熱伝導構造
【課題】熱伝導率を大きく変化させることができ、様々な受熱面、放熱面に適用できる熱伝導構造を提供すること。
【解決手段】熱伝導構造は、受熱面7と、放熱面9と、前記受熱面7と前記放熱面9との間に複数配置されたアクチュエータ3とを備え、前記アクチュエータ3は、外部から与えられるエネルギーに応じ、(a)前記受熱面7から、前記アクチュエータ3を経て、前記放熱面9に至る経路に、非接触部を生じさせない状態Aと、(b)前記経路に、非接触部を生じさせる状態Bとの間で動作可能であることを特徴とする。
【解決手段】熱伝導構造は、受熱面7と、放熱面9と、前記受熱面7と前記放熱面9との間に複数配置されたアクチュエータ3とを備え、前記アクチュエータ3は、外部から与えられるエネルギーに応じ、(a)前記受熱面7から、前記アクチュエータ3を経て、前記放熱面9に至る経路に、非接触部を生じさせない状態Aと、(b)前記経路に、非接触部を生じさせる状態Bとの間で動作可能であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受熱面と放熱面との間の熱伝導を行う熱伝導構造に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の熱伝導率を用途や環境によって大きく可変したいと言うニーズが存在するが、通常、部材の熱伝導率は、その物性値としてある一定の値を有するのみである。
これに対し、例えば、特許文献1〜4の技術は、部材の外観を変えずに熱伝導率を可変にする機構を提案している。
【特許文献1】特開平5−23900号公報
【特許文献2】特開平11−236636号公報
【特許文献3】特開平9−329290号公報
【特許文献4】特開2000−274976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術は、部材全体が変形するため、受熱面や放熱面への固定方法における制約がある。また、特許文献2の技術では、用いる材料の点から、大幅な熱伝導率の変化を望めない。また、特許文献3の技術は、熱伝導率の異なる2種類の気体を用いるものであり、熱伝導率は最大でも、それらの気体の熱伝導率の範囲でしか可変できない。また、特許文献4の技術は、構成要素である流体の熱伝導率を大きく変化させることができない問題がある。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、熱伝導率を大きく変化させることができ、様々な受熱面、放熱面に適用できる熱伝導構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱伝導構造は、受熱面と、放熱面と、受熱面と放熱面との間に複数配置されたアクチュエータとを備える。そのアクチュエータは、外部から与えられるエネルギーに応じ、(a)受熱面から、アクチュエータを経て、放熱面に至る経路に、非接触部を生じさせない状態A(すなわち、アクチュエータが、受熱面と放熱面との両方に接触し、且つ、アクチュエータにおいて受熱面に接触している部分と、放熱面に接触している部分とが一体である状態)、(b)前記経路に、非接触部を生じさせる状態B(すなわち、アクチュエータと受熱面とが非接触であるか、アクチュエータと放熱面とが非接触であるか、アクチュエータにおいて受熱面に接触している部分と放熱面に接触している部分とが別体である状態)の間で動作可能である。
【0006】
本発明の熱伝導構造は、受熱面と放熱面との間の熱伝導率を大きく変化させることができる。すなわち、アクチュエータを状態Aとすることにより、熱伝導率を高くすることができ、アクチュエータを状態Bとすることにより、熱伝導率を低くすることができる。
【0007】
本発明において、例えば、図1に示すように、アクチュエータ3の一端3aを受熱面7及び放熱面9のうちの一方に常に接触させ、その一端3aとは異なる端部3bを、受熱面及7及び放熱面9のうちの他方に接触させることで状態Aとすることができる。また、アクチュエータ3における前記異なる端部3bを、受熱面7及び放熱面9のうちの他方に対し非接触とすることにより、状態Bとすることができる。
【0008】
アクチュエータ3の一端3aを常に接触させる対象を、受熱面7とすることができる。こうすることにより、アクチュエータ3の動作を、早期に、受熱面7の温度変化に反映させることができる。また、アクチュエータ3の一端3aを常に接触させる対象を、放熱面9とすることができる。こうすることにより、アクチュエータ3の動作のタイミングを、一端3aを受熱面7に常に接触させる場合よりも、遅らせることができる。
【0009】
本発明の熱伝導構造は、例えば、図1に示すように、受熱面7と放熱面9との間に、それらを支持する支持部材5を備えることが好ましい。
前記アクチュエータとしては、例えば、バイメタル及び/又は形状記憶合金を備え、外部(アクチュエータ以外の部分)から与えられる熱エネルギーに応じて動作するものが挙げられる。
【0010】
また、前記アクチュエータとしては、例えば、図6に示すように、内部に気体を密封し、弾性材料からなる袋部材12を備え、外部から与えられる熱エネルギーに応じて、前記袋部材12が膨張/収縮することにより動作するものが挙げられる。
【0011】
また、前記アクチュエータとしては、例えば、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Aとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Bとなるものが挙げられる。この場合、例えば、車両のエンジンを受熱面とし、排気パイプや水冷ラジエータを放熱面とすれば、エンジンの温度が低い暖気運転中は、エンジンから熱が逃げることを防止し、エンジンの温度が上昇したときは、速やかにエンジンの熱を排気パイプや水冷ラジエータに放出することができる。
【0012】
アクチュエータを動作させる構成(例えば、バイメタルや形状記憶合金)の特性を設定することにより、状態Aから状態Bへ移行する温度と、状態Bから状態Aへ移行する温度とを異ならせることができる。この場合、図2に示すように、受熱面(又は放熱面)の温度と、熱伝導率との関係は、ヒステリシスを生じる。
【0013】
