説明

熱分解ガス浄化装置

【課題】リモナイトを含有したリモナイト含有水により熱分解ガスを浄化させる。
【解決手段】熱分解ガス浄化装置100は熱分解対象物を低温熱分解温度で熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化するものであり、熱分解ガス供給部10と、熱分解ガス浄化部20とを備える。熱分解ガス供給部10は、外部から熱分解ガスを取り入れて熱分解ガス浄化部20に熱分解ガスを供給するものである。熱分解ガス浄化部20は、リモナイトを含んだリモナイト含有水により熱分解ガス供給部10から供給された熱分解ガスを浄化するものであり、リモナイト含有水を熱分解ガスに噴霧する熱分解ガス噴霧浄化部21と、リモナイト含有水を収容するリモナイト含有水浄化部22と、リモナイトを含んだ熱分解ガス浄化部材232a等を備えた部材浄化部23と、熱分解ガス通路管24および25と、熱分解ガス排出管26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解対象物を熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化する熱分解ガス浄化装置に関し、特に熱分解対象物を約50℃〜300℃で熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化する熱分解ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、焼却炉で廃棄物を燃焼させて廃棄物を処理する際に発生するダイオキシンが問題となっている。ダイオキシンは、人体に悪影響を及ぼすものであり、ダイオキシンの発生量を低減させることは重要な課題であった。
【0003】
このような状況の中、廃棄物を200℃〜300℃程度で熱分解させる熱分解室を備えた低温ガス化分解装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。上記低温ガス化分解装置は、低温ガス化分解装置内部に設けられた焼却炉の炉本体に相当する熱分解室の底面に火床を備え、火床の上に保熱性材料を敷き、保熱性材料の上に廃棄物を敷く構成になっている。
【0004】
上記低温ガス化分解装置によれば、火床の加熱を通じて保熱性材料を加熱することによって、保熱性材料の上に敷かれた廃棄物を200℃〜300℃程度で燃焼させて熱分解することができる。これにより、熱分解室の温度を200℃〜300℃程度に抑えることができるため、ダイオキシンの発生を低減させることができる。
【0005】
ところで、上記低温ガス化分解装置において廃棄物を200℃〜300℃程度で熱分解させた際に発生する熱分解ガスには、CO、HS、HCl、Cl、NO等の有害ガス成分が含まれていると考えられる。したがって、熱分解ガスを浄化して上気有害ガス成分を熱分解ガスから取り除く必要がある。
【0006】
上記低温ガス化分解装置における熱分解の結果発生した熱分解ガスを浄化して上気有害ガス成分を熱分解ガスから取り除くものとして、ガス洗浄装置が上記低温ガス化分解装置と併せて提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このガス洗浄装置は、低温ガス化分解装置から発生した熱分解ガスにガス処理水を噴霧することによって熱分解ガスを浄化するとされている。
【特許文献1】特開2006−223972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記ガス洗浄装置における熱分解ガスの浄化は、熱分解ガスにガス処理水を噴霧することによって熱分解ガスを浄化すると開示してあるのみでガス処理水の具体的な内容が開示されていない。また、熱分解ガスにガス処理水を噴霧する構成よりも簡易な構成により熱分解ガスを浄化することができれば装置の製造が容易になる。
【0008】
そこで、本発明は、熱分解ガスを浄化するガス処理水としてリモナイトを含有したリモナイト含有水を用いた熱分解ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の熱分解ガス浄化装置は、リモナイトを含んだリモナイト含有水により熱分解対象物を熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化する熱分解ガス浄化部と、外部から上記熱分解ガスを取り入れて上記熱分解ガス浄化部に上記熱分解ガスを供給する熱分解ガス供給部とを具備することを特徴とするものである。これにより、リモナイト含有水により熱分解ガスを浄化させるという作用をもたらす。
【0010】
