熱伝導性封止部材および素子
【課題】本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、を有することを特徴とする熱伝導性封止部材を提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】本発明は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、を有することを特徴とする熱伝導性封止部材を提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す場合がある。)素子の構成は、一対の電極間に、発光層および必要に応じてその他の機能を有する層を積層した積層構造を基本としている。
【0003】
EL素子は、水分に対する耐性が弱く、水分の影響によりシュリンクやダークスポットなどが発生する。ここで、シュリンクとは、時間が経つにつれて、あたかも発光領域が収縮するように非発光領域の拡大が進行する現象をいう。また、ダークスポットとは、EL素子の作製直後に生じる黒点のような非発光領域をいう。このダークスポットも時間の経過とともに拡大することがある。すなわち、EL素子は、水分が存在することにより、経時的に劣化するのである。
EL素子への水分の浸入を防止する手法としては、EL素子を封止部材または封止構造によって封止するのが主流であり、従来から種々の検討がなされている。
【0004】
また、EL素子は、発光効率が100%とはならないために、再結合により発生したエネルギーの一部は熱となる。そして、封止によって、発光の際のロスとして発生する熱は必然的にEL素子内部で滞留しやすくなる。ところが、EL素子は一般的に熱に弱い。このため、熱が長時間または大量にEL素子内部に滞留すると、発光ムラ、熱による寿命の短縮、また最悪の場合にはEL素子自体の破壊が生じるおそれがある。特に照明用途のEL素子の場合にはこの問題が顕著に現れる。また、熱量が大きいと、素子を構成する部材からガスが発生する場合があり、この素子内部に発生したアウトガスにより素子が劣化するおそれもある。
【0005】
このような問題を解決するために、封止部材または封止構造に放熱性を付与する検討がなされており、例えば、所定の熱伝導率を有する金属板の少なくとも片面が絶縁層で被覆された封止部材(例えば特許文献1参照)、金属板または金属箔上に、EL素子の発熱を吸熱する吸熱体と、この吸熱体で吸熱した熱を外部へ放熱する放熱体とが順に積層された封止構造(例えば特許文献2〜4参照)が提案されている。また、封止部材または封止構造ではなくEL素子を支持する基板に放熱性を付与する検討もなされている(例えば特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、このような封止部材または封止構造では、放熱が不十分であるといった問題があった。
【0007】
なお、このような水分の浸入防止および放熱機能の付与が必要となる課題は、EL素子のみに限られず、すなわち電気を光に変換する素子に限定されず、有機薄膜太陽電池や固体撮像素子などの光を電気に変換する半導体素子等にも共通して生じるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−331695号公報
【特許文献2】特開2008−10211号公報
【特許文献3】特開2008−34142号公報
【特許文献4】特開2008−181832号公報
【特許文献5】特開2006−331694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、を有することを特徴とする熱伝導性封止部材を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記金属基材は熱伝導性に優れ、上記放熱シートも高い熱伝導性を有しているので、上記熱伝導性封止部材により封止される被封止物の放熱性に優れたものとすることができる。さらに、上記金属基材はガスバリア性に優れているため、優れた水分の遮断性を有する。よって、例えばEL素子に用いた場合には、発光特性を長期間に亘って安定して維持するとともに、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することが可能である。
【0012】
本発明においては、上記放熱シートの熱伝導率が、1W/mK以上であることが好ましい。熱伝導性により優れたものとすることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記放熱シートの厚みが5μm〜3000μmの範囲内であることが好ましい。より熱伝導性に優れたものとすることができるからである。
【0014】
本発明においては、上記金属基材および放熱シートの間に、絶縁性を有する絶縁層を有することが好ましい。上記放熱シートに高い絶縁性が不要となり、上記放熱シートの薄膜化を図ることができる。その結果、本発明の熱伝導性封止部材をより熱伝導性に優れたものとすることができるからである。また、本発明の熱伝導性封止部材を薄膜化することができ、例えば、このような熱伝導性封止部材により封止される素子全体を薄膜化することができるからである。
【0015】
本発明においては、上記絶縁層を有する場合において、上記放熱シートの厚みが5μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。上記放熱シートの熱伝導性を熱伝導性に優れたものとすることができるからである。また、薄膜化を図ることができるからである。
【0016】
本発明においては、上記絶縁層が、ポリイミドを主成分とするものであることが好ましい。絶縁性、耐熱性に優れた絶縁層とすることが可能となるからである。
【0017】
本発明においては、上記絶縁層および放熱シートの間に、粘着層を有することが好ましい。上記絶縁層と放熱シートとの接着性により優れたものとすることができるからである。
【0018】
本発明は、発熱素子と、上記発熱素子を覆うように形成された熱伝導性封止部材と、を有する素子であって、上記熱伝導性封止部材が、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートとを有し、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されていることを特徴とする素子を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記熱伝導性封止部材が、上記発熱素子を覆うように配置されていることにより、上記発熱素子で発生した熱の放熱性に優れたものとすることができる。また、煩雑な工程を要することなく簡便な方法で封止されたものとすることが可能である。
【0020】
本発明においては、上記発熱素子が、透明基板と、上記透明基板上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された背面電極層と、上記透明電極層、上記EL層、および上記背面電極層を覆うように形成された熱伝導性封止部材とを有するEL素子であり、上記放熱シートが、上記透明電極層、上記EL層、および上記背面電極層を覆うように上記透明基板に接着されていることが好ましい。上記EL素子は、熱等による影響を受け易いものであるため、本発明の効果を効果的に発揮することができるからである。
また、上記放熱シートが、上記透明電極層、EL層および背面電極層を覆うように透明基板に接着されており、上記放熱シートが透明電極層、EL層および背面電極層による段差に追従しているため、実質的に空気層(気体層)を介することなく熱伝導性封止部材を密着させることができる。よって、煩雑な工程を要することなく簡便な方法でEL素子を封止することが可能である
【0021】
本発明においては、上記透明基板上に上記熱伝導性封止部材の外周を囲むように封止樹脂部が形成されていることが好ましい。外部からの水分の浸入を効果的に防ぐことができるからである。
【0022】
本発明においては、上記封止樹脂部が吸湿剤を含有することが好ましい。封止樹脂部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。
【0023】
本発明においては、上記背面電極層が透明性を有し、上記背面電極層と上記熱伝導性封止部材との間に白色反射層が形成されていることが好ましい。EL層からの発光を白色反射層によって拡散反射させることができ、干渉効果により発生する発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材を提供できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の熱伝導性封止部材の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のEL素子の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略上面図および断面図である。
【図5】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図13】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図14】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、熱伝導性封止部材および素子に関するものである。
以下、本発明の熱伝導性封止部材および素子について詳細に説明する。
【0027】
A.熱伝導性封止部材
まず、本発明の熱伝導性封止部材について説明する。
本発明の熱伝導性封止部材は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、を有することを特徴とするものである。
【0028】
このような本発明の熱伝導性封止部材について図を参照して説明する。図1は、本発明の熱伝導性封止部材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、上記金属基材1上に形成され、粘着性を有するバインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含み、両面に粘着性を有する放熱シート2と、を有するものである。
【0029】
図2は、本発明の熱伝導性封止部材を用いて封止したEL素子の一例を示す概略断面図である。図2に例示するEL素子20は、透明基板21と、透明基板21上に形成された透明電極層22と、透明電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有するEL層23と、EL層23上に形成された背面電極層24と、上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように形成された熱伝導性封止部材10と、上記透明基板21上に熱伝導性封止部材10の外周を囲むように形成された封止樹脂部25とを備えており、熱伝導性封止部材10の放熱シート2が上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように透明基板21に接着されている。
【0030】
一般に金属基材は熱伝導性およびガスバリア性に優れている。また、放熱シートも熱伝導性に優れるものであるため、上記放熱シートは、発光層からの発熱を金属基材へより効率的に伝える役割を果たす。したがって本発明の熱伝導性封止部材においては、水分の遮断性が高いとともに、熱を速やかに伝導もしくは放射することを可能とし放熱性に優れたものとすることができる。
このような本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付けると、放熱シートが透明電極層とEL層と背面電極層とによる段差に追従し、放熱シートが透明電極層とEL層と背面電極層とを覆うように透明基板に密着され、熱伝導性封止部材と透明基板との間には隙間が存在しないことになる。よって、熱伝導性が高く、発熱による悪影響を抑制することができ、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することができる。また、この場合、熱伝導性封止部材はガスバリア性に優れるため、熱伝導性封止部材側からの水分の透過を低減することができ、発光特性を長期間に亘って安定して維持することができる。
【0031】
図3は、本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。図3に例示する熱伝導性封止部材10は、上記金属基材1と、上記放熱シート2との間に絶縁性を有する絶縁層3を有している。
【0032】
本発明においては、図3に示すように、絶縁層が形成されていてもよい。上記放熱シートに高い絶縁性が不要となり、上記放熱シートの薄膜化を図ることができる。その結果、上記放熱シートを熱伝導性により優れたものとすることができ、本発明の熱伝導性封止部材をより熱伝導性に優れたものとすることができるからである。
【0033】
本発明の熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも有するものである。
以下、本発明の熱伝導性封止部材の各構成について説明する。
【0034】
1.放熱シート
本発明に用いられる放熱シートは、バインダー樹脂および熱伝導性粒子を含むものである。
【0035】
本発明に用いられる放熱シートの熱伝導率としては、所望の熱伝導性を付与できるもののであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1W/mK以上であることが好ましく、なかでも、3W/mK以上であることが好ましく、特に、5W/mK以上であることが好ましい。熱伝導率が大きければ大きいほど同じ膜厚における熱伝導性に優れている。このため、上記熱伝導率の上限については特に限定せず、用いる材料等に応じて決定されるものである。
なお、熱伝導率は、JIS R 1611などに記載の方法等を用いることができる。具体的には、レーザーフラッシュ法、熱線法、平板熱流計法、温度傾斜法などにより測定が可能であり、上記放熱シートの材料に応じて適宜選択される。
【0036】
本発明に用いられる放熱シートの耐熱性としては、本発明の熱伝導性封止部材の製造過程における加熱や、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を封止する場合にはEL素子の製造過程における加熱およびEL素子の発熱などに耐える程度であればよく、プロセス温度において放熱シートからガスが発生しないことが好ましい。具体的には、放熱シートを構成する粘着剤の5%重量減少温度が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。5%重量減少温度が上記範囲より小さいと、EL素子の発光時の発熱により粘着剤が分解し、その分解時に発生する物質によって素子特性を劣化させるおそれがある。また、熱劣化により放熱シート自身の粘着性が低下し、素子との密着性が悪くなり、素子から剥離する場合がある。
なお、5%重量減少温度は、熱重量分析装置または示差熱天秤(例えばThermo Plus TG8120(リガク社製))を用い、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で昇温し、測定した値である。
【0037】
本発明に用いられる放熱シートは、本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際には透明電極層とEL層と背面電極層とを覆うように透明基板に配置されるものであり、凹凸追従性を備える。具体的には、上記放熱シートの室温での貯蔵弾性率が、1.0×102Pa以上1.0×107Pa以下であることが好ましく、1.0×103Pa以上1.0×106Pa以下であることがさらに好ましく、1.0×104Pa以上1.0×106Pa以下であることが特に好ましい。なお、室温とは25℃をいう。放熱シートの室温での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、実用上十分な粘着性と良好な凹凸追従性が得られる。室温における貯蔵弾性率が上記範囲より小さい場合は、放熱シートが脆弱なものとなり凝集破壊を起こしやすくなる。一方、上記範囲より大きい場合は、凹凸に対する十分な追従性が発現されにくい。貯蔵弾性率は硬さ・軟らかさの指標となるものであり、放熱シートの室温での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、例えばEL素子の場合には透明電極層とEL層と背面電極層とによる段差を十分に埋めることができる。
なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、RSA3 (TAインスツルメンツ社製)を用い、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した値である。
【0038】
また、放熱シートの凹凸追従性としては、放熱シートを構成する粘着剤のガラス転移温度(Tg)が100℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付ける際の温度が、粘着剤のTgよりも低いと、凹凸に追従することが困難となる。よって、粘着剤のTgは比較的低いことが好ましく、室温以下であることが特に好ましいのである。粘着剤のTgが上記範囲であれば、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付ける際の温度を低くすることができる。
【0039】
上記放熱シートは、通常、絶縁性を有する。具体的に、上記放熱シートの体積抵抗は、1.0×107Ω・m以上であることが好ましく、1.0×108Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×109Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0040】
本発明に用いられる放熱シートは、表面に粘着性を有するものであっても、有しないものであっても良い。上記放熱シートが表面に粘着性を有するものであることにより、上記金属基材等と容易に接着させることができるからである。また、上記放熱シートが表面に粘着性を有しない場合には、例えば、上記バインダー樹脂として粘着性を有しないものを用いることが可能となり、上述の熱伝導率や強度等の物性に優れたものとすることができるからである。
本発明においては、上記放熱シートが表面に粘着性を有する場合には、両面に粘着性を有することが好ましい。上記金属基材および被封止物と粘着層等を介さずに接着することができるため、本発明の熱伝導性封止部材を容易に形成することや、EL素子等の発熱素子を有する素子を容易に封止することができるからである。
【0041】
本発明において、上記放熱シートが表面に粘着性を有する場合の表面粘着力としては、上記金属基材や被封止物等と十分に接着することができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.5N/25mm以上であることが好ましく、なかでも、1N/25mm〜50N/25mmの範囲内であることが好ましく、特に、2N/25mm〜30N/25mmの範囲内であることが好ましい。上記放熱シートの表面粘着力が上述した範囲内であることにより、上記金属基材や被封止物等と密着性良く接着することができるからである。
ここで、上記放熱シートの表面粘着力の測定方法としては、JIS Z 0237に準拠した方法で測定することができる。例えば、放熱シートを幅25mmにカットし、粘着剤層に対して被着体を貼り合わせ、引張試験機(エーアンドディ社製(TENSILON RTF−1150−H))により、被着体を固定し、放熱シートを、引張速度300mm/分で、180°方向に引き剥がした際の粘着強度を求めることにより測定することができる。
【0042】
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、上記熱伝導性粒子を安定的に保持することができ、上記放熱シートが上述の特性を満たすことができ、かつ本発明の耐熱性封止部材をEL素子に用いる場合にはEL層に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ボリブタジエンやアクリル樹脂等が挙げられるが、耐熱性や電気絶縁性、信頼性に優れているシリコーン樹脂が特に好ましい。
また、上記バインダー樹脂としては、粘着性を有さないものであっても良いが、粘着性を有するものであってもよい。粘着性を有するものであることにより、表面に粘着性を有する放熱シートとすることが容易だからである。また、粘着性を有さない場合には、上述のように、上記放熱シートを熱伝導率や強度等の物性に優れたものとすることができるからである。
【0043】
本発明に用いられる熱伝導性粒子は熱伝導性に優れたものである。
このような熱伝導性粒子としては、上記放熱シートが上述の特性を満たすことができ、かつ本発明の耐熱性封止部材をEL素子に用いる場合にはEL層に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、熱伝導性の無機フィラーを好ましく用いることができる。本発明においては、なかでも、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、マグネシア等の酸化物、または窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物、アルミニウム、カーボン、銀、銅等を好ましく用いることができ、特に、電気絶縁性を向上させる観点からアルミナ、シリカ、酸化亜鉛、マグネシア等の酸化物、または窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物を好ましく用いることができる。
【0044】
また、このような熱伝導性微粒子の含有量としては、上記放熱シートを熱伝導率を有するものとすることができるものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、上記バインダー樹脂100重量部に対して、1重量部〜5000重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも10重量部〜3000重量部の範囲内であることが好ましく、特に20重量部〜2000重量部の範囲内であることが好ましい。上記放熱シートを熱伝導性に優れたものとすることができるからである。
【0045】
本発明において、このようなバインダー樹脂および熱伝導性粒子を含む放熱シートとしては、例えば、特開2008−166406号公報に記載するものを用いることができる。
また、市販の製品としては、具体的には、デンカ社製BFG20、デンカ社製DKN100P等を用いることができる。
【0046】
また、本発明に用いられる放熱シートは、吸湿剤を含有していてもよい。放熱シート中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。
【0047】
上記吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着する機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、化学的に水分を吸着するとともに、吸湿しても固体状態を維持する化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、金属酸化物、金属の無機酸塩もしくは有機酸塩などを挙げることができる。特に、アルカリ土類金属酸化物および硫酸塩が好ましい。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等を挙げることができる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル等を挙げることができる。また、シリカゲルや、ポリビニルアルコールなどの吸湿性を有する有機化合物も用いることができる。これらのなかでも、酸化カルシウム、酸化バリウム、シリカゲルが特に好ましい。これらの吸湿剤は吸湿性が高いからである。
【0048】
本発明に用いられる放熱シートにおける吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、上記吸湿剤および上記バインダー樹脂の合計量100重量部に対して、上記吸湿剤が5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0049】
本発明における放熱シート中の吸湿剤の分布は、均一であってもよく不均一であってもよい。なかでも、放熱シートの外縁部のみに吸湿剤が含有されていることが好ましい。本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際に、背面電極層と接する放熱シートの部分に吸湿剤が含有されていると、吸湿剤によって放熱シート表面が荒れ、EL層にダメージを与えるおそれがあるからである。すなわち、本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際、背面電極層と接しない放熱シートの部分に吸湿剤が含有されていることが好ましい。
【0050】
また、本発明に用いられる放熱シートは、白色反射層としての機能を有してもよい。本発明の熱伝導性封止部材をEL素子に用いた場合には、EL層からの発光が白色反射層である放熱シート表面で拡散反射されるため、干渉効果により発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
【0051】
本発明に用いられる放熱シートの厚みは、凹凸追従性および熱伝導性を兼ね備えることができれば特に限定されるものではない。例えば、後述するような絶縁層を有する場合には、上記放熱シートに高い絶縁性が不要であることから、薄膜化を図ることができ、5μm〜200μmの範囲内とすることが好ましく、5μm〜100μmの範囲内とすることが好ましい。放熱シートの厚みが薄すぎると十分な凹凸追従性が得られない場合があり、放熱シートの厚みが厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
また、上記絶縁層を含まない場合には、上記放熱シートに十分な絶縁性が要求されることから5μm〜3000μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、100μm〜3000μmの範囲内であることが好ましく、特に、150μm〜1000μmの範囲内であることがより好ましい。
【0052】
本発明における放熱シートは、金属基材上に全面に形成されていてもよく、金属基材上に部分的に形成されていてもよい。なかでも、放熱シートは金属基材上に部分的に形成されていることが好ましい。すなわち、金属基材の放熱シートが形成されている面に、上記放熱シートが存在せず、金属基材が露出している金属基材露出領域が設けられていることが好ましい。このような金属基材露出領域を有することにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を封止する際には、封止樹脂部を放熱シートを介することなく金属基材と密着させることが可能となり、EL素子への水分の浸入をより強固に防ぐことが可能となる。また、封止樹脂部を金属基材露出領域に選択的に形成することで、EL素子を面内で区分けしたり、多面付けした状態で封止したりすることが可能となり、高い生産性で素子を製造できるといった利点を有する。また、金属基材露出領域は、放熱シートを貫通し金属基材に電気的に導通をとるための貫通孔にもなり得る。
