説明

熱可塑性加硫ゴム接着剤組成物

本発明は、動的硬化ゴム、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性炭化水素樹脂を含む熱可塑性加硫ゴムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一以上の実施の態様は、官能性粘着付与樹脂を含む熱可塑性加硫ゴム接着剤組成物を含む熱可塑性加硫ゴム接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは良く知られている。それは熱硬化性エラストマーの特性の多くを持ちつつ、熱可塑性物質として加工が可能である。あるタイプの熱可塑性エラストマーは熱可塑性加硫ゴムであり、プラスチックマトリクス中で分散した細かく分かれたゴム粒子を持つという特徴を持つことがある。これらのゴム粒子は架橋されており弾力性を増す。
【0003】
ある熱可塑性加硫ゴムは接着剤として有利に用いることができる。これらの組成物が溶融加工が可能である限りこれらの組成物は、ホットメルト接着剤として応用すると有用に使用されうる。これらの接着剤は技術的に有用であることが証明されているが、多くの熱可塑性加硫ゴム組成物のオレフィンに富む性質は、金属表面の様な極性表面との接着に係る問題を起すこともある。
【0004】
極性表面に対する接着性を向上させるために、官能性ポリマーが熱可塑性加硫ゴム組成物に含まれる。例えば、米国特許第4,957,968号は、金属表面への接着性を向上させるために熱可塑性加硫ゴム組成物にマレイン酸化ポリプロピレン(maleated polypropylene)を加えることを教示する。
【0005】
これらの官能性ポリマーを含ませることにより熱可塑性加硫ゴムの接着特性を向上させることができるが、ソフトプラスチックを含ませることにより接着性が向上することが分かった。例えば、米国特許第6,503,984号は、官能性ポリオレフィン及び低曲げ弾性率及び低結晶化度であるという特徴を持つ非官能性ポリオレフィンを含む熱可塑性加硫ゴム組成物を教示する。
【0006】
極性表面に接着する柔らかい熱可塑性加硫ゴムの使用可能性が増すにつれて、これらの組成物に対する需要がまた同様に増大している。例えば、熱可塑性加硫ゴム接着組成物はしばしば、多くの家庭用工具及び機器に望ましい表面を提供するために用いられる。例えば、多くの台所用器具は、熱可塑性加硫ゴムで作られる軟らかい、握ることの可能な表面を持つ。これらの使用を考慮すると、熱可塑性加硫ゴムの極性表面への接着性は、特に水により劣化した後は、特に重要である。また、接着組成物が基材に圧縮成形される場合は、基材の有利な接着力はより長い滞留湿潤時間に起因し、良好な結合力が実現されることもあるが、圧縮成形技術はしばしば射出成形技術より効率が劣る。良い結合力を達成する能力は射出成形の場合は瑣末なことではなく、良い結合力は通常経験されるより短い滞留湿潤時間に起因することもある。
【0007】
したがって、また射出成形後に良い結合力を示すホットメルト接着剤に対する要望がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一以上の実施の態様においては、動的硬化ゴム、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性炭化水素樹脂を含む熱可塑性加硫ゴムを提供する。
【0009】
本発明の一以上の実施の態様では、更に熱可塑性加硫ゴムを極性基材にオーバーモールドする方法を提供することを含み、該方法は、熱可塑性加硫ゴムが動的硬化ゴム、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性炭化水素樹脂を含む、熱可塑性加硫ゴムを極性基材にオーバーモールドする方法を提供することを含む。
【0010】
本発明の一以上の実施の態様はまた、a) 極性基材、及びb) 動的硬化ゴム、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性炭化水素樹脂を含み、熱可塑性加硫ゴムは前記極性基材に接着する熱可塑性ゴムを含む市販用の商品を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本発明の一以上の実施の態様の熱可塑性加硫ゴムは、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性接着付与剤を含む。ある実施の態様における熱可塑性加硫ゴムは開始時の分析及び水による老化後のいずれにおいても極性表面によく接着した。またある実施の態様における熱可塑性加硫ゴムは極性表面にオーバーモールドされる場合には極性表面に良好な接着性を示す。
【0012】
一以上の実施の態様における熱可塑性加硫ゴムは、動的硬化ゴム、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性粘着付与樹脂を含む。
【0013】
一以上の実施の態様において、熱可塑性加硫ゴムは任意選択的に、熱可塑性加硫ゴムで通常用いられる他の成分又は組成のみならず、非官能性熱可塑性ポリマーを含んでも良い。非官能性熱可塑性ポリマーは、結晶質又は半結晶質熱可塑性ポリマー、低結晶質熱可塑性ポリマー又はこれらの混合物を含んでも良い。本発明の熱可塑性加硫ゴムはまた、熱可塑性加硫ゴムの製造で従来用いられる他の成分を含んでも良い。
【0014】
動的硬化され得る任意のゴム又はそれらの混合物を用いることもできる。ゴムと言う場合一より多いゴムの混合物を含むこともある。有用なゴムの例には、オレフィン系エラストマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンーブタジエン コポリマーゴム、ブタジエンゴム、アクリルニトリルゴム、ブタジエンースチレンービニル ピリジンゴム、ウレタンゴム、ポリイソプレン ゴム、エピクロロヒドリン ターポリマー ゴム、ポリクロロプレン及びこれらの混合物を含むがこれに限定されるものではない。
【0015】
オレフィン系エラストマーコポリマーの用語は、エチレンから重合されるゴム性コポリマー、少なくとも一つのα―オレフィン モノマー、及び任意選択的に少なくとも一つのジエンモノマーを指す。α―オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、又はこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない。ある実施の態様においては、α−オレフィンは、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン又はそれらの組み合わせを含む。ジエンモノマーは、5−エチリデン−2−ノルボルネン;5−ビニル−2−ノルボルネン;ジビニルベンゼン;1,4−ヘキサジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン;1,6−オクタジエン;5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;ジシクロペンタジエン;又はこれらの組み合わせを含んでも良いが、これに限定されるものではない。コポリマーがエチレン、α−オレフィン及びジエンモノマーから調製される場合、コポリマーはターポリマーと呼ばれることもあり、又は複数アルファ オレフィン又はジエンが用いられる場合はテトラポリマーと呼ばれることもある。
【0016】
一以上の実施の態様においては、オレフィン系エラストマーコポリマーは、エチレンモノマー由来のエチレン単位を重量で12から85%、又は20から80%、又は40 から70%及び/又は60 から66%含み、ジエンモノマー由来のジエンを重量で0.1から15%、又は0.5から12%、又は1から10% 、又は2から8%で含み、残りはα−オレフィンモノマー由来のα―オレフィン単位(例えば、プロピレン)を含む。ある実施の態様のターポリマーは、モルパーセントで表したジエンモノマー由来のジエン単位を0.1から5 モルパーセント、又は0.5から4モルパーセント、又は1から2.5 モルパーセント含む。ジエンが5−エリチデンー2−ノルボルネンを含む一以上の実施の態様において、オレフィン系エラストマー コポリマーは、5−エリチデンー2−ノルボルネン由来の単位を重量で少なくとも6%、他の実施の態様においては重量で少なくとも8%、他の実施の態様においては重量で少なくとも10%含んでも良い。
【0017】
一以上の実施の態様において、オレフィン系エラストマー コポリマーは50,000より大きい重量平均分子量(Mw)、他の実施の態様においては100,000より大きい、他の実施の態様においては200,000より大きい、他の実施の態様においては300,000より大きい重量平均分子量(Mw)を持ち; ある実施の態様においては好ましいオレフィン系エラストマーコポリマーの重量平均分子量は1,200,000より小さく、他の実施の態様においては1,000,000より小さく、他の実施の態様においては900,000より小さく、及び他の実施の態様においては800,000より小さい。
【0018】
一以上の実施の態様において、有用なオレフィン系エラストマーコポリマーは20,000より大きい数平均分子量(Mn)を持ち、他の実施の態様においては60,000より大きく、他の実施の態様においては100,000より大きく、及び他の実施の態様においては150,000より大きい数平均分子量を持ち、及び一以上の実施の態様のオレフィン系エラストマーコポリマーの数平均分子量は500,000より小さく、他の実施の態様においては400,000より小さく、他の実施の態様においては300,000より小さく、及び他の実施の態様においては250,000より小さい。
【0019】
