説明

熱可塑性ポリマーを吸収したラテックス粒子

【課題】有機溶媒を必要とせず、高固形分量および高分子量を可能にする複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】a)ポリマー粒子の安定な水性分散物を、段階成長重合の方法によってポリマーを形成することができる疎水性第1モノマーと一緒にし;b)第1モノマーがポリマー粒子を実質的な平衡まで膨潤させ;c)第1モノマーと反応して熱可塑性段階成長ポリマーを形成することができる第2モノマーを、工程b)の混合物に添加し、前記第2モノマーは少なくとも部分的にポリマー粒子に吸収されるのに充分な疎水性を有することにより特徴付けられる;d)第1モノマーおよび第2モノマーを重合させて熱可塑性段階成長ポリマーを形成する;ことを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリマー粒子の水性分散物から製造されるコーティングは、溶媒系ポリマーから製造されたものと比較して光沢、耐性、および硬度発現に欠陥がある場合がある。異なる水性ポリマー分散物のブレンド、例えば、アクリルおよびポリウレタン分散物のブレンド、並びにアクリルおよびエポキシ分散物のブレンドを含む分散物はコーティング特性を向上させることが知られているが;湿潤状態のブレンドは貯蔵不安定性を示す場合がありかつ固形分が限定される場合がある。さらに、これらブレンドから生じるコーティングは、ラテックス不適合性およびポリマー相分離のせいで性能の問題を示しうる。
【0002】
コーティング性能を向上させるアプローチの1つは、ギオット(Guyot)らにより「ハイブリッドポリマーラテックス(Hybrid Polymer Latex)」Prog.Polym.Sci.32(2007)1439〜1461に記載されるような複合体粒子技術の使用である。複合体粒子は少なくとも2種の異なるポリマーを含み、それらポリマーはその製造方法のせいで物理的ブレンドよりも緊密に混合されている粒子もしくは区別できる微小相内に均質なブレンドを形成することができる。このような複合体粒子は、例えば、ポリマー粒子、例えば、ポリウレタン粒子の分散物を、エチレン性不飽和モノマー、例えば、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーなどで膨潤させ、次いでこれらモノマーを重合させてポリアクリルポリウレタン粒子を形成することにより製造されうる。あるいは、異なる種類のあらかじめ形成されたポリマーがバルク相からまたは有機溶液から水に共分散されうる。
【0003】
さらに、モノマーは、プレポリマーの製造のための溶媒として、およびその後第2のポリマーとしての二重の役割を果たすことができる。例えば、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーはポリウレタンプレポリマーを製造するための溶媒として使用されることができ、このプレポリマーはその後水に分散され、次いで分子量を大きくするためのジアミンで鎖が伸ばされる。(メタ)アクリルモノマーはその後ラジカル重合によって重合される。
【0004】
複合体を形成するさらに別の例においては、ポリマー粒子の分散物がモノマーまたはプレポリマーと混合されることができ、このモノマーまたはプレポリマーはペンダント官能基によって第1のポリマーに実質的にグラフト化される。
【0005】
上記プロセスは典型的には実質的に架橋されている複合体を生じさせ、それ故に低温膜形成が望まれる用途を制限するか、またはそれは不利なことに製造に有機溶媒を必要とするか、もしくはその最終分散物中に有機溶媒を含むか、または他には製造するのに大量のエネルギーを必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ギオット(Guyot)らにより「ハイブリッドポリマーラテックス(Hybrid Polymer Latex)」Prog.Polym.Sci.32(2007)1439〜1461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粘度発現のせいで、吸収されるポリマーは低分子量ポリマーに限定され、そして最終分散物はより低い潜在固形分量に限定される。低分子量の吸収されるポリマーは、そのような材料から製造された塗膜の硬度、スクラッチ耐性およびダートピックアップ耐性の低下のような、その最終用途における複合体材料の性能に悪影響を及ぼしうる。よって、有機溶媒を必要とせず、架橋をほとんどもしくは全く有さず、かつ高固形分量および高分子量を可能にする複合体を製造するのに効果的な方法を見いだすことは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の形態においては、本発明は、
a)ポリマー粒子の安定な水性分散物を、段階成長(step−growth)重合の方法によってポリマーを形成することができる疎水性第1モノマーと一緒にし;
b)ポリマー粒子を実質的な平衡まで膨潤させ;
c)第1モノマーと反応して熱可塑性段階成長ポリマーを形成することができる第2モノマーを、工程b)の安定な水性分散物と接触させ、当該第2モノマーは少なくとも部分的にポリマー粒子に吸収されるのに充分な疎水性を有することにより特徴付けられる;
d)第1モノマーおよび第2モノマーを重合させて熱可塑性段階成長ポリマーを形成する;
ことを含む方法である。
【0009】
第2の形態においては、本発明は、ポリヒドロキシアミノエーテル、ポリヒドロキシチオールエーテル、ポリヒドロキシアミノエステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、またはポリシロキサンである熱可塑性段階成長ポリマーを吸収したポリマー粒子の安定な水性分散物を含む組成物であるが、ただし、前記熱可塑性段階成長ポリマーがポリウレタンまたはポリウレアである場合には、前記段階成長ポリマーは酸ペンダント基を実質的に有さず、かつ前記ポリマー粒子はペンダントアミンまたはヒドラジン基を実質的に含まない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法はラテックス粒子の内側に吸収されたポリマーの分子量を大きくするためのメカニズムを提供し、それにより溶液中での高分子ポリマーがもたらす粘度の制限を除くことにより、当該技術分野における必要性に取り組む。この方法は熱可塑性段階成長ポリマーを吸収したラテックス粒子の貯蔵安定なワンポット熱可塑性複合体を製造する簡単な方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法の第1の工程においては、ポリマー粒子の安定な水性分散物(すなわちラテックス)が、段階成長重合の方法によってポリマーを形成できる疎水性第1モノマーと一緒にされる。このラテックスはフリーラジカル乳化もしくは懸濁付加重合によって、またはあらかじめ形成されたポリマーを剪断下で水性媒体中に分散させることにより製造されうる。好ましくは、ラテックスは従来のフリーラジカル乳化重合技術を用いて製造される。適切なラテックスの例には、アクリル、スチレン−アクリル、スチレン−ブタジエン、ウレタン、エステル(ポリエステルおよびアルキドをはじめとする)、オレフィン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、およびポリ酢酸ビニルベースのラテックスが挙げられ、アクリルおよびスチレン−アクリルラテックスが好ましい。
【0012】
ある好ましい形態においては、ラテックスはアクリルラテックスである。アクリルラテックスの製造に適するモノマーには、(メタ)アクリラート、例えば、メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、ブチル(メタ)アクリラート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリラートおよびこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリラート」とは、アクリラートまたはメタクリラートをいう。同様に、用語「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸またはアクリル酸をいう。
【0013】
アクリルラテックスを製造するために、カルボン酸モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸およびイタコン酸、並びにその塩;スルホン酸モノマー、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムおよびアクリルアミド−メチル−プロパンスルホナート、並びにその塩;並びに、リン酸モノマー、例えば、ホスホエチルメタクリラートおよびその塩をはじめとする追加のモノマーが使用されることができる。スチレン、アクリロニトリルおよびアセトアセトキシエチルメタクリラート(AAEM)のようなモノマー、並びに補助硬化性(co−curable)官能基を付与することができるモノマー、例えば、グリシジル(メタ)アクリラートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートがアクリルラテックスの製造に使用されても良い。
【0014】
AAEMが使用される例においては、アクリラートポリマーを第一級アミンまたはアンモニアと後反応させて、以下に例示されるような対応するエナミンを含むポリマーを形成させることが望ましい場合がある:
【化1】