また、本発明の熱分解ガス浄化装置において、上記熱分解ガス浄化部は、上記リモナイト含有水を収容するリモナイト含有水収容部からなり、上記熱分解ガス供給部から供給された上記熱分解ガスは、上記リモナイト含有水収容部に収容された上記リモナイト含有水中を通過することにより浄化されることを特徴とする。これにより、リモナイト含有水を収容したリモナイト含有水収容部中に熱分解ガスを通すことにより熱分解ガスを浄化させるという作用をもたらす。
【0011】
また、本発明の熱分解ガス浄化装置において、上記リモナイト含有水収容部に収容された上記リモナイト含有水を攪拌するリモナイト含有水攪拌部をさらに具備することを特徴とする。これにより、リモナイト含有水収容部に収容されたリモナイト含有水におけるリモナイトを均一に分布させた状態に保たせるという作用をもたらす。
【0012】
また、本発明の熱分解ガス浄化装置において、上記熱分解ガス浄化部は、上記リモナイト含有水を貯える貯水部と、上記熱分解ガス供給部から供給された上記熱分解ガスに対して上記貯水部に貯水された上記リモナイト含有水を噴霧する噴霧部とを備えたことを特徴とする。これにより、熱分解ガスにリモナイト含有水を噴霧することにより熱分解ガスを浄化させるという作用をもたらす。
【0013】
また、本発明の熱分解ガス浄化装置において、上記貯水部は、上記噴霧部により噴霧されたリモナイト含有水を受けて貯水し、上記貯水部に貯水されたリモナイト含有水を上記噴霧部に供給するリモナイト含有水供給部をさらに具備することを特徴とする。これにより、熱分解ガスに噴霧するリモナイト含有水を循環させて利用させるという作用をもたらす。
【0014】
また、本発明の熱分解ガス浄化装置において、上記熱分解ガス供給部から供給された上記熱分解ガスの通路にリモナイトを含む多孔質性の熱分解ガス浄化部材を少なくとも1つさらに設けたことを特徴とする。これにより、リモナイトを含む多孔質性の熱分解ガス浄化部材に熱分解ガスを通すことにより熱分解ガスを浄化させるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リモナイトを含有したリモナイト含有水により熱分解ガスを浄化させるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置100の一例を示す図である。本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置100は、熱分解の対象である熱分解対象物を熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化するものでる。図1において熱分解対象物は熱分解炉300において低温熱分解温度で熱分解され、その結果発生する熱分解ガスが熱分解ガス浄化装置100において浄化される。
【0018】
なお、熱分解炉300において低温熱分解温度よりも高い温度で熱分解対象物を熱分解させた際に発生する熱分解ガスも熱分解ガス浄化装置100において浄化することは可能であるが、以下の説明では、熱分解炉300において低温熱分解温度で熱分解対象物を熱分解させた際に発生する熱分解ガスを熱分解ガス浄化装置100に処理させることを想定して説明する。
【0019】
また、本発明において熱分解ガスを浄化するとは、熱分解ガス中に含まれる有害ガス成分を除去することを言う。また、本発明において低温熱分解温度とは、対象物を燃焼した際にダイオキシンを発生させない温度を言い、例えば50℃〜300℃程度の温度を言う。
【0020】
また、熱分解対象物を低温熱分解温度で熱分解した際に発生する熱分解ガスの成分として、CO、HO等が想定される。また、熱分解対象物の材質によっては、熱分解ガス中にHS、HCl、Cl、NO等がさらに含まれることがある。上記の熱分解ガスの成分のCO、HS、HCl、Cl、NO等は、本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置100により除去することができる。以下、本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置100について説明する。
【0021】
熱分解ガス浄化装置100は、上記説明したように熱分解対象物を低温熱分解温度で熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化するものであり、熱分解ガス供給部10と、熱分解ガス浄化部20とを備える。
【0022】
熱分解ガス供給部10は、外部から熱分解ガスを取り入れて熱分解ガス浄化部20に熱分解ガスを供給するものであり、本発明の実施の形態において熱分解ガス供給部10は、吸引部11と、熱分解ガス分離部12と、熱分解ガス通路管13および14と、気体通路管15と、液体通路管16とを備える。
