説明

熱分析のためのセンサ、およびセンサを含むシステム

この明細書中に開示される或る実施例は、支持部材と、当該支持部材に結合され、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含むサンプルセンサと、支持部材に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む基準センサとを含むセンサに向けられており、リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、これを囲むよう位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願および関連出願
本願は、2007年3月30日に出願された米国仮出願第60/909,019号および2008年3月31日に出願された米国出願第12/058,921号に対する優先権およびその利点を主張するものであり、その各々の開示全体が、あらゆる目的で、引用によりこの明細書中に援用されている。
【0002】
技術分野
この明細書中に開示されているいくつかの実施例は、概して、熱分析の際に使用されるセンサに関する。より特定的には、この明細書中に開示されるいくつかの例は、サンプルセンサおよび基準センサを含み得る熱分析センサに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
熱分析または「TA(Thermal Analysis)」は、制御された温度をサンプルに加えることにより、温度に関連付けてサンプルまたはサンプルの1つ以上の物理的特性を特徴付けるための一連の技術を説明している。同時熱分析(「STA(Simultaneous Thermal Analysis)」)機器は、他の場合には熱重量分析/示差熱分析(「TGA/DTA」)機器として公知であり、しばしば、2つの別個の対称的なサンプル用および基準用るつぼまたはパンを分析のために使用する。これらの2つのるつぼは、制御された環境下で精密に制御された速度で加熱および/または冷却される。比熱に差があるために生じるサンプルの熱挙動の差、発熱もしくは吸熱反応の発生、または位相変化により、結果として、2つのるつぼ間に温度差が生じ得る。この温度差を測定および使用することで、サンプルを特徴付けることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
一局面においては、センサは、支持部材、サンプルセンサおよび基準センサを含む。いくつかの例においては、サンプルセンサは、支持部材に結合され得、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含み得る。或る実施例においては、基準センサは支持部材に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む。この場合、リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、これを囲むよう位置決めされる。
【0005】
或る例においては、センサはさらに、支持部材に結合されたコネクタを含み得る。当該コネクタは、センサをバランスに結合するよう構成される。他の例においては、センサはさらに、第1のセットの相互接続部および第2のセットの相互接続部に結合されたコントローラを含み得る。付加的な例においては、基準センサのリングは円筒形のリングであり、内面が、サンプル支持部の外面から0.5mm未満のところに位置し得る。いくつかの例においては、当該リングは、約7mmの外径と約6mmの内径とを備える。或る実施例においては、サンプル支持部と基準センサのリングとは共にプラチナでできている。いくつかの実施例においては、基準センサは、外部基準材料を追加することなしに、基準信号を供給するよう構成され得る。いくつかの例においては、サンプル支持部は、サンプルを含むるつぼを受けるよう構成された凹面を含む。
【0006】
付加的な局面においては、サンプルセンサおよび基準センサを用いて温度を検知するよ
う構成されたセンサが提供される。いくつかの例においては、当該センサは、サンプル支持部を備え、当該サンプル支持部の外面が、基準センサの内面から0.5mm以下のところに位置する。
【0007】
或る例においては、サンプル支持部および基準センサは同じ材料を含み得る。いくつかの例においては、サンプル支持部は、サンプルを含むるつぼを受けるよう構成された凹面を備える。他の例においては、サンプル支持部の外面は、基準センサの内面から約0.25mmのところに位置し得る。いくつかの例においては、基準センサは円筒形のリングを含んでもよく、外部基準材料を追加することなしに、基準信号を供給するよう動作可能であり得る。或る例においては、センサはさらに、サンプル支持部に電気的に結合された第1のセットの相互接続部と、基準センサに電気的に結合された第2のセットの相互接続部とを含み得る。
【0008】
別の局面においては、同時熱分析のためのシステムが開示される。或る例においては、当該システムは、センサに熱的に結合された炉を含む加熱システムを備え、当該加熱システムは、支持部材と、支持部材に結合され、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含むサンプルセンサと、支持部材に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む基準センサとを含む。当該リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、当該少なくとも一部を囲むよう位置決めされている。いくつかの例においては、当該システムはさらに、加熱システムに結合され、センサの第1および第2のセットの相互接続部から信号を受信するよう構成されたコントローラを含み得る。
【0009】
或る実施例においては、当該システムはさらに、加熱システムに結合されたガス制御システムを含み得る。いくつかの実施例においては、当該システムはさらに、センサに結合されたバランスを含み得る。他の実施例においては、当該システムは、重量分析のために、ならびに、示差熱分析および示差走査熱量測定のうちの少なくとも1つのために構成され得る。或る例においては、当該システムはさらに、同時熱分析システムに結合された分析装置を含み得る。分析装置は、質量分析計、赤外分光計、ガスクロマトグラフ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの例においては、当該システムはさらに、同時熱分析システムに結合されたコンピュータシステムを含み得る。付加的な例においては、当該システムはさらに、加熱システムに結合された自動サンプリングシステムを含み得る。
【0010】
さらなる局面においては、サンプルの熱特性を測定する方法が提供される。いくつかの例においては、当該方法は、炉におけるセンサのサンプル支持部上にサンプルを配置するステップを含む。当該センサは、サンプル支持部と、サンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、当該少なくとも一部を囲む基準センサとを含む。当該方法はさらに、炉内の温度を変化させて、サンプルの物理的変化または化学的変化を促進するステップと、サンプルセンサおよび基準センサを用いてサンプルの物理的変化または化学的変化を測定するステップとを含む。
【0011】
或る実施例においては、当該方法はさらに、外部基準材料を基準センサに追加することなしに、物理的変化または化学的変化を測定するステップを含み得る。いくつかの例においては、当該方法はさらに、温度を変化させるステップ中に、サンプルの質量の変化と、サンプルの温度の変化とを測定するステップを含み得る。
【0012】
別の局面においては、サンプルの熱特性の測定を容易にする方法が開示される。或る例においては、当該方法は、支持部材で構成されたセンサと、支持部材に結合され、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含むサンプルセンサと、支持
部材に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む基準センサとを設けるステップを含む。当該リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうちの少なくとも一部に隣接し、これを囲むよう位置決めされる。
【0013】
さらなる局面においては、サンプルの熱特性の測定を容易にする方法が提供される。当該方法は、サンプルセンサおよび基準センサを用いて温度を検知するよう構成されたセンサを設けるステップを含む。当該センサはサンプル支持部を含み、当該サンプル支持部の外面は、基準センサの内面から0.5mm以下のところに位置する。
【0014】
さらなる局面、特徴、例および実施例を以下により詳細に説明する。
いくつかの例示的な特徴および例を、添付の図面に関連付けて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】或る実施例に従ったセンサの側面図である。
【図2】或る例に従った図1のセンサを示す斜視図である。
【図3】或る例に従った基準センサの斜視図の断面を示す図である。
【図4A】或る例に従った、サンプル支持部上に配置されたるつぼを示す、サンプル支持部の側面図の断面を示す図である。
【図4B】或る例に従った、サンプル支持部上に配置されたるつぼを示す、サンプル支持部の側面図の断面を示す図である。
【図4C】或る例に従った、サンプル支持部上に配置されたるつぼを示す、サンプル支持部の側面図の断面を示す図である。
【図4D】或る例に従った、サンプル支持部上に配置されたるつぼを示す、サンプル支持部の側面図の断面を示す図である。
【図4E】或る例に従った、サンプル支持部上に配置されたるつぼを示す、サンプル支持部の側面図の断面を示す図である。
【図5】或る例に従った、熱の投入を可能にするための開口部を含む基準センサの実施例を示す図である。
【図6】或る例に従った、サンプル支持部を示す側面図の断面を示す図である。
【図7A】或る例に従った、使用可能なさまざまな基準センサの幾何学的形態を示す図である。
【図7B】或る例に従った、使用可能なさまざまな基準センサの幾何学的形態を示す図である。
【図7C】或る例に従った、使用可能なさまざまな基準センサの幾何学的形態を示す図である。
【図8A】或る例に従った、相互接続部を受けるよう構成されたチャネルを示す支持部材の断面図である。
【図8B】或る例に従った、相互接続部を受けるよう構成されたチャネルを示す支持部材の断面図である。
【図8C】或る例に従った、相互接続部を受けるよう構成されたチャネルを示す支持部材の断面図である。
【図9】或る例に従った熱分析のためのシステムを示すブロック図である。
【図10】或る例に従った例示的なガス制御システムを示す概略図である。
【図11】或る例に従った、例示的な加熱システムおよび例示的な自動サンプリングシステムを示す概略図である。
【図12】或る例に従った、加熱システムに結合された例示的なバランスを示す概略図である。
【図13】或る例に従った制御システムのサブシステムを示す概略図である。
【図14】或る例に従った制御システムの別のサブシステムを示す概略図である。
【図15A】或る例に従った、熱分析に用いられる例示的なハイフネーテッドシステムを示すブロック図である。
【図15B】或る例に従った、熱分析に用いられる例示的なハイフネーテッドシステムを示すブロック図である。
【図15C】或る例に従った、熱分析に用いられる例示的なハイフネーテッドシステムを示すブロック図である。
【図15D】或る例に従った、熱分析に用いられる例示的なハイフネーテッドシステムを示すブロック図である。