また、前記アクチュエータは、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Bとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Aとなるものが挙げられる。この場合、本発明の熱伝導構造は、例えば、保温ポット等に適用することができる。すなわち、2重構造を有する保温ポットの内壁を受熱面とし、その外側にある外壁を放熱面とすれば、内壁に高温の液体が収容されているときは、熱伝導率を低くし、その液体が冷めにくくなる。
【0014】
前記アクチュエータとしては、例えば、ソレノイドを備え、外部から与えられる電気エネルギーに応じて動作するものや、磁石を備え、外部から与えられる磁気エネルギーに応じて動作するものが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
1.熱伝導構造1の製造方法
熱伝導構造1を製造する方法を図3及び図4に基づいて説明する。
まず、バイメタルをコの字形状に加工し、これをアクチュエータ3とした。このとき、アクチュエータ3を加熱したとき、コの字が開くように、バイメタルを加工した。アクチュエータ3のサイズは、底面2mm×2mm、高さ1mmの直方体である。アクチュエータ3は複数作成した。
【0017】
また、底面2mm×2mm、高さ1.1mmのホットメルトをコートしたエポキシ樹脂を用意し、これを支持体5とした。支持体5は複数作成した。
受熱面である銅板7(100mm×100mm、0.5mm厚)の上面全体にわたって、上記のように作成しておいたアクチュエータ3を、ロウ付けにより、複数取り付けた。アクチュエータ3の配置は、銅板7の縦方向、横方向のそれぞれについて、一定の間隔をおいて複数分布するようにした。なお、図4における6はロウ材である。このとき、後に支持体5を取り付けるスペースには、ダミーとして、底面2.5mm×2.5mm、高さ1mmのエポキシ樹脂(図示略)を配置しておいた。次に、ダミーのエポキシ樹脂を除去後、そのスペースに、上記のように作成しておいた支持体5を取り付けた。
【0018】
さらに、放熱面である銅板9(100mm×100mm、0.5mm厚)を、銅板7のうち、アクチュエータ3及び支持体5を取り付けた側にかぶせ、150℃の温度条件で加圧した。その結果、銅板7と銅板9とは、支持体5を介して接着された。銅板7及び銅板9の外周部はシリコーン樹脂にてシールした。図4に示すように、銅板7を加熱しないときは、アクチュエータ3の上端部3aと、銅板9との間には、隙間である非接触部11が生じていた。
【0019】
2.熱伝導構造1の作用
次に、熱伝導構造1の作用を説明する。熱伝導構造1を、銅板7が下側となるように、ホットプレート上に置いた。その状態で加熱し、銅板7の温度を室温から250℃まで徐々に上昇させた。銅板7の温度が上昇してゆき、所定の温度領域以上となったとき、図5に示すように、アクチュエータ3の形状が、コの字が開くように変化し、上端部3aが銅板9に接触した。このとき、銅板7から、アクチュエータ3を経て、銅板9に至る経路に、非接触部がない状態となった。この状態は、銅板7の温度が250℃に達するまで続いた。その後、ホットプレートの加熱を止め、銅板7の温度が下がってゆく過程で、所定の温度領域未満となったとき、アクチュエータ3の形状が、コの字が閉じるように変化し、再び、上端部3aと銅板9との間に非接触部11が生じた。
【0020】
銅板7の温度が上昇している期間における銅板9の温度変化を図6に示す(実線)。また、比較例として、単なる1枚の銅板をホットプレート上で同様に加熱したときの温度変化を示す(点線)。銅板9の温度上昇は、銅板7の温度が150℃付近になるまでは緩やかであった。これは、アクチュエータ3の上端部3aが銅板9に接触しておらず、銅板7から銅板9への熱伝導率が低いためである。その後、銅板7の温度が150℃を超えると、銅板9の温度上昇は急峻になった。これは、アクチュエータ3の上端部3aが銅板9に接触し、銅板7から、アクチュエータ3を経て、銅板9に至る熱伝導の経路が生じたため、銅板7から銅板9への熱伝導率が高くなったためである。それに対し、比較例の銅板では、温度上昇の程度に変化は見られなかった。
【0021】
3.熱伝導構造1が奏する効果
(i)熱伝導構造1は、図6に示すように、熱伝導率を大きく変化させることができる。
(ii)熱伝導構造1は、アクチュエータ3の高さ、大きさ等を調整するだけで、様々な大きさ、形状の受熱面、放熱面に適用できる。
(iii)熱伝導構造1は、その構造を簡素化できる。
(iv) 熱伝導構造1は、受熱面(銅板7)の温度が低いときは熱伝導率を低くし、受熱面の温度が高いときは熱伝導率を高くすることができる。例えば、車両のエンジンを受熱面とし、排気パイプや水冷ラジエータを放熱面とすれば、エンジンの温度が低い暖気運転中は、エンジンから熱が逃げることを防止し、エンジンの温度が上昇したときは、速やかにエンジンの熱を排気パイプや水冷ラジエータに放出することができる。
【実施例2】
【0022】
本実施例2における熱伝導構造1は、基本的には前記実施例1と同様であるが、アクチュエータ3の動作において相違する。すなわち、アクチュエータ3は、加熱されないときはコの字が開いた状態にあり、上端部3aは銅板9に接触している。一方、アクチュエータ3が加熱されたときは、コの字が閉じた状態となり、上端部3aと銅板9との間に非接触部11が生じる。よって、本実施例2おける熱伝導構造1は、前記実施例1とは逆に、銅板7を加熱しないときは、熱伝導率が高く、銅板7を加熱したときは、熱伝導率が低い。本実施例2におけるアクチュエータ3は、バイメタルの向き(内側と外側)を前記実施例1とは逆にすることで製造できる。
【0023】
本実施例2の熱伝導構造1は、例えば、保温ポット等に適用することができる。すなわち、2重構造を有する保温ポットの内壁を受熱面とし、その外側にある外壁を放熱面とすれば、内壁に高温の液体が収容されているときは、熱伝導率を低くし、その液体が冷めにくくなる。
【実施例3】
【0024】
本実施例3の熱伝導構造1は、図7に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9とは、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0025】