放熱シートが金属基材上に部分的に形成されている場合であって、吸湿剤を含有していない場合には、なかでも、図4(a)、(b)に例示するように、放熱シート2は、金属基材1の外縁部11を除いて形成されていることが好ましい。なお、図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のA−A線断面図である。本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を作製した場合、金属基材の全面に放熱シートが形成されており放熱シートの端面が露出していると、製造時や駆動時に放熱シートの端面から水分が浸入するおそれがある。この水分によって、素子性能が劣化したり、放熱シートの寸法が変化したりする。そのため、放熱シートが吸湿剤を含有していない場合には、特に、金属基材の外縁部には放熱シートが形成されていないことが好ましいのである。
なお、図4中の符号については、図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、図4中においては、絶縁層3についても外縁部を除いて形成されている。
【0053】
本発明に用いられる放熱シートの形成方法としては、上記放熱シートを形成可能な、上記バインダー樹脂および熱伝導性粒子を含む放熱シート形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0054】
2.金属基材
本発明に用いられる金属基材は、上記放熱シートを支持するものである。
【0055】
本発明に用いられる金属基材の線熱膨張係数としては、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、金属箔を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとし、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0056】
上記金属基材を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。なかでも、大型の素子に適用する場合、SUSが好ましい。SUSは、耐久性、耐酸化性、耐熱性に優れている上、銅などに比べ線熱膨張係数が小さく寸法安定性に優れる。また、SUS304およびSUS430が入手しやすいという利点もある。放熱性という観点では、銅やアルミニウムが好ましいが、銅については酸化し変質しやすい、アルミニウムについては耐熱性が低く耐薬品性に劣る部分があり、プロセスが制限されるという課題もある。
【0057】
金属基材の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔状や板状であってもよく、図5に例示するように金属基材1の形状が空気との接触面に凹凸を有する形状であってもよい。
本発明においては、なかでも、上記金属基材が空気との接触面に凹凸を有することが好ましい。金属基材が空気との接触面に凹凸を有する場合には、熱拡散が良好となり、放熱性を高めることができるからである。
なお、図5中の符号については、図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0058】
本発明における上記金属基材に形成される凹凸の寸法や形状としては、金属基材の空気との接触面における表面積を増やすことができれば特に限定されるものではない。凹凸の幅、高さ、ピッチ等としては、金属基材の種類や熱伝導性封止部材の用途等に応じて適宜選択され、例えばシミュレーションにより熱伝導に好適な範囲を求めることができる。
【0059】
本発明において、上記金属基材への凹凸の形成方法としては、例えば金属基材の表面に直接、エンボス加工、エッチング加工、サンドブラスト加工、フロスト加工、スタンプ加工などの加工を施す方法、フォトレジスト等を用いて凹凸パターンを形成する方法、めっき方法、箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法が挙げられる。エンボス加工の場合、例えば表面に凹凸を有する圧延ロールを用いてもよい。エッチング加工の場合、金属基材の種類に応じて薬剤が選択される。箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法の場合、例えば、ロウ付け、溶接、半田等により金属層同士を接合する、あるいは、エポキシ樹脂等の接着剤を介して金属層同士を貼り合わせることができる。この場合、箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とは、同じ金属材料で構成されていてもよく、異なる金属材料で構成されていてもよい。
中でも、コスト面から、エンボス加工、エッチング加工が好ましく用いられる。
【0060】
金属基材の厚みとしては、熱伝導性を備えることができれば特に限定されるものではなく、本発明の熱伝導性封止部材の用途に応じて適宜選択される。金属基材の厚みが厚いほど、面方向への熱拡散に優れたものとなる。一方、金属基材の厚みが薄いほど、可撓性に富んだものとなる。例えば本発明の熱伝導性封止部材が可撓性を有する場合には、熱伝導性および可撓性を兼ね備えることができればよく、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2μm〜300μmの範囲内、さらに好ましくは5μm〜50μmの範囲内である。金属基材の厚みが薄すぎると、放熱機能を十分に発揮できなかったり、水蒸気に対するガスバリア性が低下したりする。また、金属基材の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりする。
【0061】
金属基材の作製方法としては、一般的な方法を用いることができ、金属材料の種類や金属基材の厚みなどに応じて適宜選択される。例えば、金属基材単体を得る方法であってもよく、上記放熱シート上に金属材料を蒸着し、金属基材と放熱シートとの積層体を得る方法であってもよい。なかでも、ガスバリア性の観点から、金属基材単体を得る方法が好ましい。金属基材単体を得る方法の場合であって、金属基材が金属箔である場合、金属箔は圧延箔であってもよく電解箔であってもよいが、ガスバリア性が良好であることから、圧延箔が好ましい。
【0062】
3.その他
本発明の熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも含むものであるが、必要に応じて他の構成を有するものであっても良い。
このような他の構成としては、具体的には、図6に例示するように、上記金属基材1および放熱シート2の間に形成され、絶縁性を有する絶縁層3、上記放熱シート2上に形成され、取り扱い性向上を図ることができる剥離層4や、図7に例示するように、例えば、表面に粘着性を有しない場合の放熱シート2と、上記剥離層4および上記絶縁層3との間等の各部材間に形成され、両者を接着させる粘着層5等を挙げることができる。
また、図8に例示するように、上記金属基材1の外縁部に金属基材露出領域が設けられている場合に、上記金属基材1の外縁部11に形成され、外部からの水分の浸入を効果的に防ぐことができる防湿部6等を挙げることができる。
なお、図6〜8中の符号については、図2および図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
(1)絶縁層
本発明に用いられる絶縁層は、絶縁性を有するものであり、上記金属基材および放熱シートの間に形成されることにより、本発明の熱伝導性封止部材の絶縁性を向上させることができるものである。
本発明においては、このような絶縁層を有することにより、上記放熱シートに高い絶縁性が不要となり、上記放熱シートの薄膜化を図ることができる。その結果、上記放熱シートを熱伝導性により優れたものとすることができ、本発明の熱伝導性封止部材をより熱伝導性に優れたものとすることができる。したがって、このような熱伝導性封止部材を用いて有機EL素子を形成した場合には、素子の劣化が少ないものとすることができるからである。
【0064】
上記絶縁層は絶縁性を備えるものである。具体的に、上記絶縁層の体積抵抗は、1.0×109Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1010Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1011Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0065】
本発明に用いられる絶縁層の吸水性としては、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などに用いられる半導体材料には水分に弱いものが多いことから、素子内部の水分を低減するために、比較的小さいことが好ましい。吸水性の指標の一つとして、吸湿膨張係数がある。したがって、絶縁層の吸湿膨張係数は小さければ小さいほど好ましく、具体的には、0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/%RH〜12ppm/%RHの範囲内、さらに好ましくは0ppm/%RH〜10ppm/%RHの範囲内である。絶縁層の吸湿膨張係数が上記範囲であれば、絶縁層の吸水性を十分小さくすることができ、熱伝導性封止部材の保管が容易であり、熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合にはその工程が簡便になる。また、絶縁層の吸湿膨張係数が小さいほど、絶縁層の寸法安定性が向上する。絶縁層の吸湿膨張係数が大きいと、吸湿膨張係数がほとんどゼロに近い金属基材との膨張率の差によって、湿度の上昇とともに熱伝導性封止部材が反ったり、絶縁層および金属基材の密着性が低下したりする場合がある。
【0066】
なお、評価サンプルとしての絶縁層フィルムの作成方法としては、耐熱フィルム(ユーピレックス S 50S(宇部興産(株)製)など)やガラス基板上に絶縁層フィルムを作製した後、絶縁層フィルムを剥離する方法や、金属基板上に絶縁層フィルムを作製した後、金属をエッチングで除去し絶縁層フィルムを得る方法などがある。次いで、得られた絶縁層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置(Thermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。例えば、温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持する。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とする。測定の際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重は1g/25000μm2とする。
【0067】
また、上記絶縁層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、金属基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。絶縁層と金属基材との線熱膨張係数が近いほど、熱伝導性封止部材の反りが抑制されるとともに、熱伝導性封止部材の熱環境が変化した際に、絶縁層と金属基材との界面の応力が小さくなり密着性が向上する。また、本発明の熱伝導性封止部材は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では平坦であることが好ましいのであるが、絶縁層および金属基材の線熱膨張係数が大きく異なると、熱伝導性封止部材が熱環境の変化により反ってしまう。
なお、熱伝導性封止部材が平坦であるとは、熱伝導性封止部材を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
【0068】
具体的に、絶縁層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜10ppm/℃の範囲内である。
【0069】
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、絶縁層のみのフィルムを作製する。絶縁層フィルムの作成方法は、上述したとおりである。次いで、得られた絶縁層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0070】
本発明に用いられる絶縁層を構成する絶縁層用樹脂としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、フェノール樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリフタルアミド、PTFE(ポリエチレンテレフタラート)、アクリル樹脂,ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオキサイド、エポキシ樹脂などが挙げられる。本発明においては、なかでも、耐熱性や絶縁性の観点から、ポリイミド、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、エポキシ樹脂が好ましく、特に、耐熱性や絶縁性の観点からポリイミドを主成分として含むことが好ましい。絶縁性、耐熱性に優れた絶縁層とすることが可能となる。特に、ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁層の薄膜化が可能となり絶縁層の熱伝導性が向上し、より熱伝導性に優れた熱伝導性封止部材とすることができる。
なお、絶縁層がポリイミドを主成分とするとは、上述の特性を満たす程度に、絶縁層がポリイミドを含有することをいう。具体的には、絶縁層中のポリイミドの含有量が75質量%以上の場合をいい、好ましくは90質量%以上であり、特に絶縁層がポリイミドのみからなることが好ましい。絶縁層中のポリイミドの含有量が上記範囲であれば、本発明の目的を達成するのに十分な特性を示すことが可能であり、ポリイミドの含有量が多いほど、ポリイミド本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となる。
【0071】
上記ポリイミドとしては、例えば、ポリイミドの構造を適宜選択することで、絶縁性および熱伝導性を制御したり、吸湿膨張係数や線熱膨張係数を制御したりすることが可能である。
【0072】
本発明に用いられるポリイミドとしては、絶縁層の線熱膨張係数、吸湿膨張係数、熱伝導率を本発明の熱伝導性封止部材に好適なものとする観点から、芳香族骨格を含むポリイミドであることが好ましい。ポリイミドのなかでも芳香族骨格を含有するポリイミドは、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、熱伝導率が高く、線熱膨張係数も低いことから、本発明の熱伝導性封止部材の絶縁層に好ましく用いられる。
【0073】
また、上記ポリイミドは、低吸湿膨張、低線熱膨張であることが求められるため、下記式(I)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。このようなポリイミドは、その剛直な骨格に由来する高い耐熱性や絶縁性を示すとともに、金属と同等の線熱膨張を示す。さらには、吸湿膨張係数も小さくすることが可能である。
【0074】
【化1】
【0075】
(式(I)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、繰り返されるR1同士およびR2同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
式(I)において、一般に、R1は、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、R2はジアミン由来の構造である。
【0076】
ポリイミドに適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0077】
上記ポリイミドの耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
なかでも、吸湿膨張係数を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
【0078】
併用するテトラカルボン酸二無水物としてフッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの吸湿膨張係数が低下する。しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミドの前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直なテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、線熱膨張係数と吸湿膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0079】
テトラカルボン酸二無水物として脂環骨格を有する場合、ポリイミド前駆体の透明性が向上するため、高感度の感光性ポリイミド前駆体となる。一方で、ポリイミドの耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミドと比較して劣る傾向にある。
【0080】
芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがある。したがって、ポリイミドにおいて、上記式(I)中のR1のうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0081】
【化2】
【0082】
上記ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のR1のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(I)中のR1のうち33%以上含有すればよい。なかでも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のR1のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0083】
一方、ポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は特に限定されるものではなく、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが挙げられる。また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種または2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部もしくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0084】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、ポリイミドは低膨張係数となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接または置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(II)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0085】
【化3】
【0086】
(式(II)中、aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位またはパラ位に結合する。)
さらに、上記式(II)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると吸湿膨張係数を低減させることができる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、金属基材上に絶縁層を部分的に形成する場合には、絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0087】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、金属基材との密着性を改善したり、ポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
【0088】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
【0089】
また、上記ポリイミドにおいては、上記式(I)中のR2のうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0090】
【化4】
【0091】
(R3は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、R4およびR5は1価の有機基、またはハロゲン原子である。)
ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有する場合、ポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式(I)中のR2のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(I)中のR2のうち少なくとも33%以上含有すればよい。なかでも上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のR2のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0092】
本発明においては、上記絶縁層が上述の式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していることが好ましいが、必要に応じて適宜、このポリイミドと他の接着性を有するポリイミドとを積層したり組み合わせたりして、絶縁層として用いてもよい。
【0093】
また、上記式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、感光性ポリイミドまたは感光性ポリイミド前駆体を用いて得られるものであってもよい。感光性ポリイミドは、公知の手法を用いて得ることができる。例えば、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、得られるポリイミド前駆体に光ラジカル開始剤を混合し、溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。また例えば、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド前駆体とする、あるいは、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とするなど、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加し、アルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。
【0094】
これらの感光性ポリイミド前駆体には、ポリイミド成分の重量に対して15%〜35%の感光性付与成分が添加されている。そのため、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、感光性付与成分由来の残渣がポリイミド中に残存する。これらの残存物が線熱膨張係数や吸湿膨張係数を大きくする原因となることから、感光性ポリイミド前駆体を用いると、非感光性のポリイミド前駆体を用いた場合に比べて、EL素子の信頼性が低下する傾向にある。しかしながら、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加した感光性ポリイミド前駆体は、添加剤である光塩基発生剤の添加量を15%以下にしてもパターン形成可能であることから、ポリイミドとした後も添加剤由来の分解残渣が少なく、線熱膨張係数や吸湿膨張係数などの特性の劣化が少なく、さらにアウトガスも少ないため、本発明に適用可能な感光性ポリイミド前駆体としては最も好ましい。
【0095】
上記ポリイミドに用いられるポリイミド前駆体は、塩基性水溶液によって現像可能であることが、金属基材上に絶縁層を部分的に形成する際に、作業環境の安全性確保およびプロセスコストの低減の観点から好ましい。塩基性水溶液は、安価に入手でき、廃液処理費用や作業安全性確保のための設備費用が安価であるため、より低コストでの生産が可能となる。
【0096】
上記絶縁層には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0097】
上記絶縁層の厚みとしては、絶縁性および熱伝導性を兼ね備えることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.3μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜20μmの範囲内である。絶縁層の厚みが薄すぎると十分な絶縁性が得られない場合があり、絶縁層の厚みが厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
【0098】
上記絶縁層は、吸湿剤を含有していてもよい。絶縁層中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。
なお、上記吸湿剤については、上記放熱シートの項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0099】
上記吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤および絶縁層用樹脂の合計量100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0100】
上記絶縁層は、金属基材上に全面に形成されていてもよく、金属基材上に部分的に形成されていてもよい。なかでも、絶縁層は金属基材上に部分的に形成されていることが好ましい。すなわち、金属基材の絶縁層および放熱シートが形成されている面に、絶縁層および放熱シートが存在せず、金属基材が露出している金属基材露出領域が設けられていることが好ましい。
上記絶縁層が金属基材上に部分的に形成されている場合には、なかでも、既に説明した図4や図9に例示するように、絶縁層3は、金属基材1の外縁部11を除いて形成されていることが好ましい。水分の浸入を抑制することができるからである。
【0101】
上記絶縁層の形成方法としては、例えば、金属基材上に上記絶縁層用樹脂を含む絶縁層形成用塗工液を塗布する方法を用いることができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0102】
また、金属基材と絶縁層との積層体を形成するに際しては、上記絶縁層用樹脂からなるフィルムを利用することもできる。上記フィルム上に金属材料を蒸着することで、金属基材と絶縁層との積層体を得ることができる。
【0103】
また、上記絶縁層を金属基材の外縁部を除いて形成する場合、その形成方法としては、上記放熱シートと同様とすることができる。
【0104】
(2)剥離層
本発明に用いられる剥離層は、上記放熱シート上に形成されるものである。
本発明においては、このような剥離層を有することにより、取り扱い性を向上させることができる。
【0105】
このような剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記熱伝導性封止部材が防湿部を有するものである場合には、所定のガスバリア性を満たすものであることが好ましい。防湿部が保管時に吸湿し、防湿性が失われるからである。なお、防湿部を含まない場合には、他の部材に吸収された水分を、使用前に加熱し除去することができるからである。