【図16A】或る例に従った組立てられたセンサを示す斜視図である。
【図16B】或る例に従った組立てられたセンサを示す斜視図である。
【図17A】或る例に従ったセンサの支持構成要素を示す斜視図である。
【図17B】或る例に従った組立てられたセンサの断面図である。
【図17C】或る例に従ったセンサの底部を示す斜視図である。
【図17D】或る例に従ったセンサの底部を示す斜視図である。
【図18】或る例に従った温度測定を示すグラフである。
【図19】或る例に従った温度測定を示すグラフである。
【図20】或る例に従ったさまざまな熱分析の結果を示すグラフである。
【図21】或る例に従ったさまざまな熱分析の結果を示すグラフである。
【図22】或る例に従ったさまざまな熱分析の結果を示すグラフである。
【図23】或る例に従ったさまざまな熱分析の結果を示すグラフである。
【図24】或る例に従ったさまざまな熱分析の結果を示すグラフである。
【図25】或る例に従ったさまざまな熱分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
この開示の利点を考慮すると、センサについての図に示される寸法、サイズ、構成要素および展開図が例示の目的で与えられていることを当業者であれば認識するだろう。他の寸法、表示、特徴および構成要素はまた、この記載の範囲から逸脱することなく、この明細書中に開示されるセンサに含まれ得る。
【0017】
この明細書中に記載される技術の使用、利点、および特徴のうちのいくつかを例示するためにいくつかの具体的な実施例を以下に記載する。この明細書中に開示されるセンサのいくつかの実施例により、熱分析のための既存のセンサに勝る優位な利点が提供される。当該利点としては、一体型のサンプルおよび基準センサ、当該センサを用いた熱分析装置のための設置面積の小規模化、熱分析測定の改善、自動化を用いることによるサンプル処理量の向上、外部基準材料を追加することなく基準センサを動作可能にする能力、等を含むがこれらに限定されない。一体型のサンプルおよび基準センサを含むセンサを製造することにより、サンプルセンサと基準センサとが互いに独立して動作する場合であっても、熱がサンプルセンサおよび基準センサに実質的に等しく加えられ得る。この明細書中に開示されるセンサの特定の例または実施例についての付加的な特徴および利点は、この開示の利点を考慮すれば、当業者によって容易に選択されるだろう。この明細書中に開示されるものを実現するセンサおよびシステムは、ポリマー、食物、金属および他の材料を含むさまざまな種類の多くのサンプルを分析するのに用いられてもよい。
【0018】
或る例においては、この明細書中に開示されるセンサは、或る場合には、シングルステム(single stem)または一体型のセンサと称されてもよい。「シングルステム」センサは、この明細書中において使用される場合、概ね同軸であるサンプルセンサおよび基準センサを含むセンサを指している。いくつかの例においては、シングルステムセンサは支持部材を含む。当該支持部材は、支持部材の長さに沿って、2つ以上のアームまたは部分に分かれたりまたは分岐したりしていない。シングルステムセンサは、典型的には、サンプル支持部および基準センサに結合された円筒形で棒状の単一の支持部材を含む。但し、サ
ンプル支持部および基準センサは典型的には互いに結合されていない。このようなセンサはまた、サンプルを受けるよう設計された単一のサンプル支持部と、サンプル支持部のうち少なくともいくらかの部分を囲み、外部に追加された基準材料を受けるかまたは使用することなく動作可能である基準センサとを含み得る。基準センサの内面は、典型的にはサンプル支持部の外面に隣接して位置決めされており、その内面と外面とは互いに物理的に接しておらず、このため、基準センサおよびサンプル支持部は、たとえば炉によって与えられる実質的に同じ熱環境を被ることとなる。いくつかの実施例においては、内面と外面とを物理的に接触させることなく、または、センサの動作を電気的に妨害することなく、基準センサをサンプルセンサに可能な限り近づけて位置決めすることが望ましいだろう。
【0019】
いくつかの例においては、基準センサおよびサンプル支持部の精密な寸法およびサイズは異なっている可能性があり、いくつかの例においては、基準センサおよびサンプル支持部の各々は、基準センサの熱質量が、サンプル支持部の熱質量および/またはサンプル支持部上のサンプルを含むいずれかのるつぼの熱質量に適合するように、寸法決めおよび配置され得る。例示的な形状および寸法を以下に記載する。
【0020】
この明細書中に開示される技術のうちの或る実施例は、同時熱分析(STA)機器において使用可能なセンサに関する。STA機器は、典型的には、以下に記載される例示的な熱分析方法などの2つ以上の熱分析技術を実現する。この明細書中で使用される場合、「熱分析」は、分析の或る期間中に熱または温度を測定または使用する大きなグループの分析測定を指している。この明細書中に開示されるセンサで使用される例示的な熱分析技術を以下により詳細に説明する。この明細書中に開示されるセンサはまた、この明細書中に開示される特性および特徴を必要とする他の機器において用いられてもよい。この明細書中に開示されるセンサの或る例において提供される固定型静的基準センサは、シングルステム上に垂直に搭載可能であり、たとえば、(サンプルを含む)単一のるつぼを受けるための単一のサンプル支持部を含み、これにより、基準用(または第2の)るつぼを設ける必要性がなくなる。基準センサはまた、基準温度熱電対として機能または動作し得るため、2つのるつぼを採用している従来のセンサに比べて、センサとステムとのアセンブリが占める水平空間を小さくすることができる。基準センサの物理的特徴は、材料、寸法および搭載位置を含むがこれらに限定されるものではなく、望ましくは、サンプル用るつぼおよびサンプル支持部の熱的特性に適合するよう、熱的特性に実質的に等しくなるよう、および/または熱的特性を再現するよう設計される。
【0021】
或る実施例においては、サンプルセンサおよび基準センサは各々、実行される熱分析中の少なくともいくらかの期間にわたって実質的に同じ熱環境にあるか、実質的に同じ熱環境を被るか、または実質的に同じ熱環境に晒されるように構成され得る。サンプルセンサおよび基準センサを互いにごく近接させて配置することにより、サンプルセンサと基準センサとが支持部のうち別々の支持部またはアームに位置決めされているデュアル(dual)またはマルチステム(multi-stem)センサとを比べて、センサ同士が物理的に異なる位置にあるために起こる可能性のある温度誤差と熱への曝露の差とを低減させることができる。
【0022】
或る例においては、センサは、サンプル支持部、基準センサ、支持部材、および任意にはコネクタで構成され得る。このような装置の一例が図1および図2に示される。図1に示される側面図においては、センサ100は、基準センサ110と、基準センサ110に結合された支持部材120と、支持部材120上にあるかまたは支持部材120に結合されたコネクタ130とを含む。サンプル支持部140(図2)は、コネクタ130付近の端部の反対側にある支持部材120の遠位端に結合され得る。サンプルセンサおよび基準センサを互いにごく近接させて設け、単一の支持部材に結合することにより、センサの全体的なサイズを小さくすることができ、これにより、センサを用いる分析装置のサイズを
小さくすることが可能となる。たとえば、センサに熱を与えるのに用いられる炉の寸法を小さくすることもできる。加えて、センサ同士がごく近接していることで熱的異常が低減し得るので、結果として、デュアルまたはマルチステム検知装置の使用が可能となる。
【0023】
いくつかの例においては、基準センサ110が取り得るのは、中空で概ね円筒形の装置の形であり、サンプル支持部140のいくらかの部分またはすべてを囲むが物理的には接触しないよう構成されている。たとえば、基準センサ110は、図3に図示のとおり、長さ112、内径114および外径116を有し得る。基準センサについての例示的な寸法は、約3〜7mm、たとえば約5mmの長さと、約5〜7mm、たとえば約6mmの内径と、約6〜8mm、たとえば約7mmの外径とを含むが、これらに限定されない。基準センサ110は図2および図3においては円筒形で示されているが、以下に説明するように、他の断面形状を用いてもよい。
【0024】
或る例においては、サンプル支持部140は、基準センサ110の内面とサンプル支持部140の外面とが所望の間隔を空けて配置されるように、基準センサ110の内径内に位置し得るかまたは吊らされ得る。サンプル支持部140が円形であり、基準センサ110が円筒形である実施例においては、基準センサ110の内面とサンプル支持部140の外面との間の間隔は、サンプル支持部の円周に沿って実質的に同じになり得る。サンプル支持部140は、基準センサ110の上部の上またはその付近に配置可能であり、かつ、たとえば熱または温度の変化を検知するのに使用され得る電気的接続部などのサンプルセンサの1つ以上の構成要素に結合可能である蓋、パンまたは支持装置として構成され得る。サンプル支持部140は、支持部材120が、基準センサ110の位置に対して所望の位置でサンプル支持部140を位置決めするように、支持部材120と物理的に接触し得る。サンプル支持部140は、たとえば、るつぼまたは他の好適な装置内のサンプルなどを受けるよう構成され得る。いくつかの例においては、サンプル自体はサンプル支持部140上に配置され得るのに対して、他の例においては、サンプルは、サンプル支持部140上に配置されたるつぼに位置し得る。サンプルを含むるつぼがサンプル支持部140上に配置される例においては、サンプル支持部140とるつぼとは、典型的には、サンプルからの温度変化または熱特性変化をサンプルセンサを用いて検知し得るように、熱的に導通している。いくつかの例においては、サンプル支持部の熱特性は、るつぼの特性に綿密に適合しているかまたはそれに類似している。サンプル支持部140は、サンプルの温度変化を検知するために熱電対として機能し得るリードまたは相互接続部に電気的に結合されてもよい。例示的な熱電対を以下により詳細に説明する。サンプル支持部および相互接続部によりサンプルセンサが形成され、当該サンプルセンサを用いて、加熱および/または冷却中に発生する可能性のある、サンプル中の物理的変化または化学的変化を検知することができる。
【0025】
いくつかの例においては、サンプル支持部は、サンプルまたはサンプルを含むるつぼが、1回以上の分析測定中に適所に保持され得るかまたはサンプル支持部と接触し得るように、窪みまたは凹面を含み得る。いくつかの例においては、凹面は、毎回、同様の位置でるつぼを受けるように寸法決めおよび配置され得るのに対して、他の例においては、るつぼは、サンプル支持部140に沿ったいずれの位置に配置されてもよい。たとえば、図4Aを参照すると、サンプル支持部200は、サンプル(図示せず)を含むるつぼ230を受けて保持するよう構成された凹面220を含む。図4Aの実施例では、測定毎にるつぼを実質的に同じ位置に配置して、熱分析装置の全体的な精度を高めることが可能となる。しかしながら、このような配置は、精密かつ正確な測定にとって重要ではないかもしれない。このような場合、より広い凹面を有するサンプル支持部、たとえば、図4Bおよび図4C(この場合、凹面に沿ったるつぼ260の正確な配置が異なっている)においてるつぼ260を保持するものとして示されるサンプル支持部250、を使用することが望ましいだろう。いくつかの例においては、サンプル支持部の面は、サンプル支持部およびるつ
