説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法

【課題】より高いレベルの、安定した耐衝撃性と高い流動性の両立。
【解決手段】粉末状ポリフェニレンエーテルに対し、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を配合してなるプリブレンド物を、残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を安定供給することにより、耐衝撃性の安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得る為の製造方法及び、安定供給可能なプリブレンド物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイ系樹脂組成物は優れた流動性や高い衝撃性を有するため、非常に幅広い用途で使用されるポリマーアロイである。ポリアミドとポリフェニレンエーテルは非相溶であるため、相溶化剤が配合されて使用されている場合が多い。相溶化剤は、エラストマーを内包するポリフェニレンエーテル相とポリアミド相との界面を補強する目的で添加され、その量は衝撃強度と流動性に大きく関与する。つまり、相溶化剤の量を増やすことにより耐衝撃性は向上するが、流動性は大きく低下する。
これら相溶化剤に関する従来の技術としては、例えばポリアミドとポリフェニレンエーテルに炭素−炭素二重結合と酸基等を同時に併せ持つ化合物とからなる組成物に関する開示(例えば、特許文献1参照。)、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及びポリカルボン酸からなる組成物に関する開示(例えば、特許文献2参照。)等がある。
【0003】
また、相反する特性である流動性と衝撃性を両立させる技術としては、例えば、特定粘度のポリアミド及び変性ポリフェニレンエーテルよりなる組成物がメルトフローレートとアイゾッド衝撃強度のバランスに優れるという技術の開示(例えば、特許文献3参照。)、特定粘度のポリフェニレンエーテル、相対粘度の異なる2種のポリアミド、相溶化剤及びエラストマーよりなる樹脂組成物が、流動性と耐衝撃性等の機械的特性に優れた樹脂組成物を与えるという技術の開示(例えば、特許文献4参照。)、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良用ポリマー、ポリフェニレンエーテルとポリアミドの相溶化剤、及びポリブテン又はオルガノシロキサン混合物よりなる組成物が、耐衝撃性と高せん断下での流動性に優れるという技術の開示(例えば、特許文献5参照。)等がある。
しかしながら、最近の自動車外装材等の大型成形体へのポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイの適用により、相反する特性である流動性と衝撃性を両立という特性への要求は更に高まってきており、従来の観点からの技術開発では対応できないレベルにまで達しつつあるのが実状である。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−49753号公報
【特許文献2】特開表61−502195号公報
【特許文献3】特開平2−209960号公報
【特許文献4】特開平7−126518号公報
【特許文献5】特表2003−516457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より高いレベルの、安定した耐衝撃性と高い流動性の両立という課題を、相溶化剤として有効であるマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物の添加方法を最適化することにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルおよび相溶化剤(マレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物)を含む樹脂組成物を製造する際に、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物と粉末状ポリフェニレンエーテルの一部とを、あらかじめ混合したプリブレンド物を、残りのポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給して製造することにより上述した課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
さらには、粉体状ポリフェニレンエーテルと、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物のプリブレンド物が、加熱することなく黄色に変色する事を見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明はポリアミド及びポリフェニレンエーテルと、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、粉末状ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物50〜200質量部を配合してなるプリブレンド物を、残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給する事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、並びに粉末状ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる化合物50〜200質量部よりなる事を特徴とするプリブレンド物とに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法を用いることにより、少量の相溶化剤(マレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物)を安定的に供給することが可能となり、少ない相溶化剤量で高い流動性と安定した耐衝撃性を発現することが可能となり、特に大型成形品や複雑な形状を有した小型成形品に有用である。
