説明

熱伝導性フィラー及びその製造方法

【目的】電気絶縁性、熱伝導性ともに優れた熱伝導性フィラーを提供する。
【構成】銅粉のBET法比表面積値1000cm/gあたり、0.04〜0.1%の酸素量で銅粉表面を酸化させ、その後シランカップリング剤のシロキサン結合で絶縁膜を形成した、熱伝導性フィラー。熱伝導率の優れた銅粉がフィラーの核となり、第一層が銅酸化皮膜シランカップリング剤と結合した薄い均一な電気絶縁膜、そして外側層が充填するプラスチック等と濡れ性の良いシラン界面膜構造を持つ、新規な熱伝導性銅系フィラーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器用放熱材料として使用する、絶縁性を有する熱伝導性フィラーに関するものである。詳しくは放熱シート、放熱グリース、熱伝導性接着剤、放熱ゲルなど各種形態の放熱材料に充填する熱伝導性フィラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化に伴い、消費電力もアップし、発熱量もこれにつれて大きくなってきている。この放熱対策として熱伝導性フィラーを利用した、放熱シート、放熱グリース等が開発されている。この用途に使用する熱伝導性フィラーとしては充填する材料の電気絶縁性を維持し、かつ熱伝導性が良いことが必要である。熱伝導性フィラーとしてはアルミナが熱伝導性、化学的安定性、コストのバランスが良い為、各種プラスチック充填用熱伝導性フィラーとして多く使用されてきている。熱伝導性だけ見れば、窒化アルミニウムやべリリアの無機フィラーがアルミナの5〜10倍と良く、優れたフィラーである。しかし、ベリリアは有毒性があり、窒化アルミニウムは耐湿性があまり良くない等の欠点がある。窒化アルミニウムを充填した放熱シートとしては(特許文献1)、金属アルコキシドと有機ケイ素化合物からなる熱伝導性シートは(特許文献2)等があるが、成形加工方法が複雑で、放熱性の良い汎用熱伝導性フィラーが待たれていた。金属粉は熱の良導体であり、特に銅は銀に次ぐ、優れた熱伝導性を有し、アルミナの10倍以上の熱伝導率が有る。しかし、銅粉は電気の良導体であり、プラスチックや塗料、グリース等に高充填すると電気が流れ、電気絶縁性が必要な、これらの用途には使用できなかった。
【0003】
【特許文献1】特許第3305720号公報
【特許文献2】特開2005−81669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点を、銅粉の熱伝導率を維持しながら、電気絶縁性に優れた熱伝導性フィラーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような電気絶縁性の問題点を解決することを目的としてなされたもので、銅粉表面に均一で薄い酸化皮膜を形成し、その酸化皮膜の上からシランカップリング剤で表面処理し、電気絶縁性に優れた銅粉を得るものである。銅粉表面に形成する酸化皮膜の酸素量はBET法比表面積値1000cm/gあたり、0.04〜0.1%であることが、熱伝導性フィラーとしては必要である。
【0006】
銅粉は銅固有の金属性質により、その表面は非常に薄い酸化皮膜で通常覆われている。この非常に薄い酸化皮膜はプラスチック等に銅粉を高充填した場合、導電性を阻害するほど強固でなく、銅粉が近接すると電気が流れる。表面酸化膜の少ない通常の銅粉をシランカップリング剤でシラン処理しても、強固で均一なシロキサン結合膜形成ができず、高充填すると高抵抗だが導電性が発現する。銅粉を高温多湿雰囲気中で酸化処理し、厚い表面酸化膜を形成すると、酸化膜形成だけで導電性が悪くなる。しかし、酸化皮膜を厚くしても銅粉の場合、高抵抗となるが、絶縁性までならない。しかも、酸化皮膜を非常に厚くすることは、銅粉が近接しても熱伝導性が非常に悪くなる。また、たとえ使用に耐える酸化絶縁皮膜を銅粉表面に形成できても、プラスチック混練充填中の成形雰囲気で、銅粉が還元されたり、混練中のせん断力で酸化膜が剥離し、新しい銅面が出現し導電性が発現する場合がある。我々は熱伝導性に悪影響の出ない薄い酸化皮膜を銅粉表面に形成し、その酸化膜をシランカップリング剤処理で絶縁膜として固着する方法で、銅の熱伝導率を生かした電気絶縁性銅粉を得ることを見出した。
【0007】
シランカップリング剤とは一般化学構造式YRSiXで表される。Yは有機マトリックスと反応する有機官能基でビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基である。Xは珪素原子に結合している加水分解基でクロル基、アルコキシ基、アセトキシ基である。シランカップリング剤は多くの種類が有り、充填する樹脂に合致した製品を選定する必要があるが、一般的な製品として、γアミノプロピルトリエトキシシラン、γメルカプトプロピルトリメトキシシラン、β(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。シランカップリング剤の処理方法は直接銅粉に被覆する方法が良く、乾式法、スラリー法、スプレー法が可能である。少ない使用量で効果の有る、シランカップリング剤の処理方法の例としては、銅粉に対して0.1〜1%のシランカップリング剤を、水とアルコール混合溶液に分散し、銅粉表面に湿潤被覆させ、その後110℃以上の温度で混合加熱乾燥する方法が良い。シランカップリング剤量は銅粉の比表面積値や酸化膜の状態で変える必要が有るが、0.1%以下だと表面酸化膜を固着する効果が少なく、電気絶縁性が劣る傾向がある。また、1%以上にするとシラン処理した銅粉同士がシロキサン結合中に強く凝集し、フィラーとして分散性に問題が生じる場合がある。
【0008】
シランカップリング剤でシラン処理し、使用に耐える電気絶縁膜を得る為には、処理する銅粉の表面酸化膜量が重要である。本発明では表面酸化膜量を銅粉の酸素量(%)で示した。熱伝導性フィラーとしては、充填量と熱伝導性は、ある程度相関性が有り、片状でなく、多く充填できる樹枝状、粒状、球状形状の電解銅粉、アトマイズ銅粉、還元銅粉が好ましい。通常の電解銅粉やアトマイズ銅粉の表面酸化膜は酸素量で表示するとBET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%以下である。電気絶縁性と熱伝導性を両立する為には、一定の比表面積値で換算した、1000cm/gあたりの酸素量値が0.04〜0.1%であることが重要である。これより酸化膜が少ないとシランカップリング剤でシラン処理しても、シランカップリング剤の加水分解基が銅粉表面と結合せず、十分な電気絶縁膜の形成が出来ない。また、0.1%以上の酸素量の酸化膜であると、シランカップリング剤でシラン処理することで安定した電気絶縁膜は形成出来るが、シラン結合酸化絶縁皮膜が厚い為、熱伝導性も阻害し、高充填しても良好な熱伝導性が得られない。
【0009】
銅粉に均一な酸化皮膜を形成する方法としては、温度100〜180℃の範囲内で空気中で長時間加熱攪拌する方法が良い。水分添加で短時間に、酸素量の多い酸化皮膜形成できるが酸素量の調整が非常に難しい。100℃以下だと非常に長時間かかり、180℃以上だと銅粉の発火燃焼の危険性がある。
【0010】
シランカップリング剤で銅粉を処理すると銅粉の酸化皮膜が0.04%酸素量以上であると銅粉表面にシロキサン結合膜が形成され、酸化皮膜との相乗効果で使用に耐える薄い絶縁膜が得られる。酸化膜の厚さで規定する方が良いと思うが、非常に薄い酸化皮膜を測定する方法が無い為、酸素量で銅粉表面の酸化膜量を規定した。シランカップリング剤処理すると、有機官能基に酸素を有しているので、処理した銅粉の総酸素量は増える。銅粉の酸化膜が本発明規定の酸素量より少なくても、シランカップリング剤処理すると銅粉の総酸素量は本発明の銅粉に類似してくる。シラン処理の酸素量は付着しているシラン官能基量を調査すれば、酸素量の推定は出来る。しかし、処理する前の銅粉が本発明の酸素量以下であれば、そのようなシラン処理銅粉は高充填すると絶縁性がなくなり、電子材料用熱伝導性フィラーとして使用できない。本発明の熱伝導性フィラーは熱伝導率の優れた銅粉を用いたもので、第一層が銅酸化膜、そしてその上にシロキサン結合した薄い電気絶縁膜、そして外側皮膜がプラスチック等と濡れ性の良い、シラン界面膜構造を持つ、新規な熱伝導性フィラーである。