式中、RはHまたはアルキル基であり、破線はポリマー骨格への結合点を表す。
【0015】
ある実施形態においては、少量の共重合された多エチレン性不飽和モノマー群例えば、アリル(メタ)アクリラート、ジアリルフタラート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびジビニルベンゼンなどをアクリルポリマーに組み込むことも有利である場合がある。このモノマー基を不均一にポリマーに組み込んで、多相ポリマー粒子を形成して、コア−シェル、半球もしくは閉塞形態を造り出すことも有利である場合がある。
【0016】
これらラテックスを製造するために連鎖移動剤が使用されることができ、その例にはドデシルメルカプタン、ブチルメルカプトプロピオナート、メチルメルカプトプロピオナートおよびメルカプトプロピオン酸が挙げられる。
【0017】
ある実施形態においては、Langmuir 2005,21,1096−1102においてデューダ(Duda)らにより開示されるもののような多相ポリマー粒子をホストラテックスとして使用することが有利な場合がある。これら形態の製造は当該技術分野において周知である。多段階乳化重合プロセスは、通常、少なくとも2つの相互に混和可能でないポリマー組成物の形成をもたらし、それにより少なくとも2つの相の形成をもたらす。2以上のポリマー組成物の相互非混和性および得られるポリマー粒子の多相構造は、これら相間の差異を強調する染色技術を使用する走査型電子顕微鏡観察をはじめとする様々な方法で決定されうる。
【0018】
多相ポリマー粒子はコア/シェルもしくはコア/シース粒子、シェル相がコアを不完全に封入しているコア/シェル粒子、および複数のコアを有するコア/シェル粒子をはじめとする様々な形態のものであり得る。これらラテックスの最終的な特性は多くの場合、個々の相のモノマー組成およびその相対的比率のバランスを取ることによって達成される。本発明のためには、全く異なるもしくは類似のTg、および類似のもしくは全く異なる疎水性を使用することが有利であり得る。ラテックスの最終使用用途は、通常、各ポリマー相の特性を決定づける。
【0019】
ホストラテックスの形態は厳密に有機材料に限定されない。無機相もしくはドメインを埋め込んだもしくは吸着したポリマー、例えば、以下のものを使用することが有利である場合がある:i)100nm〜500nmの範囲の直径および1.8〜4.5の屈折率を有する不透明化顔料粒子;ii)硫黄酸モノマーまたはその塩の重合単位を含む封入用ポリマー;並びにiii)封入される不透明化顔料粒子および前記ポリマーのためのポリマー系分散剤であって、例えば米国特許出願公開第2010/0298483A1号に記載されている硫黄酸基またはその塩、並びにアミン基を含む分散剤;を含むポリマー封入された不透明化顔料粒子。
【0020】
疎水性第1モノマーはa)ポリマー粒子内に移動するのに充分な疎水性を有すること、およびb)適切な第2モノマーとの反応によって熱可塑性段階成長ポリマーを形成できることにより特徴付けられる。一形態においては、疎水性第1モノマーは求電子性であり、その例にはジイソシアナートおよびジオキシランが挙げられる。
【0021】
適切なジイソシアナートの例には、脂肪族ジイソシアナート、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−デカメチレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(イソシアナトシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキシレンジイソシアナート、1,3−シクロヘキサンジイルビス(メチレン)ジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイルビス(メチレン)ジイソシアナート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、m−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、および1,5−テトラヒドロナフチレンジイソシアナートが挙げられる。
【0022】
適切なジオキシランの例はジグリシジルエーテルおよびエステル、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、およびノボラック樹脂、並びにこの組み合わせである。市販のジグリシジルエーテルにはD.E.R.(商標)331液体エポキシ樹脂(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)がある。
【0023】
疎水性第1モノマーは攪拌しつつ、そのままで、溶液で、またはエマルションでラテックスに有利に添加され;次いで充分な時間が割り当てられてポリマー粒子を平衡まで膨潤させ;択一的にまたは追加的に、疎水性第1モノマーは水性相とは別個の相を形成するのに充分に疎水性であり、平衡はこの別個の相の消失によって確定されうる。ある実施形態においては、疎水性モノマーの輸送は、シクロデキストリンのような相間移動触媒の使用によって容易にされうる。ポリマー粒子の膨潤の停止または別個の相の実質的な消失は第1の疎水性モノマーのポリマー粒子への実質的に完全な移動を示唆する。ある形態においては、特にラテックスがアクリルラテックスである場合には、分散物の重量平均粒子サイズが理論的最大サイズの少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%になるまでは、第2モノマーは添加されない。特に、第1モノマーが水と非反応性である場合に、周囲温度より高い温度で第1モノマーを添加することも、そのモノマーのポリマー相内への輸送を容易にするのに有利であり得る。
【0024】
ポリマー粒子を実質的な平衡まで膨潤させた後で、疎水性第1モノマーと反応して熱可塑性段階成長ポリマーを形成することができる第2モノマーが、膨潤したポリマー粒子の安定な水性分散物と接触させられる。ニートの、または溶液中の、好ましくは水溶液としてのこの第2モノマーは、疎水性第1モノマーを含むラテックスに好ましくは添加される。第2モノマーは、ポリマー粒子に少なくとも部分的に吸収されるのに充分な疎水性を有することによってさらに特徴付けられる。ある実施形態においては、疎水性第2モノマーの輸送はシクロデキストリンのような相間移動触媒の使用によっても促進されうる。
【0025】
第1モノマーまたは第2モノマーが水性分散物として添加される場合には、分散物は安定化量の界面活性剤で、好ましくは約0.5〜約5重量%の範囲の濃度で安定化される。非イオン性界面活性剤が好ましく、例えば、APEOを含まない、非イオン性湿潤剤、例えば、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、脂肪酸エステル、グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルおよびポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテルが挙げられ、例えば、商業的に入手可能な湿潤剤、例えば、トライトン(TRITON(商標))X−405オクチルフェノールエトキシラート(ザダウケミカルカンパニーもしくはその関連会社の商標)が挙げられる。第1モノマーまたは第2モノマーがそのままの化合物としてラテックスと組み合わせられる場合には、室温以上での攪拌によって吸収は促進される。
【0026】
ある形態においては、第2モノマーは、求電子剤と熱可塑性段階成長ポリマーを形成することができる求核剤であり、適する第2モノマーの選択は疎水性第1モノマーの官能基に応じて変化し、例えば、疎水性第1モノマーがジグリシジルエーテルである場合には、適する第2モノマーにはジオール、ジチオール、第一級アミン、アルカノール第一級アミン、チオアルキル第一級アミン、ジ−第二級(di−secondary)アミン、メルカプトアルコール、およびシリルアルキル第一級アミンが挙げられ、ジグリシジルエーテルのために好ましい第2モノマーは第一級アミン、アルカノール第一級アミンおよびジ−第二級アミンである。ジグリシジルエーテルとの反応に適する具体的なモノマーの例には、エタノールアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミンおよびピペラジンが挙げられる。
【0027】
疎水性第1モノマーがジイソシアナートである場合には、適する第2モノマーには、二官能性ジイソシアナート反応性化合物、例えば、ジオール、ジアミン、ジチオール、アルカノールアミン、チオアミンおよびメルカプトアルコールが挙げられ、ジオール、ジアミンおよびアルカノールアミンが好ましい。具体的な二官能性ジイソシアナート反応性化合物の例には、ジオール、例えば、1,4−ブタンジオール、ポリアルコキシエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、ポリカルボナートジオール、ジシクロヘキサンジオール、1,3−ジシクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール;並びに、ジアミン、例えば、エチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、およびN,N’−ビス(2−プロピル)ポリオキシプロピレンジアミンが挙げられる。この二官能性ジイソシアナート反応剤は、ある程度吸収されることとなるのに充分な、ポリマー粒子に対する親和性を有することにより特徴付けられる。ある実施形態においては、ポリウレタンまたはポリウレア段階成長ポリマーを形成するように温度を上げる必要がある場合がある。
【0028】
上述のように、ラテックス粒子は第1または第2モノマーと反応することができる官能基、例えば、ヒドロキシル基またはグリシジルエーテル基を含むことができるが;このような状況下では、吸収される段階成長ポリマーはラテックス中にまたはラテックス上に物理的に組み込まれうるだけでなく、ラテックス粒子に化学的に結合されうる。
【0029】
モノマーの添加の順序を逆にすることが有利である場合があり;従って、第1モノマーは求核剤であることができ、および第2モノマーは求電子剤であることができる。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「熱可塑性段階成長ポリマー」とは、多官能性モノマーの反応によって製造されるポリマーまたはポリマーの混合物をいう。特に、ポリマーが熱可塑性なので、この多官能性モノマーは、主として、排他的でないが、二官能性モノマーである傾向がある。本明細書において使用される場合、用語「二官能性モノマー」とは、2つだけの活性部位を有するモノマーをいい;よって、第一級アミンおよびジ−第二級アミンは、これらのアミンが2つの活性水素原子を有するという点においては、ジグリシジルエーテルに対して二官能性のモノマーである。一方、1,6−ヘキサメチレンジアミンのようなジアミンは、各アミノ基が必ず線状熱可塑性ポリウレアを形成するという点においては、ジイソシアナートに対して二官能性である。
【0031】
さらなる工程においては、疎水性第1モノマーおよび第2モノマーは反応させられて、熱可塑性段階成長ポリマーを形成する。熱可塑性段階成長ポリマーの例には、ポリヒドロキシアミノエーテル、ポリヒドロキシチオールエーテル、ポリヒドロキシアミノエステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリカルボナート、およびポリウレアが挙げられる。好ましい熱可塑性段階成長ポリマーには、ポリヒドロキシアミノエーテル、ポリウレタンおよびポリウレアが挙げられる。
【0032】
第2の形態においては、本発明は、ポリヒドロキシアミノエーテル、ポリヒドロキシチオールエーテル、ポリヒドロキシアミノエステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレアまたはポリシロキサンである熱可塑性段階成長ポリマーを吸収したポリマー粒子の安定な水性分散物を含む組成物である。熱可塑性段階成長ポリマーがポリウレタンまたはポリウレアである場合には、段階成長ポリマーにおいては酸基が実質的になく、かつポリマー粒子はペンダント第一級アミンまたはヒドラジン基を実質的に含まない。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「酸基が実質的にない」とは、吸収されたポリウレタンまたはポリウレアの重量を基準にして、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、最も好ましくは0.001重量%未満の酸基またはその塩をいう。最も好ましくは、ポリウレタンまたはポリウレアはペンダント酸基を含まない。また、最も好ましくは、吸収されているポリマーは、一般的には、ペンダント酸基を含まない。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「ペンダント第一級アミンまたはヒドラジン基の残部(remnant)を実質的に含まない」とは、予備反応させられた(pre−reacted)状態での、吸収されたポリウレタンまたはポリウレアの重量を基準にして0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、および最も好ましくは0.001重量%未満のペンダントアミン基をいう。よって、ポリマー粒子に結合している第一級アミンが以下:
【化2】