本発明においてガスバリア性を有する剥離層としては、具体的には、基材フィルム上にガスバリア層が形成された積層体、金属箔、フィルム単体、共押し出しフィルムを挙げることができる。
【0106】
上記基材フィルムの材料としては、フィルム化することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ−ルフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂を挙げることができる。また、これらの樹脂に有機物または無機物の微粒子や粉体を混合したコンポジット材料などを用いてもよい。
【0107】
上記基材フィルムの厚みとしては、剥離性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なガスバリア性フィルムにおける基材フィルムの厚みと同程度とすることができる。基材フィルムの厚みが厚いとフレキシブル性が低下し、基材フィルムの厚みが薄いと基材フィルムを構成する材料にもよるが強度に劣る可能性がある。
【0108】
上記ガスバリア層の材料としては、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、無機材料および有機材料のいずれも用いることができる。
ガスバリア層に用いられる無機材料としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、金属を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金が挙げられる。無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンが挙げられる。金属としては、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、チタンが挙げられる。無機材料として窒化物を含む材料を利用すると、放熱シートに対して離型性を示す場合が多く、ガスバリア性と離型性を兼ね備えた材料として使用できる。
一方、ガスバリア層に用いられる有機材料としては、例えば、エポキシ/シリケート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。PVAおよびEVOHは単独または混合物で使用することができる。
上記ガスバリア層は、単層であってもよく複数層が積層されたものであってもよい。
【0109】
上記ガスバリア層の厚みとしては、剥離性およびガスバリア性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、ガスバリア層の材料に応じて適宜選択され、一般的なガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層と同程度とすることができる。ガスバリア層の厚みが厚いとフレキシブル性が低下したりクラックが生じたりし、ガスバリア層の厚みが薄いと十分なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0110】
上記ガスバリア層の形成方法としては、乾式法であってもよく湿式法であってもよく、材料に応じて適宜選択される。ガスバリア層に無機材料を用いる場合には、通常、乾式法が用いられ、なかでも真空成膜法が好ましく、特に樹脂フィルム上にガスバリア層を形成する際の樹脂フィルム自体の耐熱性を考慮するとプラズマCVD法が好ましい。一方、ガスバリア層に有機材料を用いる場合には、通常、湿式法が用いられる。
【0111】
また、金属箔を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。金属箔は、表面が離型処理されていてもよい。
【0112】
上記金属箔の厚みとしては、剥離性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なガスバリア性フィルムに用いられる金属箔と同程度とすることができる。金属箔の厚みが厚い場合はフレキシブル性が低下し、金属箔の厚みが薄い場合は十分なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0113】
フィルム単体の場合、材料としては、上記基材フィルムの材料を用いることができる。
また、共押し出しフィルムの場合、材料としては、上記基材フィルムに用いられる樹脂に有機物または無機物の微粒子や粉体を混合したコンポジット材料などを使用することができる。
【0114】
(3)粘着層
本発明に用いられる粘着層は、各部材同士の接着や、粘着性を有していない放熱シートの被封止物側表面への粘着性の付与等に用いられるものである。
本発明においては、このような粘着層を、例えば、上記絶縁層や金属基材と放熱シートとの間に形成した場合には、上記絶縁層や金属基材と放熱シートとの密着性を向上させることができる。また、表面に粘着性を有しない放熱シートの上記被封止物側表面に形成された場合には、上記放熱シートが表面に粘着性を有しないものである場合であっても、本発明の熱伝導性封止部材と上記被封止物との密着性に優れたものとすることができる。
このような粘着層としては、上記各部材間または上記被封止物とを所望の強度で接着させることができるものであれば良く、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の粘着性樹脂を挙げることができる。
【0115】
本発明に用いられる粘着層の粘着力としては、上記各部材間、被封止物等と十分な強度で接着させることができるものであれば良いが、具体的には、上記放熱シートが表面に粘着性を有する場合の表面粘着力と同様とすることができる。
【0116】
本発明に用いられる粘着層の膜厚としては、所望の接着性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、上記放熱シートの面積等に応じて適宜設定されるものである。
【0117】
上記粘着層の形成方法としては、例えば、上記放熱シートまたは絶縁層上に形成する場合には、上記放熱シートまたは絶縁層上に上記粘着層用樹脂を含む粘着層形成用塗工液を塗布する方法を用いることができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0118】
また、上記放熱シートまたは絶縁層との積層体を形成するに際しては、上記粘着層用樹脂からなるフィルムを利用することもできる。上記フィルム上に上記絶縁層形成用塗工液や放熱シート形成用樹脂組成物を塗布することで積層体を得ることができる。
【0119】
また、上記粘着層を金属基材の外縁部を除いて形成する場合、その形成方法としては、上記放熱シートと同様とすることができる。
【0120】
(4)防湿部
本発明に用いられる防湿部は、上記金属基材の外縁部に金属基材露出領域が設けられている場合に、上記金属基材の外縁部に形成され、外部からの水分の浸入を効果的に防ぐことができるものである。また、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を封止する際には、図10に例示するように、熱伝導性封止部材が剥離層を有さない場合には熱伝導性封止部材を直接、あるいは熱伝導性封止部材が剥離層を有する場合には熱伝導性封止部材から剥離層を剥がして、透明電極層22とEL層23と背面電極層24とが積層された透明基板21に貼り付けるだけでEL素子20の封止が可能であり、煩雑な工程を要することなく簡便な方法でEL素子を封止することができる。
なお、図10中の符号については、図8のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0121】
上記防湿部の水蒸気透過率は、1.0×10-1g/m2/day以下であることが好ましい。なお、水蒸気透過率の測定方法については、上記剥離層の項に記載した方法と同様である。
【0122】
上記防湿部の構成材料としては、水分の浸入を防ぐ機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂を挙げることができる。
【0123】
上記防湿部は、吸湿剤を含有していてもよい。防湿部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。なお、吸湿剤については、上記放熱シートの項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、上記吸湿剤および上記防湿部の構成材料を含む防湿部形成材料の合計量100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0124】
また、上記防湿部は、金属基材の外縁部に、一重に形成されていてもよく、二重に形成されていてもよい。防湿部が二重に形成されている場合には、外部からの水分の浸入をより防ぐことができる。例えば、防湿部は、吸湿剤を含有する第1防湿部と、この第1防湿部の外周に形成され、第1防湿部よりも水蒸気透過率が低く、接着性を有する樹脂を含有する第2防湿部とを有するものであってもよい。
【0125】
上記防湿部の厚みとしては、通常、上記金属基材上に形成される放熱シート等の部材の合計厚みと同程度とされる。
防湿部の形成方法としては、上記防湿部形成材料を含む樹脂組成物を塗布する方法を用いることができる。上記樹脂組成物を塗布する際には、金属基材上に塗布してもよく剥離層上に塗布してもよい。また、後述するように加工用シートを型抜きする方法を採用する場合には、剥離シート上に樹脂組成物を塗布する。塗布方法としては、所定の部分に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ティスペンサー法などを用いることができる。
また、上記防湿部を金属基材の外縁部に形成するに際しては、印刷法、フォトリソグラフィー法、レーザーで直接加工する方法、加工用シートを型抜きする方法などを用いることができる。加工用シートを型抜きする方法の場合、剥離シート上に防湿部が形成された加工用シートを型抜きし、防湿部上に剥離層を貼付し、防湿部から剥離シートを剥がすことで、剥離層上に防湿部が形成された積層体を得ることができる。この場合に用いられる剥離シートとしては一般的なものを使用することができる。
【0126】
(5)その他
本発明においては、必要に応じて、上記金属基材と絶縁層との間に中間層が形成されていても良い。例えば、金属基材および絶縁層の間に、金属基材を構成する金属が酸化された酸化膜からなる中間層が形成されていてもよい。これにより、金属基材と絶縁層との密着性を高めることができる。この酸化膜は、金属基材表面が酸化されることで形成される。
また、金属基材の絶縁層が形成されている面とは反対側の面にも上記酸化膜が形成されていてもよい。
【0127】
4.熱伝導性封止部材
本発明の熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも含むものである。
本発明において、剥離層が形成されていない場合には、上記熱伝導性封止部材は、放熱シートを内側、金属基材を外側にして、ロール状に巻回されたものであることが好ましい。これにより、取り扱いが容易になるからである。
【0128】
本発明の熱伝導性封止部材は、枚葉であってもよく長尺であってもよい。また、本発明の熱伝導性封止部材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0129】
本発明の熱伝導性封止部材の製造方法としては、上記金属基材および放熱シートを含む各構成を精度良く積層することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記金属基材、粘着層、放熱シートをこの順で配置し加圧・加熱等により積層する等、上記各構成を粘着層等を介して積層する方法や、上記金属基材上に上記放熱シートを形成可能な放熱シート形成用塗工液を塗布し硬化させる等、上記各構成を形成可能な塗工液を、順次塗布・硬化させて形成する方法等を挙げることができる。
【0130】
5.用途
本発明の熱伝導性封止部材は、水分の浸入防止および放熱機能の付与が必要となる素子に用いられる。具体的には、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などの半導体素子が挙げられる。なかでも、照明用途のEL素子に好適である。
【0131】
B.素子
次に、本発明の素子について説明する。
本発明の素子は、発熱素子と、上記発熱素子を覆うように形成された熱伝導性封止部材と、を有する素子であって、上記熱伝導性封止部材が、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートとを有し、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されていることを特徴とするものである。
【0132】
このような本発明の素子について、図を参照して説明する。既に説明した図2は、上記発熱素子がEL素子である場合の一例を示す概略断面図である。図2に例示するEL素子20は、透明基板21と、透明基板21上に形成された透明電極層22と、透明電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有するEL層23と、EL層23上に形成された背面電極層24と、上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように形成された熱伝導性封止部材10と、透明基板21上に熱伝導性封止部材10の外周を囲むように形成された封止樹脂部25とを備えている。熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、金属基材1上に形成され、熱伝導性を有する放熱シート2とを有している。そして、熱伝導性封止部材10の放熱シート2が上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように透明基板21に接着されている。図2に例示するEL素子20は、例えば図1に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。
【0133】
図11および図12は、本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。図11および図12に例示するEL素子20においては、図2に例示するEL素子20に対して、熱伝導性封止部材10の構成が異なる。図11に例示する熱伝導性封止部材10においては、金属基材1の外縁部を除いて絶縁層3が形成されている。図11に例示するEL素子20は、例えば図9に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。一方、図12に例示する熱伝導性封止部材10においては、金属基材1の外縁部を除いて絶縁層3および放熱シート2が形成されている。図12に例示するEL素子20は、例えば図4に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。
【0134】
図10は、本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。図10に例示するEL素子20においては、図2に例示するEL素子20に対して、封止樹脂部が形成されていない点および熱伝導性封止部材10の構成が異なる。図10に例示するEL素子20は、透明基板21と、透明基板21上に形成された透明電極層22と、透明電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有するEL層23と、EL層23上に形成された背面電極層24と、上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように形成された熱伝導性封止部材10とを備えている。熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、金属基材1上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、絶縁性を有する絶縁層3と、絶縁層3上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、耐熱性を有する放熱シート2と、金属基材1の外縁部に形成された防湿部6とを有している。そして、熱伝導性封止部材10の放熱シート2が透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように透明基板21に接着されている。図10に例示するEL素子20は、例えば図8に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。
【0135】
図13は、本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。図13に例示するEL素子20においては、図2に例示するEL素子20に対して、熱伝導性封止部材10の構成が異なる。図13に例示する熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、金属基材1上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、絶縁性を有する絶縁層3と、絶縁層3上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、耐熱性を有する放熱シート2と、金属基材1の外縁部に形成された防湿部6とを有している。図13に例示するEL素子20は、例えば図8に示す熱伝導性封止部材8を用いて得ることができる。
【0136】
本発明によれば、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されることにより、上記発熱素子で発生した熱の放熱性に優れたものとすることができる。
このため、例えば、上記発熱素子がEL素子である場合には、水分の遮断性が高いとともに、熱を速やかに伝導もしくは放射することができる。したがって、発光特性を長期間に亘って安定して維持することができるとともに、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することが可能である。
また本発明によれば、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付けることで、熱伝導性封止部材と、透明電極層、EL層および背面電極層が積層された透明基板とを密着させることができ、煩雑な工程を要することなく簡便な方法でEL素子を封止することが可能である。また本発明においては、室温で熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付けることができるので、熱に弱いEL素子の封止に有利であり、取り扱いが容易であるという利点も有する。
【0137】
1.熱伝導性封止部材
本発明に用いられる熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも含むものである。
【0138】
本発明においては、上記放熱シートが上記金属基材上に形成され、上記金属基材および放熱シートが接するものである。本発明においては、このような金属基材および放熱シートが接着しているものであっても良く、未接着のものであっても良いが、接着しているものであることが好ましい。安定的に上記発熱素子を封止することができるからである。
このような熱伝導性封止部材については、具体的には、上記「A.熱伝導性封止部材」に記載の熱伝導性封止部材を好ましく用いることができる。
【0139】
なお、接するとは、粘着層等の他の層を介して接する場合も含むものである。
また、接着されているとは、上記粘着層または放熱シートの表面の粘着性等を用いて両者が固定されていることをいう。また、未接着である場合には、上記金属基材および放熱シートが移動等しないように、上記金属基材および放熱シートを含む熱伝導性封止部材の両面から加圧した状態で保持する固定手段により固定されていることが好ましい。安定的に接した状態とすることができるからである。
【0140】
本発明においては、上記熱伝導性封止部材が上記発熱素子を覆うように配置され、さらに、上記熱伝導性封止部材に含まれる放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されるものである。すなわち、上記熱伝導性封止部材の上記放熱シート側を上記発熱素子に向け、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置され、上記放熱シートが直接または粘着層等の他の層を介して上記発熱素子と接するものである。
本発明においては、上記熱伝導性封止部材における放熱シートが、上記発熱素子と接着されているものでも、未接着であっても良いが、接着されていることが好ましい。より安定的に接するものとすることができるからである。
【0141】
本発明においては、上記発熱素子が上記EL素子である場合、上記放熱シートが、上記EL素子に含まれる上記透明電極層、上記EL層、および上記背面電極層を覆うように上記透明基板に接着されていることが好ましい。実質的に空気層(気体層)を介することなく上記熱伝導性封止部材を密着させることができる。よって、本発明の効果を効果的に発揮することができるからである。
【0142】
2.発熱素子
本発明における発熱素子は、発熱する部材を含むものであれば特に限定されるものではないが、発熱により、劣化等を生じるものであることが好ましい。本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
このような発熱素子としては、具体的には、上記EL素子や、有機薄膜太陽電池や固体撮像素子などの光を電気に変換する素子等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、上記EL素子であることが好ましい。特に熱による影響を受け易く、その影響が不具合として現れ易いからである。
【0143】
本発明に用いられるEL素子は、透明基板、透明電極層、EL層、および背面電極層を少なくとも有するものである。
【0144】
(a)EL層
本発明におけるEL層は、透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むものである。
上記EL層を構成する発光層は、有機発光層であってもよく、無機発光層であってもよい。有機発光層の場合には有機EL素子となり、無機発光層の場合には無機EL素子となる。なかでも、発光層は有機発光層であることが好ましい。有機発光層は無機発光層よりも発熱による劣化が顕著であるからである。
以下、発光層が有機発光層である場合について説明する。
上記発光層が有機発光層である場合、EL層は、少なくとも有機発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。すなわち、EL層とは、少なくとも有機発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布法でEL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、EL層は1層もしくは2層の有機層を有する場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0145】
上記有機発光層以外にEL層内に形成される層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層を挙げることができる。正孔注入層および正孔輸送層は一体化されている場合がある。同様に、電子注入層および電子輸送層は一体化されている場合がある。その他、EL層内に形成される層としては、キャリアブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
このようにEL層は種々の層を積層した積層構造を有することが多く、積層構造としては多くの種類がある。
【0146】
上記EL層を構成する各層としては、一般的な有機EL素子に用いられるものと同様とすることができる。
【0147】
(b)透明電極層
本発明における透明電極層は、透明基板上に形成されるものである。
上記透明電極層の材料としては、透明電極を形成可能な導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることができる。
上記透明電極層の形成方法および厚みとしては、一般的なEL素子における電極と同様とすることができる。
【0148】
(c)背面電極層
本発明における背面電極層は、EL層上に形成されるものである。
上記背面電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。なかでも、背面電極層上に白色反射層が形成されている場合には、背面電極層は透明性を有していることが好ましい。EL層からの発光を白色反射層で効率良く反射することができるからである。
【0149】
上記背面電極層の材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではなく、透明性の有無などにより適宜選択されるものであり、例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属単体、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。また、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることもできる。
【0150】
上記背面電極層の形成方法および厚みとしては、一般的なEL素子における電極と同様とすることができる。
【0151】
(d)透明基板
本発明に用いられる透明基板は、透明電極層、EL層および背面電極層を支持するものである。
上記透明基板の材料としては、例えば、石英、ガラス等の無機材料;ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の高分子材料;およびこれらの高分子材料に無機微粒子や無機物の繊維などを添加したものを挙げることができる。
透明基板の厚みとしては、透明基板の材料およびEL素子の用途により適宜選択される。具体的に、0.005mm〜5mm程度である。
【0152】
(e)封止樹脂部
本発明においては、透明基板上に熱伝導性封止部材の外周を囲むように封止樹脂部が形成されていてもよい。封止樹脂部が形成されていることによって、外部からの水分の浸入を防ぐことができるからである。
【0153】
上記封止樹脂部の構成材料としては、水分の浸入を防ぐ機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂を挙げることができる。
【0154】
上記封止樹脂部は、吸湿剤を含有していてもよい。封止樹脂部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。なお、吸湿剤については、上記絶縁層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0155】
上記吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤および上記封止樹脂部の構成材料の合計量100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0156】
上記封止樹脂部の厚みおよび幅としては、外部からの水分の浸入を防ぐことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、EL素子の用途に応じて適宜選択される。
