熱可塑性エラストマー用性能添加剤
改良された弾性特性、機械的特性及び加工性を有する熱可塑性エラストマー組成物が開示される。この組成物には、熱可塑性エラストマー及び500〜5,000の数平均分子量を有する脂肪族樹脂、芳香族樹脂又は脂肪族−芳香族樹脂から選択された性能添加剤が含有されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するクロスリファレンス
本件特許出願は、2007年7月9日付で出願された米国仮特許出願第60/958,840号及び2007年8月28日付で出願された米国仮特許出願第60/968,387号の出願日の利益を請求する。両方の特許出願の全内容を、参照して本明細書に含める。
【0002】
本発明は、一般的に、改良された特性、例えば弾性特性、機械的特性及び加工性を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、組成物の機械的特性を維持しながら、圧縮永久歪みを低下させることができる、性能添加剤(performance additives)を含有するTPE組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性エラストマー(TPE)はエラストマーとプラスチックスとをブレンドすることによって得られる新規な種類の材料である。この組合せは弾性特性、機械的特性及び加工性の独特の組合せを有するこれらの材料を提供する。これらの材料の使用温度は、エラストマー相のガラス転移温度に近い非常に低い温度から、プラスチック成分の融点又は軟化点に近い高温度までの範囲になり得る。加工温度で、これらは溶融相にあり、プラスチック加工必要条件で加工することができる。エラストマー相は、必須の弾性特性、例えば圧縮永久歪み、応力緩和、伸び及び残留伸びを提供する。引張強度及び引裂強度のような機械的特性は、プラスチック相に、より依存性である。しばしば、工業界は、他の特性に不利な影響を与えることなく、これらの特性を最適化するように、挑戦している。
【0004】
ポリプロピレンとスチレン系ブロックコポリマーとのブレンドの研究がなされてきた。これらの研究はこれらのシステムの異なった特性をバランスさせることの挑戦を強調している。より高い機械的特性と共により良い弾性特性が探求される多くの場合に、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーン又はフッ素ポリマーのような高い弾性特性を有するエラストマーを選択しなければならない。これらの性能問題に取り組むための別のアプローチはTPE中のゴム相を加硫することである。しかしながら、何れの場合に於いても、スチレン系ブロックコポリマーを使用することによって得られる軟度は失われる。
【0005】
従って、TPEの弾性特性及び機械的特性を改良するための当該技術分野に於けるニーズが依然として残っている。本発明は、TPE組成物に或る種の性能添加剤を添加して、TPE中の異なった相の形態を、それらの性能を最大にするように制御することによって、このニーズ及び以下の説明を読んで当業者に明らかになるであろう他のニーズに取り組む。
【発明の概要】
【0006】
熱可塑性エラストマー及び500〜5,000の数平均分子量を有する脂肪族、芳香族又は脂肪族−芳香族樹脂から選択された性能添加剤を含む熱可塑性エラストマー組成物。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【図2】図2は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルのショアーA硬度を示す。
【図3】図3は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの極限伸びを示す。
【図4】図4は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの引裂強度を示す。
【図5】図5は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの圧縮永久歪みを示す。
【図6】図6は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの見掛け粘度を示す。
【0008】
【図7】図7は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【図8】図8は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの極限伸びを示す。
【図9】図9は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルのショアーA硬度を示す。
【図10】図10は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの圧縮永久歪みを示す。
【図11】図11は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの見掛け粘度を示す。
【0009】
【図12】図12は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【図13】図13は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの引裂強度を示す。
【図14】図14は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの極限伸びを示す。
【図15】図15は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの圧縮永久歪みを示す。
【0010】
【図16】図16は対照例3〜4及び実施例15〜16で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の物質組成物及び方法を、一層詳細に開示し、説明する前に、本発明は明示され、そのようなものとして開示された場合を除いて、本発明は、特定の合成方法又は特別の配合に限定されないことが理解されるべきである。また、使用される用語は、特定の態様のみを説明する目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0012】
単数形(a,an及びthe)は、文脈がそうでないことを明示していない限り、1個(種)又はそれ以上を意味する。同様に、複数の名詞は、また、文脈がそうでないことを明示していない限り、1個(種)又はそれ以上を意味する。
【0013】
「任意の」又は「任意的に」は、次に記載される事象又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことを意味する。説明には、この事象又は状況が生じる例及びそれらが生じない例が含まれる。
【0014】
本明細書に於いて、範囲を、約一つの特定の値から及び/又は約別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表されているとき、別の態様は、この範囲内の全ての組合せと共に、一つの特定の値から及び/又は他の特定の値までであると理解される。
【0015】
本件明細書を通して、特許又は刊行物が引用される場合、これらの文書の全開示は、文脈がそうでないことを明示していない限り、本発明が関係する技術水準を一層完全に説明するために、本明細書中に参照して含められる。
【0016】
熱可塑性エラストマー(TPE)組成物に於ける主な挑戦の一つは、機械的特性を犠牲にすることなく、より良い弾性特性を得ることである。弾性特性は、通常、TPEのエラストマー相からもたらさせる。他方、TPE中のプラスチック相は、より良い機械的特性を得るための主な寄与要因である。TPE中のゴムとプラスチックとの比は、これらの特性をバランスさせるために制御されている。他方の特性を失うことなく、これらの特性の一つを改良することが、工業界に対する挑戦である。
