説明

熱可塑性ポリウレタン樹脂粒子の製造方法

【課題】用途に適した粒度分布を有し、十分な粉体流動性を有する樹脂粉体を分級することなく得ることのできる熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】曇点が60〜120℃の下記一般式(1)で示される分散剤(A)を含有する水中で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)とケチミン化合物(C)とを反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粒子(E)を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【化1】


[式中、a+cは4〜1000の整数、bは2〜500の整数であり、a+c>bを満たす。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリウレタン樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性媒体中でウレタン樹脂粉末を作る方法が提案されている。(例えば特許文献1)
また、特定の溶解度パラメーター、およびHLBを有する分散剤を含有する水中で、ウレタン樹脂粉末形成成分を分散させることで、分級なしでスラッシュ成形用又は芯地用接着剤に適した粒度分布の分散体を得る方法も提案されている。(例えば特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−97712号公報
【特許文献2】特開平10−338733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記特許文献1の方法は、ウレタン樹脂粉体形成成分を水中に分散するときに、分散媒の水中に乳化剤を含有させかつ高剪断力の分散機で分散するため、生成した分散体の粒子径が数μmの微小粒子から数mm程度の粗大粒子まで生成する。この分散体から得られる樹脂粉体をそのままスラッシュ成形用途に使用すると、粉体流動性が悪く成形物表面にピンホール等が発生するため、スラッシュ成形用途に適した粒度分布に分級する必要があり、非常にロスが大きく、また手間のかかる方法であった。また、芯地用接着剤の用途では、粒度分布が広く粉体流動性が十分ではないため基布への塗布が均一に行えず、従って接着性が十分に改善され得ないという問題点があった。
【0005】
また、上記特許文献2の方法は、ウレタンプレポリマーの粘度が高い場合など、ウレタン樹脂粉末形成成分の性状、組成によっては粉体流動性や粒度分布が不十分な場合があった。
本発明は、上記の問題点が改善された製造方法、すなわち用途に適した粒度分布を有し、十分な粉体流動性を有する樹脂粉体を分級することなく得ることのできる熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、曇点が60〜120℃の下記一般式(1)で示される分散剤(A)を含有する水中で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)とケチミン化合物(C)とを反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粒子(E)を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法である。
【0007】
【化1】

[式中、a+cは4〜1000の整数、bは2〜500の整数であり、a+c > b を満たす。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法で得られる樹脂粒子(E)は、用途に適した粒度分布を有し、十分な粉体流動性を有する。本発明の製造方法によれば、このような樹脂粒子(E)を分級することなく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用される分散剤(A)は、前記一般式(1)で示されるポリプロピレングリコールのポリエチレングリコール付加物(プルロニック型ポリエーテル)である。式(1)中、a+cは4〜1000の整数、bは2〜500の整数であり、a+c > b を満たす。好ましくは、a+cが4〜500、bが2〜250であり、さらに好ましくは、a+cが10〜200、bが5〜100である。
【0010】
a+cが1000以上、bが500以上であると樹脂粒子同士が合一しやすく、a+cが4以下、bが2以下であると分散効果が不十分である。
本発明で使用される(A)の曇点は60〜120℃であり、好ましくは80〜120℃であり、さらに好ましくは100〜120℃である。曇点が60℃未満、または120℃を超えると、ウレタン樹脂粒子形成成分の性状、組成等により粒度分布が大きく変化するため好ましくない。
a+c ≦ bの場合は、分散剤(A)の水への溶解度が小さく、分散剤水溶液のpH、温度等の分散条件により水性分散体の粒度分布が大きく変化するため好ましくない。
【0011】
本発明において、分散剤(A)の数平均分子量は、通常292〜73000であり、好ましくは292〜36500であり、さらに好ましくは、730〜14600である。
数平均分子量が292〜73,000であると、所望の粒子径の水性分散体が得られ、好ましい。