アクチュエータ3は、リン青銅筒10と、空気入りシリコーンゴム12とから構成される。リン青銅筒10は、リン青銅の材質から成り、断面が楕円の筒である。リン青銅筒10は、その側面を、銅板7にロウ付けされている。このとき、リン青銅筒10の断面における長径方向は、銅板7、銅板9と平行となっている。
【0026】
空気入りシリコーンゴム12は、シリコーンゴムから成り、内部に空気を密封した球である。空気入りシリコーンゴム12は、リン青銅筒10に収容されており、その上下の端部はリン青銅筒10の内壁に接しているが、左右の端部とリン青銅筒10の内壁との間には隙間が生じている。
【0027】
銅板7を加熱しないとき、リン青銅筒10の上端部10aと、銅板9との間には隙間がある。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0028】
一方、銅板7を加熱し、空気入りシリコーンゴム12が膨張すると、リン青銅筒10の上端部10aが上方に押し上げられ、銅板9に接触する。このとき、銅板7−リン青銅筒10−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。銅板7の加熱を止め、空気入りシリコーンゴム12が収縮すると、再び、リン青銅筒10の上端部10aと、銅板9との間に隙間が生じる。
【0029】
よって、本実施例3の熱伝導構造1では、外部から供給する熱エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例4】
【0030】
本実施例4の熱伝導構造1は、図8に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0031】
アクチュエータ3は、鉄心13、ソレノイド15、及び鉄箔17から構成される。鉄心13の大きさは、2mmφ、長さ3mmであり、その一端において銅板7にロウ付けされている。鉄心13と銅板9との間には隙間がある。ソレノイド15は、鉄心13に巻かれたエナメル線であり、図示しない外部電源に接続している。ソレノイド15に電流が流れたとき、鉄心13とソレノイド15とは、電磁石として機能する。
【0032】
鉄箔17は、その一方の端部17aが支持体5と銅板9との間に挟まれることで固定されている。よって、鉄箔17は、銅板9に常に接触している。鉄箔17のうち、端部17aとは反対側の端部17bは、鉄心13と、銅板9との間に位置する。
【0033】
ソレノイド15に電流が流れず、鉄心13とソレノイド15とからなる電磁石が作動していないとき、鉄箔17の端部17bは、銅板9、鉄心13のいずれにも接触していない。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0034】
一方、ソレノイド15に電流が流れ、鉄心13とソレノイド15とからなる電磁石が作動したとき、鉄箔17の端部17bが磁力により引きつけられて鉄心13と接触し、銅板7−鉄心13−鉄箔17−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。
【0035】
よって、本実施例4の熱伝導構造1では、外部から供給する電気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例5】
【0036】
本実施例5の熱伝導構造1は、図9に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0037】
アクチュエータ3は、内径2mmφ、長さ2mmの中空ボビン19と、中空ボビン19の外周に巻かれたエナメル線21と、鉄心23と、バネ25とから構成される。エナメル線21は図示しない外部電源に接続している。エナメル線21に電流が流れたとき、中空ボビン19とエナメル線21とは、電磁石として機能する。バネ25は、中空ボビン19内に挿入され、その一端を銅板7に固定されている。また、バネ25は、反対側の端部において鉄心23に接続し、鉄心23を銅板9の方向に付勢している。
【0038】
エナメル線21に電流が流れず、中空ボビン19とエナメル線21とからなる電磁石が作動していないとき、鉄心23は、バネ25の付勢力により、銅板9に接触している。このとき、銅板7−バネ25−鉄心23−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。
【0039】
一方、エナメル線21に電流が流れ、中空ボビン19とエナメル線21とからなる電磁石が作動したとき、鉄心23は中空ボビン19の内部に引き込まれ、鉄心23と銅板9との間には隙間が生じる。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0040】
よって、本実施例5の熱伝導構造1では、外部から供給する電気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例6】
【0041】
本実施例6の熱伝導構造1は、図10に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0042】
アクチュエータ3は、リン青銅製のバネ板27と、永久磁石29とから構成される。また、銅板9の上側には、電磁石31が取り付けられている。
バネ板27は、略Z型の形状を有し、その底面27aにおいて銅板7にロウ付けされている。永久磁石29は、バネ板27における上面27bの下側に取り付けられている。
【0043】
電磁石31を作動させないとき、バネ板27の上面27bは、銅板9に接触している。このとき、銅板7−バネ板27−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高い。
【0044】
一方、電磁石31を、永久磁石29と反発しあうように作動させると、永久磁石29と電磁石31間の反発力により、バネ板27が変形し、上面27bが銅板9から離れる。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0045】
よって、本実施例6の熱伝導構造1では、外部から供給する磁気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例7】