ぼ、またはサンプル自体の支給および供給に用いられる他の装置の所望の構造および形状に応じて、1つ以上の凸面もしくは突出面または他の形状を有してもよい。使用時に、サンプル支持部の凹面は典型的には水平に位置決めされ、支持部材が底面でサンプル支持部に結合されている。図4Dおよび図4Eを参照すると、るつぼ410、サンプル支持部420および基準センサ430の概略図が示される。るつぼ410はサンプル支持部420に配置されている。図4Eの切断図から分かるように、るつぼ410の底部はサンプル支持部420の基部上に位置しており、基準センサ430には接触していない。図4Dおよび図4Eに示されるサンプル支持部420は、工程毎にるつぼを同様に位置決めし、これにより、るつぼの位置の僅かな差に起因する収差を低減させ得る。加えて、自動サンプラを備えたサンプル支持部420と同様の、またはこれと同じサンプル支持部を用いて、自動サンプラからサンプル用るつぼを受取って安全に処理することを容易にすることが望ましい。
【0026】
いくつかの例においては、サンプル支持部は、サンプル支持部を所望の高さまたは所望の位置に位置決めするための1つ以上のスタンドオフ、ボス、スペーサなどを含み得る。他の例においては、サンプル支持部および/または基準センサは、熱の投入を可能にするための開口部または貫通孔を備え得る。たとえば、図5を参照すると、開口部520などの開口部または貫通孔は、熱が基準センサ510に入ったりそこから出たりすることが可能となるように、基準センサ510への切込みまたは掘削によって設けられ得る。いくつかの例においては、このような開口部が面に沿って等間隔に配置または位置決めされ得ることにより、センサ内外への熱流量が実質的に等しくなることが可能にし得る。1つ以上の開口部を通って熱がセンサに出入りすることを可能にすることにより、基準センサおよびサンプルセンサが晒される熱環境が実質的に同じになり得る。開口部の数およびサイズは重要ではなく、例示的な数としては、1つ以上、たとえば1から約30までを含むがこれに限定されない。このような貫通孔は、基準センサおよび/またはサンプル支持部のいずれの面または側部にあってもよく、いくつかの例においては、貫通孔は、基準センサおよびサンプル支持部の両方にある。
【0027】
或る例においては、サンプル支持部は、熱特性が、基準センサの熱特性および/または分析すべきサンプルを含むるつぼの熱特性と実質的に等しくなるように、基準センサを構築するのに使用されるものと同様の材料で構成され得る。たとえば、サンプル支持部は、金属、セラミックまたは他の材料であって、熱特性が公知であるかまたは決定可能である材料から作製され得る。サンプル支持部に使用される例示的な材料としては、プラチナ、ロジウム、レニウム、パラジウム、イリジウム、タングステン、金、銅、銀、アルミナ、ジルコニア、イットリア、およびこれらの例示的な材料の混合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの例においては、耐腐食性のコーティングをサンプル支持部上に堆積させて、サンプル支持部のエッチングまたは劣化を妨ぎ、その他の場合には、その有用な動作寿命を延ばし得る。同じ材料で基準センサおよびサンプル支持部を構成することが所望されるが、必ずしも必要とはされない。
【0028】
いくつかの実施例においては、相互接続部は、相互接続部へのサンプル支持部の接続が支持部材に沿ったサンプル支持部の位置決めの妨げにならないように寸法決めおよび配置され得る。たとえば、図6を参照すると、サンプル支持部610は、支持部材620の上部に位置決めされるものとして示されている。相互接続部630および640は、支持部材620を貫通し、サンプル支持部610の表面に結合される。相互接続部は、典型的には、サンプル支持部の基部に取付けられ、サンプル材料自体には直接に取付けられない。代替的な実施例においては、1つ以上の支持ワイヤまたは構造が、支持部材620の上方に所望の間隔を空けてサンプル支持部610を上昇させるのに用いられてもよい。いくつかの例においては、相互接続部630および640は各々、長さが、約70mm〜約110mm、より特定的には、約75mm〜約100mmである。或る例においては、相互接
続部の厚さは、約0.1mm〜約0.3mm、より特定的には約0.15mm〜約0.25mm、たとえば約0.2mmとさまざまであり得る。以下により詳細に説明するように、相互接続部は、概して、支持部材620を通り抜けるかまたは支持部材620を経由し、センサからの信号を受信および/または処理することのできる分析装置、プロセッサまたは他の装置に電気的に結合され得る。或る例においては、相互接続部630および640は、プラチナなどの導電性材料から作製され得るかまたは導電性材料を含み得るので、サンプル自体の温度の変化を表わしているサンプル支持部610の温度の変化を、相互接続部630および640を用いて検知することができる。例示的な材料について、熱電対において用いられる材料を参照しつつ以下により詳細に説明する。これらの材料のうちの1つ以上はいずれも、相互接続部630および640を設けるために別個に用いられ得る。
【0029】
いくつかの例においては、サンプル支持部610のリップは、約0.1mm〜約0.3mm、たとえば約0.25mmの厚さ652を有し得る。いくつかの例においては、サンプル支持部610の外面から凹みを構成する部分までの距離654は、約0.6mm〜約1mm、たとえば約0.8mmである。サンプル支持部610の基部は、約0.1mm〜約0.3mm、たとえば約0.2mmの厚さ656を有し得る。サンプル支持部620は、その内径が約1.0mm〜約2.0mm、たとえば約1.6mmであり、その外径が約1.6mm〜約3.2mm、たとえば約2.4mmであり得る。しかしながら、使用される材料に応じて、サンプル支持部610および支持部材620の正確な寸法は異なっていてもよい。
【0030】
或る例においては、相互接続部は、複数の材料を用いた複数の態様でサンプル支持部に結合され得る。特に、相互接続部をサンプル支持部または基準センサに結合するのに用いられる方法または技術は、結合されるべき所望の構成要素が電気的に導通し得る限り、重要ではない。たとえば、相互接続部は、サンプル支持部にはんだ付けされ得るか、サンプル支持部にレーザ溶接され得るか、サンプル支持部に抵抗溶接され得るか、または、好適な接着剤もしくはエポキシを用いてサンプル支持部に接着もしくは固着され得る。または、その他の場合には、当該相互接続部は、サンプル支持部と相互接続部との間が電気的に接続されるように、サンプル支持部に取付けられてもよい。いくつかの例においては、サンプル支持部に接続された相互接続部またはリードに存在するのと実質的に同様の材料を用いて、相互接続部をサンプル支持部に溶接することが望ましい。
【0031】
いくつかの例においては、基準センサの正確な構成および配置は異なり得る。いくつかの例においては、基準センサは、ディスク、リングまたはトロイドの形を取り得るものであり、その熱特性は、るつぼおよび/またはサンプル支持部の熱特性に適合され得る。たとえば、(上部または底部から見た場合の)基準センサは、リング710(図7A)、長方形715(図7B)、三角形720(図7C)または他の好適な幾何学的形状と同様に形作られてもよい。基準センサの正確な形状は重要ではなく、如何なる形状が用いられてもよく、このような形状の熱特性により所望の熱応答がもたらされる。いくつかの例においては、内部の断面形状は、基準センサの外側部分の断面形状とは異なっていてもよい。基準センサがリングの形をとっている例においては、リングの内面は、基準センサの外面から約0.1mm(またはそれ以下)〜約2mm、より特定的には約0.25〜約0.5mmのところに装着され得る。基準センサについてのさらなる変形例および構成例は、この開示の利点を考慮すると、当業者によって容易に選択されるだろう。
【0032】
或る実施例においては、リードまたは相互接続部を基準センサに接続する正確な位置は重要ではない。特に、センサの温度を熱平均化すると、サンプル支持部の位置または炉におけるセンサの位置に対する基準センサの位置に差があるためにセンサ毎に起こる可能性のある誤差または収差が低減される。いくつかの例においては、相互接続部が基準センサ
の実質的に同じ側で接続され得るのに対して、他の例においては、リードは、物理的な支持をもたらすよう基準センサの反対側で接続され得る。第2のリードの配置に対する第1のリードの配置は、基準センサの動作中にリード同士が互いに電気的に干渉しない限り、重要ではない。同様に、支持部のためのリードまたは相互接続部の配置に対する基準センサのためのリードの配置は、リードが熱分析測定に不所望な干渉をもたらすように電気的に干渉しない限り、重要ではない。
【0033】
いくつかの例においては、相互接続部またはリードおよび基準センサの各々は、サンプル支持部のための上述の材料などのいくつかの材料から作製されてもよい。基準センサとして使用される材料の所望の特徴は、材料が所望の動作温度範囲を上回る不所望な熱イベントを被らず、材料がサンプルまたは熱電対に対して概して不活性であるかまたは非反応的であり、基準の熱伝導性および熱容量が望ましくはサンプルのものと同様である点を含むが、これらに限定されない。或る実施例においては、リードおよび基準センサは各々、別個に、プラチナ、ロジウム、レニウム、パラジウム、イリジウム、タングステン、金、銅、銀、アルミナ、ジルコニア、イットリア、およびこれらの例示的な材料の混合物であり得るか、またはこれらを含み得る。いくつかの例においては、相互接続部において用いられる材料は、所望の反応性または温度範囲を有する熱電対が得られるように選択される。或る実施例においては、基準センサに結合されるリードまたは相互接続部の長さは、約70mm〜約100mm、より特定的には約75mm〜約90mm、たとえば約80mmであり得る。或る例においては、相互接続部の厚さは、約0.1mm〜約0.3mm、より特定的には約0.15mm〜約0.25mm、たとえば約0.2mmであり得る。いくつかの例においては、サンプル支持部および基準センサはすべて、同じ材料を用いて作製され得るので、構成要素同士の熱特性が概ね適合する。
【0034】
或る例においては、支持部材120(図1)は、サンプル支持部および/または基準センサを物理的に支持することのできる棒または管の形を取り得る。或る実施例においては、支持部材は、基準センサおよび/またはサンプル支持部の熱特性に適合する材料を用いて作製され得るのに対して、他の例においては、支持部材は、サンプル支持部および/または基準センサにおいて見出されるものとは異なる材料で作製され得るか、またはこれを含み得る。支持部材120の長さは、約55mm〜約95mm、たとえば約75mmであり得る。支持部材の正確な長さは異なっていてもよく、支持部材は、望ましくは、不所望な温度勾配を避けるために炉の加熱素子からの熱分離が実現されるほど十分に長いが、センサを収容するのに必要な炉の全体的なサイズを不必要に増大させないような長さであり得る。支持部材の断面形状はまた、異なっていてもよく、いくつかの例においては、円形、卵形、長方形、三角形または他の好適な幾何学的形状であってもよい。支持部材において用いられる例示的な材料としては、プラチナ、ロジウム、レニウム、パラジウム、イリジウム、タングステン、金、銅、銀、アルミナ、ジルコニア、イットリア、およびこれらの例示的な材料の混合物を含むが、これらに限定されない。
【0035】
或る実施例においては、支持部材は2つ以上の長手のチャネルを含み得る。当該長手のチャネルは、サンプル支持部および基準センサからコントローラまたは他の装置に信号を供給するのに用いられる電気的なリードまたは相互接続部のための通路として機能する。いくつかの例においては、各ワイヤは、電気的なクロストークが低減され得るように、それ自体のチャネルの内側に位置決めされ得る。長手のチャネルは、支持部材の本体内であればどこに配置されてもよく、ワイヤまたはリードが支持部材の一方端から他方端にまで通るように寸法決めおよび配置され得る。例示的なチャネルの配置が図8A、図8Bおよび図8Cに示されており、チャネル810、820および830は、それぞれ、支持部材805、815および825に示されている。チャネルの特別な断面形状は重要ではなく、如何なる形状が用いられてもよい。いくつかの例においては、製造を容易にするために、単一のチャネルを通るサンプルセンサおよび基準センサのためのすべての相互接続部の