また、本発明のプリブレンド物は、加熱することなく黄色に変色し、粉末状ポリフェニレンエーテルとの識別性に優れ、取り違えや誤操作の防止に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、上述の通り、本発明は、ポリアミド及びポリフェニレンエーテルと、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、粉末状ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物50〜200質量部を配合してなるプリブレンド物を、残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給する事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、並びに粉末状ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる化合物50〜200質量部よりなる事を特徴とするプリブレンド物に関するものである。
【0010】
本発明で用いるマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤として使用される。
本発明の製造方法で最も重要なことは、ポリアミド及びポリフェニレンエーテル、と粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を含む熱可塑性樹脂組成物を製造するにあたり、相溶化剤として粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を使用し、該相溶化剤とポリフェニレンエーテルの一部とをプリブレンドし、該プリブレンド物を残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給することにある。好ましくは、プリブレンド物のみを他の成分とは異なる供給装置を用いて押出機に供給することが望ましい。
【0011】
上述のように、本発明において、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物は、あらかじめポリフェニレンエーテルの一部とブレンドしたプリブレンド物として添加する必要がある。
本発明においてこれら化合物は、粉体又は顆粒の形状である必要がある。安定した耐衝撃性と高い流動性を、低い濃度で実現する為には、塊状、ペレット状の形状は好ましくない。更には、粉体又は顆粒の形状の中でも、線径1.4mmのステンレス鋼線よりなる6メッシュ(目開き3.1mm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過する粒子を80質量%以上100質量%以下の量で含む粉体または顆粒である事が望ましい。より好ましくは90質量%以上100質量%以下、最も好ましくは95質量%以上99質量%以下である。凝集等を起こして塊状になっているものが混在している場合は、ポリフェニレンエーテルとのブレンドの前に、ミキサーや粉砕機等で上述の粒子になるよう破砕し、実質的に使用する該化合物の全てが、上述のこの粒子形状になっている事が望ましい。
【0012】
この際、該化合物とプリブレンドされるポリフェニレンエーテルも粉体状のポリフェニレンエーテルである必要がある。具体的な粒子径のサイズとしては、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過しない微粒子を60質量%以上99質量%以下の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルであることが望ましく、80質量%以上99質量%以下の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルがより好ましい。
プリブレンド物に供されるポリフェニレンエーテルの量としては、すべてのポリフェニレンエーテルの量を100質量%としたとき、5質量%未満が好ましく、より好ましくは、0.01質量%以上3質量%未満であり、最も好ましくは0.01質量%以上1質量%未満である。
【0013】
また、粉体状または顆粒状のマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物と粉体状ポリフェニレンエーテルの一部とのプリブレンド物中における両者の比は、ポリフェニレンエーテルを100質量部としたとき、該化合物が50〜200質量部である事が望ましい。より好ましくは、ポリフェニレンエーテルを100質量部としたとき、該化合物が70〜150質量部の範囲内であり、最も好ましくはポリフェニレンエーテルを100質量部としたとき該化合物が80〜120質量部の範囲内である。
該プリブレンド物には、必要に応じて過酸化物を含ませても構わない。この場合、好ましい過酸化物としては、1分半減期温度が150℃〜200℃の範囲内にある過酸化物が挙げられる。また、過酸化物の形態としては液体・固体のいずれでも構わないが、取り扱い性・安全性を考慮すると、固体のほうが望ましい。この場合、固体の過酸化物を使用する方法、固体物質(例えばシリカ・タルク・炭酸カルシウム等)に担持または含浸させたものであっても構わない。
過酸化物を使用する場合の好ましい量は、すべてのポリフェニレンエーテル100質量部に対して、0.001質量〜1質量部である。より好ましくは、0.1質量部〜0.5質量部である。
【0014】