一以上の実施の態様においては、オレフィン系エラストマーコポリマーはまた、ASTM D 1646によるムーニー粘度(ML(1+4) @125℃)が25から500又は50から450の特徴を持つこともある。本発明の熱可塑性加硫ゴム内で高分子量のオレフィン系エラストマーコポリマーが使用される場合は、これらの高分子ポリマーは油展された形で得られることもある。これらの油展コポリマーはゴムの100重量部当り、通常15から100重量部のパラフィン油を含む。これらの油展コポリマーのムーニー粘度は35から80又は45から70であることもある。
【0020】
一以上の実施の態様においては、オレフィン系エラストマーコポリマーは、135℃のデカリン中で測定された固有粘度が2から8 dl/g,又は3から7 dl/g,又は4から6.5 dl/gである特徴を持つこともある。
【0021】
オレフィン系エラストマーコポリマーは、種々の技術を用いて製造又は合成しても良い。例えば、これらのコポリマーは、チーグラー・ナッタ系、バナジウム触媒及びIV−VI族メタロセンを含む単一部位触媒、及びブルックハート触媒を含む多くの触媒系を使用する、液相、スラリー相又はガス相重合技術により合成することができる。エラストマーコポリマーは市場で、商標名Vistalon(登録商標)(ExxonMobil Chemical Co.; Houston, Texas), Keltan(登録商標)(DSM Copolymers; Baton Rouge, Louisiana), Nordel(登録商標)IP (DuPont Dow Elastomers; Wilmington, Delaware), NORDEL MG(登録商標)(DuPont Dow Elastomers), Royalene(登録商標) (Crompton) and Buna(登録商標)(Bayer Corp.; Germany)の商品として購入可能である。
【0022】
一以上の実施の態様においては、ゴムは高度に硬化されうる。ある実施の態様においては、ゴムは完全に又は十分硬化させると有利である。硬化の程度は、シクロヘキサン又は沸騰したキシレンを抽出剤として用いて、熱可塑性加硫ゴムから抽出可能なゴムの量を決定して測定することができる。この方法は米国特許第4,311,628号に開示されている。ある実施の態様においては、ゴムは、米国特許第5,100,947号及び米国特許第5,157,081号に記載されている様に、23℃でシクロヘキサンにより抽出可能な重量パーセント、例えば、10重量パーセントを超えず、他の実施の態様においては6重量パーセントを超えず、他の実施の態様においては5重量パーセントを超えず、及び他の実施の態様においては3重量パーセントを超えない硬化レベルを持つ。代替的に、一以上の実施の態様においては、ゴムはその架橋密度が好ましくは、ゴムミリリットル当り少なくとも4 x 10-5モル、他の実施の態様においては、少なくとも7 x 10-5モル、及び他の実施の態様においては、少なくとも10 x 10-5モルである様な硬化レベルを持つ。また、Ellul 他による「動的加硫されたTPEの架橋密度及び相形態学」(Crosslink Densities and Phase Morphologies in Dynamically Vulcanized TPEs)、RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, Vol. 68, 573-584ページ(1995)を参照。
【0023】
官能性熱可塑性ポリマーは少なくとも一つの官能基を含む。官能性置換基、または官能基性小部分と呼ばれる官能基はヘテロ原子を含む。一以上の実施の態様においては、官能基は極性基を含む。極性基の例には、ヒドロキシ、カルボニル、エーテル、ハロゲン化物、アミン、イミン、ニトリル、又はイソシアネート基を含む。カルボニル小部分を含む代表的な基には、カルボン酸、無水物、ケトン、酸ハロゲン化物、エステル、アミド又はイミド基及びこれらの誘導体を含む。ある実施の態様においては、官能基は無水コハク酸基、又は対応する酸を含み、これらは無水マレイン酸、又はβ−アルキル置換 プロパン酸基又はこれらの誘導体との反応(例えば、重合又はグラフト反応)から生成されることもある。一以上の実施の態様においては、官能基は炭化水素ポリマー骨格の側鎖である。
【0024】
一以上の実施の態様においては、官能性熱可塑性ポリマーは熱可塑性ポリマーにグラフトモノマーをグラフトすることにより調製しても良い。グラフトプロセスは熱可塑性ポリマーをグラフトモノマーと組み合わせ、接触させ又は反応させることを含むこともある。これらの官能性熱可塑性ポリマーは、米国特許第4,957,968号、米国特許第5624,999号,及び米国特許第6,503,984号に記載のポリマーを含む。
【0025】
グラフトモノマーとグラフトされ得る熱可塑性ポリマーは、固い、通常高分子量のプラスチック材料を含むこともある。これらのプラスチックは結晶質及び半結晶質ポリマーを含む。一以上の実施の態様においては、これらの熱可塑性ポリマーは、その特徴として、少なくとも20%の結晶化度を持ち、他の実施の態様においては少なくとも25%及び他の実施の態様においては少なくとも30%の結晶化度を持つこともある。結晶化度は、サンプルの融解熱を00%結晶質ポリマーの融解熱で除して決定することができ、ポリプロピレンで209ジュール/グラム又はポリエチレンで350ジュール/グラムと予想される。融解熱は示差走査熱量計により決定することができる。これらの又は他の実施の態様において、官能化される熱可塑性ポリマーの特徴として、少なくとも40 J/gの融解熱、他の実施の態様においては50 J/gを超え、他の実施の態様においては95 J/gを超え、及び他の実施の態様においては100 J/gを超える融解熱を持つことがある。.
一以上の実施の態様においては、熱可塑性ポリマーはその特徴として、グラフトされる前に、重量平均分子量(Mw)が100 kg/モルから2,000 kg/モル、及び他の実施の態様において300 kg/モルから600 kg/モルであることがある。また、その数平均分子量(Mn)が80 kg/モルから800 kg/モル、及び他の実施の態様においては90 kg/モルから200 kg/モルであることもある。分子量は時差屈折率検出器を持ち、ポリスチレン標準を用いて較正されたWaters 150 ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて決定しても良い。
【0026】
一以上の実施の態様においては、これらの熱可塑性ポリマーは、グラフトの前に、ASTM D-1238により230°C及び2.16 kg 負荷による測定で、0.3から2,000 dg/分のメルトフローレート、他の実施の態様においては、0.5から1,000 dg/分、他の実施の態様においては1から1,000 dg/分のメルトフロ−レートを持つこともある。
【0027】
一以上の実施の態様においては、これらの熱可塑性樹脂は、グラフトされる前に、その溶融温度(Tm)は10℃から250℃であっても良く、他の実施の態様においては120から170℃、他の実施の態様においては130℃ から165℃であっても良い。一以上の実施の態様においては、これらは結晶化温度(Tc)が任意選択的に少なくとも75℃であり、他の実施の態様においては少なくとも95℃、他の実施の態様においては、少なくとも100℃及び他の実施の態様においては少なくとも105℃であり、ある実施の態様においては、105℃から115℃の範囲であっても良い。
【0028】
グラフトされる代表的熱可塑性ポリマーには、ポリオレフィン、ポリオレフィン コポリマー及び非オレフィン熱可塑性ポリマーを含む。ポリオレフィンは、エチレン又はアルファオレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン, 1-ヘキセン, 1-オクテン, 2-メチル-l-プロペン, 3 -メチル- 1-ペンテン, 4-メチル-l-ペンテン, 5メチル- 1-ヘキセン及びこれらの混合物を重合することにより形成されるこれらの熱可塑性ポリマーを含んでも良い。エチレン及びプロピレンのコポリマー、及びエチレン及び/又はプロピレンと他のアルファオレフィン、例えば、1-ブテン, 1-ヘキセン, 1-オクテン, 2-メチル-l-プロペン, 3 -メチル- 1-ペンテン, 4-メチル-l-ペンテン, 5メチル- 1-ヘキセン及びこれらの混合物もまた考慮される。他のポリオレフィン コポリマーには、スチレンーエチレンコポリマーの様なオレフィンと他のスチレンのコポリマー、ポリエチレンーアクリレートコポリマーの様なオレフィンとα、β―不飽和酸、α、β―不飽和エステルのポリマーを含んでも良い。非オレフィン系熱可塑性ポリマーには、スチレン、α、β―不飽和酸、α、β―不飽和エステル及びこれらの混合物のポリマー及びコポリマーを含んでも良い。例えば、ポリスチレン、ポリアクリレート、及びポリメタクリレートを官能化しても良い。
【0029】
これらのホモポリマー及びコポリマーは、技術分野で知られている適当な重合技術を用いて合成しても良い。これらの技術には、従来のチーグラー・ナッタタイプ重合、これに限定されるものではないがメタロセン触媒を含む単一部位有機金属触媒を用いる触媒反応及び高圧遊離基重合を含んでも良い。
【0030】
官能性熱可塑性ポリマーの官能化の程度は、官能性ポリマーの全重量に基づき側鎖官能基部分の重量パーセントにより表しても良い。一以上の実施の態様においては、官能性熱可塑性ポリマーは、重量で少なくとも0.2%、他の実施の態様においては少なくとも0.4%、他の実施の態様においては少なくとも0.6%、他の実施の態様においては少なくとも1.0 %官能化された部分を含んでも良く、これらの及び他の実施の態様においては、官能性熱可塑性ポリマーは、重量で5%未満、他の実施の態様においては3%未満、他の実施の態様においては2%未満の官能化部分を含んでも良い。
