説明

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品

【課題】
本発明の課題は、表面外観、耐衝撃性および熱安定性に優れたポリ乳酸樹脂系の熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を提供することにある。
【解決手段】
ゴム含有グラフト共重合体(A)15〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)50〜90重量%、ビニル系共重合体(B)10〜55重量部、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)0〜50重量部ならびにポリ乳酸樹脂(D)5〜55重量部を含有する樹脂組成物(ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)、ポリ乳酸樹脂(D)の合計で100重量部)に対してリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)0.01〜2重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)からなる樹脂組成物(F)とポリ乳酸樹脂(D)の220℃、1000s−1における溶融粘度(η)の関係が次の範囲にあることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
0.30≦η(D)成分/η(F)成分≦0.80

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面外観、耐衝撃性および熱安定性に優れたポリ乳酸系の熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形材料は、ポリエチレン樹脂、ポリプロプレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などあらゆる分野に使用されてきた。製品の使用後には、埋め立てや焼却処分されてきたため、半永久的な地中への残留または、焼却時の二酸化炭素の発生など地球環境に対し大きく負荷を与えてきた。近年、地球温暖化の要因として、温室効果ガスである二酸化炭素の上昇が指摘され、地球規模での二酸化炭素排出抑制の機運が高まってきている。このような環境保全の見地から、リニューアブルの樹脂として、二酸化炭素を吸収し固着する植物資源、いわゆるバイオマスの活用が注目されており、石油資源の代替検討がなされている。射出成形用の材料においてもこのバイオマスを活用し、石油原料使用量の削減および二酸化炭素排出量の抑制可能な植物由来のプラスチックが注目されている。
【0003】
このような植物由来の樹脂として、ポリ乳酸樹脂をはじめとする脂肪族ポリエステルがその代表ではあるが、上記の既存石油系樹脂と比較して、機械的強度や耐熱性に劣るため、各種改良検討が行われている。その改良手法としては、ポリ乳酸樹脂自身の改良だけでなく、上記既存の樹脂とのポリマーアロイによって、各種特性の改善が盛んに行われている。
【0004】
その中の一つとして、成形性、二次加工性、表面外観性などの優れた特性を有するABS樹脂とポリ乳酸樹脂をアロイすることによってポリ乳酸系樹脂にABS樹脂の特徴を付加する検討がABS樹脂メーカを中心になされているが、従来のABS樹脂/ポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形した際のウェルド部の外観や非ウェルド部のフローマークが出やすく、ABS樹脂の主用途の外観部品への適用が制限されることがあった。また、ABS樹脂の原料のゴム含有グラフト共重合体はその製造過程によりアルカリ性を呈するため、そのままポリ乳酸とブレンドして押出すと、ポリ乳酸がアルカリにより分解することにより樹脂組成物の耐衝撃性および熱安定性が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
ABS樹脂/ポリ乳酸樹脂組成物のウェルドの外観の改善を試みたものとして、以下の特許文献1〜8が提案されているが、従来のABS樹脂/ポリ乳酸樹脂アロイよりは射出成形品の表面外観は改善されてはいるが、これらのABS樹脂/ポリ乳酸樹脂アロイは、着色剤を添加して使用されることが多く、着色した色によってはフローマークやウェルドラインが目立つことがあるという点で不十分であった。なお特許文献7では、特定の不飽和カルボン酸アルキルエステルと着色剤の酸化チタンを多量に添加することで、薄い色、淡い色については、良好な外観の成形品が得られるが、白色の酸化チタンを多量に添加するため、濃色には対応でき難いという問題点があった。一方、特許文献9では、ポリ乳酸樹脂と熱可塑性樹脂とのポリマーアロイにより機械的特性、耐熱性などの改善が提案されているが、表面外観、特にウェルド部の外観については不十分であった。また、特許文献1〜9のいずれにもアルカリによるポリ乳酸の分解を解決するための手段についての記載はなく、表面外観、耐衝撃性および熱安定性を併せ持つABS樹脂/ポリ乳酸樹脂系の熱可塑性樹脂組成物は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−209263号公報
【特許文献2】特開2009−197079号公報
【特許文献3】特開2009−132777号公報
【特許文献4】特開2009−132776号公報
【特許文献5】特開2009−13339号公報
【特許文献6】特開2009−7528号公報
【特許文献7】特開2008−214469号公報
【特許文献8】特開2007−191688号公報
【特許文献9】特開2006−137908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表面外観、耐衝撃性および熱安定性に優れたポリ乳酸樹脂系の熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂(D)に(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)および芳香族ビニル系単量体(エ)を含有するゴム含有グラフト共重合体(A)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)および芳香族ビニル系単量体(エ)を含有するビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)ならびにリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を配合してなる樹脂組成物において、成分(A)および(B)を構成する単量体組成、ならびに成分(A)、(B)および(C)と成分(D)の溶融粘度を規定することにより課題が解決することを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(5)で構成される。
