説明

熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチとその製造方法

【課題】
フラッシング法のカラーマスターバッチは、ナチュラル樹脂との着色成形で顔料分散性に富んだ製品が容易に得られることから、盛んに使用されているが、その製造に使用する溶融混練装置が大きく、製造操作も容易でない欠点がある。
そこで本発明では、熱可塑性樹脂に顔料を一定層流の周速度により混合攪拌するのみで、従来法のカラーマスタ−バッチに匹敵する顔料分散性に富んだ熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを開発したのである。
【解決手段】
即ち、熱可塑性樹脂、水及び顔料を、攪拌羽根先端と攪拌槽内壁との間隙が3〜30mmであり、且つ、回転する攪拌羽根の先端速度が8m/sec以上を有する高速型混合機を用いて層流混合を行い、この際に発生する摩擦熱を利用して脱水及び前記熱可塑性樹脂を軟化塊状化し、前記顔料を前記熱可塑性樹脂中に分散して得ることを特徴とする熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを開発したのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速型混合機を用いて熱可塑性樹脂、顔料及び水を層流状態で高速混合することにより、従来品には見られない顔料分散性に富んだ着色力の優秀な熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂用着色剤には、予め有機顔料や無機顔料等を金属石鹸や樹脂ワックス類等を分散剤として配合して得られるドライカラ−、マスタ−バッチ、着色ペレット(カラ−コンパウンド)等が挙げられる。
有機顔料や無機顔料等の単独使用では、それ自体は微粒子であるが包装、運搬、貯蔵の際に凝集を生じ易く巨大な粒子に成長し易いという性質があり、一旦凝集が起こると通常の着色されるべき熱可塑性樹脂とのブレンド工程で攪拌では、この凝集はほぐれない。
従って、熱可塑性樹脂中への顔料分散性が悪くなり、かかる着色剤配合の熱可塑性樹脂組成物から得られる着色成形品にはカラ−スペック、カラ−ストリ−ク等を生じて、品質が不安定となって好ましくない。
【0003】
そこで、有機顔料や無機顔料等の性質を考慮した樹脂用着色剤としては、一般にドライカラ−、カラ−マスタバッチ等の形態で製造・使用されている。
ドライカラ−は、顔料にステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を混合機を用い、配合処理した粉末状着色剤であり、製造が容易な樹脂用着色剤として使用されている。
しかし、ドライカラ−は、製品として包装の仕方、包装品の貯蔵状態、貯蔵期間、季節等によって影響を受け凝集を生じ易く巨大な粒子に成長し易いという性質があり、これを防ぐことは困難なことである。
【0004】
更に、ドライカラ−を使用した熱可塑性樹脂の着色成形では、ドライカラ−自体が飛散性大であって作業性が悪く取扱も容易でない。また、熱可塑性樹脂の着色成形では、被着色樹脂に均一に混合することが困難であり、顔料の分散不良が起こり着色むらを生じ易いという欠点がある。
そして具体的には、樹脂の着色成形の際に、混合機・成形機周辺の汚れ、作業者の汚れ、粉塵の吸い込みが問題となり、労働安全衛生上からも成形の際には細心の注意をもって作業を行うことが必要になっている。
【0005】
一方、従来品のマスタ−バッチでは、顔料分散性を付与するためエチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックス類を分散剤として、顔料粉末と配合して製造されている。
該マスタ−バッチを製造する際には、顔料粉末と分散剤を、ロ−ル、ニ−ダ−、押出機等の高剪断力により混練して顔料の分散を図っているが、一旦乾燥した顔料粉末は粗大な二次凝集粒子として存在し易く、これら粗大粒子を改めて微細な粒子にして分散することは非常に困難である。しかも、有機顔料の場合には、吸油量が大であるため更に高濃度微分散が困難である。
【0006】
しかも、上記の製造法で得られた熱可塑性樹脂用マスタ−バッチでは、熱可塑性樹脂の着色成形で10数ミクロン径で高速紡糸したり、フィルム化するなど高度な顔料分散性が求められる場合には、顔料分散不良による糸切れ、溶融紡糸機のフィルタ−の目詰まり、フイルムでの成形不良を起こし易い欠点がある。
そこで、近年、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックスに代えて、分散剤として水を使用の所謂フラッシング法によるマスターバッチの製造法、即ち担体樹脂と粉末顔料を加熱混練する際に水を加えることにより、粉末顔料の凝集体に水分が浸透・破壊して得られる顔料合成時に近い粒径の顔料を担体樹脂中に配合した、分散性の良好な着色剤が得られるフラッシング法によるマスタ−バッチが盛ん商品化されている。
【0007】
この様にして得られるフラッシング法のマスタ−バッチでは、被着色樹脂を用いて着色成形の際の操作性が容易であり、顔料分散性の優れた成形品が製造可能であり、市場での技術信頼度が最も優れた着色剤としての地位が確立されている。
しかし、フラッシング法マスタ−バッチの製造は、他の着色剤の製造工程に比べ、製造ライン及び作業が複雑であり、製造コストも著しく高価になっている。
【0008】
また、フラッシング法マスタ−バッチの製造は、製造ライン及び製造作業が複雑であるため、顔料品種の交換や色替えに変更することに多くの時間を要し、生産ラインの変更は容易でない欠点がある。
