説明

熱可塑性重合体およびその製造方法

【課題】高度な耐熱性を有し、従来比、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有するグルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】グルタルイミド環構造単位を含有し、不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下である熱可塑性重合体。また、特定の原重合体を溶融混練により分子内環化せしめ、グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体を製造する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な耐熱性を有しながら、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有する熱可塑性重合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)やポリカーボネート(以下、PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
【0003】
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
【0004】
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されているが、近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性、溶融滞留安定性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化、物性変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性、耐油性も要求される。
【0005】
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、溶融滞留安定性、耐湿熱性、耐傷性、耐油性に劣るといった問題があった。
【0006】
そのため、PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド系単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した共重合体が開発されている。しかし、マレイミド系単量体および無水マレイン酸単量体はメタクリル酸メチルとの反応性が低く、マレイミド系単量体および無水マレイン酸単量体が重合体中に残存する傾向にあり、得られた共重合体は色調および滞留安定性に劣るという課題があった。
【0007】
また、ポリメタクリル酸メチルを溶融下、アンモニア、第一級アミンと反応させて得たグルタルイミド環を含有する重合体が開示されている(例えば特許文献1、特許文献2)。これにより、耐熱性は向上するものの、該製造法では、アンモニア、第一級アミンが残存したり、反応系の均一化が困難で均一なイミド化が難しいことから同一組成で安定的に製造を継続することが難しく、組成分布が増大する傾向にあった。また、グルタルイミド環構造単位の含有量のコントロールが難しく、例えば、グルタルイミド環含有量が50重量%、更には20重量%といったグルタルイミド環含有量が低い重合体を製造する際には、窒素雰囲気下に用いるアンモニアまたは第一級アミンの使用量を低い範囲に制御する等の手法が考えられるが、グルタルイミド環を前記の低含量範囲で高精度で調節することは困難であった。更に、該製造法では、重合体の構造中に不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位が必ず含まれ、グルタルイミド環構造単位の含有量が95%以下の範囲では、重合体の構造中に不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位が約5〜10重量%の範囲にて含まれる。グルタルイミド環を含有する重合体に、不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位が含まれる場合、光学補償フィルム用途等の光学フィルム用途に用いる際に、湿熱条件下で面内位相差および厚み方向位相差が低下し、加工時の溶融条件下では、不飽和カルボン酸単位の残存により、ゲル化や脱炭酸反応による色調と引張強度等の機械特性の低下が生じる傾向にあった。また、グルタルイミド環を含有する重合体中に不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位が存在する場合、他の樹脂とのアロイとして用いる場合にゲル化等が生じることがあり、制約があった。一方、不飽和カルボン酸単位および酸無水物単位の含有量を低減するべく、グルタルイミド環構造単位の含有量を95%以上に高めることを目指した場合においても、不飽和カルボン酸単位および/または酸無水物単位を完全に除去することは極めて困難であり、逆に、グルタルイミド環構造単位の含有量が95%以下の重合体を得る時と比較して、更に過酷な反応条件が必要となるため、重合体の著しい着色と、透明性(ヘイズおよび全光線透過率)の低下が起こり、かつ重合体自体の劣化による引張強度および引張伸び等の機械特性も低下するものであった。以上により、該製造法で得た重合体は、近年の光学用途等で要求される無色性に対して不十分であり、また、例えば光学フィルム等のフィルムの製造工程で必要となる加工温度、例えば、重合体のガラス転移温度(以下Tgと記載することもある)+130℃から重合体のTg+150℃の範囲での加熱滞留を継続あるいは積み重ねた際に、脱炭酸、脱水、脱アルコール、脱アンモニア、脱第一級アミン、等が生じ、特に光学フィルム用途等で要求される滞留安定性、耐湿熱性が不十分で、滞留後に色調、透明性が低下する傾向にあった。また、該製造法で、イミド化率を例えば80%以下に調整する際には、重合体中にアミド基含有ビニル系単量体が残存する傾向にあり、これにより分子間でのイミド架橋体が生成する傾向にあり、耐湿熱性が低下する傾向にあった。
【0008】
そこで、重合体中の不飽和カルボン酸単位および酸無水物単位を、アルキル化剤として、例えばオルトギ酸エステルを用いたり、あるいはトリエチルアミン等の塩基性化合物を炭酸ジメチル等のアルキル化剤および必要に応じて酸化防止剤と併用して、エステル基に変換する方法が開示されている(例えば特許文献3、特許文献4および特許文献5)。しかし、アルキル化剤による不飽和カルボン酸単位および酸無水物単位の完全エステル化は極めて困難であり、完全エステル化を目指した操作は、同時に重合体の色調、滞留安定性および引張強度を低下させるものであり、特に特許文献3の方法で不飽和カルボン酸単位の完全エステル化を目指した場合は、黄色度が2.0を越えるものが得られ、光学フィルム等の用途においては、色調(黄色度)、滞留安定性(滞留後の色調)および耐湿熱性が不十分であった。また、エステル化が不十分で重合体中に不飽和カルボン酸単位および/または酸無水物単位が残存する場合には、重合体の滞留安定性および耐湿熱性が低下し、一方で完全エステル化を目指して、高温で長時間溶融滞留させたり、塩基性化合物または酸性化合物を用いたりした場合には、特に重合体の色調と滞留安定性(滞留後の色調)が悪化し、重合体の劣化や重合体とアルキル化剤または塩基性化合物との副反応、アルキル化剤や副生成物の残存等により引張強度等の機械特性が低下する傾向にあり、更に未溶融異物、有機溶媒に未溶解の異物の原因になることもあった。また、他の樹脂とのアロイとして用いる場合にも、得られるアロイの色調(黄色度)が悪化する傾向にあった。
【0009】
一方、グルタルイミド環を含有する重合体の他の製造法として、(メタ)アクリル酸エステル単位と(メタ)アクリルアミド単位からなる共重合体を試験管内で静置させ加熱する方法が開示されている(例えば特許文献6)。しかし、該製造法のように静置下での加熱を行った場合、分子内環化反応の飽和または完結に5時間以上の長時間を要すため、長時間に渡って熱が加えられ、また、局所的に温度が上がる場所ができるため温度制が困難で、特に設定温度を上げた際には、局所的に温度が上がる部分の温度が極めて高くなるため、以上により、色調とヘイズが悪化するという課題があった。また、静置下での加熱のため、分子内環化反応で発生するアルコールやアンモニア、第一級アミン等の抜けも悪く、残存かつ分子内環化反応が促進されず、また、静置下での加熱のため、均一な反応も不可能であるため、グルタルイミド環構造単位の含有量等の組成分布の増大化等によるヘイズの悪化が生じ、また、色調、滞留安定性が低下し、加熱条件によっては分子間でのイミド架橋体が生成する傾向にあり、引張強度および耐湿熱性が低下する傾向にあった。
【0010】
そこで、有機溶媒中、酸性化合物の存在下で分子内イミド化反応せしめて、グルタルイミド環を含有する重合体を製造する方法が開示されている(例えば特許文献7)。しかし、該製造法においても、分子内環化反応の飽和または完結に長時間を要し、かつ有機溶媒が残存するため、色調および透明性(全光線透過率およびヘイズ)が悪化する傾向にあり、また、重合体のTg+130℃から重合体のTg+150℃の範囲での溶融滞留を行った際に、色調が悪化する傾向にあった。また、環化触媒が必要となることから、これらの触媒が重合体中にそのまま、あるいはカウンターイオン、もしくは変性物として残存し、光学フィルム用途で要求される色調、滞留安定性および耐湿熱性に対して十分ではなかった。
