されるあるいは、これらの適切な組み合わせである、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記隙間の距離は、前記伝熱構造体と前記熱伝導構造体の間のすべり接触を可能とするために実質的にゼロである、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記熱伝導構造体と前記伝熱構造体の表面は、潤滑剤コーティング、減摩コーティング、あるいはそれらの両方を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記周囲媒体は、純ガスまたは気体の混合物を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記気体で満たされた隙間領域は純ガスまたは気体の混合物を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
建築物および/またはエンクロージャの外側から受け取られた空気を前記伝熱構造体に方向付けるように適応された流入ポート、および
加熱された空気を前記伝熱構造体から前記建築物および/またはエンクロージャの外側に方向付けるように適応された流出ポートを更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
抵抗器、コンデンサ、誘導子、変圧器、ダイオード、整流器、サイリスター、トランジスタ、増幅器、集積回路、ディスプレイドライバ、ラインドライバ、バッファ、マイクロプロセッサ、中央処理装置、グラフィックス・プロセッシング・ユニット、コプロセッサ、トランスデューサ、センサ、アクチュエータ、電源、AC−DCコンバータ、DC−ACコンバータ、DC−DCコンバータ、AC−ACコンバータ、またはプリント基板アセンブリ、を非限定的に含む、一つ以上の能動および/または受動電子素子の熱管理に適応される、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
発電所、工場、コンピュータデータセンター、コンピュータサーバファーム、商業用建築物、研究所、事務所、公共の空間、住宅用居住施設、輸送車両、機器または機械といった、一つ以上の熱負荷を収容する建築物、エンクロージャ、または装置の熱管理に適応される、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
ヒータ、エアーコンディショナー、冷蔵庫、冷凍庫、吸収式冷凍機、蒸発冷却器、熱リザーバ、コンデンサ、ラジエータ、ヒートポンプ、熱機関、モータ、あるいは発電機といった熱交換器を一つ以上含む装置であって、前記熱交換器うちの一つ以上が請求項1に記載の装置を含む、装置。
【請求項15】
前記表面特徴物は、前方に曲げられた配向、後方に曲げられた配向、および/または半径方向 の配向にて設置される、
請求項2に記載の装置。
【請求項16】
前記ベアリング構造体は、前記熱伝導構造体と前記伝熱構造体の間の実質的に低い摩擦を提供するように適応される、
請求項3に記載の装置。
【請求項17】
前記ベアリング構造体は、動圧気体ベアリング、静圧気体ベアリング、磁気ベアリング、機械ベアリングおよび/またはブシュ構造体のうちの一つ以上を含む、
請求項3に記載の装置。
【請求項18】
前記ベアリング構造体は、動圧気体ベアリングを含み、かつ、熱伝導構造体の表面と伝熱構造体の表面の間の機械的接触を低減させるまたは無くすように適応された一つ以上の機構を更に提供する、
請求項3に記載の装置。
【請求項19】
前記ベアリング構造体は静圧気体ベアリングを含み、かつ、前記伝熱構造体にらせん状の溝または他の表面特徴物を更に含み、前記らせん状の溝または他の表面特徴物は前記伝熱構造体に回転を与える手段を提供する、
請求項3に記載の装置。
【請求項20】
実質的に一定の回転軸を維持するように適応された一つ以上の機構を更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項21】
前記伝熱構造体に回転を与えるように適応された少なくとも1つのロータ部材と一つ以上の固定子コイルを更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項22】
前記伝熱構造体は、前記周囲媒体を、送り出す、循環させる、および/または前記周囲媒体に動きを与えるように適応される、
請求項4に記載の装置。
【請求項23】
請求項4に記載の装置であって、前記伝熱構造体の角速度を変更することによって当該装置の熱抵抗を調整するための手段を更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項24】
加速する基準系への前記伝熱構造体の配置によって、前記伝熱構造体の周囲の境界層の平均的な厚さが実質的に減少する、
請求項4に記載の装置。
【請求項25】
前記伝熱構造体の角速度が、前記伝熱構造体の一つ以上の表面の一部にわたって乱流を引き起こすのに十分に早い、
請求項4に記載の装置。
【請求項26】
前記伝熱構造体は、前記気体で満たされる隙間領域で乱流を発生させるまたは対流による熱輸送を促進させるための少なくとも1つの構造体要素を含み、前記気体で満たされる隙間空間の熱抵抗は低減される、