【0023】
吸引部11は、外部から熱分解ガスを吸引するものである。図1において吸引部11は、熱分解炉300において発生した熱分解ガスを直接吸引する構成になっているが、これに限るものではない。吸引部11によって吸引されると熱分解炉300において発生した熱分解ガスは、熱分解ガス通路管13および14を通じて熱分解ガス分離部12に送られる。
【0024】
熱分解ガス分離部12は、吸引部11によって吸引された熱分解ガスに含まれる気体と液体を分離するものである。熱分解ガス分離部12として、例えばコーン形状のコーン部材が想定されるが、これに限るものではない。熱分解ガス分離部12によって分離された熱分解ガス中の気体は、気体通路管15を通じて熱分解ガス浄化部20に送られる。
【0025】
一方、熱分解ガス分離部12によって分離された熱分解ガス中の液体は、液体通路管16を通じて熱分解ガス浄化部20に送られる。なお、熱分解ガス分離部12によって分離された熱分解ガス中の液体を熱分解ガス浄化部20に送る構成ではなく、熱分解ガス浄化装置100外に排出する構成であっても良い。
【0026】
熱分解ガス浄化部20は、リモナイトを含んだリモナイト含有水により熱分解ガス供給部10から供給された熱分解ガスを浄化するものであり、熱分解ガス噴霧浄化部21と、リモナイト含有水浄化部22と、部材浄化部23と、熱分解ガス通路管24および25と、熱分解ガス排出管26とを備える。
【0027】
なお、本発明においてリモナイトとは、褐鉄鉱(limonite)のことを言い、その主成分は、Fe、Fe、FeO、HO等である。また、本発明においてリモナイトを含んだリモナイト含有水として、リモナイトの粉粒体を水に溶かしたものが想定されるが、これに限るものではない。
【0028】
熱分解ガス噴霧浄化部21は、気体通路管15を通じて熱分解ガス供給部10から供給された熱分解ガスに対してリモナイト含有水を噴霧して熱分解ガスを浄化するものであり、噴霧浄化室211と、噴霧部212と、貯水部213と、リモナイト含有水供給部214とを備える。
【0029】
噴霧浄化室211は、気体通路管15を通じて熱分解ガス供給部10から供給された熱分解ガスを収容する領域である。噴霧部212は、リモナイト含有水を熱分解ガスに噴霧するものである。貯水部213は、噴霧部212より噴霧されたリモナイト含有水を貯えるものであり、噴霧浄化室211の下部に設けられている。
【0030】
リモナイト含有水供給部214は、噴霧部212にリモナイト含有水を供給するものであり、ポンプ部214aと、リモナイト含有水通路管214bおよび215cとを備える。リモナイト含有水通路管214bは、一端が貯水部213と接続されており、他端がポンプ部214aと接続されている。また、リモナイト含有水通路管214cは、一端が噴霧部212と接続されており、他端がポンプ部214aと接続されている。
【0031】
ポンプ部214aを作動させると、リモナイト含有水通路管214bおよび214cを通じて貯水部213に貯められているリモナイト含有水が噴霧部212に供給される。そして、噴霧部212はそのリモナイト含有水を噴霧する。噴霧されたリモナイト含有水は貯水部213において貯められる。
【0032】
熱分解ガスにリモナイト含有水を噴霧すると、後述するように熱分解ガス中からCOを除去できることが出願人において確認された。また、HSはリモナイトにより吸着されることが一般的に知られている。したがって、熱分解ガスにリモナイト含有水を噴霧すると、熱分解ガス中からHSを除去することができる。
【0033】
また、HCl、Cl、NO等の水溶性の気体は、リモナイト含有水における水成分に溶けるため、熱分解ガス中からHCl、Cl、NO等も除去することができる。したがって、熱分解ガス噴霧浄化部21に熱分解ガスを供給すると、熱分解ガス中に含まれるCO、HS、HCl、Cl、NO等の有害ガス成分を除去することができる。
【0034】
リモナイト含有水浄化部22は、熱分解ガス通路管24を通じて熱分解ガス噴霧浄化部21から供給された熱分解ガスをリモナイト含有水中に送り込むことによって熱分解ガスを浄化するものであり、リモナイト含有水収容部221と、リモナイト含有水攪拌部222とを備える。
【0035】
リモナイト含有水収容部221は、リモナイト含有水を収容するものである。熱分解ガス通路管24を通じて供給された熱分解ガスは、リモナイト含有水収容部221中を通って熱分解ガス通路管25から出て行く。
【0036】