本発明の分散剤(A)は、前記一般式(1)で示されるプルロニック型ポリエーテルであれば特に限定されないが、例えば、一般式(1)においてa+c=46、b=35のプルロニック型ポリエーテル(曇点:69℃)、a+c=160、b=30のプルロニック型ポリエーテル(曇点:113℃)、a+c=303、b=56のプルロニック型ポリエーテル(曇点:105℃)、a+c=444、b=69のプルロニック型ポリエーテル(曇点:109℃)、a+c=185、b=35のプルロニック型ポリエーテル(曇点:110℃)が挙げられる。
これらのうち、特に好ましくはa+c=160、b=30のプルロニック型ポリエーテル(曇点:113℃)である。
【0012】
本発明の分散剤(A)は、分散安定性をさらに向上させるために、その効果を損なわない範囲で、他の分散剤(A1)を併用しても良い。他の分散剤(A1)としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ウレタン変性ポリエーテル、第三燐酸塩類等が挙げられ、これらのうちではポリビニルアルコール、ウレタン変性ポリエーテルが好ましい。
(A1)を(A)と併用する場合の(A1)の添加量は、(A)100重量部に対して120重量部以下、好ましくは80重量部以下である。
【0013】
本発明において使用されるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)を構成する疎水性高分子ポリオール(b1)としては、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0014】
(b1)の数平均分子量は通常500〜5,000、好ましくは1,000〜4,000である。(b1)の数平均分子量が500〜5,000であると得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が適度な柔軟性を有し好ましい。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、例えば(1)低分子ポリオールとジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体との縮合重合による縮合ポリエステルポリオール、(2)低分子ポリオールを出発物質としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンポリオール、(3)縮合ポリエステルにラクトンを開環重合させて得られるポリエステルポリラクトンポリオール、(4)低分子ポリオールとエチレンカーボネート等との縮合重合によるポリカーボネートポリオール;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
上記(1)、(2)または(4)における低分子ポリオールとしては、例えば脂肪族ジオール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、炭素数4〜24の1,2−アルカンジオール(ドデカン−1,2−ジオール等)など];環状基を有するジオール類[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−またはp−キシリレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物など]等およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。また、該低分子ジオールと共に必要により3価以上のアルコール(トリメチロープロパン、グリセリン等)を併用してもよい。該3価以上のアルコールを併用する場合のその含有量は、低分子ポリオール中5モル%以下である。
【0017】
上記(1)のジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の具体例としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)、これらの低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0018】
上記(2)または(3)のラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、(1)2〜3個(好ましくは2個)の活性水素含有基を有する化合物(たとえば低分子ポリオール、多価フェノール類等)に炭素数3以上のアルキレンオキサイドが付加した構造の化合物;(2)テトラヒドロフランの開環重合物;およびそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
上記低分子ポリオールとしては前記ポリエステルポリオールの原料として例示したものが使用できる。また、多価フェノール類としてはビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールS等)およびジヒドロキシベンゼン(カテコール、ハイドロキノン等)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは脂肪族もしくは脂環族低分子ポリオールである。
【0021】
上記炭素数3以上のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,3−、1,4−または2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等、およびこれらの2種以上の併用(ブロックまたはランダム付加)が挙げられる。これらのうち好ましいものはPOである。
【0022】
