説明

熱制御のためのマイクロ流体システム及び方法

本発明は、複数のマイクロ流体チャネルを有する集積薄膜装置を制御する方法及び装置に関する。一実施の形態では、複数のマイクロ流体チャネル及び複数の多重化抵抗熱検出器(RTD)を有するマイクロ流体チップを備えるマイクロ流体装置が提供される。RTDのそれぞれは、マイクロ流体チャネルのうちの1つと関連付けられる。RTDは、個別電極と共通電極対を通じて電源に接続される。隣接するRTDは交番極性で駆動することができ、共通電極内の電流は仮想接地回路を用いて最小化することができる。コンパクトマイクロ流体装置は、高速加熱及び非常に精密な熱制御が可能である。コンパクトマイクロ流体装置は、RTDを用いて、加熱性能なしで温度を感知することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的反応を実施するためのマイクロ流体装置及びマイクロ流体装置の温度制御に関する。より詳細には、本発明は、マイクロ流体装置内の集積抵抗加熱素子の温度を求めて制御するシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される2009年6月29日に出願された米国仮特許出願第61/221,452号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
核酸の検出は、医学、法医学、産業加工、動植物育種、及び多くの他の分野において中心的な役割を果たす。病状(例えば癌)、感染性微生物(例えばHIV)、遺伝系統、遺伝子マーカー等を検出する能力は、疾患の診断及び予後診断、マーカー利用選抜、犯罪現場の特徴の鑑識、産業微生物を繁殖させる能力、及び多くの他の技法に関して広く普及している技術である。関心対象の核酸の完全性の判断は、感染症又は癌の病理学と関係することができる。
【0004】
少量の核酸を検出するのに最も強力でありかつ基本的である技術の1つは、核酸配列の一部又は全部を何度も複製してから、増幅産物を解析する方法である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、デオキシリボ核酸(DNA)を増幅させる既知の技法である。PCRを用いて、単一の鋳型DNA分子から開始して何百万ものDNAコピーを生成することができる。PCRは、「変性」、「アニーリング」、及び「伸長」という段階を含む。これらの段階は、プロセス終了時に、検出し解析するのに十分なコピーがあるように、数回繰り返されるサイクルの一環である。PCRに関する全般的な詳細に関しては、非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3を参照されたい。
【0005】
変性、アニーリング、及び伸長というPCRプロセス段階は、異なる温度で行われ、標的DNA分子試料に自身を複製させる。温度循環(熱循環)要件は、特定の核酸試料及びアッセイで異なる。変性段階では、二本鎖DNA(dsDNA)が、1本鎖DNA(ssDNA)に熱的に分離する。アニーリング段階中、プライマーが一本鎖DNA分子に付着する。一本鎖DNA分子は、伸長段階において、PCR溶液内のヌクレオチドと一本鎖DNAとの特定の結合を通じて再び二本鎖DNAに成長する。通常の温度は、変性の場合は95℃、アニーリングの場合は55℃、及び伸長の場合は72℃である。温度は、各段階で、1秒の数分の一から最長で数十秒とすることができる或る特定の時間量にわたって維持される。DNAは、各サイクルで2倍になり、一般に、或る特定の用途に十分なDNAを生成するまでに、20サイクル〜40サイクルがかかる。標的産物の良好な収率を有するためには、異なる段階での試料の温度を指定された温度に正確に制御する必要がある。
【0006】
最近、PCR及び他の増幅反応の実施に対し、いくつかの高スループット手法、例えば、マイクロ流体装置内での増幅反応、並びに増幅された核酸を装置内又は装置上で検出し解析する方法を伴う手法が開発されている。増幅のための試料の熱循環は通常、2つの方法のうちの一方において達成される。第1の方法では、試料溶液を装置内に装填し、従来のPCR機器と略同様に、時間とともに温度を循環的に変化させる。第2の方法では、試料溶液を空間的に異なる温度ゾーンを通して連続的にポンプ注入する。例えば、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、Hahn他の特許文献1、Enzelberger他の特許文献2、及びKnapp他の特許文献3を参照されたい。
【0007】
多くの検出方法では、DNAを特徴付けるためには、元のDNA分子の決められた多数のコピー(例えば、数百万)が必要である。サイクルの総数は所望のコピー数に関して一定であるため、プロセス時間を低減する唯一の方法はサイクルの長さを低減することである。したがって、総プロセス時間は、試料をプロセス段階温度に迅速に加熱及び冷却しながら、プロセス段階持続時間にわたってそれらの温度を正確に維持することにより、大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/075683号
【特許文献2】米国特許第6,960,437号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0042639号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sambrook及びRussell「Molecular Cloning - A Laboratory Manual (3rd Ed.)」Vols. 1-3」(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y. (2000))
【非特許文献2】F. M. Ausubel他編「Current Protocols in Molecular Biology」(Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates Inc.及びJohn Wiley & Sons社(2005年に増補))
【非特許文献3】M. A. Innis他編「PCR Protocols A Guide to Methods and Applications」(Academic Press Inc. San Diego, Calif. (1990))
【非特許文献4】Lagally他(Analytical Chemistry 73: 565〜570(2001))
【非特許文献5】Kopp他(Science 280: 1046〜1048(1998))
【非特許文献6】Park他(Analytical Chemistry 75: 6029〜6033(2003))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、当該技術分野において、高速加熱及び非常に精密な熱制御が可能なコンパクトマイクロ流体装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マイクロ流体装置の高速加熱及び非常に精密な熱制御が可能なシステム及び方法に関する。いくつかの実施の形態では、これは、マイクロ流体装置内の集積薄膜抵抗熱検出器の温度を精密に求めて制御するシステム及び方法により達成される。本発明は、マイクロ流体装置の高品質の温度測定が可能なシステム及び方法にも関する。
【0012】
一態様では、本発明は、マイクロ流体装置と、加熱器制御・測定回路とを備えるマイクロ流体システムを提供する。一実施の形態では、前記マイクロ流体装置は、複数のマイクロチャネルと、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分にそれぞれ隣接する複数の抵抗温度検出器(RTD)と、前記複数のRTDのそれぞれに接続された第1の共通電極と、前記第1の共通電極及び前記複数のRTDのそれぞれに接続された第2の共通電極と、を備える。一実施の形態では、前記加熱器制御・測定回路は、(i)交番極性を有する加熱器制御信号で前記複数のRTDを駆動し、それによって前記複数のうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、(ii)前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化し、(iii)前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知し、(iv)前記複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記加熱器制御信号を更新するように構成される。
【0013】
いくつかの実施の形態では、前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分は、前記マイクロ流体装置のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)熱ゾーン又は前記マイクロ流体装置の熱融解ゾーンに配置される。また、前記加熱器制御・測定回路は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロファイル又は温度ランプ(ramp)プロファイルに基づいて前記加熱器制御信号を生成するように構成されるシステムコントローラーを備えることができる。
【0014】
いくつかの実施の形態では、前記マイクロ流体装置は、第2の複数のRTDと、前記第2の複数のRTDのそれぞれに接続された第3の共通電極と、前記第3の共通電極、及び前記第2の複数のRTDのそれぞれに接続された第4の共通電極と、を更に備え、前記加熱器制御・測定回路は、(i)交番極性を有する加熱器制御信号で前記第2の複数のRTDを駆動し、それによって前記第2の複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、(ii)前記第3の共通電極及び前記第4の共通電極内の電流を最小化し、(iii)前記第2の複数のRTDのそれぞれの温度を感知し、(iv)前記第2の複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記加熱器制御信号を更新するように更に構成される。
【0015】
いくつかの実施の形態では、前記加熱器制御・測定回路は、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより、前記加熱器制御信号を更新するように構成される。前記加熱器制御信号は、交流電流信号とすることができ、前記加熱器制御信号は、前記加熱器制御信号が互いに180度の位相ずれの場合、逆の極性を有することができる。
【0016】