【0046】
本実施例7の熱伝導構造1は、図11に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0047】
アクチュエータ3は、一対の鉄板33、35と、磁性流体37とから構成される。また、銅板9の上側には、電磁石39が取り付けられている。
鉄板33は、支持体5に沿う位置において、その一端を銅板7にロウ付けされている。また、鉄板35は、支持体5に沿う位置において、その一端を銅板9にロウ付けされている。鉄板33と鉄板35との間には、1mmのギャップ41が存在する。磁性流体37は、ギャップ41の容積以上の容積を有している。
【0048】
電磁石39を作動させないとき、磁性流体37はギャップ41以外の場所にあり、鉄板33と鉄板35とは接続されていない。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0049】
一方、電磁石39を作動させると、磁性流体37はギャップ41に引き寄せられ、鉄板33と鉄板35との間を満たす。このとき、銅板7−鉄板33−磁性流体37−鉄板35−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。
【0050】
よって、本実施例7の熱伝導構造1では、外部から供給する磁気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【0051】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例1、2において、アクチュエータ3の材料として、バイメタルの代わりに、形状記憶合金を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】熱伝導構造の原理を表す説明図である。
【図2】熱伝導構造における受熱面又は放熱面の温度と、熱伝導率との関係を表すグラフである。
【図3】熱伝導構造1の構成を表す斜視図である。
【図4】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図5】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図6】銅板7の温度と、銅板9の温度との関係を表すグラフである。
【図7】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図8】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図9】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図10】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図11】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・熱伝導構造、3・・・アクチュエータ、3a・・・上端部、5・・・支持体、
7、9・・・銅板、10・・・リン青銅筒、10a・・・上端部、11・・・非接触部、
12・・・空気入りシリコーンゴム、13、23・・・鉄心、15・・・ソレノイド、
17・・・鉄箔、17a、17b・・・端部、19・・・中空ボビン、
21・・・エナメル線、25・・・バネ、27・・・バネ板、27a・・・底面、
27b・・・上面、29・・・永久磁石、31・・・電磁石、33、35・・・鉄板、
37・・・磁性流体、39・・・電磁石、41・・・ギャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、受熱面と放熱面との間の熱伝導を行う熱伝導構造に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の熱伝導率を用途や環境によって大きく可変したいと言うニーズが存在するが、通常、部材の熱伝導率は、その物性値としてある一定の値を有するのみである。
これに対し、例えば、特許文献1〜4の技術は、部材の外観を変えずに熱伝導率を可変にする機構を提案している。
【特許文献1】特開平5−23900号公報
【特許文献2】特開平11−236636号公報
【特許文献3】特開平9−329290号公報
【特許文献4】特開2000−274976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術は、部材全体が変形するため、受熱面や放熱面への固定方法における制約がある。また、特許文献2の技術では、用いる材料の点から、大幅な熱伝導率の変化を望めない。また、特許文献3の技術は、熱伝導率の異なる2種類の気体を用いるものであり、熱伝導率は最大でも、それらの気体の熱伝導率の範囲でしか可変できない。また、特許文献4の技術は、構成要素である流体の熱伝導率を大きく変化させることができない問題がある。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、熱伝導率を大きく変化させることができ、様々な受熱面、放熱面に適用できる熱伝導構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱伝導構造は、受熱面と、放熱面と、受熱面と放熱面との間に複数配置されたアクチュエータとを備える。そのアクチュエータは、外部から与えられるエネルギーに応じ、(a)受熱面から、アクチュエータを経て、放熱面に至る経路に、非接触部を生じさせない状態A(すなわち、アクチュエータが、受熱面と放熱面との両方に接触し、且つ、アクチュエータにおいて受熱面に接触している部分と、放熱面に接触している部分とが一体である状態)、(b)前記経路に、非接触部を生じさせる状態B(すなわち、アクチュエータと受熱面とが非接触であるか、アクチュエータと放熱面とが非接触であるか、アクチュエータにおいて受熱面に接触している部分と放熱面に接触している部分とが別体である状態)の間で動作可能である。
【0006】
本発明の熱伝導構造は、受熱面と放熱面との間の熱伝導率を大きく変化させることができる。すなわち、アクチュエータを状態Aとすることにより、熱伝導率を高くすることができ、アクチュエータを状態Bとすることにより、熱伝導率を低くすることができる。
