説明

熱伝導性ホットメルト接着剤組成物

【課題】
高熱伝導性、高耐熱性、ガラス基材、アルミニウム基材への接着性に優れ、更に直接的に発熱体或いは放熱体に塗布により生産性の向上が達成される接着組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
酸無水物変性熱可塑性樹脂と熱伝導付与剤を含有し、溶融粘度が200℃においては10,000〜3,000,000mPa・sであり、熱伝導率が0.4W/mK以上であり、ガラス基材あるいはアルミニウム基材に対する剥離強度が200N/m以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を利用すると直接的に発熱体或いは放熱体に塗布により生産性の向上が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性、耐熱性に優れた粘着性のある熱伝導性ホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高集積化、高密度化に伴って、電力消費量も増大の一途にあり、発生した熱を効率良く放熱し、電子部品素子の温度上昇を少なくすることが重要な課題になっている。例えば、電子部品(例えばパーソナルコンピュータ、携帯電話等の中央演算素子等の各種デバイス、パワートランジスタなど)、表示装置(例えばプラズマディスプレイパネルや有機ELを用いた表示装置等)では、熱を取り除いたり、均熱化することが重要な課題となっている。なぜなら、発熱する電子部品や表示装置は温度が上昇するにつれて部品の劣化、誤動作、故障などにつながる、あるいは温度の不均化により破損するおそれがあるためである。そのためこれらの発熱する部品や表示装置から熱を取り除いたり、あるいは同一部品内や装置内での温度差をなくす均熱化するため各種ヒートシンクや放熱板、あるいはハウジング等に熱を伝える熱伝導性組成物がシート状に加工され使用されている。この熱伝導性組成物に求められる性能は熱伝導性の他にも柔軟性、密着性、耐久性、耐熱性、難燃性などがあげられる。また、近年の電子部品、表示装置の需要増大により機器生産性の向上も望まれている。
【0003】
このような熱伝導性組成物として様々なものが提案されており、例えば特許文献1や特許文献2ではプラズマディスプレイパネル用の放熱性粘着シートや組成物が開示されているが、部品のリサイクルを目的にパネルの分離を100℃で溶融・軟化させて行っているため、耐熱接着性がない。特許文献3では水酸化アルミニウムを用いて難燃性と熱伝導性を付与しているが、高温では熱安定性が悪く溶融塗布できない。特許文献4では合成ゴム樹脂を用い湿式法で製造された伝熱性シートが開示されているが、直接的に電子部品へ溶融塗布することが出来ない。
【特許文献1】特開2000−219852号公報
【特許文献2】特開2000−290615号公報
【特許文献3】特開2003−313431号公報
【特許文献4】特開2001−310974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記すべての課題を解決し、高熱伝導性、耐熱性、難燃性、ガラスやアルミニウム基材への強接着性を有し、電子部品へ直接溶融塗布可能な熱伝導性ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の熱可塑性接着剤組成物をマトリックスとし、このマトリックス中に熱伝導性付与剤の粉末を分散させた放熱性接着剤組成物が、その目的を達成しうることを見出した。本発明は以下に示す。
【0006】
[1]酸無水物変性熱可塑性樹脂と熱伝導付与剤を含有し、溶融粘度が200℃においては10,000〜3,000,000mPa・sであり、熱伝導率が0.4W/mK以上であり、ガラス基材あるいはアルミニウム基材に対する剥離強度が200N/m以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
【0007】
[2]下記の(A)〜(E)を必須成分として含有し、(A)100質量部に対し、(B)50〜1500質量部と(C)50〜400質量部と(D)20〜300質量部と(E)0.5〜100質量部含有することを特徴とする[1]記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
(A)酸無水物変性熱可塑性樹脂を10〜100質量%含有する熱可塑性樹脂
(B)熱伝導付与剤
(C)粘着付与剤
(D)可塑剤
(E)エンジニアリングプラスチック
【0008】
[3](A)に示される酸無水物変性熱可塑性樹脂が、酸無水物を0.5〜5質量%変性したスチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする[1]または[2]記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば上記目的を達成することが出来る。すなわち、酸無水物変性熱可塑性樹脂と熱伝導付与剤を含有し、溶融粘度が200℃においては10,000〜3,000,000mPa・sであり、熱伝導率が0.4W/mK以上であり、ガラスやアルミニウム基材に対する剥離強度が200N/m以上であるホットメルト接着剤組成物を用いると、熱伝導性、耐熱性に優れ、更に直接的に発熱体或いは放熱体に塗布できるために生産効率の向上を達成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物はJAI−7(1991年版)に準拠したブルックフィールド粘度測定において200℃における溶融粘度が10,000〜3,000,000mPa・sである。上記より低いと耐熱性が低下する傾向にあり、高いとホットメルト塗布装置で塗工することが出来ない。特に好ましくは200℃において30,000〜1,000,000mPa・sである。