また、該プリブレンド物中の過酸化物の好ましい量は、粉末状ポリフェニレンエーテルと相溶化剤としての粉体状または顆粒状のマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物の合計量を100質量部としたとき、10〜200質量部である。より好ましくは、20〜100質量部である。
本発明におけるプリブレンド物の調製方法は特に制限はなく、いずれの方法を用いても構わない。混合方法を具体的に例示すると、粉体状ポリフェニレンエーテルの一部と該化合物及び必要により過酸化物をヘンシェルミキサーを用いて混合する方法、粉体状ポリフェニレンエーテルの一部と該化合物及び必要により過酸化物をタンブラーブレンダーを用いて混合する方法、粉体状ポリフェニレンエーテルの一部と該化合物及び必要により過酸化物をスクリューブレンダーを用いて混合する方法等が挙げられるが、いずれの方法を用いても構わない。
【0015】
また、混合温度に関しても特に制限は無く、例えば、ポリフェニレンエーテルとマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物を、ポリフェニレンエーテルのガラス転移点以上の温度で混合する方法、マレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれら無水物の融解温度以上ポリフェニレンエーテルのガラス転移点未満の温度で混合する方法、マレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物の融解温度未満の温度で混合する方法等が挙げられる。これらの中でも有効なのが、マレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれら無水物の融解温度未満の温度で混合する方法であり、その中でも特に室温(具体的には0℃〜30℃)で混合することが好ましい。
【0016】
本発明において使用可能な粉体状または顆粒状のマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物の中でも、特に好適な化合物の例としては、マレイン酸、クエン酸またはその無水物が挙げられ、その中でも無水マレイン酸が最も好ましい。
粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物の組成部中の量は、すべてのポリフェニレンエーテル100質量部としたとき、0.01〜1質量部である事が望ましい。より好ましくは、0.05〜0.5質量部であり、最も好ましくは0.1〜0.3質量部である。
【0017】
本発明においては相溶化剤として使用可能な粉体状または顆粒状のマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物以外にも追加使用が可能である。これら追加可能な相溶化剤としては、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良するものであれば特に制限はない。その例としては、特開平8−8869号公報及び特開平9−124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能である。これらの好ましい量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜5質量部である。
以下、本発明で使用することのできる各成分について詳細に説明する。
本発明で使用できるポリフェニレンエーテルとは、式(1)の構造単位からなる、ホモ重合体及び/または共重合体である。
【0018】
【化1】

【0019】
〔式中、Oは酸素原子、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
【0020】
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
【0021】
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
【0022】
本発明において使用するポリフェニレンエーテルは粉体状のポリフェニレンエーテルである必要がある。具体的な粒子径のサイズとしては、上述のとおり、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過しない微粒子を60質量%以上99質量%以下の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルであることが望ましく、80質量%以上99質量%以下の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルがより好ましい。
また、本発明では、スチレン系熱可塑性樹脂をポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対し、50質量部未満の量であれば配合しても構わない。
【0023】
本発明でいうスチレン系熱可塑性樹脂とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部以下である。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部以下の量で添加しても構わない。
本発明で使用することのできるポリアミドの種類としては、ポリマー繰り返し単位中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
【0024】
一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
上記ジアミンとしては大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンが挙げられる。
【0025】
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
