説明

熱処理設備

【課題】対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱を有効に利用して、省エネを図ることができる熱処理設備を提供する。
【解決手段】冷房又は暖房のために対象域に対する熱処理を行う装置本体と、その装置本体の運転を制御する制御手段Hと、装置本体の運転開始及び運転停止を指令する指令手段11とが設けられ、制御手段Hが、熱処理を行うように装置本体の運転を制御する運転中において、その熱処理を停止すると仮定したときに、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することが予測される予測時間を報知すべく、報知手段Sを作動させる予測時間報知処理を実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷房又は暖房のために対象域に対する熱処理を行う装置本体と、その装置本体の運転を制御する制御手段と、前記装置本体の運転開始及び運転停止を指令する指令手段とが設けられた熱処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる熱処理設備は、一般家庭等に設置されるものであり、対象域としてのリビングルーム等の部屋や廊下に対する冷房や暖房を行うことになる。
つまり、対象域に対する熱処理を行う装置本体としては、対象域に冷風を吹き出して対象域を冷房する冷房装置本体、対象域に温風を吹き出して対象域を暖房する温風暖房装置本体、及び、対象域の床部に設置されて対象域を暖房する床暖房装置本体等、種々のものが存在する。
ちなみに、床暖房装置本体としては、熱媒を通流させる管状体を板状の基材に蛇行状に配設した熱媒循環式のものや、電熱線を板状の基材に配設した電熱式のもの等がある。
【0003】
このような熱処理設備においては、運転のための各種指令を指令するリモコンが設けられ、そのリモコンに、装置本体の運転開始及び運転停止を指令する指令手段としての運転スイッチが設けられ、運転制御手段が、リモコンからの指令に基づいて、装置本体を運転状態と停止状態に制御するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−248647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱処理設備は、装置本体を運転状態から停止状態に制御しても、つまり、装置本体の熱処理を停止させても、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する時間が存在することになる。
つまり、装置本体が熱処理を行うことにより対象域の温度が適正な温度に調整されるが、その際、対象域の天井部、側壁部、及び、床部等が、冷房又は暖房により冷却又は加熱されて、冷熱又は温熱を保有することになるため、装置本体の熱処理を停止させても、対象域の天井部、側壁部、及び、床部等が保有する熱(冷熱又は温熱)により、対象域が冷房又は暖房されるものとなる結果、装置本体の熱処理を停止させた後も、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する時間が存在することになるのであり、特に、装置本体が床暖房装置本体の場合には、その継続する時間が長くなる傾向にある。
【0006】
装置本体が床暖房装置本体の場合において、上述の継続する時間が長くなることについて説明を加えると、リビングや廊下等の対象域の床部に設置した床暖房装置本体が運転されると、対象域は、床暖房装置本体が設置される対象域の床部の熱が対象域の空気等に伝熱されることに加えて、対象域の床部から放射される輻射熱にて対象域の天井部や側壁部が加熱されることにより、暖房されることになる。
その結果、暖房中に、つまり、床暖房装置本体の運転中に、対象域の床部、天井部、側壁部等に多量の温熱が保有される傾向となるため、床暖房装置本体を運転状態から停止状態に制御しても、その保有された温熱が対象域を暖房することになるため、その後、かなりの長時間に亘って、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する傾向となる。
【0007】
しかも、床暖房装置本体の場合には、対象域の床部に保有される熱量が多いため、床暖房装置本体を運転状態から停止状態に制御しても、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する時間が長くなる傾向が顕著となる。
ちなみに、床暖房装置本体が、熱媒循環式の場合には、対象域の床部に、多量の熱媒が存在することになり、その熱媒が保有する熱量が大きいため、床暖房装置本体を運転状態から停止状態に制御しても、その後、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する時間が長くなる傾向が一層顕著となる。
【0008】
このように、装置本体を運転すると、対象域の床部、天井部、側壁部等に熱(冷熱や温熱)が保有されるものとなるため、装置本体を運転状態から停止状態に制御しても、つまり、装置本体の熱処理を停止させても、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する時間が存在することになるが、従来では、装置本体の運転中に、対象域の床部、天井部、側壁部等に熱(冷熱や温熱)が保有されても、その熱が有効に使用されない場合があり、改善が望まれるものである。
【0009】
説明を加えると、就寝時刻に合わせて、運転の停止指令を指令する場合においては、装置本体の運転中に、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱が、装置本体を運転状態から停止状態にした後において、対象域を冷房又は暖房することになっても、その冷房又は暖房は使用者に有効なものとなる。
【0010】
しかながら、例えば、外出時刻に合わせて、運転停止指令を指令する場合においては、装置本体の運転中に、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱が、装置本体の熱処理を停止した後において、対象域を冷房又は暖房することになっても、冷房又は暖房は使用者に利用されないものであり、無駄となる虞がある。
【0011】
尚、今までの説明においては、外出を例に挙げて説明したが、例えば、書斎に装置本体を設置した場合において、書斎における作業を終了してその書斎から他の部屋に移動する場合等においても、同様である。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱を有効に利用して、省エネを図ることができる熱処理設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の熱処理設備は、冷房又は暖房のために対象域に対する熱処理を行う装置本体と、その装置本体の運転を制御する制御手段と、前記装置本体の運転開始及び運転停止を指令する指令手段とが設けられたものであって、その第1特徴構成は、
前記制御手段が、前記熱処理を行うように前記装置本体の運転を制御する運転中において、その熱処理を停止すると仮定したときに、前記対象域の状態が前記熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することが予測される予測時間を報知すべく、報知手段を作動させる予測時間報知処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0014】
すなわち、熱処理を行うように装置本体の運転を制御する運転中において、その熱処理を停止すると仮定したときに、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することが予測される予測時間が報知されることになる。
【0015】
つまり、装置本体の熱処理を停止させても、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続する時間が存在するものであり、そのような継続する時間に基づいて定めた予測時間が、報知手段にて報知されることになる。
ちなみに、予測時間を報知する場合に、単に、予測時間を報知してもよいが、例えば、「今、停止しても予測時間の間は快適ですので、早めの停止をお勧めします」等のコメントとして報知することが好ましいものとなる。
【0016】
そして、このように予測時間が報知されるものであるから、装置本体の熱処理を停止させても、予測時間の間は、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することを、使用者に認識させて、熱処理が不要となる時刻よりも前の時刻において装置本体の熱処理を停止させることを、使用者に促すことができるものとなる。
その結果、使用者が、熱処理が不要となる時刻よりも予測時間だけ前の時刻等、熱処理が不要となる時刻よりも前の時刻において、指令手段にて運転停止を指令して、装置本体の熱処理を停止する形態で装置本体を使用するようになれば、熱処理が不要となる時刻の後において、長時間に亘って対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続するという無駄な状態が生じることを回避できるため、無駄なエネルギーの消費を抑制して省エネを図ることができるものとなる。
【0017】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、無駄なエネルギーの消費を抑制して省エネを図ることができる熱処理設備を提供できる。
【0018】
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記予測時間報知処理を実行するか否かを選択する報知処理選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記報知処理選択手段にて実行が選択されている場合には、前記予測時間報知処理を実行し、且つ、前記報知処理選択手段にて実行が選択されていない場合には、前記予測時間報知処理を実行しないように構成されている点を特徴とする。
【0019】
すなわち、報知処理選択手段にて実行が選択されている場合には、予測時間報知処理が実行され、そして、報知処理選択手段にて実行が選択されていない場合には、予測時間報知処理が実行されないことになる。
【0020】
したがって、使用者が、予測時間の報知を必要とするときには報知処理選択手段にて実行を選択し、予測時間の報知を必要としないときには報知処理選択手段にて実行しないを選択することにより、予測時間の報知が必要なときにのみ、予測時間を報知させることができるものとなる。
【0021】
説明を加えると、例えば、使用者が、過去に実行された予測時間報知処理によって、予測時間の存在を認識している場合には、使用者にとっては、予測時間の報知が煩わしいと感じる虞がある等、予測時間の報知を不要とする場合があるが、そのような場合には予測時間の報知を行なわないようにして、予測時間の報知が必要なときにのみ、予測時間を報知させることができる。
【0022】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、予測時間の報知を不要とする場合には予測時間の報知を行なわないようにして、予測時間の報知が必要なときにのみ、予測時間を報知させることができる熱処理設備を提供できる。
【0023】
本発明の第3特徴構成は、上記第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記装置本体が、暖房を行う暖房装置本体であり、
前記制御手段が、前記予測時間報知処理として、前記暖房装置本体の運転開始後において前記対象域の温度が安定する温度安定状態になると、その時点における前記予測時間を報知し、かつ、前記温度安定状態に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0024】
すなわち、制御手段が、予測時間報知処理として、暖房装置本体の運転開始後において対象域の温度が安定する温度安定状態になると、その時点における予測時間を報知し、かつ、温度安定状態に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行することになる。
【0025】
対象域の温度が安定する温度安定状態とは、対象域に対する立ち上げ運転が終了して対象域の温度が安定する状態である。このような状態は、対象域が十分に昇温されて、使用者が満足する状態になり、それ以降はその状態が継続する状態であり、しかも、対象域の天井部、側壁部、及び、床部等に暖房装置本体の運転による熱が蓄えられて、暖房装置本体の熱処理を停止しても、対象域の状態が大きく変化しないで継続する時間が存在する状態であるから、対象域の温度が安定する温度安定状態になる時点において、その時点における予測時間を報知することにより、暖房装置本体の熱処理を停止させても、使用者が満足する状態で、対象域の状態が大きく変化しないで継続することが予測できる時間を、使用者に認識させることができる。