【特許文献1】米国特許第4246374号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭58−5306号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】日本特許第2980565号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2002−338624号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2007−9191号公報(11頁、実施例7〜9)
【特許文献6】特開昭60−20904号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開平2−153904号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、高度な耐熱性を有しながら、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有する熱可塑性重合体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のグルタルイミド環構造単位を含有し、不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする熱可塑性重合体が、耐熱性、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有することを見出した。また、アミド基含有ビニル系単量体単位を含有する原重合体を溶融混練により分子内環化反応せしめることで、高度な耐熱性を有しながら、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有するグルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち本発明は、
〔1〕下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含有し、下記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする熱可塑性重合体、
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R2は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【0016】
【化2】

【0017】
(ただし、R4は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
〔2〕前記熱可塑性重合体中の前記不飽和カルボン酸単位の含有量が1.0重量%以下であることを特徴とする〔1〕に記載の熱可塑性重合体、
〔3〕前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの全光線透過率が91%以上であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性重合体、
〔4〕前記熱可塑性重合体が(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することにより分子内環化反応せしめて得られるものであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体、
〔5〕前記熱可塑性重合体が(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位および(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む原重合体(A)を溶融混練することにより分子内環化反応せしめて得られるものであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体、
〔6〕前記熱可塑性重合体が(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含むことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体、
〔7〕前記熱可塑性重合体をガラス転移温度+150℃の温度にて30分間溶融滞留させた際の黄色度の変化量(ΔYI)の絶対値が2.0以下であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体、
〔8〕前記熱可塑性重合体が(i)グルタルイミド環構造単位を1〜99重量%含有することを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体、
〔9〕(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することを特徴とする熱可塑性重合体の製造方法、
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
〔10〕(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位および(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することを特徴とする〔9〕に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
〔11〕前記溶融混練を押出機を用いて行うことを特徴とする〔9〕または〔10〕に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
〔12〕前記押出機が、ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機であることを特徴とする〔11〕に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
〔13〕第二工程後の熱可塑性重合体中に残存する(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位が5重量%以下であることを特徴とする〔9〕〜〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体の製造方法、
〔14〕前記熱可塑性重合体がジメチルスルホキシドに溶解することを特徴とする〔9〕〜〔13〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体の製造方法、
〔15〕〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の熱可塑性重合体からなる成形品、
〔16〕成形品がフィルムである〔15〕記載の成形品、
〔17〕フィルムが光学補償フィルムである〔16〕記載のフィルムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱可塑性重合体は、高度な耐熱性を有しながら、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有する。従って、本発明の熱可塑性重合体は、光学材料、機械関連部品、精密機械関連部品、電気機器のハウジング、情報機器関連部品等の多種多様な用途に好適に用いることができ、特に光学補償フィルム等の光学フィルム用途に好ましく用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の熱可塑性重合体およびその製造方法について具体的に説明する。
【0024】
本発明の熱可塑性重合体は、下記一般式(1)で表される(i)特定のグルタルイミド環構造単位を含有し、不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする熱可塑性重合体である。
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【0027】
前記一般式(1)のR1は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかであり、前記炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R1として好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であることが好ましく、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、更に好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0028】