のように示される場合には、この残部は以下:
【化3】

のように描かれうる。
【0035】
好ましくは、未反応状態でのポリマー粒子は第一級アミンまたはヒドラジン基を含まない。
【0036】
高固形分量の吸収ラテックス(imbibed latex)、すなわち、ラテックスの全重量を基準にして少なくとも40重量%の、特に45〜60重量パーセントの範囲の固形分量のラテックスが、本発明の組成物で達成可能である。さらに、これら吸収ラテックスは、先行技術のものとは異なって、驚くべき高水準の、熱可塑性粒子および熱可塑性段階成長ポリマーの重量を基準にして典型的には60重量パーセント以下、例えば、30〜50重量パーセントの熱可塑性段階成長ポリマーを含むように改変されうる。これら吸収ラテックスは溶媒を使用することなく製造されることができ、それ故にVOCが事実上存在しないことを達成することができる。
【0037】
吸収ラテックス組成物はワンポットシステムとして有用であり、すなわち、それは外部硬化剤を必要とせず、かつ周囲温度での膜形成に悪影響を及ぼす熱硬化性ポリマーを含まないかまたは実質的に含まない。このようなシステムが、貯蔵安定であって、かつ最終塗膜の特性が、本明細書に記載される吸収された熱可塑性段階成長ポリマーを含む組成物から形成されるのではないものよりも優れていることが驚くべきことに見いだされた。
【0038】
本発明に従う吸収ラテックス組成物は、さらに以下の添加剤の1種以上を含むことができる:溶媒;増粘剤;充填剤;顔料、例えば、二酸化チタン、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、粉砕ガラス、三水和アルミナ、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュ、およびクレイ;ポリマー封入顔料、例えば、ポリマー封入もしくは部分封入二酸化チタン、酸化亜鉛もしくはリトポン;二酸化チタンのような顔料の表面に吸着もしくは結合しているポリマーもしくはポリマーエマルション;中空顔料、例えば、1以上の空隙を有する顔料;分散剤、例えば、アミノアルコールおよびポリカルボキシラート;造膜助剤;追加の界面活性剤;接着促進剤;粘着付与剤;ワックス;脱泡剤;防腐剤、例えば、殺生物剤、殺カビ剤、殺真菌剤、殺藻剤、およびこれらの組み合わせ;流動剤;レベリング剤;並びに追加の中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニアおよび炭酸塩。
【0039】
この組成物は、コーティング剤、接着剤、シーラント、プライマー、コーキング材、染色剤または充填剤をはじめとする多くの用途のために配合されうる。
【0040】
本発明の組成物および本発明の方法は、金属、プラスチック、コンクリート、木材、アスファルト、毛髪、紙、皮革、ゴム、発泡体または布地をはじめとする多くの基材の何らかをコーティングするのに有用である。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は例示目的のみのためであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0042】
【表1】

ROCRYLはザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標である。
【0043】
中間体1:熱可塑性ポリマーでの修飾のためのスチレン−アクリルラテックスの製造
脱イオン水(625.5g)、界面活性剤A(26.3g)、2−EHA(666.0g)、MMA(580.0g)、STY(524.0g)、HEMA(200.0g)、MAA(30.0g)およびnDDM(20.0g)を容器内で混合することによりモノマーエマルションが調製された。別のフラスコに脱イオン水(828.2g)を入れ、次いでNパージ下で88℃にした。このフラスコに脱イオン水(46.0g)中の水性アンモニア(2.0g)およびAPS(4.1g)の溶液、ポリマーシードA(53%BA/47%MMA、41%固形分、60nm粒子サイズ、141.5g)並びにすすぎとしての脱イオン水(23.0g)を入れた。85℃の反応器温度を維持しつつ、モノマーエマルションが、8.3g/分の割合で20分間にわたってこの反応器に供給され、次いで、16.6g/分の割合に増加され、160分間供給された。モノマーエマルションフィードと同時に、2.0gのAPS、2.0gの水性アンモニアおよび96.6gの脱イオン水の混合物が最初の20分間は0.28g/分の割合で、および160分間は0.55g/分の割合でこの反応器に添加された。
【0044】
添加の完了後、モノマーエマルションラインは脱イオン水(84.4g)ですすがれ、反応器は75℃に冷却され、その際、硫酸鉄七水和物(13.4g)の0.15%水溶液およびEDTA(1.2g)の1.0%水溶液の混合物が添加され、次いで別の溶液のt−BHP(30.7gの脱イオン水中1.5g)が添加された。IAAの溶液(38.3gの脱イオン水中1.5g)が75℃で15分間にわたって添加され、そして第2のtBHP溶液(30.7gの脱イオン水中1.5g)が添加された。次いで、反応器は65℃に冷却され、tBHP(9.2gの脱イオン水中1.5g)およびIAA(14.6gの脱イオン水中0.8g)の別のレドックス対が添加された。水(61.9g)がこの反応器に入れられ、次いで内容物は40℃に冷却された。ラテックスは100および325メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表1)。
【0045】
中間体2〜4:熱可塑性ポリマーでの修飾のためのスチレン−アクリルラテックスの製造
ラテックスポリマー中間体2〜4は中間体1について詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。使用されたモノマーの重量並びにパーセント固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表1に記載される。
ラテックスポリマー中間体2〜4は中間体1について詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。使用されたモノマーの重量並びにパーセント固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表1に記載される。
ブルックハーベンインスツルメンツコーポレーションからの90−プラスパーティクルサイズアナライザーを用いて光散乱によってナノメートル(nm)単位での重量平均粒子サイズが決定された。ガラス転移温度(T)はサンプルを150℃で5分間予備加熱し、−90℃に冷却し、次いでそのサンプルを7℃/分の割合で150℃まで再加熱することによる、サーマルアソシエート(thermal associates)示差走査熱量測定を用いる改変されたDSCによって決定された。最低造膜温度(MFFT)はASTM D2354に従って、ポールエヌガードナーカンパニーインコーポレーティドからのMFFTバー装置を用いて決定された。反応したジオールのパーセントはテトラヒドロフラン中での抽出によって未反応のジオールを分離し、そしてアジレント(Agilent)6890C液体クロマトグラフを用いて、二本のカラム(カラムA:レステック(Restek)RTX−200、30m×0.32mm×1μm;カラムB:DB−wax 30m×0.32mm×1μm)で、液体注入GCによって存在する量を測定することにより決定された。
【0046】
【表2】

【0047】
中間体5:熱可塑性ポリマーでの修飾のためのスチレン−アクリルラテックスの製造
脱イオン水(486.7g)、界面活性剤B(45.2g)、2−EHA(1075.9g)、MMA(360.7g)、STY(500.2g)、およびPEM(64.0g)を容器内で混合することによりモノマーエマルションが調製された。別のフラスコに脱イオン水(1081.5g)および界面活性剤B(1.3g)を入れ、次いでNパージ下で87℃にした。このフラスコに1.9重量%のモノマーエマルション(47.9g)および脱イオン水すすぎ(21.6g)を添加し、次いでAPS溶液(54.1gの脱イオン水中6.3g)を添加した。86℃の反応器温度を維持しつつ、モノマーエマルションが、10.55g/分の割合で10分間にわたってこの反応器に供給され、次いで、22.06g/分の割合に増加され、110分間供給された。モノマーエマルションフィードと同時に、APS溶液(86.5gの脱イオン水中2.7g)が最初の10分間は0.37g/分の割合で、および110分間は0.78g/分の割合でこの反応器に添加された。
【0048】
添加の完了後、モノマーエマルションラインは脱イオン水(86.5g)ですすがれ、反応器温度は86℃で15分間保たれた。次いで、アンモニア溶液(21.6gのアンモニア、5.4gの脱イオン水中)が5分間にわたって添加され、5分間攪拌した後でこの反応器は80℃に冷却された。80℃で、硫酸鉄七水和物(13.3g)の0.15%水溶液、EDTA(2.05g)の1.0%水溶液、および脱イオン水(5.4g)の混合物が5分間にわたって添加され、次いで80℃に5分間保持された。t−BHPの溶液(21.6gの脱イオン水中1.4g)が添加され、次いでIAAの溶液(21.6gの脱イオン水中0.97g)が15分間にわたって添加され、このとき70℃に冷却された。反応器の内容物は70℃に10分間保持され、次いでさらに冷却された。65℃で、別のレドックス対のtBHP(16.2gの脱イオン水中0.87g)およびIAA(16.2gの脱イオン水中0.61g)が添加された。反応器温度は65℃で15分間保持され、次いで40℃に冷却された。ラテックスは100および325メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表2)。
【0049】
中間体6〜8:熱可塑性ポリマーでの修飾のためのスチレン−アクリルラテックスの製造
ラテックスポリマー中間体6〜8は、中間体6および7についてはシードとして3.8重量%のモノマーエマルションが反応器に入れられたことを除いて、中間体5について詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。使用された個々のモノマーの重量並びにパーセント固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表2に記載される。
【0050】
【表3】