【0017】
驚くべきことに、芳香族、脂肪族又は芳香族及び脂肪族(混合)の両方の特性を有する性能添加剤を使用してTPEの相形態を変性して、弾性特性(例えば圧縮永久歪み、応力緩和、残留歪み)及び機械的特性の両方を同時に改良することができることが見出された。
【0018】
本発明においては、任意の熱可塑性エラストマーも使用することができる。例えば適切な熱可塑性エラストマーには、これらに限定されないが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)のようなスチレン系ブロックコポリマー並びにポリオレフィン(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)又は他のオレフィンコポリマー)とのそのブレンド、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム並びにポリオレフィンとEPDMゴムとのブレンドが含まれる。
【0019】
例えばスチレン系ブロックコポリマー(SBC)、例えばKraton(登録商標)(Kraton Polymersから市販されている)及びDynaflex(登録商標)(GLS Corporationから市販されている)を、本発明に於ける熱可塑性エラストマーとして使用することができる。適切なSBCには、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)が含まれる。
【0020】
更に、熱可塑性加硫物(TPV)、例えばSantoprene(登録商標)(Exxon Mobilから市販されている)、コポリエステルエラストマー(COPE又はPCCE)、例えばNeostar(登録商標)及びEcdel(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)及びポリオレフィンエラストマー(POE)、例えば、Engage(登録商標)(Dow Chemicalから市販されている)を、本発明に於ける熱可塑性エラストマーとして使用することができる。
【0021】
この熱可塑性エラストマー組成物には、熱可塑性エラストマーの何れかが単独で含有されていてよく又は1種若しくはそれ以上の熱可塑性エラストマーのブレンドを使用することができる。
【0022】
本発明に於いて使用される性能添加剤には、芳香族、脂肪族及び混合脂肪族−芳香族樹脂が含まれる。これらの樹脂の分子量は500〜5,000の数平均分子量の範囲であってよい。
【0023】
適切な芳香族添加剤の例には、商品名Endex、Kristalex、Picco及びPiccolasticを有する樹脂が含まれる。これらの樹脂はスチレン、置換されたスチレン及びインデンを異なった比及び分子量で重合させることによって得ることができる。
【0024】
適切な脂肪族添加剤の例には、Piccotac、Regalrez、Regalite及びEastotacのような商品名を有する樹脂が含まれる。Piccotacは300〜2000の数平均分子量を有するイソプレン系システムである。Regalrez、Regalite及びEastotacはそれらのモデル番号に依存して、水素化芳香族樹脂又はシクロ脂肪族システムである。
【0025】
混合樹脂添加剤は芳香族と脂肪族との組合せであり、また、一般的に、それらのモデル番号に依存して、商品名、Regalite、Regalrez、Piccotac及びEastotacで知られている。
【0026】
幾つかの態様に於いて、適切な樹脂には、これらに限定されないが、(1)ポリテルペン樹脂及び水素化ポリテルペン樹脂、(2)脂肪族石油炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体、(3)芳香族炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体並びに(4)脂環式石油炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体が含まれる。上記の樹脂の2種又はそれ以上の混合物を、幾つかの態様に於いて使用することができる。
【0027】
幾つかの態様に於いて、適切な炭化水素樹脂には、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、テルペン樹脂及びテルペン/DCPD樹脂が含まれる。
【0028】
本発明に従った脂肪族樹脂はアルカン、アルケン及びアルキンから選択された少なくとも1種のモノマーから製造される。これらのモノマーは直鎖又は分枝鎖であってよい。例えば脂肪族樹脂はシス−若しくはトランス−ピペリレン、イソプレン又はジシクロペンタジエンを重合させることによって製造することができる。脂肪族樹脂の例には、これらに限定されないが、Eastman ChemicalからのPiccotac(登録商標)1095;Kolon Industriesから入手可能なHikorez(登録商標)C−110及びGoodyear Chemicalから入手可能なWingtack(登録商標)が含まれる。水素化シクロ脂肪族樹脂には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能な、Eastotac(登録商標)H−100、Eastotac(登録商標)H−115、Eastotac(登録商標)H−130及びEastotac(登録商標)H−142が含まれる。Eastotac(登録商標)樹脂は、水素化のレベルが異なっている、種々のグレード(E、R、L及びW)で入手可能である。
【0029】
別の例として、炭化水素樹脂、例えばEastotac(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)、ロジン及びロジン誘導体樹脂、例えばPermalyn(登録商標)及びPoly−Pale(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)、低分子量樹脂、例えばKristalex(登録商標)及びRegalrez(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)、エチレン−アクリレートコポリマー、例えばEMAC及びEBAC(Westlakeから市販されている)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えばElvax(登録商標)(DuPontから市販されている)並びにコポリエステルエラストマー、例えばNeostar(登録商標)及びEcdel(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)を使用することができる。
【0030】
本発明に従った芳香族樹脂は、1個又はそれ以上の環を有する少なくとも1種の不飽和環式炭化水素モノマーから製造することができる。例えば芳香族炭化水素樹脂はインデン、メチルインデン、スチレン又はメチルスチレンを、それら自体で又は異なった組合せで、ルイス酸の存在下で重合させることから製造することができる。芳香族炭化水素樹脂の商業的例には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能な、Kristalex(登録商標)3100及びKristalex(登録商標)5140が含まれる。水素化芳香族樹脂には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能な、Regalrez(登録商標)1094及びRegalrez(登録商標)1128が含まれる。
【0031】