【0012】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、熱伝導付与剤が高充填され熱伝導性を有する。熱伝導率は少なくとも0.4W/mKである。好ましくは、0.5W/mK以上である。0.4W/mK未満であると発熱体からの放熱・灼熱作用が実用的に不足する。
【0013】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、酸無水物変性熱可塑性樹脂を含有するためガラス基材あるいはアルミニウム基材に対して強接着性を示す。ガラス基材或いはアルミニウム基材に対する剥離強度は少なくとも200N/m必要である。好ましくは500N/mである。200N/m未満であると、基材に伝熱され温度上昇したときに基材が膨張して接着剤が追随できずに基材と接着剤の境界面で剥離する。
【0014】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、(A)酸無水物変性熱可塑性樹脂を10〜100質量%含有する熱可塑性樹脂、(B)熱伝導付与剤、(C)粘着付与剤、(D)可塑剤、(E)エンジニアリングプラスチックを含有する組成物である。
【0015】
また、本発明で使用される(A)の熱可塑性樹脂中の成分は、酸無水物変性熱可塑性樹脂を10〜100質量%含有するように設定するのが好ましい。酸無水物変性熱可塑性樹脂は0.5〜5質量%酸無水物を変性したスチレン系ブロック共重合体であり、例えば無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(以下「無水マレイン酸変性SEBS」という)、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(以下「無水マレイン酸変性SEPS」という)、無水マレイン酸変性スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下「無水マレイン酸変性SIS」という)、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下「無水マレイン酸変性SBS」という)を挙げることができる。無水マレイン酸変性スチレンブロック共重合体は不飽和基を含有する酸または酸無水物を用いラジカル発生剤の存在下でスチレン系ブロック共重合体にグラフトして得られる。製造方法として、有機溶剤中に酸無水物、ラジカル発生剤、スチレン系ブロック共重合体を加え加熱攪拌しながら反応する方法、または、上記3種の原料を高速攪拌機により均一混合した後、十分な混練能力のある一軸または多軸の押出機で溶融混練する方法などの既知の方法が用いられる。酸無水物の付加量が0.5質量%未満であると、ガラス、アルミニウムへの充分な接着強度が得られない傾向があり、5質量%を超えると酸無水物をスチレン系ブロック共重合体に付加させるのが難しい。無水マレイン酸変性SEBSは具体的には、クレイトンポリマージャパン(株)製、商標名クレイトンFG1924X 、旭化成(株)製、商標名タフテックM1943がある。無水マレイン酸変性SBSは具体的には旭化成(株)製、商標名タフプレン912がある。
【0016】
また、本発明で使用される(A)の熱可塑性樹脂中の酸無水物変性熱可塑性樹脂以外の成分として、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーをブレンドするとそのエラストマーの性能も付与でき、例えば、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐候性、耐摩耗性等が挙げられ、さらに、酸無水物変性熱可塑性樹脂と比較してコストが下げられる。エラストマーには、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー等があり、スチレン系エラストマーの例として、スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体(SIS)、SBSに水素添加したもの(SEBS)、SISに水素添加したもの(SEPS)等が挙げられる。また、オレフィン系エラストマーの例として、プロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等が挙げられる。酸無水物変性熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂は含有しなくても良いが、コストを下げる目的から30質量%以上含有するほうが好ましい。一方、それが90質量%以上になると、酸無水物変性熱可塑性樹脂の割合が低下するため、ガラス、アルミニウムへの充分な接着強度が得られない。
【0017】
本発明で使用される(B)熱伝導付与剤が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、シリカ、有機ポリマー焼成物、炭化窒素、カーボン、金属の粉体である。これを例示すると、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリンクレー、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、炭化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、銀等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上合わせて用いられる。これらの中でも良好な熱伝導性を付与でき、かつ汎用性やコストといった観点からアルミナや炭酸マグネシウムが好ましい。
【0018】