【0026】
また、対象域の温度が安定する温度安定状態に達した後においては、それからの経過時間が長くなるほど、対象域の天井部、側壁部、及び、床部等に蓄えられる熱量が多くなって、対象域の状態が大きく変化しないで継続する時間が長くなる傾向となるから、対象域の温度が安定する温度安定状態に達した後において設定経過時間が経過した時点において、その時点における予測時間を報知することにより、その時点に応じた予測時間を、使用者に認識させることができる。
【0027】
ちなみに、暖房装置本体とは、対象域に温風を吹き出して対象域を暖房する温風暖房装置本体、または、対象域の床部に設置されて対象域を暖房する床暖房装置本体であり、本第3特徴構成は、温風暖房装置本体及び床暖房装置本体のいずれについても適用できるものである。
【0028】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1又は第2特徴構成による作用効果に加えて、暖房装置本体の運転開始後において対象域の温度が安定する温度安定状態になった時点、及び、対象域の温度が安定する温度安定状態に達した後において設定経過時間が経過した時点の夫々における予測時間を、使用者に認識させることができる熱処理設備を提供できる。
【0029】
本発明の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、
前記制御手段が、
前記対象域の温度が予め設定された設定目標温度となるように前記暖房装置本体の作動を制御し、且つ、
前記予測時間報知処理として、前記暖房装置本体の運転開始後において前記対象域の温度が前記設定目標温度又はその近傍になると前記温度安定状態であるとして、その時点における前記予測時間を報知し、かつ、前記対象域の温度が前記設定目標温度に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0030】
すなわち、制御手段が、対象域の温度が予め設定された設定目標温度となるように暖房装置本体の作動を制御することになる。
又、制御手段が、予測時間報知処理として、暖房装置本体の運転開始後において対象域の温度が設定目標温度又はその近傍になると温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知し、かつ、対象域の温度が設定目標温度に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行することになる。
【0031】
このように、温度安定状態であることを、対象域の温度が設定目標温度又はその近傍になることより判別するものであるから、対象域の状態が、使用者が満足する状態になったことを的確に検出して、適切に予測時間を報知させることができるのである。
【0032】
要するに、本発明の第4特徴構成によれば、上記第3特徴構成による作用効果に加えて、温度安定状態であることを的確に検出して、予測時間を適切に報知することができる熱処理設備を提供できる。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、
前記制御手段が、前記予測時間報知処理として、前記暖房装置本体の運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になると前記温度安定状態であるとして、その時点における前記予測時間を報知し、かつ、前記立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0034】
すなわち、制御手段が、予測時間報知処理として、暖房装置本体の運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になると温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知し、かつ、立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行することになる。
【0035】
このように、温度安定状態であることを、暖房装置本体の運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になることにより判別するものであるから、対象域の状態が、使用者が満足する状態になったことを、温度センサ等の特別なセンサを用いずに判別できるため、暖房装置本体の運転が温度センサ等を用いずに制御される場合においても、予測時間を適切に報知させることができるのである。
【0036】
要するに、本発明の第5特徴構成によれば、上記第3特徴構成による作用効果に加えて、暖房装置本体の運転を温度センサ等を用いずに制御する場合においても、予測時間を適切に報知させることができる熱処理設備を提供できる。
【0037】
本発明の第6特徴構成は、上記第1〜第5特徴構成のいずれかに加えて、
前記制御手段が、前記予測時間報知処理として、設定報知時間間隔ごとに前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0038】
すなわち、予測時間が、設定報知時間間隔ごとに報知されることになる。
このように、設定報知時間間隔ごとに予測時間が報知されるから、予測時間について認識していない使用者に対しても、予測時間を的確に認識させることができ、その結果、熱処理が不要となる時刻よりも予測時間だけ前の時刻等、熱処理が不要となる時刻よりも前の時刻において、装置本体の熱処理を停止する形態で装置本体を使用することを、的確に促すことができるものとなる。
【0039】
要するに、本発明の第6特徴構成によれば、予測時間について認識していない使用者に対しても、予測時間を的確に認識させることができる熱処理設備を提供できる。
【0040】
本発明の第7特徴構成によれば、上記第1〜第6特徴構成のいずれかに加えて、
前記対象域に対する熱処理が不要となる熱処理不要時刻を入力する熱処理不要時刻入力手段が設けられ、
前記制御手段が、前記熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、前記装置本体を運転状態から停止状態に制御する事前停止処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0041】
すなわち、使用者が、熱処理不要時刻入力手段にて熱処理不要時刻を入力すれば、制御手段が、事前停止処理を実行することにより、熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において装置本体が運転状態から停止状態に制御されることになる。
【0042】
したがって、使用者が、例えば外出を予定している場合に、その外出を予定している時刻を、熱処理不要時刻として熱処理不要時刻入力手段にて入力すれば、熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、装置本体が運転状態から停止状態に制御されることになる。
尚、書斎に装置本体を設置した場合において、書斎における作業を終了してその書斎から他の部屋に移動する場合には、その書斎から他の部屋に移動する時刻を、熱処理不要時刻として熱処理不要時刻入力手段にて入力することになる。
つまり、使用者が対象域から退出することにより、対象域に対する熱処理が不要となることが予定されていれば、その熱処理が不要となる時刻を熱処理不要時刻入力手段にて入力することになる。
【0043】
そして、使用者が入力した熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、装置本体が運転状態から停止状態に制御されるものの、その時点から熱処理不要時刻までの間は、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱(冷熱又は温熱)にて対象域が冷房又は暖房されるため、対象域は使用者にとって快適な状態に維持されるものとなる。
【0044】
つまり、事前停止用時間を、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱にて対象域を快適な状態に維持できる時間に相当する時間に設定しておくことにより、使用者が冷房又は暖房を不要とする熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、装置本体が運転状態から停止状態に制御されるものの、その時点から熱処理不要時刻までの間は、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱にて対象域を使用者にとって快適な状態に維持できるものとなる。
【0045】
しかも、使用者は、その冷房又は暖房が不要となる時刻を、熱処理不要時刻として、熱処理不要時刻入力手段にて入力するという、簡素な操作を行うだけで、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱を対象域の冷房又は暖房に有効に利用できるものとなる。
【0046】
尚、事前停止用時間は、上記の予測時間、つまり、熱処理を行うように装置本体の運転を制御する運転中において、その熱処理を停止すると仮定したときに、対象域の状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することが予測される予測時間に対応するものであるが、これら事前停止用時間と予測時間とは、必ずしも同じ時間に定める必要はなく、例えば、予測時間を、実験等により求められる標準的な時間に定め、事前停止用時間を、過去の実際の使用状況に基づいて定めてもよく、逆に、予測時間を、過去の実際の使用状況に基づいて定め、事前停止用時間を、実験等により求められる標準的な時間に定めてもよい。
【0047】
要するに、本発明の第7特徴構成によれば、操作の簡素化を図りながら、対象域の床部、天井部、側壁部等に保有された熱を有効に利用することができる熱処理設備を提供するに至った。
【0048】
本発明の第8特徴構成は、上記第7特徴構成に加えて、
前記事前停止処理を実行するか否かを選択する実行選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記実行選択手段にて実行が選択されている場合には、前記事前停止処理を実行し、且つ、前記実行選択手段にて実行が選択されていない場合には、前記事前停止処理を実行しないように構成されている点を特徴とする。
【0049】
すなわち、実行選択手段にて実行が選択されている場合には、事前停止処理が実行されるものの、実行選択手段にて実行が選択されていない場合には、事前停止処理が実行されないことになる。
【0050】
したがって、使用者は、対象域に対する冷房又は暖房が不要となることが予定されていれば、実行選択手段にて実行を選択し、対象域に対する冷房又は暖房が不要となることが予定されていない場合には、実行選択手段にて実行を選択しないようにすることにより、対象域に対する冷房又は暖房が不要となることが予定されていないときに、事前停止処理が不必要に実行されることを回避しながらも、対象域に対する冷房又は暖房が不要となることが予定されているときには、事前停止処理を適切に実行させることができるものとなる。
【0051】
要するに、本発明の第8特徴構成によれば、上記第7特徴構成による作用効果に加えて、対象域に対する冷房又は暖房が不要となることが予定されていないときに、事前停止処理が不必要に実行されることを回避しながらも、対象域に対する冷房又は暖房が不要となることが予定されているときには、事前停止処理を適切に実行させることができるものとなる熱処理設備を提供できるものとなった。
【0052】
本発明の第9特徴構成によれば、上記第7又は第8特徴構成に加えて、
前記熱処理不要時刻において運転を自動停止するか否かを選択する自動停止選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記自動停止選択手段にて自動停止が選択されている場合には、前記熱処理不要時刻において、前記装置本体を運転状態から停止状態に制御する不要時刻停止処理を実行し、且つ、前記自動停止選択手段にて自動停止が選択されていない場合には、前記不要時刻停止処理を実行しないように構成されている点を特徴とする。
【0053】
すなわち、実行選択手段にて実行が選択されていない場合において、自動停止選択手段にて自動停止が選択されている場合には、不要時刻停止処理が実行されて、装置本体が熱処理不要時刻において、運転状態から停止状態に制御されることになる。
また、自動停止選択手段にて自動停止が選択されていない場合には、不要時刻停止処理が実行されないものとなる。
【0054】