通路を規定する単一のチャネルを備えた中空のロッドを使用することが望ましいだろう。このような実施例においては、電気的クロストークを低減させるようにワイヤの各々を絶縁させることが望ましいだろう。好適な絶縁体、たとえばガラス、繊維、非導電性酸化物、セラミック、および他の非導電性物質が用いられてもよい。
【0036】
或る例に従うと、基準およびサンプルセンサで使用される電気的な相互接続部またはワイヤは、熱接点温度測定熱電対の2つの側部を設けるよう構成され得る。特に、2つの相互接続部の一方は、プラチナ/10%のロジウムワイヤとして構成され得、他方はプラチナワイヤとして構成され得、これにより、タイプSの熱電対が設けられる。同様の構成を用いて、基準センサで使用される熱電対を設けることができる。動作時に、ワイヤの温度差により電圧差が生じる可能性があり、結果として電流の流れが生じる(ゼーベック効果(Seebeck effect))。いくつかの例においては、サンプル支持部に結合された熱電対は、基準センサにおいて用いられる結合された熱電対と同じタイプである。例示的な熱電対のタイプは、タイプB(プラチナ/30%ロジウム(+)対プラチナ/6%ロジウム(−))、タイプE(ニッケル/10%クロム(+)対コンスタンタン(−))、タイプJ(鉄(+)対コンスタンタン(−))、タイプK(ニッケル/10%クロム(+)対ニッケル/5%アルミニウム−シリコン(−))、タイプR(プラチナ/13%ロジウム(+)対プラチナ(−))、および、タイプS(プラチナ/10%ロジウム(+)対プラチナ(−))を含むが、これらに限定されない。これは、たとえばANSI C96.1−1964に記載されるとおりである。しかしながら、この開示の利点を考慮すると、たとえば純プラチナ、プラチナ・パラジウム、プラチナ・イリジウム、プラチナ・タングステンおよびタングステン・レニウムの熱電対などの付加的な熱電対が当業者によって選択されるだろう。特に、温度の関数として予測可能な出力電圧を有する如何なる材料が熱電対において用いられてもよい。
【0037】
いくつかの例においては、基準センサの熱伝導性は、熱電対のホットスポットが位置決め/溶接される正確な位置についての重要性を低減させ得る。この熱伝導性により、基準センサに沿った温度の「物理的平均化」がもたらされ、これにより、炉の中心における基準センサの正確な位置決めに対する依存性についての関連性が低くなる。この明細書中に記載されるように、基準センサの円筒形リング構成を使用することについての有意な利点は、炉が、サンプル用るつぼと基準リングとを実質的に等しく「見る(sees)」ことであり、これにより、それらの両方の熱流量が均等化される。これに対し、サンプル用るつぼおよび基準リングは、互いを殆ど「見る」ことがない。このように熱結合がないために、この明細書中に開示されるセンサを用いて行なわれる熱測定の全体的な感度が高められる。
【0038】
いくつかの例においては、熱電対ワイヤは、コネクタ130に結合され得る(図1)。いくつかの実施例においては、各々のワイヤは、コネクタ130へのそれ自体の接続部を有しており、4つの接続が別個にコネクタ130になされ得る。他の例においては、2つ以上のワイヤが共通の接続部を共有して、センサの容易な組立を容易にし得る。コネクタ130を用いてセンサからの信号を供給することにより、センサがコネクタ130を介してマイクロバランスに結合された場合に、熱電対のワイヤ/チャネルからの信号またはデータが、支持部材および/またはマイクロバランスを介してシステムまたはサブシステムに伝達されて、分析または記録されるようにし得る。このようなシステムまたはサブシステムは、以下により詳細に説明するように、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み得る。
【0039】
或る実施例に従うと、この明細書中に開示されるセンサは、熱分析および同時熱分析の際に特に有用である。例示的な熱分析技術は、単独で、または1つ以上の他の熱分析技術とともに実行可能であり、熱重量分析(TGA)、示差熱分析(DTA)および示差走査
熱量測定(TSC)を含むが、これらに限定されない。TGAの際に、サンプルの質量が温度の関数として測定される。TGAは、酸化および還元または他の応用例を調査するために、たとえば、結晶水を決定し、材料の劣化を追求し、反応の仕組みを確認するのに用いられてもよい。典型的なTGA測定中に、サンプルに熱を加えて、材料中の化学的反応および/または物理的変化を発生させる。TGAは、反応、遷移および/または熱劣化に伴う材料の質量変化を定量的に測定する。たとえば、TGAは、時間および温度に伴うサンプルの脱水、分解および酸化による質量の変化を測定することができる。TGA測定中に、質量は、時間または温度の関数として記録される。その結果を図表化して、特定の温度範囲および加熱速度にわたって発生する物理化学的反応に起因する、所与の特定の材料または化合物についての特徴的な熱重量分析曲線を得る。これらの固有の特徴はサンプルの分子構造に関連している。
【0040】
或る例においては、この明細書に開示されるセンサは、示差熱分析(DTA)において用いられてもよい。DTAの際に、サンプルおよび基準について、同じ熱環境に晒されている間の温度差が記録される。温度プロファイルまたは勾配が実現可能であり、サンプルおよび基準の温度が、温度プロファイルの全体を通じて監視され得る。DTAは、温度プロファイル全体にわたって、または温度プロファイルのいくらかの部分にわたって質量に変化がない場合には特に有用であり得る。DTAは、たとえば、遷移が吸熱性であるかまたは発熱性であるかを規定し得る。典型的な分析の際に、センサ(TS)および基準温度(TR)の温度差を用いて、熱力学特性を判断し得る。たとえば、温度の関数としてのTS−TRは、変化が吸熱によるもの(より高温では曲線の下降)であるか、または発熱によるもの(より高温では曲線の上昇)であることを判断するのに用いられてもよい。DTAは、サンプル識別、定量的組成分析、状態図、水和−脱水、熱安定性、重合、純度および反応性を含むが、これらに限定されないいくつかの分析において有用である。
【0041】
或る例においては、この明細書中に開示されるセンサは、示差走査熱量測定(DSC)において有用であり得る。DSCはDTAに類似している。熱流速DSCにおいては、DTA(デルタ温度)信号で必要とされる温度差が、熱流量(エネルギ単位でmW)に解釈される。この技術が使用可能となるのは、十分に定義された再現可能な熱的接触が存在し、このため、サンプルとサンプル用るつぼとサンプル温度センサとの間に熱抵抗が存在するためである。
【0042】
この明細書中に開示されるセンサの或る実施例は、2つ以上の熱分析技術を実現することのできる熱分析システムで使用するのに特に適している。上述のとおり、TGAは、質量変化の結果として生じる熱イベントを検出するが、質量に変化がない場合の相変化、たとえば溶融などは検出しない。溶融は、DTAを用いて検出され得る。サンプルに対するTG分析およびDTAを同時に実現することにより、得られる情報の量が増大し、分析時間の合計が低減され得る。必要とされるサンプルの量も減らすことができるが、これは、TG分析およびDTA分析のために単一のサンプルが使用され、別々の分析を行うのに2つのサンプルを使用する必要がなくなるからである。例示的な同時熱分析装置は、たとえば、TGおよびDTA、DTAおよびDSC、TGおよびDSC、またはさらには、TG、DTAおよびDSCを実現することができる。この明細書中に開示されるセンサを用いた付加的な同時熱分析方法は、この開示の利点を考慮すると、当業者によって容易に選択されるだろう。
【0043】
或る例においては、熱分析システムは、たとえば、図9に示される構成要素またはシステムを含み得る。システム900は、ガス制御システム910、バランス915、加熱システム920、自動サンプリングシステム930を含み、各々は、処理/制御システム940に結合されている。ガス制御システム900は、たとえば、1つ以上のサンプルガスを加熱システムに導入するための好適なガス、流体ライン、流量弁、圧力センサおよび流
量センサを含み得る。ガス制御システムの実施例の例が図10に示される。ガス制御システム900は、第1および第2のサンプルガスをそれぞれ受けるよう構成された流体管1005および1010を含む(ただし、いくつかの実施例においては、サンプルガスが1つだけ用いられてもよい)。流体管1005および1010はそれぞれ、弁1015および1020に結合され、弁1015および1020はそれぞれ、リード1017および1022を介して処理/制御システム940によって制御される。比例弁1025もまた、流体管1022を介して流体管1005および1010に結合される。比例弁1025はまた、リード1027を介して処理/制御システム940によって制御される。圧力センサ1030および流量センサ1035は各々、流体管に結合されて、リード1032および1037を介して信号をアナログ−デジタルコンバータ1040に送り、当該信号をリード1042を介して処理/制御システムに送信することにより、処理/制御システム940にフィードバックを与える。圧力センサ1030および流量センサ1035は、ガス制御システム910を介するガスの流れに関する信号を供給する。サンプルガスの流れは、流体管1050を通じて加熱システム920に供給される。いくつかの例においては、ガス制御システム900は、両方のガス源ではなく片方のガス源からガスを供給するのに使用され得るのに対して、他の例においては、ガスは、加熱システム920に導入される前に混合され得る。ガス流量は、選択された熱分析方法に応じて異なる可能性があり、例示的なガス流量は、0mL/分〜約100mL/分、より特定的には約5mL/分〜約100mL/分を含むが、これらに限定されない。たとえば、スウェージロック(Swagelock)タイプの取付具などのさまざまな装置および取付具を用いて、ガスおよびガス流ラインを加熱システム920に結合し得る。
【0044】
ここで図11を参照すると、例示的な加熱システムおよび自動サンプリングシステムが示される。加熱システム920は、ガス制御システム910から冷却ガスを受ける炉110を含む。当該炉はまた、冷却ポンプ1120を含み、当該冷却ポンプ1120は、測定の前または後にオーブンを所望の温度にまで冷却するための冷却ジャケット1125に冷却された水または流体を供給するよう動作可能である。炉の動力は、処理/制御システムからリード1114を通じて、または、別個のコントローラもしくは電源を通じて供給される。炉1110内の温度が、たとえば熱電対を用いて検知され、信号がリード1112を通じて制御システムに送信され得ることにより、温度を測定中に調整または制御できるようにする。冷却ポンプ1120は、リード1122を通じて処理/制御システムによって制御され得る。いくつかの例においては、当該炉は、手動モードかつ自動モードでの投入および除去が簡略化されるように、上部に搭載された炉であってもよい。好適な炉についての例示的な形状および寸法は、概して円筒形であり、内径が約10mm〜約15mm、たとえば約13mmであり、外径が約18mm〜約22mm、たとえば約20mmであり、全体的な高さが約20mm〜約30mm、たとえば約25mmである炉を含むが、これに限定されない。いくつかの例においては、炉の全体的なサイズは、炉の全体的な設置面積が低減されるように、センサのサイズに基づいて最小限にされる。炉は、空気、水または他の何らかの冷却流体などの冷却源に流体結合されてもよい。このような冷却流体は、オーブンを冷却するための高速の熱伝達が容易になるように、たとえば炉の外面を囲むジャケットを介して循環されてもよい。加えて、炉は、熱気の迅速な排出および/または冷却器の周囲空気と炉内の空気との交換を行うための1つ以上の換気扇を含み得る。