【0051】
中間体9:熱可塑性ポリマーでの修飾のためのポリウレタン分散物の製造
ポリオール(165.0gのT1400および165.0gのT2000)およびDMPA(33.0g)が137.5gのNMPと共に反応器に入れられた。この反応器内容物は60℃に30分間窒素スイープ下で加熱された。H12MDI(187.0g)が反応器に添加され、温度は95℃に上げられた。95℃で4時間後、反応器は70℃まで冷却され、TEA(23.4g)が添加された。TEAは10分間にわたって攪拌された。脱イオン水(808.15g)が別の分散物容器に添加された。ポリウレタンプレポリマー混合物が15分間にわたって、この脱イオン水に、攪拌しつつゆっくりと添加されて、水性分散物を調製した。5分後、PDAの溶液(37.2gの脱イオン水中で16.0g)が12時間にわたって添加された。得られたポリウレタン分散物は100メッシュスクリーンを通されて、固形分、pHおよび粒子サイズについて特徴付けられた(35.2%固形分、6.2のpH、40nmの粒子サイズ)。
【0052】
中間体10:熱可塑性ポリマーでの修飾のためのアルキド分散物の製造
中間体10はまずアルキド樹脂を製造し、次いでその樹脂を水中に分散させることによって製造された。このアルキド樹脂の製造に使用された合成プロトコルは2段階アルコール分解−ポリエステル化法であった。第1の段階において、大スケールのアルコール分解が行われ、このアルコール分解生成物のアリコートが第2のポリエステル化工程において使用された。5Lの三ツ口丸底フラスコにヒマワリ油が入れられた。このフラスコの中央接合部にガラス攪拌棒およびパドルが配置された。このフラスコはオーバーヘッド攪拌を備えた格子に取り付けられ、そしてこのフラスコが沈むように室温で油浴が持ち上げられた。この浴の設定点は220℃であり、加熱および攪拌が開始された。攪拌したヒマワリ油に、ペンタエリスリトール(PE)およびジブチルスズオキシド(DBTO)(1200ppm添加)が添加された。全ての反応物質が添加されたら、95℃の設定点のパック凝縮器(packed condenser)が側接合部の一方に取り付けられ、ホースバルブアダプタが頂部に取り付けられ、そのアダプタはバブラーに接続された。他方の側首にホースバルブアダプタが取り付けられ窒素入口に接続された。ゆっくりとした窒素スィープがシステムにおいて行われ、かつバブラー内に観察された。反応混合物は16時間にわたって加熱および混合されて、モノグリセリド形成を確実にし、4部のメタノール中での溶解度により確認された。次いで、900gのアリコートが2Lの三ツ口丸底フラスコに移された。このフラスコは使用の準備ができるまで、Nのパッドの下で冷却された。第2の段階において、アルコール分解混合物を収容していたフラスコはガラス攪拌シャフトおよびパドルを備えていた。このフラスコはオーバーヘッド攪拌をしつつ格子に取り付けられた。室温の油浴はフラスコを沈めるために持ち上げられた。浴の設定点は220℃であり、加熱および攪拌が開始された。このフラスコに精製されたイソフタル酸、フタル酸無水物およびキシレン(全添加量の2%)が添加された。次いで、側接合部の一方にディーンスターク(Dean−Stark)トラップが接続され、バブラーに接続されたフリードリッヒ(Friedrichs)凝縮器を頂部に接続した。他方の側接合部にホースバルブアダプタが取り付けられ、これは窒素入口に接続された。システム上に窒素スイープが行われた。このシステムは加熱され(〜220℃)、形成された水はキシレンとの共沸蒸留物として蒸留除去された。3時間後、1〜2gの反応混合物が集められ、酸価(AV)を決定するためにASTM方法D1639を用いてKOHで滴定された。AVが8〜10になるまでこの反応が進められ、次いでこの反応内容物はガラスジャーに注ぎ込まれて、窒素のパッド下で室温まで冷却された。添加されたモノマーの相対組成は23.79重量%のペンタエリスリトール、46.30重量%のヒマワリ油、11.97重量%のイソフタル酸および17.95重量%のフタル酸であった。
【0053】
アルキド樹脂の水性分散物は上記樹脂を95℃で8〜12時間加熱して溶融状態を形成し、次いで、それをローターステーター(rotor−stator)ミキサーに50g/分の割合で供給することにより製造された。28パーセント(重量/重量)水酸化アンモニウム溶液が0.346g/分で供給され、22.0g/分の割合でポンプ移送された追加の水および3.33mL/分の割合でポンプ移送された追加のE−sperse100界面活性剤(エトックスケミカルズ、60%活性)とブレンドされ、そして高内相エマルションを造り出すためにミキサーにインジェクトされた。このミキサースピードは約700rpmに設定された。高内相エマルションは66重量%の固形分を有していた。最初の高内相エマルションに23g/分で水を添加することにより、高内相エマルションはさらに希釈され、それによりアルキド分散物中間体10を形成した。このアルキド分散物は固形分、pHおよび粒子サイズについて特徴付けられた(53.7%固形分、pH8.1、粒子サイズ=188nm、T=−10℃、およびMFFT<0℃)。
【0054】
ハイブリッドバインダー製造実施例
以下の実施例においては、吸収ポリマー複合体がモノマー液滴およびそのようなモノマー液滴内での重合から生じる粒子を実質的に含まないことが光学顕微鏡観察によって、TEM顕微鏡観察によって決定され;平均粒子サイズの増大が光散乱によって確認された。
【0055】
実施例1:熱可塑性ポリウレタンポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
中間体ラテックス1(375.0g)がフラスコに入れられ、脱イオン水(266.4g)で希釈された。攪拌しつつ、界面活性剤C(2.8g)がこのラテックスに15分間にわたって添加された。TEA(0.3g)をゆっくりと添加することによって、このラテックスのpHは6.0〜7.0に調節された。ジオール(UD、15.0g)がゆっくりと添加され、そしてこのラテックスは30分間攪拌された。次いで、ジイソシアナート(IPDI、39.8g)が10分間にわたって滴下添加され、次いでさらに10分間にわたって攪拌された。フラスコの内容物は85℃に加熱され、3時間保持され、その時間の後で、フラスコは30℃未満に冷却された。最終的なラテックスのpHは、TEA(1.3g)で8.5〜9.5に調節され、100メッシュスクリーンを通され、%固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表3)。
【0056】
実施例2:熱可塑性ポリウレタンポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
中間体ラテックス5(325.0g)がフラスコに入れられ、脱イオン水(230.2g)で希釈された。攪拌しつつ、界面活性剤C(2.4g)がこのラテックスに15分間にわたって添加された。TEA(0.2g)をゆっくりと添加することによって、このラテックスのpHは6.0〜7.0に調節された。ジオール(UD、13.0g)がゆっくりと添加され、そしてこのラテックスは1時間にわたって攪拌された。次いで、ジイソシアナート(IPDI、20.0g)が10分間にわたって滴下添加され、そしてこの混合物は30分間攪拌された。フラスコの内容物は85℃に加熱され、3時間保持された。3時間後、フラスコは30℃未満に冷却された。最終的なラテックスのpHは、TEA(1.6g)で8.5〜9.5に調節され、100メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表3)。
【0057】
実施例3〜4:熱可塑性ポリウレタンポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
実施例3〜4は、ジイソシアナートの添加の後で1時間にわたって反応器内容物が攪拌されたことを除いて、実施例2について詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。%固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表3に詳述される。表3は実施例1および3についてMFFTの増大を示す。
【0058】
【表4】

【0059】
実施例5:熱可塑性ポリ(ウレタン−ウレア)ポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
中間体ラテックス5(400.1g)がフラスコに入れられ、そして脱イオン水(276.1g)で希釈された。攪拌しつつ、界面活性剤C(3.1g)がこのラテックスに15分間にわたって添加された。TEA(0.1g)をゆっくりと添加することによって、このラテックスのpHは6.0〜7.0に調節された。ジオール(UD、16.0g)がゆっくりと添加され、そしてこのラテックスは30分間攪拌された。ジイソシアナート(H12MDI、43.7g)が10分間にわたって滴下添加され、そして攪拌が30分間にわたって続けられた。フラスコの内容物は85℃に加熱され、3時間保持され、その時間の後で、フラスコは30℃未満に冷却され;攪拌しつつ、15分間にわたってEDA(4.1g)がゆっくりと添加された。最終的なラテックスは100メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表4)。
【0060】
実施例6〜11は、ジオールの添加の後の攪拌時間が30分から1時間に変わり、かつジイソシアナートの添加の後の攪拌時間が10分から1時間に変わったことを除いて、実施例5について詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。使用された個々の添加物についての重量は表4に詳述される。実施例10はTEA中和剤を含んでいなかった。
【0061】
実施例12:熱可塑性ポリ(ウレタン−ウレア)ポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
中間体ラテックス2(300.2g)がフラスコに入れられ、そして脱イオン水(151.1g)で希釈された。攪拌しつつ、界面活性剤C(全界面活性剤の50%、2.2g)がこのラテックスに15分間にわたって添加された。ジオール(UD、12.0g)がゆっくりと添加され、そしてこのラテックスは1時間にわたって攪拌された。ジイソシアナート(IPDI、47.9g)が脱イオン水(18.0g)および界面活性剤C(全界面活性剤の50%、2.2g)と混合された。ティシュティアロール(Tissue Tearor)携帯型ホモジナイザー(モデル398、バイオスペックプロダクツ)を用いて、30rpmで2分間にわたってこの混合物を均質化することによって微細エマルションが得られた。得られたエマルションは10分間にわたって反応器に滴下添加され、次いで、さらに1時間にわたって攪拌された。フラスコの内容物は85℃に加熱され、3時間保持され、その時間の後で、フラスコは30℃未満に冷却され;攪拌しつつ、15分間にわたってEDA(3.5g)がゆっくりと添加された。最終的なラテックスは100メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表4)。
【0062】
実施例13は実施例12について詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。%固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表4に詳述される。アクリルポリマー中にHEMAを伴う表4における組成物はTおよび/またはMFFTの増大を示す。
【0063】
【表5】