【0157】
上記封止樹脂部の形成方法としては、透明基板上に樹脂組成物を塗布する方法を用いることができる。塗布方法としては、所定の部分に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ティスペンサー法などを用いることができる。
【0158】
(f)白色反射層
本発明においては、図14に例示するように、背面電極層24と熱伝導性封止部材10の放熱シート2との間に白色反射層26が形成されていてもよい。EL層からの発光を白色反射層で拡散反射することができ、干渉効果により発生する発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
なお、図14中の符号については、図10のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0159】
白色反射層は、通常、白色顔料とバインダーとを含有する。
白色顔料としては、例えば、酸化カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ステアリン酸バリウム、銀フレーク、ケイ酸塩類、アルミナ、酸化ジルコニウム、ジルコニウム硫酸ソーダ、カオリン、雲母、二酸化チタンなどが挙げられる。また、スチレンなどからなる非造膜性のポリマー粒子なども使用することができる。これらは、単独で用いてもよく混合して用いてもよい。なかでも、二酸化チタンが好ましく用いられる。
また、バインダーとしては、例えば、アルカリ浸透性の高分子マトリックスを挙げることができ、具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどのセルロース誘導体を挙げることができる。
白色顔料:バインダーの質量比は、例えば、1:1〜20:1とすることができる。
【0160】
2.素子の製造方法
本発明の素子は、上記発熱素子を覆うように上記熱伝導性封止部材を配置することにより得られる。
具体的には、上記発熱素子上に、上記熱伝導性封止部材を貼り付ける方法や、上記発熱素子上に上記放熱シートおよび金属基材を、この順で配置して固定する方法等を挙げることができる。
また、上記熱伝導性封止部材の素子側表面が剥離層を有する場合には、剥離層を剥がした後に、貼付する。
上記熱伝導性封止部材を配置する方法としては、上記発熱素子と熱伝導性封止部材の放熱シートとの間に気泡が入らないように、熱伝導性封止部材を配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、熱伝導性封止部材の形態によって適宜選択される。雰囲気としては、大気中であってもよく真空中であってもよい。
【0161】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0162】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0163】
1.ポリイミド前駆体溶液の調製
[製造例1]
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を少しずつ添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
【0164】
[製造例2〜15]
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で下記の表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜15およびポリイミド前駆体溶液Z(比較例)を合成した。
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)またはピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2'-Dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl(TBHG)、2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminobiphenyl(TFMB)の1種または2種を用いた。
【0165】
【表1】
【0166】
[製造例16]
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に{[(4,5-dimethoxy-2-nitrobenzyl) oxy]carbonyl} 2,6-dimethyl piperidine (DNCDP)を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液1とした。
【0167】
[製造例17]
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−桂皮酸とピペリジンとから合成したアミド化合物(HMCP)を溶液の固形分の10重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液2とした。
【0168】
【化5】
【0169】
[線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価]
上記ポリイミド前駆体溶液1〜15およびポリイミド前駆体溶液Zを、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)上に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド1〜15およびポリイミドZ(比較例)のフィルムを得た。
また、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)上に塗布し、100℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm2露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、耐熱フィルムより剥離し、膜厚10μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のフィルムを得た。
【0170】
<線熱膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
【0171】
<吸湿膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合、50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とした。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
【0172】
[基板反り評価]
厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記のポリイミド前駆体溶液1〜15およびZ、ならびに感光性ポリイミド前駆体溶液1,2を用い、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミド1〜15およびZのポリイミド膜、ならびに感光性ポリイミド1,2のポリイミド膜を形成した。その後、SUS304箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
【0173】
このサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、100℃のオーブンで1時間加熱した後、100℃に加熱されたオーブン内で、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%Rhの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
これらの評価結果を以下に示す。
【0174】
【表2】
【0175】
SUS304箔の線熱膨張係数は17ppm/℃であることから、ポリイミド膜と金属箔との線熱膨張係数の差が大きいと積層体の反りが大きいことが確認された。
また、表2より、ポリイミド膜の吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかる。
【0176】
2.熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の調製
まず、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を調製するために、次のように粘着層用ポリイミド1および2を調製した。
【0177】
(粘着層用ポリイミド1および2の合成)
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物20.35g(0.090モル)、ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン社製、ジェファーミンD2000)118.81g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン91.50gを窒素気流下で加え合わせ、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置を用いて生成水を分離した。反応後、水の留出がないことを確認し、室温(23℃)まで放冷し反応物(粘着層用ポリイミド1)を得た。粘着層用ポリイミド1の生成の有無は、IRスペクトルを確認して、ν(C=O)1770、1706cm−1のイミド環の特性吸収を確認することで判定した。次に、ポリイミド1に、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル12.08g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン9.74gを加え、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置で生成水を分離した。イミド化反応後、水の留出が止まったのを確認し、反応生成物溶液を室温まで放冷し、反応生成物溶液中に反応物(粘着層用ポリイミド2)を得た。粘着層用ポリイミド2の生成有無は、IRスペクトルから確認した。
【0178】
(熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の調製)
上記粘着層用ポリイミド2を用いて、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を調製した。そして、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を用いた硬化物に基づき、その耐熱性とゴム弾性とガラス転移温度とを測定した。
まず、窒素気流下、上記粘着層用ポリイミド2に架橋剤のN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを混合するとともに、これに酸化防止剤を下記表3に示す配合量(重量比)で混合させて混合物を得た。次いで、混合物を、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)と1,3−ジオキソランとの混合液(混合液の混合比率は、体積比率でDMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%とした。)を用いて、固形分濃度(重量%)が25%となるように希釈し、室温で1時間攪拌し完全に溶解させ、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を得た。
【0179】
酸化防止剤には、ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1098)を用い、下記表3に示すように配合した。
【0180】
【表3】
【0181】
熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を200℃で30分硬化させた硬化物のガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づくと(DMA法に基づくと)、−43.0℃であり、25℃における貯蔵弾性率は、2.5×105Pa〜4.0×105Paの範囲内であった。また、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1の5%重量減少温度は、290℃〜300℃の範囲内であった。
【0182】
3.積層体の作製
(1)絶縁層の形成
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μm〜12μmのポリイミド1のポリイミド膜を形成し、積層体1を得た。
積層体1は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
【0183】
(2)粘着層の形成
上記積層体1に対して、上記熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を、適宜DMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%の混合溶液で希釈し、ダイコート法により塗布し、熱処理後、2μmの膜厚になるように大気中200℃で30分加熱し、粘着層を形成し、積層体1−1とした。
これらの積層体に、ポリエチレンテレフタラートフィルム上にバリア層が蒸着されたバリアフィルムを、バリア層が粘着層と密着するように貼り付けた。
上述の積層体は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
【0184】
4.熱伝導性封止部材の作製
(1)熱伝導性封止部材1
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、放熱シートとして、BFG20(デンカ社製、厚み200μm、熱伝導率4.1W/mk、片面粘着)を粘着面を介して貼り付け熱伝導性封止部材1を作製した。
【0185】
(2)熱伝導性封止部材2
上記積層体1−1に、放熱シートとして、BFG20(デンカ社製)を積層体1−1の粘着層を介して、粘着面が上部になるように貼り付け熱伝導性封止部材2を作製した。
【0186】
(3)熱伝導性封止部材3
上記積層体1に、放熱シートとして、DKN100P(デンカ社製、厚み100μm、熱伝導率1.5W/mk、両面粘着)を貼り付け熱伝導性封止部材3を作製した。
【0187】
(4)熱伝導性封止部材4
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、放熱シートとして、DKN100P(デンカ社製、厚み100μm、熱伝導率1.5W/mk、両面粘着)を粘着面を介して貼り付け熱伝導性封止部材4を作製した。
【0188】
5.有機EL素子の作製
[実施例1]
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、α−NPD(N,N'-di[(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl]-1,1'-biphenyl)-4,4'-diamine)とMoO3とを体積比4:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で膜厚40nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α−NPDを真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚20nmとなるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。次に、ホスト材料としてAlq3(Tris-(8-hydroxyquinoline)aluminium)を用い、緑色発光ドーパントとしてC545tを用いて、上記正孔輸送層上に、Alq3およびC545tを、C545t濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで35nmの厚さに真空蒸着により成膜し、発光層を形成した。次に、Alq3を真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚10nmとなるように真空蒸着し、電子輸送層を形成した。次に、Alq3およびLiFを共蒸着にて、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度0.1Å/secで15nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子注入層を形成した。最後に、陰極としてAlを用いて、真空度10-5Paの条件下、5.0Å/secの蒸着速度で膜厚200nmとなるように真空蒸着した。
陰極の形成後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、20mm角に切り出した熱伝導性封止部材1をグローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、素子と熱伝導性封止部材とを、発光部上に熱伝導性封止部材が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。その外側からエポキシ樹脂を塗布し、紫外線より硬化させ、図2に示すような有機EL素子(有機EL素子1とする。)を得た。なお、上記熱伝導性封止部材および素子は、接着されていないものであり、貼り合わせた状態で、上記エポキシ樹脂により固定されているものである。
【0189】
[実施例2]
熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材2を用い、上記有機EL素子の発光部上に上記放熱シートの粘着面が配置されるように位置合わせをし、貼り合わせた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子(有機EL素子2とする。)を得た。
【0190】
[実施例3]
熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材3を用いた以外は、実施例2と同様にして有機EL素子(有機EL素子3とする。)を得た。
【0191】
[実施例4]
上記有機EL素子1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、BFG20(デンカ社製)と上記積層体1をグローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、素子とBFG20(デンカ社製)をBFG20の粘着面を介して貼り付けた後、BFG20上に上記積層体1の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。その外側からエポキシ樹脂を塗布し、発光エリアをフォトマスクにて遮光しながら紫外線を上下両方向から照射してエポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子4とする。)を得た。
なお、上記熱伝導性封止部材は上記放熱シートおよび絶縁層の両者が接着されていないものであり、貼り合わせた状態で、上記エポキシ樹脂により固定されているものである。
【0192】
[実施例5]
上記有機EL素子1と同様にして熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材4を用いることにより有機EL素子(有機EL素子5とする。)を得た。
【0193】
[実施例6]
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが52mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。次に、そのITO基板上に、ポジ型レジスト(東京応化社製TFRH)を乾燥膜厚が1μmになるようにスピンコート法にて塗布した後、120℃で2分ベーキングした。その後、発光エリアが50mm□になるよう、フォトマスクを介して365nmの紫外光を照射した。レジストを有機アルカリ現像液NMD3(東京応化社製)を用いて30秒現像した後、240℃で30分ベーキングすることによりEL用絶縁層を形成した。次いで、上記有機EL素子1の作製と同様にして、陰極まで形成し、素子を封止し、有機EL素子6を得た。
なお、熱伝導性封止部材としては、55mm角に切り出した熱伝導性封止部材1をグローブボックス中で加熱乾燥させたものを用いた。
【0194】
[実施例7]
上記有機EL素子6と同様にして熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材4を用いることにより有機EL素子(有機EL素子7とする。)を得た。
【0195】
[比較例1]
上記有機EL素子1の作製と同様にして陰極まで形成した。また、発光エリアよりも広くなるようにエッチングで加工した、キャップ形状のガラス製の封止部材を準備した。この封止部材の土手にエポキシ樹脂を塗布し、水分濃度を1ppm以下にした窒素雰囲気下のグローブボックス内で、素子と貼り合せた。発光エリアをフォトマスクにより遮光した上で、紫外線を照射し、エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(比較有機EL素子1とする。)を得た。
【0196】
[比較例2]
上記有機EL素子6の作製と同様にして陰極まで形成した。また、発光エリアよりも広くなるようにエッチングで加工した、キャップ形状のガラス製の封止部材を準備した。この封止部材の土手にエポキシ樹脂を塗布し、水分濃度を1ppm以下にした窒素雰囲気下のグローブボックス内で、素子と貼り合せた。発光エリアをフォトマスクにより遮光した上で、紫外線を照射し、エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(比較有機EL素子2とする。)を得た。
【0197】
[評価]
実施例1〜5および比較例1で作製した有機EL素子について、初期発光状態、80℃高温保存試験、温度むらおよび放熱性について評価を行った。
【0198】
(初期発光状態)
実施例および比較例で作製した有機EL素子の初期発光状態として、電圧を0Vから15Vまで0.2V刻みに上昇させ、そのときの輝度値を測定し、発光状態を確認した。評価については、比較例1を基準とした以下の判断基準にて行った。結果を下記表4に示す。
○:良好(比較例1と同等)。
△:絶縁不良により発光しないものが見られた(10サンプル作成時において、6サンプル発光せず、残りの4サンプルは発光状態良好であった)。
【0199】
(80℃高温保存試験)
実施例および比較例で作製した有機EL素子の有機EL素子について、80℃高温保存試験を行い、封止部材からの水分放出の有無を調査した。水分放出の評価については、ダークスポットの発生の程度を比較例2を基準とした以下の判断基準で行った。結果を下記表4に示す。
◎:非常に良好
○:良好(比較例と同等)
△:絶縁不良により発光しないものが見られた(10サンプル作成時において、7サンプル発光せず、残りの3サンプルは発光状態良好であった)。
【0200】
(温度むらおよび放熱性)
発光エリアを50mm□とした実施例6および7で作製した有機EL素子6および7と、比較例2で作製した比較有機EL素子2について、50mm□内の3000cd/m2にて点灯させてから10分後の面内の温度むらおよび放熱性を評価した。温度むらについては、K熱電対を用い、室温26.5℃にて、発光面であるガラス基板側から、発光エリアの任意の9箇所の温度を測定した。放熱特性については、K熱電対を用い、室温26.5℃にて、封止部材側および発光面側の両側から、発光エリアの中心部の温度を測定した。結果を表5に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
表4より、実施例1、実施例4では熱伝導性封止部材からの水分等の脱ガスが非常に少なく、ダークスポットの発生が非常に少なく、比較例1よりも良好な結果となった。
また、実施例2、3については、比較例1とほぼ同等のダークスポットの発生であった。
比較例1では有機EL素子がN2ガスに触れているおり、放熱を考える上で、熱伝導性が低いが、本熱伝導性封止部材の何れもが、N2ガスよりも熱伝導性に優れるため有機EL素子用の放熱部材として有用である。
【0203】
【表5】
【0204】
表5より、実施例で作製した有機EL素子6〜7は、比較例で作製した比較有機EL素子2と比較し、温度むらおよび放熱性が共に優れていた。
よって、本発明例の熱伝導性封止部材は、従来のガラス製の封止部材と比較し、有機EL素子の放熱や均熱に、良好に機能することが確認された。
【符号の説明】
【0205】
1 … 金属基材
2 … 放熱シート
3 … 絶縁層
4 … 剥離層
5 … 粘着層
6 … 防湿部
10 … 熱伝導性封止部材
11 … 外縁部
20 … EL素子
21 … 透明基板
22 … 透明電極層
23 … EL層
24 … 背面電極層
25 … 封止樹脂部
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す場合がある。)素子の構成は、一対の電極間に、発光層および必要に応じてその他の機能を有する層を積層した積層構造を基本としている。
【0003】
EL素子は、水分に対する耐性が弱く、水分の影響によりシュリンクやダークスポットなどが発生する。ここで、シュリンクとは、時間が経つにつれて、あたかも発光領域が収縮するように非発光領域の拡大が進行する現象をいう。また、ダークスポットとは、EL素子の作製直後に生じる黒点のような非発光領域をいう。このダークスポットも時間の経過とともに拡大することがある。すなわち、EL素子は、水分が存在することにより、経時的に劣化するのである。
EL素子への水分の浸入を防止する手法としては、EL素子を封止部材または封止構造によって封止するのが主流であり、従来から種々の検討がなされている。
【0004】
また、EL素子は、発光効率が100%とはならないために、再結合により発生したエネルギーの一部は熱となる。そして、封止によって、発光の際のロスとして発生する熱は必然的にEL素子内部で滞留しやすくなる。ところが、EL素子は一般的に熱に弱い。このため、熱が長時間または大量にEL素子内部に滞留すると、発光ムラ、熱による寿命の短縮、また最悪の場合にはEL素子自体の破壊が生じるおそれがある。特に照明用途のEL素子の場合にはこの問題が顕著に現れる。また、熱量が大きいと、素子を構成する部材からガスが発生する場合があり、この素子内部に発生したアウトガスにより素子が劣化するおそれもある。
【0005】
このような問題を解決するために、封止部材または封止構造に放熱性を付与する検討がなされており、例えば、所定の熱伝導率を有する金属板の少なくとも片面が絶縁層で被覆された封止部材(例えば特許文献1参照)、金属板または金属箔上に、EL素子の発熱を吸熱する吸熱体と、この吸熱体で吸熱した熱を外部へ放熱する放熱体とが順に積層された封止構造(例えば特許文献2〜4参照)が提案されている。また、封止部材または封止構造ではなくEL素子を支持する基板に放熱性を付与する検討もなされている(例えば特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、このような封止部材または封止構造では、放熱が不十分であるといった問題があった。
【0007】
なお、このような水分の浸入防止および放熱機能の付与が必要となる課題は、EL素子のみに限られず、すなわち電気を光に変換する素子に限定されず、有機薄膜太陽電池や固体撮像素子などの光を電気に変換する半導体素子等にも共通して生じるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−331695号公報