【0031】
官能性熱可塑性ポリマーがプロピレン べースの官能性ポリマーである場合の一以上の実施の態様においては、その官能性熱可塑性ポリマーはASTM D- 1238 230°C及び2.16 kg負荷で、メルトフローレートが20から2,000 dg/分、他の実施の態様においては100から1,500 dg/分、他の実施の態様においては150から750 dg/分であっても良い。官能性熱可塑性ポリマーが官能性エチレンベースポリマーである一以上の実施の態様においては、ポリマーは、その特徴としてASTM D-1238 190℃及び2.16 kg 負荷で、メルトフローレートインデクスが0.2から2,000 dg/分、他の実施の態様においては、1から1,000 dg/分及び他の実施の態様においては5 から100 dg/分であっても良い。
【0032】
官能性熱可塑性ポリマーは市場で入手可能である。例えば、マレイン酸化プロピレンベースポリマーは商標名FUSABOND(登録商標)(DuPont), POLYBOND(登録商標)(Crompton),及びEXXELOR(登録商標)(ExxonMobil)で入手可能である。
【0033】
官能性炭化水素樹脂とも呼ばれる官能性粘着付与樹脂は少なくとも一つの官能基を持つ。官能基はまた、官能性置換基又は官能性小部分とも呼ばれるが、一つのヘテロ原子を持つ。一以上の実施の態様においては官能基は極性基を含む。極性基の例には、ヒドロキシ、カルボニル、エーテル、ハリド、アミン、イミン、ニトリル、又はイソシアネート基を含む。カルボニル小部分を含む代表的基には、カルボン酸、無水物、ケトン、酸ハロゲン化物、エステル、アミド、又はイミド基、及びこれらの誘導体を含む。ある実施の態様においては、官能基は無水コハク酸基又はこれに対応する酸であって、無水マレイン酸又はβ―アルキル置換プロパン酸基又はこれらの誘導体との反応に由来する酸を含む。一以上の実施の態様においては、官能基は炭化水素樹脂の骨格の側鎖である。
【0034】
一以上の実施の態様においては、官能性粘着付与樹脂は、米国特許出願公開公報2004/0260021 Al 及び2004/0266947 Alに記載の様に、グラフトされた炭化水素樹脂を含む。グラフト化された炭化水素樹脂は、グラフト化された粘着付与樹脂とも呼ばれるが、グラフト化合成樹脂、グラフト化合成オリゴマー、及び/又はグラフト化天然樹脂、又はこれらの組み合わせを含んでも良い。グラフト化炭化水素樹脂はグラフト化プロセスにより生成することができ、炭化水素樹脂をグラフトモノマーと組み合わせ、接触させ又は反応させることを含む。
【0035】
グラフトされる炭化水素樹脂には、天然樹脂、合成樹脂、及び低分子量ポリマー又はオリゴマーを含んでも良い。モノマーを重合して合成樹脂、又は低分子量ポリマー又はオリゴマーを合成するモノマーには、混合物又は種々の不飽和材料を含む製油所流、又は純粋モノマー供給より得られるものを含んでも良い。モノマーには、脂肪族モノマー、脂環式モノマー、芳香族モノマー又はこれらの混合物を含んでも良い。脂肪族モノマーには、C4, C5,及びC6 パラフィン、オレフィン及び共役ジオレフィンを含んでも良い。脂肪族モノマー又は脂環式モノマーには、ブタジエン、イソブチレン、1,3-ペンタジエン (ピペリレン)並びに1 ,4-ペンタジエン、シクロペンタン、 1-ペンテン, 2-ペンテン, 2- メチル- 1-ペンテン, 2-メチル-2-ブテン、 2-メチル-2-ペンテン, イソプレン, シクロヘキサン, 1-3-ヘキサジエン, 1-4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンを含む。芳香族モノマーには、C8, C9及びC10芳香族モノマーを含んでも良い。芳香族モノマーの例には、スチレン、インデン、スチレンの誘導体、インデンの誘導体、及びこれらの組み合わせを含む。
【0036】
これらの樹脂の例には、脂肪族炭化水素樹脂、少なくとも部分的に水素化された脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、少なくとも部分的に水素化された脂肪族芳香族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、少なくとも部分的に水素化された脂環式/芳香族炭化水素樹脂、少なくとも部分的に水素化された脂環式炭化水素樹脂、少なくとも部分的に水素化された芳香族炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンーフェノール樹脂、ロジンエステル、及びこれらの2以上の混合物を含む。
【0037】
グラフト可能な合成脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂は、数平均分子量(Mn)が400 g/モルから3,000 g/モル、他の実施の態様においては500 g/モル から2,000 g/モルであることもある。これらの炭化水素樹脂はまた、重量平均分子量(Mw)が500 g/モルから 6,000 g/モルであり、他の実施の態様においては700 g/モルから5,000 g/モルであることもある。更に、これらの炭化水素樹脂は、Z−平均分子量が700 g/モルから15,000 g/モルであり、他の実施の態様においては8,000 g/モルから12,000 g/モルであることもある。分子量は時差屈折率検出器及びポリスチレン標準を用いて較正されたWaters 150 ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定しても良い。
【0038】
ある実施の態様においては、炭化水素樹脂はジシクロペンタジエン(DCPD) 又は置換DCPDの熱重合により生成された樹脂を含み、これら更に脂肪族又は芳香族モノマーを含んでも良い。ある実施の態様においては、DCPD 又は置換DCPDは芳香族モノマーと共重合しており、最終製品は10%未満の芳香族含有量を持つ。他の実施の態様においては、炭化水素樹脂は脂肪族モノマー及び芳香族モノマーの共重合から誘導される。
【0039】
グラフトされた合成オリゴマーは、石油蒸留モノマーの二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、及び八量体を含んでも良い。一以上の実施の態様においては、この石油蒸留モノマーは30から210°Cの沸点を持つこともある。オリゴマーは、熱及び触媒重合を含む樹脂重合の副産物を含むこともある。例えば、オリゴマーは、DCPD、脂肪族モノマー、及び/又は芳香族モノマーがオリゴマー化されそしてグラフト化されるプロセスから誘導される。
【0040】
グラフトすることのできる炭化水素樹脂は、芳香族含有量が1から60、他の実施の態様においては2 から40、他の実施の態様においては5から10の特徴を持つ樹脂を含んでも良い。また、グラフトすることのできる炭化水素樹脂は少なくとも部分的に水素化されても良い。例えば、グラフトされる前の炭化水素樹脂は、90未満のオレフィン性プロトン、他の実施の態様においては50未満、他の実施の態様においては25未満、他の実施の態様においては10未満、他の実施の態様においては2未満、他の実施の態様においては1未満、他の実施の態様においては0.5未満、他の実施の態様においては0.05未満のオレフィン性プロトンを含んでも良い。
【0041】
芳香族含有量及びオレフィン含有量は、300 MHzより強い磁界、他の実施の態様においては400 MHz(相当周波数)より強い磁界を持つ分光計の1 H-NMRスペクトルで直接測定する1 H-NMRにより測定しても良い。芳香族含有量には、全プロトン数に対する芳香族プロトンの全合計を含む。オレフィンのプロトン又はオレフィン性プロトン含有量は全プロトン数に対するオレフィン性プロトンの全合計を含む。
【0042】
一以上の実施の態様においては、グラフトモノマーは、炭化水素樹脂にグラフトすることもあるが、少なくとも一つのオレフィン性結合及び少なくとも一つの極性基を含む不飽和有機化合物を含んでも良い。ある実施の態様においては、有機化合物はカルボニル基と共役したエチレン性不飽和を含んでも良い。グラフトモノマーの例には酸、アルコール、無水物、イミド、アミド、及びカルボン酸、酸ハロゲン化物又は無水物、アルコール(フェノール、一価アルコール、ジオール及びポリオール)を含むこれらの誘導体及びこれらの誘導体を含む。代表的な酸及び酸誘導体は、カルボン酸、無水物、酸ハロゲン化物、エステル、アミド、イミド、及びその塩、金属性及び非金属性塩の双方を含む。その例には、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アコニット酸、シトラコ酸、フミン酸(himic)、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、α−メチル クロトン酸、桂皮酸を含む。具体的な例には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコ酸、メチルアクリレート、メチル メタクリレート、エチル メタクリレート、エチルアクリレート、エチル メタクリレート、グリシジル アクリレート、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、 フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、 イタコン酸ジエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸 モノアミド、マレイン酸 ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸―N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸 モノアミド、