したがって、就寝時刻等、外出等はしないものの装置本体の運転を停止したい時刻を、熱処理不要時刻として熱処理不要時刻入力手段にて入力し、実行選択手段にて実行を選択しないようにし、さらに、自動停止選択手段にて自動停止を選択するようにすれば、就寝時刻等、外出等はしないものの装置本体の運転を停止したい時刻において、装置本体を運転状態から停止状態に自動的に切り替えることができるものとなる。
【0055】
要するに、本発明の第9特徴構成によれば、上記第7又は第8特徴構成による作用効果に加えて、外出等はしないものの装置本体の運転を停止したい時刻において、装置本体を運転状態から停止状態に自動的に切り替えることができる熱処理設備を提供できるものとなった。
【0056】
本発明の第10特徴構成は、上記第8特徴構成に加えて、
前記制御手段が、前記実行選択手段にて実行が選択されている場合には、前記予測時間報知処理を実行しないように構成されている点を特徴とする。
【0057】
すなわち、実行選択手段にて実行が選択されて、熱処理不要時刻よりも事前停止用時間だけ前の時点において装置本体が運転状態から停止状態に制御される場合には、予測時間報知処理が実行されないことになる。
説明を加えると、実行選択手段にて実行が選択されている場合には、熱処理不要時刻よりも事前停止時間だけ前の時点において装置本体が運転状態から停止状態に制御されるものであり、使用者が指令手段を操作して、装置本体の運転停止指令を指令する必要がないため、予測時間報知処理は不要であるから、予測時間報知処理が実行されないようにするのである。
【0058】
そして、不要となる予測時間報知処理が実行されると、使用者にとっては、予測時間の報知が煩わしいと感じる虞がある等、使い勝手が悪いものとなるが、不要となる予測時間報知処理が実行されないようにして、使用者の使い勝手の向上を図ることができる。
【0059】
要するに、本発明の第10特徴構成によれば、上記第8特徴構成による作用効果に加えて使用者の使い勝手の向上を図ることができる熱処理設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】熱処理設備の概略図
【図2】第1実施形態の熱処理設備の制御構成を示すブロック図
【図3】制御作動を示すフローチャート
【図4】室温と床部表面温度との推奨範囲を示す図
【図5】室温と床部表面温度との経時的変化を示す図
【図6】第2実施形態の熱処理設備の制御構成を示すブロック図
【図7】第3実施形態の熱処理設備の制御構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0061】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の熱処理設備の第1実施形態を図面に基づいて説明する
図1に示すように、装置本体としての床暖房装置本体Aが、リビング、廊下、浴室等の対象域Bに設置され、その床暖房装置本体Aの運転を制御する制御手段としての制御部Hが設けられている。
つまり、暖房のために対象域Bに対する熱処理を行う装置本体としての床暖房装置Aが、対象域Bの床部に設置されて、対象域Bが暖房されるように構成されている。
【0062】
本実施形態においては、床暖房装置本体Aは、熱媒通流管1を板状基材2に蛇行状に配設して床暖房パネルとして構成され、そして、熱媒通流管1に対して熱源機3から熱媒が循環供給されるように構成され、且つ、熱媒通流管1に対する熱媒の供給を断続する熱動弁4が設けられている。
【0063】
制御部Hは、熱源機3の作動及び熱動弁4の開閉作動を制御することによって、床暖房装置本体Aの運転を制御するように構成されている。
つまり、運転開始が指令されると、熱源機3の運転を開始し、また、運転停止が指令されると、熱源機3の運転を停止することになり、また、運転中においては、熱動弁4を開閉制御することになる。
【0064】
熱動弁4の開閉制御は、運転開始から初期暖房終了条件が満たされるまでは、熱動弁4を開き状態に維持する初期暖房制御を行い、初期暖房制御が終了すると、設定基本周期のうちで熱動弁4を開き状態にする時間を調整する形態で熱動弁4を繰り返し開閉させて、対象域Bの域温度(室温)を設定目標温度に維持する温度調整暖房制御を行うように構成されている。
【0065】
熱源機3は、詳述はしないが、熱媒を循環させる循環ポンプ、循環される熱媒を加熱する熱交換器、その熱交換器を加熱する燃焼バーナ、及び、加熱された熱媒の温度を検出するセンサ等を備えて構成され、燃焼バーナの燃焼量を調整することにより、予め設定された温度(例えば70℃)の熱媒を供給するように構成されている。
【0066】
ちなみに、図1及び図2には、制御部Hが熱源機3の外部に設置される状態を例示するが、一般には、制御部Hは、熱源機3の内部に装備されることになる。
【0067】
対象域Bには、制御部Hと通信自在な運転指令用のリモコンRが設けられ、このリモコンRには、対象域Bの温度(域温度)を計測する域温度計測手段として、対象域Bの域温度(室温度)を検出する域温度検出センサ5が設けられ、この域温度検出センサ5の検出情報が、制御部Hに通信されるように構成される。
【0068】
床暖房装置本体Aには、その床暖房装置本体Aの表面温度を検出する表面温度検出センサ6が装備され、この表面温度検出センサ6の検出情報が、制御部Hに入力されるように構成されている。
ちなみに、床暖房装置本体Aの上部には、一般に床部仕上げ材が設置されることになり、表面温度検出センサ6の検出温度と、床暖房装置本体A及び床部仕上げ材が設置される対象域Bの床部の表面温度、つまり、床部仕上げ材の表面温度とは異なるが、その差は略一定の温度(例えば15℃)である。したがって、本実施形態では、表面温度検出センサ6の検出温度から設定温度(例えば15℃)を減算した演算温度を、床暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(以下、床部表面温度と呼称)とする。
つまり、本実施形態においては、表面温度検出センサ6が、床暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(床部表面温度)を計測する表面温度計測手段に相当する。
【0069】
図2に示すように、リモコンRには、暖房運転の運転開始及び運転停止を指令する指令手段としての運転指令スイッチ11、及び、対象域Bを暖房する目標温度を設定する目標温度設定部12が基本要素として備えられている。
そして、本実施形態においては、リモコンRには、上記基本要素に加えて、対象域Bの暖房を自動的に開始する開始時刻を入力する開始時刻設定部13、及び、対象域Bの暖房が不要となる熱処理不要時刻を入力する熱処理不要時刻入力手段としての不要時刻設定部14が備えられ、さらには、後述する事前停止処理を実行するか否かを選択する実行選択手段としての実行設定部15、熱処理不要時刻において運転を自動停止するか否かを選択する自動停止選択手段としての自動停止設定部16、開始時刻に暖房運転を自動的に開始するか否かを選択する自動開始選択手段としての自動開始設定部17、及び、後述する判別用基準関係を変更設定する判別用基準関係設定手段としての関係設定部18が装備されている。
【0070】
加えて、リモコンRには、後述する予測時間を使用者に報知する報知手段Sとしての表示部22が備えられ、さらに、その表示部22にて予測時間を報知させる予測時間報知処理を実行するか否かを選択する報知処理選択手段としての報知処理モード設定部23が備えられている。
【0071】
不要時刻設定部14としては、何時、何分という時刻を数値入力する形態に構成できるが、その他、熱処理不要時刻が何時間何分後であることを示す時間、つまり、現在から熱処理不要時刻までの時間(残時間)を入力する形態に構成してもよい。
尚、開始時刻設定部13も同様である。
【0072】
表示部22は、液晶ディスプレイ等を用いて構成されるものであり、上述の如く、後述する予測時間を表示するが、それに加えて、使用者によって設定された各種の設定情報、並びに、現在温度及び現在の時刻等、各種の情報を表示するようになっている。
ちなみに、予測時間の報知としては、文字又は図形にてメッセージを表示するようになっている。
尚、報知手段Sとしては、上記表示部22に加えて予測時間を表す情報を音声メッセージとして出力するスピーカを、表示部22に代えて、あるいは、表示部22と併せて設けるようにてもよい。
【0073】
制御部Hは、リモコンRからの指令情報に基づいて、上述の如く、熱源機3の作動及び熱動弁4の開閉作動を制御することによって、床暖房装置本体Aの運転を制御することになる。
【0074】
すなわち、運転指令スイッチ11にて運転開始が指令されたときや、自動開始設定部17にて自動開始が選択されている場合において開始時刻設定部13にて設定された開始時刻になると、上述した初期暖房制御を実行し、初期暖房終了条件が満たされると、温度調整暖房制御を実行することになる。
【0075】
初期暖房終了条件は、本実施形態では、目標温度設定部12にて設定された設定目標温度よりも設定温度だけ低い温度(例えば2℃)が域温度検出センサ5にて検出される条件とするが、例えば、運転開始から初期設定時間(例えば、30分)が経過する条件とする等、初期暖房終了条件は種々変更できる。
【0076】
温度調整暖房制御は、目標温度設定部12にて設定された目標温度と域温度検出センサ5にて検出される検出温度との温度差に基づいて、設定基本周期のうちで熱動弁4を開き状態にする時間を調整する形態で熱動弁4を繰り返し開閉させて、対象域Bの域温度(室温度)を設定目標温度に維持することになる。
つまり、目標温度に対して検出温度が低いほど、設定基本周期(例えば20分)のうちで熱動弁4を開き状態にする時間が長くなるように調整されて、対象域Bの域温度(室温)が設定目標温度に維持されることになる。
【0077】
温度調整暖房制御を実行しているときに、表面温度検出センサ6の検出温度に基づいて求められる床部表面温度が高温回避用の設定温度(例えば、33℃)を超えると、域温度検出センサ5にて検出される検出温度が目標温度設定部12にて設定された設定目標温度よりも低くても、熱動弁4を開き状態にする時間を増加させないようにする強制温度調整制御が実行されることになる。
【0078】
制御部Hは、運転指令スイッチ11にて運転停止が指令されたときには、温度調整暖房制御等の暖房運転を停止することになり、また、制御部Hは、次に述べる場合にも暖房運転を停止するように構成されている。
【0079】
すなわち、制御部Hは、実行設定部15にて実行が選択されている場合には、不要時刻設定部14にて設定された熱処理不要時刻(暖房不要時刻)よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に制御する事前停止処理を実行して、暖房運転を停止するように構成されている(図5参照)。
そして、制御部Hは、事前停止処理を、実行設定部15にて実行が選択されていない場合には、実行しないように構成されている。
【0080】
また、制御部Hは、実行設定部15にて実行が選択されていない場合でかつ自動停止設定部16にて自動停止が選択されている場合には、不要時刻設定部14にて設定された熱処理不要時刻において、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に制御する不要時刻停止処理を実行して、暖房運転を停止するように構成されている。
そして、制御部Hは、不要時刻停止処理を、自動停止設定部16にて自動停止が選択されていない場合には、実行しないように構成されている。
【0081】
つまり、使用者が外出を予定している場合において、その外出時刻に相当する時刻を不要時刻設定部14にて入力し、そして、実行設定部15にて実行を選択しておくことにより、事前停止処理が実行されることになる。そして、外出時刻よりも早く暖房運転が停止されるものの、床暖房装置本体Aや対象域Bの床部、天井部、側壁部等に保有されている熱にて、対象域Bが暖房されることになる。
【0082】
また、使用者が就寝等に合わせて暖房運転を停止したい場合には、その停止したい時刻に相当する時刻を不要時刻設定部14にて入力し、そして、実行設定部15にて実行しないを選択し、かつ、自動停止設定部16にて自動停止を選択しておくことにより、不要時刻設定部14にて入力された時刻に、暖房運転が停止されることになる。
【0083】
制御部Hは、事前停止処理を実行するにあたり、そのための事前停止用時間を演算により求めるように構成されている。
すなわち、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えたのちに対象域Bの温度と床暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(床部表面温度)との関係が判別用基準関係になるまでに経過する経過時間を関係変化予測条件に基づいて予測して、その予測した経過時間を、上述の事前停止処理における事前停止用時間に設定するように構成されている。
【0084】