本発明に従った脂肪族−芳香族樹脂は、少なくとも1種の脂肪族モノマー及び少なくとも1種の芳香族モノマーから製造することができる。適切な脂肪族モノマー及び芳香族モノマーには、本明細書中で検討したものが含まれる。脂肪族−芳香族樹脂の例には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能なPiccotac(登録商標)9095及びGoodyear Chemicalから入手可能なWingtack(登録商標)Extraが含まれる。水素化脂肪族−芳香族樹脂には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能なRegalite(登録商標)V3100及びExxon Mobil Chemicalから入手可能なEscorez(登録商標)5600が含まれる。
【0032】
本発明に従ったポリテルペン樹脂は少なくとも1種のテルペンモノマーから製造された樹脂である。例えばα−ピネン、β−ピネン、d−リモネン及びジペンテンを、塩化アルミニウムの存在下で重合させて、ポリテルペン樹脂を得ることができる。ポリテルペン樹脂の他の例には、これらに限定されないが、Arizona Chemicalから入手可能なSylvares(登録商標)TR1100及びPinovaから入手可能なPiccolyte(登録商標)A125が含まれる。
【0033】
芳香族的に変性されたテルペン樹脂の例には、これらに限定されないが、Arizona Chemicalから入手可能な、Sylvares(登録商標)ZT105LT及びSylvares(登録商標)ZT115LTが含まれる。
【0034】
一つの態様に於いて、熱可塑性エラストマー組成物は低分子量スチレン系ブロックコポリマー(SBC)を含む。これらの態様に於いて、この組成物は、溶融加工可能であり、改良された弾性特性及び機械的特性を示す。性能添加剤は、これらの加工性を維持するか又は更に改良しながら、この組成物の機械的特性を劇的に改良することができる。
【0035】
典型的に、高分子量スチレン系ブロックコポリマーは、高分子量ポリマー(典型的に、100,000よりも高い分子量を有する)は、単独では、通常のプラスチック加工条件下で、例えば180〜230℃で十分に流れないので、容易に加工することができない。これは、二相(biphasic)SBCを溶融単独相システムに変換するために、高温度及び高剪断条件を必要とする相非混和性に起因する。例えばこれらは一般的に約350℃であると推定される、高い規則−不規則温度を有するであろう。高温度で加工するとき、ポリマー鎖の分解が存在するかもしれず、これは機械的特性に於ける低下を起こすであろう。
【0036】
他方、より低い分子量のSBC(例えば約100,000よりも低い分子量を有する)は、通常のプラスチック加工条件下で容易に加工することができるが、これらは幾つかの用途のために必要である性能のレベルを提供できない。如何なる理論によっても結び付けられることなく、この改良された性能は芳香族添加剤のための低分子量SBC中のスチレン系相の強化及び混合された脂肪族添加剤のためのスチレン系相とオレフィン相との間の増加した内部拡散(interdiffusion)によって起こすことができる。
【0037】
一つの態様に於いて、本発明に従った脂肪族、芳香族又は混合性能添加剤を、低分子量SBCを含有する組成物に添加して、改良された引張強度、引裂強度及び破断点伸びをもたらし並びに改良された加工性をもたらすことができる。例えば、幾つかの態様に於いて、性能に於けるこの改良によって、低分子量SBCが高分子量SBCと同じレベルで又はそれよりも高いレベルで性能を発揮することが可能になる。
【0038】
本発明に従った熱可塑性エラストマー組成物は種々の量の性能添加剤を有することができる。典型的な添加剤レベルには、SBC100部当たり、性能添加剤5〜50部(重量基準)が含まれる。好ましい添加剤レベルには、SBC100部当たり性能添加剤10〜30部が含まれる。
【0039】
熱可塑性エラストマー及び性能添加剤は、任意の溶融混合装置、例えばブラベンダー又は密閉式ミキサー内で一緒にすることができる。
【0040】
熱可塑性エラストマー組成物には、充填剤、プロセス油、安定剤及び酸化防止剤が含有されていてよい。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、未変性のTPEが、例えば押出成形工程及び射出成形工程で使用される用途に於いて使用することができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、これらに限定されないが、シール及びガスケット、オーバー・モールディング(over molding)、ボトル・クロージャー及びキャップ、ウェザーストリップ、クロージャー、台所用品グリップ及び食品貯蔵庫、配管工事ガスケット、建設シール、自動車ブーツ、皿洗い機ブーツ/シール、歯ブラシ/レーザーソフトグリップ、手/電気工具、自動車導管、ワイヤ及びケーブル絶縁材、運動靴底及びキャスター・ホイール・トレッドを含む、種々の自動車、建設並びに家庭及びパーソナルケア用途に於いて使用することができる。
【実施例】
【0042】
本発明を、その好ましい態様の下記の実施例によって更に例示するが、これらの実施例は、単に例示の目的のために含められ、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。
【0043】
下記の方法論は、熱可塑性エラストマー組成物の機械的特性及びメルトレオロジーを測定するために使用した。
【0044】
機械的特性
引張強度、弾性率及び破断点伸びは、ASTM D412により、MTS UTM(4201)内で、500mm/分のクロスヘッド速度で測定した。ダンベル形状試験片を、成形したシートから切断した。引裂強度は同じ条件でASTM D624に従って測定した。6回の試験の結果を平均した。ショアー硬度はASTM D2240に従って、A型ジュロメーターを使用して測定した。
【0045】
メルトレオロジー
100〜5000 1/秒での定常剪断粘度を、毛管0.8mm直径×30mm長さを有するRheograph2000(Goettfert,Inc.サウスカロライナ州Rockhill)で、210℃で測定した。動的機械的データを、Rheomtrics RDAIIで、1mm隙間を有する25mm直径の平行プレートを使用して測定した。動的振動スイープ(dynamic frequency sweep)を、210℃で、10%歪み振幅を有する振動の1〜400rad/secで作動させた。
【0046】
対照例1及び実施例1〜4
芳香族樹脂性能添加剤を含有するPP/SEBS
下記の表Iに記載した比率(重量部)での成分を、190℃で保持された異なった帯域の温度を有する、30mm同速回転二軸スクリュー押出機内で混合することによって、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。押し出した後、サンプルを試験のために射出成形した。
【0047】
【表1】
【0048】
表Iに於いて、Kraton G1651は、30%のスチレン含有量を有するSEBSブロックコポリマーである。Marlex HGL120は、ポリプロピレンである。Omycarb3は、炭酸カルシウム充填剤である。Drakeol34は、プロセス油である。Endex160、Kristalex5140、Picco5140及びPlastolyn D125は、異なった種類の芳香族樹脂性能添加剤である。
【0049】
図1はサンプルの引張強度を示す。図1から判るように、芳香族樹脂添加剤の大部分は、対照例1に比較して、組成物の引張強度を増加させた。
【0050】
図2はサンプルのショアーA硬度を示す。図2から判るように、芳香族樹脂添加剤は、対照例1に比較して、組成物の軟度を増加させた。
【0051】
図3はサンプルの極限伸びを示し、図4はこれらの引裂強度を示す。図3及び図4から判るように、芳香族樹脂添加剤は、対照例1に比較して、組成物の引裂強度を維持しながら、組成物の極限伸びを改良した。