R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかであり、前記炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R3として好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であることが好ましく、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたナフチル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたベンジル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたシクロアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、更に好ましくは水素原子、シクロヘキシル基、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基であり、例えば、(i)グルタルイミド環構造単位の含有量が20重量%未満といった少ない含有量で耐熱性を向上させる観点および少ない含有量で面内位相差を発現する観点から、水素が最も好ましい。
【0029】
本発明の熱可塑性重合体中の下記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位(以下、不飽和カルボン酸単位と記載することもある)の含有量は、本発明の熱可塑性重合体の黄色度、滞留安定性、引張強度および耐湿熱性(本発明の熱可塑性重合体を加工してなるフィルム、特に延伸フィルムの湿熱処理前後での面内位相差Reの変化量、厚み方向位相差Rthの変化量の低減もしくはゼロ化)の向上の観点から、2.0重量%以下であり、好ましくは1.0重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下であり、更に好ましくは0.3重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下であり、最も好ましくは0.0重量%、すなわち含有しないことである。(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめる製造法により、不飽和カルボン酸単位を含有せず、前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することができる。
【0030】
【化6】

【0031】
(ただし、R4は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【0032】
前記一般式(2)においてR4の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R4として用いられるもののうち、当業者に使用される頻度の高いものをより詳しく例示すれば、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、より使用される頻度の高いものとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、更に使用される頻度の高いものとしては、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に使用される頻度の高いものとしては、水素原子またはメチル基であり、最も使用される頻度の高いものとしてはメチル基である。このような不飽和カルボン酸単位の具体例としては特に制限はないが、対応するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等の無水マレイン酸の加水分解物、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等の無水イタコン酸の加水分解物等が挙げられ、前記したこれら不飽和カルボン酸のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、亜鉛塩等の金属塩も用いることができる。
【0033】
また、本発明の熱可塑性重合体中に含まれる下記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位(以下、グルタル酸無水物単位と記載することもある)の含有量は特に制限はないが、本発明の熱可塑性重合体の耐湿熱性の向上の観点から、2.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0重量%以下であり、更に好ましくは0.5重量%以下であり、特に好ましくは0.3重量%以下であり、最も好ましくは0.0重量%、すなわち含有しないことである。尚、下記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位は、隣接する2単位の不飽和カルボン酸単位の加熱による脱水環化反応、不飽和カルボン酸単位と隣接する不飽和カルボン酸エステル単位の加熱による脱アルコール反応によっても形成することができる。
【0034】
【化7】

【0035】
(ただし、R5、R6は、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【0036】
前記一般式(3)において、R5、R6としては、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。前記炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R5、R6として用いられるもののうち、使用される頻度の高いものをより詳しく例示すれば、同一または相異なるもので、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、より使用される頻度の高いものとしては、同一または相異なるもので、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、更に使用される頻度の高いものとしては、同一または相異なるもので、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に使用される頻度の高いものとしてはR5、R6は、同一または相異なるもので、水素原子またはメチル基であり、最も使用される頻度の高いものとしては、R5、R6共にメチル基である。熱可塑性重合体中のグルタル環無水物単位は、従来公知の方法でアルキル化を試みても、カルボン酸単位と比較して、アルキル化が困難で、その全量をアルキル化することは不可能であった。また、酸価の測定においても、熱可塑性重合体の構造中に、特にR5、R6の双方が炭素数1〜20の有機残基という状態で導入されている場合、耐加水分解性が向上しているため、グルタル環無水物単位の全量を酸価測定で測定することは困難であった。そのため、グルタル環無水物単位の含有量は、13C−NMRあるいはIRで確認することが好ましい。
【0037】
(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめる製造法により、前記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位を含有せず、前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することができる。原重合体(A)を溶融混練することにより分子内環化反応せしめることで、フィルムとしたときに黄色度が低く、ヘイズ値の小さい無色透明な(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することができる。
【0038】
本発明の熱可塑性重合体のガラス転移温度(以下、Tgと記載することもある)としては、110℃以上であり、ガラス転移温度は、実用耐熱性の観点から好ましくは115℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは125℃であり、特に好ましくは130℃以上であり、最も好ましくは135℃以上である。また、上限としては、特に制限はないが、通常230℃以下であり、溶融流動性の観点から好ましくは220℃以下であり、より好ましくは210℃以下であり、更に好ましくは200℃以下であり、特に好ましくは180℃以下であり、最も好ましくは170℃以下である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度である。
【0039】
また、本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物は、その厚さ40μmのフィルムの黄色度(Yellowness Index)(以下YIと記載することもある)が2.0以下であり、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.8以下であり、更に好ましくは0.7以下であり、特に好ましくは0.6以下であり、最も好ましい態様においては0.3以下と極めて高度な無色性を有する。上記において黄色度は、本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の各々の厚さ40μmのフィルムについて、JIS K7105−1981に準拠し、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した値である。熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の厚さ40μmのフィルムは、それぞれのペレットを80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は、熱可塑性重合体の場合はガラス転移温度+130℃の温度に設定、熱可塑性樹脂組成物の場合はマトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃の温度に設定)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却し作製する。尚、フィルムの厚さは、JIS−K7130−1999に準拠して測定する。尚、本発明において、熱可塑性樹脂組成物とは、ゴム質含有重合体(B)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物を指す。