これらの疎水性高分子ポリオール(b1)のうちで好ましいものはポリエステルポリオールであり、特に好ましいものは低分子ポリオールとジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体との縮合重合による縮合ポリエステルポリオールである。該縮合ポリエステルポリオールの具体例としては、例えば、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキシレンアジペートジオール、ポリジエチレングリコールイソフタレートジオールなどが挙げられる。
【0023】
本発明において使用される(B)を構成する低分子ジオール(b2)としては、前記ポリエステルポリオールの原料として例示した低分子ジオールを用いることができる。このうち好ましいものは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールである。
【0024】
本発明において(B)を構成するポリイソシアネート(b3)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く)2〜12の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等];(1)炭素数(NCO基中の炭素を除く)4〜15の脂環族ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等];(2)炭素数(NCO基中の炭素を除く)8〜12の芳香族/脂肪族ジイソシアネート[キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等];(3)これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有する変性物);およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0025】
これらのうち好ましいものは脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイシアネートであり、特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネートである。該(b3)は必要に応じて上記ジイソシアネートとともにイソシアネート基数が3以上のポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネートのビューレット変性体やイソシアヌレート変性体など)を含有することができる。該3価以上のポリイソシアネートの(b3)中の含有量は通常5モル%以下である。
【0026】
本発明において用いられるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(B)は、前記(b1)および(b2)からなるポリオールとポリイソシアネート(b3)とを、イソシアネート基と水酸基の当量比が好ましくは3〜1.2/1、さらに好ましくは2.7〜1.5/1で反応させて得られる。当量比が3〜1.2/1の範囲であると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が適度な柔軟性を有するとともに、該(B)の粘度が高くなりすぎず分散剤(A)を含有する水中への分散が容易である。
【0027】
イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(B)中の遊離イソシアネート基(NCO基)含有量は、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。NCO基含有量が1〜20重量%であると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が適度な柔軟性を有すると共に、(B)の粘度が高くなりすぎず、分散剤(A)を含有する水中への分散が容易である。
【0028】
該(B)の粘度は、好ましくは、1,000〜100,000cP/25℃、さらに好ましくは3,000〜50,000cP/25℃である。
【0029】
(b1)、(b2)および(b3)からイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(B)を生成する方法は、公知のウレタン化反応の方法でよく、特に限定されないが、ウレタン化反応の反応温度は通常50〜140℃、好ましくは70〜130℃である。反応時間は、反応温度100℃で通常1〜10時間、好ましくは2〜5時間である。ウレタン化反応を行う際、必要により公知のウレタン化触媒を使用できる。該触媒の具体例としては、有機金属化合物[ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート等];アミン類[トリエチルアミン、トリエチルトリアミン、ジアザビシクロウンデセン等]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。添加量は特に限定はないが、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)100重量部当たり、通常0.001〜0.05重量部である。
【0030】
本発明においてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)の鎖伸長剤として使用されるケチミン化合物(C)は、ポリアミン(c1)とケトン化合物(c2)との反応化合物である。
【0031】