フマル酸 ジアミド、フマル酸―N−モノブチルアミド、フマル酸―N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリ、及びメタクリル酸カリを含む。
【0043】
グラフトモノマーの炭化水素樹脂へのグラフト化は遊離基開始剤の存在下好適な条件で実施されることもある。これらのプロセスは米国特許出願公開公報第2004/0260021 Al号及び第2004/0266947 Al号に記載されている。
【0044】
一以上の実施の態様においては、炭化水素樹脂と結合されるグラフトモノマーの量は、グラフトモノマーの樹脂に対するモル比で0.1:1から1:1、他の実施の態様においては0.2:1 から0.9:1、他の実施の態様においては0.3:1から0.8:1として表されることもある。グラフトモノマーがオリゴマーにグラフトする場合、オリゴマーにグラフト結合されるグラフトモノマーの量は、グラフトモノマーのオリゴマーに対するモル比により、0.2:1から5:1、他の実施の態様においては0.5:1 から3:1,他の実施の態様においては0.8:1から1.5:1として表されることもある。
【0045】
出来上がったグラフト炭化水素樹脂は、軟化点が15℃ から210℃、他の実施の態様においては65℃から170℃、及び他の実施の態様においては90℃から140℃であることもある。軟化点はASTM E-28 (改定版1996)により決定されうる。これら又は他の実施の態様においては結果のグラフトされた炭化水素樹脂は、ガラス転移温度が120°C未満、他の実施の態様においては、110°C未満、及び他の実施の態様においては60°Cから80°Cであることもある。ガラス転移温度は示差走査熱量計を用いてASTM D 341-88により決定しても良い。これらの及び他の実施の態様においては、結果のグラフトされた炭化水素樹脂は、その鹸化価(mg KOH/g 樹脂材料)が10より大きく、他の実施の態様においては15より大きく,及び他の実施の態様においては19より大きいこともある。
【0046】
これらの又は他の実施の態様においては結果のグラフトされた炭化水素樹脂は、酸価が10より大きく、 他の実施の態様においては15より大きく、他の実施の態様においては20より大きく、及び他の実施の態様においては25より大きいこともある。
【0047】
熱可塑性加硫ゴムの製造に用いることのできる熱可塑性樹脂は何れも本発明の熱可塑性加硫ゴムの製造に用いることができる。有用な熱可塑性樹脂は、固形の通常高分子プラスチック樹脂を含んでも良い。
【0048】
これらの樹脂は結晶質及び半結晶質ポリマーを含むこともある。一以上の実施の態様においては、これらの樹脂は、その特徴として重量で少なくとも25%、他の実施の態様においては、重量で少なくとも30%、他の実施の態様においては、重量で少なくとも35%の結晶化度を持つこともある。 結晶化度はサンプルの溶融熱、これはポリプロピレンで209 ジュール/グラム、又はポリエチレンで350ジュール/グラムと想定されるが、を100% 結晶化度のポリマーの溶融熱で除してより決定することができる。
【0049】
溶融熱は示差走査熱量計により決定しうる。一以上の実施の態様における熱可塑性樹脂がプロピレンベースである場合、樹脂の特徴として、溶融熱が少なくとも50 J/g、他の実施の態様においては75 J/gを超え、他の実施の態様においては100 J/gを超えることもある。一以上の実施の態様における熱可塑性樹脂がポリエチレンベースである場合、樹脂の特徴として、溶融熱が少なくとも85 J/g、他の実施の態様においては少なくとも100J/g、他の実施の態様においては少なくとも130 J/gであることもある。
【0050】
非官能性熱可塑性ポリマーはその特徴として、高曲げ弾性率を持つこともある。曲げ弾性率は23℃でASTM-D 790Aにより測定されることもある。一以上の実施の態様においては、非官能性熱可塑性ポリマーは、200 Mpaより大きい、他の実施の態様においては500 MPaより大きい、及び他の実施の態様においては2,000 MPaより大きい曲げ弾性率を持つこともある。
【0051】
一以上の実施の態様においては、有用な熱可塑性樹脂はその特徴として、50から2,000 kg/モルのMw、他の実施の態様においては100から600 kg/モルのMwを持つこともある。これはまた、その特徴としてポリスチレン標準のGPCにより測定した、25から1,000 kg/モルのMn、他の実施の態様においては50から300 kg/モルのMnを持つこともある。
【0052】
一以上の実施の態様においては、これらの熱可塑性樹脂は230℃ 及び2.16 kg 負荷のASTM D- 1238で測定した、メルトフローレートが0.5から1,000 dg/分、他の実施の態様においては5から500 dg/分、及び他の実施の態様においては10から100 dg/分であっても良い。
【0053】
一以上の実施の態様においては、これらの熱可塑性樹脂は、溶融温度(Tm)が
110℃から250℃、他の実施の態様においては155℃から170℃、他の実施の態様においては160℃から165℃であっても良い。これらのガラス転移温度(Tg)は-10から10℃、他の実施の態様においては-3 から5℃、他の実施の態様においては0から2°C.であっても良い。一以上の実施の態様においては結晶化温度(Tc)は、任意選択的に少なくとも75℃、他の実施の態様においては少なくとも95℃,他の実施の態様においては少なくとも100℃, 及び他の実施の態様においては少なくとも105℃であっても良く、ある実施の態様においては105から115℃の範囲であっても良い。
【0054】
典型的な熱可塑性ポリマーは、結晶質及び半結晶質ポリオレフィン、オレフィンコポリマー及び非オレフィン樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、エチレン、又はプロピレン、1-ブテン, 1-ヘキセン, 1-オクテン, 2-メチル-l-プロペン, 3 -メチル- 1-ペンテン, 4-メチル-l-ペンテン, 5メチル- 1-ヘキセン及びこれらの混合物の様なα―オレフィンを重合させて生成しても良い。
【0055】
エチレン及びプロピレン、及びエチレン及び/又はプロピレンと他のアルファオレフィン、例えば、1-ブテン, 1-ヘキセン, 1-オクテン, 2-メチル-l-プロペン, 3 -メチル- 1-ペンテン, 4-メチル-l-ペンテン, 5メチル- 1-ヘキセン及びこれらの混合物のコポリマーもまた考慮される。他のポリオレフィン コポリマーにはオレフィンと、スチレンーエチレンコポリマーの様なスチレンのコポリマー、オレフィンとα、β―不飽和酸、ポリエチレンーアクリレートコポリマーの様なα、β―不飽和エステルのポリマーを含んでも良い。非オレフィン熱可塑性ポリマーには、スチレン、α、β―不飽和酸、α、β―不飽和エステル及びこれらの混合物を含んでも良い。例えば、ポリスチレン、ポリアクリレート、及びポリメタクリレートを用いても良い。本明細書に記載の2以上のポリオレフィン熱可塑性プラスチックと他の重合調整剤とのブレンド又は混合物はまた本発明の実施に適している。有用な熱可塑性ポリマーはまた衝撃及び反応器ポリマーを含むこともある。
【0056】
非官能性熱可塑性ポリマーは、技術分野で知られる適当な重合技術、例えば、従来のチーグラー・ナッタタイプ重合、これに限定されるものではないがメタロセン触媒を含む単一部位有機金属触媒を用いる触媒を用いて合成しても良いがこれに限定されるものではない。
【0057】
ある実施の態様においては、熱可塑性樹脂は高結晶化度アイソタクチック又はシンジオタクチックポリプロピレンを含む。これらのポリプロピレンは0.85から0.91 g/ccの密度であっても良く、大部分がアイソタクチックであるポリプロピレンは0.90から0.91 g/ccの密度を持っても良い。また、分別メルトフローレートを持つ高分子及び超高分子ポリプロピレンも用いることができる。これらのポリプロピレン樹脂はその特徴として、ASTM D-1238、2.16 kg負荷で、10 dg/分以下のメルトフローレート、任意選択的に1.0 dg/分以下、及び任意選択的に0.5 dg/分以下のメルトフローレートを持つ。
【0058】
非官能性低結晶質熱可塑性ポリマーは、その特徴として、結晶化度が25%未満、他の実施の態様においては23%未満、他の実施の態様においては20%未満の熱可塑性ポリマーを含むこともあり、これらの、又は他の実施の態様においては、低結晶質熱可塑性ポリマーは、その特徴として、結晶化度が2%より大きく、他の実施の態様においては3%より大きく、他の実施の態様においては5%より大きいこともある。結晶化度はサンプルの溶融熱を、その溶融熱がポリプロピレンでは209ジュール/グラム又はポリエチレンで350ジュール/グラムと予想される100%結晶質ポリマーの融解熱で除して決定することができる。融解熱は示差走査熱量計により決定することができる。
【0059】
低結晶質熱可塑性ポリマーがプロピレンベースである一以上の実施の態様においては、ポリマーは、その特徴として溶融熱が50 J/g未満、他の実施の態様においては40 J/g未満、及び他の実施の態様においては30 J/g未満であることもある。
【0060】
低結晶質熱可塑性ポリマーがエチレンベースである場合、ポリマーは、その特徴として溶融熱が160 J/g未満、他の実施の態様においては140 J/g未満、及び他の実施の態様においては120 J/g未満であることもある。
【0061】
低結晶質熱可塑性ポリマーは、その特徴として低曲げ弾性率を持つこともある。曲げ弾性率はASTM- D 790A、23℃で測定することができる。一以上の実施の態様においては、低結晶質熱可塑性ポリマーは曲げ弾性率が200 MPa未満、他の実施の態様においては150 MPa未満、他の実施の態様においては138 MPa未満、他の実施の態様においては130 MPa未満、及びある実施の態様においては120から110 Mpaである。