つまり、事前停止用時間としては、一般的な使用環境を考慮して、30分あるいは1時間等の予め定めた時間として設定してもよいが、本実施形態では、過去に暖房運転を停止したときの域温度検出センサ5にて検出される域温度(室温)と表面温度検出センサ6にて検出される温度に基づいて演算される床部表面温度との時系列な経過情報に基づいて、事前停止用時間を求めるように構成されている。
【0085】
説明を加えると、図5に示すように、域温度検出センサ5により検出される域温度(室温)、及び、表面温度検出センサ6により検出される温度に基づいて演算される床部表面温度は、暖房運転を開始すると漸次上昇し、その後、域温度(室温)が目標温度に維持されることになり、それに合わせて床部表面温度も一定温度を維持されることになる。
そして、暖房運転を停止すると、その停止時点からは、域温度(室温)及び床部表面温度が漸次低下することになる。
【0086】
したがって、制御部Hが、床暖房装置Aを運転状態から停止状態に切り替えたのちに対象域Bの温度(域温度)が時間経過に伴って低下する時系列的な域温度低下情報及び暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(床部表面温度)が時間経過に伴って低下する時系列的な表面温度低下情報を、関係変化予測条件として記憶するように構成され、その関係変化予測条件に基づいて経過時間を予測するように構成されている。
【0087】
そして、制御部Hが、以前に床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えた際、つまり、暖房運転を停止した際における対象域Bの温度(域温度)の時系列的な変化及び床暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(床部表面温度)の時系列的な変化を域温度検出センサ5及び表面温度検出センサ6にて計測する計測処理を実行して、その計測した情報に基づいて時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報を定めるように構成されている。
【0088】
また、制御部Hは、その計測した情報に基づいて時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報を定めるにあたり、以前に実行した複数回の計測処理の夫々にて計測した検出情報を平均化処理して定めるように構成されている。
【0089】
時系列的な域温度低下情報は、本実施形態では、域温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めるように構成されている。
つまり、例えば、20℃については、その温度から19℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定め、19℃については、その温度から18℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定める等、各域温度の夫々について、単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めることになる。
【0090】
したがって、制御部Hは、以前に実行した複数回の計測処理の夫々にて計測した検出情報の平均化処理として、各計測処理にて計測した検出情報に基づいて、計測処理ごとに、域温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を求め、そして、各計測処理の同じ域温度に対応する単位温度低下時間を平均して、平均した単位温度低下時間をその域温度に対する単位温度低下時間に定めることを、域温度の夫々について行うことになる。
ちなみに、単位温度低下するのに要する時間は、域温度が高いほど短い時間になる傾向となることは勿論である。
【0091】
時系列的な表面温度低下情報は、本実施形態では、床部表面温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めるように構成されている。
つまり、例えば、30℃については、その温度から29℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定め、29℃については、その温度から28℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定める等、各床部表面温度の夫々について、単位温度低下するのに要する時間を定めることになる。
【0092】
したがって、制御部Hは、以前に実行した複数回の計測処理の夫々にて計測した検出情報の平均化処理として、各計測処理にて計測した検出情報に基づいて、計測処理ごとに、床部表面温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を求め、そして、各計測処理の同じ床部表面温度に対応する単位温度低下時間を平均して、平均した単位温度低下時間をその床部表面温度に対する単位温度低下時間に定めることを、床部表面温度の夫々について行うことになる。
ちなみに、単位温度低下するのに要する時間は、床部表面温度が高いほど短い時間になる傾向となることは勿論である。
【0093】
判別用基準関係は、本実施形態においては、「社団法人空気調和・衛生工学会」より報告されている[床暖房を行う際の床部表面温度・室温の推奨範囲](以下、推奨範囲と略称する)に基づいて定めるように構成されている。
すなわち、推奨範囲は、図4に示すように、床部表面温度と域温度(室温)との関係から定められるものであり、また、その推奨範囲の内部には、目標範囲が、床部表面温度と域温度(室温)との関係から定められている。
【0094】
つまり、熱処理設備としての床暖房用設備を設置する場合には、床暖房装置本体Aの運転によって対象域Bを目標範囲に調整できるように、その暖房能力を考慮して設置されているため、使用者の好みにより、目標温度設定部12にて設定される目標温度が変化しても、床暖房装置本体Aを運転しているときには、多くの場合には、床部表面温度と域温度(室温)とは、推奨範囲の内部に位置するものとなり、そして、床暖房装置本体Aの運転を停止させると、床部表面温度と室温(域温度)とが低下して、推奨範囲を外れるものとなる。
ちなみに、推奨範囲には、既存住宅についての目安を示す範囲部分Zが示されているが、本実施形態においては、この範囲部分Zを除いた範囲部分を、推奨範囲として扱うものとする。
【0095】
したがって、推奨範囲の外郭線うちで、床暖房装置本体Aの運転を停止させたのち床部表面温度と域温度(室温)とが低下した際に、床部表面温度と域温度(室温)との関係が横断することが予測される外郭線部分Wに対応して、床部表面温度と域温度(室温)との関係が求められることになり、その床部表面温度と域温度(室温)との関係が、判別用基準関係として定められることになる。
【0096】
つまり、推奨範囲は、横軸を床部表面温度とし、縦軸を室温(域温度)として示されものであり、外廓線部分Wは、床部表面温度が25℃の場合において縦軸と平行に沿って伸びる形態で示される第1部分W1、その第1部分W1の下端に続いて、床部表面温度が上昇するほど室温(域温度)が低下する形態で示される第2部分W2、及び、その第2部分W2の下端に続いて、床部表面温度が上昇するほど室温(域温度)が上昇する形態で示される第3部分W3である。
【0097】
ちなみに、通常の使用形態を鑑みると、床暖房装置本体Aの運転を停止させた際における床部表面温度と域温度(室温)とは、外廓線部分Wにおける第1部分W1及び第2部分W2を横切る形態で低下することが予測されるものである。
【0098】
ところで、判別用基準関係は、上述の通り、事前停止処理を実行するための事前停止用時間を定めるために使用されることになるが、この判別用基準関係を、上記した推奨範囲に基づいて単一に定めると、使用者にとっては、好ましいと感じない虞がある。
つまり、使用者が外出を予定している場合において、不要時刻設定部14にて入力された外出時刻よりも事前停止用時間だけ前の時点において、事前停止処理が実行されることになり、その後は、床暖房装置本体Aや対象域Bの天井部や壁に保有されている熱にて、対象域Bが暖房されることになるが、使用者によっては、外出時刻に達するまでに寒いと感じる場合や外出時刻においても未だ暑いと感じる場合が発生することが考えられる。
【0099】
制御部Hは、リモコンRの関係設定部18による変更設定情報に基づいて、判別用基準関係を変更設定するように構成されている。
この基準関係の変更設定は、図4において破線にて示すように、外廓線部分Wを、縦軸及び横軸に沿って平行移動させることに相当するものであり、本実施形態では、基準関係を4段階に変更設定できるように構成されている。
つまり、推奨範囲の外廓線に相当する関係にする状態、その外廓線よりも低温側に平行移動させる状態、その外廓線よりも高温側に1段階だけ平行移動させる状態、及び、外廓線よりも高温側に2段階平行移動させる状態である。
【0100】
ちなみに、関係設定部18としては、押し操作スイッチが押されるごとに、基準関係を順次一段階ずつ変更させる形態で構成できるものであり、また、設定された基準関係が4段階のいずれであるかを示す情報を表示部22に表示するように構成することになる。
このように表示する場合において、表示部22には以下のように表示させることが好ましいものとなる。すなわち、基準関係を外廓線よりも低温側に平行移動させる状態においては、「ものすごいエコである」と表示し、基準関係を外廓線に相当する関係にする状態においては、「かなりエコである」と表示し、基準関係を外廓線よりも高温側に1段階だけ平行移動させる状態においては、「少しエコである」と表示し、さらに、基準関係を外廓線よりも高温側に2段階平行移動させる状態においては、「エコである」と表示させるようにする等、使用者に分かり易い表示を行うことが好ましいものとなる。
【0101】
要するに、制御部Hは、事前停止処理を実行する場合には、暖房運転を停止したのちにおいて、現在の床部表面温度と域温度(室温)とが判別用基準関係になるまでの経過時間を、時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報に基づいて求めて、その経過時間を事前停止用時間として、入力された暖房不要時間よりも事前停止用時間だけ前の時点において暖房運転を停止させることになるのである。
【0102】
ちなみに、現在の床部表面温度と域温度(室温)とが判別用基準関係になるまでの経過時間は、時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報に基づいて、暖房運転を停止したのちに床部表面温度と域温度(室温)とが時間経過に伴ってどのように変化するかを予測して、その予測した床部表面温度と域温度(室温)とが判別用基準関係になるまで時間を経過時間として求めることになる。
【0103】
尚、熱処理設備を対象域Bに設置した直後等において事前停止処理を実行するために、時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報として、標準的な情報がデフォルト情報として記憶されており、熱処理設備を対象域Bに設置した直後等においては、このデフォルト情報を用いて事前停止用時間が求められることになる。
【0104】
さらに、制御部Hは、暖房のための熱処理を行うように床暖房装置本体Aの運転を制御する運転中において、その熱処理を停止すると仮定したときに、対象域Bの状態が熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することが予測される予測時間を報知すべく、表示部22を作動させる予測時間報知処理を実行するように構成されている。
つまり、制御部Hは、上述の如く、対象域Bの温度が目標温度設定部12にて予め設定された設定目標温度となるように床暖房装置本体Aの作動を制御することになる。
【0105】
そして、制御手段Hが、予測時間報知処理として、暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が安定する温度安定状態になると、その時点における予測時間を報知し、かつ、温度安定状態に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
具体的には、制御部Hは、予測時間報知処理として、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が設定目標温度になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知し、かつ、対象域Bの温度が設定目標温度に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
ちなみに、予測時間報知処理としては、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が設定目標温度になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知する処理に代えて、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が設定目標温度の近傍になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知する処理にしてもよい。