該ポリアミン(c1)としては、炭素数4〜15の脂環族ジアミン[4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等];炭素数2〜12の脂肪族ジアミン[1,2−エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン];芳香環含有ジアミン[キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン等]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂環族ジアミンおよび脂肪族ジアミンであり、特に好ましいのはイソホロンジアミンおよび1,6−ヘキサンジアミンである。
【0032】
ケトン化合物(c2)としては炭素数3〜9の脂肪族または脂環族ケトン化合物(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が挙げられる。これらのうち好ましいのはアセトンおよびメチルエチルケトンである。
【0033】
ケチミン化合物(C)を合成する方法としては特に限定されず公知の方法を用いてよく、例えば、ジアミンと過剰量のケトン化合物の混合物を加熱し、必要により生成した水を除去する方法が例示できる。
【0034】
本発明において熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の分子量を調整する目的で、必要により重合停止剤(c3)をケチミン化合物(C)中に含有させることができる。該(c3)としては、1価のアルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、セロソルブ等)およびモノアミン[アルキルアミン(ジエチルアミン、モノ−n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等)]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものはアルカノールアミンであり、特に好ましいものはジエタノールアミンである。
【0035】
ケチミン化合物(C)の使用量はイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(B)のイソシアネート基1当量に対し、好ましくは、0.5〜1.5当量、さらに好ましくは0.7〜1.2当量である。(C)の使用量がこの範囲内であると良好な機械的物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が得られる。また、必要に応じ使用される重合停止剤(c3)の使用量は、(B)のイソシアネート基1当量に対し好ましくは0.4当量以下、さらに好ましくは0.3当量以下である。(c3)の使用量が0.4当量以下であると、良好な機械的物性の熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)が得られる。
【0036】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)の数平均分子量は、好ましくは5,000〜50,000、さらに好ましくは10,000〜30,000である。数平均分子量がこの範囲内であると所望の樹脂強度が得られるとともに、(D)の熱溶融時の粘度が高くなりすぎず、スラッシュ成形用に用いた場合の成形性が良好である。
【0037】
分散剤(A)の使用量は水100重量部に対し、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。この範囲内では所望の粒子径の水性分散体が得られ好ましい。(B)と(C)の合計100重量部に対する(A)を含有する水の使用量は、好ましくは100〜1,000重量部、さらに好ましくは200〜500重量部である。
分散剤(A)を含有する水の使用量が100〜1,000重量部であると分散体の粒子が凝集しにくく、また粒子径が75μm未満の粒子の生成量が少なく好ましい。
分散剤(A)の1%水溶液のpHは、分散剤(A)の安定性、水性分散体の粒度分布の観点から5〜8であることが好ましい。
【0038】
分散剤(A)を含有する水中へイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(B)とケチミン化合物(C)の混合物を分散するときの(A)の温度は特に限定はないが、通常5℃〜100℃、好ましくは10〜50℃である。また、分散時の(B)の粘度は、好ましくは1,000〜50,000cP、さらに好ましくは3,000〜20,000cPである。粘度が1,000cPより大きいと粒子径が75μm未満の粒子が少なく、50,000cPより小さいと粒子径が250μmを越える粗大粒子が生成しにくい。
【0039】
なお、(B)の室温での粘度が50,000cPを越える場合、(B)を低粘度化するために20℃〜100℃の範囲内で加熱することができ、また(B)を溶解するが生成する(D)を溶解しない溶剤を使用することができる。該溶剤として好ましくは25℃における水に対する溶解度が0.1〜50重量%である疎水性溶剤(F)である。さらに好ましくは、(F)のうち、(B)を溶解するが熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を溶解しないものである。
【0040】
疎水性溶剤(F)としては、(1)ケトン系溶剤[MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)等]、(2)エステル系溶剤[酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等]、(3)芳香族系溶剤[トルエン、キシレン等]、(4)ニトリル系溶剤[アセトニトリル等]およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。これらのうち好ましいものはエステル系溶剤であり、特に好ましいのは酢酸エチル、MEKである。