【0040】
熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれのフィルムについて、熱可塑性重合体のガラス転移温度+150℃(熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+150℃)の温度でプレス金型に挟みこみ、そのままの温度で30分間滞留した後にプレス成形して得た、厚さ40μmのフィルムの黄色度をJIS K7105−1981に準拠して測定し、滞留させる前の厚さ40μmのフィルムの黄色度との変化量(ΔYI)の絶対値を求めた際、ΔYIの絶対値は特に制限はないが、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.0以下であり、最も好ましくは0.8以下である。特に、原重合体(A)の溶融混練による分子内環化反応により製造することが、滞留後の厚さ40μmのフィルムの黄色度と滞留させる前の厚さ40μmのフィルムの黄色度との変化量(ΔYI)の絶対値を前記の好ましい範囲に制御する上で好ましい。本発明の熱可塑性重合体は、重合体中の不飽和カルボン酸単位が2.0重量%以下であり、残存有機溶媒の含有量が低いため、滞留後の厚さ40μmのフィルムの黄色度と滞留させる前の厚さ40μmのフィルムの黄色度との変化量(差)の絶対値が小さく、滞留安定性に優れる。
【0041】
本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の厚さ40μmのフィルムについて、JIS K7105−1981に準拠して測定したヘイズ値は2.0%以下であり、好ましくは1.8%以下、更には1.5%以下であり、より好ましくは0.9%以下であり、更に好ましくは0.7%以下であり、特に好ましくは0.5%以下であり、最も好ましくは0.2%以下である。
【0042】
本発明の(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)の下限は、特に制限はないが、リビング重合で分子量分布が1.0に近い原重合体(A)を合成し、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体に誘導することで、分子量分布が1.0に近い熱可塑性重合体を得ることも可能であるが、熱可塑性重合体の溶融流動性の向上の観点からより好ましくは1.1以上であり、更に好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは1.6以上、最も好ましくは1.7以上である。一方、本発明の熱可塑性重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)の上限は、特に制限はないが、靱性と無色透明性の向上の観点から20.0以下であり、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは5.0以下であり、更に好ましくは4.0以下であり、特に好ましくは3.5以下であり、最も好ましくは3.0以下である。分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を上記の好ましい範囲に制御することにより、本発明の熱可塑性重合体は、高度な耐熱性と無色透明性を有しながら、従来の技術では、両立が困難であった靭性と流動性の両立を達成できるという特徴を有する。尚、本発明における分子量分布とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて、重量平均分子量(絶対分子量)、数平均分子量(絶対分子量)を測定し、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出するものであり、本発明における靱性とは耐衝撃性と引張伸度を指す。すなわち、本発明において高靭性とは耐衝撃性に優れつつ、引張伸度においても良好に兼ね備えていることを指す。従来技術では、耐衝撃性を向上させると流動性が低下する傾向にあり、引張伸度を向上させても流動性が低下する傾向にあった。また、引張伸度と耐衝撃性の両立も課題であったが、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を本発明の特定の範囲に制御することにより、耐衝撃性、引張伸度および流動性のバランスに高度に優れる。
【0043】
本発明の熱可塑性重合体の重量平均分子量の下限は、特に制限はないが好ましくは10000以上であり、より好ましくは20000以上であり、更に好ましくは30000以上であり、特に好ましくは40000以上であり、最も好ましくは45000以上である。また、その上限は特に制限はないが好ましくは1000000以下であり、より好ましくは500000以下であり、更に好ましくは400000以下であり、特に好ましくは300000以下であり、最も好ましくは250000以下である。
【0044】
熱可塑性重合体の重量平均分子量、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、ジメチルホルムアミドに溶解して、0.3重量%の測定サンプル溶液とし、ジメチルホルムアミドを溶媒として、温度23℃にて、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製、流速:0.8ml/分)を用い、データ処理としてはデータ処理ソフト“ASTRA”( Wyatt Technology社製)を用いて、絶対分子量として重量平均分子量、分子量分布を測定する。
【0045】
本発明の熱可塑性重合体中の(i)グルタルイミド環構造単位の含有量の下限は特に制限はないが、耐熱性向上の観点から熱可塑性重合体100重量%中に1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは3重量%以上であり、更に好ましくは4重量%以上であり、特に好ましくは5重量%以上であり、最も好ましくは6重量%以上である。(i)グルタルイミド環構造単位の含有量の上限は特に制限はなく、熱可塑性重合体100重量%中に100重量%でもよいが、流動性の向上の観点から好ましくは99重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下であり、光弾性係数を低下させる観点から、更に好ましくは20重量%未満であり、特に好ましくは18重量%以下、更には15重量%以下であり、最も好ましくは10重量%以下である。
【0046】
本発明で開示する製造方法、すなわち原重合体(A)を溶融混練により分子内環化反応せしめるという製造法を採用することにより、不飽和カルボン酸単位の副生、アミド基含有ビニル系単量体単位の残存を引き起こさず、かつ色調、透明性および光弾性係数等の光学特性に優れた(i)グルタルイミド環構造単位を20重量%未満の範囲で含有する熱可塑性重合体を製造することができる。従来の製造法では、(i)グルタルイミド環構造単位を20重量%未満とすることは、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する重合体の色調、透明性および光弾性係数等の光学特性を損ねるため、好ましくないとされ、また、メタクリル酸メチル含有ポリマーとアンモニアまたは第一級アミンの反応による製造法では、(i)グルタルイミド環構造単位を20重量%未満に制御すること自体が困難であったが、原重合体(A)を溶融混練により分子内環化反応せしめるという製造法を採用することにより、これらを解決できる。本発明の熱可塑性重合体は、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含んでもよいが、その含有量は5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下であり、滞留安定性および耐湿熱性の観点から最も好ましくは0重量%である。本発明の原重合体(A)を溶融混練により分子内環化させる製造方法を採用することで、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の含有量を0.0重量%とすることが可能となる。ここで、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位は下記一般式(4)で表される。
【0047】
【化8】

【0048】
(ただし、R7は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表し、R8は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【0049】