【0106】
また、制御部Hは、予測時間報知処理として、設定報知時間間隔ごとに予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
さらに、制御部Hは、実行設定部15にて事前停止処理の実行が選択されていないときであって、かつ、報知処理モード設定部23にて、報知処理モードの実行が選択されているときに、予測時間報知処理を実行し、実行設定部15にて事前停止処理の実行が選択されていときや、報知処理モード設定部23にて、報知処理モードの実行が選択されていないときには、予測時間報知処理を実行しないように構成されている。
【0107】
説明を加えると、制御部Hは、運転制御処理の実行中において、予測時間報知処理として、予測時間を導出する予測時間導出処理と、予測時間の報知のために表示部22を作動させる報知作動処理を実行するように構成されている。
【0108】
予測時間導出処理は、本実施形態では、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が設定目標温度近傍になると、予測時間を20分に設定し、また、対象域Bの温度が設定目標温度に達した後において、それからの経過時間が3時間になると予測時間を30分に設定し、さらに、経過時間が5時間になると予測時間を1時間に設定するように構成されている(図5参照)。
【0109】
つまり、制御部Hには、対象域の温度が設定目標温度に達すると計時を開始するタイマ(図示なし)が備えられている。
そして、制御部Hは、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が設定目標温度になると、予測時間を20分に設定し、その後、タイマにて計測する経過時間が3時間になると予測時間を30分に設定し、さらに、タイマにて計測する経過時間が5時間になると予測時間を1時間に設定するように構成されている。
尚、図5においては、予測時間が事前停止用時間よりも短い時間となるように記載されているが、それは一例を示すものであって、必ずしも、予測時間が事前停止用時間よりも短い時間となるとは限らないものである。
【0110】
さらに、制御部Hは、実行設定部15にて事前停止処理の実行が選択されていないときであって、かつ、報知処理モード設定部23にて、報知処理モードの実行が選択されているときに、報知タイミングであると判別されると、上述の如く、予測時間の報知のために表示部22を作動させる報知作動処理を行うことになる。
制御部Hは、報知タイミングとして、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの温度が設定目標温度になったとき、及び、タイマによって計測される時間、つまり、対象域Bの温度が設定目標温度に達した後の経過時間が、3時間、及び、5時間になったときを判別し、さらに、タイマによって計測される時間が、報知時間間隔として設定される時間(例えば、30分間隔に設定)になる時点も、報知タイミングとして判別するように構成されている。
【0111】
本実施形態においては、上述の報知作動処理として、表示部22に、例えば「今停止しても約○○分快適です。早めの停止をお勧めします」等のメッセージを表示するように構成されている。そして、上記の「○○分」とした部分には、上記予測時間導出処理にて導出された、その時点における予測時間が表示されることになる。
尚、表示部22に表示させるメッセージは、上記の文言に限定されるものではなく、また、図記号等を含んで表示されるものであっても良い。
【0112】
次に、制御部Hの制御作動について、図3のフローチャートに基づいて説明を加える。
すなわち、先ず、運転指令スイッチ11により、運転開始が指令されているか否かを判断し(#1)、運転開始が指令されていない場合には、運転開始時点であるか否か、つまり、自動開始設定部17にて自動開始が選択されている場合において開始時刻設定部13にて設定された開始時刻であるか否かを判断する(#2)。
【0113】
#1にて、運転開始が指令されていると判断した場合や、#2にて、運転開始時点であると判断した場合には、運転制御処理(#3)を実行する。
運転制御処理においては、初期暖房制御、温度調整暖房制御、及び、強制温度調整制御を行うことになる。
【0114】
#1にて、運転開始が指令されていないと判断し、且つ、#2にて、運転開始時点でない判断した場合には、温度情報計測済みであるか否かを判断し(#15)、計測済みでない場合には、暖房運転を停止した際における対象域Bの温度(域温度)の時系列的な変化及び床暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(床部表面温度)の時系列的な変化を域温度検出センサ5及び表面温度検出センサ6にて計測する計測処理を実行する(#16)ことになる。
ちなみに、この計測処理が終了する条件は、例えば、域温度が17℃以下になり、床部表面温度24℃が以下になる条件として定められている。
【0115】
#3の運転制御処理を実行したあとは、上述の予測時間導出処理を実行し(#4)、次に、実行設定部15にて実行が選択されている事前停止処理モードであるか否かを判断すする(#5)。
そして、事前停止処理モードである場合には、事前停止用時間の演算済みであるか否かを判断し(#6)、事前停止用時間の演算済みで無い場合には、事前停止用時間演算処理(#7)を実行する。
この事前停止用時間演算処理は、暖房運転を停止したのちにおいて、現在の床部表面温度と域温度(室温)とが判別用基準関係になるまでの経過時間を、時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報に基づいて求めて、その経過時間を事前停止用時間とする処理である。
【0116】
#5にて、事前停止処理モードでないと判断した場合には、次に、報知処理モード設定部23にて予測時間報知処理が選択されている報知処理モードであるか否かを判別する(#8)。
そして、報知処理モードである場合には、上述した報知タイミングか否かを判別し(#9)、報知タイミングであれば表示部22にて予測時間を報知する報知作動処理を実行する(#10)。
また、#8において予測時間報知処理が選択されていない場合、及び、#9において報知タイミングでないと判断した場合には、自動停止設定部16にて自動停止が選択されている不要時刻停止処理モードであるか否かを判断する(#11)。
【0117】
そして、#6にて、事前停止用時間の演算済みであると判断した場合や、#7にて、事前停止用時間演算処理を実行したのち、並びに、#11にて、不要時刻停止処理モードであると判断した場合には、停止時点であるか否かを判断する(#12)。
つまり、事前停止処理モードである場合には、不要時刻設定部14にて設定された熱処理不要時刻よりも事前停止用時間だけ前の時点であるか否かを判断し、また、不要時刻停止処理モードである場合には、不要時刻設定部14にて設定された熱処理不要時刻であるか否かを判断する。
【0118】
#12にて、停止時点であると判断した場合には、熱源機3の運転を停止しかつ熱動弁4を閉じる運転停止処理を行い(#14)、その後、上述した#15の処理を行うことになる。
【0119】
また、#11にて、不要時刻停止処理モードではないと判断した場合や、#12にて、停止時点でないと判断した場合には、運転指令スイッチ11により、運転停止指令が指令されているか否かを判断し(#13)、運転停止指令が指令されていない場合には、#3の運転制御処理を実行し、運転停止指令が指令されている場合には、#14の運転停止処理を実行することになる。
【0120】
ちなみに、この第1実施形態においては、上述の如く、床暖房装置本体Aの表面温度を検出する表面温度検出センサ6の検出温度から設定温度(例えば15℃)を減算した演算温度を、床暖房装置本体Aが設置される床部の温度(床部表面温度)として用いる場合を例示したが、この第1実施形態を実施する場合において、床暖房装置本体Aが設置される床部の温度(床部表面温度)、つまり、床暖房装置本体Aの上部側に設置される床部仕上げ材の上面の温度を、表面温度検出センサ6にて直接検出するように構成して実施してもよいことは勿論である。
【0121】
また、この第1実施形態においては、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間をそのまま用いて、事前停止処理を実行させるようにしたが、図2に示すように、熱負荷を検出するセンサとして、外気温度を検出する外気温度センサGを設け、制御部Hが、外気温度センサGにて検出される外気温度に基づいて、事前停止用時間を補正する事前停止時間補正処理を実行するように構成してもよい。
尚、図2には、外気温度センサGが、熱源機3の外部に位置する状態を示すが、外気温度センサGを熱源機3内に装備させる形態で実施することができる。
【0122】
事前停止時間補正処理における補正の形態としては、例えば、上述の如く、暖房運転を停止した際における対象域Bの温度(域温度)の時系列的な変化及び床暖房装置本体Aが設置される床部の表面温度(床部表面温度)の時系列的な変化を域温度検出センサ5及び表面温度検出センサ6にて計測する計測処理を実行する際に、外気温度を併せて計測しておき、以前に実行した複数回の計測処理の夫々にて計測した外気温度の平均値を求める。
そして、求めた平均値よりも現在の外気温度が高い場合には、求めた平均値と現在の外気温度との差が大きいほど、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間を長くするように補正し、また、求めた平均値よりも現在の外気温度が低い場合には、求めた平均値と現在の外気温度との差が大きいほど、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間を短くするように補正する形態がある。
【0123】
その他の補正の形態としては、暖房運転を行うことになる一般的な基準温度範囲を定めておき、現在の外気温度が基準温度範囲にあるときには、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間を変更しないものの、現在の外気温度が基準温度範囲よりも高いときには、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間を、現在の外気温度が基準温度範囲よりも高くなるほど長くなるように補正し、現在の外気温度が基準温度範囲よりも低いときには、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間を、現在の外気温度が基準温度範囲よりも低くなるほど長くなるように補正する形態がある。
【0124】
ところで、事前停止時間補正処理を行うにあたり、暖房装置本体Aが暖房(熱処理)を行う前の域温度検出センサ5の検出温度を、外気温度に代えて用いることができるものである。
つまり、暖房装置本体Aが暖房(熱処理)を行う直前またはそれよりも以前の対象域の温度は、外気温度とは差を有するものであるが、外気温度の昇降に伴って昇降するものであるから、暖房装置本体Aが暖房(熱処理)を行う直前またはそれ以前の対象域の温度を、外気温度の代用値として、上述の如く補正を行うことができる。
尚、暖房装置本体Aが暖房(熱処理)を行う以前の対象域の温度を、外気温度の代用値として用いる場合には、暖房装置本体Aが暖房(熱処理)を行う以前の数分〜数十分あるいは数時間の温度の代表値(例えば、平均値)を求めるようにすることになる。
【0125】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の熱処理設備の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
この第2実施形態は、図6に示すように、上記の第1実施形態と較べて、表面温度検出センサ6が省略されて、それに伴って、制御部Hが実行する制御作動の内容が異なるものであり、以下においては、制御部Hが実行する制御内容について説明する。
【0126】
制御部Hは、第1実施形態と同様に、初期暖房制御、及び、温度調整暖房制御を実行し、さらに、予測時間報知処理、事前停止処理、及び、不要時刻停止処理を実行することになるが、事前停止処理を実行するための事前停止用時間を、次の如く求めることになる。
すなわち、制御部Hが、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えたのちに対象域Bの温度(域温度)が対象域用基準温度に低下するまでに経過する経過時間を域温度低下予測条件に基づいて予測して、その経過時間を事前停止用時間に設定するように構成されている。
【0127】