【0062】
上記の特徴を考慮すると、低結晶質熱可塑性ポリマーはまた、低曲げ弾性率熱可塑性ポリマーと呼んでも良い。
【0063】
一以上の実施の態様においては、これらの低結晶質熱可塑性ポリマーは、その特徴として少なくとも100℃の溶融温度(Tm)、他の実施の態様においては少なくとも110℃、他の実施の態様においては少なくとも120℃、及び他の実施の態様においては少なくとも130℃の溶融温度を持つこともある。これらの又は他の実施の態様においては、溶融温度は250℃未満、他の実施の態様においては少なくとも200℃未満であっても良い。融解熱は示差走査熱量計により決定することができる。
【0064】
一以上の実施の態様においては、これらの低結晶質熱可塑性ポリマーは、その特徴として、230℃及び2.16 kg負荷によるASTM D-1238で測定されたメルトフローレートが0.2から1,000 dg/分、他の実施の態様においては0.5から100 dg/分、及び他の実施の態様においては1から10 dg/分であることもある。
【0065】
典型的な低結晶質熱可塑性ポリマーは、反応器ブレンドポリオレフィン、衝撃コポリマー、及びこれらの混合物を含む。これらの低結晶質熱可塑性ポリマーは、エチレン及び/又はα―オレフィンを共重合させて生成しても良い。この重合は逐次重合又はその場重合を含んでも良い。
【0066】
低結晶質熱可塑性ポリマーは、市場で入手可能であり、例えば、結晶化度が25重量%未満の衝撃コポリマーは商標名 ADFLEX(登録商標)KS359P (Basell)で得られる。
【0067】
84重量%のエチレンープロピレン ゴム、重量で5% のエチレン プロピレン コポリマー、及び重量で11%のランダムプロピレンを含み、全体のブレンドの結晶化度が5から15%であるブレンドが商標名SOFTELL(登録商標)CAO2A (Basell)により入手可能である。
【0068】
ある実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴムは高分子加工添加剤を含んでも良い。加工添加剤は高メルトフロー指数を持つポリマー樹脂であっても良い。これらのポリマー樹脂は、その線状及び分枝ポリマーのメルトフローレートが500 dg/分より大きく、より好ましくは750 dg/分より大きく、更に好ましくは1000 dg/分より大きく、更に好ましくは1200 dg/分より大きく、及び更に好ましくは1500 dg/分より大きい線状及び分枝状ポリマーを共に含む。種々の分枝状又は種々の線状高分子加工添加剤の混合物、並びに線状及び分枝状高分子加工添加剤の混合物を用いることができる。高分子加工添加剤と言う場合は、断らない限り、共に線状及び分枝状添加剤を含んでも良い。線状高分子加工添加剤はプロピレン ホモポリマーを含み、分枝状高分子加工添加剤はジエン修飾されたポリプロピレンポリマーを含む。同様な加工添加剤を含む熱可塑性加硫ゴムは米国特許第6,451,915号に開示さている。
【0069】
一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴムは鉱油、合成油、又はこれらの組み合わせを含む。これらの油はまた、可塑剤又はエキスエンダーと呼んでも良い。鉱油は芳香族系、ナフテン系、パラフィン系、及びイソパラフィン系油を含んでも良い。一以上の実施の態様においては、鉱油は処理又は未処理の何れでも良い。有用な鉱油は商標名SUNP AR(登録商標)(Sun Chemicals)で入手することができ、利用可能なものとして他にPARALUX(登録商標)(Chevron)がある。
【0070】
一以上の実施の態様においては、合成油はイソブテン、1−ブテン、1−ブテン、ブタジエン及びこれらの混合物を含むブテンのポリマー及びオリゴマーを含む。一以上の実施の態様においては、これらのオリゴマーは、その特徴として、300から9,000 g/モルの数平均分子量(Mn)、及び他の実施の態様においては700から1,300 g/モルの数平均分子量(Mn)を持つこともある。一以上の実施の態様においては、これらのオリゴマーはイソブテニルーmer単位を含む。典型的な合成油は、ポリイソブチレン、ポリ(イソブチレンーco−ブテン)、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン-co−ブテン)及びこれらの混合物を含む。一以上の実施の態様においては、合成油はポリ線状α−オレフィン、ポリー分枝 α−オレフィン、水素化ポリアルファオレフィン及びこれらの混合物を含んでも良い。
【0071】
一以上の実施の態様においては、合成油は粘度が20 cpより大きく、他の実施の態様においては100 cpより大きく、及び他の実施の態様においては190 cpより大きい合成ポリマー又はコポリマーを含み、粘度は38°CでASTM D-4402により Brookfield粘度計を用いて測定され;これら又は他の実施の態様において、これらの油の粘度は4,000 cp未満及び1,000 cp未満であっても良い。
【0072】
有用な合成油は市場で商標名Polybutene(登録商標)(Soltex; Houston, Texas), Indopol(登録商標)(BP; Great Britain), and Parapol(登録商標) (ExxonMobil)で入手可能である。ブタジエン由来のオリゴマー性コポリマー及びそのコモノマーは市場で、商標名Ricon Resin(登録商標)(Ricon Resins, Inc; Grand Junction, Colorado)で入手可能である。白合成油は商標名SPECTRAS YN(登録商標)(ExxonMobil), 以前のSHF Fluids (Mobil)で入手可能である。
【0073】
一以上の実施の態様においては、エキステンダー油は有機エステル、アルキルエーテル、又は米国特許第5,290,866号及び米国特許第5,397,832号に開示されているものを含めこれらの組み合わせを含んでも良い。一以上の実施の態様においては、有機エステル及びアルキル エーテル エステルは通常分子量が10,000未満であることもある。一以上の実施の態様においては、好適なエステルには、平均分子量が2,000より小さく、他の実施の態様においては600より小さいモノマー及びオリゴマー材料を含む。一以上の実施の態様においては、エステルはポリアルファオレフィン及び組成物のゴム成分の両方と相溶性又は混和性を持ち、すなわち、これらは他の成分と混合し単一相を形成するものが良い。一以上の実施の態様においては、エステルは脂肪族 モノ-又はジエステル、又は代替的に、オリゴマー性脂肪族エステル又はアルキルエーテルエステルを含む。一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴムはリン酸塩のみならず、ポリマー脂肪族エステル及び芳香族エステルを持たない。
【0074】
ゴムに加えて、本発明の熱可塑性樹脂、及び任意選択的に加工添加剤、熱可塑性加硫ゴムは、任意選択的に強化及び非強化充填剤、抗酸化剤、安定剤、ゴム加工油、潤滑油、抗ブロック剤、静電防止剤、ワックス、発泡剤、色素、難燃剤、及びゴムの化合方法で知られているその他の加工助剤を含んでも良い。これらの添加剤は、全組成物の50重量パーセントまで含んでも良い。使用されうる充填剤及びエキステンダーは、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、二酸化チタン、黒鉛等を含む。
【0075】
一以上の実施の態様においては、本発明の熱可塑性加硫ゴムは対象物質のゴム状組成物を形成するために十分な量のゴムを含む。当業者は、対象物質のゴム組成物は、究極伸びが100パーセントより大きく、元の長さの200パーセントに伸張され、元の長さの200パーセントで10分保持された後、10分以下に直ぐに元の長さの150 パーセント以下に収縮する組成物を含むことを容易に理解するであろう。
【0076】
この様に、一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴムは、重量で少なくとも25%、他の実施の態様においては重量で45パーセント、他の実施の態様においては重量で少なくとも65パーセント、及び他の実施の態様においては重量で少なくとも75パーセントのゴムを含んでも良い。
【0077】
これらの又は他の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴム内のゴムの量は、ゴム及び熱可塑性物質の全合計重量に基づき、重量で15から90パーセント、他の実施の態様においては45から85 パーセント、及び他の実施の態様においては60 から80 パーセントであっても良い。
【0078】
一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴム内の官能性熱可塑性ポリマーの量は、ゴム及び炭化水素の全合計重量に基づき、重量で5から60パーセント、他の実施の態様においては10から40パーセント、及び他の実施の態様においては12 から30 パーセントであっても良い。
【0079】
一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴム内の官能性炭化水素樹脂の量は、ゴム及び熱可塑性物質の全合計重量に基づき、重量で0.2から20パーセント、他の実施の態様においては1から15パーセント、及び他の実施の態様においては2 から10 パーセントであっても良い。
【0080】
一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴム内の非官能性熱可塑性ポリマーの量は、ゴム及び熱可塑性物質の全合計重量に基づき、重量で0から50パーセント、他の実施の態様においては15から40パーセント、及び他の実施の態様においては15 から20 パーセントであっても良い。
