説明

熱供給可能な保温容器

【課題】被加熱物を加熱する場合、加熱を停止すると通常は被加熱物は放熱して冷えていくが、加熱を停止しても被加熱物が冷えにくい構造の加熱装置がほしい。
【解決手段】加熱しているときにのみ熱を伝える接触子が被加熱物に接触し、加熱を停止したら接触子が被加熱物から離れるような機能を持ったバイメタル構造の熱伝導体を、魔法瓶の二層構造の中に設けることにより、加熱を停止すると熱伝導が遮断されて被加熱物からの放熱を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度が上昇するにしたがい膨張するという固体の熱膨張の特性を利用して、熱伝導を開閉する機能と、魔法瓶の保温機能とを兼ね備えた器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体の熱膨張を利用したものとしては、線膨張率の異なる2種の金属を貼り合わせることにより、一定の温度で開閉させるスイッチ機能を持たせたバイメタルという技術がある。また、保温機能としては、魔法瓶の技術がある。魔法瓶の構造は内層と外層の二重構造になっており、その内層と、外層との間には空間が設けられていて、この空間は真空になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある物体の一部を加熱した場合、熱は温度の高い側から低い側へ向かって拡散していき、最終的には均一な温度となる。 この現象は、ある特別な必要性がある場合には妨げとなることがある。
【0004】
料理の例をとると、煮込みに長時間の加熱を要する場合や、煮物が冷えないように一定の温度に保ちたい場合がある。この場合、加熱して一定の温度に達したのち加熱をストップすれば忽ち冷え始めるため、加熱し続けなければならない。
【0005】
本発明はこれらの事情に鑑み、加熱するときにのみ熱が伝わり、加熱を止めれば被加熱物から外部への熱伝導が遮断されるように熱伝導体を構成することにより、被加熱物からの放熱を防止する機能を持った熱供給可能な保温容器を提供するものである。
【0006】
またこの保温容器には、上記の例とは逆に冷却するときにのみ冷温が伝わり、冷却を止めれば被冷却物から外部への熱伝導が遮断されるように熱伝導体を構成することにより、被冷却物が熱を受け取るのを防止する機能を持たせることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
魔法瓶の二重構造の空間部に、異種金属を貼り合わせたバイメタル構造の熱伝導体を外層側に取り付けることにより、外層側が一定の温度又はそれを超えた場合にのみ熱伝導体が内層に接触して外層と内層との間に熱を導通させることを可能とする熱供給可能な保温容器を提供する。
【0008】
保温容器は内層と外層の二重構造になっており、その内層と、外層との間には空間が設けられていて、この空間は真空になっている。
【0009】
この内層と外層の間の空間に熱伝導体を設置する。
【0010】
熱伝導体は線膨張率の異なる2種類の金属を貼り合わせたバイメタルの構造としている。
【0011】
熱伝導体は、外層側に取り付ける。
【0012】
熱伝導体は、外層の温度が一定の温度及びそれを超えた場合に内層に接触し、それを逆側に超えた場合には内層から離れるような形状にしている。
【0013】
これは金属の熱膨張の特性を利用している。
【0014】
熱伝導体の形状が常温において直線状である場合、温度が上昇するにつれて線膨張率の大きい金属の側を外側にして円弧を描くような形状となる。円弧の半径は温度が上昇するにつれて小さくなる。
【0015】
熱伝導体の形状が常温において円弧状で、内側の金属の線膨張率が外側の金属の線膨張率よりも大きい場合、温度が上昇するにつれて円弧の半径は大きくなり、中心角は小さくなる。
【0016】
熱伝導体の二種の金属の線膨張率の違いによるこのような形状の変化を利用して、一定の温度以上になったら内層に接触するように、常温での熱伝導体の形状を決めておく。
【0017】
外層を加熱すると内層にも接触するように形状を定めた熱伝導体を使用する場合、外層を加熱をしている間は熱伝導体は外層と内層の両方に接触して、外層からの熱が内層に伝達される。
【0018】
加熱を停止すると外層の温度が下がってくることにより、外層と内層の両方に接触していた熱伝導体が内層から離れる。
【0019】
このように熱伝導体を構成しておくことにより、加熱するときにのみ外層から内層に熱が伝わるようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
外層への熱の供給(加熱又は冷却)を行うときにのみ魔法瓶の外層と内層を熱的に導通させ、外層への熱の供給を停止したときには両者を熱的に切り離す構造としているため、外層への熱の供給を停止したときに内層から外層へ無駄に熱が拡散するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図4は本発明による熱供給可能な保温容器を鍋に応用した例を説明する図である。
【0023】
図1は熱伝導体を三角図法により表しており、高い線膨張率を持つ素材1と、素材1より低い線膨張率を持つ素材2とを貼り合わせた構造になっている。
【0024】
図2は保温機能を持つ鍋を表している。鍋は2重構造になっており、内部は真空に引いている。この真空部に熱伝導体3を設置する。
【0025】
熱伝導体3は鍋の外層5と内層6との間の空間に外層5に取り付けて設置している。
【0026】
熱伝導体3に取り付けた接触子4は、外層5から熱伝導体3を伝わってきた熱を内層6に伝えるためのものである。
【0027】
図3は鍋の内層6を取り除いた状態での平面図であり、熱伝導体3及び接触子4は鍋の円周に沿って複数個設置されている。
【0028】
図2に示すように、外層5を加熱していない場合、接触子4と内層6との間には隙間がある。
【0029】
図4は鍋の外層5を加熱している場合の図であり、熱伝導体3は加熱により素材1の側が素材2の側よりも大きく伸びるため先端部が持ち上がり、熱伝導体3に取り付けた接触子4が内層6に接触する。
【0030】
このようにして外層5加熱時に熱伝導体3を介して外層5と内層6とが熱的に接続され、外層5に加えられた熱が内層6に供給される。
【0031】
外層5への加熱をストップすると、熱伝導体3の温度が下って形状が元に戻るため、接触子4は内層6から離れる。
【0032】
このようにして外層5非加熱時には外層5と内層6とは熱的に遮断される。このため加熱をストップしても鍋の中の温度は下がりにくいという効果を出すことができる。
【0033】
なお外層5の内層6に対する面には光沢めっきを施すことにより放射熱による放熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一部を構成する熱伝導体を三角図法により表した図
【図2】本発明を鍋に応用した場合の説明図・・・鍋を火にかけていないとき
【図3】本発明を鍋に応用した場合の説明図・・・内層6を取り除いた状態での平面図
【図4】本発明を鍋に応用した場合の説明図・・・鍋を火にかけているとき
【符号の説明】
【0035】
1 高い線膨張率を持つ素材1
2 素材1より低い線膨張率を持つ素材2
3 熱伝導体
4 接触子
5 外層
6 内層



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
魔法瓶構造の二層間の外層側に異種金属を貼り合わせたバイメタルの熱伝導体を取り付けて、外層に熱を供給すると熱伝導体が内層に接触し外層から内層へ熱を伝達するとともに、外層への熱供給がなければ熱伝導体が内層から離れることにより内層からの放熱を遮断するように構成した熱供給可能な保温容器。


































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−29409(P2010−29409A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194312(P2008−194312)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(305061874)
【Fターム(参考)】