【特許文献2】特開2008−10211号公報
【特許文献3】特開2008−34142号公報
【特許文献4】特開2008−181832号公報
【特許文献5】特開2006−331694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、を有することを特徴とする熱伝導性封止部材を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記金属基材は熱伝導性に優れ、上記放熱シートも高い熱伝導性を有しているので、上記熱伝導性封止部材により封止される被封止物の放熱性に優れたものとすることができる。さらに、上記金属基材はガスバリア性に優れているため、優れた水分の遮断性を有する。よって、例えばEL素子に用いた場合には、発光特性を長期間に亘って安定して維持するとともに、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することが可能である。
【0012】
本発明においては、上記放熱シートの熱伝導率が、1W/mK以上であることが好ましい。熱伝導性により優れたものとすることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記放熱シートの厚みが5μm〜3000μmの範囲内であることが好ましい。より熱伝導性に優れたものとすることができるからである。
【0014】
本発明においては、上記金属基材および放熱シートの間に、絶縁性を有する絶縁層を有することが好ましい。上記放熱シートに高い絶縁性が不要となり、上記放熱シートの薄膜化を図ることができる。その結果、本発明の熱伝導性封止部材をより熱伝導性に優れたものとすることができるからである。また、本発明の熱伝導性封止部材を薄膜化することができ、例えば、このような熱伝導性封止部材により封止される素子全体を薄膜化することができるからである。
【0015】
本発明においては、上記絶縁層を有する場合において、上記放熱シートの厚みが5μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。上記放熱シートの熱伝導性を熱伝導性に優れたものとすることができるからである。また、薄膜化を図ることができるからである。
【0016】
本発明においては、上記絶縁層が、ポリイミドを主成分とするものであることが好ましい。絶縁性、耐熱性に優れた絶縁層とすることが可能となるからである。
【0017】
本発明においては、上記絶縁層および放熱シートの間に、粘着層を有することが好ましい。上記絶縁層と放熱シートとの接着性により優れたものとすることができるからである。
【0018】
本発明は、発熱素子と、上記発熱素子を覆うように形成された熱伝導性封止部材と、を有する素子であって、上記熱伝導性封止部材が、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートとを有し、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されていることを特徴とする素子を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記熱伝導性封止部材が、上記発熱素子を覆うように配置されていることにより、上記発熱素子で発生した熱の放熱性に優れたものとすることができる。また、煩雑な工程を要することなく簡便な方法で封止されたものとすることが可能である。
【0020】
本発明においては、上記発熱素子が、透明基板と、上記透明基板上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された背面電極層と、上記透明電極層、上記EL層、および上記背面電極層を覆うように形成された熱伝導性封止部材とを有するEL素子であり、上記放熱シートが、上記透明電極層、上記EL層、および上記背面電極層を覆うように上記透明基板に接着されていることが好ましい。上記EL素子は、熱等による影響を受け易いものであるため、本発明の効果を効果的に発揮することができるからである。
また、上記放熱シートが、上記透明電極層、EL層および背面電極層を覆うように透明基板に接着されており、上記放熱シートが透明電極層、EL層および背面電極層による段差に追従しているため、実質的に空気層(気体層)を介することなく熱伝導性封止部材を密着させることができる。よって、煩雑な工程を要することなく簡便な方法でEL素子を封止することが可能である
【0021】
本発明においては、上記透明基板上に上記熱伝導性封止部材の外周を囲むように封止樹脂部が形成されていることが好ましい。外部からの水分の浸入を効果的に防ぐことができるからである。
【0022】
本発明においては、上記封止樹脂部が吸湿剤を含有することが好ましい。封止樹脂部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。
【0023】
本発明においては、上記背面電極層が透明性を有し、上記背面電極層と上記熱伝導性封止部材との間に白色反射層が形成されていることが好ましい。EL層からの発光を白色反射層によって拡散反射させることができ、干渉効果により発生する発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、放熱性に優れた熱伝導性封止部材を提供できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の熱伝導性封止部材の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のEL素子の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略上面図および断面図である。
【図5】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図13】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図14】本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、熱伝導性封止部材および素子に関するものである。
以下、本発明の熱伝導性封止部材および素子について詳細に説明する。
【0027】
A.熱伝導性封止部材
まず、本発明の熱伝導性封止部材について説明する。
本発明の熱伝導性封止部材は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、を有することを特徴とするものである。
【0028】
このような本発明の熱伝導性封止部材について図を参照して説明する。図1は、本発明の熱伝導性封止部材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、上記金属基材1上に形成され、粘着性を有するバインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含み、両面に粘着性を有する放熱シート2と、を有するものである。
【0029】
図2は、本発明の熱伝導性封止部材を用いて封止したEL素子の一例を示す概略断面図である。図2に例示するEL素子20は、透明基板21と、透明基板21上に形成された透明電極層22と、透明電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有するEL層23と、EL層23上に形成された背面電極層24と、上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように形成された熱伝導性封止部材10と、上記透明基板21上に熱伝導性封止部材10の外周を囲むように形成された封止樹脂部25とを備えており、熱伝導性封止部材10の放熱シート2が上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように透明基板21に接着されている。
【0030】
一般に金属基材は熱伝導性およびガスバリア性に優れている。また、放熱シートも熱伝導性に優れるものであるため、上記放熱シートは、発光層からの発熱を金属基材へより効率的に伝える役割を果たす。したがって本発明の熱伝導性封止部材においては、水分の遮断性が高いとともに、熱を速やかに伝導もしくは放射することを可能とし放熱性に優れたものとすることができる。
このような本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付けると、放熱シートが透明電極層とEL層と背面電極層とによる段差に追従し、放熱シートが透明電極層とEL層と背面電極層とを覆うように透明基板に密着され、熱伝導性封止部材と透明基板との間には隙間が存在しないことになる。よって、熱伝導性が高く、発熱による悪影響を抑制することができ、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することができる。また、この場合、熱伝導性封止部材はガスバリア性に優れるため、熱伝導性封止部材側からの水分の透過を低減することができ、発光特性を長期間に亘って安定して維持することができる。
【0031】
図3は、本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。図3に例示する熱伝導性封止部材10は、上記金属基材1と、上記放熱シート2との間に絶縁性を有する絶縁層3を有している。
【0032】
本発明においては、図3に示すように、絶縁層が形成されていてもよい。上記放熱シートに高い絶縁性が不要となり、上記放熱シートの薄膜化を図ることができる。その結果、上記放熱シートを熱伝導性により優れたものとすることができ、本発明の熱伝導性封止部材をより熱伝導性に優れたものとすることができるからである。
【0033】
本発明の熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも有するものである。
以下、本発明の熱伝導性封止部材の各構成について説明する。
【0034】
1.放熱シート
本発明に用いられる放熱シートは、バインダー樹脂および熱伝導性粒子を含むものである。
【0035】
本発明に用いられる放熱シートの熱伝導率としては、所望の熱伝導性を付与できるもののであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1W/mK以上であることが好ましく、なかでも、3W/mK以上であることが好ましく、特に、5W/mK以上であることが好ましい。熱伝導率が大きければ大きいほど同じ膜厚における熱伝導性に優れている。このため、上記熱伝導率の上限については特に限定せず、用いる材料等に応じて決定されるものである。
なお、熱伝導率は、JIS R 1611などに記載の方法等を用いることができる。具体的には、レーザーフラッシュ法、熱線法、平板熱流計法、温度傾斜法などにより測定が可能であり、上記放熱シートの材料に応じて適宜選択される。
【0036】
本発明に用いられる放熱シートの耐熱性としては、本発明の熱伝導性封止部材の製造過程における加熱や、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を封止する場合にはEL素子の製造過程における加熱およびEL素子の発熱などに耐える程度であればよく、プロセス温度において放熱シートからガスが発生しないことが好ましい。具体的には、放熱シートを構成する粘着剤の5%重量減少温度が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。5%重量減少温度が上記範囲より小さいと、EL素子の発光時の発熱により粘着剤が分解し、その分解時に発生する物質によって素子特性を劣化させるおそれがある。また、熱劣化により放熱シート自身の粘着性が低下し、素子との密着性が悪くなり、素子から剥離する場合がある。
なお、5%重量減少温度は、熱重量分析装置または示差熱天秤(例えばThermo Plus TG8120(リガク社製))を用い、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で昇温し、測定した値である。
【0037】
本発明に用いられる放熱シートは、本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際には透明電極層とEL層と背面電極層とを覆うように透明基板に配置されるものであり、凹凸追従性を備える。具体的には、上記放熱シートの室温での貯蔵弾性率が、1.0×102Pa以上1.0×107Pa以下であることが好ましく、1.0×103Pa以上1.0×106Pa以下であることがさらに好ましく、1.0×104Pa以上1.0×106Pa以下であることが特に好ましい。なお、室温とは25℃をいう。放熱シートの室温での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、実用上十分な粘着性と良好な凹凸追従性が得られる。室温における貯蔵弾性率が上記範囲より小さい場合は、放熱シートが脆弱なものとなり凝集破壊を起こしやすくなる。一方、上記範囲より大きい場合は、凹凸に対する十分な追従性が発現されにくい。貯蔵弾性率は硬さ・軟らかさの指標となるものであり、放熱シートの室温での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、例えばEL素子の場合には透明電極層とEL層と背面電極層とによる段差を十分に埋めることができる。
なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、RSA3 (TAインスツルメンツ社製)を用い、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した値である。
【0038】
また、放熱シートの凹凸追従性としては、放熱シートを構成する粘着剤のガラス転移温度(Tg)が100℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付ける際の温度が、粘着剤のTgよりも低いと、凹凸に追従することが困難となる。よって、粘着剤のTgは比較的低いことが好ましく、室温以下であることが特に好ましいのである。粘着剤のTgが上記範囲であれば、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付ける際の温度を低くすることができる。
【0039】
上記放熱シートは、通常、絶縁性を有する。具体的に、上記放熱シートの体積抵抗は、1.0×107Ω・m以上であることが好ましく、1.0×108Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×109Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0040】
本発明に用いられる放熱シートは、表面に粘着性を有するものであっても、有しないものであっても良い。上記放熱シートが表面に粘着性を有するものであることにより、上記金属基材等と容易に接着させることができるからである。また、上記放熱シートが表面に粘着性を有しない場合には、例えば、上記バインダー樹脂として粘着性を有しないものを用いることが可能となり、上述の熱伝導率や強度等の物性に優れたものとすることができるからである。
本発明においては、上記放熱シートが表面に粘着性を有する場合には、両面に粘着性を有することが好ましい。上記金属基材および被封止物と粘着層等を介さずに接着することができるため、本発明の熱伝導性封止部材を容易に形成することや、EL素子等の発熱素子を有する素子を容易に封止することができるからである。
【0041】
本発明において、上記放熱シートが表面に粘着性を有する場合の表面粘着力としては、上記金属基材や被封止物等と十分に接着することができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.5N/25mm以上であることが好ましく、なかでも、1N/25mm〜50N/25mmの範囲内であることが好ましく、特に、2N/25mm〜30N/25mmの範囲内であることが好ましい。上記放熱シートの表面粘着力が上述した範囲内であることにより、上記金属基材や被封止物等と密着性良く接着することができるからである。
ここで、上記放熱シートの表面粘着力の測定方法としては、JIS Z 0237に準拠した方法で測定することができる。例えば、放熱シートを幅25mmにカットし、粘着剤層に対して被着体を貼り合わせ、引張試験機(エーアンドディ社製(TENSILON RTF−1150−H))により、被着体を固定し、放熱シートを、引張速度300mm/分で、180°方向に引き剥がした際の粘着強度を求めることにより測定することができる。
【0042】
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、上記熱伝導性粒子を安定的に保持することができ、上記放熱シートが上述の特性を満たすことができ、かつ本発明の耐熱性封止部材をEL素子に用いる場合にはEL層に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ボリブタジエンやアクリル樹脂等が挙げられるが、耐熱性や電気絶縁性、信頼性に優れているシリコーン樹脂が特に好ましい。
また、上記バインダー樹脂としては、粘着性を有さないものであっても良いが、粘着性を有するものであってもよい。粘着性を有するものであることにより、表面に粘着性を有する放熱シートとすることが容易だからである。また、粘着性を有さない場合には、上述のように、上記放熱シートを熱伝導率や強度等の物性に優れたものとすることができるからである。
【0043】
本発明に用いられる熱伝導性粒子は熱伝導性に優れたものである。
このような熱伝導性粒子としては、上記放熱シートが上述の特性を満たすことができ、かつ本発明の耐熱性封止部材をEL素子に用いる場合にはEL層に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、熱伝導性の無機フィラーを好ましく用いることができる。本発明においては、なかでも、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、マグネシア等の酸化物、または窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物、アルミニウム、カーボン、銀、銅等を好ましく用いることができ、特に、電気絶縁性を向上させる観点からアルミナ、シリカ、酸化亜鉛、マグネシア等の酸化物、または窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物を好ましく用いることができる。
【0044】
また、このような熱伝導性微粒子の含有量としては、上記放熱シートを熱伝導率を有するものとすることができるものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、上記バインダー樹脂100重量部に対して、1重量部〜5000重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも10重量部〜3000重量部の範囲内であることが好ましく、特に20重量部〜2000重量部の範囲内であることが好ましい。上記放熱シートを熱伝導性に優れたものとすることができるからである。
【0045】
本発明において、このようなバインダー樹脂および熱伝導性粒子を含む放熱シートとしては、例えば、特開2008−166406号公報に記載するものを用いることができる。
また、市販の製品としては、具体的には、デンカ社製BFG20、デンカ社製DKN100P等を用いることができる。
【0046】
また、本発明に用いられる放熱シートは、吸湿剤を含有していてもよい。放熱シート中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。
【0047】
上記吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着する機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、化学的に水分を吸着するとともに、吸湿しても固体状態を維持する化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、金属酸化物、金属の無機酸塩もしくは有機酸塩などを挙げることができる。特に、アルカリ土類金属酸化物および硫酸塩が好ましい。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等を挙げることができる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル等を挙げることができる。また、シリカゲルや、ポリビニルアルコールなどの吸湿性を有する有機化合物も用いることができる。これらのなかでも、酸化カルシウム、酸化バリウム、シリカゲルが特に好ましい。これらの吸湿剤は吸湿性が高いからである。
【0048】
本発明に用いられる放熱シートにおける吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、上記吸湿剤および上記バインダー樹脂の合計量100重量部に対して、上記吸湿剤が5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0049】
本発明における放熱シート中の吸湿剤の分布は、均一であってもよく不均一であってもよい。なかでも、放熱シートの外縁部のみに吸湿剤が含有されていることが好ましい。本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際に、背面電極層と接する放熱シートの部分に吸湿剤が含有されていると、吸湿剤によって放熱シート表面が荒れ、EL層にダメージを与えるおそれがあるからである。すなわち、本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際、背面電極層と接しない放熱シートの部分に吸湿剤が含有されていることが好ましい。
【0050】
また、本発明に用いられる放熱シートは、白色反射層としての機能を有してもよい。本発明の熱伝導性封止部材をEL素子に用いた場合には、EL層からの発光が白色反射層である放熱シート表面で拡散反射されるため、干渉効果により発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
【0051】
本発明に用いられる放熱シートの厚みは、凹凸追従性および熱伝導性を兼ね備えることができれば特に限定されるものではない。例えば、後述するような絶縁層を有する場合には、上記放熱シートに高い絶縁性が不要であることから、薄膜化を図ることができ、5μm〜200μmの範囲内とすることが好ましく、5μm〜100μmの範囲内とすることが好ましい。放熱シートの厚みが薄すぎると十分な凹凸追従性が得られない場合があり、放熱シートの厚みが厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
また、上記絶縁層を含まない場合には、上記放熱シートに十分な絶縁性が要求されることから5μm〜3000μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、100μm〜3000μmの範囲内であることが好ましく、特に、150μm〜1000μmの範囲内であることがより好ましい。
【0052】
本発明における放熱シートは、金属基材上に全面に形成されていてもよく、金属基材上に部分的に形成されていてもよい。なかでも、放熱シートは金属基材上に部分的に形成されていることが好ましい。すなわち、金属基材の放熱シートが形成されている面に、上記放熱シートが存在せず、金属基材が露出している金属基材露出領域が設けられていることが好ましい。このような金属基材露出領域を有することにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を封止する際には、封止樹脂部を放熱シートを介することなく金属基材と密着させることが可能となり、EL素子への水分の浸入をより強固に防ぐことが可能となる。また、封止樹脂部を金属基材露出領域に選択的に形成することで、EL素子を面内で区分けしたり、多面付けした状態で封止したりすることが可能となり、高い生産性で素子を製造できるといった利点を有する。また、金属基材露出領域は、放熱シートを貫通し金属基材に電気的に導通をとるための貫通孔にもなり得る。
放熱シートが金属基材上に部分的に形成されている場合であって、吸湿剤を含有していない場合には、なかでも、図4(a)、(b)に例示するように、放熱シート2は、金属基材1の外縁部11を除いて形成されていることが好ましい。なお、図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のA−A線断面図である。本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を作製した場合、金属基材の全面に放熱シートが形成されており放熱シートの端面が露出していると、製造時や駆動時に放熱シートの端面から水分が浸入するおそれがある。この水分によって、素子性能が劣化したり、放熱シートの寸法が変化したりする。そのため、放熱シートが吸湿剤を含有していない場合には、特に、金属基材の外縁部には放熱シートが形成されていないことが好ましいのである。
なお、図4中の符号については、図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、図4中においては、絶縁層3についても外縁部を除いて形成されている。
【0053】
本発明に用いられる放熱シートの形成方法としては、上記放熱シートを形成可能な、上記バインダー樹脂および熱伝導性粒子を含む放熱シート形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0054】
2.金属基材
本発明に用いられる金属基材は、上記放熱シートを支持するものである。
【0055】
本発明に用いられる金属基材の線熱膨張係数としては、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、金属箔を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとし、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0056】
上記金属基材を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。なかでも、大型の素子に適用する場合、SUSが好ましい。SUSは、耐久性、耐酸化性、耐熱性に優れている上、銅などに比べ線熱膨張係数が小さく寸法安定性に優れる。また、SUS304およびSUS430が入手しやすいという利点もある。放熱性という観点では、銅やアルミニウムが好ましいが、銅については酸化し変質しやすい、アルミニウムについては耐熱性が低く耐薬品性に劣る部分があり、プロセスが制限されるという課題もある。
【0057】
金属基材の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔状や板状であってもよく、図5に例示するように金属基材1の形状が空気との接触面に凹凸を有する形状であってもよい。
本発明においては、なかでも、上記金属基材が空気との接触面に凹凸を有することが好ましい。金属基材が空気との接触面に凹凸を有する場合には、熱拡散が良好となり、放熱性を高めることができるからである。
なお、図5中の符号については、図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0058】