別の態様では、本発明は、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器(RTD)を個々に制御する方法であって、前記RTDはそれぞれ、複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接する。前記方法は、前記複数のRTDを駆動する、交番極性を有する加熱器制御信号を生成するステップと、前記加熱器制御信号を前記複数のRTDに供給するステップであって、それによって前記複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにすること、第1の共通電極及び第2の共通電極内の電流を最小化するステップであって、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極はそれぞれ、前記複数のRTDの各RTDに接続されるようにすること、前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知するステップと、前記複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記加熱器制御信号を更新するステップと、を含む。前記加熱器制御信号は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロファイル又は温度ランププロファイルに基づいて生成され、更新される。前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化することは、前記複数のRTDに供給される前記加熱器制御信号の電流間の電流不平衡を求めることを含むことができる。また、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化することは、前記求められた電流不平衡をソーシング/シンキングすることを含むことができる。本方法は、前記加熱器制御信号が、最小電圧制限未満の電圧を有しないようにすることも含むことができる。
【0017】
いくつかの実施の形態では、前記マイクロ流体装置は、第2の複数のRTDを備え、前記方法は、前記第2の複数のRTDを駆動する、交番極性を有する第2の加熱器制御信号を生成すること、前記第2の加熱器制御信号を前記第2の複数のRTDに供給することであって、それによって前記第2の複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する第2の加熱器制御信号で駆動されるようにし、第3の共通電極及び第4の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第3の共通電極及び前記第4の共通電極はそれぞれ、前記第2の複数のRTDの各RTDに接続されるようにし、前記第2の複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、及び前記第2の複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記第2の加熱器制御信号を更新すること、を更に含む。
【0018】
前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの第2の一部分に隣接することができる。前記複数のRTDを駆動する加熱器制御信号は、前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネル内に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)が増幅されるように生成することができる。前記第2の複数のRTDを駆動する第2の加熱器制御信号は、前記第2の複数のRTDの温度の勾配を与える(ramp)ように生成することができる。前記DNAの増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じて達成することができる。
【0019】
前記マイクロ流体装置は、第2の複数のマイクロチャネルを備えることができる。前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接することができる。前記第1の複数のRTD及び前記第2の複数のRTDをそれぞれ駆動する前記第1の加熱器制御信号及び前記第2の加熱器制御信号は、前記複数のマイクロチャネル及び前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分内に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)が増幅されるように生成することができる。前記DNAの増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じて達成される。
【0020】
前記マイクロ流体装置は、第2の複数のマイクロチャネルを更に備えることができ、前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第1の複数のRTD及び前記第2の複数のRTDをそれぞれ駆動する前記第1の加熱器制御信号及び第2の加熱器制御信号は、前記第1の複数のRTD及び前記第2の複数のRTDの温度の勾配を与えるように生成される。
【0021】
いくつかの実施の形態では、前記加熱器制御信号は、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより更新される。前記加熱器制御信号は、交流電流信号とすることができ、前記加熱器制御信号は、前記加熱器制御信号が互いに180度の位相ずれの場合、逆の極性を有する。
【0022】
いくつかの態様では、本発明は、マイクロ流体装置と、加熱器制御・測定回路とを備えるマイクロ流体システムを提供する。前記マイクロ流体装置は、第1のマイクロチャネルと、第2のマイクロチャネルと、第1の電極と、第2の電極と、第1の共通電極と、第2の共通電極と、前記第1のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第1の電極、前記第1の共通電極、及び前記第2の共通電極に接続された第1の抵抗温度検出器(RTD)と、前記第2のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第2の電極、前記第1の共通電極、及び前記第2の共通電極に接続された第2のRTDと、を備えることができる。前記加熱器制御・測定回路は、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極に関連付けられ、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化するように構成される仮想接地回路と、第1のRTD制御回路と、第2のRTD制御回路とを備えることができる。前記仮想接地回路は、(i)前記第1の共通電極に接続された入力、及び(ii)前記第2の共通電極に接続された出力を有することができる。前記第1のRTD制御回路は、(i)前記第1の共通電極に接続された入力、及び(ii)前記第1の電極に接続されたRTD制御出力を有することができる。前記第2のRTD制御回路は、(i)前記第1の共通電極に接続された入力、及び(ii)前記第2の電極に接続されたRTD制御出力を有することができる。前記加熱器制御・測定回路は、前記第1のRTD及び前記第2のRTDが逆の極性で駆動されるように構成される。
【0023】
別の態様では、本発明は、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の第1の抵抗熱検出器(RTD)及び第2の抵抗熱検出器を個々に制御する方法であって、前記第1のRTDは前記マイクロ流体装置の第1のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第2のRTDは前記マイクロ流体装置の第2のマイクロチャネルの一部分に隣接する。前記方法は、前記第1のRTDを駆動する第1の加熱器制御信号及び前記第2のRTDを駆動する第2の加熱器制御信号を生成すること、前記第1のRTDに接続された第1の電極を用いて、前記第1の加熱器制御信号を前記第1のRTDに供給すること、前記第2のRTDに接続された第2の電極を用いて、前記第2の加熱器制御信号を前記第2のRTDに供給すること、第1の共通電極及び第2の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極はそれぞれ、前記第1のRTD及び前記第2のRTDに接続されるようにし、及び前記第1の共通電極から受信される信号を用いて、前記第1のRTDの温度及び前記第2のRTDの温度を感知すること、を含む。前記第1のRTD及び前記第2のRTDは、逆の極性で駆動することができる。
【0024】
別の態様では、本発明は、マイクロ流体装置と、RTD測定回路とを備えるマイクロ流体システムを提供する。前記マイクロ流体装置は、複数のマイクロチャネルと、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分にそれぞれ隣接する複数の抵抗温度検出器(RTD)と、前記複数のRTDのそれぞれに接続された第1の共通電極と、前記第1の共通電極、及び前記複数のRTDのそれぞれに接続された第2の共通電極と、を備えることができる。前記RTD測定回路は、(i)駆動信号を反転させて、反転駆動信号にし、(ii)前記複数のRTDを一つおきに前記駆動信号で駆動し、(iii)前記複数のRTDのうちの、前記駆動信号で駆動されないRTDを前記反転駆動信号で駆動し、(iv)前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化し、(v)前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知するように構成することができる。
【0025】
別の態様では、本発明は、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器(RTD)の温度を感知する方法であって、前記RTDはそれぞれ、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接する。前記方法は、駆動信号を生成すること、前記駆動信号を反転させて、反転駆動信号にすること、前記複数のRTDを一つおきに前記駆動信号で駆動すること、前記複数のRTDのうちの、前記駆動信号で駆動されないRTDを前記反転駆動信号で駆動すること、第1の共通電極及び第2の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第1の共有電極及び前記第2の共通電極はそれぞれ、前記複数のRTDの各RTDに接続されるようにし、及び前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、を含むことができる。
【0026】
別の態様では、本発明は、マイクロ流体装置と、加熱器制御・測定回路とを備えるマイクロ流体システムを提供する。前記マイクロ流体装置は、複数のマイクロチャネルと、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分にそれぞれ隣接する複数の抵抗温度検出器(RTD)と、前記複数のRTDのそれぞれに接続された共通電極と、を備えることができる。前記加熱器制御・測定回路は、(i)交番極性を有する加熱器制御信号で前記複数のRTDを駆動し、それによって前記複数のうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、(ii)前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知し、(iii)前記複数のRTDの前記感知された温度に従って、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより、前記加熱器制御信号を更新するように構成することができる。
【0027】
別の態様では、本発明は、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器(RTD)を個々に制御する方法であって、前記RTDはそれぞれ、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接する。前記方法は、前記複数のRTDを駆動する、交番極性を有する加熱器制御信号を生成すること、前記加熱器制御信号を前記複数のRTDに供給することであって、それによって前記複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、及び前記複数のRTDの前記感知された温度に従って、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより、前記加熱器制御信号を更新すること、を含むことができる。