また、本発明で使用される(C)粘着付与剤としては、特に限定するものではなく従来公知のものが用いられる。例えば、ロジン系樹脂(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジン・グリセリンエステル等)、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂(α−ピネン主体、β−ピネン主体、ジペンテン主体等)、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂(脂肪族系、脂環族系、芳香族系等)、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂(スチレン系、置換スチレン系等)、フェノール系樹脂(アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等)、キシレン樹脂等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0019】
また、本発明で使用される(D)軟化剤とは、樹脂組成物の溶解粘度を低下させる機能を有する成分である。例えば、流動パラフィン、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等のプロセスオイル、液状ポリイソプレン等の液状ゴム、エステル系可塑剤、植物性油、液状ポリブテン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸無水物変性ポリブテン、酸無水物変性液状ポリイソプレン、酸無水物変性ポリエチレンワックス、酸無水物変性ポリプロピレンワックス等が挙げられる。これらの中でも、流動性の向上効果が大きい流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブテンから選ばれた少なくとも1種が特に好ましい。また、ガラス基材やアルミニウム基材への接着性を向上させるために酸無水物変性ポリブテン、酸無水物変性液状ポリイソプレン、酸無水物変性ポリエチレンワックス、酸無水物変性ポリプロピレンワックスから選ばれた少なくとも1種を添加するとさらに好ましい。
【0020】
また、本発明で使用される(E)エンジニアリングプラスチックにはポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量1000以上の公知のものを用いることができ、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4フェニレンエーテル)、ポリ(2,6ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニレン−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4フェニレンエーテル)などや、2,6−ジメチルフェノールと1価のフェノール類との共重合体の如きポリフェニレンエーテル共重合体も用いることが出来る。変性ポリフェニレンエーテル樹脂とは該ポリフェニレンエーテル樹脂に加工性、その他の理由で、スチレン樹脂、ナイロン樹脂等をブレンドしたもので、市販品では旭化成工業(株)製のザイロン500H、日本GEプラスチックス(株)製SA−120等がある。
【0021】
ポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂を添加することにより、接着性の無いポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂が高分子量スチレン系ブロックコポリマーのスチレン相に相溶することから、高温時のスチレン相の被着材に対する濡れ性を低下させ、剥離性を付与すると共に、スチレン系ブロック共重合体の耐熱性を決定しているスチレン相の軟化する温度を上昇させ、耐熱性を付与することができる。従って、添加するポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂の熱変形温度若しくはガラス転移点が、スチレン樹脂のガラス転移温度である90〜100℃を上回っていれば耐熱性付与の目的を達せられる。しかし、耐熱性を少ない添加量で容易に得るためには、熱変形温度が120℃以上であることが望ましく、特に80℃以上の耐熱性を要望される場合は、熱変形温度が150℃以上のものを使用することにより、少ない添加量で容易に剥離性及び耐熱性を得ることができる。なお、市販品のポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂は熱変形温度120℃以上のタイプが比較的容易に入手できる。
【0022】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物において、各成分の含有割合は、(A)成分100重量部(以下「部」と略す)に対して、(B)50〜1500部と(C)50〜400部と(D)20〜300部と(E)0.5〜30部に設定することが好ましい。すなわち、このような含有割合になっておれば、実使用温度の室温〜80℃で特に良好な粘着性と放熱性を発揮し、しかも120℃をやや超える温度でも軟化・溶融させ分離を行うことが特に容易になる。(B)成分の配合量が200部未満であると、熱伝導性が不充分となる傾向があり、1500部を超えると、他の成分との配合バランスが崩れ、流動性の低下や粘着性が低下する。また、(C)成分の配合量が50部未満であると、熱伝導性接着剤の粘着性が不充分となり、500部を超えると、他の成分との配合バランスが崩れ、目的とする効果が得られない。さらに、(D)成分の配合量が20部未満であると、塗布性(流動性)が悪くなる傾向があり、300部を超えると、実使用時の温度で熱伝導性接着剤が軟化・溶融したり、あるいは滲み出しが生じたりする。また、(E)成分の配合量は、0.5部未満では熱変形温度若しくはガラス転移点が200℃以上でも所望する耐熱性は得られないと同時に各基材との剥離性が著しく低下するため好ましくない。一方30部を越えると配合物の軟化点が高くなりすぎて、ホットメルト組成物として溶融させて使用する目的にそぐわない。そして、なお、上記接着剤組成物において、より好適な含有割合は、(A)成分100部に対して、(B)成分300〜1000部の範囲内、(C)成分100〜400部の範囲内、(D)成分30〜200部の範囲内、(E)成分1〜20部である。