ここで、R7の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよいが、R7として好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換されたフェニル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれる基であり、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲン基あるいはアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれる基であり、更に好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に好ましくはメチル基である。R8の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R8として好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれるいずれかであり、より好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基から選ばれる基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基から選ばれる基であり、更に好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に好ましくは水素原子またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0050】
(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の種類の好ましい具体例としては、特に制限はないが、対応するモノマーとして、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−イソブチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ペンチルアクリルアミド、N−n−ペンチルメタクリルアミド、N−n−へキシルアクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−クロロフェニルアクリルアミド、N−クロロフェニルメタクリルアミド、N−ジクロロフェニルアクリルアミド、N−ジクロロフェニルメタクリルアミド、N−トリクロロフェニルアクリルアミド、N−トリクロロフェニルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができ、特にN−メチルメタクリルアミド、メタクリルアミドが好ましく、最も好ましくはメタクリルアミドである。
【0051】
(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体中には、溶融流動性の向上の観点から下記一般式(5)で表される(iii)不飽和カルボン酸エステル単位が含まれることが好ましい。
【0052】
【化9】

【0053】
(ただし、R9は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表し、R10は炭素数1〜22の有機残基を表す)
【0054】
ここで、R9の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R9として好ましくは、水素、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された脂環式炭化水素基から選ばれる基であり、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基から選ばれるいずれかであり、更に好ましくは水素および無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0055】
R10の炭素数1〜22の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R10として好ましくは、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数1〜22の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれるいずれかであり、より好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基から選ばれる基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基から選ばれる基であり、更に好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0056】
このような(iii)不飽和カルボン酸エステル単位の好ましい具体例としては特に制限はないが、対応するモノマーとして、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシメチル、アクリル酸ブトキシメチル、メタクリル酸ブトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸ブトキシプロピル、メタクリル酸ブトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル、アクリル酸ブトキシブチル、メタクリル酸ブトキシブチルのほか、これらのハロゲン化物、例えば、アクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−4−メチルおよびメタクリル酸シクロデシル等を挙げることができる。中でも、光学特性、熱安定性に優れる点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましく、とりわけメタクリル酸メチルが好ましい。これらは単独でも、もしくは2種以上の混合物であってもよい。
【0057】
また、(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体中に、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位が含まれる場合、湿熱処理時に吸水速度上昇効果や酸触媒効果等をもたらすため、不飽和カルボン酸単位の増加により、(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体よりなるフィルム、特に延伸フィルムの湿熱処理前後での引張強度が低下し、湿熱処理前後でのRe、Rthの各々の変化量が大きくなる傾向にあり、この傾向は、(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体中に、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位と前記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位が同時に含有される場合には、湿熱処理によるグルタル酸無水物単位の含有量の低下が生じる傾向にあるため、より大きくなる。
【0058】
本発明では、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)、好ましくは(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位と(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含有する原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめる製造法により、不飽和カルボン酸単位の含有量が0.0重量%である、前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することができる。例えば反応点の導入等の目的で本発明の熱可塑性重合体中に不飽和カルボン酸単位が必要である場合は、原重合体(A)に、分子内環化反応後の熱可塑性重合体中の不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下となるのに適切な量の不飽和カルボン酸を共重合させ、溶融混錬による分子内環化反応後に、不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下の範囲で不飽和カルボン酸単位を含む熱可塑性重合体とすることもできる。
【0059】
尚、本発明では、熱可塑性重合体中の不飽和カルボン酸単位とは、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位であり、例えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体等を溶融下、アンモニア、第一級アミンと反応させてグルタルイミド環を含有する重合体を得る製造法において、必ず副生成する不飽和カルボン酸単位、不飽和カルボン酸の共重合により導入される不飽和カルボン酸単位等であり、メルカプトカルボン酸等の従来公知のカルボン酸含有の連鎖移動剤や従来公知のカルボン酸基含有重合開始剤等の重合体の構造の末端等に少量含有されるもの、およびこれらのうち重合体と反応しなく残存したもの、カルボン酸基含有の懸濁安定剤、カルボン酸基含有の乳化剤およびカルボン酸基含有の分散剤等のカルボン酸基含有重合助剤、カルボン酸基含有の各種触媒やカルボン酸基含有酸化防止剤等のカルボン酸基含有添加剤、重合溶媒に含有される微量の酢酸等や重合溶媒脱基時にされる微量の酢酸等のカルボン酸基含有化合物を含まない。また、本発明の熱可塑性重合体中のグルタル酸無水物単位についても、前記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位を指し、グルタル酸無水物環を有する各種添加剤等は含まない。