請求項4に記載の装置。
【請求項27】
前記伝熱構造体の回転の方向を逆向きにするように適応された一つ以上の機構を更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項28】
請求項23に記載の装置を含む温度制御装置。
【請求項29】
前記伝熱構造体の逆回転は、微粒子、縮合および/または氷を非限定的に含む異物を前記伝熱構造体の一つ以上の表面から除去するように適応される、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
熱負荷と周囲媒体の間で熱を伝達する方法であって、
熱負荷と熱接触する熱伝導構造体、
熱が周囲媒体と交換され得る移動可能な伝熱構造体、および
前記熱伝導構造体の少なくとも1つの表面と前記伝熱構造体の少なくとも1つの表面との間の気体で満たされる隙間領域を含み、
熱が前記熱負荷と前記周囲媒体の間で伝達される、
方法。
【請求項31】
集積回路アセンブリであって、
表面を有する集積回路パッケージ、
前記集積回路パッケージと熱連通する伝熱構造体、および
前記伝熱構造体を移動させるように構成されたモータを含み、
周囲媒体に熱を伝達させるように構成された前記伝熱構造体の動きに少なくとも部分的に応じて気体で満たされる隙間が前記伝熱構造体と前記集積回路パッケージの間に形成されるように前記伝熱構造体と前記集積回路パッケージが構成される、
集積回路アセンブリ。
【請求項32】
前記モータは前記伝熱構造体を回転させて熱を前記周囲媒体に伝達するように構成される、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項33】
前記アセンブリは、前記伝熱構造体と前記集積回路パッケージの間に熱伝導性のグリースまたは糊を実質的に有しない、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項34】
集積回路基板であって、前記集積回路パッケージは前記集積回路基板に少なくとも1つの半田接合で結合される、集積回路基板を更に含む、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項35】
前記モータは少なくとも部分的に前記集積回路パッケージに一体化されている、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項36】
固定子構造体のコイルが前記集積回路パッケージ内に配置される、
請求項35に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項37】
制御信号を前記モータに結合するように構成され前記集積回路パッケージ内に少なくとも部分的に配置される駆動回路を更に含む、
請求項35に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項38】
前記集積回路パッケージが、前記伝熱構造体の動きに応じて、前記気体で満たされる隙間が少なくとも部分的に発生するように構成されたざらつきのある表面を有する、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項39】
前記伝熱構造体が、前記伝熱構造体の動きに応じて、前記気体で満たされる隙間が少なくとも部分的に発生するように構成されたざらつきのある表面を有する、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項1】
装置であって、
熱負荷と熱接触するように適応可能な熱伝導構造体、および
周囲媒体に浸された伝熱構造体であって、前記伝熱構造体は、前記熱伝導構造体と前記伝熱構造体に挟まれ気体で満たされた隙間領域を形成するように前記熱伝導構造体に結合され、前記気体で満たされた隙間領域は実質的に低熱抵抗を有し、前記伝熱構造体は前記熱伝導構造体に対して相対的に移動可能である、伝熱構造体、
を含む、装置。
【請求項2】
前記伝熱構造体は、フィン、羽根、ブレード、流路、ダクト、ピン、支柱、プレート、スロット、突出部、凹部、孔、穴、ざらつきを付けられた表面、部分に分けられた要素、ジグザグにされた要素、および滑らかな表面のうちの一つ以上を含む表面特徴物を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記気体で満たされた隙間領域を維持するように適応されたベアリング構造体を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記周囲媒体および/または熱伝導構造体に対して相対的に前記伝熱構造体を回転および/または並進させるように適応された機構を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記気体で満たされた隙間領域の寸法を調整するための手段を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記気体で満たされた隙間領域の寸法は、調節されない、受動的に調節される、能動的に調節されるあるいは、これらの適切な組み合わせである、