【0011】
シラン界面膜構造とは、銅粉表面に形成したシラン界面を有する膜構造のことである。詳しくは、シランカップリング剤が加水分解をうけてシラノールとなる。そして、銅酸化膜とシロキサン結合した皮膜である。銅の酸化膜が少ないと均一な膜が形成出来ず、一定以上の酸化膜が必要であることから、このシラン界面を有する膜は銅酸化皮膜内部までシロキサン結合構造となっている皮膜と推察できる。本発明の熱伝導性フィラーの断面構造図を図1に示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果としては、電気絶縁性が要求される、放熱シート、放熱グリース、熱伝導性接着剤、放熱ゲル材に熱伝導率の良い銅粉を高充填することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施例で説明する。
【実施例】
【0014】
<実施例1>
【0015】
BET法比表面積値3600cm/g、銅粉の酸素量0.11%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)の電解銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃で2時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量0.15%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.042%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγアミノプロピルトリエトキシシラン5gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉10g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると22秒/1℃で出発原料銅粉の20秒/1℃と同レベルの良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は5×10−3Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0016】
<実施例2>
【0017】
BET法比表面積値3600cm/g、銅粉の酸素量0.11%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)の電解銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃で4時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量0.2%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.055%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγアミノプロピルトリエトキシシラン5gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉10g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると25秒/1℃で良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は10−2Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0018】
<実施例3>
【0019】
BET法比表面積値3600cm/g、銅粉の酸素量0.11%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)の電解銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃で6時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量0.35%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.097%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγアミノプロピルトリエトキシシラン5gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉10g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると28秒/1℃で良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は10−1Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0020】
<実施例4>
【0021】
BET法比表面積値3600cm/g、銅粉の酸素量0.11%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)の電解銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃で6時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量0.35%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.097%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγアミノプロピルトリエトキシシラン1gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉10g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると28秒/1℃で良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は10−1Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0022】
<実施例5>
【0023】
BET法比表面積値5000cm/g、銅粉の酸素量0.15%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)のアトマイズ銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃2時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量0.2%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.04%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγメルカプトプロピルトリメトキシシラン10gを、添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉15g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると22秒/1℃で出発原料銅粉の19秒/1℃と同レベルの良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は5×10−1Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0024】