【0028】
本発明の上記及び他の実施形態について、添付図面を参照して以下に説明する。
【0029】
本明細書に組み込まれて、本明細書の一部をなす添付図面は、本発明の様々な実施形態を示す。図面中、同様の参照番号が同一の要素又は機能が類似する要素を示す。さらに、参照番号の一番左側の数字は、その参照番号が最初に現れた図面を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態による、マイクロ流体システムの機能ユニットを示すブロック図である。
【図2】一実施形態による、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の上面図である。
【図3】一実施形態による、図2のマイクロ流体装置の多重化熱検出器の抵抗回路網の図である。
【図4】一実施形態による、加熱器制御・測定回路の機能ユニット、及び図2のマイクロ流体装置の電極とのそれらの接続を示すブロック図である。
【図5】一実施形態による、図4の加熱器制御・測定回路の機能ユニット、及び図2のマイクロ流体装置の電極とのそれらの接続の更なる詳細を示すブロック図である。
【図6】一実施形態による、単一の抵抗熱検出器の熱制御回路を示す概略図である。
【図7】一実施形態によるラインドライバーを示す概略図である。
【図8】一実施形態による仮想接地回路を示す概略図である。
【図9】一実施形態によるブリッジ構成を示す概略図である。
【図10A】マイクロ流体システムの実施形態に用いることができる低域フィルタリング構成を示す概略図である。
【図10B】マイクロ流体システムの実施形態に用いることができる低域フィルタリング構成を示す概略図である。
【図10C】マイクロ流体システムの実施形態に用いることができる低域フィルタリング構成を示す概略図である。
【図10D】マイクロ流体システムの実施形態に用いることができる低域フィルタリング構成を示す概略図である。
【図10E】マイクロ流体システムの実施形態に用いることができる低域フィルタリング構成を示す概略図である。
【図11】一実施形態による閉ループ熱制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】一実施形態による測定電圧/温度変換アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図13】仮想接地回路によってソーシング/シンキングされなければならない非均一熱負荷と組み合わせて、交番極性を用いて図2に示される加熱器のうちの8つを70℃に駆動することから生じる小さな電流不平衡の例を示す図である。
【図14】一実施形態による、単一の駆動信号を用いて、4つのセンサーの交番極性温度測定を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
マイクロ流体装置内の集積抵抗熱検出器の温度を求めて制御するシステム及び方法の実施形態について、図を参照して本明細書において説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態によるマイクロ流体システム100を示す。図1に示されるように、マイクロ流体システム100は、マイクロ流体装置101及び熱制御回路102を有する。熱制御回路102は、システムコントローラー103、加熱器制御・測定回路104、デジタル/アナログ変換器(DAC)105、及びアナログ/デジタル変換器(ADC)106を有する。DAC105及びADC106は、図1では、システムコントローラー103及び加熱器制御・測定回路104とは別個に示されるが、代替として、システムコントローラー103又は加熱器制御・測定回路104の一部とすることができる。加えて、熱制御回路102は、マイクロ流体装置101を監視する光学系107を含むことができる。
【0033】
コンパクトなマイクロ流体装置は、限られたスペース内に多数の機能を必要とする。一実施形態では、本発明は、分子診断に用いられる非常に効率的なマイクロ流体装置101である。考えられる2つの特定の用途は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び高分解能熱融解である。図2に示されるマイクロ流体装置101は、一実施形態により、薄膜抵抗温度検出器(RTD)212に隣接した複数のマイクロチャネル202を示した。例えば、非限定的な一実施形態では、マイクロチャネル202の下に、RTD212を重ねることができる。RTD212は、精密温度センサー及び高速応答加熱器として機能する。また、廃熱を低減し、別個の機能ゾーン204及び206をよりよく熱的に分離するために、薄膜RTDは、RTD212よりも導電性が高いリード線又は電極210及び211を含む。電極210及び211は、任意の適した導電性材料とすることができ、好ましい一実施形態では、金である。RTD212は、温度に対して良好な応答を示し、加熱器として使用可能な任意の適した抵抗性材料から作製することができる。適したRTD材料としては、白金及びニッケルが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
PCRは、DNA増幅を必要とする分子診断及び他のゲノミクス用途で最も一般的かつ重大なプロセスの1つである。PCRでは、標的DNA分子は、変性、アニーリング、及び伸長という3段階温度サイクルを通じて複製される。変性ステップでは、二本鎖DNAが1本鎖DNAに熱的に分離される。アニーリングステップでは、プライマーが一本鎖DNAにハイブリダイズする。伸長ステップでは、プライマーは、ポリメラーゼ酵素によりヌクレオチドを組み込んで、標的DNA分子上に延びる。
【0035】
通常のPCR温度は、変性の場合は95℃、アニーリングの場合は55℃、及び伸長の場合は72℃である。ステップ中の温度は、1秒の数分の一〜数秒の時間量にわたって維持することができる。原理上、DNAの量は、各サイクルで2倍になり、所望量の増幅を完了するには、約20サイクル〜40サイクルがかかる。標的産物の良好な収率を有するためには、各ステップでの試料の温度を各ステップの所望温度に制御する必要がある。プロセス時間を低減するためには、試料を所望の温度に非常に迅速に加熱・冷却するとともに、各サイクルでのDNA分子の合成を完了するために所望の時間長にわたり、それらの温度を維持する必要がある。これは、一実施形態によれば、加熱器として薄膜RTD212を有するマイクロ流体チップ101を用いて達成することができる。
【0036】
図2に示されるように、マイクロ流体装置101は、基板201を横切って延びる複数のマイクロ流体チャネル202を有することができる。図示される実施形態は、8本のチャネル202を示すが、より少数又はより多数のチャネルを含むこともできる。各チャネル202は、1つ又は複数の流入口203(図示される実施形態は、チャネル202毎に2つの流入口203を示す)及び1つ又は複数の流出口205(図示される実施形態は、チャネル202毎に1つの流出口205を示す)を含むことができる。各チャネルは、PCR熱ゾーン204を通って延びる第1の部分と、熱融解ゾーン206を通って延びる第2の部分とを含むことができる。シッパー(図示せず)を用いて、複数のマイクロ流体チャネル202内に液体を引き込むことができる。
【0037】
マイクロ流体装置200は、薄膜抵抗熱検出器(RTD)212の形態とすることができる加熱素子を更に含む。一実施形態では、1つ又は複数の加熱素子212は、各マイクロ流体チャネル202と関連付けられ、マイクロ流体チャネル202に隣接して配置される。例えば、各マイクロ流体チャネル202は、1つ又は複数の加熱素子212上の上方に(又は、に隣接して)配置することができる。図示される実施形態では、加熱素子212(1)〜(8)は、PCR熱ゾーン204内のマイクロ流体チャネル202と関連付けられ、加熱素子212(9)〜(16)は、熱融解ゾーン206に配置されたマイクロ流体チャネルと関連付けられる。例えば、非限定的な図示される実施形態では、加熱素子212(1)及び212(9)は、1本のマイクロ流体チャネル202と関連付けられ、加熱素子212(1)はPCR熱ゾーン204に配置され、加熱素子212(9)は熱融解ゾーン206に配置される。
【0038】
一実施形態では、加熱器電極210及び211は、電力を複数の加熱素子212に提供する。マイクロ流体装置101の基板201により提供される限られたスペースを最もよく利用するため、かつ必要な電気接続の数を低減するために、複数のRTDが一対の共通電極211を共有する。加熱器電極210及び211は、個別電極210及び共通電極211を含む。各対の共通電極は、例えば、第1の共通電極211(a)及び第2の共通電極211(b)を含む。共通電極対211は、マイクロ流体センサーを3線モードで制御できるようにする。
【0039】
非限定的な図示される実施形態では、16個のRTD加熱素子212(1)〜212(16)、16個の個別電極210(1)〜210(16)、及び4つの共通電極対211(1)〜211(4)がある。したがって、図2に示されるように、4つの第1の共通電極211(1a)〜211(4a)及び4つの第2の共通電極211(1b)〜211(4b)がある。各加熱素子212は、個別電極210及び一対の共通電極211に接続される。複数の加熱素子212は、一対の共通電極211を共有し、それにより、一対の共通電極211を用いて多重化される。例えば、RTD212(1)は、個別電極210(1)並びに一対の共通電極211(1a)及び211(1b)に接続される。図3は、一実施形態による、図2に示されるマイクロ流体装置101のRTD212並びに電極210及び211に関連付けられた薄膜抵抗回路網を示す。
【0040】
図2及び図3に示されるマイクロ流体装置101及び抵抗回路網は、4対の共通電極211のそれぞれに接続された4つの加熱素子212を有するが、より多数又はより少数のRTDを各共通電極対211を用いて多重化することもできる。さらに、より多数又はより少数の共通電極対211を用いて、より多数又はより少数の多重化された加熱素子セットを作ることもできる。
【0041】
一実施形態では、マイクロ流体装置101の加熱素子212のそれぞれは、高速加熱及び温度感知のために独立して制御される。その結果、PCR熱ゾーン204内のマイクロ流体チャネル202の温度は、熱融解ゾーン206内のマイクロ流体チャネル202の温度から独立して制御することができる。また、ゾーン204又は206内の各マイクロ流体チャネル202の温度は、ゾーン204又は206内の他のマイクロ流体チャネル202の温度から独立して制御することができる。
【0042】
図4〜図6は、一実施形態による加熱器制御・測定回路104の構成を示す。図4は、加熱器制御・測定回路104の全体構成を示すとともに、概して、加熱器制御・測定回路104がマイクロ流体装置101の加熱器電極210に接続される様式を示す。加熱器制御・測定回路104は、図4に示されるように、RTD制御回路401の群及び仮想接地回路402の群を含むことができる。RTD制御回路401の各群は、多重化されたRTD212のセットと関連付けられる。各仮想接地回路402は、一対の共通電極211のうちの一方と関連付けられる。
【0043】