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記隙間の距離は、前記伝熱構造体と前記熱伝導構造体の間のすべり接触を可能とするために実質的にゼロである、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記熱伝導構造体と前記伝熱構造体の表面は、潤滑剤コーティング、減摩コーティング、あるいはそれらの両方を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記周囲媒体は、純ガスまたは気体の混合物を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記気体で満たされた隙間領域は純ガスまたは気体の混合物を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
建築物および/またはエンクロージャの外側から受け取られた空気を前記伝熱構造体に方向付けるように適応された流入ポート、および
加熱された空気を前記伝熱構造体から前記建築物および/またはエンクロージャの外側に方向付けるように適応された流出ポートを更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
抵抗器、コンデンサ、誘導子、変圧器、ダイオード、整流器、サイリスター、トランジスタ、増幅器、集積回路、ディスプレイドライバ、ラインドライバ、バッファ、マイクロプロセッサ、中央処理装置、グラフィックス・プロセッシング・ユニット、コプロセッサ、トランスデューサ、センサ、アクチュエータ、電源、AC−DCコンバータ、DC−ACコンバータ、DC−DCコンバータ、AC−ACコンバータ、またはプリント基板アセンブリ、を非限定的に含む、一つ以上の能動および/または受動電子素子の熱管理に適応される、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
発電所、工場、コンピュータデータセンター、コンピュータサーバファーム、商業用建築物、研究所、事務所、公共の空間、住宅用居住施設、輸送車両、機器または機械といった、一つ以上の熱負荷を収容する建築物、エンクロージャ、または装置の熱管理に適応される、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
ヒータ、エアーコンディショナー、冷蔵庫、冷凍庫、吸収式冷凍機、蒸発冷却器、熱リザーバ、コンデンサ、ラジエータ、ヒートポンプ、熱機関、モータ、あるいは発電機といった熱交換器を一つ以上含む装置であって、前記熱交換器うちの一つ以上が請求項1に記載の装置を含む、装置。
【請求項15】
前記表面特徴物は、前方に曲げられた配向、後方に曲げられた配向、および/または半径方向 の配向にて設置される、
請求項2に記載の装置。
【請求項16】
前記ベアリング構造体は、前記熱伝導構造体と前記伝熱構造体の間の実質的に低い摩擦を提供するように適応される、
請求項3に記載の装置。
【請求項17】
前記ベアリング構造体は、動圧気体ベアリング、静圧気体ベアリング、磁気ベアリング、機械ベアリングおよび/またはブシュ構造体のうちの一つ以上を含む、
請求項3に記載の装置。
【請求項18】
前記ベアリング構造体は、動圧気体ベアリングを含み、かつ、熱伝導構造体の表面と伝熱構造体の表面の間の機械的接触を低減させるまたは無くすように適応された一つ以上の機構を更に提供する、
請求項3に記載の装置。
【請求項19】
前記ベアリング構造体は静圧気体ベアリングを含み、かつ、前記伝熱構造体にらせん状の溝または他の表面特徴物を更に含み、前記らせん状の溝または他の表面特徴物は前記伝熱構造体に回転を与える手段を提供する、
請求項3に記載の装置。
【請求項20】
実質的に一定の回転軸を維持するように適応された一つ以上の機構を更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項21】
前記伝熱構造体に回転を与えるように適応された少なくとも1つのロータ部材と一つ以上の固定子コイルを更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項22】
前記伝熱構造体は、前記周囲媒体を、送り出す、循環させる、および/または前記周囲媒体に動きを与えるように適応される、
請求項4に記載の装置。
【請求項23】
請求項4に記載の装置であって、前記伝熱構造体の角速度を変更することによって当該装置の熱抵抗を調整するための手段を更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項24】
加速する基準系への前記伝熱構造体の配置によって、前記伝熱構造体の周囲の境界層の平均的な厚さが実質的に減少する、
請求項4に記載の装置。
【請求項25】
前記伝熱構造体の角速度が、前記伝熱構造体の一つ以上の表面の一部にわたって乱流を引き起こすのに十分に早い、
請求項4に記載の装置。
【請求項26】
前記伝熱構造体は、前記気体で満たされる隙間領域で乱流を発生させるまたは対流による熱輸送を促進させるための少なくとも1つの構造体要素を含み、前記気体で満たされる隙間空間の熱抵抗は低減される、
請求項4に記載の装置。
【請求項27】