リモナイト含有水に熱分解ガスを通すと、後述するように熱分解ガス中からCOを除去できることが出願人において確認された。また、上記説明したようにHSはリモナイトにより吸着されることが一般的に知られている。したがって、リモナイト含有水収容部221におけるリモナイト含有水中に熱分解ガスを通すと、熱分解ガス中からHSを除去することができる。
【0037】
また、HCl、Cl、NO等の水溶性の気体は、リモナイト含有水における水成分に溶けるため、熱分解ガス中からHCl、Cl、NO等も除去することができる。したがって、リモナイト含有水浄化部22に熱分解ガスを供給すると、熱分解ガス中に含まれるCO、HS、HCl、Cl、NO等の有害ガス成分を除去することができる。
【0038】
リモナイト含有水攪拌部222は、リモナイト含有水収容部221中に収容されたリモナイト含有水を攪拌するものである。リモナイト含有水攪拌部222は、例えば気泡供給部223と気泡通路管224とにより構成することが想定される。
【0039】
気泡供給部223は、気泡通路管224を通じてリモナイト含有水収容部221に気泡を供給するものである。リモナイト含有水収容部221に気泡を供給すると、リモナイト含有水収容部221中のリモナイト含有水は攪拌された状態になる。これにより、リモナイト含有水中のリモナイトが沈殿することを防ぐことができると伴に、リモナイト含有水中のリモナイトを均一に分布させることができるため、熱分解ガス中のCOおよびHSを効率よく除去することができる。
【0040】
なお、上記説明したリモナイト含有水攪拌部222の構成は一例であってその他のモナイト含有水を攪拌する構成を除外するものではない。また、リモナイト含有水攪拌部222を除外した構成であってもよい。この場合、熱分解ガス通路管24を通じて供給される熱分解ガスに上記説明した気泡の役割をさせることになる。すなわち、熱分解ガス通路管24を通じて供給される熱分解ガスの勢いにより、リモナイト含有水収容部221中のリモナイト含有水は攪拌された状態になる。
【0041】
部材浄化部23は、熱分解ガス通路管25を通じてリモナイト含有水浄化部22から供給された熱分解ガスを熱分解ガス浄化部材により浄化するものであり、部材浄化室231と、熱分解ガス浄化部材232aおよび232bとを備える。
【0042】
部材浄化室231は、熱分解ガス通路管25を通じてリモナイト含有水浄化部22から供給された熱分解ガスを収容する領域である。熱分解ガス浄化部材232aおよび232bは、リモナイトを含む多孔質性の部材であり、部材浄化室231に取り付けられる。熱分解ガス浄化部材232aおよび232bは、部材浄化室231に供給された熱分解ガス全てが熱分解ガス浄化部材232aおよび232bを通過するような位置に取り付ける。部材浄化室231に供給された熱分解ガスは、熱分解ガス浄化部材232aおよび232bを通過して熱分解ガス排出管26から排出される。
【0043】
上記説明したように熱分解ガスをリモナイト含有水に通したり、また、熱分解ガスにリモナイト含有水を噴霧すると熱分解ガス中のCOが除去されることが出願人により確認されている。これは、リモナイト含有水中のリモナイトによりCOが除去されているためであると考えられる。
【0044】
リモナイトを含んだ熱分解ガス浄化部材232aおよび232bに熱分解ガスを通すと、上記の説明したリモナイトのCO除去作用により熱分解ガス浄化部材232aおよび232b中のリモナイトにより熱分解ガス中のCOが除去されると推測される。
【0045】
また、上記説明したようにHSはリモナイトにより吸着されることが一般的に知られている。したがって、熱分解ガス浄化部材232aおよび232bに熱分解ガスを通すと、熱分解ガス中からHSを除去することができる。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化部材232aの一例を示す図である。なお、熱分解ガス浄化部材232bは、熱分解ガス浄化部材232aと同様である。
【0047】
熱分解ガス浄化部材232aは、具体的には図2に示すように多数の細孔をもつリモナイトの粉粒体を含んだ多孔質性の部材である。熱分解ガス浄化部材232aはリモナイトの粉粒体を均一に含んでいる。熱分解ガス浄化部材232aは多数の細孔をもつため、熱分解ガスは熱分解ガス浄化部材232a中に入り込んで通過することができる。熱分解ガスが熱分解ガス浄化部材232a中に入り込むと、上記説明したように熱分解ガス中のCOおよびHSが除去されると考えられる。
【0048】
なお、熱分解ガス浄化部材232aは、リモナイトの粉粒体他にベントナイトの粉粒体を含む構成であってもよい。本発明においてベントナイトとは、モンモリモナイトを主成分としたものである。モンモリモナイトは、例えばSIOが約58重量%、ALが約23重量%、Feが約4重量%、MgOが約3重量%、CaOが約2重量%含まれたものである。