ラクタム類としては、具体的にはε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
【0026】
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸は、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。
特に本発明で有用に用いることのできるポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン),6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6・6/6・T、ポリアミド6・6/6・I、ポリアミド6/6・T/6・I、ポリアミド6・6/6・T/6・I、ポリアミド6/12/6・T、ポリアミド6・6/12/6・T、ポリアミド6/12/6・I、ポリアミド6・6/12/6・Iなどが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。
これらの中で、好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/6・6等が挙げられる。更に好ましくはポリアミド6、ポリアミド66またはこれらの混合物である。
【0027】
本発明で使用できるポリアミドの末端基は、官能化ポリフェニレンエーテルとの反応に関与するため、重要である。ポリアミド樹脂は末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、一般的にカルボキシル基濃度が高くなると、耐衝撃性が低下し、流動性が向上し、逆にアミノ基濃度が高くなると耐衝撃性が向上し、流動性が低下する。
本発明においては、アミノ基/カルボキシル基濃度比で、1.0〜0.1の範囲内のものが好ましく使用可能である。より好ましいアミノ基/カルボキシル基濃度比は0.8〜0.2の範囲内であり、更に好ましくは0.6〜0.3の範囲内である。
【0028】
また、本発明において、ポリアミドとしてポリアミド混合物を用いる場合は、用いるポリアミドの全ての末端基濃度比が上述の範囲内であることがより好ましい。
これらポリアミド樹脂の末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
また、本発明においては、ポリアミド樹脂の耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
【0029】
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl 、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルカリ金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤および、又はアルカリ金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、合計量としてポリアミド樹脂の100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
これらの添加方法は、特に制限はないが、重合時にモノマーと共存させて重合しても、押出加工時に固体あるいは、水等に溶解した液体として加えても構わない。
【0030】
また、本発明においては、上述した金属系安定剤の他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。有機安定剤の例としては、イルガノックス1098等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
これら有機安定剤の中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用がより好ましい。
これら有機安定剤の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂の100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
さらに、上記の他にポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等もポリアミド100質量部に対して10質量部以下の量で添加してもかまわない。
本発明においてはエラストマーを添加しても構わない。
【0031】
本発明で用いることができるエラストマーに関しては特に制限はないが、好ましく使用できるものとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体と略記)である。
ここでいう芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0032】
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(a)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(b)がa−b型、a−b−a型、a−b−a−b型のから選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
【0033】
これらの中でもa−b−a型、a−b−a−b型がより好ましく、更にはa−b−a型が最も好ましい。
結合形式の異なるブロック共重合体混合物の好ましい混合形態は、a−b−a型ブロック共重合体とa−b型ブロック共重合体の混合物、a−b−a型とa−b−a−b型ブロック共重合体の混合物、a−b−a−b型とa−b型のブロック共重合体の混合物等が挙げられる。
また、本発明で使用することのできるブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上であり、より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0034】