即ち、フラッシング法によるマスタ−バッチの製造では、混練→練肉→賦形工程と製造ラインが複雑で、それぞれで熱履歴をうけることが多く、担体樹脂自体も熱劣化を生じ易く、着色に際して被着色樹脂の物性を低下させる欠点もある。
【0009】
【非特許文献1】鈴木茂、堤和男監修「プラスチック用着色剤カラ−コンパウンド」 グレ−スラボラトリ出版 1990年
【特許文献1】特開昭53−36537号
【特許文献2】特開平07−233275号
【非特許文献2】実願昭50−41574号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の非特許文献1では、マスタ−バッチが、ドライカラ−に比較し顔料分散性に優れていることが記載されている。
特許文献1では、マスタ−バッチとして使用する分散剤として、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックス類を使用する方法が記載されている。
特許文献2では、分散剤に水を主成分とするフラッシング法によるマスタ−バッチの製法が記載されており、分散剤に水を使用して得られるマスタ−バッチが、顔料分散性が非常に良好であると述べられている。
【0011】
しかし、特許文献2にも記載の通り、フラッシング法によるマスタバッチの製法では、製造に高度な技術を持つた混練技術が必要で製造方法も複雑となっており、このため顔料銘柄や色替えの交換に多くの時間を要し、カラーマスタ−バッチ製品の迅速な生産には、不向きな製法である。
そこで本発明者らは、ドライカラ−を製造の際に使用する混合機の攪拌条件を鋭意検討して従来品のフラッシング法によるカラーマスタ−バッチと同等の顔料分散性に富み、しかも、ドライカラ−の製造法と同様な簡便な生産方法で、熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを製造することを検討したのである。
【0012】
しかし、従来より、ドライカラーの混合(配合)では、縦型円筒形の混合機として最も汎用な混合機であるヘンシェル型ミキサ−が一般に使用されているが、同装置による混合攪拌では、非特許文献2に記載の通り、混合物が(イ)容器側面に沿い一定周速度で攪拌されながら容器内側面に沿い持ち上げられた後に、(ロ)容器側面上部まで持ち上げられた混合物は、上部より容器底面に落下するというサイクルによる混合操作が連続して行われている。
【0013】
即ち、ヘンシェルミキサ−の混合操作では、混合速度が異なる(イ)及び(ロ)の2種類から構成されており、乱流を繰り返すことにより混合が行われている。
この事実は、非特許文献2でも、最上段の攪拌羽根より上面では攪拌により作り出された空気流のために混合物が浮遊した状態になり、均一分散性が困難となっていると、記載されている。
【0014】
そこで、本発明者は、混合条件を一定方向のみに回転する層流状混合からなる周速度を発揮する高速型混合機を用い層流状態で混合することを検討したところ、熱可塑性樹脂、顔料及び水の混合処理を行った処、顔料の分散性と透明性に優れた機械的物性等にも良好な熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチが得られることを知見し、本発明品を完成したのである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、請求項1では、熱可塑性樹脂、水及び顔料を、攪拌羽根先端部と攪拌槽内壁面との間隙が3〜30mmであり、且つ、回転する攪拌羽根の先端速度が8m/sec以上を有する脱気孔付き高速型混合機を用いて層流状混合を行い、この際に発生する摩擦熱を利用して脱水及び前記熱可塑性樹脂を軟化塊状化し、前記顔料を前記熱可塑性樹脂中に分散して得ることを特徴とする熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを開発したのである。
【0016】
本発明で使用する熱可塑性樹脂(担体樹脂)としては、着色成形の際に一般に使用するナチュラル樹脂(被着色樹脂)と同一のものを使用しても良く、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ABS樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
特に、熱可塑性樹脂のうち最も汎用であるポリオレフィン系樹脂について詳細に記述すると、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、プロピレン単独重合体等が挙げられる。
【0017】
本発明で使用の顔料とは、従来より汎用されている有機顔料及び無機顔料であれば良く、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、インジゴ系、ペリレン系等有機顔料、及び酸化チタン、カ−ボンブラック、弁柄、群青等無機顔料が挙げられる。
顔料は、粉末乾燥顔料、予め、水を含有した乾燥前の顔料ウェットケーキ及びこれらの混合物のいずれであっても良い。尚、顔料ウェットケーキは、顔料一次粒子が非凝集状態を保ったまま、水を2〜70重量%程度含有するものである。
【0018】
本発明で使用する水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を特に限定することなく使用できる。また、水の添加量は粉末乾燥顔料に対して1〜200重量%、更に20から120重量%とすると操作性が向上し好ましい。