図5は、一実施形態による、RTD制御回路401の群の構成を示すとともに、RTD制御回路401の一群及び1つの仮想接地回路402が多重化されたRTD212のセットの電極210に接続される様式を示す。特に、個別電極210(1)〜210(4)、第1の共通電極211(1a)、及び第2の共通電極211(1b)への接続は、説明のための例を提供するために示される。加熱器制御・測定回路104も同様にして、個別電極210及び多重化されたRTD212のその他のセットと関連付けられた共通電極211に接続することができる。
【0044】
図5に示されるように、RTD回路401の群は、複数のRTD回路501を含む。各RTD回路501は、1つのRTD212(例えば、212(1))と関連付けられ、関連付けられたRTD212に接続された個別電極210(例えば、210(1))に接続されたRTD制御出力を有する。また、各RTD回路501は、関連付けられたRTD212に接続された共通電極対(例えば、211(1))の第1の共通電極211(例えば、211(1a))に接続された入力を有する。各RTD212の温度は、各自のRTD回路501により個々に制御され測定される。
【0045】
図6は、一実施形態による、単一の薄膜RTD212の熱制御に用いられるRTD回路501の構成を概略的に示す。RTD回路501が、個別電極210と、RTD212と関連付けられた第1の共通電極211a及び第2の共通電極211bとに接続される様式も示される。
【0046】
図6に示されるように、各RTD回路501は、ラインドライバー回路601、検出抵抗器602、並びに差動増幅器603及び604を備える。各RTD回路501は、DAC105を通じてシステムコントローラー103から加熱器制御信号を受信する。ラインドライバー回路601は、非反転ラインドライバー回路601又は反転ラインドライバー回路601のいずれかとすることができる。検出抵抗器602はRTD212に直列接続され、差動増幅器603は検出抵抗器602を通した電圧降下Vcurrentを測定するように構成される。検出抵抗器602はRTD212に直列接続されるため、検出抵抗器602を通した電圧降下は、RTD212を通した電流を示す。差動増幅器604は、RTD212を通した電圧降下Vvoltageを測定するように構成される。差動増幅器603及び604からそれぞれ出力される信号Vcurrent及びVvoltageは、ADC106を通じてシステムコントローラー103に送信される。
【0047】
上述したように、各仮想接地回路402は、共通電極対211と関連付けられる。図5及び図6に示されるように、一実施形態によれば、仮想接地回路402は、関連付けられた共通電極対211の第1の共通電極211aに接続された入力と、関連付けられた共通電極対211の第2の共通電極211bに接続された出力とを有する。
【0048】
図7は、一実施形態による非反転ラインドライバー601の構成を示す。ラインドライバー回路601は、電力バッファ702が続く演算増幅器701を備える。ラインドライバー回路601は、コンデンサ703並びに抵抗704及び705を更に備える。
【0049】
図8は、一実施形態による仮想接地回路402の構成を示す。仮想接地回路402は、電力バッファ802が続く演算増幅器801を備える。演算増幅器801は、第1の共通電極211aに接続された第1の入力と、接地に接続された第2の入力とを有する。演算増幅器801の出力は、電力バッファ802に入力される。電力バッファ802の出力は、第2の共通電極211bに接続される。
【0050】
動作において、薄膜RTD212は、温度感知及び高速加熱に用いることができる。システムコントローラー103は、これらの機能の両方を利用して、RTD212の高速閉ループ熱制御を実施することができる。一実施形態による閉ループ熱制御を示すフローチャートが図11に示されている。ステップS1101において、システムコントローラー103は、DAC105を通じて初期加熱器制御信号を加熱器制御・測定回路104のRTD回路501に出力する。システムコントローラー103は、1つ又は複数の温度プロファイル1100から出力される温度設定点を用いて、加熱器制御信号を生成することができる。例えば、システムコントローラー103は、マイクロ流体装置101のPCR熱ゾーン204に配置されたRTD212の加熱器制御信号を生成するためのPCRプロファイルと、マイクロ流体装置101の熱融解ゾーン206に配置されたRTD212の加熱器制御信号を生成するための熱ランププロファイルとを有することができる。
【0051】
RTD212のそれぞれの温度が感知される。温度の感知は、ステップS1102及びS1103を実行することにより達成することができる。ステップS1102において、RTD212のそれぞれを通した電流及び電圧降下が測定される。RTD212のそれぞれを通した電流は、RTD回路501の差動増幅器603を用いることにより測定して、RTD212に直列接続された検出抵抗器602を通した電圧降下Vcurrentを検出することができる。RTD212のそれぞれを通した電圧降下Vvoltageは、RTD212に接続された個別電極210及び第1の共通電極211にそれぞれ接続された入力を有するRTD回路501の差動増幅器604を用いることにより測定することができる。ステップS1103において、測定された電流及び電圧降下は温度に変換され、これは、図12に示される2ステッププロセスを用いて達成することができる。
【0052】
図12に示されるように、温度への変換は、ステップS1201及びS1202を含むことができる。ステップS1201において、各RTD212の抵抗は、測定電圧と測定電流との比率(すなわち、Vvoltage/Vcurrent)を用いて特定される。ステップS1202において、RTD212の特定された抵抗が、RTD212の温度に変換される。温度への抵抗の変換は、単純な数式又はルックアップテーブルを用いて達成することができる。関心のある温度にわたり十分な線形性を有するRTD212を考慮すると、2つの較正係数のみを用いて抵抗を求めることができる(すなわち、温度=k0+(k1*抵抗))。温度を求めるために用いられる特定の式は、特定の用途に適切な精度レベルを与えるように、システム設計者によって変更することができる。特に、例えば、材料及び用途によっては、二次関係が適切な場合がある。
【0053】
RTD212の温度を感知した後、ステップS1104において、システムコントローラー203は、更新加熱器制御信号を算出する。更新加熱器制御信号は、上述したPCRプロファイル及び熱ランププロファイルのような、1つ又は複数の温度プロファイル1100からの温度設定点を用いて計算することができる。加えて、更新加熱器制御信号は、比例・積分・微分(PID)制御(すなわち、3項制御)を用いて計算することができる。PID制御下では、比例値、積分値、及び微分値の加重和を用いて、加熱器制御信号を調整/更新することができ、比例値は、現在の誤差に対する反応を決定し、積分値は、最近の誤差の和に基づいて反応を決定し、微分値は、誤差の変化率に基づいて反応を決定する。
【0054】
ステップS1105において、システムコントローラー103は、DAC105を通して、更新加熱器制御信号を加熱器制御・測定回路104のRTD回路501に出力する。次に、プロセスは、ステップ1102において再び開始される。
【0055】
マイクロ流体システム100の熱制御回路102により実行される加熱器駆動について、これより説明する。薄膜加熱器/センサーRTD212の加熱は、デジタル制御され、好ましい実施形態では、振幅変調される。振幅変調は、大きな電圧ステップではなく、電圧の連続した小量ずつの(modest)変化によって、スルーレート制限が回避され、整定時間(セトリングタイム)が向上するため、好ましい。しかし、加熱器制御はデジタルであるため、様々な加熱方式が可能であり、容易に実施される。例えば、パルス幅変調(PWM)及び交流電流(AC)の概念を用いることもできる。
【0056】
いくつかの実施形態では、加熱素子212を加熱するために、システムコントローラー103は、大きさが熱負荷によって決まる適切な電圧を出力するようにDAC105に命令する加熱器制御信号を出力する。適したDACは、利用可能な多くの他のアナログ出力カード及びNational Instruments社のPXI−6289等の多機能データ取得(DAQ)装置を含む。DACの所望の特徴のうちのいくつかは、分解能、絶対精度、線形性、応答時間、及び電流出力機能を含む。特に、DACは、所望の加熱精度を保証するのに十分なビット分解能を有するべきである。加熱器駆動信号に低すぎる分解能を用いる場合、RTD212は所望の設定点の前後でぐらつくことになる。多機能DAQ装置は、これらの特徴に対応すべきであり、かつ多重化RTD212の独立制御を提供するために十分な数の出力チャネルを有するべきである。代替的に、システムコントローラー103は、デジタル出力装置を通じてデジタル信号を出力するように構成することができ、デジタル信号は、例えば、Linear Technology社のLTC2600 Octal16ビットレールツーレールDAC等の多くのDAC105を特徴とする集積回路により解釈される。
【0057】
多くの他の適するDACは、所望の加熱のための十分な電流ソーシング(sourcing)機能を欠いている。これが懸念である特定の一用途は、PCRである。PCRプラットフォームのスループットは、PCRサイクル時間が低減される場合、劇的に増大させることができる。過度の加熱機能(大きな電流ソーシング)を有することにより、変性及び伸長の遷移時間を低減することができる。さらに、これにより、システムは、高速アニーリングには望ましいが加熱率を低減する非常に効率的な冷却手段を克服することができる。電流ソーシング機能を向上させるために、一実施形態によれば、電力バッファ回路(すなわち、ラインドライバー回路)601が、RTD回路501により用いられる前に、DAC信号を事前調整する。そのような1つのラインドライバー601は、図7に示される演算増幅器701回路との組合せ電力バッファ702である。演算増幅器701は、例えば、Linear Technology社の演算増幅器LT1012とすることができる。電力バッファ702は、例えば、Linear Technology社の電力バッファLT1010とすることができる。この回路601の所望の特徴は、応答時間、電流出力性能、雑音、線形性、動作電圧、及び絶対精度である。好ましい実施形態では、電力バッファ702は、最高で150mAの電流を提供することが可能である。
【0058】
上述したラインドライバー回路601を用いて、DACの信号を増幅又は減衰させることが望ましいこともある。例えば、高速PCRの場合、高速加熱のために、最高で20Vを用いて薄膜RTD212を駆動することが望ましい場合がある。通常のDAC105は、この電圧を達成するには不十分な範囲を有する場合がある(最高で+/−10Vを出力することができるPXI−6289を用いる場合等)。いくつかの実施形態(PCRに好ましい)では、ラインドライバー回路601は、2倍の利得を元のDAC出力に提供するように構成することができる。この増幅は、DAC105はバイポーラ出力が可能であるため、反転又は非反転フィードバック(図7参照)を用いて達成することができる。
【0059】
別の例では、より小さな熱負荷を用いる場合、DAC105の全範囲未満で薄膜RTDを駆動することが望ましい場合がある。この場合、薄膜RTD212に達する前に、DAC信号を減衰させることが望ましいであろう。減衰により、より低い電圧で負荷を駆動しながら、DACの範囲全体を用いることができる(結果として、駆動信号の分解能が向上し、振動のより少ないより平滑な温度になる)。ラインドライバー回路601を用いて、DACと電力バッファとの間に分圧器を追加することにより、DAC信号を減衰させることができ、又は代替として、ラインドライバー回路601は、1未満の利得を有する反転フィードバックを特徴とすることができる。DAC信号を2倍減衰させる反転フィードバックを有するラインドライバー回路601が、高分解能熱融解に好ましい。特に、PCRに好ましい実施形態及び熱融解に好ましい実施形態はともに、ラインドライバー回路601内に反転フィードバックを含み、これによって、結合システムの複雑性が低減する。また、増幅回路及び減衰回路が、システムコントローラー103の指示で利得/減衰を変更することができるデジタル電位計又はDAC等のプログラム可能な抵抗を含むことが望ましい場合がある。可変利得/減衰回路は、異なる種類のマイクロ流体装置101で動作する、又は異なる熱プロトコルを実行する必要がある、システム及びセンサーコントローラーに有用とすることができる。