(1)ゴム質重合体(ア)30〜70重量%に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)50〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜10重量%および芳香族ビニル系単量体(エ)10〜40重量%を含有する単量体混合物70〜30重量%をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体(A)15〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)50〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜10重量%および芳香族ビニル系単量体(エ)10〜40重量%を含有する単量体混合物を重合してなるビニル系共重合体(B)10〜55重量部、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)0〜50重量部ならびにポリ乳酸樹脂(D)5〜55重量部を含有する樹脂組成物(ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)、ポリ乳酸樹脂(D)の合計で100重量部)に対してリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)0.01〜2重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)からなる樹脂組成物(F)とポリ乳酸樹脂(D)の220℃、1000s−1における溶融粘度(η)の関係が次の範囲にあることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
0.30≦η成分(D)/η成分(F)≦0.80。
(2)ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(ア)以外の成分、ビニル系共重合体(B)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の混合物のSP値が19.8〜21.1(J/cm1/2の範囲にあることを特徴とする、(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(ア)以外の成分およびビニル系共重合体(B)のSP値が共に19.8〜21.1(J/cm1/2の範囲にあることを特徴とする、(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)さらにポリ乳酸樹脂(D)100重量部に対してカルボジイミド化合物を0.1〜10重量部含有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面外観、耐衝撃性および熱安定性に優れるだけでなく、機械特性および耐熱性のバランスが取れたポリ乳酸系の熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、具体的に説明する。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)およびポリ乳酸樹脂(D)((A)〜(D)成分の合計で100重量部)からなる樹脂組成物に、リン酸および/またはリン酸1ナトリウムを含有することを特徴とする。
【0013】
ゴム含有グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(ア)に(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)および芳香族ビニル系単量体(エ)を含有する単量体混合物をグラフト重合してなるものである。
【0014】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(ア)としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴム等が挙げられ、具体的には、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソブチレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)およびポリ(エチレン−アクリル酸エチル)等が挙げられる。ゴム質重合体(ア)は、上記に例示したものを1種類のみの使用には限定されず、2種以上混合して使用することもできる。中でも、ゴム質重合体(ア)としては、耐衝撃性改善効果の点から、ポリブタジエンおよびポリ(ブタジエン−スチレン)が好適に使用され、ポリブタジエンがより好適に用いられる。
【0015】
前記ゴム質重合体(ア)の重量平均粒子径は、耐衝撃性、成形加工性、流動性および外観の点から、0.1〜2.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15〜1.5μmの範囲である。
【0016】
ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(ア)の割合は、30〜70重量%であり、好ましくは35〜60重量%、より好ましくは40〜55重量%である。30重量部未満である場合には、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方70重量%を超える量を添加した場合には成形加工性が悪くなり、成形品の外観にフローマーク等の不良が発生しやすくなる場合がある。
【0017】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられるが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが好ましく用いられ、特に好ましくはメタクリル酸メチルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)は、必ずしも1種で使用する必要はなく、2種以上混合して使用することもできる。
【0018】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成するシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタアクリロニトリル等が挙げられるが、アクリロニトリルが好ましく用いられる。これらのシアン化ビニル系単量体(ウ)は必ずしも1種で使用する必要はなく、2種以上混合して使用することもできる。
【0019】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成する芳香族ビニル系単量体(エ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、スチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらの芳香族ビニル系単量体(ウ)は、必ずしも1種で使用する必要はなく、2種以上混合して使用することもできる。
【0020】
さらに、ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成する成分として、前記(イ)〜(エ)成分以外にも特性を損なわない範囲で、これらに共重合可能な単量体を適用することができ、例えば、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド等の不飽和アミドが挙げられ、これらは必ずしも1種で使用する必要はなく、2種以上混合して使用することもできる。