【0052】
図5はサンプルの圧縮永久歪み特性を示す。図5から判るように、芳香族樹脂添加剤は、対照例1に比較して、組成物の圧縮永久歪み特性を低下させた。ポリオレフィン/エラストマーブレンドの機械的特性を失うことなく、それらの圧縮永久歪みを低下させることは予想外であり、TPEのこの種類に於いて非常に望ましいことであった。
【0053】
図6は、対照サンプル及びEndex160を含有する実施例1のサンプルの見掛け粘度を示す。図6から判るように、芳香族樹脂添加剤を含有する組成物の見掛け粘度は、対照例1に比較して、増加した。この挙動は、低剪断速度でより高い粘度が望ましい押出及び吹込成形のような用途のために、TPEを加工する際に更に助けになる。
【0054】
実施例5〜8
脂肪族樹脂性能添加剤を含有するPP/SEBS
芳香族樹脂添加剤を脂肪族樹脂添加剤に置き換えた以外は、実施例1〜4に記載した手順に従って、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。脂肪族樹脂添加剤は、Piccotac1115(実施例5)、Regalite1125(実施例6)、Regalrez1126(実施例7)及びEastotac H142W(実施例8)であった。脂肪族樹脂添加剤は、実施例1〜4に於ける芳香族樹脂添加剤と同じ量で使用した。
【0055】
これらの組成物の特性を、図7〜11に、前記の対照例1に対比して示す。図7及び図8は、脂肪族樹脂添加剤が、対照例1に対比して、TPE組成物の引張強度及び極限伸びを増加させたことを示す。図9及び図10は、脂肪族樹脂添加剤が、対照例1に対比して、TPE組成物を軟化させ、それらの圧縮永久歪み特性を低下させたことを示す。従って、脂肪族樹脂添加剤は、TPE組成物の機械的特性及び弾性特性の両方を改良することができる。
【0056】
芳香族樹脂添加剤とは反対に、脂肪族樹脂添加剤は、対照例1に対比して、TPE組成物の溶融粘度を低下させた。この特性によって、成形操作に於いて、より良い成形流れ及びより速い加工が可能になる。
【0057】
対照例2及び実施例9〜14
芳香族、脂肪族及び脂肪族−芳香族樹脂性能添加剤を含有するSEBS単独
ポリプロピレンを使用しなかった以外は、対照例1及び実施例1〜4の手順に従って、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。組成物中の成分及びそれらの比率(重量部)を、下記の表IIに示す。
【0058】
【表2】
【0059】
前記のように、Kristalex5140は芳香族樹脂であり、Regalite R1125は脂肪族樹脂であり、そしてRegalite S5100は混合脂肪族−芳香族樹脂である。
【0060】
その結果を、図12〜15に示す。図12〜14に於いて判るように、両方の載荷レベルで、芳香族、脂肪族及び混合樹脂添加剤は、対照例2に対比して、ポリプロピレンの不存在下で、TPE組成物の引張強度、引裂強度及び極限伸びを劇的に改良した。
【0061】
図15に於いて判るように、芳香族樹脂の低い載荷レベルで並びに脂肪族及び混合樹脂添加剤の両方の載荷レベルで、圧縮永久歪み特性に於いて、あったとしても僅かな損失が存在した。
【0062】
実施例1〜14は、本発明の添加剤がスチレン系ブロックコポリマー及びスチレン系ブロックコポリマーとポリプロピレンとのブレンドの弾性特性及び機械的特性の両方を同時に改良できることを示している。
【0063】
対照例3〜4及び実施例15〜16
芳香族及び脂肪族−芳香族樹脂性能添加剤を含有する低分子量SEBS単独
ポリプロピレンを使用せず、射出成形の代わりに、圧縮成形によってサンプルを得た以外は、対照例1及び実施例1〜4の手順に従って、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。組成物中の成分及びそれらの比率(重量部)を、下記の表IIIに示す。
【0064】
【表3】
【0065】
Kraton G1651は、高分子量SEBSブロックコポリマー(MWn=約250,000)である。Kraton G1650は、低分子量SEBSブロックコポリマー(MWn=約100,000)である。Endex160は、芳香族樹脂である。そしてRegalrez3102は、混合脂肪族−芳香族樹脂である。
【0066】
これらのTPE組成物の引張強度結果を、図16に示す。図16に於いて判るように、芳香族樹脂添加剤及び混合樹脂添加剤は低分子量SEBSコポリマーの引張強度を改良した。ブレンドした低分子量SEBS組成物の引張強度値は高分子量SEBS単独のものとほぼ同じか又はこれよりも高かった。
【0067】
本発明を、その好ましい態様を具体的に参照して詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲内で変形及び修正を実施できることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するクロスリファレンス
本件特許出願は、2007年7月9日付で出願された米国仮特許出願第60/958,840号及び2007年8月28日付で出願された米国仮特許出願第60/968,387号の出願日の利益を請求する。両方の特許出願の全内容を、参照して本明細書に含める。
【0002】
本発明は、一般的に、改良された特性、例えば弾性特性、機械的特性及び加工性を有する、熱可塑性エラストマー(TPE)組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、組成物の機械的特性を維持しながら、圧縮永久歪みを低下させることができる、性能添加剤(performance additives)を含有するTPE組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性エラストマー(TPE)はエラストマーとプラスチックスとをブレンドすることによって得られる新規な種類の材料である。この組合せは弾性特性、機械的特性及び加工性の独特の組合せを有するこれらの材料を提供する。これらの材料の使用温度は、エラストマー相のガラス転移温度に近い非常に低い温度から、プラスチック成分の融点又は軟化点に近い高温度までの範囲になり得る。加工温度で、これらは溶融相にあり、プラスチック加工必要条件で加工することができる。エラストマー相は、必須の弾性特性、例えば圧縮永久歪み、応力緩和、伸び及び残留伸びを提供する。引張強度及び引裂強度のような機械的特性は、プラスチック相に、より依存性である。しばしば、工業界は、他の特性に不利な影響を与えることなく、これらの特性を最適化するように、挑戦している。
【0004】
ポリプロピレンとスチレン系ブロックコポリマーとのブレンドの研究がなされてきた。これらの研究はこれらのシステムの異なった特性をバランスさせることの挑戦を強調している。より高い機械的特性と共により良い弾性特性が探求される多くの場合に、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーン又はフッ素ポリマーのような高い弾性特性を有するエラストマーを選択しなければならない。これらの性能問題に取り組むための別のアプローチはTPE中のゴム相を加硫することである。しかしながら、何れの場合に於いても、スチレン系ブロックコポリマーを使用することによって得られる軟度は失われる。
【0005】
従って、TPEの弾性特性及び機械的特性を改良するための当該技術分野に於けるニーズが依然として残っている。本発明は、TPE組成物に或る種の性能添加剤を添加して、TPE中の異なった相の形態を、それらの性能を最大にするように制御することによって、このニーズ及び以下の説明を読んで当業者に明らかになるであろう他のニーズに取り組む。
【発明の概要】
【0006】