【0081】
一以上の実施の態様においては、熱可塑性加硫ゴム内の低結晶質ポリオレフィンの量は、ゴム及び熱可塑性物質の全合計重量に基づき、重量で0から50パーセント、他の実施の態様においては5から40パーセント、及び他の実施の態様においては15 から25パーセントであっても良い。
【0082】
熱可塑性加硫ゴムは、使用される場合、ゴム100重量部当り、ポリマー加工助剤を0.1から3重量部、又は0.2から2重量部含んでも良い。ゴム重量部当り、通常1から50 重量部又は2 から40重量部、又は3から30重量部のエキステンダー油を加えても良い。
【0083】
加えられるエキステンダー油の量は所望の特性により、その上限は使用される特定の油及びブレンドされる成分の相溶性により;エキステンダー油が過剰に染み出す場合は限界を超えたことになる。エキステンダー油の量は少なくとも部分的に、ゴムの種類による。高粘度ゴムはより容易に油展する。
【0084】
黒鉛、粘土、タルク、又は炭酸カルシウムの様な充填剤はゴムの100重量部に対し1から50重量部の量で加えても良い。使用可能な黒鉛の量は、少なくとも部分的に黒鉛の種類及び使用されるエキステンダー油の量による。
【0085】
一以上の実施の態様においては、ゴムは動的加硫により硬化し又は架橋される。動的加硫の用語はブレンドに含まれるゴムを熱可塑性樹脂と加硫又は硬化させるプロセスを言い、ゴムは高せん断条件下で熱可塑性物質の融点より高い温度で架橋又は加硫される。
【0086】
ある実施の態様においては、ゴムは熱可塑性マトリクス中で同時に架橋及び細かい粒子として分散させることができる。他の形態もまた存在することがある。動的加硫は高温で従来の装置、例えば、ロールミル、安定化装置、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、連続ミキサー、混合押出機等により熱可塑性エラストマー成分を混合することにより実施することができる。熱可塑性加硫ゴムの生成方法は米国特許第4,311,628号, 米国特許第4,594,390号, 米国特許第6,503,984号及び米国特許第6,656,693号に記載されている。低せん断速度も使用することができる。多段工程もまた用いることができ、その場合プラスチック、油、及び捕捉剤の様な成分は、国際出願PCT7US04/30517に開示されている様に、動的加硫が実施された後に加えることができる。例えば、ある実施の態様においては、官能性炭化水素樹脂は、ゴムの硬化が実質的に成された後に下流で加えることができる。
【0087】
当業者は過度な計算又は実験をすることなく、使用される加硫ゴムの十分な又は効果的な量を容易に決定することができる。
【0088】
熱可塑性加硫ゴムを生成するために使用されるゴムを硬化又は架橋することのできる任意の硬化システムを用いても良い。例えば、ゴムがオレフィン性エラストマーコポリマーを含む場合には、硬化システムは、フェノール樹脂、遊離基硬化剤、ケイ素含有硬化剤又は、熱硬化性樹脂を生成するために従来使用される他の硬化剤を含んでも良い。
【0089】
ゴムは部分的に又は十分に硬化されるという事実にもかかわらず、本発明の組成物は、押出機、射出成形、ブロー成形及び圧縮成形の様な従来のプラスチック加工技術により加工及び再加工することができる。これらの熱硬化性エラストマー内のゴムは、連続熱可塑性相又はマトリクス内で加硫され、又は硬化されたゴムが細かく分かれそして十分分散した粒子の形でありうる。他の実施の態様においては、共連続形態又は位相反転を実現することがあり得る。硬化ゴムが熱硬化性媒体内で細かく分かれそして十分分散した粒子の形であるこれらの実施の態様においては、ゴム粒子はその平均直径が50 μm未満, 任意選択的に30 μm未満, 任意選択的に10 μm未満, 任意選択的に5 μm未満, 及び任意選択的に1 μm未満であり得る。ある実施の態様においては、粒子の少なくとも50%, 任意選択的に少なくとも60%, 及び任意選択的に少なくとも75%は5 μm未満,任意選択的に2 μm未満,及び任意選択的に1 μm未満である。
【0090】
有用なフェノール樹脂硬化システムは米国特許第2,972,600号, 米国特許第3,287,440号, 米国特許第5,952,425号及び米国特許第6,437,030号に開示される。
【0091】
一以上の実施の態様においては、フェノール樹脂硬化剤はレゾール樹脂を含み、該樹脂はアルカリ媒体中で、アルキル置換フェノール又はアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドを持つ非置換フェノールの縮合により、又は二官能性フェノールジアルコールの縮合により生成されうる。アルキル置換フェノールのアルキル置換基は1から10炭素原子を含むこともある。ジメチルフェニル又はフェノール樹脂で1から10炭素原子を含むアルキル基によりパラの位置が置換されているのが好ましい。ある実施の態様においては、オクチルフェノール及びノニルフェノールーホルムアルデヒド樹脂のブレンドが用いられる。ブレンドは重量で25から40%のオクチルフェノール、及び75から60%のノニルフェノール、より好ましくは重量で30から35%のオクチルフェノール、重量で70 から65%のノニルフェノールを含むのが良い。ある実施の態様においては、ブレンドは重量で33%のオクチルフェノールーホルムアルデヒド、及び重量で67%のノニルフェノールーホルムアルデヒド樹脂を含み、各ノニルフェノール及びノニルフェノールはメチロール基を含む。このブレンドはパラフィン油中で可溶であり30%が不溶である。
【0092】
有用なフェノール樹脂は商標名SP-1044, SP-1045 (Schenectady International; Schenectady, N. Y.)で購入可能であり、これはアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と呼ばれる。SP-1045はメチル基を含むオクチルフェノール-ホルムアルデヒドと信じられている。SP- 1044及びSP-1045樹脂は本質的にハロゲン置換基又は残留ハロゲン化合物を含まないと信じられている。本質的にハロゲン置換基を含まないとは、樹脂の合成により微量のハロゲン含有化合物を含む非ハロゲン化樹脂が生成させることを言う。
【0093】
フェノール樹脂硬化剤の例には次の一般式で表わされるものを含む:
【数1】

【0094】
式中Qは--CH2--, --CH2--O--CH2--よりなる群から選択される二価ラジカル; mはゼロ又は1から20の正の整数及びR'は有機基である。ある実施の態様においては、Q は二価の--CH2--O--CH2--; mはゼロ又は1から10の正の整数及びR'は20より小さい炭素原子を持つ有機基である。他の実施の態様においては、mはゼロ又は1から5の正の整数及びR'は4から12炭素原子を持つ有機ラジカルである。
【0095】
塩化第一スズはその水和形態(SnCl2・H2O) 又は無水形態 (SnCl2)で使用することもできる。塩化第一スズは、粉末、顆粒又は薄片の形で用いても良い。他の実施の態様においては、金属酸化物又は酸抑制化合物は酸化亜鉛を含む。
【0096】
遊離基硬化剤は、有機過酸化物の様な過酸化物を含む。有機過酸化物の例には、di-tert- ブチル 過酸化物(di-tert-butyl peroxide), ジクミル 過酸化物(dicumyl peroxide), t-ブチル クミル過酸化物butylcumyl peroxide), α,α-bis(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(α,α-bis(tert-butylperoxy) diisopropyl benzene), 2,5-ジメチル-2,5-di(t-ブチルペルオキシへキサン)ジイソプロピルベンゼン(2,5-dimethyl-2,5-di(t-butylperoxy)hexane (DBPH)), 1,1- di(tert-ペルオキシ) -3,3,5- トリメチル)シクロヘキサン(1,1- di(tert-peroxy)-3,3,5- trimethyl cyclohexane), n-ブチル-4-4-bis(tert −ブチルペルオキシ)吉草酸塩(n-butyl-4-4-bis(tert- butylperoxy) valerate),ベンゾイル過酸化物 (benzoyl peroxide), ラウロイル過酸化物(lauroyl peroxide), ジラウロイル過酸化物 (dilauroyl peroxide), 2,5-ジメチル−2,5-di(tert−ブチルペルオキシ)へキセンー3(2,5- dirnethyl-2,5-di(tert-butylperoxy) hexyne-3)及びこれらの混合物を含むがこれに限定されるものではない。また、ジアリール過酸化物(diaryl peroxide),ケトン過酸化物(ketone peroxide)、ペルオキシジカーボネート(peroxydicarbonate), ペルオキシ酸エステル(peroxyester), ジアルキル過酸化物(dialkyl peroxide), ヒロドペルオキシド(hydroperoxide), ペルオキシケタ−ル(peroxyketal)及びこれらの混合物を用いても良い。有用な過酸化物及び熱可塑性ゴムの動的加硫での使用方法については米国特許第5,656,693号に開示されている。
【0097】