本発明における上記金属基材に形成される凹凸の寸法や形状としては、金属基材の空気との接触面における表面積を増やすことができれば特に限定されるものではない。凹凸の幅、高さ、ピッチ等としては、金属基材の種類や熱伝導性封止部材の用途等に応じて適宜選択され、例えばシミュレーションにより熱伝導に好適な範囲を求めることができる。
【0059】
本発明において、上記金属基材への凹凸の形成方法としては、例えば金属基材の表面に直接、エンボス加工、エッチング加工、サンドブラスト加工、フロスト加工、スタンプ加工などの加工を施す方法、フォトレジスト等を用いて凹凸パターンを形成する方法、めっき方法、箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法が挙げられる。エンボス加工の場合、例えば表面に凹凸を有する圧延ロールを用いてもよい。エッチング加工の場合、金属基材の種類に応じて薬剤が選択される。箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法の場合、例えば、ロウ付け、溶接、半田等により金属層同士を接合する、あるいは、エポキシ樹脂等の接着剤を介して金属層同士を貼り合わせることができる。この場合、箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とは、同じ金属材料で構成されていてもよく、異なる金属材料で構成されていてもよい。
中でも、コスト面から、エンボス加工、エッチング加工が好ましく用いられる。
【0060】
金属基材の厚みとしては、熱伝導性を備えることができれば特に限定されるものではなく、本発明の熱伝導性封止部材の用途に応じて適宜選択される。金属基材の厚みが厚いほど、面方向への熱拡散に優れたものとなる。一方、金属基材の厚みが薄いほど、可撓性に富んだものとなる。例えば本発明の熱伝導性封止部材が可撓性を有する場合には、熱伝導性および可撓性を兼ね備えることができればよく、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2μm〜300μmの範囲内、さらに好ましくは5μm〜50μmの範囲内である。金属基材の厚みが薄すぎると、放熱機能を十分に発揮できなかったり、水蒸気に対するガスバリア性が低下したりする。また、金属基材の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりする。
【0061】
金属基材の作製方法としては、一般的な方法を用いることができ、金属材料の種類や金属基材の厚みなどに応じて適宜選択される。例えば、金属基材単体を得る方法であってもよく、上記放熱シート上に金属材料を蒸着し、金属基材と放熱シートとの積層体を得る方法であってもよい。なかでも、ガスバリア性の観点から、金属基材単体を得る方法が好ましい。金属基材単体を得る方法の場合であって、金属基材が金属箔である場合、金属箔は圧延箔であってもよく電解箔であってもよいが、ガスバリア性が良好であることから、圧延箔が好ましい。
【0062】
3.その他
本発明の熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも含むものであるが、必要に応じて他の構成を有するものであっても良い。
このような他の構成としては、具体的には、図6に例示するように、上記金属基材1および放熱シート2の間に形成され、絶縁性を有する絶縁層3、上記放熱シート2上に形成され、取り扱い性向上を図ることができる剥離層4や、図7に例示するように、例えば、表面に粘着性を有しない場合の放熱シート2と、上記剥離層4および上記絶縁層3との間等の各部材間に形成され、両者を接着させる粘着層5等を挙げることができる。
また、図8に例示するように、上記金属基材1の外縁部に金属基材露出領域が設けられている場合に、上記金属基材1の外縁部11に形成され、外部からの水分の浸入を効果的に防ぐことができる防湿部6等を挙げることができる。
なお、図6〜8中の符号については、図2および図3のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
(1)絶縁層
本発明に用いられる絶縁層は、絶縁性を有するものであり、上記金属基材および放熱シートの間に形成されることにより、本発明の熱伝導性封止部材の絶縁性を向上させることができるものである。
本発明においては、このような絶縁層を有することにより、上記放熱シートに高い絶縁性が不要となり、上記放熱シートの薄膜化を図ることができる。その結果、上記放熱シートを熱伝導性により優れたものとすることができ、本発明の熱伝導性封止部材をより熱伝導性に優れたものとすることができる。したがって、このような熱伝導性封止部材を用いて有機EL素子を形成した場合には、素子の劣化が少ないものとすることができるからである。
【0064】
上記絶縁層は絶縁性を備えるものである。具体的に、上記絶縁層の体積抵抗は、1.0×109Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1010Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1011Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0065】
本発明に用いられる絶縁層の吸水性としては、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などに用いられる半導体材料には水分に弱いものが多いことから、素子内部の水分を低減するために、比較的小さいことが好ましい。吸水性の指標の一つとして、吸湿膨張係数がある。したがって、絶縁層の吸湿膨張係数は小さければ小さいほど好ましく、具体的には、0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/%RH〜12ppm/%RHの範囲内、さらに好ましくは0ppm/%RH〜10ppm/%RHの範囲内である。絶縁層の吸湿膨張係数が上記範囲であれば、絶縁層の吸水性を十分小さくすることができ、熱伝導性封止部材の保管が容易であり、熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合にはその工程が簡便になる。また、絶縁層の吸湿膨張係数が小さいほど、絶縁層の寸法安定性が向上する。絶縁層の吸湿膨張係数が大きいと、吸湿膨張係数がほとんどゼロに近い金属基材との膨張率の差によって、湿度の上昇とともに熱伝導性封止部材が反ったり、絶縁層および金属基材の密着性が低下したりする場合がある。
【0066】
なお、評価サンプルとしての絶縁層フィルムの作成方法としては、耐熱フィルム(ユーピレックス S 50S(宇部興産(株)製)など)やガラス基板上に絶縁層フィルムを作製した後、絶縁層フィルムを剥離する方法や、金属基板上に絶縁層フィルムを作製した後、金属をエッチングで除去し絶縁層フィルムを得る方法などがある。次いで、得られた絶縁層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置(Thermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。例えば、温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持する。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とする。測定の際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重は1g/25000μm2とする。
【0067】
また、上記絶縁層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、金属基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。絶縁層と金属基材との線熱膨張係数が近いほど、熱伝導性封止部材の反りが抑制されるとともに、熱伝導性封止部材の熱環境が変化した際に、絶縁層と金属基材との界面の応力が小さくなり密着性が向上する。また、本発明の熱伝導性封止部材は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では平坦であることが好ましいのであるが、絶縁層および金属基材の線熱膨張係数が大きく異なると、熱伝導性封止部材が熱環境の変化により反ってしまう。
なお、熱伝導性封止部材が平坦であるとは、熱伝導性封止部材を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
【0068】
具体的に、絶縁層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜10ppm/℃の範囲内である。
【0069】
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、絶縁層のみのフィルムを作製する。絶縁層フィルムの作成方法は、上述したとおりである。次いで、得られた絶縁層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0070】
本発明に用いられる絶縁層を構成する絶縁層用樹脂としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、フェノール樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリフタルアミド、PTFE(ポリエチレンテレフタラート)、アクリル樹脂,ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオキサイド、エポキシ樹脂などが挙げられる。本発明においては、なかでも、耐熱性や絶縁性の観点から、ポリイミド、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、エポキシ樹脂が好ましく、特に、耐熱性や絶縁性の観点からポリイミドを主成分として含むことが好ましい。絶縁性、耐熱性に優れた絶縁層とすることが可能となる。特に、ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁層の薄膜化が可能となり絶縁層の熱伝導性が向上し、より熱伝導性に優れた熱伝導性封止部材とすることができる。
なお、絶縁層がポリイミドを主成分とするとは、上述の特性を満たす程度に、絶縁層がポリイミドを含有することをいう。具体的には、絶縁層中のポリイミドの含有量が75質量%以上の場合をいい、好ましくは90質量%以上であり、特に絶縁層がポリイミドのみからなることが好ましい。絶縁層中のポリイミドの含有量が上記範囲であれば、本発明の目的を達成するのに十分な特性を示すことが可能であり、ポリイミドの含有量が多いほど、ポリイミド本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となる。
【0071】
上記ポリイミドとしては、例えば、ポリイミドの構造を適宜選択することで、絶縁性および熱伝導性を制御したり、吸湿膨張係数や線熱膨張係数を制御したりすることが可能である。
【0072】
本発明に用いられるポリイミドとしては、絶縁層の線熱膨張係数、吸湿膨張係数、熱伝導率を本発明の熱伝導性封止部材に好適なものとする観点から、芳香族骨格を含むポリイミドであることが好ましい。ポリイミドのなかでも芳香族骨格を含有するポリイミドは、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、熱伝導率が高く、線熱膨張係数も低いことから、本発明の熱伝導性封止部材の絶縁層に好ましく用いられる。
【0073】
また、上記ポリイミドは、低吸湿膨張、低線熱膨張であることが求められるため、下記式(I)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。このようなポリイミドは、その剛直な骨格に由来する高い耐熱性や絶縁性を示すとともに、金属と同等の線熱膨張を示す。さらには、吸湿膨張係数も小さくすることが可能である。
【0074】
【化1】
【0075】
(式(I)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、繰り返されるR1同士およびR2同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
式(I)において、一般に、R1は、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、R2はジアミン由来の構造である。
【0076】
ポリイミドに適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0077】
上記ポリイミドの耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
なかでも、吸湿膨張係数を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
【0078】
併用するテトラカルボン酸二無水物としてフッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの吸湿膨張係数が低下する。しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミドの前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直なテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、線熱膨張係数と吸湿膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0079】
テトラカルボン酸二無水物として脂環骨格を有する場合、ポリイミド前駆体の透明性が向上するため、高感度の感光性ポリイミド前駆体となる。一方で、ポリイミドの耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミドと比較して劣る傾向にある。
【0080】
芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがある。したがって、ポリイミドにおいて、上記式(I)中のR1のうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0081】
【化2】
【0082】
上記ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のR1のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(I)中のR1のうち33%以上含有すればよい。なかでも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のR1のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0083】
一方、ポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は特に限定されるものではなく、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが挙げられる。また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種または2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部もしくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0084】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、ポリイミドは低膨張係数となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接または置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(II)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0085】
【化3】
【0086】
(式(II)中、aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位またはパラ位に結合する。)
さらに、上記式(II)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると吸湿膨張係数を低減させることができる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、金属基材上に絶縁層を部分的に形成する場合には、絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0087】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、金属基材との密着性を改善したり、ポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
【0088】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
【0089】
また、上記ポリイミドにおいては、上記式(I)中のR2のうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0090】
【化4】
【0091】
(R3は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、R4およびR5は1価の有機基、またはハロゲン原子である。)
ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有する場合、ポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式(I)中のR2のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(I)中のR2のうち少なくとも33%以上含有すればよい。なかでも上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のR2のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0092】
本発明においては、上記絶縁層が上述の式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していることが好ましいが、必要に応じて適宜、このポリイミドと他の接着性を有するポリイミドとを積層したり組み合わせたりして、絶縁層として用いてもよい。
【0093】
また、上記式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、感光性ポリイミドまたは感光性ポリイミド前駆体を用いて得られるものであってもよい。感光性ポリイミドは、公知の手法を用いて得ることができる。例えば、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、得られるポリイミド前駆体に光ラジカル開始剤を混合し、溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。また例えば、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド前駆体とする、あるいは、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とするなど、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加し、アルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。
【0094】
これらの感光性ポリイミド前駆体には、ポリイミド成分の重量に対して15%〜35%の感光性付与成分が添加されている。そのため、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、感光性付与成分由来の残渣がポリイミド中に残存する。これらの残存物が線熱膨張係数や吸湿膨張係数を大きくする原因となることから、感光性ポリイミド前駆体を用いると、非感光性のポリイミド前駆体を用いた場合に比べて、EL素子の信頼性が低下する傾向にある。しかしながら、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加した感光性ポリイミド前駆体は、添加剤である光塩基発生剤の添加量を15%以下にしてもパターン形成可能であることから、ポリイミドとした後も添加剤由来の分解残渣が少なく、線熱膨張係数や吸湿膨張係数などの特性の劣化が少なく、さらにアウトガスも少ないため、本発明に適用可能な感光性ポリイミド前駆体としては最も好ましい。
【0095】
上記ポリイミドに用いられるポリイミド前駆体は、塩基性水溶液によって現像可能であることが、金属基材上に絶縁層を部分的に形成する際に、作業環境の安全性確保およびプロセスコストの低減の観点から好ましい。塩基性水溶液は、安価に入手でき、廃液処理費用や作業安全性確保のための設備費用が安価であるため、より低コストでの生産が可能となる。
【0096】
上記絶縁層には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0097】
上記絶縁層の厚みとしては、絶縁性および熱伝導性を兼ね備えることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.3μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜20μmの範囲内である。絶縁層の厚みが薄すぎると十分な絶縁性が得られない場合があり、絶縁層の厚みが厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
【0098】
上記絶縁層は、吸湿剤を含有していてもよい。絶縁層中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。
なお、上記吸湿剤については、上記放熱シートの項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0099】
上記吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤および絶縁層用樹脂の合計量100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0100】
上記絶縁層は、金属基材上に全面に形成されていてもよく、金属基材上に部分的に形成されていてもよい。なかでも、絶縁層は金属基材上に部分的に形成されていることが好ましい。すなわち、金属基材の絶縁層および放熱シートが形成されている面に、絶縁層および放熱シートが存在せず、金属基材が露出している金属基材露出領域が設けられていることが好ましい。
上記絶縁層が金属基材上に部分的に形成されている場合には、なかでも、既に説明した図4や図9に例示するように、絶縁層3は、金属基材1の外縁部11を除いて形成されていることが好ましい。水分の浸入を抑制することができるからである。
【0101】
上記絶縁層の形成方法としては、例えば、金属基材上に上記絶縁層用樹脂を含む絶縁層形成用塗工液を塗布する方法を用いることができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0102】
また、金属基材と絶縁層との積層体を形成するに際しては、上記絶縁層用樹脂からなるフィルムを利用することもできる。上記フィルム上に金属材料を蒸着することで、金属基材と絶縁層との積層体を得ることができる。
【0103】
また、上記絶縁層を金属基材の外縁部を除いて形成する場合、その形成方法としては、上記放熱シートと同様とすることができる。
【0104】
(2)剥離層
本発明に用いられる剥離層は、上記放熱シート上に形成されるものである。
本発明においては、このような剥離層を有することにより、取り扱い性を向上させることができる。
【0105】
このような剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記熱伝導性封止部材が防湿部を有するものである場合には、所定のガスバリア性を満たすものであることが好ましい。防湿部が保管時に吸湿し、防湿性が失われるからである。なお、防湿部を含まない場合には、他の部材に吸収された水分を、使用前に加熱し除去することができるからである。
本発明においてガスバリア性を有する剥離層としては、具体的には、基材フィルム上にガスバリア層が形成された積層体、金属箔、フィルム単体、共押し出しフィルムを挙げることができる。
【0106】
上記基材フィルムの材料としては、フィルム化することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ−ルフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂を挙げることができる。また、これらの樹脂に有機物または無機物の微粒子や粉体を混合したコンポジット材料などを用いてもよい。
【0107】
上記基材フィルムの厚みとしては、剥離性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なガスバリア性フィルムにおける基材フィルムの厚みと同程度とすることができる。基材フィルムの厚みが厚いとフレキシブル性が低下し、基材フィルムの厚みが薄いと基材フィルムを構成する材料にもよるが強度に劣る可能性がある。
【0108】
上記ガスバリア層の材料としては、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、無機材料および有機材料のいずれも用いることができる。
ガスバリア層に用いられる無機材料としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、金属を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金が挙げられる。無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンが挙げられる。金属としては、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、チタンが挙げられる。無機材料として窒化物を含む材料を利用すると、放熱シートに対して離型性を示す場合が多く、ガスバリア性と離型性を兼ね備えた材料として使用できる。
一方、ガスバリア層に用いられる有機材料としては、例えば、エポキシ/シリケート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。PVAおよびEVOHは単独または混合物で使用することができる。
上記ガスバリア層は、単層であってもよく複数層が積層されたものであってもよい。
【0109】
上記ガスバリア層の厚みとしては、剥離性およびガスバリア性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、ガスバリア層の材料に応じて適宜選択され、一般的なガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層と同程度とすることができる。ガスバリア層の厚みが厚いとフレキシブル性が低下したりクラックが生じたりし、ガスバリア層の厚みが薄いと十分なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0110】