【0049】
図3は、本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置400の一例を示す図である。なお、熱分解ガス浄化装置400において熱分解ガス浄化装置100と同様の構造および機能を有する部分については、熱分解ガス浄化装置100で用いた名称および符号を用いることとする。
【0050】
熱分解ガス浄化装置400は、熱分解ガス供給部410と、熱分解ガス浄化部20とを備える。熱分解ガス浄化部20は、図1において説明済みであるため、説明を省略する。熱分解ガス供給部410は、外部から熱分解ガスを取り入れて熱分解ガス浄化部20に熱分解ガスを供給するという機能面では、熱分解ガス浄化装置100における熱分解ガス供給部10と同様であるが、構造が相違する。
【0051】
すなわち、熱分解ガス供給部410は、熱分解ガス浄化装置100における吸引部11と、熱分解ガス分離部12と、熱分解ガス通路管13および14とを取り除き、気体通路管15のみの構造である。
【0052】
吸引部11と、熱分解ガス分離部12と、熱分解ガス通路管13および14とに相当する部分は、熱分解ガス浄化装置400外に別途熱分解ガス吸引装置500として取り付けるようにしてもよい。これにより、熱分解ガス浄化装置400の構造を熱分解ガス浄化装置100よりも簡略化することができる。
【0053】
なお、熱分解ガス浄化装置400においては、熱分解ガス分離部12において分離された液体は液体通路管16より外部に排水される構造となっているが、これに限るものではなく、熱分解ガス浄化装置100において示したように熱分解ガス分離部12において分離された液体は液体通路管16より貯水部213に送られるようにしてもよい。
【0054】
次に本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置の動作について熱分解ガス浄化装置400の斜視図を参照して説明する。なお、熱分解ガス浄化装置100と熱分解ガス浄化装置400との相違点は、熱分解ガス供給部10と熱分解ガス供給部410との構造であり、その相違点は熱分解ガスの浄化作用に関係しないため、熱分解ガス浄化装置400を用いた熱分解ガス浄化装置の動作の説明はそのまま熱分解ガス浄化装置100にも当てはまる。また、熱分解ガス中の除去すべき有害ガス成分として、CO、HS、HCl、Cl、NOに着目して熱分解ガス浄化装置の動作について以下説明する。
【0055】
図4は、熱分解ガス浄化装置400の斜視図である。噴霧浄化室211の上面部付近に位置する噴霧部212からは、リモナイト含有水が噴霧されている。熱分解ガス600は、熱分解ガス供給部410より噴霧浄化室211に供給されると、噴霧部212により噴霧された霧状のリモナイト含有水中を通過する。
【0056】
霧状のリモナイト含有水を噴霧された熱分解ガス600中のHCl、Cl、NOは、リモナイト含有水中の水成分により除去される。また、霧状のリモナイト含有水を噴霧された熱分解ガス600中のCO、HSは、リモナイト含有水中のリモナイトにより除去される。これにより、霧状のリモナイト含有水中を通過した熱分解ガス600中のCO、HS、HCl、Cl、NOの量は低減される。
【0057】
なお、噴霧部212により噴霧された霧状のリモナイト含有水は、貯水部213に貯められる。そして、貯水部213に貯められたリモナイト含有水は、ポンプ部214aにより汲み上げられリモナイト含有水通路管214bおよび214cを通じて噴霧部212に供給される。
【0058】
噴霧浄化室211において霧状のリモナイト含有水を噴霧された熱分解ガス600は、次に熱分解ガス通路管24を通ってリモナイト含有水収容部221に向かう。そして、その熱分解ガス600は、リモナイト含有水収容部221に収容されたリモナイト含有水中を通過して部材浄化室231に向かう。
【0059】
熱分解ガス600がリモナイト含有水収容部221に収容されたリモナイト含有水中に入ると、熱分解ガス600中に残存するHCl、Cl、NOは、リモナイト含有水収容部221に収容されたリモナイト含有水中の水成分により除去される。また、熱分解ガス600中に残存するCO、HSは、リモナイト含有水収容部221に収容されたリモナイト含有水中のリモナイトにより除去される。これにより、熱分解ガス600中のCO、HS、HCl、Cl、NOの量はさらに低減される。
【0060】
なお、熱分解ガス600がリモナイト含有水収容部221に入る際の勢いにより、リモナイト含有水収容部221中のリモナイト含有水が攪拌されるため、図4の熱分解ガス浄化装置400においてリモナイト含有水攪拌部222は省略してある。