【0060】
また、好ましい一実施形態によれば、熱制御回路102は、バイポーラ駆動電位のために構成される。これは、バイポーラDAC105のデジタル制御を通じて達成することができ、又は代替として、ユニポーラDAC105の出力を、ラインドライバー回路601の回路部を用いて反転させることができる。加熱器駆動信号のバイポーラ駆動電位又は交番極性は、仮想接地回路402と協働して機能し、これについて更に詳細に後述する。
【0061】
図2、図4、及び図5では、個別電極210は、一実施形態によれば、RTD212を駆動することができる加熱器駆動信号の交番極性を示すために、プラス(+)及びマイナス(−)でラベル付けされている。正の極性を有する加熱器駆動信号を用いて駆動される個別電極210は、負の極性を有する加熱器駆動信号を用いて駆動される個別電極210と構造的には変わらない。個別電極210にラベル付けされたプラス(+)及びマイナス(−)は単に、RTD212のバイポーラ駆動の説明のための例を提供するだけである。また、図2、図4、及び図5においてRTD212がラベル付けされる特定の様式は、非限定的である。例えば、RTD212(1)〜212(8)及び/又はRTD212(9)〜212(16)は、図2に示される極性とは逆の極性を用いて駆動することができる。共通電極211の仮想接地と併せて、加熱器駆動信号の極性を交互にすることにより、すべてのRTDが、加熱器駆動信号を用いて駆動され、同じ極性を有する、ユニポーラ駆動と比較して、共通電極211の電流密度及び温度が低減する。
【0062】
図8に示される仮想接地回路402は、一実施形態によれば、加熱器駆動信号の交番極性と併せて機能して、共通電極対211内の電流を低減する。共通電極対211内の電流を最小化することにより、廃熱が低減し、これは、システムレベルで有利であり、例えば、PCR及び高分解能熱融解が実行されるマイクロ流体機能ゾーン204及び206の熱的な分離を向上させる。さらに、共通電極211の不要な加熱の低減によって、例えば、共通電極211のうちの少なくとも一方を温度測定に用いなければならないため、温度測定の特異性が向上する。
【0063】
実施形態によれば、仮想接地回路402の機能は、共通電極対211を利用して、それらの共通電極を略ゼロ電位に駆動することである。また、いくつかの実施形態では、共通電極対211の電流の略すべてが共通電極211のうちの一方(例えば、第2の共通電極211b)内に含まれ、他方の共通電極211(例えば、第1の共通電極211a)を、更に詳細に後述するように、温度感知に利用できる状態に保つ。
【0064】
一実施形態では、仮想接地回路402は、各共通電極対211に対して実施される(すなわち、RTD212の各多重化セットに1つの仮想接地回路402)。上述したように、共通電極対211を共有するRTDの数は、特定の用途に向けて選ぶことができる。しかし、いくつかの実施形態では、結果として生じる場合がある電流の不平衡を考慮することが望ましい。多重化RTD212のすべてが同じ極性電位を用いて駆動された場合、大きな電流が共通リード211のうちの一方(例えば、第2の共通電極211b)を通って流れることになる。これとは対照的に、バイポーラ駆動信号を用いる場合、いかなる電流不平衡もはるかに小さくなる。特に、正の駆動信号は、負の駆動信号を相殺する傾向を有する。薄膜RTD212内の不完全性、RTDレイアウトの違い、又は冷却の非均一性により、小さな電流不平衡がなお存在する場合がある。いくつかの実施形態では、好ましい条件は、極性が各RTDで交互になる対称レイアウトである(例えば、正/負/正/負)。真の対称性が達成された場合、電流不平衡はなくなり、共通電極211内の電流は略ゼロになる。
【0065】
また、いくつかの実施形態では、仮想接地回路402は、結果として生じる電流不平衡をソーシング/シンキング(sinking)可能とすることができる。一実施形態では、演算増幅器801は、例えば、Linear Technology社の演算増幅器LT1012とすることができ、電力バッファ802は、例えば、Linear Technology社の電力バッファLT1010とすることができる。好ましい一実施形態では、電力バッファ802は、最高で150mAの電流を提供することが可能である。
【0066】
以下の非限定的な例において、小さな電流不平衡がどのようにして、図1に示されるマイクロ流体システム100内の一対の共通電極211に結果として生じ得るか、及びこの電流不平衡がどのようにして、オフセットすることができるかを説明する。この例では、交番極性を有する加熱器駆動信号を用いて、図2に示されるマイクロ流体装置101のRTD212(1)〜212(8)を駆動した。正の駆動電圧を、奇数のRTD212(例えば、212(1)、212(3)、212(5)、及び212(7))に用い、負の電圧を偶数のRTD212(例えば、212(2)、212(4)、212(6)、及び212(8))に用いた。RTD212(1)〜212(8)をそれぞれ70℃に加熱した。装置の対称性により、各RTD212を70℃に加熱するために必要な絶対電流(absolute currents)は、図13に示されるように、対称プロファイルを示した。外側のRTD212(1)及び212(8)は境界を加熱するため、外側のRTD212(1)及び212(8)は、RTD212(2)〜212(7)よりもはるかに多くの電力を必要とする場合がある。RTD212(1)〜212(4)は、共通電極対211(1a)及び211(1b)を共有するため、小さな電流不平衡が、好ましくは、共通電極211(1a)及び211(1b)と関連付けられた仮想接地回路402によりソーシング/シンキングされる。この場合、共通電極211(1a)及び211(1b)と関連付けられた仮想接地回路402は、約−20mAを供給する。同様に、RTD212(5)〜212(8)も共通電極対211(2a)及び211(2b)を共有するため、小さな電流不平衡が、好ましくは、共通電極211(2a)及び211(2b)と関連付けられた仮想接地回路402によりソーシング/シンキングされる。この場合、共通電極211(2a)及び211(2b)と関連付けられた仮想接地回路402は、約+20mAを供給する。
【0067】
RTD212の温度を感知するために、各RTD212は、RTD212を通した電流及び電圧降下を測定することにより、個々に測定される。電流は、図6に示されるように、RTD212と直列して配置された精密検出抵抗器602を用いて測定される。適する検出抵抗器602の例は、Precision Resistor社(Precision Resistor Co., Inc.)のLVS3 0.5Ω15ppm巻線型表面実装抵抗である。代替的に、かつ好ましくは、検出抵抗器602は、Vishay Precision Group社のY16070R50000F9W等の膜抵抗とすることができる。電流検出抵抗器602の望ましい特徴は、高精度及び抵抗の低温度係数である。好ましい実施形態では、加熱器制御・測定回路104のレイアウトにおいて、検出抵抗器602が一貫した熱環境内にあり、電磁干渉がないことを保証するように注意すべきである。さらに、検出抵抗器602の抵抗は、適した信号を提供するのに十分に大きくすべきであるが、回路がRTD212を高速加熱する能力を低減するほど大きすぎるべきではない。そのようなものとして、電流感知信号を調整することが好ましい。
【0068】
信号対雑音比(SNR)を向上させるために、電流検出抵抗器602を通した電圧降下Vcurrentを決定する差動増幅器603は、例えば、Linear Technologies社のLT1167等の計装用増幅器とすることができる。差動増幅器603の好ましい実施形態の特徴は、精度、応答時間、及び動作電圧制限を含む。差動増幅器603は、SNRを向上させる利得を含むことができる。特に、利得は、通常−10〜10ボルト等の範囲であるADC106の全範囲を利用するのに十分であるべきである。差動増幅器603の利得が、利得抵抗に関してデジタル電位計又はDACを用いることにより、プログラム可能であることが好ましい場合がある。その場合、システムコントローラー103は、SNRが向上するように、可変利得抵抗をプログラムすることができる。このいくつかの用途は、様々な抵抗を特徴とする、又は様々な温度若しくは様々な熱環境で用いられる、様々な種類のマイクロ流体装置101を動作させることができるシステム及びセンサーコントローラー103を含む。代替的に、ADC106は、+/−1V〜+/−10Vの範囲で動作することができるPXI−6289多機能DAQ等の可変範囲を含むように選ぶことができる。この構成では、ADC106の範囲は、用途により必要に応じて設定される。
【0069】
RTD212を通した電圧降下Vvoltageの測定は、RTD抵抗を求めるためにも必要とされる。RTD212を通した電圧降下Vvoltageを求める差動増幅器604は、Linear Technologies社のLT1167等の計装用増幅器とすることができる。仮想接地回路402の入力に接続された共通電極211は、全く又は殆ど電流を通さないため、この共通電極211を参照するようにRTD電圧降下Vvoltageを測定することが好ましい。図5及び図6に示されるように、第1の共通電極211aは、仮想接地回路402の入力に接続された共通電極211である。
【0070】
一実施形態では、システムコントローラー103は、加熱器/センサー駆動信号の最小電圧制限を有するように構成される。特に、DAC105の出力を、少なくとも最小DAC出力に維持することが望ましい。DAC出力がゼロになる(又は所定の閾値を下回る)ことが許された場合、いくつかの実施形態では、感知する電圧又は電流がなく、システムコントローラー103は、RTD212の真の温度がわからなくなる。最小電圧制限が高すぎると、RTDの高速冷却を妨げるおそれがあるため、最小電圧制限が高すぎないことを保証することに注意すべきである。さらに、最小電圧制限が十分に高い場合、RTD212は所望の低温まで冷却されないおそれがある。いくつかの実施形態では、400mVの最小電圧制限が適切とすることができるが、制限は、要求される熱プロファイル、所望の精度、及び回路の構成要素に基づいて変動することができる。
【0071】
RTDを熱制御回路102の加熱制御・測定回路104に接続する配線は、精密温度測定信号のいかなる破損も低減するように設計することができる。好ましくは、配線は、低抵抗であり、電磁雑音から保護され(シールド、ツイスト等)、熱的に安定している(低温度係数の抵抗を有することを含む)。さらに、センサーケーブルが4線抵抗測定用に配線されて、ケーブル抵抗の温度の影響の受けやすさ等のケーブルの悪影響を軽減することが好ましい場合がある。共通電極211はすでに対になっているため、4線測定を行うために各センサーに追加する必要があるのは、1本ワイヤのみである。
【0072】