【0064】
実施例13:熱可塑性ポリウレアポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
中間体ラテックス3(300.1g)がフラスコに入れられ、そして脱イオン水(100.8g)で希釈された。攪拌しつつ、界面活性剤C(2.4g)がこのラテックスに15分間にわたって添加された。ジイソシアナート(H12MDI、17.9g)が脱イオン水(26g)および界面活性剤C(1.2g)と混合され、ティシュティアロール(Tissue Tearor)携帯型ホモジナイザー(モデル398、バイオスペックプロダクツ)を用いて、30rpmで5分間にわたって均質化された。得られたエマルションは3分間にわたって反応器に滴下添加され、次いで、さらに1時間にわたって攪拌された。ジアミン(SD231、12.0g)が脱イオン水(12.3g)および界面活性剤C(1.3g)と混合され、均質になるまで攪拌された。このジアミン溶液が10分間にわたってゆっくりと添加され、そして反応温度が50℃に設定された。フラスコの内容物は50℃で2時間にわたって加熱された。2時間後、このフラスコは30℃未満に冷却された。最終的なラテックスは100メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表6)。
【0065】
実施例14:熱可塑性ポリウレアポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
中間体ラテックス3(299.6g)がフラスコに入れられ、そして脱イオン水(99.7g)で希釈された。攪拌しつつ、界面活性剤C(1.6g)がこのラテックスに15分間にわたって添加された。ジイソシアナート(H12MDI、21.7g)が脱イオン水(14.6g)および界面活性剤C(1.5g)と混合された。ティシュティアロール(Tissue Tearor)携帯型ホモジナイザー(モデル398、バイオスペックプロダクツ)を用いて、30rpmで5分間にわたる混合の均質化によって微細エマルションがえられた。得られたエマルションは6分間にわたって反応器に滴下添加され、次いで、さらに1時間にわたって攪拌された。ジアミン(D230、12.0g)が脱イオン水(20.3g)および界面活性剤C(1.5g)と混合され、均質になるまで攪拌され、次いで10分間にわたってゆっくりと添加された。フラスコの内容物は30℃で3時間にわたって加熱され、その時間の後で、このフラスコは30℃未満に冷却された。最終的なラテックスは100メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表5)。表5に示されるように、修飾後に、実施例13および14についての中間体3と比較して、MFFTは増加する。
【0066】
【表6】

【0067】
実施例15:熱可塑性ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)ポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
D.E.R−331液体エポキシ樹脂(30.2g)、脱イオン水(15.2g)および界面活性剤C(10.4g)がガラスジャー内で混合された。この混合物は磁気攪拌を用いて15分間攪拌され、次いでティシュティアロール(Tissue Tearor)携帯型ホモジナイザー(モデル398、バイオスペックプロダクツ)を用いて、30rpmで3分間にわたって均質化された。次いで、攪拌しつつこのエポキシエマルションに中間体ラテックス5が添加された。ジャーの内容物は1時間にわたって攪拌され、その1時間の経過時に、さらなる脱イオン水(15.0g)が添加された。攪拌はさらに20分間継続され、その時間の後で、アミン溶液(5.3gのn−ブチルアミン、6.37gの脱イオン水および0.36gの界面活性剤C)が15分間にわたって添加された。3時間攪拌した後で、最終的なラテックスは100メッシュスクリーンを通され、固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTについて特徴付けられた(表6)。
【0068】
実施例16〜20:熱可塑性ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)ポリマーで修飾された中間体ラテックスの製造
実施例16〜20は実施例15に詳述されたのと実質的に同じ手順を用いて製造された。固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表6に詳述される。これらの結果は、この段階成長ポリマーがTおよびMFFTに及ぼす影響はアクリルラテックスのTおよび使用されるアミンに応じて変化することを示す。
【0069】
【表7】

【0070】
実施例21〜23は、中間体ラテックスとしてアバンセ(AVANSE(商標))MV−100アクリル樹脂(50%固形分、粒子サイズ=130nm、T=14℃)(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)を用いて、実施例15について詳述したのと実質的に同じ手順を用いて製造された。このアクリル樹脂の大きなマスターバッチがD.E.R331液体エポキシ樹脂で最初に修飾されたように手順が変えられた。このマスターバッチは、その後、300gの部分に分けられ、これらは様々なアミンと反応させられた。300gのマスターバッチ中のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、界面活性剤Cおよび脱イオン水の量は表7の1〜4行に示される。%固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表7に詳述される。
【0071】
【表8】

【0072】
実施例24:熱可塑性ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)で修飾された中間体ポリウレタン分散物の製造
まず、D.E.R.331液体エポキシ樹脂(128.0g)および界面活性剤C(12.8g)の混合物を脱イオン水(72.0g)に攪拌しつつ添加し、次いで、携帯型ホモジナイザー(IKAウルトラTurraxT−25ベーシック、6500rpm)を用いて、5分間にわたって均質化することによりエポキシエマルションが製造された。界面活性剤C(0.82g)、脱イオン水(14.7g)およびエポキシエマルション(17.88g)が中間体9(130g)に添加された。エポキシエマルションの添加の後で、この混合物は2時間攪拌された。n−ブチルアミンの溶液(3.9gの脱イオン水中で2.1g)がこの混合物に5分間にわたって、攪拌しつつ滴下添加され、追加の脱イオン水(20g)で希釈され、2時間攪拌し、その後その材料を一晩置いておいた。
【0073】
中間体9および実施例24は両方ともドローダウンされて2milsの乾燥膜厚さを有する膜を製造し、1週間乾燥させた。次いで、化学物質耐性を試験するために、各膜の表面が、フォーミュラ(Formula)409クリーナー、50%エタノール、イソプロピルアルコールおよびメチルエチルケトンの2cm直径のプールを用いて1時間処理された。4種類全ての化学物質は中間体9をキャストした膜を劇的に柔らかくし、または全体的に溶かした。実施例24をキャストした膜はこれら4種類の化学物質のいずれからも目に見えるダメージを示さなかった。
【0074】
【表9】

1−10スケール:10は何らダメージの徴候がないことを意味し、1は膜の完全な除去に対応する。
【0075】
実施例25:熱可塑性ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)で修飾された中間体アクリルラテックスの製造
実施例24に詳述されるのと実質的に同じ手順を用いてエポキシエマルションが製造された。界面活性剤C(0.6g)、脱イオン水(12g)およびD.E.R.331エマルション(13.13g)が100gのロシールド(ROSHIELD(商標))3188自己架橋性アクリルエマルション(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標、33.6%固形分、粒子サイズ=110nm)に添加された。添加の完了後、この混合物が2時間にわたって攪拌された。次いで、n−ブチルアミン(1.3g)がこのラテックスに5時間にわたって滴下添加された。この混合物は2時間攪拌され、次いで一晩置いておかれた。このアクリルエマルションおよび実施例25のラテックスはドローダウンされてオーク板上に薄い膜を形成した。実施例25はより良好な目に見える暖かみを有し、望ましい赤みを帯びた黄色の色相を提供したが、この色相は対照のアクリル配合物によっては提供されない。
【0076】
実施例26〜27:熱可塑性ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)で修飾された中間体アルキド分散物の製造
実施例26〜27は、中間体10が修飾されるが、実施例15に詳述されるのと実質的に同じ手順を用いて製造された。この手順においては、中間体10の大きなマスターバッチは最初にD.E.R331液体エポキシ樹脂で修飾された。このマスターバッチは、次いで150gの部分に分けられ、それぞれ、エタノールアミンおよびn−ブチルアミンと反応させられた。マスターバッチ150g中にある中間体10、エポキシ樹脂、界面活性剤Cおよび脱イオン水の量は表9の行1〜4に示される。%固形分、pH、粒子サイズ、TおよびMFFTは表9の行5〜9に詳述される。
【0077】
【表10】