水の添加量が1重量%以下の場合には、粉末乾燥顔料と熱可塑性樹脂の配合物のかさ密度は水を添加しない場合とほとんど変わらず、分散への効果は小さい。
一方、水の添加量が200重量%を超えると脱水工程に多くの時間とエネルギーを要するため好ましくない。
【0019】
本発明では、熱可塑性樹脂、顔料及び水を、攪拌羽根先端部と攪拌槽内壁面との間隙が3〜30mmであり、8m/sec以上の一定層流状の混合が可能な周速度を持った脱気孔付き高速型混合機を用い混合分散することによって、本発明の顔料分散性に優れた効果を発揮する熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチが得られることを知見したのである。尚、使用する顔料の平均粒径は、従来から熱可塑性樹脂の着色の際に汎用されているものを使用するれば良い。
【0020】
本発明に於いて使用の脱気孔を設けた高速型混合機としては、8m/sec以上で一定方向へ層流状の周速度を発揮するものとして、数種類の混合機が挙げられるが、最も汎用な装置として米国特許3266738号に基づくもので米国 DRAISWERKE社製のモデルGシリ−ズ装置、同モデルGSシリ−ズ装置が挙げられる。
【0021】
これらの混合機(装置)は、いずれも攪拌軸及び円筒形の槽を基盤に対して横向きに設置した所謂横型ミキサ−であり、層流状(一定スピ−ド)の周速度が容易に得られる。
更に、該モデルGシリ−ズの混合機では、投入口が混合機上部に設置されたホッパ−型であり、最初から8m/sec以上の一定スピ−ドの層流状に混合可能な周速度が容易に得られので好ましい。
尚、攪拌軸及び円筒形の槽が基盤(地面)に対し縦型である縦型ミキサ−の場合でも、8m/sec以上の一定スピ−ドの層流状に混合可能な周速度が得られる様に設計されたものであれば良く、例えば、ヘンシェルミキサ−の様な筒形槽が縦型に設置された場合でも、円筒槽の内側面のみに沿った層流状混合が可能な一定方向への層流攪拌ができれば、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、容易に得られるものである。
【0022】
請求項1で記載の周速度は、熱可塑性樹脂に対して顔料及び水を加えた混合物を、層流混合が可能な脱気孔付き高速型混合機(以下混合機と省略)の周速度を8m/sec以上にすることにより、顔料分散性に優れた本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチが容易に得られる。
しかし、周速度が8m/secより小さいと本発明が必要とする満足な攪拌効果が得れず、本発明の顔料分散性に富んだ熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは得られない。
尚、本発明品の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ製造に適した混合機として周速度が90m/secより大きい市販品は見当たらない。
【0023】
本発明で使用の混合機は、攪拌羽根先端部と円筒状壁面との間隔が3〜30mmの間隔であり、攪拌羽根は、複数段から構成されものが好ましい。該間隔が3mmより狭いと攪拌混合の際に熱可塑性樹脂に顔料を加えた混合物に凝集を生じ混合が困難となり好ましくない。また、30mmより広いと均一配合が十分に行われず、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチが得られない。
請求項1で記載の周速度に特定して得られた本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、従来から分散剤として使用のエチレンビスアマイドや、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等低分子量樹脂ワックス等の分散剤を全く配合せずに、これら樹脂用着色剤に劣らぬ顔料分散性を提供するものである。
【0024】
しかも、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、着色成形品の製造でも長時間操業しても何ら物性変化を生じない耐熱性に良好な熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを提供するものである。
従って、本発明品は、上記の特徴を生かして各種成形品の用途に使用可能であり、特に紡糸やフィルム成形品として最適である。
本発明品は、従来から使用の各種分散剤使用した場合に発生する耐熱性や耐候性等の低下の心配も全く心配の必要がない。
【0025】
請求項2では、熱可塑性樹脂、水及び顔料を、攪拌羽根先端部と攪拌槽内壁面との間隙が3〜30mmであり、且つ、回転する攪拌羽根の先端速度が8m/sec以上を有する高速型混合機を用いて層流混合を行い、この際に発生する摩擦熱を利用して脱水及び前記熱可塑性樹脂を軟化塊状化し、前記顔料を前記熱可塑性樹脂中に分散してなることを特徴とする熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法を開発したのである。
【0026】
請求項2記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造法では、請求項1記載混合機の攪拌槽内で回転する攪拌羽根の先端速度(周速度)を請求項1と同様に8m/sec以上に特定することで、分散性に優れた効果が発揮され、従来法での熱可塑性樹脂と添加剤をヘンシェルミキサ−等装置により乱流混合した場合に比較して、少量の顔料と水の配合によって顔料分散性に富んだ熱可塑性樹脂樹脂用カラーマスターバッチが、容易に製造できるものである。