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
また、本発明においては、国際公開特許WO02/094936号公報に記載されてあるような、全部又は一部が変性されたブロック共重合体や、オイルがあらかじめ混合されたブロック共重合体も好適に使用することができる。
本発明において、ポリアミド、及びポリフェ二レンエーテルの各量比は、両者の合計量を100質量%としたときポリアミドが40〜80質量%、ポリフェニレンエーテルが60〜20質量%の比である。より好ましくは、ポリアミドが50〜70質量%、ポリフェニレンエーテルが50〜30質量%の比である。
【0035】
また、本発明における相溶化剤(粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物)の好ましい量はすべてのポリフェニレンエーテル100質量部に対して、0.01〜1質量部である。より好ましくは0.05質量部〜0.5質量部であり、最も好ましくは、0.10質量部〜0.40質量部である。更に、エラストマーを配合する際の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計量を100質量部とした際に、1〜20質量部の範囲内である。より好ましくは3〜15質量部の範囲内であり、最も好ましくは5〜13質量部の範囲内である。
【0036】
さらに、本発明においては、無機フィラーを添加しても構わない。
好ましい無機フィラーの種類としては、ガラス繊維、炭素繊維、二酸化チタン、酸化ケイ素、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれる無機フィラーである。これらの中でも、ガラス繊維、二酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく挙げられる。
本発明においては、無機フィラーの好ましい添加量は、すべての組成物を100質量%としたとき、5〜50質量%である。より好ましくは5〜40質量%である。
本発明では、上記した成分のほかに、本成分の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。これら付加的成分の添加量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計量を100質量部としたとき、15質量部を超えない範囲であることが望ましい。
【0037】
付加的成分の例としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂、無機フィラーと樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック等の着色剤、帯電防止剤、導電性フィラー、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機が挙げられる。これらの中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が最も好ましい。
本発明の製造方法においては、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物と粉体状ポリフェニレンエーテルの一部とをプリブレンドした後、該プリブレンド物を、残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給する事を除くと、制限はなくいずれの方法を用いても構わない。
【0039】
例えば、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、相溶化剤(粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物)等の成分すべてを一括溶融混練しても構わないし、適宜の組み合わせで、溶融混練しても構わない。好ましい溶融混練順序としては、ポリフェニレンエーテルと相溶化剤を溶融混練した後、ポリアミドを添加して溶融混練する方法、ポリフェニレンエーテルとポリアミドの一部及び相溶化剤を溶融混練した後、残余のポリアミドを添加して溶融混練する方法等が挙げられるが、いずれの方法でも構わない。
【0040】
ただし、このときにも、粉体状または顆粒状の形状を有した相溶化剤と粉体状ポリフェニレンエーテルの一部とをプリブレンドした後、該プリブレンド物を、残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給する事は必須である。これらの中では、ポリフェニレンエーテルと相溶化剤を溶融混練した後、ポリアミドを添加して溶融混練する方法、又はポリフェニレンエーテルとポリアミドの一部及び相溶化剤を溶融混練した後、残余のポリアミドを添加して溶融混練する方法が好ましく。ポリフェニレンエーテルと相溶化剤を溶融混練した後、ポリアミドを添加して溶融混練する方法が特に好ましい。また、このとき、エラストマー及び無機フィラー等の付加的成分の溶融混練順序に制限はないが、エラストマー成分はポリフェニレンエーテルと共に添加して溶融混練する方法が望ましく、無機フィラー成分は、ポリアミドと共に添加して溶融混練する方法、もしくはポリフェニレンエーテルとポリアミドを溶融混練した後に添加して更に溶融混練する方法が好ましい。
【0041】
本発明の製造方法において、エラストマーを押出機に添加する方法については特に制限はないが、粉末状ポリフェニレンエーテル、粉末状ポリフェニレンエーテルと相溶化剤(粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物)よりなるプリブレンド物とは異なる供給装置を用いて押出機に供給する事がより望ましい。また、無機フィラーについても同様で、他の成分とは異なる供給装置をもちいて押出機に供給されることが望ましい。