【0045】
ここで自動化サンプリングシステム930を参照すると、自動サンプリングシステム930は、複数のサンプルを受けるための1つ以上のサンプルレザバを含み得る。複数のサンプルは、各々がサンプルを含む複数のるつぼであってもよい。自動サンプリングシステム930は、分析用のサンプルをセンサ1140に積み込むための1つ以上のロボット型アームまたはガントリを含み得る。分析の後、自動サンプリングシステムがるつぼおよびサンプルを取出して、新しいるつぼおよびサンプルをセンサ1140に挿入し得る。例示的な自動サンプリングシステムは、パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル
・サイエンス社(PerkinElmer Life and Analytical Sciences, Inc.)から入手可能なシステム、たとえば、Jade−DSCまたはSTA6000機器とともに使用されるかまたは当該機器において使用されるシステムなどを含む。自動サンプラは、たとえば、処理/制御システムを自動サンプリングシステム930に接続するリード932を介して制御され得る。いくつかの例においては、自動サンプリングシステム930は、サンプルを積み込むのに用いられてもよく、特定の時間または所望の時間が過ぎると、サンプルを取出し、新しいサンプルを積み込み得る。サンプルが積み込まれる速度は、実行されている熱分析の種類および性質に応じて異なり得る。或る実施例においては、自動サンプリングシステムは、約60分以下毎に、たとえば約8分毎または5分以下ごとに新しいサンプルを積み込むよう構成され得る。
【0046】
いくつかの例においては、熱分析システムはバランス915を含み得る。この明細書中に開示されるとおりセンサに結合されたバランス915の一例が図12に示される。センサ1140は、コネクタ1210を介してバランス915に結合され得る。バランス915は、加熱システムの外部に位置してもよく、または、バランスの何らかの部分が加熱システムの内部にあってもよい。
【0047】
動作時に、さまざまな構成要素からの信号が、電気接続部または経路を介してシステムの他の構成要素に送信され得る。たとえば、サンプルセンサおよび基準センサの熱電対からの信号は、経路または接続部1212を介して処理/制御システムに送信されてもよい。バランス自体は、接続部1214によって信号を送信することによって制御され得る。基準センサの冷接点の信号は、たとえばNTC(負の温度係数)信号であってもよく、接続部1216を介して処理/制御システムに送信され得る。そして、マイクロバランスのNTC信号が、接続部1218を介して処理/制御システムに送信され得る。図に示される接続部は、1本のラインまたは経路として表わされてもよいが、使用される実際の接続部は、所望の信号または測定値が受信および/または送信され得るように、2つ以上の接続部または経路を含み得る。好適なマイクロバランスは、センサ信号のフィードスルーおよび信号冷接点温度測定値のうちの1つ以上を含むかまたは受信可能であるものを含むが、これに限定されない。マイクロバランスは、熱分析システムの構成に応じて、加熱システム内に配置され得るか、または加熱システムの外部にあってもよい。
【0048】
図13を参照すると、例示的な処理/制御システムのサブシステムが示される。サブシステム1300は、バランス制御、信号増幅器および熱電対増幅器1310を含む。サブシステム1300は、接続部1214を介してバランスを制御するよう構成されたバランス制御および増幅器構成要素1310を含む。構成要素1310はまた、接続部1212を介してサンプルセンサおよび基準センサの熱電対から信号を受信するよう構成され得る。構成要素1310は、接続部1216を介して基準センサの冷接点のNTC(負の温度係数)信号を受信し、接続部1218を介してマイクロバランスのNTC信号を受信する。これらのNTC信号は、構成要素1310を用いて増幅され、構成要素1320に供給され得る。構成要素1310はまた、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)およびデジタルローパスフィルタ(LPF)として動作可能な構成要素1320に対し、接続部1312を介して基準温度信号を供給する。構成要素1320は、たとえば、LTC2449(リニアテクノロジ(Linear technology)、マルチチャネル24ビットADC)などのマルチチャネルADCであってもよい。この例においては、構成要素1310はまた、接続部1314を介して構成要素1320にDTA信号を供給する。構成要素1310からのTG信号は、接続部1316を介して構成要素1330に供給される。当該構成要素1330は、アナログ−デジタルコンバータおよびデジタルローパスフィルタとして動作可能であり、たとえば、AD7710(アナログデバイス)などの別の高解像度(24ビット)ADCであり得る。構成要素1320は、図14に図示のとおり、接続部1332を介して別のサブシステムに信号を出力し得る。構成要素1330は、接続部1334を
介して他のサブシステムに信号を出力し得る。
【0049】
図14を参照すると、サブシステム1400はコントローラ1410を含む。当該コントローラ1410は、サブシステム1310および当該システムの他の構成要素からの信号を受信して処理するよう構成される。コントローラ1410は、TG信号にフィルタをかけ、ドリフトを補償し、システム内のガス流を制御し、たとえば比例・積分・微分(PID)プロセッサを介して炉の温度を制御し、冷却ポンプを制御し、所望の信号またはデータをユーザインターフェイスに出力し得る。サブシステム1410はまた、1つ以上のインターフェイスまたはコントローラ1420、たとえばUSBインターフェイス、1つ以上のLED、スイッチ、プリンタ、グラフィカルユーザインターフェイスなどに結合されて、熱分析測定のための所望のデータまたはパラメータをユーザに与え得る。図13および図14に示される実施例はサブシステムを含むものとして示されているが、熱分析システムを制御するのに単一のコントローラまたはプロセッサが用いられてもよい。
【0050】
或る例に従うと、この明細書中に開示されるセンサのうちの1つ以上を用いる好適な熱分析システムは、広範な質量および温度範囲にわたって動作可能であり得る。分析のために使用されるサンプルの量は、サンプルの熱特性に応じて異なり得るが、いくつかの例においては、約0.5mg〜約1mgほどのサンプルが分析のために使用され得るのに対し、いくつかの例においては、サンプル支持部は、1500mg以上のサンプルを受けるよう設計され得る。当該システムは、たとえば約0.1〜100℃/分となり得る加熱速度で、15℃〜約1000℃の範囲にわたる温度プロファイルを実現し得る。温度測定が、約0.5℃の精度で行なわれ得る。炉は、たとえば強制空気および/または冷却機を用いて、20分未満で約1000℃〜約100℃、または20分未満で約1000℃〜約30℃などのように高速で冷却され得る。さらに以下に説明するように、当該システムはまた、1つ以上の付加的な装置に結合されて、同時熱分析および1つ以上の他の分析技術を実行することのできるハイフネーテッド(hyphenated)システムまたは接合(conjugated)システムを提供し得る。
【0051】
いくつかの例においては、1つ以上の他の分析装置が、分析されている材料をさらに分析するための、または、熱分析中に生じたガスを分析するための熱分析システムに接合され得る。例示的な分析装置としては、質量分析計(MS)、赤外(IR)分光計、ガスクロマトグラフ(GC)およびこれらの技術の組合せを含むが、これらに限定されない。いくつかのハイフネーテッド装置を示すブロック図が図15A〜図15Dに示される。このようなハイフネーテッド装置は、熱分析測定中に1つ以上のガスがサンプルから生じる場合、発生したガスの分析のために特に有用であり得る。このようなガスは、たとえば真空ポンプ、ファン、ヘッドスペースサンプリングなどの好適な装置を用いて別の機器または装置に向けられるかまたは引き込まれてもよい。いくつかの例においては、加熱された管が熱分析装置とMSとの間に流体導通をもたらし、このため、熱分析装置内にガスとして発生する種が、MSへの移送中にガスとして保持され得る。熱分析装置からMSに種を移送するための追加の好適な装置および方法は、この開示の利点を考慮すれば、当業者によって容易に選択されるだろう。
【0052】
図15Aを参照すると、システム1500は、同時熱分析のための装置1510、または、或る例においては、質量分析計1515に結合され1種類の熱分析用に構成された装置を含み得る。STA装置1510は、この明細書中に記載される2つ以上のいずれかの熱分析方法、または、この明細書中に記載されるセンサを用いて実現され得る他の熱分析方法を実行するよう構成され得る。質量分析計1515は、たとえばパーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社(マサチューセッツ州(Massachusetts)、ウォルサム(Waltham))から入手可能であり、一般に化学分析において使用される質量分析計であり得る。例示的な質量分析計としては、磁場型質量分析器、四重極質量分
析器、イオントラップ分析器、飛行時間分析器、エレクトロスプレー脱イオン化を実現するもの、および異なる質量対電荷比で種を分離し得る他の好適な質量分析器を含むが、これらに限定されない。STA装置1510と質量分析計1515との間の圧力差を補償するために1つ以上の弁、取付具または装置を含むことが望ましいだろう。このような圧力補償は、この開示の利点を考慮すれば当業者によって達成されるだろう。
【0053】
図15Bを参照すると、システム1520は、同時熱分析のための装置1525、または、或る例においては、赤外(IR)分光計1530に結合され1種類の熱分析用に構成された装置を含み得る。STA装置1525は、この明細書中に記載されたいずれかの2つ以上の熱分析方法、または、この明細書中に記載されたセンサを用いて実現され得る他の熱分析を実行するよう構成され得る。赤外分光計は、たとえば、連続波赤外分光計、シングルもしくはデュアルビーム赤外分光計、または、フーリエ(Fouirear)変換赤外分光計などの干渉分光計などの、一般に使用される赤外分光計であり得る。STA装置をIR装置に結合するための他の好適な赤外分光計および好適な方法は、この開示の利点を考慮すれば当業者によって認識されるだろう。
【0054】
図15Cを参照すると、システム1540は、同時熱分析のための装置1545、または、或る例においては、ガスクロマトグラフ(GC)1510に結合され1種類の熱分析用に構成された装置を含み得る。STA装置1545は、この明細書中に記載されるいずれかの2つ以上の熱分析方法、または、この明細書中に記載されるセンサを用いて実現され得る他の熱分析方法を実行するよう構成され得る。GC1550は、発生したガスをSTA装置1545から受取り、発生したガス内の種を分離し得る。たとえば、熱分析中に発生した気体の反応物質を分離することが望ましいだろう。この開示の利点を考慮すれば、STA装置とともに使用される好適なGC装置を選択することも、当業者の能力の範囲内であるだろう。
【0055】