【0007】
本発明において、例えば、図1に示すように、アクチュエータ3の一端3aを受熱面7及び放熱面9のうちの一方に常に接触させ、その一端3aとは異なる端部3bを、受熱面及7及び放熱面9のうちの他方に接触させることで状態Aとすることができる。また、アクチュエータ3における前記異なる端部3bを、受熱面7及び放熱面9のうちの他方に対し非接触とすることにより、状態Bとすることができる。
【0008】
アクチュエータ3の一端3aを常に接触させる対象を、受熱面7とすることができる。こうすることにより、アクチュエータ3の動作を、早期に、受熱面7の温度変化に反映させることができる。また、アクチュエータ3の一端3aを常に接触させる対象を、放熱面9とすることができる。こうすることにより、アクチュエータ3の動作のタイミングを、一端3aを受熱面7に常に接触させる場合よりも、遅らせることができる。
【0009】
本発明の熱伝導構造は、例えば、図1に示すように、受熱面7と放熱面9との間に、それらを支持する支持部材5を備えることが好ましい。
前記アクチュエータとしては、例えば、バイメタル及び/又は形状記憶合金を備え、外部(アクチュエータ以外の部分)から与えられる熱エネルギーに応じて動作するものが挙げられる。
【0010】
また、前記アクチュエータとしては、例えば、図6に示すように、内部に気体を密封し、弾性材料からなる袋部材12を備え、外部から与えられる熱エネルギーに応じて、前記袋部材12が膨張/収縮することにより動作するものが挙げられる。
【0011】
また、前記アクチュエータとしては、例えば、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Aとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Bとなるものが挙げられる。この場合、例えば、車両のエンジンを受熱面とし、排気パイプや水冷ラジエータを放熱面とすれば、エンジンの温度が低い暖気運転中は、エンジンから熱が逃げることを防止し、エンジンの温度が上昇したときは、速やかにエンジンの熱を排気パイプや水冷ラジエータに放出することができる。
【0012】
アクチュエータを動作させる構成(例えば、バイメタルや形状記憶合金)の特性を設定することにより、状態Aから状態Bへ移行する温度と、状態Bから状態Aへ移行する温度とを異ならせることができる。この場合、図2に示すように、受熱面(又は放熱面)の温度と、熱伝導率との関係は、ヒステリシスを生じる。
【0013】
また、前記アクチュエータは、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Bとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Aとなるものが挙げられる。この場合、本発明の熱伝導構造は、例えば、保温ポット等に適用することができる。すなわち、2重構造を有する保温ポットの内壁を受熱面とし、その外側にある外壁を放熱面とすれば、内壁に高温の液体が収容されているときは、熱伝導率を低くし、その液体が冷めにくくなる。
【0014】
前記アクチュエータとしては、例えば、ソレノイドを備え、外部から与えられる電気エネルギーに応じて動作するものや、磁石を備え、外部から与えられる磁気エネルギーに応じて動作するものが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
1.熱伝導構造1の製造方法
熱伝導構造1を製造する方法を図3及び図4に基づいて説明する。
まず、バイメタルをコの字形状に加工し、これをアクチュエータ3とした。このとき、アクチュエータ3を加熱したとき、コの字が開くように、バイメタルを加工した。アクチュエータ3のサイズは、底面2mm×2mm、高さ1mmの直方体である。アクチュエータ3は複数作成した。
【0017】
また、底面2mm×2mm、高さ1.1mmのホットメルトをコートしたエポキシ樹脂を用意し、これを支持体5とした。支持体5は複数作成した。
受熱面である銅板7(100mm×100mm、0.5mm厚)の上面全体にわたって、上記のように作成しておいたアクチュエータ3を、ロウ付けにより、複数取り付けた。アクチュエータ3の配置は、銅板7の縦方向、横方向のそれぞれについて、一定の間隔をおいて複数分布するようにした。なお、図4における6はロウ材である。このとき、後に支持体5を取り付けるスペースには、ダミーとして、底面2.5mm×2.5mm、高さ1mmのエポキシ樹脂(図示略)を配置しておいた。次に、ダミーのエポキシ樹脂を除去後、そのスペースに、上記のように作成しておいた支持体5を取り付けた。
【0018】
さらに、放熱面である銅板9(100mm×100mm、0.5mm厚)を、銅板7のうち、アクチュエータ3及び支持体5を取り付けた側にかぶせ、150℃の温度条件で加圧した。その結果、銅板7と銅板9とは、支持体5を介して接着された。銅板7及び銅板9の外周部はシリコーン樹脂にてシールした。図4に示すように、銅板7を加熱しないときは、アクチュエータ3の上端部3aと、銅板9との間には、隙間である非接触部11が生じていた。
【0019】
2.熱伝導構造1の作用
次に、熱伝導構造1の作用を説明する。熱伝導構造1を、銅板7が下側となるように、ホットプレート上に置いた。その状態で加熱し、銅板7の温度を室温から250℃まで徐々に上昇させた。銅板7の温度が上昇してゆき、所定の温度領域以上となったとき、図5に示すように、アクチュエータ3の形状が、コの字が開くように変化し、上端部3aが銅板9に接触した。このとき、銅板7から、アクチュエータ3を経て、銅板9に至る経路に、非接触部がない状態となった。この状態は、銅板7の温度が250℃に達するまで続いた。その後、ホットプレートの加熱を止め、銅板7の温度が下がってゆく過程で、所定の温度領域未満となったとき、アクチュエータ3の形状が、コの字が閉じるように変化し、再び、上端部3aと銅板9との間に非接触部11が生じた。
【0020】