熱可塑性エラストマー及び500〜5,000の数平均分子量を有する脂肪族、芳香族又は脂肪族−芳香族樹脂から選択された性能添加剤を含む熱可塑性エラストマー組成物。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【図2】図2は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルのショアーA硬度を示す。
【図3】図3は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの極限伸びを示す。
【図4】図4は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの引裂強度を示す。
【図5】図5は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの圧縮永久歪みを示す。
【図6】図6は対照例1及び実施例1〜4で製造したTPEサンプルの見掛け粘度を示す。
【0008】
【図7】図7は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【図8】図8は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの極限伸びを示す。
【図9】図9は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルのショアーA硬度を示す。
【図10】図10は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの圧縮永久歪みを示す。
【図11】図11は対照例1及び実施例5〜8で製造したTPEサンプルの見掛け粘度を示す。
【0009】
【図12】図12は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【図13】図13は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの引裂強度を示す。
【図14】図14は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの極限伸びを示す。
【図15】図15は対照例2及び実施例9〜14で製造したTPEサンプルの圧縮永久歪みを示す。
【0010】
【図16】図16は対照例3〜4及び実施例15〜16で製造したTPEサンプルの引張強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の物質組成物及び方法を、一層詳細に開示し、説明する前に、本発明は明示され、そのようなものとして開示された場合を除いて、本発明は、特定の合成方法又は特別の配合に限定されないことが理解されるべきである。また、使用される用語は、特定の態様のみを説明する目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0012】
単数形(a,an及びthe)は、文脈がそうでないことを明示していない限り、1個(種)又はそれ以上を意味する。同様に、複数の名詞は、また、文脈がそうでないことを明示していない限り、1個(種)又はそれ以上を意味する。
【0013】
「任意の」又は「任意的に」は、次に記載される事象又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことを意味する。説明には、この事象又は状況が生じる例及びそれらが生じない例が含まれる。
【0014】
本明細書に於いて、範囲を、約一つの特定の値から及び/又は約別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表されているとき、別の態様は、この範囲内の全ての組合せと共に、一つの特定の値から及び/又は他の特定の値までであると理解される。
【0015】
本件明細書を通して、特許又は刊行物が引用される場合、これらの文書の全開示は、文脈がそうでないことを明示していない限り、本発明が関係する技術水準を一層完全に説明するために、本明細書中に参照して含められる。
【0016】
熱可塑性エラストマー(TPE)組成物に於ける主な挑戦の一つは、機械的特性を犠牲にすることなく、より良い弾性特性を得ることである。弾性特性は、通常、TPEのエラストマー相からもたらさせる。他方、TPE中のプラスチック相は、より良い機械的特性を得るための主な寄与要因である。TPE中のゴムとプラスチックとの比は、これらの特性をバランスさせるために制御されている。他方の特性を失うことなく、これらの特性の一つを改良することが、工業界に対する挑戦である。
【0017】
驚くべきことに、芳香族、脂肪族又は芳香族及び脂肪族(混合)の両方の特性を有する性能添加剤を使用してTPEの相形態を変性して、弾性特性(例えば圧縮永久歪み、応力緩和、残留歪み)及び機械的特性の両方を同時に改良することができることが見出された。
【0018】
本発明においては、任意の熱可塑性エラストマーも使用することができる。例えば適切な熱可塑性エラストマーには、これらに限定されないが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)のようなスチレン系ブロックコポリマー並びにポリオレフィン(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)又は他のオレフィンコポリマー)とのそのブレンド、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム並びにポリオレフィンとEPDMゴムとのブレンドが含まれる。
【0019】
例えばスチレン系ブロックコポリマー(SBC)、例えばKraton(登録商標)(Kraton Polymersから市販されている)及びDynaflex(登録商標)(GLS Corporationから市販されている)を、本発明に於ける熱可塑性エラストマーとして使用することができる。適切なSBCには、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)が含まれる。
【0020】
更に、熱可塑性加硫物(TPV)、例えばSantoprene(登録商標)(Exxon Mobilから市販されている)、コポリエステルエラストマー(COPE又はPCCE)、例えばNeostar(登録商標)及びEcdel(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)及びポリオレフィンエラストマー(POE)、例えば、Engage(登録商標)(Dow Chemicalから市販されている)を、本発明に於ける熱可塑性エラストマーとして使用することができる。
【0021】
この熱可塑性エラストマー組成物には、熱可塑性エラストマーの何れかが単独で含有されていてよく又は1種若しくはそれ以上の熱可塑性エラストマーのブレンドを使用することができる。
【0022】
本発明に於いて使用される性能添加剤には、芳香族、脂肪族及び混合脂肪族−芳香族樹脂が含まれる。これらの樹脂の分子量は500〜5,000の数平均分子量の範囲であってよい。
【0023】
適切な芳香族添加剤の例には、商品名Endex、Kristalex、Picco及びPiccolasticを有する樹脂が含まれる。これらの樹脂はスチレン、置換されたスチレン及びインデンを異なった比及び分子量で重合させることによって得ることができる。
【0024】
適切な脂肪族添加剤の例には、Piccotac、Regalrez、Regalite及びEastotacのような商品名を有する樹脂が含まれる。Piccotacは300〜2000の数平均分子量を有するイソプレン系システムである。Regalrez、Regalite及びEastotacはそれらのモデル番号に依存して、水素化芳香族樹脂又はシクロ脂肪族システムである。
【0025】