遊離基硬化剤は補助剤と共に用いても良い。有用な補助剤には高ビニル ポリジエン(high-vinyl polydiene)、又はポリジエン コポリマー(polydiene copolymer)、トリアリル シアヌール酸(triallylcyanurate), トリアリル イソシアヌール酸(triallyl isocyanurate), トリアリル リン酸(triallyl phosphate), 硫黄(sulfur), N-フェニル bis-マレアミド (N-phenyl bis- maleamide), ジビニルベンゼン(divinyl benzene), トリメチロール プロパン トリメチルアクリレート(trimethylol propane trimethacrylate), テトラメチレン グリコール ジアクリレート(tetramethylene glycol diacrylate), 三官能性 アクリル エステル(trifunctional acrylic ester), ジペンタエリチリトールペンタアクリレート(dipentaerythritorpentacrylate), 多官能性アクリレート(polyfunctional acrylate), 遅延シクロヘキサン ジメタノール ジアクリレート エステル(retarded cyclohexane dimethanol diacrylate ester), 多官能性メタアクリレート (polyfunctional methacrylate),アクリレート及びメタアクリレート金属塩(acrylate and methacrylate metal salt), 多官能性アクリレートエステル(multi- functional acrylate ester), 多官能性メタアクリレートエステル(multi-functional methacrylate eater)又はこれらの組み合わせ又はにキノン二酸化物(quinone dioxime)の様な. オキシマー(oximer)を含む。
【0098】
ケイ素含有硬化システムは、少なくとも2つのSiH基を持つ水素化ケイ素化合物を含んでも良い。本発明の実施に有用な水素化ケイ素化合物はポリシロキサン 水素化メチル(methylhydrogen polysiloxane), ジメチルーシロキサン 水素化メチルコポリマー(methylhydrogen dimethyl-siloxane copolymer), ポリシロキサンメチル アルキル (alkyl methyl polysiloxanes), bis(ジメチルシリル)アルカン (bis(dimethylsilyl)alkane), bis(ジメチルシリル)ベンゼン(bis(dimethylsilyl)benzene)及びこれらの混合物であるが、これに限定されるものではない。
【0099】
ケイ素の水素化(hydrosilation)に有用な触媒には、過酸化物触媒及びVIII族遷移金属を含む触媒を含むがこれに限定されるものではない。これらの金属には、パラジウム、ロジウム、及びプラチナ及びこれらの金属の複合体を含むがこれに限定されるものではない。有用なケイ素含有硬化剤及び硬化システムは米国特許第5,936,028号に開示されている。
【0100】
ブチルゴムが熱可塑性加硫ゴムの調製に用いられる場合、硬化システムはフェノール樹脂、ケイ素含有硬化システム、酸化亜鉛システム及びアミンシステムを含んでも良い。これらの硬化システムは米国特許第5,013,793号, 米国特許第5,100,947号, 米国特許第5,021,500号, 米国特許第5,100,947号、米国特許第4,978,714、及び米国特許第4,810,752号に開示されている。
【0101】
本発明の接着性熱可塑性加硫ゴムは種々の用途に応用される。組成物は、射出成形、押出及び共押出、圧縮成形、インサート成形及び2ショット成形を含むオーバーモールド、ブロー成形、溶接及び熱成形を含む幾つかの技術を用いて基材に用いることができるがこれに限定されるものではない。一以上の実施の態様においては、本発明の組成物はホットメルト接着剤として用いることができる。
【0102】
組成物が接着される基材は多くの極性基材を含む。典型的な極性基材は、アルミニウム、マグネシウム、チタン及び銅の様な金属基材を含む。基材はまた、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、チキソトロピックマグネシウム(例えば、Thixomat(登録商標))及び黄銅を含んでも良い。他の極性基材には、例えば、ポリマー性極性基材、例えば、ナイロン(ポリアミド、ポリイミド等を含む)及びポリカーボネートを含む。
【0103】
一以上の実施の態様においては、本発明の熱可塑性加硫ゴムが適用される基材は、熱可塑性加硫ゴムに適用される前に処理しても良い。基材の処理には、有機溶剤により、又は酸化レベルの様な基材の表面の特徴を変えることのできるプライマー(primer)又は化合物による処理の様な化学処理により、基材を洗浄することを含んでも良い。他の処理の形には、電子ビーム又は陽極酸化(annodization)の様な物理的処理を含んでも良い。一以上の実施の態様においては、本発明の熱可塑性加硫ゴムは化合的処理をすることなく、又はその様な方法によって基材の化学的性質を変えることを必要とせず有利に基材に適用することができる。一以上の実施の態様においては、本発明の熱可塑性加硫ゴムは極性基材に適用され、基材の表面の化学的性質を変える化学処理ができない場合には任意選択的に基材の表面を洗浄した後に適用されうる。
【0104】
本発明の熱可塑性加硫ゴムは、市場で販売される多くの商品又は用具を成形するのに有用である。例えば、消費者用の多くの商品及び用具が生産されうる。これには、例えば、台所用具、工具、歯ブラシ、ペン及び鉛筆、運動用具を含む多くの消費者用商品での握り又は握り可能な表面部分を含んでも良い。熱可塑性加硫ゴムはまた、ガスケット、バンパー、躯体等の成形での制振用に多く応用することができる。熱可塑性加硫ゴムはまた、エラストマー性材料を金属に結合することが望ましい多くの工業用分野で有用である。これらの応用分野には、例えば、自動車用及び建設用のシールを含む。
【0105】
本発明の実施の態様を示すために、以下に記載の例が準備され試験された。しかしこれらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解してはならない。特許請求の範囲が本発明を規定するものである。
【0106】
実施例
サンプル1−9
9の熱可塑性加硫ゴムが生成され、アルミニウムに対する接着を含め各々水による老化前及び老化後にその種々の特性が試験された。各熱可塑性加硫ゴムは2軸押出機内で生成された。非官能性熱可塑性ポリオレフィン、低結晶化ポリオレフィン、官能性熱可塑性樹脂及び官能性炭化水素樹脂がEPDM、粘土及び酸化亜鉛と共に、押出機の始めの部分に近い所にあるロス・イン・ウエイト(loss-in-weight)ベルトフィーダーを用いて押出機に導入された。メルトブレンドが進むにつれ、水素化ケイ素が添加され、それに続いてプラチナ触媒が添加された。押出は溶融温度が180℃から220℃まで上がる様に設定された。押出機の一つの通気孔が少量の揮発性物質を除去し、押出組成物に気孔が生ずるのを防ぐため吸排気口として使用された。組成物は、水中ペレッタイザーを用いて最終的に球状ペレットにされた。
【0107】
各サンプルに共通の成分には、ゴム100重量部に対し100重量部のオイル、12重量部の充填剤、2重量部の酸化亜鉛、3重量部のケイ素含有硬化剤、2.5重量部の触媒システムを含んでいた。ゴムはポリ(エチレン- co-プロピレン-co-5-ビニル-2-ノルボルネン)であり、これは100 phr油で油展されており、ムーニー粘度ML(1+4)125℃で52、エチレンmer含有量が63重量%、及びビニル ノルボルネンmer含有量が0.7重量%であった。充填剤は商標名ICECAP(登録商標)Kの名前で得られた無水アルミニウムケイ酸塩であった。ケイ素含有硬化剤は商標名2- 5084 SIHI(登録商標)(Dow Corning)で得た水素化ケイ素であった。触媒は、商標名PC085(登録商標)で得た Paralux 600 1R油中に環式ビニルシロキサン配位子を持つ0.22重量%活性プラチナ触媒であった。
【0108】
表1は各サンプルで変質された種々の成分、並びに各サンプルで実施された種々の試験の結果を示す。表1及び他の表に示す各単位はゴム100重量部(phr)に対する重量部である。
【数2】

【0109】
3つの明らかに非官能性ポリオレフィン樹脂が種々のサンプルで用いられた。幾つかの点で明確であるが、表1でこれらのポリオレフィンは高曲げ弾性率のポリオレフィン又は低曲げ弾性率のポリオレフィンと同定された。高曲げ弾性率のポリオレフィンは、6.4 重量%エチレンを含み、その結晶化度は25%、 曲げ弾性率は345 MPa, 融点は120℃, MFRは 230℃ 及び2.16 kg 負荷で 5 dg/分の衝撃コポリマーであり、商標名FINAEOD(登録商標)94-21 (Fina)で得られた。低曲げ弾性率のポリオレフィンIは、27重量%反応器コポリマーを含み、重量で73%の高プロピレン衝撃コポリマーを含むと信じられており、その曲げ弾性率は76 MPa, ショアー D 硬度が41, 融点が144°C, 結晶化度は10- 20%, MFRは230℃ 及び2.16 kg負荷で12 dg/分であり、商標名ADFLEX(登録商標) KS359P (Basell)で得られた。低曲げ弾性率 ポリオレフィンIIは4重量%エチレンを持つ衝撃コポリマーを含むポリオレフィンブレンドであると信じられており、その曲げ弾性率は20 Mpa、ショアー A 硬度が75、融点ピークが121℃及び148℃、 結晶化度は10-15%、MFRは230°C 及び2.16 kg負荷で0.6dg/分であり、分子量は280から370 kg/モルであり、商標名ADFLEX(登録商標) SOFTELL(登録商標) CA02A (Basell)で得られた。官能性熱可塑性ポリマーは、重量で1%の無水マレイン酸由来の側基部分を含むグラフト反応器コポリマーであり、溶融温度が136°C, 及びメルトインデックスは190°C及び2.16 kg 負荷で450 dg/分であり、商標名FUSABOND(登録商標)PMD353Dで得られた。官能性炭化水素樹脂は5重量%マレイン酸塩を含むグラフト炭化水素樹脂であった。