【0061】
リモナイト含有水収容部221を通過した熱分解ガス600は、部材浄化室231に向かう。そして、その熱分解ガス600は、熱分解ガス浄化部材232aおよび232bを通過して熱分解ガス排出管26から排出される。
【0062】
熱分解ガス600が熱分解ガス浄化部材232aおよび232bに入ると、熱分解ガス600中に残存するCO、HSは、熱分解ガス浄化部材232aおよび232bに含まれるリモナイトにより除去される。これにより、熱分解ガス600中のCO、HSの量はさらに低減される。
【0063】
次に、出願人が図4に示す熱分解ガス浄化装置400から熱分解ガス浄化部材232aおよび232bを取り除いた熱分解ガス浄化装置700を用いて行った熱分解ガス中のCOの除去の実験結果について説明する。なお、以下において用いる熱分解ガス浄化装置700における各部の名称および符号は、図4に示す熱分解ガス浄化装置400において用いた名称および符号と同様の符号を用いることとする。
【0064】
実験においてまず、熱分解炉において石膏ボードを低温熱分解温度で熱分解させた。石膏ボードの上記熱分解において用いた点火材料は紙である。石膏ボードを低温熱分解温度で熱分解させた際に発生する熱分解ガスを熱分解ガス浄化装置700において浄化させる。そして、熱分解ガス浄化装置700における熱分解ガス排出管26から排出された熱分解ガス中のCO濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0065】
なお、熱分解ガス浄化装置700において用いたリモナイトの成分は、Fe、Fe、FeO等であり、それぞれ順に約69重量%(Fe)、約51重量%(Fe)、3.55重量%(FeO)の割合でリモナイトを構成している。また、熱分解ガス浄化装置700におけるリモナイト含有水として、上記割合で成分構成されたリモナイトの粉粒体を水に溶かしたものを用いた。
【0066】
熱分解ガス浄化装置700において浄化させた熱分解ガスのCO濃度の測定は、外気温16.5℃において行った。表1において測定時は、測定を行った時刻を示す。また、表1において熱分解炉温度は、熱分解炉内の温度を示す。また、表1において吸引速度は、熱分解炉から排出される熱分解ガスを吸引して熱分解ガス浄化装置700における熱分解ガス供給部410に送り込む速度を示す。また、表1においてCO濃度は、熱分解ガス排出管26から排出された熱分解ガスのCO濃度を示す。なお、上記熱分解炉において低温熱分解温度で熱分解を行った際に上記熱分解炉から排出される熱分解ガス中のCO濃度は、約2000〜3000(ppm)程度の濃度である。
【0067】
表1によると、熱分解炉300から発生する熱分解ガスの吸引速度を2.1(m/s)とした場合は、熱分解ガス排出管26から排出された熱分解ガスのCO濃度は、160〜250(ppm)の範囲内にある。この結果を見れば明らかなように、熱分解ガス浄化装置100は熱分解炉から排出された熱分解ガス中のCO濃度を約1/10程度まで低減した。
【0068】
次に、熱分解炉から発生する熱分解ガスの吸引速度を1.6(m/s)としたところ、吸引速度が2.1(m/s)の場合に比べてCO濃度が低くなっていった。熱分解炉から発生する熱分解ガスの吸引速度を1.6(m/s)としてから53分後の22:00分には、熱分解ガス排出管26から排出された熱分解ガスのCO濃度は22(ppm)にまで下がっている。その後のCO濃度は高くとも36(ppm)であった。
【0069】
熱分解炉300から発生する熱分解ガスの吸引速度を1.6(m/s)にした後に、熱分解ガス排出管26から排出された熱分解ガスのCO濃度が低くなったのは、吸引速度が2.1(m/s)の場合に比べて吸引速度が1.6(m/s)の場合の方が熱分解ガス浄化装置700中の熱分解ガスの移動速度が遅いため、熱分解ガスにリモナイト含有水が接触する度合いが大きくなったためであると推測される。
【0070】
以上から分かるように、リモナイト含有水を熱分解ガスに噴霧したり、リモナイト含有水中を熱分解ガスに通過させると熱分解ガスのCO濃度が低くなる。これは、リモナイト含有水を熱分解ガスに接触させると、熱分解ガス中のCOが除去されるためである。
【0071】
このように、本発明の実施の形態によれば、熱分解ガス噴霧浄化部21、リモナイト含有水浄化部22および部材浄化部23に熱分解ガスを通すだけで熱分解ガス中の有害ガス成分を除去することができる。
【0072】