【0021】
ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成する成分である前記単量体混合物における(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)の割合は、50〜90重量%であり、好ましくは60〜80重量%、より好ましくは65〜75重量%である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体(エ)の割合が50重量%未満では成形品の外観、特にウェルド部の外観が低下することがあり、一方、90重量%を超える場合には、成形品の外観やウェルドの外観は問題ないが、耐衝撃性が低下することがある。
【0022】
前記単量体混合物におけるシアン化ビニル系単量体(ウ)の割合は、好ましくは0〜10重量%であり、より好ましくは2〜8重量%、さらに好ましくは3〜6重量%である。シアン化ビニル系単量体(ウ)の割合が10重量%を超えると成形品の外観、特にウェルド部の外観が低下することがある。
【0023】
前記単量体混合物における芳香族ビニル系単量体(エ)の割合は、10〜40重量%であり、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは20〜30重量%である。芳香族ビニル系単量体(エ)の割合が10重量%未満では成形性が低下することがあり、40重量%を超えると耐衝撃性が低下や、本発明の樹脂組成物からなる成形品の外観、特にウェルド部の外観が低下することがある。
【0024】
ゴム含有グラフト共重合体(A)におけるグラフト率は、15〜80%の範囲であることが好ましく、20〜70重量%の範囲であることがより好ましい。グラフト率が15%未満では耐衝撃性が低下する場合があり、80%を超えると成形加工性が悪くなり成形品の外観にフローマーク等の不良が発生しやすくなる場合がある。
【0025】
ゴム含有グラフト共重合体(A)の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合および溶液重合等のいずれの重合方法においても製造することができる。また、各単量体の仕込方法については特に制限はなく、初期一括仕込み、あるいは共重合体の組成分布を抑えるために仕込み単量体の一部または全部を連続的または分割して仕込み重合してもよい。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるゴム含有グラフト共重合体(A)の含有量は、(A)〜(D)成分からなる樹脂組成物100重量部に対して15〜60重量部である。ゴム含有グラフト共重合体(A)の含有量が15重量部未満である場合には、耐衝撃性が低下することがあり、一方、60重量部を超える場合には、射出成形時の流動性が損なわれ、成形品の外観が損なわれるだけでなく、大型の成形品では、成形できなくなることがある。なお、成分(A)の好ましい含有量としては20〜50重量部であり、より好ましくは30〜40重量部である。
【0027】
ビニル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)および芳香族ビニル系単量体(エ)を含有する単量体混合物を共重合してなるものである。ここで言う(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)、シアン化ビニル系単量体(ウ)および芳香族ビニル系単量体(エ)としては、それぞれ、既述のゴム含有グラフト共重合体(A)の項で説明した各単量体(イ)、(ウ)および(エ)と同種のものが使用される。また、単量体混合物には上記以外に共重合可能な単量体が含まれてもよく、その場合の共重合可能な単量体についても既述のゴム含有グラフト共重合体(A)と同種のものが使用される。
【0028】
ビニル系共重合体(B)を構成する成分である前記単量体混合物における(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)の割合は、50〜90重量%であり、好ましくは60〜80重量%、より好ましくは65〜75重量%である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)の割合が50重量%未満の場合には、成形品の外観、特にウェルド部の外観が低下することがあり、一方、90重量%を超える場合には、成形品の外観やウェルドの外観は問題ないが、耐衝撃性が低下することがある。
【0029】
前記単量体混合物におけるシアン化ビニル系単量体(ウ)の割合は、0〜10重量%であり、より好ましくは2〜8重量%、さらに好ましくは3〜6重量%である。シアン化ビニル系単量体(ウ)の割合が10重量%を超えると本発明の樹脂組成物からなる成形品の外観、特にウェルド部の外観が低下することがある。
【0030】
前記単量体混合物における芳香族ビニル系単量体(エ)の割合は10〜40重量%であり、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは20〜30重量%である。芳香族ビニル系単量体(エ)の割合が10重量%未満では成形性が低下することがあり、40重量%を超えると耐衝撃性が低下や、本発明の樹脂組成物からなる成形品の外観、特にウェルド部の外観が低下することがある。
【0031】
ビニル系共重合体(B)の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合および溶液重合等のいずれの重合方法によっても製造することができる。また、各単量体の仕込方法については特に制限はなく、初期一括仕込み、あるいは共重合体の組成分布を抑えるために仕込み単量体の一部または全部を連続的または分割して仕込みながら重合してもよい。
【0032】
ビニル系共重合体(B)の固有粘度は、0.25〜1.50dl/gであることが好ましく、0.30〜1.20dl/gがより好ましく、0.30〜1.10dl/gが更に好ましい。固有粘度が0.25dl/gを下回る場合には、樹脂組成物の成形品強度、特に衝撃性が低下することがあり、一方、1.50dl/gを越える場合には、射出成形時の流動性が損なわれ、成形品の外観が損なわれるだけでなく、大型の成形品では成形できなくなる場合がある。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるビニル系共重合体(B)の含有量は(A)〜(D)成分からなる樹脂組成物100重量部に対して10〜55重量部である。ビニル系共重合体(B)の含有量が10重量部未満である場合には、流動性が損なわれ、成形品の外観が低下することがあり、55重量部を超えると、耐衝撃性が低下することがある。なお、(B)成分の好ましい含有量としては20〜50重量部であり、より好ましくは20〜40重量部である。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)とは、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどからなる重合体である。これらは、必ずしも1種からなる重合体である必要は無く、2種類以上共重合した重合体や、(メタ)アクリル酸エステル単量体と該単量体と共重合可能な単量体との共重合体も使用できる。さらに単独重合体を2種以上ブレンドして使用することもできる。中でも、本発明においてはメタクリル酸メチルを重合したポリメタクリル酸メチルを好適に用いることができる。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の含有量は(A)〜(D)成分からなる樹脂組成物100重量部に対して0〜50重量部である。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の含有量が50重量部を超える量を用いた場合には、耐衝撃性が損なわれることがある。なお、(C)成分の好ましい含有量としては30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