図15Dを参照すると、システム1560は、同時熱分析のための装置1565、または、或る例においては、それ自体が質量分析計1575に結合されたガスクロマトグラフ1570に結合された1種類の熱分析用に構成された装置を含み得る。STA装置1565は、この明細書中に記載されるいずれかの2つ以上の熱分析方法、または、この明細書中に記載されるセンサを用いて実現され得る他の熱分析方法を実行するよう構成され得る。GC1570およびMS1575は各々、たとえば、図15Aおよび図15Cを参照して説明された例示的なGCおよびMS装置のいずれか、または、他の好適なGSおよびMS装置であり得る。図15A〜図15Dに示される例示的なシステムはまた、たとえば、自動サンプラ、フィルタ、分析システムおよびソフトウェア、コンピュータインターフェイスなどの付加的な構成要素を含み得る。
【0056】
或る例に従うと、この明細書中に開示される装置およびシステムは、少なくとも部分的にコンピュータシステムで制御または使用され得る。コンピュータシステムは、たとえば、ユニックス(Unix(登録商標))、インテル(Intel)のPENTIUM(登録商標)タイプのプロセッサ、モトローラ(Motorola)のPowerPC、サン(Sun)のUltraSPARC、ヒューレットパッカード(Hewlett-Packard)のPA-RISCプロセッサ、または、他のタイプのプロセッサに基づいて得られるような汎用のコンピュータであり得る。いずれのタイプの1つ以上のコンピュータシステムも、当該技術のさまざまな実施例に従って使用され得ることが認識されるはずである。さらに、当該システムは、単一のコンピュータ上に設置され得るか、または、通信ネットワークによって取付けられた複数のコンピュータ中に分散されてもよい。一実施例に従った汎用のコンピュータシステムは、データ収集、オートサンプラ制御、炉の温度制御、データロギング、データ分析などを含むがこれらに限定されない上述の機能のいずれかを実行するよう構成され得る。当該システムがネットワーク通信を含む他の機能を実行可能であり、当該技術が、特定の機能または機能のセットを有するものに
限定されないことが認識されるはずである。
【0057】
たとえば、汎用のコンピュータシステムにおいて実行される特化されたソフトウェアとしてさまざまな局面が実現され得る。コンピュータシステムは、データを格納するためのディスクドライブ、メモリ、または他の装置などの1つ以上のメモリ素子に接続されたプロセッサを含み得る。メモリは、典型的には、コンピュータシステムの動作中にプログラムおよびデータを格納するのに使用される。コンピュータシステムの構成要素は相互接続機構によって結合されてもよく、当該相互接続機構は、(たとえば、同じ機械内で一体化された構成要素間における)1つ以上のバス、および/または、(たとえば、別個の離散マシンに存在する構成要素間における)ネットワークを含み得る。相互接続機構により、通信(たとえば、データ、命令)をシステム構成要素間で交換することが可能となる。コンピュータシステムは、典型的には、電気信号が、格納および/または処理のためにSTA装置からコンピュータシステムに供給され得るように、STA装置のインターフェイス、および/または、ハイフネーテッドシステムの場合にはさらなる装置上のインターフェイスに電気的に結合される。
【0058】
コンピュータシステムはまた、1つ以上の入力装置、たとえばキーボード、マウス、トラックボール、マイクロホン、タッチスクリーン、ならびに1つ以上の出力装置、たとえば印刷装置、状態および他のLED、ディスプレイ画面、スピーカを含み得る。加えて、コンピュータシステムは、(相互接続メカニズムに加えて、またはこれの代替例として)コンピュータシステムを通信ネットワークに接続する1つ以上のインターフェイスを含み得る。コンピュータの記憶システムは、典型的には、コンピュータ読取可能および書込可能な不揮発性記録媒体を含んでおり、ここに格納される信号が、プロセッサによって実行されるべきプログラム、または、プログラムによって処理されるべき媒体に格納された情報を規定する。たとえば、この明細書に開示される或る実施例において使用される温度プロファイルが媒体に格納され得る。当該媒体は、たとえばディスクまたはフラッシュメモリであってもよい。典型的には、動作時に、プロセッサは、データを不揮発性記録媒体から別のメモリに読出して、プロセッサによる情報へのアクセスを、媒体で行う場合に比べてより高速にすることを可能にする。このメモリは、典型的には、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)またはスタティックメモリ(SRAM)などの揮発性のランダムアクセスメモリであり、記憶システム、または図示のとおりメモリシステムに位置し得る。プロセッサは慨して、集積回路メモリ内のデータを処理し、処理が完了した後、データを媒体にコピーする。媒体と集積回路メモリ素子との間のデータの移動を管理するためのさまざまな機構が公知であり、その技術はこれに限定されない。当該技術は、特定のメモリシステムまたは記憶システムには限定されない。
【0059】
コンピュータシステムはまた、特別にプログラミングされた特定用途のハードウェア、たとえば特定用途向け集積回路(ASIC(application-specific integrated circuit))を含み得る。当該技術の局面は、ソフトウェア、ハードウェアもしくはファームウェアまたはそれらの組合せで実現され得る。さらに、このような方法、動作、システム、システム要素およびその構成要素は、上述のコンピュータシステムの一部として、または独立した構成要素として実現されてもよい。
【0060】
いくつかの例においては、コンピュータシステムは、高レベルのコンピュータプログラミング言語を用いてプログラム可能な汎用のコンピュータシステムであってもよい。コンピュータシステムはまた、特別にプログラミングされた特定用途のハードウェアを用いて実現され得る。コンピュータシステムにおいては、プロセッサは、典型的には、インテル社(Intel Corporation)から入手可能な周知のPentium(登録商標)クラスのプロセッサなどの市販のプロセッサである。他の多くのプロセッサが入手可能である。このようなプロセッサは、通常、たとえば、マイクロソフト社(Microsoft Corporation)か
ら入手可能であるウィンドウズ(登録商標)95、ウィンドウズ(登録商標)98、ウィンドウズ(登録商標)NT、ウィンドウズ(登録商標)2000(ウィンドウズ(登録商標)ME)、ウィンドウズ(登録商標)XPまたはウィンドウズ(登録商標)ビスタのオペレーティングシステム;アップルコンピュータ(Apple Computer)から入手可能なMAC OX System Xオペレーティングシステム;サンマイクロシステムズ(Sun Microsystems)から入手可能なソラリス(Solaris)オペレーティングシステム;または、さまざまな供給源から入手可能なUNIX(登録商標)もしくはLinux(登録商標)オペレーティングシステムであり得るオペレーティングシステムを実行する。他の多くのオペレーティングシステムが用いられてもよい。プロセッサに加えて、またはプロセッサの代替例として、コンピュータシステムは、たとえば(インフィネオン(Infineon)から入手可能な)SAB C517Aまたは(STマイクロエレクトロニクス(ST-Microelectronics)から入手可能な)ST10C269などの8ビットまたは16ビットのコントローラなどのコントローラを含み得る。32ビット以上のコントローラなどの他のコントローラがまた、プロセッサの代わりに、またはコンピュータシステムのプロセッサに加えて使用されてもよい。
【0061】
プロセッサおよびオペレーティングシステムはともに、コンピュータプラットフォームを規定し、これにより、高レベルのプログラミング言語のアプリケーションプログラムが書込まれる。当該技術が、特定のコンピュータシステムプラットフォーム、プロセッサ、オペレーティングシステムまたはネットワークに限定されないことが理解されるべきである。また、この技術が、特定のプログラミング言語またはコンピュータシステムに限定されないことが当業者には明らかとなるはずである。さらに、他の適切なプログラミング言語および他の適切なコンピュータシステムも使用可能であることが認識されるはずである。
【0062】
或る例においては、ハードウェアまたはソフトウェアは、認識アーキテクチャ、ニューラルネットワークまたは他の好適な実現例を実現するよう構成される。たとえば、公知の温度プロファイルのデータベースをシステムにリンクさせて、あるクラスの実体についての公知の熱特性へのアクセスを提供する。このような構成により、熱特性が公知である多くの材料の格納およびアクセスが可能となり、さらに、この明細書中に開示される装置およびシステムの機能を高めることができる。
【0063】
コンピュータシステムの1つ以上の部分が、通信ネットワークに結合された1つ以上のコンピュータシステムにわたって分散されてもよい。これらのコンピュータシステムはまた、汎用のコンピュータシステムであってもよい。たとえば、さまざまな局面が、1つ以上のクライアントコンピュータにサービス(たとえばサーバ)を提供するよう構成されたか、または、分散されたシステムの一部としてタスク全体を実行するよう構成された1つ以上のコンピュータシステムに分散されてもよい。たとえば、さまざまな局面が、さまざまな実施例に従ったさまざまな機能を実行する1つ以上のサーバシステムに分散された構成要素を含むクライアントサーバまたは多層システム上で実行されてもよい。これらの構成要素は、通信プロトコル(たとえば、TCP/IP)を用いて通信ネットワーク(たとえば、インターネット)を介して通信を行う実行可能な中間(たとえば、IL)またはインタープリタ型(たとえば、Java(登録商標))コードであってもよい。当該技術が、いずれかの特定のシステムまたはシステム群上での実行に限定されないことが認識されるはずである。また、当該技術が、いずれかの特定の分散型アーキテクチャ、ネットワークまたは通信プロトコルに限定されないことが認識されるはずである。
【0064】
さまざまな実施例は、SmallTalk、Basic、Java(登録商標)、C++、AdaまたはC#(C-Sharp)などのオブジェクト指向のプログラミング言語を用いてプログラムされ得る。他のオブジェクト指向のプログラミング言語が用いられてもよい。代替的には、機能言語、スクリプト言語および/または論理的プログラミング言語が用いられてもよい。さまざまな
局面が非プログラミング環境で実現され得る(たとえば、ブラウザプログラムのウィンドウで閲覧される場合、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)の局面を与えるかまたは他の機能を実行するHTML、XMLまたは他のフォーマットで作成されたドキュメント)。さまざまな局面が、プログラミングされた要素もしくはプログラミングされていない要素、またはこれらのいずれかの組合せとして実現され得る。
【0065】
或る例においては、ユーザが、所望の開始および停止温度、加熱速度、自動サンプリング速度などを入力し得るようにユーザインターフェイスが提供され得る。ユーザインターフェイスに含まれる他の特徴は、この開示の利点を考慮すれば、当業者によって容易に選択されるだろう。いくつかの例においては、ユーザインターフェイスは、パーキンエルマー社から市販されているPyrisソフトウェア上で一般に見出されるようなものであり得る。他の好適なソフトウェアインターフェイスも、STA装置、およびこれに結合されるいずれかの装置の意図される使用に応じて使用可能となり得る。
【0066】