【0060】
本発明の熱可塑性重合体は、その他の従来公知のラクトン環構造単位、従来公知のシクロオレフィン単位を含有してもよい。
【0061】
また、本発明の熱可塑性重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体単位を含むことができる。この際のビニル系単量体単位の種類の好ましい具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレン等のグリシジル基含有ビニル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドおよびN−アルキル置換フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミンおよびp−アミノスチレン等のアミノ基含有ビニル系単量体、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有ビニル系単量体、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4−ジヒドロキシ−2−ブテン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールメタクリレート、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルおよびビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、メタリルアルコール、アクリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテンおよびα−ヒドロキシメチルスチレン等のアリルアルコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸tert−ブチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテンおよび4−ジヒドロキシ−2−ブテン等の水酸基含有ビニル系単量体、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソプロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、クロル酢酸ビニル、安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、酢酸イソプロペニルおよび酢酸1−ブテニル等のカルボン酸不飽和エステル、α−メチレン−γ−ブチロラクトン等に代表されるエキソ−メチレンラクトン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の従来公知のヒンダードアミン系紫外線安定性単量体、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン等の従来公知のベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の従来公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン等の従来公知のトリアジン系紫外線吸収性単量体などを挙げることができる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0062】
また、熱可塑性重合体中に他のビニル系単量体単位が含まれる場合、その含有量は、本発明の熱可塑性重合体の効果を大きく損ねない範囲内であれば特に制限はないが、50重量%以下であることが好ましく、無色透明性、光学等方性、耐薬品性の観点から30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは9重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは3重量%以下、2重量%以下であり、最も好ましくは0重量%である。また、本発明の熱可塑性重合体、原重合体(A)における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計や核磁気共鳴(1H−NMR、13C−NMR)測定機が用いられるが、本発明では1H−NMR測定を行い、かつ不飽和カルボン酸単位および/またはグルタル酸無水物単位の存在の有無とその含有量の定量には13C−NMRを用いて、これらの測定結果より組成を算出する。
【0063】
本発明の原重合体(A)、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体重合の各々の組成については、各々を重水素化ジメチルスルホキシド中で1H−NMR測定を行い、次いで、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位と前記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位の存在とその含有量を、重水素化ピリジン中で13C−NMR測定を行うことで確認し、これらより成分組成を決定する。熱可塑性重合体が、例えば、メタクリル酸メチル単位、グルタルイミド環構造単位およびメタクリルアミド単位から構成されるものである場合、1H−NMRスペクトルを測定し、0.8〜1.1ppmのピークがメタクリル酸メチル単位およびグルタルイミド環構造単位のα−メチル基の水素、1.6〜1.9ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.4〜3.8ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、6.5〜7.7ppmのピークはメタクリルアミド単位のアミド基の水素、10.1〜10.9ppmのピークはグルタルイミド環構造単位の水素と帰属し、スペクトルの積分比から各重合単位の比を計算する。また、熱可塑性重合体が、例えば、メタクリル酸メチル単位、N−メチルグルタルイミド環構造単位およびN−メチルメタクリルアミド単位から構成される重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークは、メタクリル酸メチル単位およびN−メチルメタクリルアミド単位のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖中のメチレン基の水素、3.4〜3.8ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、2.3〜3.0ppmのピークはN−メチルメタクリルアミド単位のN−メチル基の水素、2.6〜3.2ppmのピークはN−メチルグルタルイミド環構造単位のN−メチル基の水素、6.9〜7.7ppmのピークはN−メチルメタクリルアミド単位のアミド基の水素と帰属し、スペクトルの積分比から各重合単位の比を計算する。また、他の共重合成分として、スチレンを含有する場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、これらの積分強度の比を比較し、各々の比を算出することができる。ここで、更に、下記13C−NMRにより、(メタ)アクリル酸単位等の不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位の存在の有無と、存在する際には不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸エステル単位またはグルタルイミド環構造単位との比を算出し、先の1H−NMRの結果と合わせて、不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位の含有量を算出し、熱可塑性重合体の組成を決定する。尚、1H−NMRにおいて、12.3〜12.8ppmに(メタ)アクリル酸単位等の不飽和カルボン酸単位のカルボン酸の水素のピークが観察されるが、このピークは、ブロードで、その積分値は信頼性が低く、例えば不飽和カルボン酸単位の含有量が3重量%以下になると、存在しても観察されない傾向にある。そのため、少量含有される(メタ)アクリル酸単位等の不飽和カルボン酸単位の含有量の決定には、13C−NMR測定を行う必要がある。また、グルタル酸無水物単位も、例えば、その含有量が5重量%以下で含有される場合には、1H−NMRでの定量は困難であり、13C−NMR測定により含有量を確認にした。尚、酸価測定法では、不飽和カルボン酸単位とグルタル酸無水物単位の各々の含有量を測定することは困難で、かつ値の信頼性が低い。熱可塑性重合体中のグルタル酸無水物単位の含有量の確認方法としては、600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度15℃、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定し測定することで得られるものであり、本発明の熱可塑性重合体の重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、グルタル酸無水物のカルボニルピークは、化学シフト170.8〜174.1ppmの範囲に、グルタル酸無水物のそれぞれのカルボニルの置かれた環境の違いにより分裂し、これらが一部重なって観察される。不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測される。また、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト176.00〜179.43ppmの範囲に分裂して観測される。上記の各々の単位のピークについて、その積分強度から各々の単位の組成比を算出し、1H−NMRの測定結果と合わせて、組成を決定した。