【0036】
ポリ乳酸樹脂(D)とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいても良い。他の共重合成分としてのモノマー単位としては、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4‘−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5―ナトリウムスルホイソフタル酸および5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトンおよび1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような他の共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とすることが好ましく、より好ましくは0〜10モル%である。
【0037】
また、ポリ乳酸樹脂(D)には、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体や、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などの別の種類の脂肪族ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸およびポリラクトンなどが挙げられる。また、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートおよびこれらの共重合体などが挙げられる。さらにポリプロピレンテレフタレートもアロイ成分として使用できる。ポリ乳酸樹脂に加えて使用できる上記の脂肪族ポリエステル樹脂は、必ずしも1種で使用する必要は無く、2種類以上の混合物や共重合体としても用いることができる。
【0038】
ポリ乳酸樹脂(D)の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば特に制限はないが、重量平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上、さらに好ましくは4万以上である。ここでいう重量平均分子量は、Waters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用い、示差屈折計を検出器(Waters2414)とし、カラムとしてポリマーラボラトリーズ社製MIXED−B(2本)、留出液ヘキサフルオロイソプロパノール、流速1ml/min、カラム温度40℃の条件で測定されるポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0039】
ポリ乳酸樹脂(D)の融点は、90℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上である。また、ポリ乳酸樹脂(D)の使用により高い耐熱性を得るためには、乳酸成分の光学純度が高い方が好ましく、総乳酸成分のうち、L体あるいはD体が80モル%以上含まれていることが好ましく、さらには90モル%以上含まれていることが好ましく、95モル%以上含まれることがより好ましい。
【0040】
ポリ乳酸樹脂(D)を製造するための乳酸の重合方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法やラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリ乳酸樹脂(D)の含有量は(A)〜(D)成分からなる樹脂組成物100重量部に対して5〜55重量部である。ポリ乳酸樹脂(D)の含有量が5重量部未満である場合には、成形性など問題は無いが、二酸化炭素の削減という根本的目的を達成するには効果が極めて少なく、一方、55重量部を超えると樹脂組成物の耐熱性が大幅に低下する。なお、(D)成分の好ましい含有量は10〜50重量部であり、より好ましくは25〜50重量部である。
【0042】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)〜(D)成分に加えて、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を含有することを特徴とする。リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)は、ゴム含有グラフト重合体(A)がその製造過程により弱アルカリ性を示すため、ポリ乳酸樹脂(D)のアルカリ分解を防止する目的で、これを中和するために使用されたものであるが、樹脂組成物製造時の臭気、火災など防災面、樹脂組成物の湿熱特性の観点、さらには樹脂組成物の着色性の観点において他の中和剤よりも優れることを特徴とする。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるリン酸および/リン酸1ナトリウム(E)の含有量は、(A)〜(D)成分の合計100重量部に対し、0.01〜2重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)の含有量が0.01重量部に満たない場合には、本発明の熱可塑性樹脂組成物の初期の耐衝撃性が低くなるだけでなく、熱滞留において衝撃性が大幅に低下することがあり好ましくない。一方、2重量部を超える場合には、成形品の滞留時に発泡や成形品の表面外観が低下(ウェルド部、非ウェルド部関係なし)することがあり好ましくない。
【0044】
なお、ゴム含有グラフト重合体(A)のアルカリ性の中和ができる酸性の物質であれば、リン酸および/またはリン酸1ナトリウムの特性を損なわない範囲でいかなるものでも使用することができる。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、クエン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フェノール、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸などの有機酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、クエン酸、オルトフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸の酸無水物が挙げられる。リン酸またはリン酸1ナトリウム以外の上記化合物を併用する時、必ずしも1種で使用する必要は無く、併用することもできる。