【0027】
請求項3は、請求項2記載の顔料が、粉末乾燥形状である熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法である。
粉末状乾燥顔料を用いる場合には、予め熱可塑性樹脂、顔料及び水をプレミックスした後に、本発明で使用の高速型混合機に仕込んで製造すれば良い。尚、上記プレミックスは、本発明で使用の高速型混合機を用い、最初に低速回転で操作を行って混合しても良い。
【0028】
請求項4は、請求項2又は3記載の水が、顔料に対して5〜200重量%添加してなる熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法である。
水の添加量は、1重量%以下の場合では顔料の分散効果が認められない、一方、水の添加量が200重量%を超えると脱水工程に多くの時間とエネルギーを必要とするために好ましくない。
【0029】
請求項5は、請求項2又は4記載の顔料が、予め水を含有した乾燥前の顔料ウェットケーキを使用した熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法である。
水を含有した乾燥前の顔料ウェットケーキは、顔料一次粒子が非凝集状態を保ったまま、水を2〜70重量%程度含有するものであり、顔料分散性に富んだ熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチが容易に得られる。
【0030】
請求項6は、請求項1記載の熱可塑性樹脂が、ポリエチレンである熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチである。
本発明で得られる請求項5記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、紡糸やフイルムの製造でも、長時間操業でも何ら支障を生じない作業性に富んだ製品を提供するものである。
請求項7は、請求項1記載の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンである熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチである。
本発明で得られる請求項5記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、ポリエチレン樹脂と同様に紡糸やフイルムの製造でも、長時間操業でも何ら支障を生じない作業性に富んでおり、しかも、顔料分散性に富んだ製品を提供するものである。
【0031】
請求項8は、請求項1記載の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂である熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチである。
本発明品は、従来よりポリスチレン樹脂の着色に使用の着色剤にかえて、十分に使用できるものである。
該熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチでの顔料混合割合は、従来より市販されている有機顔料含有の高濃度品の製造も可能であり、品質も従来製品に劣らぬ優れた製品が、簡便な混合攪拌のみで容易に得られるものである。
【0032】
請求項9は、請求項1、6、7又は8記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを用いて得られる成形品である。
本発明の可塑性樹脂用カラーマスターバッチを使用して得られる本発明の成形品は、特許文献2記載のフラッシング法マスターバッチに全く劣らぬ顔料分散性、着色力等を発揮する製品を提供するものであり、従って、本発明の成形品も非常に優れた製品を提供するものである。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチには、その特徴を損なわない程度で各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤等安定剤を配合しても良い。また、剛性、耐熱性等を向上するために必要に応じて、シリカ、炭酸カルシウム等を配合しても良い。
【発明の効果】
【0034】
以上の通り、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、脱気孔付き高速型混合機を用いて熱可塑性樹脂、顔料及び水を、一定層流状態で混合攪拌するのみで、下記に示す実施例1〜10についての測定結果を表1にも記載の通り、実施例1〜10の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチは、物性が優れており、従来のフラッシング法で得られるマスタ−バッチに匹敵する顔料分散性に富んだ着色剤が容易に得られる技術を確立したのである。
しかも、本発明の製造操作は、従来から行われているフラッシング法に比較し非常に簡便であり、小ロット製造が容易であり、熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ製造の合理化に大いに貢献するものである。
【0035】