【0041】
本発明における疎水性溶剤(F)の使用量は、(B)に対し通常30重量%以下、好ましくは15重量%である。(F)の使用量が30重量%以下であると、得られる分散体中の75μm以下の粒子径の粒子の含有量が少なく好ましい。
【0042】
疎水性溶剤(F)で希釈された(B)の粘度は、通常10,000cP/25℃以下、好ましくは7,000cP/25℃以下である。粘度が10,000cP以下であると粗大粒子が生成しにくい。
【0043】
(B)を分散剤(A)を含有する水中に分散させ、(B)と(C)とを反応させる方法としては以下の方法が例示できる。
(1)予め(B)と(C)とを混合しておき、該混合液を分散剤(A)を含有する水中に分散した後、分散状態で(B)と(C)とを反応させる方法。
(2)(B)と(C)とを混合し(第一工程)、この混合液を別の分散機で分散剤(A)を含有する水中へ連続的に分散(第二工程)した後、分散状態で(B)と(C)とを反応させる方法。
(3)(B)を分散剤(A)を含有する水中へ分散機で分散した後、該分散液中に(C)を加え、(B)と(C)とを反応させる方法。これらのうち工業的見地から特に好ましいのは(2)の方法である。
【0044】
(A)を含有する水中への(B)、(C)の混合物の分散の方法としては特に限定されず公知の分散機が使用できる。該分散機としては、低速せん断型分散機、高速せん断型分散機、摩擦型分散機、高圧ジェット型分散機、超音波型分散機、静止型分散機等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、高速せん断式分散機(例えば、ヤマト科学製「ウルトラディスパーザー」、荏原製作所製「エバラマイルダー」等)および静止型分散機(例えば、タクミナ製「スタティックミキサー」等)である。
【0045】
分散剤を含有する水中での(B)と(C)との反応温度、時間は特に限定はないが、反応温度は通常0〜80℃、好ましくは20〜60℃である。通常反応温度が50℃であれば、反応時間は通常1時間〜40時間、好ましくは5時間〜20時間である。
【0046】
本発明の方法で得られる水性分散体を脱水、乾燥してポリウレタン樹脂粒子(E)を得る方法としては特に限定されず公知の方法で行うことができる。脱水方法としては、例えばプレスフィルター、スパクラーフィルター、遠心分離器等の設備を使用して脱水する方法が挙げられる。脱水後の含水率は通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。含水率が50重量%より多くなると乾燥時間が長くなり、また得られた粉末が凝集しやすくなる。乾燥方法としては、例えば循風乾燥機、スプレードライヤー、流動層式乾燥機等の公知の設備を用いて行うことができる。乾燥時の粉体の温度は通常80℃以下、好ましくは60℃以下である。乾燥時の温度が80℃より高くなると粉体が融着する問題が発生する。
【0047】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)には必要に応じ公知の耐候性安定剤、滑剤、耐熱安定剤、難燃剤等を添加してもよい。これらの添加方法については特に限定されず、水性分散体の製造段階で添加してもよいし、乾燥後の樹脂粉末に添加してもよい。
【0048】
本発明の方法により得られる水性分散体を脱水乾燥して得られるポリウレタン樹脂粒子(E)は、平均粒子径が通常50〜250μmであり、かつ70μm未満の粒子径の粉体の含有量が10重量%以下である。平均粒子径が50μm未満では、粉末が飛散しやすくなり取扱う作業環境が悪化し、250μmを超えるとスラッシュ成形用途に利用する際、成形物表面にピンホールが発生し外観が悪くなる傾向となる。また、75μm未満の粒子径の粉体の含有量が10重量%より多いと、粉体流動性が悪くなりスラッシュ成形した際の成形物の肉厚が不均一になる。なお、ここでいう平均粒子径および75μm未満の粒子径の粉体の含有量は、例えば、プロセス用粒度分布計測システム「TSUB−TEC300」[日本鉱業(株)製]を用いて測定することができる。
【0049】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)において使用される顔料(H)としては特に限定されず、公知の有機顔料および/または無機顔料を使用することができる。有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としては、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、硫化物セレン化合物、金属塩類(硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、燐酸塩等)、金属粉末、カーボンブラック等が挙げられる。
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)において使用されるブロッキング防止剤(I)としては特に限定されず、公知の無機系ブロッキング防止剤または有機系ブロッキング防止剤を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としてはシリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂等)および粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂[例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂等]が挙げられる。これらのうち好ましいものは無機系ブロッキング防止剤であり、特に好ましいものはシリカである。