【0023】
また、上記(B)熱伝導付与剤の含有割合は、熱伝導性ホットメルト接着剤組成物全体中の5〜90質量%の範囲に設定されていることが好ましく、特に好ましくは50〜80質量%の範囲である。すなわち、5質量%未満であると熱伝導性が不充分となる傾向があり、90質量%を超えると、硬くなりすぎたり、粘着性が低下する。
【0024】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物には、上記成分に加えて老化防止剤等を適宜に配合することができる。
【0025】
上記老化防止剤として、例えばアルデヒド類、アミン類、フェノール類等の各種のものを単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができるが、なかでもヒンダート・フェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、ジラウリル・チオジブロビオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(混合モノ−およびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛を単独あるいは2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
そして、上記老化防止剤の含有割合は、ホットメルト接着剤の耐老化性向上の観点から、上記ポリマー(A)成分100部に対して、0.2〜10部の範囲に設定されていることが好ましい。
【0027】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の各成分及び所望により用いられる添加剤成分を加熱混練機、例えば、ロール、バンバリーミキサー、プラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー、一軸押出機、二軸押出機などを用いて溶融混練りし、熱伝導性付与剤がマトリックス(熱可塑性ホットメルト組成物)中に均一に分散した耐熱性・熱伝導性ホットメルト接着剤を容易に製造することができる。
【0028】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は、電子部品や半導体装置の発熱する部分と放熱部品や放熱板などの間に挟むことにより効率的に発生した熱を放出し、電子部品、半導体装置や表示装置の熱劣化などを低減し、故障を減らしたり、寿命を延ばすことができる。具体的な電子部品あるいは半導体装置としては、特に限定はないが、コンピュータのCPU(中央演算素子)、プラズマディスプレイパネル、有機EL素子、二次電池あるいはその周辺機器(ハイブリッド電気自動車などにおいて二次電池と放熱体の間に記載熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を設け温度制御を行ない電池特性を安定化させる装置)、同じく電動機の放熱器、ペルチェ素子、インバータ、(ハイ)パワートランジスタなどが挙げられる。
【0029】
特にプラズマディスプレイパネルは放電に伴う発熱や大きいパネルのために熱の不均一化が生じやすい。そのため放熱・均熱させるための構造が必要である。プラズマディスプレイパネルは、パネル自体の面積が比較的広く、また発光させる色・明るさによってパネル内での温度差が発生しやすい。この温度差が激しい場合、ガラス製であるパネルが割れる危険性もある。よってこの温度差を解消させるために均熱も必要である。本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は熱伝導性と粘着性を有しているので、パネルと放熱板を貼着するのに最適である。またパネルや放熱板は完全には平坦ではなく、わずかな凹凸が存在し、そのため密着性を高めるために接着剤組成物には柔軟性が要求される。当該熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は熱伝導性、耐熱性、接着性以外にも、粘着性、柔軟性、密着性、難燃性、耐久性に優れ、プラズマディスプレイパネル用の接着剤として最適である。
【0030】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を発熱体と放熱体の間に挟む方法として、押出機や溶剤法で作製した熱伝導性ホットメルト接着剤組成物シートを放熱体へ貼り発熱体を貼着する方法、前記方法で作製したシートを発熱体へ貼り放熱体を貼着する方法、放熱体へ直接的に熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を溶融塗布して発熱体を貼着する方法、発熱体へ直接的に熱伝導性ホットメルト接着剤組成物を溶融塗布して放熱体を貼着する方法等がある。シートを作製して貼着する方法ではシートを作製する工程と貼り合せる工程の二段階に分割されるため、生産性にも時間的にも効率的でない。発熱体或いは放熱体へ直接的に溶融塗布して貼着方法では工程数が少ないため連続生産性、生産時間の短縮の観点から特に好ましい。
【0031】
溶融塗布による熱伝導性ホットメルト接着剤組成物の形状としては、通常公知の形状を適用することができる。例えば、スジ状、シート状、スパイラルスプレー状、カーテンスプレー状、ドット状等の形状に形成することが挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例、比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り質量部および質量%である。