そして、本発明の熱可塑性樹用カラーマスターバッチを用いて、容器やフィルム成形品を製造した場合にも、顔料分散性に富み、引張り強度等が優れた各種製品が容易に得られるものである。
更に、本発明の熱可塑性樹用カラーマスターバッチは、フラッシング法マスタ−バッチの重要な用途である、紡糸や高級フィルムの用途に使用可能なな樹脂用着色剤を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明では、熱可塑性樹脂、顔料及び水を、高速型混合機攪拌羽根先端の周速度を8m/sec以上として層流状態で混合することで、顔料分散性に優れた熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ及びその製造方法を確立したのである。
以下に実施例及び比較例を記載する。尚、重量部は部と記載する。
実施例1
MFR5g/10分(JIS-K-7210に準拠)、軟化点100.2℃(JIS-K-7206に準拠)の低密度ポリエチレンペレット(宇部ポリエチレン社製商品:F522N、3mm径ペレット)を60部、フタロシアニンブル−(C.I.Pigment Blue15:1)40部及び水道水40部を、予めヘンシェルミキサーによって混合した混合物を、攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を10mmに調節した容量5リットルの脱気孔付き横型高速型混合機(米国DRAISWERKE社製:G5シリ−ズ)の高速型混合機ホッパー口より投入して、回転羽根の先端速度を10m/secとして5分間攪拌し層流状混合を行い、その際に発生する摩擦熱を利用して、脱水しながら軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た。
該軟化塊状化状態の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを押出機を用い、ストランド化し押出して、本発明品のペレットを製造した。
【0037】
上記の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチのペレットを試料として、次に示す(a)グリッド個数の測定及び(b)昇圧試験の測定を行い、その結果を表1に記載した。
実施例1で得られた本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチについて、(a)及び(b)ともに優れた数値を示しており、カラーマスターバッチとして優れていることを証明している。又、比較例4の従来法フラッシング法と変わらぬ着色剤(マスタ−バッチ)が容易に得られる事実を証明している。
【0038】
(a)グリッド個数の測定
試料について厚さ30μmのインフレションフイルムを作成し、容積10cc中のフィルムに存在する0.1mm以上のグリット個数を測定する。
その結果について、次の基準で顔料分散性の評価を行った。
○‥‥‥10個/cm未満であり、あらゆる用途に使用可能である
△‥‥‥10個/cm〜50個/cm未満であり、分散性が若干劣りフイルム等の薄 物には不適当である。
×‥‥‥50個/cm以上であり、使用不可能
【0039】
(b)昇圧試験の測定
スクリュ−径15mm単軸押出機の先端に325メッシュの金網を装着し、試料1kgを
押出し、金網の目詰まり状態をダイス部での圧力上昇値(MPa)を測定する。
尚、実施例2〜9及び比較例1〜5についても、同様に(a)と(b)を測定して、その結果を表1に記載する。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例2
MFR5g/10分(JIS-K-7210に準拠)、軟化点100.2℃(JIS-K-7206に準拠)の低密度ポリエチレンペレット(宇部ポリエチレン社製商品:F522N、3mm径ペレット)を60部に対して、フタロシアニンブル−ウェットケーキ「リオノールブルーSM-P」(東洋インキ製造社製商品:顔料濃度50%)70部を、予めヘンシェルミキサーによって混合した混合物を得る。
該混合物を、実施例1記載の高速型混合機を使用し、以後、実施例1と同一条件で操作を行って本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチのペレットを得た。
【0042】
実施例3
攪拌羽根が上下2段からなり攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を10mmに調節しており、下段攪拌羽が底部材に平行に取り付けられた脱気孔付き容量1リットル縦型円筒槽である攪拌羽根が2段からなる脱気孔付き実験用高速型混合機(以後ラボミキサ−と称する)を用い、周速度26m/secに調節一定層流で5分間攪拌合した以外は実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
【0043】
実施例4
実施例1で使用の高速型混合機の周速度を40m/secとした以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例5
実施例1で使用の高速型混合機の周速度を90m/secとした以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
【0044】
実施例6
実施例1で使用の高速型混合機の攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を5mmに調節した以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の塊状化した熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