【0051】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)において使用される離型剤(J)としては公知の離型剤が使用できる。該離型剤としては、例えばフッ素系離型剤(リン酸フルオロアルキルエステル等)、シリコン系離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル系離型剤[アルカン(炭素数11〜24)酸アルケニル(炭素数6〜24)エステル等]、リン酸エステル系離型剤(リン酸トリブチルエステル)等が挙げられる。これらのうち好ましいのはフッ素系離型剤およびシリコン系離型剤である。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)において、(E)に対する(I)、(H)、(I)および(J)の重量比は、該樹脂粒子100重量部当たり、(G)が通常5〜20重量部、好ましくは7〜15、(H)が通常0.5〜5重量部、好ましくは1〜3重量部、(I)が通常0.5〜3重量部、好ましくは0.7〜2.5重量部、(J)が通常0.5〜3重量部、好ましくは0.7〜2.5重量部である。
【0053】
(G)が5重量部未満であれば成形時の溶融粘度が高くなり成形不良となり、20重量部を越えると成形表皮の表面に(G)が経時的にブリードアウトする問題がある。(H)が0.5重量部未満であれば隠蔽性が不足し、5重量部を越えると成形時の溶融粘度が高くなり成形不良となる。(I)が0.5重量部未満であれば安息角が大きくなり、3重量部を越えると成形時の溶融粘度が高くなり成形不良となる。(J)が0.5重量部未満であれば離型抵抗が大きくなり、3重量部を越えると成形表皮の表面に(J)が経時的にブリードアウトする問題がある。
【0054】
上記ポリウレタン樹脂粒子(E)の製造における樹脂粉末等の粉体混合温度は、通常100℃以下、好ましくは70℃以下、特に好ましくは50℃以下である。混合温度が100℃を超えると、樹脂粉末同士が融着し所望の粒子径の組成物が得られない。また、混合時間は特に限定されないが、通常1〜20分、好ましくは2〜10分である。
【0055】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)の製造装置は特に限定されず、公知の粉体混合装置を使用することができる。該粉体混合装置の具体例としては、高速剪断混合装置[三井鉱山(株)製「へンシェルミキサー」、深江工業(株)製「ハイスピードミキサー」等]、低速混合装置[ホソカワミクロン(株)製「ナウタミキサー」等]などが挙げられる。
【0056】
本発明のポリウレタン樹脂粒子(E)の安息角は通常33゜であり以下、好ましくは30゜以下である。安息角が33゜より大きいとアンダーカット部等の金型の細部まで粉体が入らず成形物の表面にピンホールが発生する。また、スパチュラ角は通常50゜以下、好ましくは45゜以下である。スパチュラ角が50゜より大きいと成形物の肉厚が不均一になる。ここでいう安息角およびスパチュラ角の測定方法は、R.L.Carr,Chem.Eng,vol.72,Jan.18,p163(1965)および同,Feb.1,p69(1965)に記載の方法による。該安息角およびスパチュラ角は、例えば、ホソカワミクロン(株)製「パウダーテスター」を用いて測定することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0058】
製造例1
曇点が69℃のプルロニック型ポリエーテル[1%水溶液のpH:6.5、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=50/50 、一般式(1)においてa+c=46、b=35、三洋化成工業(株)社製「ニューポールPE−75」]である分散剤(A1)1部を水100部に溶解し、無色透明の液体を得た。これを[分散液1]とする。
【0059】
製造例2
曇点が113℃のプルロニック型ポリエーテル[1%水溶液のpH:7.0、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=80/20、一般式(1)においてa+c=160、b=30、三洋化成工業(株)社製「ニューポールPE−68」]である分散剤(A2)0.5部を水100部に溶解し、無色透明の液体を得た。これを[分散液2]とする。
【0060】
製造例3
曇点90℃のプルロニック型ポリエーテル[1%水溶液のpH:7.0、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=70/30、一般式(1)においてa+c=108、b=35]である分散剤(A3)1部を水100部に溶解し、無色透明の液体を得た。これを[分散液3]とする。
【0061】
製造例4
曇点が113℃のプルロニック型ポリエーテル[1%水溶液のpH:7.0、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=80/20、一般式(1)においてa+c=160、b=30、三洋化成工業(株)社製「ニューポールPE−68」]である分散剤(A4)3部を水100部に溶解し、無色透明の液体を得た。これを[分散液4]とする。
【0062】
製造例5