【0078】
コーティング実施例1、2および4、並びに中間体1
モル比1:1のジイソシアナート:ジオールを用いたポリウレタンで修飾されたラテックス、並びに未修飾対照ラテックスのコーティング用途
透明木材コーティングのための、未修飾対照ラテックス中間体のコーティング配合物(C中間体1)、並びにモル比1:1のジイソシアナート:ジオールを用いたポリウレタンで修飾されたラテックス(実施例1、実施例2および実施例4)が表10に示される。ButylCarbはブチルカルビトール(CARBITOL(商標))ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)である。Surf104DPMはサーフィノール(Surfynol)104界面活性剤(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル中50%)であり;ZonylFS610はゾニル(Zonyl)FS−610フルオロ界面活性剤である。それぞれの材料は徐々に添加され、ベンチトップオーバーヘッドミキサーを用いて混合された。
【0079】
【表11】

【0080】
比較例であるC中間体1および実施例であるC実施例1、2および4のケーニッヒ硬度(Konig Hardness)、耐汚染性、および化学物質/溶媒耐性特性は表11に示される。上記配合物は、ASTM D−823−95手順Eに従って10milsの湿潤膜厚さで処理されたアルミニウムパネルに適用されて、約2milsの乾燥膜厚さを生じさせた。ペンデュラム(ケーニッヒ)硬度は、周囲温度および50%相対湿度で7日間の乾燥および60℃のオーブン内でさらに5日間の乾燥の後で、それぞれ、振幅の周期1.4sおよび振幅制限6°〜3°で、ASTM D4366−95を用いてこのパネル上で試験された。耐汚染性および化学物質/溶媒耐性はオーブン乾燥されたパネル上で以下のようにスポット試験された:丸い繊維ディスクが様々な化学物質または溶媒に浸漬され、コーティング上に配置され、そして蓋で覆われた。〜1時間後に、覆いとディスクが取り除かれ、パネルが軽く拭われた。この塗膜は以下の基準を用いて膜のダメージについて評価された:10〜9=ダメージまたは変色なし、8〜7=わずかな膨潤、膨れ、または、しわ、曇り、黄変、6〜5=中程度の膨潤、膨れ、または、しわ、4〜3=重度の膨潤、膨れ、または、しわ、並びに2〜0=溶解、剥離、または非常に変色。
【0081】
中間体ラテックス対照を超えるケーニッヒ硬度、耐汚染性、および化学物質/溶媒耐性の向上が、修飾されたラテックスについて、特にヒドロキシル官能基を有するラテックスについて観察された。
【0082】
【表12】

【0083】
コーティング実施例5、6、8および9
モル比1.5:1のジイソシアナート:ジオールを用いたポリウレタンで修飾されたラテックスのコーティング用途
表10におけるのと同じ材料を用いた、透明木材コーティングのための、モル比1.5:1のジイソシアナート:ジオールを用いたポリウレタンで修飾されたラテックスの配合物(実施例5、実施例6、実施例8および実施例9)が表12に示される。
コーティング実施例5、6、8および9のケーニッヒ硬度、耐汚染性、および化学物質/溶媒耐性特性は表13に示される。それらはコーティング実施例1、2および4と同じ方法で試験された。
コーティング実施例1、2および4と同様に、中間体ラテックス対照(C中間体1)を超えるケーニッヒ硬度、耐汚染性、および化学物質/溶媒耐性の向上が、修飾されたラテックスについて、特にヒドロキシル官能基を有するラテックスについて観察された。
【0084】
【表13】

【0085】
【表14】

【0086】
コーティング実施例15〜17、並びに中間体5〜7
ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)で修飾されたラテックス、並びに未修飾対照ラテックスのコーティング用途
金属への直接コーティング(direct−to−metal coating)のために、C中間体5〜7、並びにC実施例15〜17についての配合物が表14に示される。TAMOL(商標)2001はタモール(TAMOL(商標))2001顔料分散物(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)をいい;DOWANOL(商標)DPMはダウアノール(DOWANOL(商標))DPMジプロピレングリコールメチルエーテル(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)をいい;亜硝酸ナトリウム(15%)はシグマアルドリッチカンパニーからの亜硝酸ナトリウム塩から製造された15重量%水溶液であり;ACRYSOL(商標)RM−8Wはアクリゾル(ACRYSOL(商標))RM−8W非イオン性ウレタンレオロジー調整剤(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)をいい;SurfynolCT−111はサーフィノール(Surfynol)CT−111湿潤剤をいい;DrewplusL−493はドリュープラス(Drewplus)L−493脱泡剤をいい;Ti−Pure R−706はTi−Pure(タイ−ピュア)R−706TiO顔料をいい;Texanolはテキサノール(Texanol)造膜助剤をいい;並びに、DrewplusL−493はドリュープラスL−493脱泡剤をいう。
【0087】
顔料を除く、グラインドセクションにおける全ての液体材料はグラインドポット内に入れられ、そして攪拌された。次いで、顔料が添加され、コーレス溶解機(Cowles Dissolver)を用いて、ヘグマン(Hegman)7+評定に至るまで、25分間約2000RPMでグラインドが続けられた。レットダウン工程においては、グラインドされた顔料がラテックスに5分間にわたって、攪拌しつつ添加された。造膜助剤混合物(造膜助剤および水)が次いで添加され、攪拌がさらに15分間続けられた。残りの材料が添加されて、攪拌が20分間続けられた。ストーマー(Stomer)粘度計を用いて、当初および5日目の粘度が測定され、クレブス単位(KU)で報告された。
【0088】
修飾されたラテックス(C実施例15〜17)についての5日間にわたるKU粘度の増大は、対照のラテックス(C中間体5〜7)についての増大と同様であり、このことはポリ(ヒドロキシアミノエーテル)ポリアミンポリマーで修飾されたラテックスがアニオン性/非イオン性着色コーティングを配合する能力を悪化させなかったことを示す。
【0089】
【表15】