上記ガスバリア層の形成方法としては、乾式法であってもよく湿式法であってもよく、材料に応じて適宜選択される。ガスバリア層に無機材料を用いる場合には、通常、乾式法が用いられ、なかでも真空成膜法が好ましく、特に樹脂フィルム上にガスバリア層を形成する際の樹脂フィルム自体の耐熱性を考慮するとプラズマCVD法が好ましい。一方、ガスバリア層に有機材料を用いる場合には、通常、湿式法が用いられる。
【0111】
また、金属箔を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。金属箔は、表面が離型処理されていてもよい。
【0112】
上記金属箔の厚みとしては、剥離性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なガスバリア性フィルムに用いられる金属箔と同程度とすることができる。金属箔の厚みが厚い場合はフレキシブル性が低下し、金属箔の厚みが薄い場合は十分なガスバリア性が得られない可能性がある。
【0113】
フィルム単体の場合、材料としては、上記基材フィルムの材料を用いることができる。
また、共押し出しフィルムの場合、材料としては、上記基材フィルムに用いられる樹脂に有機物または無機物の微粒子や粉体を混合したコンポジット材料などを使用することができる。
【0114】
(3)粘着層
本発明に用いられる粘着層は、各部材同士の接着や、粘着性を有していない放熱シートの被封止物側表面への粘着性の付与等に用いられるものである。
本発明においては、このような粘着層を、例えば、上記絶縁層や金属基材と放熱シートとの間に形成した場合には、上記絶縁層や金属基材と放熱シートとの密着性を向上させることができる。また、表面に粘着性を有しない放熱シートの上記被封止物側表面に形成された場合には、上記放熱シートが表面に粘着性を有しないものである場合であっても、本発明の熱伝導性封止部材と上記被封止物との密着性に優れたものとすることができる。
このような粘着層としては、上記各部材間または上記被封止物とを所望の強度で接着させることができるものであれば良く、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の粘着性樹脂を挙げることができる。
【0115】
本発明に用いられる粘着層の粘着力としては、上記各部材間、被封止物等と十分な強度で接着させることができるものであれば良いが、具体的には、上記放熱シートが表面に粘着性を有する場合の表面粘着力と同様とすることができる。
【0116】
本発明に用いられる粘着層の膜厚としては、所望の接着性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、上記放熱シートの面積等に応じて適宜設定されるものである。
【0117】
上記粘着層の形成方法としては、例えば、上記放熱シートまたは絶縁層上に形成する場合には、上記放熱シートまたは絶縁層上に上記粘着層用樹脂を含む粘着層形成用塗工液を塗布する方法を用いることができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0118】
また、上記放熱シートまたは絶縁層との積層体を形成するに際しては、上記粘着層用樹脂からなるフィルムを利用することもできる。上記フィルム上に上記絶縁層形成用塗工液や放熱シート形成用樹脂組成物を塗布することで積層体を得ることができる。
【0119】
また、上記粘着層を金属基材の外縁部を除いて形成する場合、その形成方法としては、上記放熱シートと同様とすることができる。
【0120】
(4)防湿部
本発明に用いられる防湿部は、上記金属基材の外縁部に金属基材露出領域が設けられている場合に、上記金属基材の外縁部に形成され、外部からの水分の浸入を効果的に防ぐことができるものである。また、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を封止する際には、図10に例示するように、熱伝導性封止部材が剥離層を有さない場合には熱伝導性封止部材を直接、あるいは熱伝導性封止部材が剥離層を有する場合には熱伝導性封止部材から剥離層を剥がして、透明電極層22とEL層23と背面電極層24とが積層された透明基板21に貼り付けるだけでEL素子20の封止が可能であり、煩雑な工程を要することなく簡便な方法でEL素子を封止することができる。
なお、図10中の符号については、図8のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0121】
上記防湿部の水蒸気透過率は、1.0×10-1g/m2/day以下であることが好ましい。なお、水蒸気透過率の測定方法については、上記剥離層の項に記載した方法と同様である。
【0122】
上記防湿部の構成材料としては、水分の浸入を防ぐ機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂を挙げることができる。
【0123】
上記防湿部は、吸湿剤を含有していてもよい。防湿部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。なお、吸湿剤については、上記放熱シートの項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、上記吸湿剤および上記防湿部の構成材料を含む防湿部形成材料の合計量100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0124】
また、上記防湿部は、金属基材の外縁部に、一重に形成されていてもよく、二重に形成されていてもよい。防湿部が二重に形成されている場合には、外部からの水分の浸入をより防ぐことができる。例えば、防湿部は、吸湿剤を含有する第1防湿部と、この第1防湿部の外周に形成され、第1防湿部よりも水蒸気透過率が低く、接着性を有する樹脂を含有する第2防湿部とを有するものであってもよい。
【0125】
上記防湿部の厚みとしては、通常、上記金属基材上に形成される放熱シート等の部材の合計厚みと同程度とされる。
防湿部の形成方法としては、上記防湿部形成材料を含む樹脂組成物を塗布する方法を用いることができる。上記樹脂組成物を塗布する際には、金属基材上に塗布してもよく剥離層上に塗布してもよい。また、後述するように加工用シートを型抜きする方法を採用する場合には、剥離シート上に樹脂組成物を塗布する。塗布方法としては、所定の部分に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ティスペンサー法などを用いることができる。
また、上記防湿部を金属基材の外縁部に形成するに際しては、印刷法、フォトリソグラフィー法、レーザーで直接加工する方法、加工用シートを型抜きする方法などを用いることができる。加工用シートを型抜きする方法の場合、剥離シート上に防湿部が形成された加工用シートを型抜きし、防湿部上に剥離層を貼付し、防湿部から剥離シートを剥がすことで、剥離層上に防湿部が形成された積層体を得ることができる。この場合に用いられる剥離シートとしては一般的なものを使用することができる。
【0126】
(5)その他
本発明においては、必要に応じて、上記金属基材と絶縁層との間に中間層が形成されていても良い。例えば、金属基材および絶縁層の間に、金属基材を構成する金属が酸化された酸化膜からなる中間層が形成されていてもよい。これにより、金属基材と絶縁層との密着性を高めることができる。この酸化膜は、金属基材表面が酸化されることで形成される。
また、金属基材の絶縁層が形成されている面とは反対側の面にも上記酸化膜が形成されていてもよい。
【0127】
4.熱伝導性封止部材
本発明の熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも含むものである。
本発明において、剥離層が形成されていない場合には、上記熱伝導性封止部材は、放熱シートを内側、金属基材を外側にして、ロール状に巻回されたものであることが好ましい。これにより、取り扱いが容易になるからである。
【0128】
本発明の熱伝導性封止部材は、枚葉であってもよく長尺であってもよい。また、本発明の熱伝導性封止部材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0129】
本発明の熱伝導性封止部材の製造方法としては、上記金属基材および放熱シートを含む各構成を精度良く積層することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記金属基材、粘着層、放熱シートをこの順で配置し加圧・加熱等により積層する等、上記各構成を粘着層等を介して積層する方法や、上記金属基材上に上記放熱シートを形成可能な放熱シート形成用塗工液を塗布し硬化させる等、上記各構成を形成可能な塗工液を、順次塗布・硬化させて形成する方法等を挙げることができる。
【0130】
5.用途
本発明の熱伝導性封止部材は、水分の浸入防止および放熱機能の付与が必要となる素子に用いられる。具体的には、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などの半導体素子が挙げられる。なかでも、照明用途のEL素子に好適である。
【0131】
B.素子
次に、本発明の素子について説明する。
本発明の素子は、発熱素子と、上記発熱素子を覆うように形成された熱伝導性封止部材と、を有する素子であって、上記熱伝導性封止部材が、金属基材と、上記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートとを有し、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されていることを特徴とするものである。
【0132】
このような本発明の素子について、図を参照して説明する。既に説明した図2は、上記発熱素子がEL素子である場合の一例を示す概略断面図である。図2に例示するEL素子20は、透明基板21と、透明基板21上に形成された透明電極層22と、透明電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有するEL層23と、EL層23上に形成された背面電極層24と、上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように形成された熱伝導性封止部材10と、透明基板21上に熱伝導性封止部材10の外周を囲むように形成された封止樹脂部25とを備えている。熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、金属基材1上に形成され、熱伝導性を有する放熱シート2とを有している。そして、熱伝導性封止部材10の放熱シート2が上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように透明基板21に接着されている。図2に例示するEL素子20は、例えば図1に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。
【0133】
図11および図12は、本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。図11および図12に例示するEL素子20においては、図2に例示するEL素子20に対して、熱伝導性封止部材10の構成が異なる。図11に例示する熱伝導性封止部材10においては、金属基材1の外縁部を除いて絶縁層3が形成されている。図11に例示するEL素子20は、例えば図9に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。一方、図12に例示する熱伝導性封止部材10においては、金属基材1の外縁部を除いて絶縁層3および放熱シート2が形成されている。図12に例示するEL素子20は、例えば図4に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。
【0134】
図10は、本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。図10に例示するEL素子20においては、図2に例示するEL素子20に対して、封止樹脂部が形成されていない点および熱伝導性封止部材10の構成が異なる。図10に例示するEL素子20は、透明基板21と、透明基板21上に形成された透明電極層22と、透明電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有するEL層23と、EL層23上に形成された背面電極層24と、上記透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように形成された熱伝導性封止部材10とを備えている。熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、金属基材1上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、絶縁性を有する絶縁層3と、絶縁層3上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、耐熱性を有する放熱シート2と、金属基材1の外縁部に形成された防湿部6とを有している。そして、熱伝導性封止部材10の放熱シート2が透明電極層22、EL層23および背面電極層24を覆うように透明基板21に接着されている。図10に例示するEL素子20は、例えば図8に示す熱伝導性封止部材10を用いて得ることができる。
【0135】
図13は、本発明のEL素子の他の例を示す概略断面図である。図13に例示するEL素子20においては、図2に例示するEL素子20に対して、熱伝導性封止部材10の構成が異なる。図13に例示する熱伝導性封止部材10は、金属基材1と、金属基材1上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、絶縁性を有する絶縁層3と、絶縁層3上に金属基材1の外縁部を除いて形成され、耐熱性を有する放熱シート2と、金属基材1の外縁部に形成された防湿部6とを有している。図13に例示するEL素子20は、例えば図8に示す熱伝導性封止部材8を用いて得ることができる。
【0136】
本発明によれば、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されることにより、上記発熱素子で発生した熱の放熱性に優れたものとすることができる。
このため、例えば、上記発熱素子がEL素子である場合には、水分の遮断性が高いとともに、熱を速やかに伝導もしくは放射することができる。したがって、発光特性を長期間に亘って安定して維持することができるとともに、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することが可能である。
また本発明によれば、熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付けることで、熱伝導性封止部材と、透明電極層、EL層および背面電極層が積層された透明基板とを密着させることができ、煩雑な工程を要することなく簡便な方法でEL素子を封止することが可能である。また本発明においては、室温で熱伝導性封止部材の放熱シートをEL素子を支持する透明基板に貼り付けることができるので、熱に弱いEL素子の封止に有利であり、取り扱いが容易であるという利点も有する。
【0137】
1.熱伝導性封止部材
本発明に用いられる熱伝導性封止部材は、上記金属基材および放熱シートを少なくとも含むものである。
【0138】
本発明においては、上記放熱シートが上記金属基材上に形成され、上記金属基材および放熱シートが接するものである。本発明においては、このような金属基材および放熱シートが接着しているものであっても良く、未接着のものであっても良いが、接着しているものであることが好ましい。安定的に上記発熱素子を封止することができるからである。
このような熱伝導性封止部材については、具体的には、上記「A.熱伝導性封止部材」に記載の熱伝導性封止部材を好ましく用いることができる。
【0139】
なお、接するとは、粘着層等の他の層を介して接する場合も含むものである。
また、接着されているとは、上記粘着層または放熱シートの表面の粘着性等を用いて両者が固定されていることをいう。また、未接着である場合には、上記金属基材および放熱シートが移動等しないように、上記金属基材および放熱シートを含む熱伝導性封止部材の両面から加圧した状態で保持する固定手段により固定されていることが好ましい。安定的に接した状態とすることができるからである。
【0140】
本発明においては、上記熱伝導性封止部材が上記発熱素子を覆うように配置され、さらに、上記熱伝導性封止部材に含まれる放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置されるものである。すなわち、上記熱伝導性封止部材の上記放熱シート側を上記発熱素子に向け、上記放熱シートが上記発熱素子を覆うように配置され、上記放熱シートが直接または粘着層等の他の層を介して上記発熱素子と接するものである。
本発明においては、上記熱伝導性封止部材における放熱シートが、上記発熱素子と接着されているものでも、未接着であっても良いが、接着されていることが好ましい。より安定的に接するものとすることができるからである。
【0141】
本発明においては、上記発熱素子が上記EL素子である場合、上記放熱シートが、上記EL素子に含まれる上記透明電極層、上記EL層、および上記背面電極層を覆うように上記透明基板に接着されていることが好ましい。実質的に空気層(気体層)を介することなく上記熱伝導性封止部材を密着させることができる。よって、本発明の効果を効果的に発揮することができるからである。
【0142】
2.発熱素子
本発明における発熱素子は、発熱する部材を含むものであれば特に限定されるものではないが、発熱により、劣化等を生じるものであることが好ましい。本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
このような発熱素子としては、具体的には、上記EL素子や、有機薄膜太陽電池や固体撮像素子などの光を電気に変換する素子等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、上記EL素子であることが好ましい。特に熱による影響を受け易く、その影響が不具合として現れ易いからである。
【0143】
本発明に用いられるEL素子は、透明基板、透明電極層、EL層、および背面電極層を少なくとも有するものである。
【0144】
(a)EL層
本発明におけるEL層は、透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むものである。
上記EL層を構成する発光層は、有機発光層であってもよく、無機発光層であってもよい。有機発光層の場合には有機EL素子となり、無機発光層の場合には無機EL素子となる。なかでも、発光層は有機発光層であることが好ましい。有機発光層は無機発光層よりも発熱による劣化が顕著であるからである。
以下、発光層が有機発光層である場合について説明する。
上記発光層が有機発光層である場合、EL層は、少なくとも有機発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。すなわち、EL層とは、少なくとも有機発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布法でEL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、EL層は1層もしくは2層の有機層を有する場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0145】
上記有機発光層以外にEL層内に形成される層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層を挙げることができる。正孔注入層および正孔輸送層は一体化されている場合がある。同様に、電子注入層および電子輸送層は一体化されている場合がある。その他、EL層内に形成される層としては、キャリアブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
このようにEL層は種々の層を積層した積層構造を有することが多く、積層構造としては多くの種類がある。
【0146】
上記EL層を構成する各層としては、一般的な有機EL素子に用いられるものと同様とすることができる。
【0147】
(b)透明電極層
本発明における透明電極層は、透明基板上に形成されるものである。
上記透明電極層の材料としては、透明電極を形成可能な導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることができる。
上記透明電極層の形成方法および厚みとしては、一般的なEL素子における電極と同様とすることができる。
【0148】
(c)背面電極層
本発明における背面電極層は、EL層上に形成されるものである。
上記背面電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。なかでも、背面電極層上に白色反射層が形成されている場合には、背面電極層は透明性を有していることが好ましい。EL層からの発光を白色反射層で効率良く反射することができるからである。
【0149】
上記背面電極層の材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではなく、透明性の有無などにより適宜選択されるものであり、例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属単体、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。また、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることもできる。
【0150】
上記背面電極層の形成方法および厚みとしては、一般的なEL素子における電極と同様とすることができる。
【0151】
(d)透明基板
本発明に用いられる透明基板は、透明電極層、EL層および背面電極層を支持するものである。
上記透明基板の材料としては、例えば、石英、ガラス等の無機材料;ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の高分子材料;およびこれらの高分子材料に無機微粒子や無機物の繊維などを添加したものを挙げることができる。
透明基板の厚みとしては、透明基板の材料およびEL素子の用途により適宜選択される。具体的に、0.005mm〜5mm程度である。
【0152】
(e)封止樹脂部
本発明においては、透明基板上に熱伝導性封止部材の外周を囲むように封止樹脂部が形成されていてもよい。封止樹脂部が形成されていることによって、外部からの水分の浸入を防ぐことができるからである。
【0153】
上記封止樹脂部の構成材料としては、水分の浸入を防ぐ機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂を挙げることができる。
【0154】
上記封止樹脂部は、吸湿剤を含有していてもよい。封止樹脂部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。なお、吸湿剤については、上記絶縁層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0155】
上記吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤および上記封止樹脂部の構成材料の合計量100重量部に対して、5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5重量部〜60重量部の範囲内、さらに好ましくは5重量部〜50重量部の範囲内である。
【0156】
上記封止樹脂部の厚みおよび幅としては、外部からの水分の浸入を防ぐことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、EL素子の用途に応じて適宜選択される。
【0157】
上記封止樹脂部の形成方法としては、透明基板上に樹脂組成物を塗布する方法を用いることができる。塗布方法としては、所定の部分に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ティスペンサー法などを用いることができる。
【0158】
(f)白色反射層
本発明においては、図14に例示するように、背面電極層24と熱伝導性封止部材10の放熱シート2との間に白色反射層26が形成されていてもよい。EL層からの発光を白色反射層で拡散反射することができ、干渉効果により発生する発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
なお、図14中の符号については、図10のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0159】
白色反射層は、通常、白色顔料とバインダーとを含有する。
白色顔料としては、例えば、酸化カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ステアリン酸バリウム、銀フレーク、ケイ酸塩類、アルミナ、酸化ジルコニウム、ジルコニウム硫酸ソーダ、カオリン、雲母、二酸化チタンなどが挙げられる。また、スチレンなどからなる非造膜性のポリマー粒子なども使用することができる。これらは、単独で用いてもよく混合して用いてもよい。なかでも、二酸化チタンが好ましく用いられる。
また、バインダーとしては、例えば、アルカリ浸透性の高分子マトリックスを挙げることができ、具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどのセルロース誘導体を挙げることができる。
白色顔料:バインダーの質量比は、例えば、1:1〜20:1とすることができる。
【0160】
2.素子の製造方法
本発明の素子は、上記発熱素子を覆うように上記熱伝導性封止部材を配置することにより得られる。
具体的には、上記発熱素子上に、上記熱伝導性封止部材を貼り付ける方法や、上記発熱素子上に上記放熱シートおよび金属基材を、この順で配置して固定する方法等を挙げることができる。
また、上記熱伝導性封止部材の素子側表面が剥離層を有する場合には、剥離層を剥がした後に、貼付する。
上記熱伝導性封止部材を配置する方法としては、上記発熱素子と熱伝導性封止部材の放熱シートとの間に気泡が入らないように、熱伝導性封止部材を配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、熱伝導性封止部材の形態によって適宜選択される。雰囲気としては、大気中であってもよく真空中であってもよい。
【0161】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0162】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0163】
1.ポリイミド前駆体溶液の調製
[製造例1]
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を少しずつ添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
【0164】
[製造例2〜15]
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で下記の表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜15およびポリイミド前駆体溶液Z(比較例)を合成した。