曇点が113℃のプルロニック型ポリエーテル[エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=80/20、一般式(1)においてa+c=160、b=30、三洋化成工業(株)社製「ニューポールPE−68」]である分散剤(A5)1部を水100部に溶解し、プロピオン酸でpHを5に調整し、無色透明の液体を得た。これを[分散液5]とする。
【0063】
製造例6
曇点が113℃のプルロニック型ポリエーテル[エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=80/20、一般式(1)においてa+c=160、b=30、三洋化成工業(株)社製「ニューポールPE−68」]である分散剤(A6)1部を水100部に溶解した後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整し、無色透明の液体を得た。これを[分散液6]とする。
【0064】
比較製造例7
曇点が56℃のプルロニック型ポリエーテル[1%水溶液のpH:6.0、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド質量比=40/60、一般式(1)においてa+c=24、b=35、三洋化成工業(株)社製「ニューポールPE−74」]1部を水100部に溶解し、無色透明の液体を得た。これを[比較分散液7]とする。
【0065】
製造例8
攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、ヒドロキシル価が56のポリネオペンチルアジペート[「サンエスター5620」、三洋化成工業(株)製]654部を投入し0.4kPaの減圧下で120℃に加熱して1時間脱水を行った。続いてIPDI146部を投入し、110℃で10時間反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。該プレポリマーの遊離イソシアネート基濃度は2.8%であった。続いてMEK141部を投入し、均一になるまで40℃で1時間混合した。該プレポリマーの粘度は6,000cP/25℃であった。このものをウレタンプレポリマー(B1)とする。
【0066】
製造例9
攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、イソフォロンジアミン50部とMEK120部を仕込み、70℃で5時間反応を行った後、110℃、減圧下で過剰のMEKを除去した。このものをケチミン化合物(C1)とする。
【0067】
製造例10
攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、ジイソデシルフタレート15部、酸化チタン[「タイペークR−820」、石原産業(株)製]2部およびジメチルポリシロキサン[信越化学(株)製「SH−200」]3部を仕込み、均一になるまで混合した。得られた混合物を[着色剤1]とする。
【0068】
実施例1
ビーカー内で予め[ウレタンプレポリマー1]50部と[ケチミン化合物1]1.7部を混合した。この混合物に[分散液1]100部を添加した後、エクセルオートホモジナイザー[日製(株)製]を使用して回転数3000rpmで0.5分間混合した。攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに上記混合液を導入し、攪拌しながら50℃で6時間反応を行い、ポリウレタン樹脂水性分散体を得た。次いでこの水性分散体を濾別、80℃で1時間乾燥を行いポリウレタン樹脂粒子(E1)を得た。
【0069】
実施例2〜6
分散液1を[分散液2]〜[分散液6]とする以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂粒子(E2)〜(E6)を得た。
【0070】
実施例7
ヘンシェルミキサー[三井鉱山(株)製]内に、樹脂粒子(E1)100部と[着色剤1]18部を仕込み25℃で300rpmで10分間混合した後、シリカ[富士シリシア化学(株)製「サイリシア310」]1部を添加し、さらに300rpmで1分間混合し、スラッシュ成形用組成物(S1)を得た。
【0071】
実施例8〜12
ヘンシェルミキサー[三井鉱山(株)製]内に、樹脂粒子(E2)〜(E6)100部と[着色剤1]18部を仕込み25℃で300rpmで10分間混合した後、シリカ[富士シリシア化学(株)製「サイリシア310」]1部を添加し、さらに300rpmで1分間混合し、スラッシュ成形用組成物(S2)〜(S6)を得た。
【0072】
比較例1
分散液1を[比較分散液7]とする以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂粒子(E7’)を得た。
【0073】
比較例2
ヘンシェルミキサー[三井鉱山(株)製]内に、ポリウレタン樹脂粒子(E7’)100部と[着色剤1]18部を仕込み25℃で300rpmで10分間混合した後、シリカ[富士シリシア化学(株)製「サイリシア310」]1部を添加し、さらに300rpmで1分間混合し、スラッシュ成形用組成物(S7’)を得た。
【0074】
物性測定例1
実施例7〜12、比較例2で得た組成物(S1)〜(S6)、(S7’)および市販のスラッシュ成形用塩ビパウダー[「S130」住友化学工業(株)製](比較例3)について下記試験方法により性能試験を行った。その結果を表1に示す。平均粒子径及び粒子径75μm未満の粒子の含有量:日本鉱業(株)製「TSUB−TEC300」を用いて測定した。
安息角及びスパチュラ角:ホソカワミクロン(株)製「パウダーテスター」を用いて測定した。安息角、スパチュラ角は、いずれも粉体流動性の指標。数値が小さいほど粉体流動性に優れる。
【0075】
【表1】

【0076】
物性測定例2