銅板7の温度が上昇している期間における銅板9の温度変化を図6に示す(実線)。また、比較例として、単なる1枚の銅板をホットプレート上で同様に加熱したときの温度変化を示す(点線)。銅板9の温度上昇は、銅板7の温度が150℃付近になるまでは緩やかであった。これは、アクチュエータ3の上端部3aが銅板9に接触しておらず、銅板7から銅板9への熱伝導率が低いためである。その後、銅板7の温度が150℃を超えると、銅板9の温度上昇は急峻になった。これは、アクチュエータ3の上端部3aが銅板9に接触し、銅板7から、アクチュエータ3を経て、銅板9に至る熱伝導の経路が生じたため、銅板7から銅板9への熱伝導率が高くなったためである。それに対し、比較例の銅板では、温度上昇の程度に変化は見られなかった。
【0021】
3.熱伝導構造1が奏する効果
(i)熱伝導構造1は、図6に示すように、熱伝導率を大きく変化させることができる。
(ii)熱伝導構造1は、アクチュエータ3の高さ、大きさ等を調整するだけで、様々な大きさ、形状の受熱面、放熱面に適用できる。
(iii)熱伝導構造1は、その構造を簡素化できる。
(iv) 熱伝導構造1は、受熱面(銅板7)の温度が低いときは熱伝導率を低くし、受熱面の温度が高いときは熱伝導率を高くすることができる。例えば、車両のエンジンを受熱面とし、排気パイプや水冷ラジエータを放熱面とすれば、エンジンの温度が低い暖気運転中は、エンジンから熱が逃げることを防止し、エンジンの温度が上昇したときは、速やかにエンジンの熱を排気パイプや水冷ラジエータに放出することができる。
【実施例2】
【0022】
本実施例2における熱伝導構造1は、基本的には前記実施例1と同様であるが、アクチュエータ3の動作において相違する。すなわち、アクチュエータ3は、加熱されないときはコの字が開いた状態にあり、上端部3aは銅板9に接触している。一方、アクチュエータ3が加熱されたときは、コの字が閉じた状態となり、上端部3aと銅板9との間に非接触部11が生じる。よって、本実施例2おける熱伝導構造1は、前記実施例1とは逆に、銅板7を加熱しないときは、熱伝導率が高く、銅板7を加熱したときは、熱伝導率が低い。本実施例2におけるアクチュエータ3は、バイメタルの向き(内側と外側)を前記実施例1とは逆にすることで製造できる。
【0023】
本実施例2の熱伝導構造1は、例えば、保温ポット等に適用することができる。すなわち、2重構造を有する保温ポットの内壁を受熱面とし、その外側にある外壁を放熱面とすれば、内壁に高温の液体が収容されているときは、熱伝導率を低くし、その液体が冷めにくくなる。
【実施例3】
【0024】
本実施例3の熱伝導構造1は、図7に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9とは、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0025】
アクチュエータ3は、リン青銅筒10と、空気入りシリコーンゴム12とから構成される。リン青銅筒10は、リン青銅の材質から成り、断面が楕円の筒である。リン青銅筒10は、その側面を、銅板7にロウ付けされている。このとき、リン青銅筒10の断面における長径方向は、銅板7、銅板9と平行となっている。
【0026】
空気入りシリコーンゴム12は、シリコーンゴムから成り、内部に空気を密封した球である。空気入りシリコーンゴム12は、リン青銅筒10に収容されており、その上下の端部はリン青銅筒10の内壁に接しているが、左右の端部とリン青銅筒10の内壁との間には隙間が生じている。
【0027】
銅板7を加熱しないとき、リン青銅筒10の上端部10aと、銅板9との間には隙間がある。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0028】
一方、銅板7を加熱し、空気入りシリコーンゴム12が膨張すると、リン青銅筒10の上端部10aが上方に押し上げられ、銅板9に接触する。このとき、銅板7−リン青銅筒10−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。銅板7の加熱を止め、空気入りシリコーンゴム12が収縮すると、再び、リン青銅筒10の上端部10aと、銅板9との間に隙間が生じる。
【0029】
よって、本実施例3の熱伝導構造1では、外部から供給する熱エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例4】
【0030】
本実施例4の熱伝導構造1は、図8に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0031】
アクチュエータ3は、鉄心13、ソレノイド15、及び鉄箔17から構成される。鉄心13の大きさは、2mmφ、長さ3mmであり、その一端において銅板7にロウ付けされている。鉄心13と銅板9との間には隙間がある。ソレノイド15は、鉄心13に巻かれたエナメル線であり、図示しない外部電源に接続している。ソレノイド15に電流が流れたとき、鉄心13とソレノイド15とは、電磁石として機能する。
【0032】
鉄箔17は、その一方の端部17aが支持体5と銅板9との間に挟まれることで固定されている。よって、鉄箔17は、銅板9に常に接触している。鉄箔17のうち、端部17aとは反対側の端部17bは、鉄心13と、銅板9との間に位置する。
【0033】
ソレノイド15に電流が流れず、鉄心13とソレノイド15とからなる電磁石が作動していないとき、鉄箔17の端部17bは、銅板9、鉄心13のいずれにも接触していない。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0034】
一方、ソレノイド15に電流が流れ、鉄心13とソレノイド15とからなる電磁石が作動したとき、鉄箔17の端部17bが磁力により引きつけられて鉄心13と接触し、銅板7−鉄心13−鉄箔17−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。
【0035】
よって、本実施例4の熱伝導構造1では、外部から供給する電気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例5】
【0036】
本実施例5の熱伝導構造1は、図9に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0037】