そして、制御部Hが、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えたのちに対象域Bの温度(域温度)が時間経過に伴って低下する時系列的な域温度低下情報を、域温度低下予測条件として記憶するように構成されている。
具体的には、制御部Hが、以前に床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えた際における対象域の温度(域温度)の時系列的な変化を域温度センサ5にて計測する計測処理を実行して、その計測した情報に基づいて時系列な域温度低下情報を定めるように構成されている。
【0128】
時系列的な域温度低下情報は、本実施形態では、域温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めるように構成されている。
つまり、例えば、20℃については、その温度から19℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定め、19℃については、その温度から18℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定める等、各域温度の夫々について、単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めることになる。
【0129】
したがって、制御部Hは、以前に実行した複数回の計測処理の夫々にて計測した検出情報の平均化処理として、各計測処理にて計測した検出情報に基づいて、計測処理ごとに、域温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を求め、そして、各計測処理の同じ域温度に対応する単位温度低下時間を平均して、平均した単位温度低下時間をその域温度に対する単位温度低下時間に定めることを、域温度の夫々について行うことになる。
【0130】
ところで、対象域用基準温度は、上述の通り、事前停止処理を実行するための事前停止用時間を定めるために使用されることになるが、この対象域用基準温度を、一定の温度に定めると、使用者にとっては、好ましいと感じない虞がある。
つまり、使用者が外出を予定している場合において、不要時刻設定部14にて入力された外出する時刻よりも事前停止用時間だけ前の時点において、事前停止処理が実行されることになり、その後は、床暖房装置本体Aが設置される床部、対象域Bの天井部、側壁部等に保有されている熱にて、対象域Bが暖房されることになるが、使用者によっては、外出時刻に達すまでに寒いと感じる場合や外出時刻においても未だ暑いと感じる場合が発生することが考えられる。
【0131】
このため、リモコンRに、対象域用基準温度を変更設定する対象域用基準温度設定手段としての対象域用基準温度設定部19が設けられ、制御部Hは、その対象域用基準温度設定部19による変更設定情報に基づいて、対象域用基準温度を変更設定するように構成されている。
つまり、対象域用基準温度が対象域用基準温度設定部19により、4段階の温度、例えば、19.5℃、19℃、18.5℃、18℃に変更されるように構成されている。
【0132】
対象域用基準温度設定部19としては、押し操作スイッチが押されるごとに、対象域用基準温度を順次一段階ずつ変更させる形態で構成できるものであり、また、設定された基準関係が4段階のいずれであるかを示す情報を表示部22に表示するように構成することになる。
このように表示する場合において、表示部22には以下のように表示させることが好ましいものとなる。すなわち、対象域用基準温度を最も低い温度にする状態においては、「ものすごいエコである」と表示し、対象域用基準温度を次に低い温度にする状態においては、「かなりエコである」と表示し、対象域用基準温度をこれよりも一段階上の温度にする状態においては、「少しエコである」と表示し、さらに、対象域用基準温度を最も高い温度にする状態においては、「エコである」と表示させるようにする等、使用者に分かり易い表示を行うことが好ましいものとなる。
【0133】
要するに、制御部Hは、事前停止処理を実行する場合には、暖房運転の停止したのちにおいて、現在の室温(域温度)が対象域用基準温度になるまでの経過時間を、時系列な域温度低下情報に基づいて求めて、その経過時間を事前停止用時間として、入力された暖房不要時間よりも事前停止用時間だけ前の時点において暖房運転を停止させることになるのである。
【0134】
ちなみに、現在の室温(域温度)が対象域用基準温度になるまでの経過時間は、時系列な域温度低下情報に基づいて、暖房運転を停止したのちに室温(域温度)がどのように時間経過に伴って変化するかが予測できるから、その予測した室温(域温度)が対象域用基準温度になるまでの時間を経過時間として求めることになる。
【0135】
尚、熱処理設備を対象域Bに設置した直後等において事前停止処理を実行するために、時系列な域温度低下情報として、標準的な情報がデフォルト情報として記憶されており、熱処理設備を対象域Bに設置した直後等においては、このデフォルト情報を用いて事前停止用時間が求められることになる。
【0136】
ちなみに、この第2実施形態は、上述の如く、第1実施形態において装備した表面温度検出センサ6が省略されるものであるが、この第2実施形態においても、表面温度検出センサ6を装備して、第1実施形態で説明した強制温度調整制御を、制御部Hに実行させるようにしてもよい。
【0137】
この第2実施形態における制御部Hの制御作動は、第1実施形態において図3のフローチャートに基づいて説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
【0138】
また、この第2実施形態においても、上記第1実施形態において補足説明した、事前停止時間補正処理を、制御部Hに実行させるようにするとよい。
【0139】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の熱処理設備の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
この第3実施形態は、図7に示すように、上記の第1実施形態と較べて、域温度検出センサ5が省略され、目標温度設定部12に代えて、暖房装置本体Aが設置された床部の表面温度(床部表面温度)についての目標温度を設定する床部目標温度設定部20がリモコンRに設けられる点が異なり、それに伴って、制御部Hが実行する制御作動の内容が異なるものであり、以下においては、制御部Hが実行する制御内容について説明する。
【0140】
制御部Hは、第1実施形態と同様に、初期暖房制御、温度調整暖房制御、及び、強制温度調整制御を実行し、さらに、予測時間報知処理、事前停止処理、及び、不要時刻停止処理を実行することになるが、初期暖房制御、温度調整暖房制御、予測時間報知処理を実行するための予想時間を導出する予測時間導出処理、及び、事前停止処理を実行するための事前停止用時間の演算が、第1実施形態と異なる。
【0141】
すなわち、制御部Hは、運転指令スイッチ11にて運転開始指令が指令されたときや、自動開始設定部17にて自動開始が選択されている場合において開始時刻設定部13にて設定された開始時刻になると、上述した初期暖房制御を実行し、初期暖房終了条件が満たされると、温度調整暖房制御を実行することになる。
【0142】
初期暖房終了条件は、本実施形態では、表面温度検出センサ6にて検出される温度に基づいて求められる床部表面温度が床部目標温度設定部20にて設定された目標温度よりも設定温度だけ低い温度(例えば2℃)になる条件とするが、例えば、運転開始から初期設定時間(例えば、30分)が経過する条件とする等、初期暖房終了条件は種々変更できる。
【0143】
温度調整暖房制御は、床部目標温度設定部20にて設定された設定目標温度と表面温度検出センサ6にて検出される検出温度に基づいて求められる床部表面温度との温度差に基づいて、設定基本周期のうちで熱動弁4を開き状態にする時間を調整する形態で熱動弁4を繰り返し開閉させて、対象域Bの域温度(室温度)を設定目標温度に維持することになる。
つまり、目標温度に対して検出温度が低いほど、設定基本周期(例えば20分)のうちで熱動弁4を開き状態にする時間が長くなるように調整されて、対象域Bの域温度(室温)が設定目標温度に維持されることになる。
このようにして、制御手段Hが、対象域Bの床部の表面温度が予め設定された設定目標温度となるように床暖房装置本体Aの作動を制御することとなる。
【0144】
ちなみに、温度調整暖房制御を実行しているときに、表面温度検出センサ6の検出温度に基づいて求められる床部表面温度が高温回避用の設定温度(例えば、33℃)を超えると、床部目標温度設定部20にて設定された目標温度よりも低くても、熱動弁4を開き状態にする時間を増加させないようにする強制温度調整制御を実行する点は、第1実施形態と同様である。
【0145】
また、制御部Hは、運転指令スイッチ11にて運転停止指令が指令されたときには、温度調整暖房制御等の暖房運転を停止することや、実行設定部15にて実行が選択されている場合には、不要時刻設定部14にて設定された熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に制御する事前停止処理を実行し、さらに、実行設定部15にて実行が選択されていない場合でかつ自動停止設定部16にて自動停止が選択されている場合には、不要時刻設定部14にて設定された熱処理不要時刻において、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に制御する不要時刻停止処理を実行することは、第1実施形態と同じである。
【0146】
そして、この実施形態では、制御部Hは、事前停止処理を実行するための事前停止用時間を、次の如く求めることになる。
すなわち、制御部Hが、前記床暖房装置本体を運転状態から停止状態に切り替えたのちに床暖房装置本体Aが設置された床部の表面温度(床部表面温度)が床部用基準温度に低下するまでに経過する経過時間を表面温度低下予測条件に基づいて予測して、その予測した経過時間を前記事前停止用時間に設定するように構成されている。
【0147】
そして、制御部Hが、床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えたのちに床暖房装置本体Aが設置された床部の表面温度(床部表面温度)が時間経過に伴って低下する時系列的な表面温度低下情報を、表面温度低下予測条件として記憶するように構成されている。
具体的には、制御部Hが、以前に前記床暖房装置本体Aを運転状態から停止状態に切り替えた際における床暖房装置本体Aが設置された床部の表面温度(床部表面温度)の時系列的な変化を表面温度検出センサ6にて計測して、その計測した情報に基づいて時系列的な表面温度低下情報を定めるように構成されている。
【0148】
ちなみに、第1実施形態において記載の如く、床暖房装置本体Aの上部には、一般に床部仕上げ材が設置されることになり、表面温度検出センサ6の検出温度と、床暖房装置本体A及び床部仕上げ材が設置される対象域Bの床部の表面温度、つまり、床部仕上げ材の表面温度とは異なるが、その差は略一定の温度(例えば15℃)であるため、表面温度検出センサ6の検出温度から設定温度(例えば15℃)を減算した演算温度を、床部表面温度として、時系列的な表面温度低下情報を定めるように構成されている。
【0149】
時系列的な表面温度低下情報は、本実施形態では、床部表面温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めるように構成されている。
つまり、例えば、30℃については、その温度から29℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定め、29℃については、その温度から28℃に低下するのに要する単位温度低下時間を定める等、各域温度の夫々について、単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を定めることになる。
【0150】
したがって、制御部Hは、以前に実行した複数回の計測処理の夫々にて計測した検出情報の平均化処理として、各計測処理にて計測した検出情報に基づいて、計測処理ごとに、床部表面温度の夫々について、その温度から単位温度低下するのに要する単位温度低下時間を求め、そして、各計測処理の同じ域温度に対応する単位温度低下時間を平均して、平均した単位温度低下時間をその床部表面温度に対する単位温度低下時間に定めることを、床部表面温度の夫々について行うことになる。
【0151】
ところで、床部用基準温度は、上述の通り、事前停止処理を実行するための事前停止用時間を定めるために使用されることになるが、この床部用基準温度を、一定の温度に定めると、使用者にとっては、好ましいと感じない虞がある。