いくつかの代替の回路構成は、SNRを向上させることができる。例えば、SNRを向上させる一実施形態は、ブリッジ構成を用いて、電流感知信号から共通モード電圧を除去することである。この代替の回路構成を図9に示す。この実施形態では、関連付けられたRTD212に対して検出抵抗器602とおおよそ同じ比率を有する分圧器が形成される。参照分圧器は、倍率kが大きく(例えば、100)低ジュール加熱を保証するため、温度の影響を受けにくい。したがって、参照分圧器は、安定した参照電圧を形成し、電流感知信号Vcurrent(図9ではVとして示される)のSNRを向上させる。
【0073】
また、或る特定の低域フィルタリング構成要素を用いて、加熱器駆動信号、電流測定信号、及び電圧測定信号を調整することが望ましい場合がある。図10(a)は、図5及び図6に示されるRTD回路501の構成を、DAC105及びRTD212との接続と共に示す。低域フィルタリング構成要素を利用する代替の回路構成を図10(b)〜図10(e)に示す。図10(b)は、前置フィルター電力バッファ構成を示し、この構成では、抵抗1001及びコンデンサ1002がDAC105とラインドライバー回路601との間に追加されている。図10(c)は、フィルター電力バッファフィードバック構成を示し、この構成では、抵抗1003及びコンデンサ1004がラインドライバー回路601の構成に追加されている。図10(d)は、並列低域フィルター構成を示し、この構成では、抵抗1005及びコンデンサ1006が検出抵抗器602及びRTD212の直列に対して並列に追加されている。図10(e)は、低域フィルター出力構成を示し、この構成では、抵抗1007及びコンデンサ1008が差動増幅器603の出力に追加され、抵抗1009及びコンデンサ1010が差動増幅器604の出力に追加されている。これらの構成では、遮断周波数は、高速閉ループ熱制御を提供する能力を保ちつつ、不要な雑音をなくすように選ばれる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態の別の特徴は、データのデジタル化及びデジタル閉ループ制御により、洗練されたデジタルアルゴリズムの開発が可能なことである。そのような1つのアルゴリズムを用いて、多重化RTD212の間に存在する寄生抵抗を補正することができる。例えば、電気モデルを用いて、寄生抵抗に起因する結合を考慮しながら、抵抗回路網を解くことができる。また、システムコントローラー103は、まず、共通電極対を用いて、リード層のシート抵抗を測定するように構成することができる。次に、リード層のシート抵抗を、上述した電気モデルへの入力として用いることができる。
【0075】
加えて、駆動ソースが必ずしも直流電流(DC)に基づく必要はない。駆動ソースは、直流に代えて交流電流(AC)に基づくこともできる。したがって、本発明の一実施形態によれば、装置に送られる熱の量は増幅変調を通じて制御することができ、上述した交番極性の概念を用いて、廃熱を最小化し、優れた温度測定を実施することができ、駆動ソースはACに基づくことができる。
【0076】
流体が充填したマイクロチャネル202への電流漏れによる電解の電位の低減又は消費電力の低減を含むがそれらに限定されない様々な理由により、DCよりもACを用いて駆動することが望ましい場合がある。水の電解は、生成されるガスが、結果として、マイクロチャネル202を塞ぎ、流体の流れを妨げる泡になるおそれがあるため、マイクロ流体システムでは問題となる場合がある。高周波数(例えば、>1kHz)の使用により、所望の加熱に必要な高い二乗平均平方根(RMS)電位を可能にしながら、泡の生成を低減するか又はなくすことができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、AC加熱器駆動信号は、任意の適した波形とすることができる。例としては、正弦波形、矩形波形、鋸波形、及び三角波形が含まれる。振幅変調及び交番極性について上述したすべての方法は、AC加熱器駆動信号に適用可能である。180度位相ずれした信号を用いて交互になったチャネルを駆動することにより、交番極性の概念の利益が保たれる。位相シフトは、DAC105を駆動するソフトウェアを通じて、又はハードウェア(例えば、いくつかのチャネルにインバーターを含む)を通じて実現することができる。そのようなシステムの検討事項は、用いられる増幅器の高速応答である。
【0078】
別の態様では、交番極性の概念を用いて、RTD212を加熱素子として用いずに、高品質の温度測定を実施し、廃熱を最小化することができる。この構成は、マイクロ流体装置101の温度を求める必要があるが、他の何らかの加熱手段を有する場合(例えば、装置が外部手段により加熱される場合)に、望ましい場合がある。RTD212をセンサーのみとして用いることは、上述した技法を用いて容易に実現される。この構成では、振幅変調なしで、一定の駆動電位を用いることができる。この構成は、オプションとして、図9に概略的に示されるブリッジ構成を含むことができる。
【0079】
図14は、温度測定のみにRTD212を用いることが可能な構成の一実施形態を示す。図14に示される温度測定回路1401は、すべてのRTD212の駆動に用いられる単一の駆動信号を受信することができる。交番極性は、非反転ラインドライバー601を通じて偶数のRTD212(例えば、RTD212(2)、212(4)等)への駆動信号を送りながら、反転ラインドライバー601を通じて奇数のRTD212(例えば、RTD212(1)、212(3)等)への駆動信号を送ることにより、達成することができる。測定回路1401は、ブリッジ構成を用いて、基準分圧器を形成することができる。駆動信号の一定の駆動電位は、好ましくは、自己加熱を最小化するために小さく、例えば、PXI−6289等の多機能DAQ装置、例えば、MAXIM社のMAX6138等の電圧基準IC、又はツェナーダイオードにより生成することができる。さらに、このシステムでは、駆動電位が一定であるため、温度を求めるために必要なチャネル毎の測定は、1つのみである。
【0080】
本発明の実施形態を、図面を参照して上記で十分に説明した。本発明は、これらの好ましい実施形態に基づいて説明されたが、特定の変更、変形、及び代替の構造を、本発明の趣旨及び範囲内で、説明された実施形態に対して実施できることが当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体システムであって、
複数のマイクロチャネルと、
前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分にそれぞれ隣接する複数の抵抗温度検出器(RTD)と、
前記複数のRTDのそれぞれに接続された第1の共通電極と、
前記第1の共通電極、及び前記複数のRTDのそれぞれに接続された第2の共通電極と、
を備える、マイクロ流体装置と、
(i)交番極性を有する加熱器制御信号で前記複数のRTDを駆動し、それによって前記複数のうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、
(ii)前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化し、
(iii)前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知し、
(iv)前記複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記加熱器制御信号を更新する
ように構成される、加熱器制御・測定回路と、
を備える、マイクロ流体システム。
【請求項2】
前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分は、前記マイクロ流体装置のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)熱ゾーン又は前記マイクロ流体装置の熱融解ゾーンに配置される、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項3】
前記加熱器制御・測定回路は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロファイル又は温度ランププロファイルに基づいて前記加熱器制御信号を生成するように構成されるシステムコントローラーを備える、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項4】
前記マイクロ流体装置は、
第2の複数のRTDと、
前記第2の複数のRTDのそれぞれに接続された第3の共通電極と、
前記第3の共通電極、及び前記第2の複数のRTDのそれぞれに接続された第4の共通電極と、
を更に備え、
前記加熱器制御・測定回路は、
(i)交番極性を有する加熱器制御信号で前記第2の複数のRTDを駆動し、それによって前記第2の複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、
(ii)前記第3の共通電極及び前記第4の共通電極内の電流を最小化し、
(iii)前記第2の複数のRTDのそれぞれの温度を感知し、
(iv)前記第2の複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記加熱器制御信号を更新する
ように更に構成される、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項5】
前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの第2の部分に隣接する、請求項4に記載のマイクロ流体システム。
【請求項6】
前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分は、前記マイクロ流体装置のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)熱ゾーンに配置され、
前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記第2の部分は、前記マイクロ流体装置の熱融解ゾーンに配置される、請求項5に記載のマイクロ流体システム。
【請求項7】
第2の複数のマイクロチャネルを更に備え、
前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接する、請求項4に記載のマイクロ流体システム。
【請求項8】
前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分及び前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分は、前記マイクロ流体装置のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)熱ゾーン又は前記マイクロ流体装置の熱融解ゾーンに配置される、請求項7に記載のマイクロ流体システム。
【請求項9】
前記加熱器制御・測定回路は、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより、前記加熱器制御信号を更新するように構成される、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項10】
前記加熱器制御信号は、交流電流信号である、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項11】
前記加熱器制御信号は、前記加熱器制御信号が互いに180度の位相ずれの場合、逆の極性を有する、請求項10に記載のマイクロ流体システム。
【請求項12】
マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器(RTD)を個々に制御する方法であって、前記RTDはそれぞれ、複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記方法は、