【0064】
また、本発明の熱可塑性重合体の厚さ40μmのフィルムにおいて、このフィルムを光学顕微鏡で観察して異物数を確認した際に、無作為に10カ所の点で観察、異物数のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm)として評価した場合の1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数は、特に制限はないが、1000個以下であることが好ましく、より好ましくは15個以下であり、更に好ましくは10個以下であり、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0個である。ここで、厚さ40μmのフィルムは溶液製膜および溶融製膜により作製することができる。例えば、溶液製膜の方法は、本発明の熱可塑性重合体を塩化メチレンに濃度25重量%で、室温で24時間攪拌しながら溶解させ、得られた熱可塑性重合体溶液をガラス板上に流延した後、50℃で20分、次いで80℃で30分乾燥処理を行い、厚さ40μmのフィルムを作成するというものである。また、このフィルムを光学顕微鏡で観察して異物数を確認した際に、1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数をカウントする際には、1サンプルあたり、無作為に10カ所の点で観察、異物数のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm)とし評価する。異物の確認に用いる光学顕微鏡としては具体的に微分干渉型反射顕微鏡(ニコン社製 ECLIPSE LV100D)を挙げることができ、前記光学顕微鏡により、厚さ40μmのフィルムの表面を観察し、内部の異物由来の凹凸数を異物数としてカウントする。
【0065】
本発明における異物とは、製造工程で外部から混入した無機物や有機物といった外乱異物以外ものであり、本発明の熱可塑性重合体、原重合体(A)の製造時に生成した巨大分子量体やアイオノマー等の副生成物、分散安定剤、熱安定剤、酸化防止剤および開始剤等の製造工程で用いた各種添加剤またはこれらの変質物による不溶成分および/または非溶融成分、および原重合体から分子内環化反応により熱可塑性重合体を得る際に生成した巨大分子量体、アイオノマー、低分子量化合物等の副生成物をはじめとした不溶成分および/または非溶融成分のうち、少なくとも1種である。異物について、外部から混入した外乱異物を除く異物とそれ以外を見分ける方法としては、例えば、個々の異物について顕微IRを測定し、特性吸収を確認する方法が挙げられる。本発明の熱可塑性重合体を(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)、好ましくは(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位と(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む原重合体(A)を溶融混練することにより分子内環化反応せしめて製造することで、例えば、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸メチル/スチレン共重合体に、アンモニアまたは第一級アミンを用いる方法等の従来公知の他の製造法と比較して、異物を低減することができる。
【0066】
本発明の熱可塑性重合体の溶融粘度は特に制限はないが、プランジャー式キャピラリーレオメーター(東洋精機製作所製 キャピログラフ タイプ1C)を用いて、ガラス転移温度+130℃の温度で測定し、せん断速度12.16秒−1における溶融粘度(Pa・s)が、10〜10000000Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜5000000Pa・sの範囲であり、更に好ましくは10〜1000000Pa・sの範囲であり、特に好ましくは10〜500000Pa・sの範囲であり、最も好ましくは10〜400000Pa・sの範囲である。
【0067】
前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含有し、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする熱可塑性重合体の製造方法は、前記特徴を有する熱可塑性重合体が得られる限りにおいては特に制限はないが、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することが好ましい。この場合、典型的には、原重合体(A)を加熱することにより2単位の(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位のアミド基が脱アンモニアおよび/または脱第一級アミンされ、あるいは、原重合体(A)が不飽和カルボン酸エステル単位を含有する場合、隣接する(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位と(iii)不飽和カルボン酸エステル単位からアルコールの脱離により1単位の前記(i)グルタルイミド環含有構造単位が生成される。ここで、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)は、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位を溶融混練による分子内環化反応後にその含有量が2.0重量%以下となる範囲においては、含有量の上限に特に制限はなく含むことができ、前記不飽和カルボン酸単位と(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の反応によっても水の脱離により、(i)グルタルイミド環構造単位を形成することができる。原重合体(A)が前記不飽和カルボン酸単位を含む場合、溶融混練後の熱可塑性重合体中の不飽和カルボン酸単位の含有量は2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下であり、更に好ましくは0.3重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下であり、最も好ましくは0.0重量%となる。
【0068】
尚、本発明において、原重合体(A)の溶融混練とは静置条件を除くものであり、原重合体(A)を溶融させたまま流動せしめることを指し、好ましくは押出機や攪拌翼の付いた反応器を用いて、原重合体(A)を溶融させ攪拌せしめることで達成できるものである。前記製造法では不飽和カルボン酸単位は含まれないため、前記製造法にもかかわらず不飽和カルボン酸単位を含む場合とは、重合中に不飽和カルボン酸を共重合して導入または重合体の単位を不飽和カルボン酸単位に反応により変換して導入することを示す。前記製造法により、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸メチル−スチレン共重合体を溶融下、アンモニアおよび/またはメチルアミン等の第一級アミンと反応させて得る方法、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリルアミドのイミド化反応(二量体化)により得られた(メタ)アクリルイミド化合物の環化重合等により得る方法、不飽和カルボン酸エステル単位と不飽和カルボン酸単位を有する重合体の分子内環化反応等によりグルタル酸無水物単位を有する重合体を得て、この重合体とアンモニアおよび/またはメチルアミン等の第一級アミンと反応させて得る方法、シアン化ビニル系単量体単位と不飽和カルボン酸エステル単位および/または不飽和カルボン酸単位を含む原重合体を塩基または酸存在下で加熱処理し、分子内環化反応せしめることにより製造する方法、シアン化ビニル系単量体単位、尿素類と不飽和カルボン酸エステル単位および/または不飽和カルボン酸単位を重合後、得られた重合体を加熱処理することで、尿素類を窒素源としてイミド化する方法等では達成できなかった、熱可塑性重合体中の不飽和カルボン酸単位の含有量の2.0重量%以下に制御され、かつ色調(黄色度)、透明性(ヘイズ、全光線透過率)に優れた熱可塑性重合体を得ることができる。
【0069】