つまり、使用者が外出を予定している場合において、不要時刻設定部14にて入力された外出時刻よりも事前停止用時間だけ前の時点において、事前停止処理が実行されることになり、その後は、床暖房装置本体Aが設置される床部、対象域Bの天井部、及び、側壁部等に保有されている熱にて、対象域Bが暖房されることになるが、使用者によっては、外出時刻に達するまでに寒いと感じる場合や外出時刻においても未だ暑いと感じる場合が発生することが考えられる。
【0152】
このため、リモコンRに、床部用基準温度を変更設定する床部用基準温度設定手段としての床部用基準温度設定部21が設けられ、制御部Hは、その床部用基準温度設定部21による変更設定情報に基づいて、床部基準温度を変更設定するように構成されている。
つまり、床部用基準温度が床部用基準温度設定部21により、4段階の温度、例えば、26℃、25.5℃、25℃、24.5℃に変更されるように構成されている。
【0153】
床部用基準温度設定部21としては、押し操作スイッチが押されるごとに、床部用基準温度を順次一段階ずつ変更させる形態で構成できるものであり、また、設定された基準関係が4段階のいずれであるかを示す情報を表示部22に表示するように構成することになる。
このように表示する場合において、表示部22には以下のように表示させることが好ましいものとなる。すなわち、床部用基準温度を最も低い温度にする状態においては、「ものすごいエコである」と表示し、床部用基準温度を次に低い温度にする状態においては、「かなりエコである」と表示し、床部用基準温度をこれよりも一段階上の温度にする状態においては、「少しエコである」と表示し、さらに、床部用基準温度を最も高い温度にする状態においては、「エコである」と表示させるようにする等、使用者に分かり易い表示を行うことが好ましいものとなる。
【0154】
要するに、制御部Hは、事前停止処理を実行する場合には、暖房運転の停止したのちにおいて、現在の床部表面温度が床部用基準温度になるまでの経過時間を、時系列的な表面温度低下情報に基づいて求めて、その経過時間を事前停止用時間として、入力された暖房不要時間よりも事前停止用時間だけ前の時点において暖房運転を停止させることになるのである。
【0155】
ちなみに、現在の床部表面温度が床部用基準温度になるまでの経過時間は、時系列的な表面温度低下情報に基づいて、暖房運転の停止したのちに床部表面温度が時間経過に伴ってどのように変化するかが予測できるから、その予測した床部表面温度が床部用基準温度になるまで時間を経過時間として求めることになる。
【0156】
尚、熱処理設備を対象域Bに設置した直後等において事前停止処理を実行するために、時系列な表面温度低下情報として、標準的な情報がデフォルト情報として記憶されており、熱処理設備を対象域Bに設置した直後等においては、このデフォルト情報を用いて事前停止用時間が求められることになる。
【0157】
ちなみに、この第3実施形態においては、上述の如く、床暖房装置本体Aの表面温度を検出する表面温度検出センサ6の検出温度から設定温度(例えば15℃)を減算した演算温度を、床暖房装置本体Aが設置される床部の温度(床部表面温度)として用いる場合を例示したが、この第3実施形態を実施する場合において、床暖房装置本体Aが設置される床部の温度(床部表面温度)、つまり、床暖房装置本体Aの上部側に設置される床部仕上げ材の上面の温度を、表面温度検出センサ6にて直接検出するように構成して実施してもよいことは勿論である。
【0158】
また、制御部Hは、第1実施形態と同様に予測時間報知処理を実行するように構成されている。
すなわち、制御部Hは、上述の如く、対象域Bの床部の表面温度が目標温度設定部12にて予め設定された設定目標温度となるように装置本体としての床暖房装置本体Aの作動を制御することになり、そして、予測時間報知処理として、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知し、かつ、対象域の温度が設定目標温度に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
ちなみに、予測時間報知処理としては、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知する処理に代えて、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度の近傍になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知する処理にしてもよい。
【0159】
また、制御部Hは、予測時間報知処理として、設定報知時間間隔ごとに予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
さらに、制御部Hは、実行設定部15にて事前停止処理の実行が選択されていないときであって、かつ、報知処理モード設定部23にて、報知処理モードの実行が選択されているときに、予測時間報知処理を実行し、実行設定部15にて事前停止処理の実行が選択されていときや、報知処理モード設定部23にて、報知処理モードの実行が選択されていないときには、予測時間報知処理を実行しないように構成されている。
【0160】
説明を加えると、制御部Hは、運転制御処理の実行中において、予測時間報知処理として、予測時間を導出する予測時間導出処理と、予測時間の報知のために表示部22を作動させる報知作動処理を実行するように構成されている。
【0161】
予測時間導出処理は、本実施形態では、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度近傍になると、予測時間を20分に設定し、また、対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度に達した後において、それからの経過時間が3時間になると予測時間を30分に設定し、さらに、経過時間が5時間になると予測時間を1時間に設定するように構成されている(図5参照)。
【0162】
つまり、制御部Hには、対象域の床部の表面温度が設定目標温度に達すると計時を開始するタイマ(図示なし)が備えられている。
そして、制御部Hは、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度になると、予測時間を20分に設定し、その後、タイマにて計測する経過時間が3時間になると予測時間を30分に設定し、さらに、タイマにて計測する経過時間が5時間になると予測時間を1時間に設定するように構成されている。
尚、図5においては、予測時間が事前停止用時間よりも短い時間となるように記載されているが、それは一例を示すものであって、必ずしも、予測時間が事前停止用時間よりも短い時間となるとは限らないものである。
【0163】
さらに、制御部Hは、実行設定部15にて事前停止処理の実行が選択されていないときであって、かつ、報知処理モード設定部23にて、報知処理モードの実行が選択されているときに、報知タイミングであると判別されると、上述の如く、予測時間の報知のために表示部22を作動させる報知作動処理を行うことになる。
制御部Hは、報知タイミングとして、床暖房装置本体Aの運転開始後において対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度になったとき、及び、タイマによって計測される時間、つまり、対象域Bの床部の表面温度が設定目標温度に達した後の経過時間が、3時間、及び、5時間になったときを判別し、さらに、タイマによって計測される時間が、報知時間間隔として設定される時間(例えば、30分間隔に設定)になる時点も、報知タイミングとして判別するように構成されている。
【0164】
本第3実施形態における報知作動処理は、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
また、この第3実施形態における制御部Hの制御作動は、第1実施形態において図3のフローチャートに基づいて説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
【0165】
また、この第3実施形態においても、上記第1実施形態において補足説明した、事前停止時間補正処理を、制御部Hに実行させるようにするとよい。
ちなみに、この第3実施形態においては、域温度検出センサ5が装備されないから、域温度センサ5の検出値を外気温度センサの検出値として代用することはできないことは、勿論である。
【0166】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の熱処理設備の第4実施形態を説明する。
この第4実施形態は、上記の第1実施形態と較べて、予測時間報知処理の内容が異なり、それに伴って、制御部Hが実行する制御作動の内容が異なるものであり、以下においては、制御部Hが実行する制御内容について説明する。
【0167】
すなわち、制御部Hは、第1実施形態と同様に、初期暖房制御、温度調整暖房制御、及び、強制温度調整制御を実行し、さらに、予測時間報知処理、事前停止処理、及び、不要時刻停止処理を実行することになるが、予測時間報知処理を実行するための予測時間を導出する予測時間導出処理が、第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、以下、予測時間報知処理における予測時間導出処理を主として説明して、その他の説明は、省略する。
【0168】
制御部Hは、予測時間報知処理として、床暖房装置本体Aの運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になると上述の温度安定状態であるとして、その時点における予測時間を報知し、かつ、立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
ちなみに、立ち上げ運転終了判別用の設定時間は、例えば、45分に設定できるが、その他、30分〜60分の間で適宜設定でき、また、立ち上げ運転終了判別用の設定時間を変更設定できるように構成して、設置条件等に合わせて変更設定するようにしてもよい。
【0169】
また、制御部Hは、予測時間報知処理として、設定報知時間間隔ごとに予測時間を報知する処理を実行するように構成されている。
説明を加えると、制御部Hは、運転制御処理の実行中において、予測時間報知処理として、予測時間を導出する予測時間導出処理と、予測時間の報知のために表示部22を作動させる報知作動処理を実行するように構成されている。
【0170】
予測時間導出処理は、本実施形態では、床暖房装置本体Aの運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になると上述の温度安定状態であるとして、予測時間を20分に設定し、また、立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達した後において、それからの経過時間が3時間になると予測時間を30分に設定し、さらに、経過時間が5時間になると予測時間を1時間に設定するように構成されている。
【0171】
つまり、制御部Hには、床暖房装置本体Aの運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達すると計時を開始するタイマ(図示なし)が備えられている。
そして、制御部Hは、床暖房装置本体Aの運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になると、予測時間を20分に設定し、その後、タイマにて計測する経過時間が3時間になると予測時間を30分に設定し、さらに、タイマにて計測する経過時間が5時間になると予測時間を1時間に設定するように構成されている。
【0172】
そして、制御部Hは、報知タイミングであると判別すると、予測時間の報知のために表示部22を作動させる報知作動処理を行うことになる。
制御部Hは、報知タイミングとして、床暖房装置本体Aの運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になったとき、及び、タイマによって計測される時間、つまり、立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達した後の経過時間が、3時間、及び、5時間になったときを判別し、さらに、タイマによって計測される時間が、報知時間間隔として設定される時間(例えば、30分間隔に設定)になる時点も、報知タイミングとして判別するように構成されている。
【0173】
本第4実施形態における報知作動処理は、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
また、この第4実施形態における制御部Hの制御作動は、第1実施形態において図3のフローチャートに基づいて説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
【0174】