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)またはピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2'-Dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl(TBHG)、2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminobiphenyl(TFMB)の1種または2種を用いた。
【0165】
【表1】
【0166】
[製造例16]
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に{[(4,5-dimethoxy-2-nitrobenzyl) oxy]carbonyl} 2,6-dimethyl piperidine (DNCDP)を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液1とした。
【0167】
[製造例17]
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−桂皮酸とピペリジンとから合成したアミド化合物(HMCP)を溶液の固形分の10重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液2とした。
【0168】
【化5】
【0169】
[線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価]
上記ポリイミド前駆体溶液1〜15およびポリイミド前駆体溶液Zを、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)上に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド1〜15およびポリイミドZ(比較例)のフィルムを得た。
また、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)上に塗布し、100℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm2露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、耐熱フィルムより剥離し、膜厚10μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のフィルムを得た。
【0170】
<線熱膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
【0171】
<吸湿膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合、50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とした。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
【0172】
[基板反り評価]
厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記のポリイミド前駆体溶液1〜15およびZ、ならびに感光性ポリイミド前駆体溶液1,2を用い、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミド1〜15およびZのポリイミド膜、ならびに感光性ポリイミド1,2のポリイミド膜を形成した。その後、SUS304箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
【0173】
このサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、100℃のオーブンで1時間加熱した後、100℃に加熱されたオーブン内で、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%Rhの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
これらの評価結果を以下に示す。
【0174】
【表2】
【0175】
SUS304箔の線熱膨張係数は17ppm/℃であることから、ポリイミド膜と金属箔との線熱膨張係数の差が大きいと積層体の反りが大きいことが確認された。
また、表2より、ポリイミド膜の吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかる。
【0176】
2.熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の調製
まず、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を調製するために、次のように粘着層用ポリイミド1および2を調製した。
【0177】
(粘着層用ポリイミド1および2の合成)
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物20.35g(0.090モル)、ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン社製、ジェファーミンD2000)118.81g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン91.50gを窒素気流下で加え合わせ、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置を用いて生成水を分離した。反応後、水の留出がないことを確認し、室温(23℃)まで放冷し反応物(粘着層用ポリイミド1)を得た。粘着層用ポリイミド1の生成の有無は、IRスペクトルを確認して、ν(C=O)1770、1706cm−1のイミド環の特性吸収を確認することで判定した。次に、ポリイミド1に、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル12.08g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン9.74gを加え、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置で生成水を分離した。イミド化反応後、水の留出が止まったのを確認し、反応生成物溶液を室温まで放冷し、反応生成物溶液中に反応物(粘着層用ポリイミド2)を得た。粘着層用ポリイミド2の生成有無は、IRスペクトルから確認した。
【0178】
(熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の調製)
上記粘着層用ポリイミド2を用いて、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を調製した。そして、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を用いた硬化物に基づき、その耐熱性とゴム弾性とガラス転移温度とを測定した。
まず、窒素気流下、上記粘着層用ポリイミド2に架橋剤のN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを混合するとともに、これに酸化防止剤を下記表3に示す配合量(重量比)で混合させて混合物を得た。次いで、混合物を、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)と1,3−ジオキソランとの混合液(混合液の混合比率は、体積比率でDMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%とした。)を用いて、固形分濃度(重量%)が25%となるように希釈し、室温で1時間攪拌し完全に溶解させ、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を得た。
【0179】
酸化防止剤には、ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1098)を用い、下記表3に示すように配合した。
【0180】
【表3】
【0181】
熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を200℃で30分硬化させた硬化物のガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づくと(DMA法に基づくと)、−43.0℃であり、25℃における貯蔵弾性率は、2.5×105Pa〜4.0×105Paの範囲内であった。また、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1の5%重量減少温度は、290℃〜300℃の範囲内であった。
【0182】
3.積層体の作製
(1)絶縁層の形成
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μm〜12μmのポリイミド1のポリイミド膜を形成し、積層体1を得た。
積層体1は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
【0183】
(2)粘着層の形成
上記積層体1に対して、上記熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1を、適宜DMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%の混合溶液で希釈し、ダイコート法により塗布し、熱処理後、2μmの膜厚になるように大気中200℃で30分加熱し、粘着層を形成し、積層体1−1とした。
これらの積層体に、ポリエチレンテレフタラートフィルム上にバリア層が蒸着されたバリアフィルムを、バリア層が粘着層と密着するように貼り付けた。
上述の積層体は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
【0184】
4.熱伝導性封止部材の作製
(1)熱伝導性封止部材1
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、放熱シートとして、BFG20(デンカ社製、厚み200μm、熱伝導率4.1W/mk、片面粘着)を粘着面を介して貼り付け熱伝導性封止部材1を作製した。
【0185】
(2)熱伝導性封止部材2
上記積層体1−1に、放熱シートとして、BFG20(デンカ社製)を積層体1−1の粘着層を介して、粘着面が上部になるように貼り付け熱伝導性封止部材2を作製した。
【0186】
(3)熱伝導性封止部材3
上記積層体1に、放熱シートとして、DKN100P(デンカ社製、厚み100μm、熱伝導率1.5W/mk、両面粘着)を貼り付け熱伝導性封止部材3を作製した。
【0187】
(4)熱伝導性封止部材4
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、放熱シートとして、DKN100P(デンカ社製、厚み100μm、熱伝導率1.5W/mk、両面粘着)を粘着面を介して貼り付け熱伝導性封止部材4を作製した。
【0188】
5.有機EL素子の作製
[実施例1]
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、α−NPD(N,N'-di[(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl]-1,1'-biphenyl)-4,4'-diamine)とMoO3とを体積比4:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で膜厚40nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α−NPDを真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚20nmとなるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。次に、ホスト材料としてAlq3(Tris-(8-hydroxyquinoline)aluminium)を用い、緑色発光ドーパントとしてC545tを用いて、上記正孔輸送層上に、Alq3およびC545tを、C545t濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで35nmの厚さに真空蒸着により成膜し、発光層を形成した。次に、Alq3を真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚10nmとなるように真空蒸着し、電子輸送層を形成した。次に、Alq3およびLiFを共蒸着にて、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度0.1Å/secで15nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子注入層を形成した。最後に、陰極としてAlを用いて、真空度10-5Paの条件下、5.0Å/secの蒸着速度で膜厚200nmとなるように真空蒸着した。
陰極の形成後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、20mm角に切り出した熱伝導性封止部材1をグローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、素子と熱伝導性封止部材とを、発光部上に熱伝導性封止部材が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。その外側からエポキシ樹脂を塗布し、紫外線より硬化させ、図2に示すような有機EL素子(有機EL素子1とする。)を得た。なお、上記熱伝導性封止部材および素子は、接着されていないものであり、貼り合わせた状態で、上記エポキシ樹脂により固定されているものである。
【0189】
[実施例2]
熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材2を用い、上記有機EL素子の発光部上に上記放熱シートの粘着面が配置されるように位置合わせをし、貼り合わせた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子(有機EL素子2とする。)を得た。
【0190】
[実施例3]
熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材3を用いた以外は、実施例2と同様にして有機EL素子(有機EL素子3とする。)を得た。
【0191】
[実施例4]
上記有機EL素子1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、BFG20(デンカ社製)と上記積層体1をグローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、素子とBFG20(デンカ社製)をBFG20の粘着面を介して貼り付けた後、BFG20上に上記積層体1の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。その外側からエポキシ樹脂を塗布し、発光エリアをフォトマスクにて遮光しながら紫外線を上下両方向から照射してエポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子4とする。)を得た。
なお、上記熱伝導性封止部材は上記放熱シートおよび絶縁層の両者が接着されていないものであり、貼り合わせた状態で、上記エポキシ樹脂により固定されているものである。
【0192】
[実施例5]
上記有機EL素子1と同様にして熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材4を用いることにより有機EL素子(有機EL素子5とする。)を得た。
【0193】
[実施例6]
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが52mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。次に、そのITO基板上に、ポジ型レジスト(東京応化社製TFRH)を乾燥膜厚が1μmになるようにスピンコート法にて塗布した後、120℃で2分ベーキングした。その後、発光エリアが50mm□になるよう、フォトマスクを介して365nmの紫外光を照射した。レジストを有機アルカリ現像液NMD3(東京応化社製)を用いて30秒現像した後、240℃で30分ベーキングすることによりEL用絶縁層を形成した。次いで、上記有機EL素子1の作製と同様にして、陰極まで形成し、素子を封止し、有機EL素子6を得た。
なお、熱伝導性封止部材としては、55mm角に切り出した熱伝導性封止部材1をグローブボックス中で加熱乾燥させたものを用いた。
【0194】
[実施例7]
上記有機EL素子6と同様にして熱伝導性封止部材1の代わりに熱伝導性封止部材4を用いることにより有機EL素子(有機EL素子7とする。)を得た。
【0195】
[比較例1]
上記有機EL素子1の作製と同様にして陰極まで形成した。また、発光エリアよりも広くなるようにエッチングで加工した、キャップ形状のガラス製の封止部材を準備した。この封止部材の土手にエポキシ樹脂を塗布し、水分濃度を1ppm以下にした窒素雰囲気下のグローブボックス内で、素子と貼り合せた。発光エリアをフォトマスクにより遮光した上で、紫外線を照射し、エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(比較有機EL素子1とする。)を得た。
【0196】
[比較例2]
上記有機EL素子6の作製と同様にして陰極まで形成した。また、発光エリアよりも広くなるようにエッチングで加工した、キャップ形状のガラス製の封止部材を準備した。この封止部材の土手にエポキシ樹脂を塗布し、水分濃度を1ppm以下にした窒素雰囲気下のグローブボックス内で、素子と貼り合せた。発光エリアをフォトマスクにより遮光した上で、紫外線を照射し、エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(比較有機EL素子2とする。)を得た。
【0197】
[評価]
実施例1〜5および比較例1で作製した有機EL素子について、初期発光状態、80℃高温保存試験、温度むらおよび放熱性について評価を行った。
【0198】
(初期発光状態)
実施例および比較例で作製した有機EL素子の初期発光状態として、電圧を0Vから15Vまで0.2V刻みに上昇させ、そのときの輝度値を測定し、発光状態を確認した。評価については、比較例1を基準とした以下の判断基準にて行った。結果を下記表4に示す。
○:良好(比較例1と同等)。
△:絶縁不良により発光しないものが見られた(10サンプル作成時において、6サンプル発光せず、残りの4サンプルは発光状態良好であった)。
【0199】
(80℃高温保存試験)
実施例および比較例で作製した有機EL素子の有機EL素子について、80℃高温保存試験を行い、封止部材からの水分放出の有無を調査した。水分放出の評価については、ダークスポットの発生の程度を比較例2を基準とした以下の判断基準で行った。結果を下記表4に示す。
◎:非常に良好
○:良好(比較例と同等)
△:絶縁不良により発光しないものが見られた(10サンプル作成時において、7サンプル発光せず、残りの3サンプルは発光状態良好であった)。
【0200】
(温度むらおよび放熱性)
発光エリアを50mm□とした実施例6および7で作製した有機EL素子6および7と、比較例2で作製した比較有機EL素子2について、50mm□内の3000cd/m2にて点灯させてから10分後の面内の温度むらおよび放熱性を評価した。温度むらについては、K熱電対を用い、室温26.5℃にて、発光面であるガラス基板側から、発光エリアの任意の9箇所の温度を測定した。放熱特性については、K熱電対を用い、室温26.5℃にて、封止部材側および発光面側の両側から、発光エリアの中心部の温度を測定した。結果を表5に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
表4より、実施例1、実施例4では熱伝導性封止部材からの水分等の脱ガスが非常に少なく、ダークスポットの発生が非常に少なく、比較例1よりも良好な結果となった。
また、実施例2、3については、比較例1とほぼ同等のダークスポットの発生であった。
比較例1では有機EL素子がN2ガスに触れているおり、放熱を考える上で、熱伝導性が低いが、本熱伝導性封止部材の何れもが、N2ガスよりも熱伝導性に優れるため有機EL素子用の放熱部材として有用である。
【0203】
【表5】
【0204】
表5より、実施例で作製した有機EL素子6〜7は、比較例で作製した比較有機EL素子2と比較し、温度むらおよび放熱性が共に優れていた。
よって、本発明例の熱伝導性封止部材は、従来のガラス製の封止部材と比較し、有機EL素子の放熱や均熱に、良好に機能することが確認された。
【符号の説明】
【0205】
1 … 金属基材
2 … 放熱シート
3 … 絶縁層
4 … 剥離層
5 … 粘着層
6 … 防湿部
10 … 熱伝導性封止部材
11 … 外縁部
20 … EL素子
21 … 透明基板
22 … 透明電極層
23 … EL層
24 … 背面電極層
25 … 封止樹脂部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材と、
前記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、
を有することを特徴とする熱伝導性封止部材。
【請求項2】
前記放熱シートの熱伝導率が、1W/mK以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項3】
前記放熱シートの厚みが5μm〜3000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項4】
前記金属基材および放熱シートの間に、絶縁性を有する絶縁層を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項5】
前記放熱シートの厚みが5μm〜200μmの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項6】
前記絶縁層が、ポリイミドを主成分とするものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項7】
前記絶縁層および放熱シートの間に、粘着層を有するものであることを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項8】
発熱素子と、
前記発熱素子を覆うように形成された熱伝導性封止部材と、
を有する素子であって、
前記熱伝導性封止部材が、金属基材と、前記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートとを有し、前記放熱シートが前記発熱素子を覆うように配置されていることを特徴とする素子。
【請求項9】
前記発熱素子が、透明基板と、前記透明基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、前記エレクトロルミネッセンス層上に形成された背面電極層と、前記透明電極層、前記エレクトロルミネッセンス層、および前記背面電極層を覆うように形成された熱伝導性封止部材とを有するエレクトロルミネッセンス素子であり、
前記放熱シートが、前記透明電極層、前記エレクトロルミネッセンス層、および前記背面電極層を覆うように前記透明基板に接着されていることを特徴とする請求項8に記載の素子。
【請求項10】
前記透明基板上に前記熱伝導性封止部材の外周を囲むように封止樹脂部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の素子。
【請求項11】
前記封止樹脂部が吸湿剤を含有することを特徴とする請求項10に記載の素子。
【請求項12】
前記背面電極層が透明性を有し、前記背面電極層と前記熱伝導性封止部材との間に白色反射層が形成されていることを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれかに記載の素子。
【請求項1】
金属基材と、
前記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートと、
を有することを特徴とする熱伝導性封止部材。
【請求項2】
前記放熱シートの熱伝導率が、1W/mK以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項3】
前記放熱シートの厚みが5μm〜3000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項4】
前記金属基材および放熱シートの間に、絶縁性を有する絶縁層を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項5】
前記放熱シートの厚みが5μm〜200μmの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項6】
前記絶縁層が、ポリイミドを主成分とするものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項7】
前記絶縁層および放熱シートの間に、粘着層を有するものであることを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
【請求項8】
発熱素子と、
前記発熱素子を覆うように形成された熱伝導性封止部材と、
を有する素子であって、
前記熱伝導性封止部材が、金属基材と、前記金属基材上に形成され、バインダー樹脂および熱伝導性に優れた熱伝導性粒子を含む放熱シートとを有し、前記放熱シートが前記発熱素子を覆うように配置されていることを特徴とする素子。
【請求項9】
前記発熱素子が、透明基板と、前記透明基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、前記エレクトロルミネッセンス層上に形成された背面電極層と、前記透明電極層、前記エレクトロルミネッセンス層、および前記背面電極層を覆うように形成された熱伝導性封止部材とを有するエレクトロルミネッセンス素子であり、
前記放熱シートが、前記透明電極層、前記エレクトロルミネッセンス層、および前記背面電極層を覆うように前記透明基板に接着されていることを特徴とする請求項8に記載の素子。
【請求項10】
前記透明基板上に前記熱伝導性封止部材の外周を囲むように封止樹脂部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の素子。
【請求項11】
前記封止樹脂部が吸湿剤を含有することを特徴とする請求項10に記載の素子。
【請求項12】
前記背面電極層が透明性を有し、前記背面電極層と前記熱伝導性封止部材との間に白色反射層が形成されていることを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれかに記載の素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−222334(P2011−222334A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90963(P2010−90963)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]