いくつかの例においては、上述の例示的なコンピュータシステム、またはその構成要素は、単一の印刷回路基板上で好適な構成要素を集積することにより、STA装置の特徴をすべて制御するよう実現され得る。他の例においては、ガス制御システム、バランスコントローラおよび信号増幅器のための別個の回路基板が存在し得る。これらは、たとえば、「主な」印刷回路基板などの別の回路基板に結合されてもよい。
【0067】
この明細書中に開示される技術のさらなるいくつかの実施例を説明するために、いくつかの具体例を以下により詳細に記載する。
【0068】
例1
センサが、以下のとおり、図16A〜図17Dに図示のように作製された。図16Aおよび図16Bを参照すると、センサ1600は、支持部材1620に結合されたサンプル支持部1610を備えた。基準センサ1630はまた、支持部材1620に結合された。支持部材1620は、センサ1600をマイクロバランス(図示せず)に接続するためのバランスコネクタ1640を備えた。
【0069】
センサ1600は、図17A〜図17Dに示される以下に記載する構成要素部品で、以下のとおり組立てられた。1.6mmの外径を有し、0.3mmの直径を有する4つの内部チャネルを備えたアルミナ(Alsint)支持部材1620が用いられた。この材料は、(Gimexから)購入され、サイズが僅かに大きく(この材料にとってサイズ許容差が「大きい」)、外径が1.59mm+/−0.03mmになるまで芯なし研磨された。外径に対するこの密な許容差を用いて、炉における正確な位置決めおよび再位置決めを行なった。センサおよびサンプル用るつぼの炉内の配置によって基準線に大きな影響がもたらされる可能性があるので、自動サンプラの使用時には数10ミリの範囲内の位置精度が望ましい。
【0070】
さらなる機械加工の前に、支持部材1620について、施盤における円筒形のクラムを用いて「真直度」がチェックされた。理想的な中心線から0.2mmを超える「ずれ」は、75mmの長さに亘っては見出されなかった。
【0071】
いくつかのダイヤモンド切削工具を用いて、支持部材1620が機械加工され、「平坦な」表面が作り出され、その下にあるチャネルが開放され、ここに接触板が装着される。平坦な表面の上部には、2つの小さな穴が切り抜かれており(0.3×0.5mm)、ここでは、プラチナのワイヤが、支持部材チャネルから出て、接触板の2つの側面の接点に固定されることとなる。底部側では、裏側のチャネルからプラチナロジウムワイヤを介して表側のチャネルにまで通る溝が設けられた。このワイヤは、るつぼ用支持部のための2
つの熱電対ワイヤのうちの一方を形成し、さらに、ステムに偶発的にひびが入った場合にセンサの部品を取外すための牽引ワイヤとして機能した。
【0072】
支持部材1620の上部には、4つの切込みが設けられた。その内の2つは、幅が0.25mmで、深さが0.8mmであって、基準センサにワイヤを送るためのものであり(これらのワイヤはサンプル支持部1610には電気的に接触しておらず、これは、これらの切込みがより深くなっている理由となる)、残りの2つは、幅が0.25mmであり、深さが0.4mmであって、サンプル支持部1610にワイヤを送るためのものである。
【0073】
支持部材1620は、所要の精度を得るためにいくつかの案内工具を用いて手動で製造されてもよいが、代替的にはCNC装置上で機械加工されてもよい。CNC装置においては、支持部材1620は、任意には、4つの貫通孔の位置に並べられてもよいが、これは、ステムの低い方と高い方とで別個に行われる。支持部材の製造工程(押出し成形)により、支持部材1620の長さ(75mm)にわたって4つのチャネルが数度だけ回転する可能性がある。支持部材1620が、たとえば、底部におけるチャネルの位置だけで当該装置に並べられた場合、上部側の切込みが正しく行われない可能性があるだろう。
【0074】
機械加工された支持部材1620においては、4本のワイヤ(2本が純プラチナであり、他の2本が90%プラチナ、10%ロジウムである)は、手動で送られた(実体顕微鏡のもとで行われたいくらかの精密作業)。2本のプラチナワイヤは、接触板の真上にある2つの穴を介して送られた。(るつぼ用支持部上で溶接されるべき)後部側のPt−10%Rhワイヤはステムの底に向かい、Uターン部を介して接触板に戻される(図17Aを参照)。前部側のPt−10%Rhワイヤは、基準センサ1630を機械的に支持をするために、いくらか厚くなっている(0.25mm)。
【0075】
次いで、基準センサ1630が予め組立てられた。リングはヘロイス(Hereaus)(ドイツ(Germany))から購入し、すべてのPtワイヤおよびPt/10%Rhワイヤはケムプル(Chempur)から購入した。基準リングの底には、予め成形された0.25mmのPt−10%Rh支持ワイヤが、レーザ溶接を用いて溶接された(CO2ガスレーザ、約500Vのレーザ電圧、約5ミリ秒のレーザパルス時間(単一パルス))。支持ワイヤ1650を備えた基準リングが支持部材1620上に配置されてから、サンプル支持部1610が搭載された。
【0076】
純プラチナ(製造業者:ヘロイス(ドイツ))で作られているサンプル支持部1610が、支持部材1620上に搭載/位置決めされた。サンプル支持部1610に溶接されるべき2本のワイヤは、サンプル支持部1620の外側に直接接触し、基準センサ1630へのワイヤは下方に折り返された(図17Aを参照)。
【0077】
サンプル支持部を位置決めした後、アセンブリが固定工具に配置され、セラミックのキット(Ceramabond 503VFG, Aremco)が、サンプル支持部1610の外部と内部の底部とに適用された(図17Bを参照)。セラミックのキットが適用された後、アセンブリは400℃まで加熱することによって炉内で硬化された。サンプル支持部の2本のワイヤがその支持部にレーザ溶接され、基準リングに向かうワイヤが予め曲げられ、基準リングが位置決めされて、それらのワイヤに溶接された。次に、基準リングが位置決めされ、底部側の支持ワイヤが、Al23のセラミックのキットで固定され(図17Cを参照)、その後、電気炉内の段において第2の燃焼が行われた。
【0078】
最後に、コネクタ板1640が支持部材1620に取付けられた。このプロセスは、シアノアクリレート接着剤(いわゆる、「強力接着剤」)を用いて実行された。コネクタ板1640へのワイヤが、まず、適所に向かって曲げられた。位置決めについて、高さ、ア
ライメントおよび取付け深さがチェックされた。すべてのワイヤをはんだ付けし、接触板をクリーニングした後に、各センサに色で印が付けられ、1000℃までの最後の燃焼が、機能試験およびDTA基準線記録とともに実行された。
【0079】
センサ(図16A−17Dを参照)の最終寸法は、以下のとおりであった。78mmの長さの支持部材1620が、1.6mmの内径および2.4mmの外径を有し;円筒状の基準リングセンサ1630が、5mmの長さ、7mmの外径および6mmの内径を有し;6mmの長さのバランスコネクタ1640が、支持部材1620の底部から7mmのところに配置され;円形のサンプル支持部1610が有する外面が、基準センサ1630の内面から0.25mmのところに配置された。
【0080】
例2
基準センサを適切に構築および寸法決めするために、基準センサの熱特性は、炉が基準センサおよびるつぼを同様に「見る」ように、サンプル支持部および/またはサンプルを含むるつぼの熱特性に適合され得る。たとえば、既存のPyris6 TGA装置において用いられるるつぼのための基準センサを設計するために、所望の質量および形状を有するプラチナ基準センサが用いられてもよい。
【0081】
特定の寸法および材料についての基準センサの特性を評価するために、以下の計算が実行された。直径が7mm、高さが5mm、重量が175mgのサイズを有し、材料が酸化アルミニウムであるるつぼが用いられた。るつぼの外側表面積は、(Pi*7*5)=110mm2であった。熱容量は0.154J/Kであり、比熱はAl23×るつぼ重量であった。
【0082】
プラチナ基準リングについての同じ熱容量を得るために、約1.17gが用いられてもよい。同じ表面の場合、基準リングは、直径が7mmであり、るつぼと同じ高さ、すなわち5mmであってもよい。次いで、プラチナ基準リングの厚さは0.5mmとされ、結果として、所要の重量が1.17gとなる。アルミナおよびプラチナの物理的特性は以下のとおりである。すなわち、アルミナは、比重量が3.89kg/リットルで、比熱が880J/kg−Kであり、プラチナは、比重量が21.4kg/リットルで、比熱が130J/kg−Kである。
【0083】
計算の結果を、以下の表I(るつぼ)および表II(基準センサ)に示す。「セイコー・ロー(Seiko low)」および「セイコー・ハイ(Seiko high)」のるつぼは、Diamond7シリーズにおいて用いられるものであり、代替的な図およびるつぼ材料についてのこれらの計算に含まれていた。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
計算から分かるように、直径が約7mm、高さが5mm、質量が約1.18gのリングは、TGAるつぼの比熱と密接に適合する。リングの表面積はるつぼの表面積(約110mm2)と等しくなるため、結果として、るつぼと基準リングとの間に同様の熱交換がもたらされるはずである。このため、使用されるるつぼの熱特性に応じて、基準センサは、るつぼの熱特性と合致するよう設計されてもよい。
【0087】
例3−温度勾配測定
特定のSTA性能基準は、示差熱分析基準線の平坦性および再現性である。基準側とサンプル側との熱特性が適合せず、炉自体に温度勾配があるために、非理想的(非平坦)な基準線が生じる。炉内の温度勾配は、数学的熱モデルで実際に温度測定することによって決定された。水平な温度勾配および垂直な温度勾配がともに、(1000℃までの)いくつかの温度設定レベルで決定された。垂直な温度勾配を測定すると、センサの「中心」を設けることが決定された。すなわち、垂直な温度勾配のある平坦な区域(すなわち、炉の底部から8.5mmの高さ)において基準リングの上方側とるつぼおよびるつぼ保持器の下方側との間に分離間隙を設けた。垂直な温度勾配が典型的には対称的であるので、温度降下が主に補正される。
【0088】
センサは、長さが75mmで直径が1.6mmの支持部材を含んでいた。センサの中心は、炉の底部からおよそ8.5mmのところに位置した。実際に用いられる炉は、内径が13mm、外径が20mm、高さが25mmであった。基準センサは、幅が約7mm(外径)、幅6mm(内径)×長さ約5mmであって、中空の円筒形のリングであった。基準センサリングの内面は、サンプル支持部の外面から約0.25mmのところに位置した。高さが5mmで直径が7mmのるつぼがサンプル支持部上に配置された。約3mm×約3mmであったバランスコネクタは、シングルステムセンサをバランスに結合するのに用いられた。測定された第2のセンサの炉温度勾配のグラフを図18および図19に示す。グラフにおいて、「100rel」は、100℃の設定温度での(本来のPyris6 TGA、すなわち、炉が本来使用されていた機器、におけるサンプルの炉内の位置に基づいた)本来のサンプル位置に関連する温度偏差を指しており、「500rel」は、500℃の設定温度での本来のサンプル位置に関連する温度偏差を指し、「1000rel」は、1000℃の設定温度での本来のサンプル位置に関連する温度偏差を指す。
【0089】
例4
ポリエチレン・テレフタレート(PET)の熱特性が、10mgのPET、20mL/
分の窒素ガス速度、10℃/分の加熱速度、ならびに10℃/分および100℃/分の冷却速度で、(パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社から市販されている)STA6000を用いて測定された。結果を図20に示す。
【0090】
例5