混合樹脂添加剤は芳香族と脂肪族との組合せであり、また、一般的に、それらのモデル番号に依存して、商品名、Regalite、Regalrez、Piccotac及びEastotacで知られている。
【0026】
幾つかの態様に於いて、適切な樹脂には、これらに限定されないが、(1)ポリテルペン樹脂及び水素化ポリテルペン樹脂、(2)脂肪族石油炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体、(3)芳香族炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体並びに(4)脂環式石油炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体が含まれる。上記の樹脂の2種又はそれ以上の混合物を、幾つかの態様に於いて使用することができる。
【0027】
幾つかの態様に於いて、適切な炭化水素樹脂には、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、テルペン樹脂及びテルペン/DCPD樹脂が含まれる。
【0028】
本発明に従った脂肪族樹脂はアルカン、アルケン及びアルキンから選択された少なくとも1種のモノマーから製造される。これらのモノマーは直鎖又は分枝鎖であってよい。例えば脂肪族樹脂はシス−若しくはトランス−ピペリレン、イソプレン又はジシクロペンタジエンを重合させることによって製造することができる。脂肪族樹脂の例には、これらに限定されないが、Eastman ChemicalからのPiccotac(登録商標)1095;Kolon Industriesから入手可能なHikorez(登録商標)C−110及びGoodyear Chemicalから入手可能なWingtack(登録商標)が含まれる。水素化シクロ脂肪族樹脂には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能な、Eastotac(登録商標)H−100、Eastotac(登録商標)H−115、Eastotac(登録商標)H−130及びEastotac(登録商標)H−142が含まれる。Eastotac(登録商標)樹脂は、水素化のレベルが異なっている、種々のグレード(E、R、L及びW)で入手可能である。
【0029】
別の例として、炭化水素樹脂、例えばEastotac(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)、ロジン及びロジン誘導体樹脂、例えばPermalyn(登録商標)及びPoly−Pale(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)、低分子量樹脂、例えばKristalex(登録商標)及びRegalrez(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)、エチレン−アクリレートコポリマー、例えばEMAC及びEBAC(Westlakeから市販されている)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えばElvax(登録商標)(DuPontから市販されている)並びにコポリエステルエラストマー、例えばNeostar(登録商標)及びEcdel(登録商標)(Eastman Chemicalから市販されている)を使用することができる。
【0030】
本発明に従った芳香族樹脂は、1個又はそれ以上の環を有する少なくとも1種の不飽和環式炭化水素モノマーから製造することができる。例えば芳香族炭化水素樹脂はインデン、メチルインデン、スチレン又はメチルスチレンを、それら自体で又は異なった組合せで、ルイス酸の存在下で重合させることから製造することができる。芳香族炭化水素樹脂の商業的例には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能な、Kristalex(登録商標)3100及びKristalex(登録商標)5140が含まれる。水素化芳香族樹脂には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能な、Regalrez(登録商標)1094及びRegalrez(登録商標)1128が含まれる。
【0031】
本発明に従った脂肪族−芳香族樹脂は、少なくとも1種の脂肪族モノマー及び少なくとも1種の芳香族モノマーから製造することができる。適切な脂肪族モノマー及び芳香族モノマーには、本明細書中で検討したものが含まれる。脂肪族−芳香族樹脂の例には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能なPiccotac(登録商標)9095及びGoodyear Chemicalから入手可能なWingtack(登録商標)Extraが含まれる。水素化脂肪族−芳香族樹脂には、これらに限定されないが、Eastman Chemicalから入手可能なRegalite(登録商標)V3100及びExxon Mobil Chemicalから入手可能なEscorez(登録商標)5600が含まれる。
【0032】
本発明に従ったポリテルペン樹脂は少なくとも1種のテルペンモノマーから製造された樹脂である。例えばα−ピネン、β−ピネン、d−リモネン及びジペンテンを、塩化アルミニウムの存在下で重合させて、ポリテルペン樹脂を得ることができる。ポリテルペン樹脂の他の例には、これらに限定されないが、Arizona Chemicalから入手可能なSylvares(登録商標)TR1100及びPinovaから入手可能なPiccolyte(登録商標)A125が含まれる。
【0033】
芳香族的に変性されたテルペン樹脂の例には、これらに限定されないが、Arizona Chemicalから入手可能な、Sylvares(登録商標)ZT105LT及びSylvares(登録商標)ZT115LTが含まれる。
【0034】
一つの態様に於いて、熱可塑性エラストマー組成物は低分子量スチレン系ブロックコポリマー(SBC)を含む。これらの態様に於いて、この組成物は、溶融加工可能であり、改良された弾性特性及び機械的特性を示す。性能添加剤は、これらの加工性を維持するか又は更に改良しながら、この組成物の機械的特性を劇的に改良することができる。
【0035】
典型的に、高分子量スチレン系ブロックコポリマーは、高分子量ポリマー(典型的に、100,000よりも高い分子量を有する)は、単独では、通常のプラスチック加工条件下で、例えば180〜230℃で十分に流れないので、容易に加工することができない。これは、二相(biphasic)SBCを溶融単独相システムに変換するために、高温度及び高剪断条件を必要とする相非混和性に起因する。例えばこれらは一般的に約350℃であると推定される、高い規則−不規則温度を有するであろう。高温度で加工するとき、ポリマー鎖の分解が存在するかもしれず、これは機械的特性に於ける低下を起こすであろう。
【0036】
他方、より低い分子量のSBC(例えば約100,000よりも低い分子量を有する)は、通常のプラスチック加工条件下で容易に加工することができるが、これらは幾つかの用途のために必要である性能のレベルを提供できない。如何なる理論によっても結び付けられることなく、この改良された性能は芳香族添加剤のための低分子量SBC中のスチレン系相の強化及び混合された脂肪族添加剤のためのスチレン系相とオレフィン相との間の増加した内部拡散(interdiffusion)によって起こすことができる。
【0037】
一つの態様に於いて、本発明に従った脂肪族、芳香族又は混合性能添加剤を、低分子量SBCを含有する組成物に添加して、改良された引張強度、引裂強度及び破断点伸びをもたらし並びに改良された加工性をもたらすことができる。例えば、幾つかの態様に於いて、性能に於けるこの改良によって、低分子量SBCが高分子量SBCと同じレベルで又はそれよりも高いレベルで性能を発揮することが可能になる。