【0045】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物では、ゴム含有グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)とからなる樹脂組成物(F)と、ポリ乳酸樹脂(D)の220℃、1000s−1における溶融粘度(η)の関係が次の範囲にあることを必要とする。
0.30≦η(D)成分/η(F)成分≦0.80。
【0046】
前記式で表される溶融粘度の比が0.30を下回る場合は、成形品の外観が損なわれ、また、射出成形時の流動性が不足し、成形品の大きさによっては成形できないことがあり、一方、0.80を超える場合には、流動性は問題ないものの機械強度が不足するため好ましくない。220℃、1000s−1における溶融粘度の比は、0.40〜0.70の範囲であることが好ましく、0.45〜0.65の範囲であることがより好ましい。(D)成分および(F)成分の溶融粘度の比は、長さ20mm、径1mmのオリフィスを使用して、温度220℃、せん断速度1000s−1における値を用いて算出される。
【0047】
その他、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム含有グラフト共重合体中(A)のゴム質重合体(ア)以外の成分と、ビニル系共重合体(B)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の混合物のSP値(相溶性パラメータ)が、19.8〜21.1(J/cm1/2の範囲にあることが好ましい。SP値とは、Robert F. Fedors氏が提案したSP値の計算方法(文献:Polymer Engineering and Science, February, 1974, Vol.14, No2,Title:A Method for Estimating Both The Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids)に基づくものである。ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(ア)以外の成分、ビニル系共重合体(B)、ならびに(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の各々について前記した方法によりSP値を算出し、下記式により混合物のSP値が求められる。
混合物のSP値=Σ(各成分のSP値)×(混合物に占める各成分の重量%)/100。
【0048】
SP値が19.8(J/cm1/2を下回る場合、もしくは21.1(J/cm1/2を超える場合には、樹脂組成物全体の相溶性が低下することがあり、成形品のウェルド部の外観が損なわれる。なお、機械的特性と成形品の外観を両立する意味においてより好ましいSP値の範囲は、20.0〜21.1であり、さらに好ましくは20.2〜20.8(J/cm1/2である。
【0049】
また、ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(ア)以外の成分と、ビニル系共重合体(B)のSP値が共に19.8〜21.1(J/cm1/2であることが、機械的特性と成形品外観の両立を達成させる好ましい形態である。両成分がこの範囲であれば、比較的高価な成分(C)の使用量を削減することが可能でとなり、より安価に良外観を達成させることができるほか、樹脂組成物(F)の構成成分数が減少するため、ポリ乳酸樹脂(D)との溶融粘度の調節がより容易となり、機械的特性を発現するための成分配合が容易となる。
【0050】
さらに、ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(ア)以外の成分、ビニル系共重合体(B)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の23℃における屈折率は、1.485〜1.530の範囲にあることが好ましい。屈折率値が1.485未満の材料を使用する場合は成形品の外観が損なわれることがある。また、屈折率値が1.530を超える場合には、成形品のウェルド部の外観が損なわれることがある。機械的特性と成形品の外観を両立する意味においてより好ましい範囲は、1.490〜1.525であり、さらに好ましくは1.505〜1.520である。
【0051】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(D)100重量部に対し、カルボジイミド化合物を0.1〜10重量部含有することが好ましい。ポリ乳酸樹脂(D)100重量部に対してカルボジイミド化合物を0.1〜10重量部含有することにより、ポリ乳酸樹脂の末端カルボキシル基が封鎖され、耐湿熱特性を向上させることができる。なお、ポリ乳酸樹脂(D)100重量部に対するカルボジイミド化合物0.1重量部未満での使用は、ポリ乳酸樹脂(D)の末端カルボキシル基の封鎖効果が見られず、一方、10重量部を超えて使用した場合には金型の汚れに起因する場合があり、該汚れが表面外観に影響を及ぼすことがある。
【0052】
カルボジイミド化合物の具体例として、同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミドとしては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジブチルカルボジイミド、ジ−tertブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tertブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−トリルカルボジイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0053】
また、カルボジイミド化合物の具体例として、同一分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドとしては、脂肪族(脂環族)ポリカルボジイミド(例えば日清紡績株式会社カルボジライトLA−1、HMV−8CAなど)、芳香族ポリカルボジイミド(例えばラインヘミー社製スタバックゾールP、スタバックゾールP−100など)が挙げられ、好ましくはカルボジライトHMV−8CAが用いられる。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の樹脂を添加することもできる。添加することができる樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6やナイロン66、ナイロン4,6、ナイロン6T等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、2種類以上混合して使用することもできる。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種エラストマーを添加することもできる。エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/オクテン−1共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体などのポリオレフィン系ゴム、またはカルボキシル基、無水カルボキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基等で変性されたポリオレフィン系ゴムから選ばれる。