<実施例6>
【0025】
BET法比表面積値5000cm/g、銅粉の酸素量0.15%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)のアトマイズ銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃で4時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量0.4%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.08%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγメルカプトプロピルトリメトキシシラン5gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉15g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると25秒/1℃で良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は10Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0026】
<実施例7>
【0027】
BET法比表面積値33000cm/g、銅粉の酸素量0.8%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.024%)の水溶液還元銅粉を出発原料とした。この銅粉をミキサーに投入し20rpm、120℃で1時間、空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理を行った。その結果、銅粉の酸素量1.4%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.042%)の表面酸化銅粉を得た。この表面酸化銅粉1kgに対して、水160cc、メタノール40cc混合溶液にシランカップリング剤としてγメルカプトプロピルトリメトキシシラン10gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥し本発明の熱伝導性フィラーを得た。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉12g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成した。その結果、塗膜の体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜であった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると23秒/1℃で出発原料銅粉の20秒/1℃と同レベルの良好な熱伝導性であった。
シランカップリング剤処理前の表面酸化銅粉の塗膜は100Ω・cmで絶縁性とならなかった。
【0028】
<比較例1>
【0029】
BET法比表面積値3600cm/g、銅粉の酸素量0.11%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)の電解銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγアミノプロピルトリエトキシシラン10gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥しシラン処理銅粉を作成した。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉10g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成し、実施例1と同じ方法で評価した。その結果、シラン処理前の電解銅粉の体積固有抵抗値0.95×10−3Ω・cmがシラン処理で高抵抗となるが積固有抵抗値10−1Ω・cmで絶縁膜とならなかった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると23秒/1℃であった。
【0030】
<比較例2>
【0031】
BET法比表面積値3600cm/g、銅粉の酸素量0.11%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)の電解銅粉をミキサーに投入し20rpm、125℃で6時間、高湿度空気中で加熱攪拌し、表面酸化処理し、銅粉の酸素量0.7%(BET比表面積値1000cm/gあたり0.194%)の表面酸化銅粉を作成した。この表面酸化銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγアミノプロピルトリエトキシシラン5gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥しシラン処理銅粉を作成した。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉10g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成し、実施例1と同じ方法で評価した。その結果、シラン処理前の表面酸化銅粉の塗膜は5×10Ω・cmであったが、体積固有抵抗値10Ω・cm以上の絶縁膜が得られた。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると100秒/1℃以上で、樹脂の熱伝導性と大差なく、非常に悪いもので熱伝導性フィラーとして使用できない。
【0032】
<比較例3>
【0033】
BET法比表面積値5000cm/g、銅粉の酸素量0.15%(BET法比表面積値1000cm/gあたり0.03%)のアトマイズ銅粉1kgに対して、水80cc、メタノール20cc混合溶液にシランカップリング剤としてγメルカプトプロピルトリメトキシシラン10gを添加して、銅粉を処理した。120℃で45分間熱風乾燥しシラン処理銅粉を作成した。絶縁性と熱伝導性を評価する為、アクリル樹脂10g、銅粉15g、トルエン5gのペースト組成で塗膜を作成し、実施例1と同じ方法で評価した。その結果、シラン処理前のアトマイズ銅粉の塗膜は3×10−2Ω・cmであったが、体積固有抵抗値10Ω・cmとなるが絶縁膜とならなかった。端部を100℃に加熱し、5cm距離の30℃以上の温度上昇速度を測定すると22秒/1℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の熱伝導性フィラーは、銅粉の持つ、優れた熱伝導率を維持しながら、プラスチック等に高充填しても電気絶縁性を有する熱伝導性フィラーで、電子機器の放熱対策として、さまざまな放熱材料に使用可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る熱伝導性フィラーの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 (第一層)銅酸化皮膜
2 シラン界面膜構造皮膜
3 銅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉の第一層がBET法比表面積値1000cm/gあたり、0.04〜0.1%の酸素量を有する酸化皮膜であり、その外側皮膜がシラン界面膜構造を持つ熱伝導性フィラー。
【請求項2】
銅粉にBET法比表面積値1000cm/gあたり、0.04〜0.1%の酸素量範囲の酸化皮膜を形成し、その後シランカップリング剤で酸化膜とシロキサン結合させ、シラン界面膜を形成することを特徴とする請求項1記載の熱伝導性フィラーの製造方法。

【図1】
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