本発明の製造方法においては、使用可能な押出機のスクリュー径としては特に制限はないが、好ましいのは約20mm以上約200mm以下である。より好ましくは、約40mm以上約125mm以下であり、最も好ましいのは約50mm以上約100mm未満である。
【0042】
また、押出機のL/Dは約20以上約60未満が好ましく、約30以上約60未満がより好ましく、約40以上約60未満が最も好ましい。ここでいうL/Dとは、押出機のスクリューの長さ[L]をスクリューの直径[D]で除した値である。
押出機における下流側供給口の好ましい位置は、第一の下流側供給口が押出機の上流側供給口の位置を起点とし、シリンダー長さを100とした際に、約30〜約70の範囲内の位置である。
溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常約260〜約350℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。好ましくは約270℃〜約330℃の範囲内であり、特に下流側供給口までを約300℃〜約330℃とし、下流側供給口以降を約270〜約300℃の範囲内とする事が望ましい。
【0043】
本発明の製造方法においては、時間あたりの生産量(押出機吐出量)が500kg以上である場合に、より大きな効果を発現する。少ない相溶化剤量で高い流動性と安定した耐衝撃性を発現するには、時間あたりの生産量を500kg以上とする事が望ましい。この理由としては、時間あたりの生産量が500kg未満の場合においては、プリブレンド物の時間あたりの供給量が小さくなりすぎる事が挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0044】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[製造例1]ポリフェニレンエーテルA(以下単にPPE−Aと略記)の調製
ポリフェニレンエーテル[S201A:旭化成ケミカルズ(株)製]をトルエン中に溶解し、13質量%の溶液を得た。このときトルエンを80℃に加温しながら溶解した。
次に、濃縮槽にこの溶液を移し、窒素雰囲気下、常圧120℃でトルエンを蒸発除去し、80℃における溶液粘度が1000mPa・sになるまで濃縮した。なお、このときの溶液粘度は東京計器製のB型粘度計により測定した。このとき蒸発除去されたトルエン量から濃縮溶液中のトルエン量を計算により求めた。
次に、往復回転式攪拌翼付きの固形化槽中にトルエン/メタノール質量比0.5とした混合溶媒を、固形化後の重合溶媒と混合溶媒の総和中のトルエン/メタノール質量比が0.83となるように仕込み、攪拌しながら混合溶媒中に濃縮重合反応液を送液ポンプで滴下し、ポリフェニレンエーテルの粒子を得た。
得られたポリフェニレンエーテル粒子を含むトルエン/メタノール混合溶液中のポリフェニレンエーテル粒子を遠心分離機をもちいて濾別し、ポリフェニレンエーテルウェットケーキを得た。
【0045】
更にこのポリフェニレンエーテルウェットケーキを135〜140℃で6時間以上乾燥し、ポリフェニレンエーテルの乾燥粒子を得た。尚、このとき乾燥機中には窒素を5Nm3/hで流しながら乾燥した。
得られた乾燥粒子を20g採取し、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)の篩を用いて、TNK篩振動機(タナカ化学機器社製)を用いて10分間振動し篩をかけることで145メッシュを通過する粒子と通過しない粒子に分けた。このとき、メッシュの篩を通過せずに残ったポリフェニレンエーテル粒子の質量を測定し、質量%として求めたところ、83質量%であった。
【0046】
[製造例2]ポリフェニレンエーテルB(以下単にPPE−Bと略記)の調製
往復回転式攪拌翼付きの固形化槽中に仕込む溶媒をメタノールのみとした以外は製造例1と同様の方法で実施し、ポリフェニレンエーテルの粒子を得た。このポリフェニレンエーテルのメッシュの篩を通過せずに残ったポリフェニレンエーテル粒子の質量を測定し、質量%として求めたところ、66質量%であった。
【0047】
[例1]プリブレンド物−1(以下、PB−1と略記)の調製
相溶化剤として三菱化学(日本)社製のペレット形状の無水マレイン酸を用い、表1記載の割合で、PPE−A及び過酸化物としてのパーヘキサ25B−40(過酸化物をシリカに含浸させた固体状で、過酸化物濃度40質量%:以下単に過酸化物と略記)とともに20リットルの容積の回転式タンブラーブレンダーにて混合した。このときの回転数は50rpmであり、混合時間は約2分であった。
プリブレンド物を透明なポリエチレン袋に入れ、約30分間放置し、色の変化を確認した。結果は表1に記載した。(なお、ブレンド当初の色は白色であった。)
次に、プリブレンド物を、K−トロン社製(スイス国)のK2−ML−S60タイプフィーダー(二軸スクリュータイプ、アジテーターなし)に投入し、5kg/hの量で約1時間、フィードし、供給安定性を確認するとともに、所定時間供給後の、フィーダースクリュー部への付着状況を確認した。
用いたペレット状の無水マレイン酸の6メッシュの織金網通過量を測定するため、無水マレイン酸を20g採取し、線径1.4mmのステンレス鋼線よりなる6メッシュ(目開き3.1mm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)の篩を用いて、TNK篩振動機(タナカ化学機器社製)を用いて10分間振動し篩をかけることで6メッシュを通過する無水マレイン酸と通過しない無水マレイン酸に分けた。このとき、メッシュの篩を通過した無水マレイン酸の質量を測定し、質量%として求めたところ、75質量%であった。
【0048】
[例2]プリブレンド物−2(以下、PB−2と略記)の調製