これらは、必ずしも1種類で使用する必要はなく、2種類以上混合して使用することもできる。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄化合物系酸化防止剤、含リン有機化合物系酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、銀系抗菌剤に代表される抗菌剤、帯電防止剤、抗カビ剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを添加することもできる。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて結晶核剤を混合することができ、その具体例としては、例えば、タルク、シリカ、グラファイトなどの無機微粒子、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも無機微粒子が好ましく、特にタルクが好ましく用いられる。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維、マイカ、ワラステナイト、ウィスカー、酸化チタン、硫酸バリウム等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各構成成分を規定部数に基づき配合、溶融混合により得ることができる。各成分の溶融混合方法に関しては、加熱装置、ベントを有するシリンダで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混合する方法などが採用可能である。溶融混合の際の加熱温度は、通常210〜260(℃)の範囲から選択されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配等を自由に設定することも可能である。また、二軸のスクリューを用いる場合は、同一回転方向でも異回転方向でも良い。
【0060】
成分(A)〜(E)の溶融混合の方法としては、構成成分全てを初期に配合してから溶融混合する方法や、ゴム含有グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を予め溶融混合させて得られた樹脂組成物に、後からポリ乳酸樹脂(D)を混合して溶融させる方法などが挙げられるが、ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を予め溶融混合させて得られた樹脂組成物に、後からポリ乳酸樹脂(D)を混合して溶融させる方法が好ましい。
【0061】
また、カルボジイミド化合物を配合する場合には、前記記載のどの工程において配合しても問題はないが、好ましくはポリ乳酸樹脂(D)を溶融混合する工程で使用することが好ましい。
【0062】
上記によって得られた本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形および、ガスアシスト成形などの公知の方法によって成形することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは、射出成形により成形される。また、射出成形は、好ましくは210〜260℃の通常成形する温度範囲で実施することができる。また、射出成形時の金型温度は、好ましくは30〜80℃の通常成形に使用される温度範囲である。
【実施例】
【0063】
本発明を更に具体的にかつ詳細に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、ここで特に断りのない限り「%」は重量%を示す。
【0064】
以下に実施例で行った評価方法について示す。
【0065】
(1)ゴム質重合体(ア)の重量平均ゴム粒子径
Rubber Age Vol.88 p.484-490(1960), by E.Schmidt, P.H.Biddisonに記載のアルギン酸ナトリウム法、即ち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求めた。
【0066】
(2)ゴム含有グラフト共重合体(A)のグラフト率
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったゴム含有グラフト共重合体(A)の所定量(m;1g)にアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を80℃の温度で4時間真空乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式により算出した。ここでLは、ゴム含有グラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
【0067】
(3)ビニル系共重合体(B)の固有粘度η
測定するサンプルを0.2g/100mlメチルエチルケトン溶媒、0.4g/100mlメチルエチルケトン溶媒としてウベローデ粘度計を用い、30℃での粘度測定より算出した。
【0068】
(4)SP値
Robert F. Fedors氏が提案した以下文献のSP値の方法にて算出した。
文献:Polymer Engineering and Science ,February, 1974, Vol.14, No2
Title:A Method for Estimating Both The Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids。
具体的には、ゴム含有グラフト共重合体(A)のゴム質重合体(ア)以外の成分、ビニル系共重合体(B)、ならびに(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の各々について前記した方法によりSP値を算出し、下記式により混合物のSP値を求めた。
混合物のSP値=Σ(各成分のSP値)×(混合物に占める各成分の重量%)/100。
【0069】
(5)屈折率
ポリスチレンの屈折率:1.591、ポリアクリロニトリルの屈折率:1.514、ポリメチルメタクリレートの屈折率:1.490の数値を使用し、モル分率から、ゴム含有グラフト共重合体(A)中の(イ)、(ウ)および(エ)からなるビニル系共重合体成分、ビニル系共重合体(B)ならびに(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の屈折率値を算出した。
【0070】
(6)溶融粘度
220℃、せん断速度1000s−1における溶融粘度をキャピラリーグラフ測定装置(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1C型)により測定した。オリフィスは、長さ20mm、径1mmのものを使用した。
【0071】
(7)MFR(メルトフローレート測定)
ISO1133(温度220℃、98N荷重条件で測定)に準じて測定した。この値が大きいほど高い流動性を示し、成形加工に優れる。
【0072】
(8)熱変形温度
ISO75−1,2に準じて測定した。試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃、金型温度60℃とした。