【0038】
本発明に従った熱可塑性エラストマー組成物は種々の量の性能添加剤を有することができる。典型的な添加剤レベルには、SBC100部当たり、性能添加剤5〜50部(重量基準)が含まれる。好ましい添加剤レベルには、SBC100部当たり性能添加剤10〜30部が含まれる。
【0039】
熱可塑性エラストマー及び性能添加剤は、任意の溶融混合装置、例えばブラベンダー又は密閉式ミキサー内で一緒にすることができる。
【0040】
熱可塑性エラストマー組成物には、充填剤、プロセス油、安定剤及び酸化防止剤が含有されていてよい。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、未変性のTPEが、例えば押出成形工程及び射出成形工程で使用される用途に於いて使用することができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、これらに限定されないが、シール及びガスケット、オーバー・モールディング(over molding)、ボトル・クロージャー及びキャップ、ウェザーストリップ、クロージャー、台所用品グリップ及び食品貯蔵庫、配管工事ガスケット、建設シール、自動車ブーツ、皿洗い機ブーツ/シール、歯ブラシ/レーザーソフトグリップ、手/電気工具、自動車導管、ワイヤ及びケーブル絶縁材、運動靴底及びキャスター・ホイール・トレッドを含む、種々の自動車、建設並びに家庭及びパーソナルケア用途に於いて使用することができる。
【実施例】
【0042】
本発明を、その好ましい態様の下記の実施例によって更に例示するが、これらの実施例は、単に例示の目的のために含められ、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。
【0043】
下記の方法論は、熱可塑性エラストマー組成物の機械的特性及びメルトレオロジーを測定するために使用した。
【0044】
機械的特性
引張強度、弾性率及び破断点伸びは、ASTM D412により、MTS UTM(4201)内で、500mm/分のクロスヘッド速度で測定した。ダンベル形状試験片を、成形したシートから切断した。引裂強度は同じ条件でASTM D624に従って測定した。6回の試験の結果を平均した。ショアー硬度はASTM D2240に従って、A型ジュロメーターを使用して測定した。
【0045】
メルトレオロジー
100〜5000 1/秒での定常剪断粘度を、毛管0.8mm直径×30mm長さを有するRheograph2000(Goettfert,Inc.サウスカロライナ州Rockhill)で、210℃で測定した。動的機械的データを、Rheomtrics RDAIIで、1mm隙間を有する25mm直径の平行プレートを使用して測定した。動的振動スイープ(dynamic frequency sweep)を、210℃で、10%歪み振幅を有する振動の1〜400rad/secで作動させた。
【0046】
対照例1及び実施例1〜4
芳香族樹脂性能添加剤を含有するPP/SEBS
下記の表Iに記載した比率(重量部)での成分を、190℃で保持された異なった帯域の温度を有する、30mm同速回転二軸スクリュー押出機内で混合することによって、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。押し出した後、サンプルを試験のために射出成形した。
【0047】
【表1】
【0048】
表Iに於いて、Kraton G1651は、30%のスチレン含有量を有するSEBSブロックコポリマーである。Marlex HGL120は、ポリプロピレンである。Omycarb3は、炭酸カルシウム充填剤である。Drakeol34は、プロセス油である。Endex160、Kristalex5140、Picco5140及びPlastolyn D125は、異なった種類の芳香族樹脂性能添加剤である。
【0049】
図1はサンプルの引張強度を示す。図1から判るように、芳香族樹脂添加剤の大部分は、対照例1に比較して、組成物の引張強度を増加させた。
【0050】
図2はサンプルのショアーA硬度を示す。図2から判るように、芳香族樹脂添加剤は、対照例1に比較して、組成物の軟度を増加させた。
【0051】
図3はサンプルの極限伸びを示し、図4はこれらの引裂強度を示す。図3及び図4から判るように、芳香族樹脂添加剤は、対照例1に比較して、組成物の引裂強度を維持しながら、組成物の極限伸びを改良した。
【0052】
図5はサンプルの圧縮永久歪み特性を示す。図5から判るように、芳香族樹脂添加剤は、対照例1に比較して、組成物の圧縮永久歪み特性を低下させた。ポリオレフィン/エラストマーブレンドの機械的特性を失うことなく、それらの圧縮永久歪みを低下させることは予想外であり、TPEのこの種類に於いて非常に望ましいことであった。
【0053】
図6は、対照サンプル及びEndex160を含有する実施例1のサンプルの見掛け粘度を示す。図6から判るように、芳香族樹脂添加剤を含有する組成物の見掛け粘度は、対照例1に比較して、増加した。この挙動は、低剪断速度でより高い粘度が望ましい押出及び吹込成形のような用途のために、TPEを加工する際に更に助けになる。
【0054】
実施例5〜8
脂肪族樹脂性能添加剤を含有するPP/SEBS
芳香族樹脂添加剤を脂肪族樹脂添加剤に置き換えた以外は、実施例1〜4に記載した手順に従って、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。脂肪族樹脂添加剤は、Piccotac1115(実施例5)、Regalite1125(実施例6)、Regalrez1126(実施例7)及びEastotac H142W(実施例8)であった。脂肪族樹脂添加剤は、実施例1〜4に於ける芳香族樹脂添加剤と同じ量で使用した。
【0055】
これらの組成物の特性を、図7〜11に、前記の対照例1に対比して示す。図7及び図8は、脂肪族樹脂添加剤が、対照例1に対比して、TPE組成物の引張強度及び極限伸びを増加させたことを示す。図9及び図10は、脂肪族樹脂添加剤が、対照例1に対比して、TPE組成物を軟化させ、それらの圧縮永久歪み特性を低下させたことを示す。従って、脂肪族樹脂添加剤は、TPE組成物の機械的特性及び弾性特性の両方を改良することができる。
【0056】
芳香族樹脂添加剤とは反対に、脂肪族樹脂添加剤は、対照例1に対比して、TPE組成物の溶融粘度を低下させた。この特性によって、成形操作に於いて、より良い成形流れ及びより速い加工が可能になる。
【0057】
対照例2及び実施例9〜14
芳香族、脂肪族及び脂肪族−芳香族樹脂性能添加剤を含有するSEBS単独
ポリプロピレンを使用しなかった以外は、対照例1及び実施例1〜4の手順に従って、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。組成物中の成分及びそれらの比率(重量部)を、下記の表IIに示す。
【0058】
【表2】
【0059】
前記のように、Kristalex5140は芳香族樹脂であり、Regalite R1125は脂肪族樹脂であり、そしてRegalite S5100は混合脂肪族−芳香族樹脂である。
【0060】
その結果を、図12〜15に示す。図12〜14に於いて判るように、両方の載荷レベルで、芳香族、脂肪族及び混合樹脂添加剤は、対照例2に対比して、ポリプロピレンの不存在下で、TPE組成物の引張強度、引裂強度及び極限伸びを劇的に改良した。
【0061】
図15に於いて判るように、芳香族樹脂の低い載荷レベルで並びに脂肪族及び混合樹脂添加剤の両方の載荷レベルで、圧縮永久歪み特性に於いて、あったとしても僅かな損失が存在した。
【0062】
実施例1〜14は、本発明の添加剤がスチレン系ブロックコポリマー及びスチレン系ブロックコポリマーとポリプロピレンとのブレンドの弾性特性及び機械的特性の両方を同時に改良できることを示している。
【0063】