相溶化剤として、ACROS ORGANICS社(ドイツ国)製の顆粒状の無水マレイン酸を用い、表1記載の割合で実施例1と同様に回転式タンブラーブレンダーにて混合し、同様に評価した。結果は表1に記載した。
また、用いた顆粒状の無水マレイン酸の6メッシュの織金網通過量も実施例1と同様に実施したところ、99.7質量%であった。
【0049】
[例3、4及び5]プリブレンド物−3、4及び5(以下、PB−3、PB−4及びPB−5と略記)の調製
ポリフェニレンエーテルとしてPPE−Bを用い、表1記載の組成に変更した以外はすべて例2と同様に実施し評価した。結果は表1に併記した。
【0050】
[例6]
上流側に1箇所、1箇所の下流側供給口を設けた、L/D=48の同方向回転二軸押出機[ZSK70MC:コペリオン社製,12の温度調節ブロック(1ブロックあたりのL/Dは4)とオートスクリーンチェンジャーブロックを有し、上流側供給口:第1ブロック、下流側供給口:第6ブロック、減圧吸引で揮発成分除去を行う為のベントポート:第5ブロック及び第10ブロック]の最高シリンダー温度を320℃に設定し、上流側供給口より、ポリフェニレンエーテル[S201A:旭化成ケミカルズ(株)製](以下、単にPPEと略記)を30質量部、例1で作成したPB−1を0.2質量部、エラストマー成分としてスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体[クレイトンG1651:クレイトンポリマーズ(株)製](以下、単にSEBSと略記)を10質量部のそれぞれを、別々のフィーダーより押出機に供給し、溶融混練し、引き続き、下流側供給口よりポリアミド6,6[バイダイン21ZLV:ソルーシアインク社(米国)製](以下、単にPA66−Aと略記)を58質量部、ポリアミド6[宇部ナイロン1013B:宇部興産(株)製](以下、単にPA6と略記)を5質量部、顔料としてのカーボンブラック0.25質量部(以下、単にCBと略記)をタンブラー式ブレンダーで混合したものを供給し、溶融混練を実施しペレットとして得た。この時、スクリュー回転数は460rpm、吐出量は1000kg/hであり、第5バレル及び第10バレルからは揮発成分を除去するため減圧吸引を実施した。
【0051】
運転時間は各例とも約60分間とし、運転開始より10分後に最初のサンプリングを実施し、その後5分おきにサンプリングを実施し、合計10点のサンプルを得た。
得られたペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製:IS80EPN)を用いて、溶融樹脂温度290℃、金型温度90℃で、ISO294−1に記載されている多目的試験片を成形し、アルミ防湿袋中にて23℃で48時間静置した。
次に、多目的試験片の両端を切り取った試験片を用いて、ISO179−1993に従いエッジワイズ方向のアイゾッド衝撃強さを測定した。この評価はサンプリングしたすべてのサンプルに対して実施し、各例あたり10サンプルの結果を得た。その10サンプルの測定結果は10点の平均値とともに、最大値と最小値及びバラツキの指標である標準偏差を記載した。
【0052】
流動性を測定するため、射出成形機(日精樹脂株式会社製:FE120)を用いてスパイラル流動長を測定した。スパイラル形状成形品のスパイラル部分の厚みは1mmで、幅は10mmであった。またシリンダー温度設定は290℃で、金型温度は80℃とした。また、射出速度は最大とし、射出圧力は51MPa、85MPa及び118MPaの3条件で行った。成形品のサンプリング開始は、3条件とも成形開始から21ショット目からとした。また、成形品は21ショット目から30ショット目までの10サンプル採取し、その加算平均をもってスパイラル流動長とした。なお、スパイラル流動長に関しては、各例の10サンプルのうち、上述のアイゾッド衝撃強度の最大値と最小値を示したサンプルの2点に関してのみ実施した。表2中にはアイゾッド衝撃強度の最大値を示したサンプルのスパイラル流動長を「スパイラル流動長−1」、アイゾッド衝撃強度の最小値を示したサンプルのスパイラル流動長を「スパイラル流動長−2」として記載した。
【0053】
[例7〜9]
表1記載の組成比に変更した以外はすべて例5と同様に実施した。結果は表2に記載した。なお、例7〜9の組成物の各成分の組成比は例6と同じである。
【0054】
[例10]
例6と同様に設定した押出機の上流側供給口より、PPEを35質量部、例3で作成したPB−3を0.3質量部、エラストマー成分としてSEBSを10質量部及び流動性改良材としてのホモポリスチレン[スタイロン685:ダウケミカル社(米国)製](以下、単にPSと略記)5質量部を、押出機に供給し、溶融混練し、引き続き、下流側供給口よりポリアミド6,6[バイダイン48BX:ソルーシアインク社(米国)製](以下、単にPA66−Bと略記)を50質量部、顔料としてのCB0.25質量部を供給し、溶融混練を実施しペレットとして得た。この時、スクリュー回転数は550rpm、吐出量は1000kg/hであり、第5バレル及び第10バレルからは揮発成分を除去するため減圧吸引を実施した。
【0055】
なお、SEBSとPSの組み合わせと、PA66−BとCBの組み合わせは、あらかじめタンブラー式ブレンダーで混合した。また、ポリフェニレンエーテル、PB−3、SEBSとPSのブレンド物及び、PA−66とCBのブレンド物は、それぞれ異なる供給機を用い、押出機に供給した。
得られたペレットを例6と同様に評価し、組成とともに結果を表3に記載した。
スパイラル流動長については、スパイラル形状成形品のスパイラル部分の厚みは2mmとし、シリンダー温度設定を310℃、金型温度を80℃とし、射出圧力を68MPa、及び118MPaの2条件とした以外は例6〜9と同様に実施した。
【0056】
[例11]