アクチュエータ3は、内径2mmφ、長さ2mmの中空ボビン19と、中空ボビン19の外周に巻かれたエナメル線21と、鉄心23と、バネ25とから構成される。エナメル線21は図示しない外部電源に接続している。エナメル線21に電流が流れたとき、中空ボビン19とエナメル線21とは、電磁石として機能する。バネ25は、中空ボビン19内に挿入され、その一端を銅板7に固定されている。また、バネ25は、反対側の端部において鉄心23に接続し、鉄心23を銅板9の方向に付勢している。
【0038】
エナメル線21に電流が流れず、中空ボビン19とエナメル線21とからなる電磁石が作動していないとき、鉄心23は、バネ25の付勢力により、銅板9に接触している。このとき、銅板7−バネ25−鉄心23−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。
【0039】
一方、エナメル線21に電流が流れ、中空ボビン19とエナメル線21とからなる電磁石が作動したとき、鉄心23は中空ボビン19の内部に引き込まれ、鉄心23と銅板9との間には隙間が生じる。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0040】
よって、本実施例5の熱伝導構造1では、外部から供給する電気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例6】
【0041】
本実施例6の熱伝導構造1は、図10に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0042】
アクチュエータ3は、リン青銅製のバネ板27と、永久磁石29とから構成される。また、銅板9の上側には、電磁石31が取り付けられている。
バネ板27は、略Z型の形状を有し、その底面27aにおいて銅板7にロウ付けされている。永久磁石29は、バネ板27における上面27bの下側に取り付けられている。
【0043】
電磁石31を作動させないとき、バネ板27の上面27bは、銅板9に接触している。このとき、銅板7−バネ板27−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高い。
【0044】
一方、電磁石31を、永久磁石29と反発しあうように作動させると、永久磁石29と電磁石31間の反発力により、バネ板27が変形し、上面27bが銅板9から離れる。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0045】
よって、本実施例6の熱伝導構造1では、外部から供給する磁気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【実施例7】
【0046】
本実施例7の熱伝導構造1は、図11に示す構造を有する。前記実施例1と同様に、銅板7と銅板9は、支持体5を介して接着されている。アクチュエータ3は、前記実施例1と同様に、銅板7の上面全体にわたって、複数取り付けられている。
【0047】
アクチュエータ3は、一対の鉄板33、35と、磁性流体37とから構成される。また、銅板9の上側には、電磁石39が取り付けられている。
鉄板33は、支持体5に沿う位置において、その一端を銅板7にロウ付けされている。また、鉄板35は、支持体5に沿う位置において、その一端を銅板9にロウ付けされている。鉄板33と鉄板35との間には、1mmのギャップ41が存在する。磁性流体37は、ギャップ41の容積以上の容積を有している。
【0048】
電磁石39を作動させないとき、磁性流体37はギャップ41以外の場所にあり、鉄板33と鉄板35とは接続されていない。このとき、銅板7と銅板9とは、アクチュエータ3を介して接触していない状態であるから、それらの間の熱伝導率は低い。
【0049】
一方、電磁石39を作動させると、磁性流体37はギャップ41に引き寄せられ、鉄板33と鉄板35との間を満たす。このとき、銅板7−鉄板33−磁性流体37−鉄板35−銅板9とつながる熱回路が形成され、銅板7と銅板9との間の熱伝導率が高くなる。
【0050】
よって、本実施例7の熱伝導構造1では、外部から供給する磁気エネルギーにより、アクチュエータ3を動作させ、銅板7と銅板9との間の熱伝導率を変化させることができる。
【0051】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例1、2において、アクチュエータ3の材料として、バイメタルの代わりに、形状記憶合金を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】熱伝導構造の原理を表す説明図である。
【図2】熱伝導構造における受熱面又は放熱面の温度と、熱伝導率との関係を表すグラフである。
【図3】熱伝導構造1の構成を表す斜視図である。
【図4】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図5】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図6】銅板7の温度と、銅板9の温度との関係を表すグラフである。
【図7】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図8】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図9】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図10】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【図11】熱伝導構造1の構成を表す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・熱伝導構造、3・・・アクチュエータ、3a・・・上端部、5・・・支持体、
7、9・・・銅板、10・・・リン青銅筒、10a・・・上端部、11・・・非接触部、
12・・・空気入りシリコーンゴム、13、23・・・鉄心、15・・・ソレノイド、
17・・・鉄箔、17a、17b・・・端部、19・・・中空ボビン、
21・・・エナメル線、25・・・バネ、27・・・バネ板、27a・・・底面、
27b・・・上面、29・・・永久磁石、31・・・電磁石、33、35・・・鉄板、