ちなみに、この第4実施形態における予測時間報知処理は、床暖房装置本体Aに対する運転制御内容に制限されることなく実施できるものであるから、第1実施形態に適用することに代えて、第2実施形態や第3実施形態に適用して実施することができるものであり、さらには、域温度検出センサ5や表面温度検出センサ6を装備せずに、床暖房装置本体Aの運転を制御する場合にも適用できる。
【0175】
域温度検出センサ5や表面温度検出センサ6を装備せずに、床暖房装置本体Aの運転を制御する場合について説明すると、設定基本周期のうちで熱動弁4を開き状態にする時間と閉じ状態にする時間の目標比率を、目標温度設定部12にて高温が設定されるほど熱動弁4を開き状態にする時間が長くなる形態で、目標温度設定部12にて設定される温度に応じて予め設定しておく。
そして、制御部Hが、運転開始から初期暖房終了条件が満たされるまでは、熱動弁4を開き状態に維持する初期暖房制御を行い、初期暖房制御が終了すると、目標温度設定部12の設定目標温度に対応する目標比率に基づいて、熱動弁4を開閉制御する温度調整暖房制御を行うように構成することになる。
【0176】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ)上記第1〜第4の各実施形態においては、予測時間報知処理として、報知手段Sとしての表示部22に文字にてメッセージを表示させるように構成したが、このような構成に限定されるものではない。例えば、リモコンRに報知手段Sとしてのスピーカを設け、これにより上述の文字によるメッセージに対応する音声のメッセージを出力するように構成することも可能である。
この場合、表示部22の文字によるメッセージの表示を行わず、スピーカの音声によるメッセージの出力のみを行うように構成することや、表示部22の文字によるメッセージの表示及びスピーカの音声によるメッセージの出力の両者を実行するように構成することも可能である。
【0177】
(ロ)上記第1〜第4実施形態においては、予測時間導出処理として、対象域Bの温度が安定する温度安定状態になると予測時間を20分とするように設定し、対象域Bの温度が温度安定状態に達した後、設定経過時間として3時間が経過すると、予測時間を30分とするように設定し、対象域Bの温度が温度安定状態に達した後、設定経過時間として5時間が経過すると、予測時間を1時間とするように設定する構成としたが、予測時間を上記の時間以外の時間として設定することも可能である。
【0178】
(ハ)上記第1〜第4実施形態においては、予測時間導出処理において、予測時間を予め決められた時間に設定するように構成したが、このような形態に限定されるものではなく、例えば、予測時間を、事前停止用時間を求める事前停止用時間演算処理と同じ処理によって求めてもよく、また、事前停止用時間演算処理にて求めた事前停止用時間を用いるようにしてもよい。
【0179】
(ニ)上記第1〜第4実施形態においては、報知時間間隔を30分間隔に設定するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、30分以下(例えば20分)、又は30分以上(例えば45分)の任意の時間間隔に設定することが可能である。また、使用者がリモコンRから報知時間間隔を設定できるように構成してもよい。
【0180】
(ホ)第1実施形態における関係変化予測条件としては、例えば、デフォルト値を外気温にて補正する条件とすることが考えられ、また、時系列な域温度低下情報及び表面温度低下情報の標準的な情報を記憶しておき、その標準的な情報を外気温にて補正する条件とすることが考えられるものである。
【0181】
(ヘ)第2実施形態における域温度低下予測条件としては、例えば、デフォルト値を外気温にて補正する条件とすることが考えられ、また、時系列な域温度低下情報の標準的な情報を記憶しておき、その標準的な情報を外気温にて補正する条件とすることが考えられるものである。
【0182】
(ト)第3実施形態における表面温度低下予測条件としては、例えば、デフォルト値を外気温にて補正する条件とすることが考えられ、また、時系列な表面温度低下情報の標準的な情報を記憶しておき、その標準的な情報を外気温にて補正する条件とすることが考えられるものである。
【0183】
(チ)上記実施形態では、床暖房装置本体が、熱媒通流管を板状基材に配設した熱媒循環式に構成される場合を例示したが、例えば、電熱線を板状基材に配設した電熱式に構成したものや、面状ヒータを板状基材に配設したものなど、種々の構成のものを用いることができる。
【0184】
(リ)第1実施形態においては、判別用基準関係設定手段にて判別用基準関係を4段階に変更する場合を例示したが、5段階以上の多段階や3段階以下の少段階に変更できるようにしてもよく、また、無段階に変更できるようにしてもよい。
【0185】
(ヌ)第2実施形態においては、対象域用基準温度設定手段にて対象域用基準温度を4段階に変更する場合を例示したが、5段階以上の多段階や3段階以下の少段階に変更できるようにしてもよく、また、無段階に変更できるようにしてもよい。
【0186】
(ル)第3実施形態においては、床部用基準温度設定手段にて床部用基準温度を4段階に変更する場合を例示したが、5段階以上の多段階や3段階以下の少段階に変更できるようにしてもよく、また、無段階に変更できるようにしてもよい。
【0187】
(ヲ)上記第1〜第4実施形態においては、外出を行うときには事前停止処理を用い、就寝等においては不要時刻停止処理を用いることを説明したが、就寝等においても事前停止処理を用いてもよい。
つまり、本願発明は、不要時刻停止処理を備えない形態で実施することが可能である。
【0188】
(ワ)上記第1〜第4実施形態においては、対象域に対する熱処理を行う装置本体が、暖房を行うために熱処理を行う床暖房装置本体を例示したが、装置本体としては、対象域に温風を吹き出す温風式暖房装置本体を用いることができ、この場合には、第2実施形態と同様な形態にて実施できる。
【0189】
(カ)対象域に対する熱処理を行う装置本体としては、対象域に冷風を吹き出して対象域を冷房する冷房装置本体とすることができる。
この冷房装置本体を装置本体として設置する場合にも、制御部が、熱処理不要時刻よりも予め設定された事前停止用時間だけ前の時点において、冷房装置本体を運転状態から停止状態に制御する事前停止処理を実行することになる。
そして、この場合においても、制御部が、冷房装置本体を運転状態から停止状態に切り替えたのちに対象域の温度が対象域用基準温度に上昇するまでに経過する経過時間を域温度上昇予測条件に基づいて予測して、その経過時間を事前停止用時間に設定する形態で、事前停止処理を実行するように構成するとよい。
域温度上昇予測条件は、第2実施形態と同様に、複数回の計測処理の計測値を平均化した情報として定めることができるが、デフォルト値を外気温にて補正する条件とすることが考えられ、また、時系列な域温度低下情報の標準的な情報を記憶しておき、その標準的な情報を外気温にて補正する条件とすることも考えられる。
【0190】
(ヨ)上記実施形態では、熱負荷に基づいて事前停止用時間を補正する事前停止時間補正処理を実行するにあたり、外気温度や処理装置本体が熱処理を行う直前の対象域の温度にて熱負荷を判別する場合を例示したが、その他、温風暖房を開始した際の対象域の温度の上昇勾配、床暖房を開始した際の対象域や床部の温度の上昇勾配、冷房を開始した場合の対象域の温度の下降勾配にて熱負荷を判別するようにしてもよく、さらに、外気温度と対象域の温度との差にて熱負荷を判別するようにしてもよい。
尚、処理装置本体が熱処理を行う直前の対象域の温度に代えて、処理装置本体が熱処理を行う以前の数分から数十分の間、又は、数時間における対象域の温度の代表値(例えば、平均値)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0191】
A 床暖房装置本体(装置本体)
B 対象域
H 制御手段
S 報知手段
11 指令手段
14 熱処理不要時刻入力手段
15 実行選択手段
16 自動停止選択手段
18 判別用基準関係設定手段
19 対象域用基準温度設定手段
21 床部用基準温度設定手段
22 表示部
23 報知処理モード設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房又は暖房のために対象域に対する熱処理を行う装置本体と、その装置本体の運転を制御する制御手段と、前記装置本体の運転開始及び運転停止を指令する指令手段とが設けられた熱処理設備であって、
前記制御手段が、前記熱処理を行うように前記装置本体の運転を制御する運転中において、その熱処理を停止すると仮定したときに、前記対象域の状態が前記熱処理を行っているときの状態と大きく変化しないで継続することが予測される予測時間を報知すべく、報知手段を作動させる予測時間報知処理を実行するように構成されている熱処理設備。
【請求項2】
前記予測時間報知処理を実行するか否かを選択する報知処理選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記報知処理選択手段にて実行が選択されている場合には、前記予測時間報知処理を実行し、且つ、前記報知処理選択手段にて実行が選択されていない場合には、前記予測時間報知処理を実行しないように構成されている請求項1に記載の熱処理設備。
【請求項3】
前記装置本体が、暖房を行う暖房装置本体であり、
前記制御手段が、前記予測時間報知処理として、前記暖房装置本体の運転開始後において前記対象域の温度が安定する温度安定状態になると、その時点における前記予測時間を報知し、かつ、前記温度安定状態に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている請求項1又は2記載の熱処理設備。
【請求項4】
前記制御手段が、
前記対象域の温度が予め設定された設定目標温度となるように前記暖房装置本体の作動を制御し、且つ、
前記予測時間報知処理として、前記暖房装置本体の運転開始後において前記対象域の温度が前記設定目標温度又はその近傍になると前記温度安定状態であるとして、その時点における前記予測時間を報知し、かつ、前記対象域の温度が前記設定目標温度に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている請求項3記載の熱処理設備。
【請求項5】
前記制御手段が、前記予測時間報知処理として、前記暖房装置本体の運転開始後からの経過時間が立ち上げ運転終了判別用の設定時間になると前記温度安定状態であるとして、その時点における前記予測時間を報知し、かつ、前記立ち上げ運転終了判別用の設定時間に達した後において設定経過時間が経過すると、その時点における前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている請求項3記載の熱処理設備。
【請求項6】
前記制御手段が、前記予測時間報知処理として、設定報知時間間隔ごとに前記予測時間を報知する処理を実行するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱処理設備。
【請求項7】
前記対象域に対する熱処理が不要となる熱処理不要時刻を入力する熱処理不要時刻入力手段が設けられ、
前記制御手段が、前記熱処理不要時刻よりも事前停止用時間だけ前の時点において、前記装置本体を運転状態から停止状態に制御する事前停止処理を実行するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱処理設備。
【請求項8】
前記事前停止処理を実行するか否かを選択する実行選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記実行選択手段にて実行が選択されている場合には、前記事前停止処理を実行し、且つ、前記実行選択手段にて実行が選択されていない場合には、前記事前停止処理を実行しないように構成されている請求項7に記載の熱処理設備。
【請求項9】
前記熱処理不要時刻において運転を自動停止するか否かを選択する自動停止選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記自動停止選択手段にて自動停止が選択されている場合には、前記熱処理不要時刻において、前記装置本体を運転状態から停止状態に制御する不要時刻停止処理を実行し、且つ、前記自動停止選択手段にて自動停止が選択されていない場合には、前記不要時刻停止処理を実行しないように構成されている請求項7又は8記載の熱処理設備。
【請求項10】
前記制御手段が、前記実行選択手段にて実行が選択されている場合には、前記予測時間報知処理を実行しないように構成されている請求項8記載の熱処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−257092(P2011−257092A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133219(P2010−133219)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】