TGおよびDSCの測定は、18mgのポリスチレン、20mL/分の窒素ガス速度および10℃/分の加熱速度で、(パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社から市販されている)STA6000を用いて、ポリスチレンで実行された。結果を図21に示す。
【0091】
例6
TGおよびDSCの測定は、16mgのサンプル、20mL/分の窒素ガス速度で、(パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社から市販されている)STA6000を用いて、ワイパーブレード・ブチルゴムで実行され、これを、50mL/分で600℃で酸素に切換えて、カーボンブラックを燃やして除去し、充填材含有量を測定した。20℃/分の加熱速度が用いられた。結果を図22に示す。
【0092】
例7
TGおよびDSCの測定は、15mgのサンプル、40mL/分のヘリウムガス速度、20℃/分の加熱速度で、(パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社から市販されている)STA6000を用いて、シュウ酸カルシウムで実行された。シュウ酸カルシウムのサンプルは同時熱分析器の性能を確認するためにしばしば用いられる。結果を図23に示す。第1段階は水を表わし。第2段階は一酸化炭素を表わし、第3段階は二酸化炭素を表わしている。
【0093】
例8
TGおよびMSの測定は、15mgのサンプル、40mL/分のヘリウムガス速度、20℃/分の加熱速度で、(パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社から市販されている)STA6000を用いて、シュウ酸カルシウムで実行された。STA6000はまた、質量分析計(Pfeiffer Thermostar MS)に結合された。MSとSTA6000との毛細管間の(加熱された)短い移送ラインにより、サンプルがSTA6000からMSに供給された。結果を図24に示す。質量分析計の分析により、18、28および44の重量が検出された。これらはそれぞれ、水、一酸化炭素および二酸化炭素を表わしている。
【0094】
例9
TGおよびMSの測定は、19mgのサンプル、40mL/分のヘリウムガス速度、20℃/分の加熱速度で、(パーキンエルマー・ライフ・アンド・アナリティカル・サイエンス社から市販されている)STA6000を用いて、エチル・ビニル・アセテートで実行された。STA6000はまた、質量分析計(Pfeiffer Thermostar MS)に結合された。MSとSTA6000との毛細管間の(加熱された)短い移送ラインにより、サンプルがSTA6000からMSに供給された。結果を図25に示す。アセテート部分は質量60として表され、バックボーン部分は質量56として表される(図25の挿入部を参照)。
【0095】
この明細書中に開示される例の要素を紹介する場合、冠詞「a」、「an」および「the」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味するよう意図されている。「備える(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という語は、オープンエンドを意図したものであり、挙げられた要素以外に他の要素が存在し得ることを意味している。当該例のさまざまな構成要素が他の例におけるさまざまな構成要素と交換可能
であるかまたは置換え可能であることを、この開示の利点を考慮すれば、当業者によって理解されるだろう。
【0096】
いくつかの特徴、局面、例および実施例を上に述べてきたが、開示された例示的な特徴、局面、例および実施例についての追加例、代替例、変更例および変形例は、この開示の利点を考慮すれば、当業者によってより容易に認識されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサであって、
支持部材と、
支持部材に結合され、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含むサンプルセンサと、
支持部材に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む基準センサとを含み、前記リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、かつ前記少なくとも一部を囲むよう位置決めされる、センサ。
【請求項2】
支持部材に結合されたコネクタをさらに含み、前記コネクタはセンサをバランスに結合するよう構成される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
第1のセットの相互接続部および第2のセットの相互接続部に結合されたコントローラをさらに含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
基準センサのリングは円筒形のリングであり、内面が、サンプル支持部の外面から0.5mm未満のところに位置する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
リングは、6mm〜8mmの外径と、5mm〜7mmの内径とを含む、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
サンプル支持部と基準センサのリングとは共にプラチナである、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
基準センサは、外部基準材料を追加することなしに基準信号を供給するよう構成される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
サンプル支持部は、サンプルを含むるつぼを受けるよう構成された凹面を備える、請求項1に記載のセンサ。
【請求項9】
サンプルセンサおよび基準センサを用いて温度を検知するよう構成されたセンサであって、前記センサはサンプル支持部を含み、前記サンプル支持部の外面が、基準センサの内面から0.5mm以下のところに位置する、センサ。
【請求項10】
サンプル支持部および基準センサは同じ材料を含む、請求項9に記載のセンサ。
【請求項11】
サンプル支持部は、サンプルを含むるつぼを受けるよう構成された凹面を備える、請求項9に記載のセンサ。
【請求項12】
サンプル支持部の外面は、基準センサの内面から約0.25mmのところに位置する、請求項9に記載のセンサ。
【請求項13】
基準センサは、円筒形のリングを含み、外部基準材料を追加することなしに基準信号を供給するよう動作可能である、請求項10に記載のセンサ。
【請求項14】
サンプル支持部に電気的に結合された第1のセットの相互接続部と、基準センサに電気的に結合された第2のセットの相互接続部とをさらに含む、請求項9に記載のセンサ。
【請求項15】
同時熱分析のためのシステムであって、
センサに熱的に結合された炉を含む加熱システムを含み、前記加熱システムは、
支持部材と、
支持部材に結合され、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含むサンプルセンサと、
支持部材に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む基準センサとを含み、前記リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、かつ前記少なくとも一部を囲むよう位置決めされ、前記システムはさらに、
加熱システムに結合され、前記センサの第1および第2のセットの相互接続部から信号を受信するよう構成されたコントローラを含む、システム。
【請求項16】
加熱システムに結合されたガス制御システムをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
センサに結合されたバランスをさらに含む,請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
同時熱分析システムは、熱重量分析、ならびに、示差熱分析および示差走査熱量測定のうちの少なくとも1つのために構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
同時熱分析システムに結合された分析装置をさらに含み、前記分析装置は、質量分析計、赤外分光計、ガスクロマトグラフおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
同時熱分析システムに結合されたコンピュータシステムをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
加熱システムに結合された同時サンプリングシステムをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
サンプルの熱特性を測定する方法であって、
炉におけるセンサのサンプル支持部上にサンプルを配置するステップを含み、前記センサは、サンプル支持部と、前記サンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、かつ前記少なくとも一部を囲む基準センサとを含み、前記方法はさらに、
サンプルの物理的変化または化学的変化を促進するよう炉内の温度を変化させるステップと、
サンプルセンサおよび基準センサを用いてサンプルの物理的変化または化学的変化を測定するステップとを含む、方法。
【請求項23】
基準センサに外部基準材料を追加することなしに物理的変化または化学的変化を測定するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
温度を変化させるステップ中に、サンプルの質量の変化と、サンプルの温度の変化とを測定するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
サンプルの熱特性の測定を容易にする方法であって、
サンプル部材で構成されたセンサと、支持部材に結合され、第1のセットの相互接続部に電気的に結合されたサンプル支持部を含むサンプルセンサと、サンプル支持部に結合され、第2のセットの相互接続部に結合されたリングを含む基準センサとを設けるステップを含み、前記リングは、サンプルセンサのサンプル支持部のうち少なくとも一部に隣接し、かつ前記少なくとも一部を囲むよう位置決めされる、方法。
【請求項26】
サンプルの熱特性の測定を容易にする方法であって、
サンプルセンサおよび基準センサを用いて温度を検知するよう構成されたセンサを設けるステップ含み、前記センサはサンプル支持部を含み、前記サンプル支持部の外面が、基準センサの内面から0.5mm以下のところに位置する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−523944(P2010−523944A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501278(P2010−501278)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/058856
【国際公開番号】WO2008/121938
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509268565)アナテック・ベスローテン・フエンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】ANATECH B.V.
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】