実施例7〜12、比較例2で得た組成物(S1)〜(S6)、(S7’)および市販のスラッシュ成形用塩ビパウダー[「S130」住友化学工業(株)製](比較例3)を240℃に加熱した金型に接触させ熱溶融後、水冷し成形シートを作成した。得られた成形シートについて下記試験方法により性能試験を行った。その結果を表2に示す。
偏肉厚:シートの膜厚を測定し、最大膜厚と最小膜厚の差を求め偏肉厚とした。
破断伸び、破断強度:JIS−K6301に準じて測定した。
耐熱破断伸び:成形シートを120℃の順風乾燥機中で500時間保持した後、JIS−K6301に準じて測定した。
【0077】
【表2】

【0078】
物性測定例3
実施例2の樹脂粉末(E2)、比較例1の樹脂粉末(E7’)および接着芯地用ナイロンパウダー(東レ製)(比較例4)をそれぞれパウダーコーティング方式によりポリエステル/綿=65/35混紡ブロード布上に20g/m2塗布し、150℃×1分加熱固着し接着芯地を作成した。得られた接着芯地を綿ニット布の表地に接着芯地プレス機[神戸電気(株)製]を用いて150℃×荷重300g/cm2×15秒の条件で接着を行った。得られた各接着布地について下記試験方法により性能試験を行った。その結果を表3に示す。
接着強度;「オートグラフP−100型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/分で180度剥離強度を測定した。
耐ドライクリーニング性および耐水洗濯性;JIS−L1089に準じて評価した。
風合い;接着後の芯地の柔軟性について手触りにより判定した。
【0079】
【表3】

【0080】
表1より、本発明の方法により得られる水性分散体からの熱可塑性ポリウレタン樹脂粒
子は、75μm未満粒子量が少なく、安息角が小さく、スパチュラ角が小さく分級なしで
も粉体流動性に優れていた。また、表2より、本発明の樹脂粒子組成物から成形された成
形体(薄膜表皮)は、偏肉厚が小さく、樹脂強度も良好であった。さらに、表3より、本
発明の樹脂粒子からなる接着芯地は、風合いが良好で、ドライクリーニング後の剥離強度
も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の方法により得られる水性分散体からの熱可塑性ポリウレタン樹脂粒子は、特に芯地用接着剤および自動車内装材等のスラッシュ成形用材料として極めて有用である。また、本発明の熱可塑性ウレタン樹脂粒子は、粉体塗料、各種ホットメルト接着剤等への応用も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曇点が60〜120℃の下記一般式(1)で示される分散剤(A)を含有する水中で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)とケチミン化合物(C)とを反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を含有する樹脂粒子(E)を得ることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【化1】

[式中、a+cは4〜1000の整数、bは2〜500の整数であり、a+c>bを満たす。]
【請求項2】
分散剤(A)の1%水溶液のpHが5〜8である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)が、25℃における水に対する溶解度が0.1〜50重量%である疎水性溶剤(F)を含有する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
疎水性溶剤(F)が、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)を溶解するが熱可塑性ポリウレタン樹脂(D)を溶解しない請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
疎水性溶剤(F)がメチルエチルケトン及び/又は酢酸エチルである請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
分散剤(A)を含有する水中に、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)と疎水性溶剤(F)との混合物を分散させた後、該分散液にケチミン化合物(C)を加える請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
分散剤(A)を含有する水中に、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)、ケチミン化合物(C)及び疎水性溶剤(F)の混合物を分散させる請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
分散剤(A)を含有する水中で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)とケチミン化合物(C)とを反応させて樹脂粒子(E)の水性分散体を得た後、該水性分散体を脱水、乾燥して樹脂粒子(E)を得る請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−153240(P2011−153240A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16107(P2010−16107)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】