使用するポリフェニレンエーテルすべてとPB−3をヘンシェルミキサーで更にプリブレンドし、単独のフィーダーより供給した以外はすべて例10と同様に実施し、評価した。結果を表3に記載した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の製造方法ならびにプリブレンド物を用いて得られた樹脂組成物は、射出成形・押出成形等を経て種々の用途に使用可能である。具体的には、各種機械やコンピューター等の電子機器のハウジング、乗用車・ピックアップトラック・トラクター等の車両内外装部品(フェンダー、バックドア、フード、サイドステップ、ミラーシェル、フロントグリル、ヘッドライトハウジング、リアスポイラー、サイドスポイラー、ダッシュボード、ブロアーホイール等)、エンジンルーム内部品(リレーブロック、コネクター、ライトソケット、バッテリーカバー等)、各種電気製品のインペラー、水周り部品等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド及びポリフェニレンエーテルと、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、粉末状ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物50〜200質量部を配合してなるプリブレンド物を、残余のポリフェニレンエーテルとは異なる供給装置で押出機に供給する事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
粉体状ポリフェニレンエーテルが、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過しない微粒子を60質量%以上の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
粉体状ポリフェニレンエーテルが、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過しない微粒子を80質量%以上の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物が線径1.4mmのステンレス鋼線よりなる6メッシュ(目開き3.1mm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過する粒子を80質量%以上の量で含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
プリブレンド物中の粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物と粉体状ポリフェニレンエーテルの比が、粉体状ポリフェニレンエーテルを100質量部としたとき、該化合物が80〜150質量部である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
プリブレンド物に供されるポリフェニレンエーテルの量が、すべてのポリフェニレンエーテルの5質量%未満である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物の量が、すべてのポリフェニレンエーテル100質量部に対して、0.01〜1質量部である請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
エラストマーを更に含み、エラストマーが粉末状ポリフェニレンエーテル、プリブレンド物とは異なる供給装置より押出機に供給される請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
ポリアミドが、粉末状ポリフェニレンエーテルとプリブレンド物が溶融混練された後に該溶融混練物中に添加され、さらに溶融混練される請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
プリブレンド物中に、過酸化物を更に含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
押出機が二軸押出機であり、かつ時間あたりの生産量(押出機吐出量)が500kg以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
粉末状ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物50〜200質量部よりなる事を特徴とするプリブレンド物。
【請求項13】
粉体状または顆粒状の形状を有するマレイン酸、クエン酸、フマル酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上の化合物の粒子径が、線径1.4mmのステンレス鋼線よりなる6メッシュ(目開き3.1mm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過する粒子を80質量%以上の量で含む請求項12に記載のプリブレンド物。
【請求項14】
粉体状ポリフェニレンエーテルが、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過しない微粒子を60質量%以上の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルである請求項12に記載のプリブレンド物。
【請求項15】
粉体状ポリフェニレンエーテルが、線径65μmのステンレス鋼線よりなる145メッシュ(目開き106μm)の織金網(JIS G3555−1983に準拠)を通過しない微粒子を80量%以上の量で含む粉体状ポリフェニレンエーテルである請求項12に記載のプリブレンド物。

【公開番号】特開2006−232994(P2006−232994A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49218(P2005−49218)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】