【0073】
(9)シャルピー衝撃強度
ISO179に準じて測定した。試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃、金型温度60℃とした。
【0074】
(10)滞留シャルピー衝撃強度
試験片の成形条件は、シリンダ温度220℃で10分間滞留し、金型温度60℃に調整した金型内に射出し試験片を得た。その後の作業はISO179に準じて行った。
【0075】
(11)ウェルド表面外観
成形品の塗装性評価試験は、次のように評価した。射出成形機(東芝機械株式会社製IS80)を使用して、シリンダ温度を220℃および金型温度を60℃にそれぞれ設定し、角板外寸70×240×2mmtでゲートから50mmの位置に直径40mmの円形の穴が存在する角板を成形した。その角板の円形穴の反ゲート側に形成されるウェルドの外観観察を目視にて行った。ウェルド部外観評価は、確認されるウェルドラインの長さによって以下の基準を設けて判定し、◎〜△を合格レベルとした。
◎:ウェルドラインが見られない
○:ウェルドラインが15mm未満
△:ウェルドラインが15mm以上20mm未満
×:ウェルドラインが20mm超。
【0076】
以下、実施例に使用した原料の製造方法を以下に示す。
【0077】
ゴム含有グラフト共重合体(A)
<成分A−1の製造方法>
窒素置換した反応器に、純水150重量部、ブドウ糖0.5重量部、ピロリン酸ナトリウム0.5重量部、硫酸第一鉄0.005重量部および重量平均ゴム粒子径が0.8μmとなるポリブタジエンラテックス35重量部を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン(16重量部)、アクリロニトリル(3重量部)、メチルメタクリレート(46重量部)および連鎖移動剤t−ドデシルメルカプタン混合物(0.2重量部)を4時間掛けて連続添加した。同時に並行して、重合開始剤クメンハイドロパーオキサイド(0.2重量部)およびオレイン酸カリウムからなる水溶液を7時間掛けて連続添加し、反応を完結させた。得られたラテックスに、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)をラテックス固形分100重量部に対して1部添加し、続いて、このラテックスを硫酸で酸凝固後、水酸化ナトリウムで硫酸を中和し、洗浄濾過後、乾燥し、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体(A−1)を得た。このゴム含有グラフト共重合体(A−1)のグラフト率は45%であった。成分A−2〜成分A−8については、表1に示した重量部にした以外はA−1と同様の方法で調製した。
【0078】
【表1】

【0079】
ビニル系共重合体(B)
<成分B−1の製造方法>
バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、特公昭45−24151号公報の実施例1に記載の水中でのラジカル重合方法で製造したアクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体0.05重量部を、イオン交換水165重量部に溶解した溶液を入れて400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、スチレン,アクリロニトリル,メチルメタクリレートの合計100重量部とt−ドデシルメルカプタン:0.05重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4重量部、脱イオン水:150重量部の混合溶液を攪拌下の系内に添加し、60℃に昇温して重合を開始した。重合開始後、15分かけて反応温度を65℃まで昇温した後、50分かけて100℃の温度まで昇温した。以後、系内を室温まで冷却し、ポリマーの分離、洗浄および乾燥することでビニル系共重合体(B)を得た。
【0080】
B−1はスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレート=24/5/71の重量比率で調製した。得られたB−1の固有粘度は、0.35dl/gであった。
【0081】
成分B−2〜成分B−8については、表2に示したスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートの重量比率、および連鎖移動剤t−ドデシルメルカプタン添加部数を変えた以外はB−1と同様の方法で調製した。なお、連鎖移動剤添加部数を多くすると、得られるビニル系共重合体の分子量は低下するため、固有粘度および溶融粘度は低下する。
【0082】
【表2】

【0083】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)
住友化学株式会社製 ポリメチルメタクリレート樹脂 “スミペックスMH”を使用した。
【0084】
ポリ乳酸樹脂(D)
NatureWorks社製のポリ乳酸(重量平均分子量20万、D−乳酸単位1%、融点175℃のポリ−L−乳酸)を使用した。
【0085】
リン酸、リン酸1ナトリウム(E)
(リン酸)
関東化学株式会社製 “リン酸 0.5mol/l”を使用した。
(リン酸1ナトリウム)
太平化学産業株式会社製 “リン酸1ナトリウム無水物”を使用した。
【0086】
カルボジイミド化合物
日清紡績株式会社製 脂肪族(脂環族)ポリカルボジイミド “カルボジライトHMV−8CA”を使用した。
【0087】
実施例1〜32、比較例1〜15
ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)、リン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)を所定比率で配合し、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:220℃〜230℃)で溶融混合し、樹脂組成物ペレットを得た。さらに前記(A)〜(C)および(E)成分よりなる樹脂組成物とポリ乳酸(D)を所定比率にて配合し、(A)〜(D)成分の合計100重量部に対して、着色剤としてカーボンブラック2重量部を配合し、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:220〜230℃)で溶融混合を行い、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。該熱可塑性樹脂組成物の(A)〜(E)成分の構成比率を表3、4(実施例1〜31)および表5(比較例1〜15)に示した。(A)〜(D)の添加量は合計で100重量部となるように示した。また(E)成分は(A)〜(D)成分の合計100重量部に対する重量部で示した。表3〜5における(E)の添加量は、リン酸および/またはリン酸1ナトリウムとしての重量を示した。なお、リン酸は液体添加のため、0.5mol/lの水溶液を添加し、カルボジイミドを使用した系では、ポリ乳酸樹脂(D)の配合時に所定量添加した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットまたは原料を前項で示す各物性評価で評価した。
【0088】
実施例1〜31では、表面外観、耐衝撃性および熱安定性に優れるだけでなく、初期の機械特性および耐熱性に優れるものが得られた。