なお、本発明の実施の形態では、熱分解ガス浄化装置100および400を熱分解ガス噴霧浄化部21、リモナイト含有水浄化部22、部材浄化部23の順に並べて構成しているが、これに限るものではない。すなわち、熱分解ガス噴霧浄化部21、リモナイト含有水浄化部22、部材浄化部23を並べる順番を変えて構成した熱分解ガス浄化装置であってもよい。また、熱分解ガス噴霧浄化部21、リモナイト含有水浄化部22、部材浄化部23の少なくとも1つを備えた熱分解ガス浄化装置であってもよい。
【0073】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の活用例として、例えば熱分解対象物を低温熱分解温度で熱分解した際に発生する熱分解ガスの有害成分を除去する際に本発明を適用することができる。また、熱分解対象物を低温熱分解温度よりも高温で熱分解した際に発生する熱分解ガスの有害成分を除去する際にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置100の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化部材232aの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置400の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における熱分解ガス浄化装置400の斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
10 熱分解ガス供給部
11 吸引部
12 熱分解ガス分離部
13、14 熱分解ガス通路管
15 気体通路管
16 液体通路管
20 熱分解ガス浄化部
21 熱分解ガス噴霧浄化部
22 リモナイト含有水浄化部
23 部材浄化部
24、25 熱分解ガス通路管
26 熱分解ガス排出管
100、400、700 熱分解ガス浄化装置
211 噴霧浄化室
212 噴霧部
213 貯水部
214 リモナイト含有水供給部
214a ポンプ部
214b、214c リモナイト含有水通路管
221 リモナイト含有水収容部
222 リモナイト含有水攪拌部
223 気泡供給部
224 気泡通路管
231 部材浄化室
232a、232b 熱分解ガス浄化部材
300 熱分解炉
410 熱分解ガス供給部
500 熱分解ガス吸引装置
600 熱分解ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモナイトを含んだリモナイト含有水により熱分解対象物を熱分解した際に発生する熱分解ガスを浄化する熱分解ガス浄化部と、
外部から前記熱分解ガスを取り入れて前記熱分解ガス浄化部に前記熱分解ガスを供給する熱分解ガス供給部と
を具備することを特徴とする熱分解ガス浄化装置。
【請求項2】
前記熱分解ガス浄化部は、前記リモナイト含有水を収容するリモナイト含有水収容部からなり、
前記熱分解ガス供給部から供給された前記熱分解ガスは、前記リモナイト含有水収容部に収容された前記リモナイト含有水中を通過することにより浄化されることを特徴とする請求項1記載の熱分解ガス浄化装置。
【請求項3】
前記リモナイト含有水収容部に収容された前記リモナイト含有水を攪拌するリモナイト含有水攪拌部をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の熱分解ガス浄化装置。
【請求項4】
前記熱分解ガス浄化部は、
前記リモナイト含有水を貯える貯水部と、
前記熱分解ガス供給部から供給された前記熱分解ガスに対して前記貯水部に貯水された前記リモナイト含有水を噴霧する噴霧部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱分解ガス浄化装置。
【請求項5】
前記貯水部は、前記噴霧部により噴霧されたリモナイト含有水を受けて貯水し、
前記貯水部に貯水されたリモナイト含有水を前記噴霧部に供給するリモナイト含有水供給部をさらに具備することを特徴とする請求項4記載の熱分解ガス浄化装置。
【請求項6】
前記熱分解ガス供給部から供給された前記熱分解ガスの通路にリモナイトを含む多孔質性の熱分解ガス浄化部材を少なくとも1つさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の熱分解ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−39607(P2009−39607A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204998(P2007−204998)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(501071732)
【Fターム(参考)】