前記複数のRTDを駆動する、交番極性を有する加熱器制御信号を生成すること、
前記加熱器制御信号を前記複数のRTDに供給することであって、それによって前記複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、
第1の共通電極及び第2の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極はそれぞれ、前記複数のRTDの各RTDに接続されるようにし、
前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、及び
前記複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記加熱器制御信号を更新すること、
を含む、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器を個々に制御する方法。
【請求項13】
前記加熱器制御信号は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロファイル又は温度ランププロファイルに基づいて生成され、更新される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化することは、前記複数のRTDに供給される前記加熱器制御信号の電流間の電流不平衡を求めることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化することは、前記求められた電流不平衡をソーシング/シンキングすることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱器制御信号が、最小電圧制限未満の電圧を有しないようにすることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱器制御信号は、前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分内に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じて増幅されるように生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記加熱器制御信号は、前記第1のRTD及び前記第2のRTDの温度の勾配を与えるように生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロ流体装置は、第2の複数のRTDを更に備え、前記方法は、
前記第2の複数のRTDを駆動する、交番極性を有する第2の加熱器制御信号を生成すること、
前記第2の加熱器制御信号を前記第2の複数のRTDに供給することであって、それによって前記第2の複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する第2の加熱器制御信号で駆動されるようにし、
第3の共通電極及び第4の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第3の共通電極及び前記第4の共通電極はそれぞれ、前記第2の複数のRTDの各RTDに接続されるようにし、
前記第2の複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、及び
前記第2の複数のRTDの前記感知された温度を用いて、前記第2の加熱器制御信号を更新すること、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの第2の部分に隣接し、
前記複数のRTDを駆動する前記加熱器制御信号は、前記複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネル内に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)が増幅されるように生成され、
前記第2の複数のRTDを駆動する前記第2の加熱器制御信号は、前記第2の複数のRTDの温度の勾配を与えるように生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記DNAの増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じて達成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マイクロ流体装置は、第2の複数のマイクロチャネルを更に備え、前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接し、
前記第1の複数のRTD及び前記第2の複数のRTDをそれぞれ駆動する前記第1の加熱器制御信号及び前記第2の加熱器制御信号は、前記複数のマイクロチャネル及び前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの前記関連付けられたマイクロチャネルの前記一部分内に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)が増幅されるように生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記DNAの増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じて達成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マイクロ流体装置は、第2の複数のマイクロチャネルを更に備え、前記第2の複数のRTDのそれぞれは、前記第2の複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接し、
前記第1の複数のRTD及び前記第2の複数のRTDをそれぞれ駆動する前記第1の加熱器制御信号及び第2の加熱器制御信号は、前記第1の複数のRTD及び前記第2の複数のRTDの温度の勾配を与えるように生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記加熱器制御信号は、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより更新される、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記加熱器制御信号は、交流電流信号である、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
前記加熱器制御信号は、前記加熱器制御信号が互いに180度の位相ずれの場合、逆の極性を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
マイクロ流体システムであって、
第1のマイクロチャネルと、
第2のマイクロチャネルと、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の共通電極と、
第2の共通電極と、
前記第1のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第1の電極、前記第1の共通電極、及び前記第2の共通電極に接続された第1の抵抗温度検出器(RTD)と、
前記第2のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第2の電極、前記第1の共通電極、及び前記第2の共通電極に接続された第2のRTDと、
を備える、マイクロ流体装置と、
前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極に関連付けられ、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化するように構成される仮想接地回路であって、
(i)前記第1の共通電極に接続された入力、及び
(ii)前記第2の共通電極に接続された出力
を有する、仮想接地回路と、
第1のRTD制御回路であって、
(i)前記第1の共通電極に接続された入力、及び
(ii)前記第1の電極に接続されたRTD制御出力
を有する、第1のRTD制御回路と、
第2のRTD制御回路であって、
(i)前記第1の共通電極に接続された入力、及び
(ii)前記第2の電極に接続されたRTD制御出力
を有する、第2のRTD制御回路と、
を備える、加熱器制御・測定回路と、
を備える、マイクロ流体システム。
【請求項29】
前記加熱器制御・測定回路は、前記第1のRTD及び前記第2のRTDが逆の極性で駆動されるように構成される、請求項28に記載のマイクロ流体システム。
【請求項30】
前記第1のRTDの第1の加熱器制御信号を出力し、前記第2のRTDの第2の加熱器制御信号を出力することにより、前記第1の電極及び前記第2の電極を独立して制御するように構成されるシステムコントローラーを更に備える、請求項28に記載のマイクロ流体システム。
【請求項31】
前記第1の加熱器制御信号及び前記第2の加熱器制御信号は、デジタル信号であり、
前記マイクロ流体システムは、前記第1の加熱器制御信号及び前記第2の加熱器制御信号を受信し、前記第1の加熱器制御信号及び前記第2の加熱器制御信号をアナログ信号に変換し、前記アナログの第1の加熱器制御信号及び前記アナログの第2の加熱器制御信号を前記加熱器制御・測定回路に出力するように構成されるデジタル/アナログ変換器(DAC)を更に備える、請求項30に記載のマイクロ流体システム。
【請求項32】
前記システムコントローラーは、前記アナログの第1の加熱器制御信号及び前記アナログの第2の加熱器制御信号が、最小電圧制限未満の絶対値を有する電圧を有しないようにするように構成される、請求項31に記載のマイクロ流体システム。
【請求項33】
前記第1のRTD制御回路は、前記第1の加熱器制御信号を受信し、前記第1の加熱器制御信号に従って第1のRTD制御信号を前記第1の電極に出力するように構成され、
前記第2のRTD制御回路は、前記第2の加熱器制御信号を受信し、前記第2の加熱器制御信号に従って第2のRTD制御信号を前記第2の電極に出力するように構成される、請求項30に記載のマイクロ流体システム。
【請求項34】
前記システムコントローラーは、前記第1のRTD制御回路により生成された第1の測定信号及び前記第2のRTD制御回路により生成された第2の測定信号を受信し、前記第1の測定信号を用いて前記第1のRTDの温度を計算し、前記第2の測定信号を用いて前記第2のRTDの温度を計算し、前記第1のRTDの前記計算された温度に従って前記第1の加熱器制御信号を更新し、前記第2のRTDの前記計算された温度に従って前記第2の加熱器制御信号を更新するように更に構成される、請求項30に記載のマイクロ流体システム。
【請求項35】
アナログ/デジタル変換器(ADC)を更に備え、
前記第1の測定信号及び前記第2の測定信号は、前記システムコントローラーにより受信される前に、前記ADCによりデジタル信号に変換される、請求項34に記載のマイクロ流体システム。
【請求項36】
前記第1のRTD制御回路により生成される前記第1の測定信号は、
前記第1のRTDを通した電流を示す第1の電流測定信号と、
前記第1のRTDを通した電圧降下を示す第1の電圧測定信号と、
を含み、
前記第2のRTD制御回路により生成される前記第2の測定信号は、
前記第2のRTDを通した電流を示す第2の電流測定信号と、
前記第2のRTDを通した電圧降下を示す第2の電圧測定信号と、
を含む、請求項34に記載のマイクロ流体システム。
【請求項37】
前記第1の電流測定信号は、前記第1のRTDに直列接続された第1の検出抵抗器を通した電圧降下の測定値であり、