【0089】
比較例1では、ポリ乳酸樹脂(D)と(A)、(B)および(C)成分からなる樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明の範囲を上回ることにより、表面外観に劣るほか、衝撃強度が極端に低下した。また、比較例2では、ポリ乳酸樹脂(D)と(A)、(B)および(C)成分からなる樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明の範囲を下回ることにより、表面外観に劣るほか、メルトフローレートが極端に低下した。
【0090】
比較例3、4では、ビニル系共重合体(B)の単量体構成成分が本発明の範囲外となることにより、表面外観に劣った。
【0091】
比較例5では、ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合(ア)成分の含有量が本発明の範囲を下回ることにより耐衝撃性が低いことに加え、ポリ乳酸樹脂(D)と、(A)、(B)および(C)成分からなる樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明範囲外となることにより、表面外観が劣った。
【0092】
比較例6では、ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(ア)成分の含有量が本発明の範囲を上回り、ポリ乳酸樹脂(D)と(A)、(B)、および(C)成分からなる樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明の範囲外となることにより、表面外観が劣った。
【0093】
比較例7では、ゴム含有グラフト共重合体(A)を構成する単量体成分(イ)、(ウ)、(エ)の構成比率が本発明の範囲外となることにより、表面外観に劣った。
【0094】
比較例8では、ゴム含有グラフト共重合体(A)の含有量が本発明の範囲を下回り、ビニル系共重合体(B)の含有量が本発明の範囲を上回り、ポリ乳酸樹脂(D)と成分(A)、(B)および(C)成分からなる樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明の範囲を上回ることにより、衝撃強度が低下すると共に表面外観に劣った。また、比較例9では、ゴム含有グラフト共重合体(A)の含有量が本発明の範囲を上回り、ビニル系共重合体(B)の含有量が本発明を下回り、耐熱性に欠けるほか、ポリ乳酸樹脂(D)と樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明の範囲を下回ることにより、表面外観に劣った。
【0095】
比較例10では、ポリ乳酸樹脂(D)と樹脂組成物(F)の溶融粘度比が本発明の範囲内となることにより表面外観は優れるものの、ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の組成比が本発明の範囲外となることにより、機械特性に劣った。
【0096】
比較例11では、ポリ乳酸樹脂(D)の含有量が本発明の範囲外を上回ることにより、耐衝撃性や耐熱性に劣った。
【0097】
比較例12では、成形品の表面外観、初期の衝撃強度は好ましいが、(E)成分を添加していないため、熱滞留によるシャルピー強度が大幅に低下し、熱安定性に劣るものであった。また、比較例13〜15は(E)成分を過剰に添加しているため、成形品が発泡気味となり、ウェルド、非ウェルド部とも表面に粗れ傾向が見られた。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、表面外観、耐衝撃性および熱安定性に優れるため、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、各種雑貨やシートに好適に用いられることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム質重合体(ア)30〜70重量%に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)50〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜10重量%および芳香族ビニル系単量体(エ)10〜40重量%を含有する単量体混合物70〜30重量%をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体(A)15〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(イ)50〜90重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜10重量%および芳香族ビニル系単量体(エ)10〜40重量%を含有する単量体混合物を重合してなるビニル系共重合体(B)10〜55重量部、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)0〜50重量部ならびにポリ乳酸樹脂(D)5〜55重量部を含有する樹脂組成物(ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)、ポリ乳酸樹脂(D)の合計で100重量部)に対してリン酸および/またはリン酸1ナトリウム(E)0.01〜2重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、ゴム含有グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)からなる樹脂組成物(F)とポリ乳酸樹脂(D)の220℃、1000s−1における溶融粘度(η)の関係が次の範囲にあることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
0.30≦η(D)成分/η(F)成分≦0.80
【請求項2】
ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(ア)以外の成分、ビニル系共重合体(B)および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の混合物のSP値が19.8〜21.1(J/cm1/2の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム含有グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体(ア)以外の成分およびビニル系共重合体(B)のSP値が共に19.8〜21.1(J/cm1/2の範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
さらにポリ乳酸樹脂(D)100重量部に対してカルボジイミド化合物を0.1〜10重量部含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2012−87296(P2012−87296A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204576(P2011−204576)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】