【0033】
実施例、及び、比較例において用いた評価方法は次のとおりである。
【0034】
熱伝導性:プローブ法にて測定した装置は京都電子工業株式会社製迅速熱伝導率計QTM−500を用いた。試験片は幅70mm、長さ150mm、厚さ20mmのプレスシートを使用した。測定環境温度は20.0±1.0℃であった。
【0035】
溶融粘度:ブルックフィールド粘度計を用いて200℃で測定した。
【0036】
耐熱性:SAFT(剪断接着破壊温度)試験によって評価した。ガラス板へホットメルト接着剤を1mm厚に塗工したものを試験片とした。試験条件は、先程の試験片の幅25mm、長さ25mm部分をアルミ板に貼付け、2kgのローラを1往復させ圧着する。このように貼り合せたものに500g荷重をかけて2℃/5分のペースで昇温させ、落下温度を測定する。測定は室温から180℃まで行った。
【0037】
塗工性:200℃の溶融タンクで接着剤組成物を溶融させた後、ギアポンプでガラス面へ3mm径のビード状に溶融塗布を行った。溶融塗布したときの塗出性が良好であるものを「良」、困難であるものを「不可」とした。
【0038】
剥離強度:アルミニウムシートへホットメルト接着剤を1mm厚に塗工したものを試験片とした。試験条件は、先程の試験片の幅25mm、長さ25mm部分を70℃に加温した状態でガラス板に貼付け、2kgのローラを1往復させ圧着する。このように貼り合せたものを23℃雰囲気下で180°剥離させて測定を行った。
【0039】
実施例及び比較例において用いた成分は下記のとおりである。
成分(A):熱伝導性付与剤(神島化学工業(株)製、商標名:電融マグネシアA25、炭酸マグネシウム)、成分(B):酸無水物変性熱可塑性樹脂(クレイトンポリマージャパン(株)製、商標名:クレイトンFG−1924X、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸付加量1.0%、MFR8.0g/10分(200℃、5kg))、成分(C):熱可塑性樹脂(クラレ(株)製、商標名:セプトン2063、スチレン−エチレンプロピレン−エチレン共重合体、スチレン付加量含有量 13%、MFR22.0g/10分(200℃、10kg))、成分(D):粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、商標名:クリアロンP−150)、成分(E):可塑剤(出光興産(株)製、商標名:プロセスオイルPW−90、パラフィン系オイル)、成分(F):エンジニアリングプラスチック(日本GEプラスチックス(株)製、商標名:SA−120、ポリフェニレンエーテル)
【0040】
実施例1〜4、比較例1〜4
上記各成分を下記の表1に示す割合で配合してなる接着剤組成物を用いて、熱伝導率、溶融粘度、耐熱性、塗工性、剥離強度を上記の方法に従って評価した。得られた結果を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
上記の結果から実施例1〜4は熱伝導率0.4W/mK以上で耐熱性・塗工性・剥離強度が良好なものが得られた。比較例1は熱伝導率が優れた結果となったが、溶融粘度が高すぎて塗工性不良で接着性が低下する結果となった。また、比較例2は熱伝導付与剤が足りず熱伝導率が不足した。また、比較例3は酸無水物が不足したため剥離強度が低下し、比較例4はエンジニアリングプラスチックが不足したため耐熱性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物は熱伝導性、耐熱性に優れ、更に直接的に発熱体或いは放熱体に塗布により生産効率の向上を達成することが出来た。また、本発明の組成物を、発熱体と放熱体との間に設けた電子部品、半導体装置或いは表示装置を製造することにより、従来に比較して、より高負荷に耐えうる高性能の装置を構成することが可能となり、特にプラズマディスプレイパネルの熱伝導性接着剤として最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸無水物変性熱可塑性樹脂と熱伝導付与剤を含有し、溶融粘度が200℃においては10,000〜3,000,000mPa・sであり、熱伝導率が0.4W/mK以上であり、ガラス基材あるいはアルミニウム基材に対する剥離強度が200N/m以上であることを特徴とする耐熱性のある熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
下記の(A)〜(E)を必須成分として含有し、(A)100質量部に対し、(B)50〜1500質量部と(C)50〜400質量部と(D)20〜300質量部と(E)0.5〜30質量部含有することを特徴とする請求項1記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。
(A)酸無水物変性熱可塑性樹脂を10〜100質量%含有する熱可塑性樹脂
(B)熱伝導付与剤
(C)粘着付与剤
(D)可塑剤
(E)エンジニアリングプラスチック
【請求項3】
(A)に示される酸無水物変性熱可塑性樹脂が、酸無水物を0.5〜5質量%変性したスチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱伝導性ホットメルト接着剤組成物。

【公開番号】特開2008−143975(P2008−143975A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330595(P2006−330595)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】