前記第2の電流測定信号は、前記第2のRTDに直列接続された第2の検出抵抗器を通した電圧降下の測定値である、請求項36に記載のマイクロ流体システム。
【請求項38】
前記第1のRTD制御回路及び前記第2のRTD制御回路はそれぞれ、
第1の差動増幅器であって、
(i)第1の入力、及び
(ii)前記RTD制御出力に接続された第2の入力
を有する第1の差動増幅器と、
前記第1の差動増幅器の前記第2の入力と前記第1の入力との間に接続された検出抵抗器と、
第2の差動増幅器であって、
(i)前記RTD制御出力に接続された第1の入力、及び
(ii)前記第1の共通電極対のうちの前記第1の共通電極に接続された第2の入力
を有する第2の差動増幅器と、
を備える、請求項28に記載のマイクロ流体システム。
【請求項39】
前記第1のRTD制御回路及び前記第2のRTD制御回路はそれぞれ、前記第1の差動増幅器の前記第1の入力に接続された出力を有するラインドライバー回路を更に備える、請求項38に記載のマイクロ流体システム。
【請求項40】
前記第1のRTD制御回路の前記ラインドライバーは非反転ラインドライバーであり、前記第2のRTD制御回路の前記ラインドライバーは反転ラインドライバーである、請求項39に記載のマイクロ流体システム。
【請求項41】
前記仮想接地回路は、
接地に接続された入力及び前記第1の共通電極に接続された別の入力を有する演算増幅器を備える、請求項28に記載のマイクロ流体システム。
【請求項42】
前記仮想接地回路は、前記演算増幅器の出力に接続された入力及び前記仮想接地回路の前記出力に接続された出力を有する電力バッファを更に備える、請求項41に記載のマイクロ流体システム。
【請求項43】
マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の第1の抵抗熱検出器(RTD)及び第2の抵抗熱検出器を個々に制御する方法であって、前記第1のRTDは前記マイクロ流体装置の第1のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記第2のRTDは前記マイクロ流体装置の第2のマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記方法は、
前記第1のRTDを駆動する第1の加熱器制御信号及び前記第2のRTDを駆動する第2の加熱器制御信号を生成すること、
前記第1のRTDに接続された第1の電極を用いて、前記第1の加熱器制御信号を前記第1のRTDに供給すること、
前記第2のRTDに接続された第2の電極を用いて、前記第2の加熱器制御信号を前記第2のRTDに供給すること、
第1の共通電極及び第2の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極はそれぞれ、前記第1のRTD及び前記第2のRTDに接続されるようにし、及び
前記第1の共通電極から受信される信号を用いて、前記第1のRTDの温度及び前記第2のRTDの温度を感知すること、
を含む、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の第1の抵抗熱検出器及び第2の抵抗熱検出器を個々に制御する方法。
【請求項44】
前記第1のRTD及び前記第2のRTDは、逆の極性で駆動される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記マイクロ流体装置は、第3のRTD及び第4のRTDを更に備え、前記第2のRTDは前記第1のRTD及び前記第3のRTDに隣接し、前記第3のRTDは前記第2のRTD及び前記第4のRTDに隣接し、
前記第1のRTD及び前記第3のRTDは、第1の極性を有する信号で駆動され、
前記第2のRTD及び前記第4のRTDは、前記第1の極性の極性とは逆の第2の極性を有する信号で駆動される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のRTDの前記感知された温度を用いて、更新された第1の加熱器制御信号を生成すること、及び前記第2のRTDの前記感知された温度を用いて、更新された第2の加熱器信号を生成することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のRTDの前記温度を感知することは、
(i)前記第1のRTDを通した電流を測定すること、及び
(ii)前記第1のRTDを通した電圧降下を測定すること、
を含み、
前記第2のRTDの前記温度を感知することは、
(i)前記第2のRTDを通した電流を測定すること、及び
(ii)前記第2のRTDを通した電圧降下を測定すること、
を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
第1の検出抵抗器は、前記第1のRTDに直列接続され、
第2の検出抵抗器は、前記第2のRTDに直列接続され、
前記第1のRTDを通した電流は、前記第1の検出抵抗器を通した電圧降下を測定することにより測定され、
前記第2のRTDを通した電流は、前記第2の検出抵抗器を通した電圧降下を測定することにより測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1のRTDを通した電圧降下は、前記第1の電極と前記第1の共通電極との電圧差を測定することにより測定され、
前記第2のRTDを通した電圧降下は、前記第2の電極と前記第1の共通電極との電圧差を測定することにより測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のRTDの前記温度を感知することは、前記第1のRTDを通した前記測定された電流及び電圧降下を温度に変換することを更に含み、
前記第2のRTDの前記温度を感知することは、前記第2のRTDを通した前記測定された電流及び電圧降下を温度に変換することを更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流は、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極を略ゼロ電位に駆動することにより最小化される、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極は、前記第1の共通電極において電圧を反転させ、前記反転させた電圧を示す信号を前記第2の共通電極に供給することにより、略ゼロ電位に駆動される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
マイクロ流体システムであって、
複数のマイクロチャネルと、
前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分にそれぞれ隣接する複数の抵抗温度検出器(RTD)と、
前記複数のRTDのそれぞれに接続された第1の共通電極と、
前記第1の共通電極、及び前記複数のRTDのそれぞれに接続された第2の共通電極と、
を備える、マイクロ流体装置と、
(i)駆動信号を反転させて、反転駆動信号にし、
(ii)前記複数のRTDを一つおきに前記駆動信号で駆動し、
(iii)前記複数のRTDのうちの、前記駆動信号で駆動されないRTDを前記反転駆動信号で駆動し、
(iv)前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極内の電流を最小化し、
(v)前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知する
ように構成される、RTD測定回路と、
を備える、マイクロ流体システム。
【請求項54】
マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器(RTD)の温度を感知する方法であって、前記RTDはそれぞれ、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記方法は、
駆動信号を生成すること、
前記駆動信号を反転させて、反転駆動信号にすること、
前記複数のRTDを一つおきに前記駆動信号で駆動すること、
前記複数のRTDのうちの、前記駆動信号で駆動されないRTDを前記反転駆動信号で駆動すること、
第1の共通電極及び第2の共通電極内の電流を最小化することであって、前記第1の共通電極及び前記第2の共通電極はそれぞれ、前記複数のRTDの各RTDに接続されるようにし、及び
前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、
を含む、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器の温度を感知する方法。
【請求項55】
マイクロ流体システムであって、
複数のマイクロチャネルと、
前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分にそれぞれ隣接する複数の抵抗温度検出器(RTD)と、
前記複数のRTDのそれぞれに接続された共通電極と、
を備える、マイクロ流体装置と、
(i)交番極性を有する加熱器制御信号で前記複数のRTDを駆動し、それによって前記複数のうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、
(ii)前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知し、
(iii)前記複数のRTDの前記感知された温度に従って、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより、前記加熱器制御信号を更新する
ように構成される、加熱器制御・測定回路と、
を備える、マイクロ流体システム。
【請求項56】
マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器(RTD)を個々に制御する方法であって、前記RTDはそれぞれ、前記複数のマイクロチャネルのうちの関連付けられたマイクロチャネルの一部分に隣接し、前記方法は、
前記複数のRTDを駆動する、交番極性を有する加熱器制御信号を生成すること、
前記加熱器制御信号を前記複数のRTDに供給することであって、それによって前記複数のRTDのうちの隣接するRTDが、逆の極性を有する加熱器制御信号で駆動されるようにし、
前記複数のRTDのそれぞれの温度を感知すること、及び
前記複数のRTDの前記感知された温度に従って、前記加熱器制御信号の振幅を変調することにより、前記加熱器制御信号を更新すること、
を含む、マイクロ流体システムのマイクロ流体装置の複数の抵抗熱検出器を個々に制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−531912(P2012−531912A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518571(P2012−518571)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/040345
【国際公開番号】WO2011/002749
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(507028217)キヤノン ユー.エス. ライフ サイエンシズ, インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S. LIFE SCIENCES, INC.
【住所又は居所原語表記】9800 Medical Center Drive Suite A−100 Rockville,Maryland 20850 U.S.A.
【Fターム(参考)】