【0110】
硬度はISO 868により決定され、最大抗張力、最大伸び、及び100%曲げ弾性率はASTM D-412で決定された。接着性は、圧縮成形サンプル及びインサート成形サンプルを異なる手順を用いて決定された。特にインサート成形サンプルの接着力はISO 813に従った剥離試験により測定された。主な変更点はサンプル生成であった。その理由は接着は基材の接触面で得られるため(すなわち、別の接着層は存在しない)、熱可塑性組成物は接着剤を使用することなく金属表面に直接オーバーモールドされるからである。インサート成形の評価のため、金属クーポン(切り取り試片)(本件の場合はアルミニウム)がアルコールで拭かれ炉で事前に125°Cまで加熱され、その後ヒーターを持つインサートモールドに直接125°C金属の後ろに置かれた。その後溶融組成物は溶融温度260℃で金属クーポンに射出成形された。その後標準張力計を用いて、金属クーポンの端を固定具で掴み、付属する熱可塑性エラストマー片の端を、張力計の上部のグリップに置いて、サンプルの剥離値を測定した。グリップはその後180度の角度に引き離された。剥離に要する力がクロスヘッドの工程に対しプロットされたが、その力はまた側面に沿った剥離の長さである。曲線は通常通りピークに達しその後下って水平になった。水平での数値はメータ当りのキロNewton (kN/m)として表現される粘着力として記録された。
【0111】
圧縮成形されたサンプルへの接着性はASTM D-903-98に従った剥離試験により測定された。この方法との唯一の違いはサンプルの生成及び条件付けであった。組成物は接着剤を用いずに金属基材に結合され、サンプルは接着性組成物を0.25 mm厚さの事前にカットされたアルミニウム片に、218℃で5分間圧縮成形することにより生成された。サンプルは、ASTM D903-98による方法の7日に対して最小24時間の条件を適用した。
【0112】
表1のデータは、本発明のサンプルは柔軟でありながら、しかも水による老化の前及び後に技術的に有用な接着力を示すことを表す。比較のためのサンプルはより硬く、及び/又は水による老化の前及び後に比較されうる接着性のバランスを示していない。
【0113】
サンプル10−12
上のサンプルと同様な方法で、3つの追加の熱可塑性加硫ゴムが生成され、試験された。その特徴的な成分は、種々の試験の結果と共に表IIに示す。サンプル11及び12は3重量部の触媒システムを含んでいることは注目すべきである。
【数3】

【0114】
表IIのデータは、製剤が官能性熱可塑性樹脂及び官能性炭化水素樹脂を共に含んでいる場合は、有利な結果が得られることを示唆している。これらの組成物のいずれかが存在しない場合は、熱可塑性加硫ゴムは望ましい接着性を示さなかった。
【0115】
サンプル13−17
5つの追加の熱可塑性加硫ゴムサンプルがブラベンダーミキサーにより180°C 及び150 rpmで生成された。成分は、次の点を除いて上のサンプルで使用されたものと同様であった。すなわち、サンプル13及び14は官能性粘着付与樹脂を使用し、サンプル15及び16は非官能性粘着付与樹脂を使用し、サンプル17は粘着付与樹脂を含んでいなかった。サンプルで用いられた粘着付与樹脂の量は、接着性試験の結果と共に表IIIに示す。
【数4】

【0116】
熱可塑性加硫ゴムサンプルは、次の点を除きサンプル1−9で使用されたと同様の方法により、金属クーポン(すなわち、基材)に圧縮成形された。すなわち、304ステンレス鋼クーポンが使用され、成形は204-218°Cで1分実施され、続いて水により10分間冷却された。これらのサンプルの分析は上の圧縮成形に使用された方法と同様に方法で行われた。老化剥離値は、元の及び老化剥離の差のパーセントとして示されていることは留意すべきである。
【0117】
表IIIのデータは、官能性粘着付与樹脂を使用することにより、非官能性粘着付与樹脂により得られる利益を超える粘着性での利益を得ることを示している。特に、官能性粘着付与樹脂を含むサンプルに相当する結果を得るためには、より多量の非官能性粘着付与樹脂が必要になることである。成形されるサンプルを生成するために用いられる条件を考慮すれば、これは特に重要な点である。すなわち、当業者は、より大きな粘着力は圧縮成形により得ることができると考え、したがって、当業者は圧縮成形された種々のサンプル間の差はより小さいと期待するからである。
【0118】
本発明の範囲及び精神から逸脱しない範囲で、種々の修飾及び変更しうることは当業者にとり明白である。本発明は本明細書に開示された、具体的な説明に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性加硫ゴムであって、動的硬化されたゴム、官能性熱可塑性ポリマー及び官能性粘着付与樹脂を含む、前記熱可塑性加硫ゴム。
【請求項2】
前記官能性熱可塑性ポリマーがマレイン酸ポリプロピレンポリマー(maleated propylene polymer)を含み、前記官能性粘着付与樹脂がマレイン酸炭化水素樹脂(maleated hydrocarbon resin)を含む、請求項1に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項3】
前記ゴムがケイ素含有触媒を用いて動的硬化される、請求項1又は2に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項4】
前記官能性熱可塑性コポリマーが極性基を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項5】
前記官能性熱可塑性ポリマーの極性基がカルボニル基を含む、請求項4に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項6】
前記官能性熱可塑性ポリマーが、ASTM D-1238 230℃及び2.1 kg負荷で測定された、メルトフローレートが20から2,000 dg/分であるプロピレン ベースのポリマーである、請求項5に記載の前記熱可塑性加硫ゴム。
【請求項7】
前記官能性熱可塑性ポリマーが重量で少なくとも0.2%の官能化部分を持つ、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項8】
前記官能化粘着付与樹脂がグラフトされた粘着付与樹脂である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項9】
前記グラフトされた粘着付与樹脂が極性基を含む、請求項8に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項10】
前記グラフトされた粘着付与樹脂の極性基がカルボニル基を含む、請求項9に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項11】
前記グラフトされた粘着付与樹脂がグラフトされた合成炭化水素原料、グラフトされた合成オリゴマー、グラフトされた天然樹脂又はこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項12】
前記グラフトされた粘着付与樹脂が、粘着付与樹脂をグラフトモノマーと組み合わせ、接触させ又は反応させることにより生成される、請求項11に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項13】
前記グラフトされた粘着付与樹脂が、グラフトモノマーを炭化水素樹脂と0.1:1から1:1のモル比で結合させることにより生成される、請求項11に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項14】
前記グラフトされた粘着付与樹脂が、グラフトモノマーを炭化水素樹脂と0.2:1から5:1のモル比で結合させることにより生成される、請求項11に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項15】
前記熱可塑性加硫ゴムが更に非官能性熱可塑性ポリマーを含む、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項16】
前記非官能性熱可塑性ポリマーが、結晶質又は半結晶質熱可塑性ポリマー、又は低結晶化度熱可塑性ポリマー又はこれらの混合物を含む、請求項15に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項17】
前記非官能性熱可塑性ポリマーが、非官能性熱可塑性ポリマーの結晶化度が25%未満、23℃でASTM-D 790Aにより測定される及び曲げ弾性率が150Mpa未満であることを特徴とする、請求項16に記載の熱可塑性加硫ゴム。
【請求項18】
前記熱可塑性加硫ゴムが前記極性基材に接着する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の商品。
【請求項19】
握ることの可能な消費者用商品として使用される請求項18に記載の商品。

【公表番号】特表2009−518505(P2009−518505A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544331(P2008−544331)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/038786
【国際公開番号】WO2007/067244
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】