対照例3〜4及び実施例15〜16
芳香族及び脂肪族−芳香族樹脂性能添加剤を含有する低分子量SEBS単独
ポリプロピレンを使用せず、射出成形の代わりに、圧縮成形によってサンプルを得た以外は、対照例1及び実施例1〜4の手順に従って、熱可塑性エラストマー組成物を製造した。組成物中の成分及びそれらの比率(重量部)を、下記の表IIIに示す。
【0064】
【表3】
【0065】
Kraton G1651は、高分子量SEBSブロックコポリマー(MWn=約250,000)である。Kraton G1650は、低分子量SEBSブロックコポリマー(MWn=約100,000)である。Endex160は、芳香族樹脂である。そしてRegalrez3102は、混合脂肪族−芳香族樹脂である。
【0066】
これらのTPE組成物の引張強度結果を、図16に示す。図16に於いて判るように、芳香族樹脂添加剤及び混合樹脂添加剤は低分子量SEBSコポリマーの引張強度を改良した。ブレンドした低分子量SEBS組成物の引張強度値は高分子量SEBS単独のものとほぼ同じか又はこれよりも高かった。
【0067】
本発明を、その好ましい態様を具体的に参照して詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲内で変形及び修正を実施できることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性エラストマー及び
(b)500〜5,000の数平均分子量を有する脂肪族樹脂、芳香族樹脂又は脂肪族−芳香族樹脂から選択された性能添加剤
を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーがスチレン系ブロックコポリマー若しくはそのポリオレフィンとのブレンド、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム又は両方を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
スチレン系ブロックコポリマーがスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)又はこれらの組合せである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオレフィンがポリプロピレン、ポリエチレン又はこれらのコポリマーを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーが熱可塑性加硫物、コポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー又はこれらの組合せを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
性能添加剤がスチレン、置換されたスチレン、インデン又は置換されたインデンモノマー単位を含む芳香族樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
性能添加剤がエチレン、ピペリレン、イソプレン、テルペン又はジシクロペンタジエンモノマー単位を含む脂肪族樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
性能添加剤が脂肪族−芳香族樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
スチレン系ブロックコポリマー100部当たり性能添加剤5〜50部を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
スチレン系ブロックコポリマー100部当たり性能添加剤10〜30部を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
充填剤、プロセス油、安定剤、酸化防止剤又はこれらの組合せを更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
熱可塑性エラストマーが100,000よりも低い数平均分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項1】
(a)熱可塑性エラストマー及び
(b)500〜5,000の数平均分子量を有する脂肪族樹脂、芳香族樹脂又は脂肪族−芳香族樹脂から選択された性能添加剤
を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーがスチレン系ブロックコポリマー若しくはそのポリオレフィンとのブレンド、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム又は両方を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
スチレン系ブロックコポリマーがスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)又はこれらの組合せである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオレフィンがポリプロピレン、ポリエチレン又はこれらのコポリマーを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーが熱可塑性加硫物、コポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー又はこれらの組合せを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
性能添加剤がスチレン、置換されたスチレン、インデン又は置換されたインデンモノマー単位を含む芳香族樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
性能添加剤がエチレン、ピペリレン、イソプレン、テルペン又はジシクロペンタジエンモノマー単位を含む脂肪族樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
性能添加剤が脂肪族−芳香族樹脂である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
スチレン系ブロックコポリマー100部当たり性能添加剤5〜50部を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
スチレン系ブロックコポリマー100部当たり性能添加剤10〜30部を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
充填剤、プロセス油、安定剤、酸化防止剤又はこれらの組合せを更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
熱可塑性エラストマーが100,000よりも低い数平均分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−533226(P2010−533226A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516047(P2010−516047)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/008429
【国際公開番号】WO2009/009071
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/008429
【国際公開番号】WO2009/009071
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】
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