実施例7
実施例1で使用の高速型混合機の攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を28mmに調節した以外は、実施例1同様にして、軟化塊状化した本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た後に、押出機によりペレット化した。
【0045】
実施例8
実施例1において使用の低密度ポリエチレンをMFR7g/10分、軟化点115℃の線状低密度ポリエチレンに代える以外は、実施例1と同様にして、塊状である本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを得た。
実施例9
実施例1において使用の低密度ポリエチレンをMFR19g/10分、軟化点155.9℃のポリプロピレン(出光石油化学株式会社製J2000GP)に代える以外は、実施例1と同様にして、本発明の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチのペレットを得た。
【0046】
比較例1
実施例1における攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を2mmに調節した以外は、実施例1と同じである。
比較例2
実施例1における攪拌羽根の先端部と攪拌槽内面の間隔を35mmに調節した以外は、実施例1と同じである。
比較例3
実施例1における周速度を6m/secとする以外は、実施例1と同じである。
【0047】
比較例4
ACポリエチレン6A(アライドケミカル&ダイコ−ポレション社製)100部、フタロシアニンブル−(CIピグメントブル−15:1)10部、及び蒸留水50部をニ−ダ−に仕込み加熱混練した後、水分を蒸発させて得られた混合物を3本ロ−ルを用い混練して、フラッシング法によるカラ−マスタ−バッチを得た。
比較例5
比較例4で使用のACポリエチレン6A及びフタロシアニンブル−を予備溶融混練した後に、3本ロ−ルを用いて加熱混練してカラ−マスタ−バッチを得た。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上の通り、本発明の熱可塑性樹脂用マスターバッチの製造方法は、実施例1〜9でも従来のフラッシング法に比較して簡便な装置で容易に製造され、しかも、得られた本発明製品はフラッシング法で得られる着色剤と変わらぬ品質の優れた製品が容易に得られるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、水及び顔料を、攪拌羽根先端部と攪拌槽内壁面との間隙が3〜30mmであり、且つ、回転する攪拌羽根の先端速度が8m/sec以上を有する脱気孔付き高速型混合機を用いて層流状混合を行い、この際に発生する摩擦熱を利用して脱水及び前記熱可塑性樹脂を軟化塊状化し、前記顔料を前記熱可塑性樹脂中に分散して得ることを特徴とする熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ。
【請求項2】
熱可塑性樹脂、水及び顔料を、攪拌羽根先端部と攪拌槽内壁面との間隙が3〜30mmであり、且つ、回転する攪拌羽根の先端速度が8m/sec以上を有する脱気孔付き高速型混合機を用いて層流状混合を行い、この際に発生する摩擦熱を利用して脱水及び前記熱可塑性樹脂を軟化塊状化し、前記顔料を前記熱可塑性樹脂中に分散してなることを特徴とする熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の顔料が、粉末乾燥形状である熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の水が、顔料に対し5〜200重量%添加されてなる熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
請求項2又は4記載の顔料が、予め水を含有した乾燥前の顔料ウェットケーキである熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の熱可塑性樹脂が、ポリエチレンである熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ。
【請求項7】
請求項1記載の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンである熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ。
【請求項8】
請求項1記載の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂である熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチ。
【請求項9】
請求項1、6、7又は8記載の熱可塑性樹脂用カラーマスターバッチを用いて得られる成形品。

【公開番号】特開2006−22143(P2006−22143A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199067(P2004−199067)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】