前記伝熱構造体の回転の方向を逆向きにするように適応された一つ以上の機構を更に含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項28】
請求項23に記載の装置を含む温度制御装置。
【請求項29】
前記伝熱構造体の逆回転は、微粒子、縮合および/または氷を非限定的に含む異物を前記伝熱構造体の一つ以上の表面から除去するように適応される、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
熱負荷と周囲媒体の間で熱を伝達する方法であって、
熱負荷と熱接触する熱伝導構造体、
熱が周囲媒体と交換され得る移動可能な伝熱構造体、および
前記熱伝導構造体の少なくとも1つの表面と前記伝熱構造体の少なくとも1つの表面との間の気体で満たされる隙間領域を含み、
熱が前記熱負荷と前記周囲媒体の間で伝達される、
方法。
【請求項31】
集積回路アセンブリであって、
表面を有する集積回路パッケージ、
前記集積回路パッケージと熱連通する伝熱構造体、および
前記伝熱構造体を移動させるように構成されたモータを含み、
周囲媒体に熱を伝達させるように構成された前記伝熱構造体の動きに少なくとも部分的に応じて気体で満たされる隙間が前記伝熱構造体と前記集積回路パッケージの間に形成されるように前記伝熱構造体と前記集積回路パッケージが構成される、
集積回路アセンブリ。
【請求項32】
前記モータは前記伝熱構造体を回転させて熱を前記周囲媒体に伝達するように構成される、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項33】
前記アセンブリは、前記伝熱構造体と前記集積回路パッケージの間に熱伝導性のグリースまたは糊を実質的に有しない、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項34】
集積回路基板であって、前記集積回路パッケージは前記集積回路基板に少なくとも1つの半田接合で結合される、集積回路基板を更に含む、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項35】
前記モータは少なくとも部分的に前記集積回路パッケージに一体化されている、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項36】
固定子構造体のコイルが前記集積回路パッケージ内に配置される、
請求項35に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項37】
制御信号を前記モータに結合するように構成され前記集積回路パッケージ内に少なくとも部分的に配置される駆動回路を更に含む、
請求項35に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項38】
前記集積回路パッケージが、前記伝熱構造体の動きに応じて、前記気体で満たされる隙間が少なくとも部分的に発生するように構成されたざらつきのある表面を有する、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【請求項39】
前記伝熱構造体が、前記伝熱構造体の動きに応じて、前記気体で満たされる隙間が少なくとも部分的に発生するように構成されたざらつきのある表面を有する、
請求項31に記載の集積回路アセンブリ。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2011−530191(P2011−530191A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522077(P2011−522077)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/044550
【国際公開番号】WO2010/016963
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511028386)サンディア ナショナル ラボラトリーズ (1)
【氏名又は名称原語表記】SANDIA NATIONAL LABORATORIES
【住所又は居所原語表記】Mail Stop 9031,P.O.Box 969,Livermore,California 94551−0969,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/044550
【国際公開番号】WO2010/016963
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511028386)サンディア ナショナル ラボラトリーズ (1)
【氏名又は名称原語表記】SANDIA NATIONAL LABORATORIES
【住所又は居所原語表記】Mail Stop 9031,P.O.Box 969,Livermore,California 94551−0969,United States of America
【Fターム(参考)】
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