【0090】
比較例であるC中間体5〜7および実施例であるC実施例15〜17の光沢、ケーニッヒ硬度、鉛筆硬度、ブロック耐性(Block−Resistance)およびダートピックアップ耐性(Dirt Pick Up Resistance)特性は表15に示される。上記配合物は、ASTM D−823−95手順Eに従って、10milsの湿潤膜厚さで、処理されたアルミニウムパネルに適用され、約2milsの乾燥膜厚さを生じさせた。
【0091】
光沢は、周囲温度および50%相対湿度での様々な乾燥時間の後で、ASTM D−523−89(1999年再承認)試験方法によって、20、60および85度で決定された。ペンデュラム(ケーニッヒ)硬度は、振幅の周期1.4sおよび振幅制限6°〜3°で、ASTM D4366−95を用いて同じパネル上で試験された。鉛筆硬度はASTM D3363−05標準試験方法を用いて光沢測定のためのものと同じパネルを使用して試験された。
【0092】
ブロック耐性は、処理されたアルミニウムパネル上に造られたドローダウンを用いて測定された。恒温室(CTR)内で2週間乾燥させた後で、1.5インチ正方形がこのドローダウンから切り出され、面と面とを向かい合わせて配置し、以下の2つの方法のうちの1つで試験された:a)CTR内で室温で一晩;b)140°Fオーブン内で1/2時間。それぞれの試験において、#8ストッパーおよび1キログラムの重りがその正方形の上に配置された。評価は面と面とが向かい合って配置された1.5インチの正方形の分離の容易さ、および分離後のコーティングされた表面上のダメージに基づく。評価は0〜10の範囲であって、向き合って配置された1.5インチの正方形がその膜に完全にダメージを与えなければ分離できない場合に、最も悪い0であり;および、1kgの重りが除かれた後に力を加えることなく向き合って配置された1.5インチの正方形が分離されうる場合に、最良の10である。
【0093】
ダートピックアップ耐性(DPUR)も処理されたアルミニウムパネル上で測定された。パネルがCTR内で2週間乾燥された後で、ダートピックアップ耐性試験が行われた。Y−反射率およびL.a.b.値が採られた。次いで、パネルはフォグボックス内に1.5時間にわたって入れられ、次いで取り出され、パット乾燥させられ(patted dry);次いで酸化鉄スラリー(〜0.8g)が適用された。パネルは実験室内で3時間にわたって空気乾燥させられ、次いで140°Fオーブン内に1時間入れられ、その時間の後で、パネルは取り出され、〜0.5時間にわたって冷却された。次いで、各パネルは各パネルのための個々のチーズクロスを用いてぬるい流水下で洗浄された。パネルはパッド乾燥させられ、実験室内に一晩置いておかれた。各パネルの汚れた部分にわたって、再び、Y−反射率およびL.a.b.測定値が記録された。ダート処理前および処理後のY−反射率並びに保持のそのパーセンテージが計算され、表15に示された。Y−反射率保持のより高いパーセンテージはより低いダートピックアップかつより良好なダートピックアップ耐性を意味する。
【0094】
修飾されたラテックスについて、特に低いガラス転移温度を有するラテックスについて、中間体ラテックス対照を超える、ダートピックアップ耐性およびケーニッヒ硬度およびブロック耐性の改良が観察された。
【0095】
【表16】

【0096】
コーティング実施例21〜23−対−対照:未修飾の、およびポリ(ヒドロキシアミノエーテル)で修飾されたアバンセMV−100ラテックスのコーティング用途
アバンセ(商標)MV−100ラテックス(ザダウケミカルカンパニーまたはその関連会社の商標)についての配合物および金属への直接コーティング(direct−to−metal coating)についての実施例21〜23が表16に示される。これらは同様の材料を用いて、同様の方法で配合された。
【0097】
【表17】

【0098】
アバンセ(商標)MV−100ラテックス(比較)およびC実施例21〜23に基づく塗膜の光沢、ケーニッヒおよび鉛筆硬度、ブロック耐性およびダートピックアップ耐性特性が表17に示される。これらはコーティング実施例C中間体5〜7およびC実施例15〜17におけるのと同じように測定された。さらに、比較ラテックスおよびC実施例22についてタンニンおよびマーカー(Tannin and Marker)汚れブロッキング耐性も試験され、相対的な比較が表17に報告される。タンニンブロック耐性はシーダーパネルを、2milsの乾燥膜厚さの目的物でブラシを用いてコーティングすることにより評価された;トップコートは第1のコートの適用の2時間後に適用された。コーティングされたパネルは高湿度環境中で16〜24時間にわたってコンディショニングされ、次いで1日間にわたって乾燥させられた。コーティング表面上の相対的な変色が報告された。マーカー汚染耐性は、マーカーがこのチャート上にドローされた後で適用されたコーティングを伴うシールされた白色チャートであるレネタフォーム(Leneta Form)WB上で同様に評価された。
【0099】
修飾されたラテックスについて、3種類の異なるアミンについてアバンセMV−100ラテックス対照を超える、ダートピックアップ耐性およびケーニッヒ硬度およびブロック耐性の改良が観察された。さらに、タンニンおよびマーカー汚れブロッキング耐性について、アバンセMV−100ラテックス対照に対して、C実施例22が試験された場合に、向上した性能が観察された。
【0100】
【表18】

【0101】
【表19】

NAはデータを入手できなかったことを意味し、+は対照よりも良好であったことを意味し、=は対照と同じであったことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリマー粒子の安定な水性分散物を、段階成長重合の方法によってポリマーを形成することができる疎水性第1モノマーと一緒にし;
b)第1モノマーがポリマー粒子を実質的な平衡まで膨潤させ;
c)第1モノマーと反応して熱可塑性段階成長ポリマーを形成することができる第2モノマーを、工程b)の混合物に添加し、
前記第2モノマーは少なくとも部分的にポリマー粒子に吸収されるのに充分な疎水性を有することにより特徴付けられる;
d)第1モノマーおよび第2モノマーを重合させて熱可塑性段階成長ポリマーを形成する;
ことを含む方法。
【請求項2】
第1モノマーがジグリシジルエーテルであり、かつ第2モノマーがジオール、ジチオール、第一級アミン、アルカノール第一級アミン、チオアルキル第一級アミン、ジ−第二級アミン、メルカプトアルコールまたはシリルアルキル第一級アミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2モノマーが第一級アミン、アルカノール第一級アミンまたはジ−第二級アミンである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー粒子の安定な水性分散物がアクリル、スチレン−アクリル、アルキド、またはポリウレタンポリマー粒子の安定な水性分散物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1モノマーがジイソシアナートであり、かつ第2モノマーがジオール、ジアミン、ジチオール、アルカノールアミン、チオアミンまたはメルカプトアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2モノマーがジオール、ジアミンまたはアルカノールアミンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程a)からのポリマー粒子がペンダントヒドロキシル、グリシジルエーテルまたはアセトアセトキシエチル基を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリヒドロキシアミノエーテル、ポリヒドロキシチオールエーテル、ポリヒドロキシアミノエステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、またはポリシロキサンである熱可塑性段階成長ポリマーを吸収したポリマー粒子の安定な水性分散物を含む組成物であって、
ただし、前記熱可塑性段階成長ポリマーがポリウレタンまたはポリウレアである場合には、前記段階成長ポリマーには酸基が実質的になく、かつ前記ポリマー粒子はペンダント第一級アミンまたはヒドラジン基の残部を実質的に含まない;
組成物。
【請求項9】
ポリマー粒子が、ポリウレタンまたはポリウレアウレアを吸収した、アクリル、スチレン−アクリル、スチレン−ブタジエン、ウレタン、エステル、オレフィン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、またはポリ酢酸ビニル粒子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ポリマー粒子がアクリルまたはスチレン−アクリル粒子である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー粒子が、ポリヒドロキシアミノエーテル、ポリヒドロキシチオールエーテルまたはポリヒドロキシアミノエステルを吸収した、アクリル、スチレン−アクリル、スチレン−ブタジエン、ウレタン、エステル、オレフィン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、またはポリ酢酸ビニル粒子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマー粒子がアクリルまたはスチレン−アクリル粒子である請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
コーティング剤、接着剤、シーラント、プライマー、コーキング材、染色剤または充填剤に適するように配合される請求項8〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
金属、プラスチック、コンクリート、木材、アスファルト、毛髪、紙、皮革、ゴム、発泡体または布地である基材に、請求項13に記載の組成物を適用する工程を含む複合体を形成する方法。

【公開番号】特開2012−255135(P2012−255135A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−99376(P2012−99376)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】