37・・・磁性流体、39・・・電磁石、41・・・ギャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受熱面と、
放熱面と、
前記受熱面と前記放熱面との間に複数配置されたアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、外部から与えられるエネルギーに応じ、
(a)前記受熱面から、前記アクチュエータを経て、前記放熱面に至る経路に、非接触部を生じさせない状態Aと、
(b)前記経路に、非接触部を生じさせる状態Bと、
の間で動作可能であることを特徴とする熱伝導構造。
【請求項2】
前記アクチュエータは、その一端を前記受熱面及び前記放熱面のうちの一方に常に接触させ、前記一端とは異なる端部を、前記受熱面及び前記放熱面のうちの他方に接触させることで前記状態Aとなり、前記異なる端部を前記他方に対し非接触とすることにより前記状態Bとなることを特徴とする請求項1記載の熱伝導構造。
【請求項3】
前記受熱面と前記放熱面との間に、それらを支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導構造。
【請求項4】
前記アクチュエータは、バイメタル及び/又は形状記憶合金を備え、外部から与えられる熱エネルギーに応じて動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項5】
前記アクチュエータは、内部に気体を密封し、弾性材料からなる袋部材を備え、外部から与えられる熱エネルギーに応じて、前記袋部材が膨張/収縮することにより動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項6】
前記アクチュエータは、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Aとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Bとなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項7】
前記アクチュエータは、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Bとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Aとなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項8】
前記アクチュエータは、ソレノイドを備え、外部から与えられる電気エネルギーに応じて動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項9】
前記アクチュエータは、磁石を備え、外部から与えられる磁気エネルギーに応じて動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項1】
受熱面と、
放熱面と、
前記受熱面と前記放熱面との間に複数配置されたアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、外部から与えられるエネルギーに応じ、
(a)前記受熱面から、前記アクチュエータを経て、前記放熱面に至る経路に、非接触部を生じさせない状態Aと、
(b)前記経路に、非接触部を生じさせる状態Bと、
の間で動作可能であることを特徴とする熱伝導構造。
【請求項2】
前記アクチュエータは、その一端を前記受熱面及び前記放熱面のうちの一方に常に接触させ、前記一端とは異なる端部を、前記受熱面及び前記放熱面のうちの他方に接触させることで前記状態Aとなり、前記異なる端部を前記他方に対し非接触とすることにより前記状態Bとなることを特徴とする請求項1記載の熱伝導構造。
【請求項3】
前記受熱面と前記放熱面との間に、それらを支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導構造。
【請求項4】
前記アクチュエータは、バイメタル及び/又は形状記憶合金を備え、外部から与えられる熱エネルギーに応じて動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項5】
前記アクチュエータは、内部に気体を密封し、弾性材料からなる袋部材を備え、外部から与えられる熱エネルギーに応じて、前記袋部材が膨張/収縮することにより動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項6】
前記アクチュエータは、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Aとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Bとなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項7】
前記アクチュエータは、その温度が所定の温度領域以上のとき、前記状態Bとなり、その温度が前記温度領域未満のとき、前記状態Aとなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項8】
前記アクチュエータは、ソレノイドを備え、外部から与えられる電気エネルギーに応じて動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【請求項9】
前記アクチュエータは、磁石を備え、外部から与えられる磁気エネルギーに応じて動作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導構造。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−207336(P2009−207336A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50155(P2008−50155)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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