一方、(i)グルタルイミド環構造単位に関し、前記一般式(1)のR3が水素原子であるグルタルイミド環構造単位を含有し、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体、好ましくは更に前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下である熱可塑性重合体、より好ましくは更に前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの面内位相差(以下Reと記載することもある)の絶対値が20nm以下である熱可塑性重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸メチル/スチレン共重合体を溶融下、アンモニアと反応させて得る方法を採用した場合、アンモニアが反応性制御の点から極めて扱いにくく、得られる重合体の無色性、透明性およびReに課題があったが、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位としてメタクリルアミドを含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめる製造方法により、無色性、透明性、滞留安定性、引張強度および耐湿熱性に優れる重合体として得ることができる。
【0070】
本発明における、原重合体(A)の分子内環化反応としては特に制限はないが、原重合体(A)中の(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位が好ましくは20%以上消費されることを示し、より好ましくは(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の消費率が60%以上であることを示し、更に好ましくは消費率は80%以上であることを示し、特に好ましくは消費率は95%以上であることを示し、最も好ましくは消費率は100%である。また、原重合体(A)の分子内環化反応における環化率としては、原重合体(A)中の(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の消費率で表せば、消費率は好ましくは20%以上であり、より好ましくは消費率は60%以上であり、更に好ましくは消費率は80%以上であり、特に好ましくは消費率は95%以上であり、最も好ましくは消費率は100%である。原重合体(A)を有機溶媒および/または水に溶解させて、加熱処理(溶液環化)をする場合は、比較的多量の有機溶媒および/または水を使用し、反応時間も長くなるため、有機溶媒および/または水との副反応、副生成物の混入、重合体中への有機溶媒の残存、アミド基含有ビニル系単量体単位の残存が生じる傾向にある。また、有機溶媒および/または水に溶解させて行う分子内環化反応(溶液環化)は、本発明の溶融混練による分子内環化反応(混練を伴う溶融環化)と比較して、反応速度が極めて遅いため、酸または塩基等の触媒が必須となるが、これら触媒と比較的長時間接触することにより重合体が劣化し、色調(黄色度)、引張強度、滞留安定性および耐湿熱性が低下していく傾向にある。
【0071】
従って、本発明では、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の製造法として、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造するものであり、耐熱性、色調、滞留安定性および耐湿熱性に優れた熱可塑性重合体を得る点から更に好ましくは、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位および(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することである。本発明において、原重合体(A)の溶融混練の方法としては特に制限はなく、圧力タンク等の圧力容器、スタティックミキサー、横型二軸反応装置、堅型二軸攪拌槽等の反応装置、押出機等を好ましく用いることができ、また、原重合体(A)を溶液重合等で製造した後、原重合体(A)を含む溶液からの有機溶媒と残存モノマーの脱揮と溶融混練による分子内環化反応を一缶(一段)で行うことも可能である。これらの溶融混練は、窒素気流中などの不活性ガス雰囲気または真空下で行うことやベントで脱揮しながら行うことがより好ましい。溶融混練の方法としては、中でも押出機が好ましく、連続混練押出機、バッチ式混錬押出機を用いることが更に好ましい。
【0072】
この際、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することがより好ましい。好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機、複数の凸レンズ型および/または楕円型の板状パドルを備えた連続式二軸反応装置、複数のメガネ状の翼を備えた二軸反応装置等を挙げることができ、より好ましくは、二軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出機、複数の凸レンズ型および/または楕円型の板状パドルを備えた連続式二軸反応装置、複数のメガネ状の翼を備えた二軸反応装置であり、滞留時間の増大および均一混練の観点から更に好ましくは、二軸・単軸複合型連続混練押出機、複数の凸レンズ型および/または楕円型の板状パドルを備えた連続式二軸反応装置、複数のメガネ状の翼を備えた二軸反応装置であり、特に二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、極めて無色透明性、機械特性に優れる熱可塑性重合体が得られる傾向があるため、好ましく使用することができる。ここで、二軸・単軸複合型連続混練押出機とは、押出機ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機を言い、市販されているこのタイプの押出機としては、CTE社製の「HTM型押出機」が挙げられる。原料となる原重合体を、連続式で加熱処理し環化反応を進行させる際、反応の進行に従い、溶融粘度が高くなることに起因し、押出装置のせん断による発熱が大きくなり、分子主鎖の熱分解による着色が大きくなる傾向が見られる。また、該せん断発熱は、単軸スクリューよりも二軸スクリューで溶融混練した場合に大きくなる。一方、反応速度の観点からは、二軸スクリューで溶融混練することが好ましい。以上のことから、特定の二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、溶融粘度が比較的低い反応初期段階では、二軸スクリューで、十分な反応速度を確保しながら、溶融粘度が比較的高くなる反応後期段階では、せん断発熱を抑制した単軸スクリュー部で加熱処理することにより、分子主鎖の熱分解が抑制されるため、得られる熱可塑性重合体は特に色調、機械特性に優れるものと推察される。
【0073】
また、複数の凸レンズ型および/または楕円型の板状パドルを備えた連続式二軸反応装置としては、ポリアセタール共重合体を製造する従来の手法として、複数の凸レンズ型または楕円型の板状パドルを備えた互いに平行な2軸回転双胴円筒型反応装置を使用する手法(例えば、特開昭63−218731号公報および特開平1−313516号公報参照)として公知であり、複数の凸レンズ型または楕円型の板状パドルを備えているため、パドル表面およびシリンダー内壁に対して、セルフクリーニング作用および重合体の粉砕作用を伴うとともに、一般的な押出機で使用されるスクリューを備えたものと比較し、空間容積が大きくなるため、滞留時間を増加させることが可能となる。このような反応装置を、グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性共重合体を製造する際の環化反応に適用することで、滞留時間を増大させることができる。
【0074】
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、その下限は100℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上であり、更に好ましくは200℃以上であり、特に好ましくは250℃以上であり、また、時間当たりの分子内環化処理量アップによる生産性の向上と、分子内環化反応を促進させ残存するアミド基含有ビニル系単量体単位の量を低減、好ましくはゼロとし、無色透明性を更に高める観点から、分子内環化反応時の温度の下限は280℃以上が特に好ましく、最も好ましくは300℃以上である。一方、分子内環化反応時の温度の上限は、400℃以下であることが好ましく、より好ましくは380℃以下であり、更に好ましくは360℃以下であり、特に好ましくは350℃以下である。従って、押出機を用いて原重合体(A)を溶融混する際の押出機のシリンダー温度も上記の好ましい範囲に設定することが好ましい。
【0075】
また、この際の溶融混練の滞留時間も特に限定されず、所望する重合組成に応じて適宜設定可能である。溶融混練の滞留時間の下限は特に制限はなく、1秒以上、更には30秒以上であることが好ましく、より好ましくは1分以上であり、更に好ましくは3分以上であり、特に好ましくは5分以上であり、最も好ましくは7分以上である。溶融混練の滞留時間の上限は特に制限はないが、300分以内であることが好ましく、より好ましくは180分以内であり、更に好ましくは120分以内であり、特に好ましくは60分以内であり、最も好ましくは30分以内である。また、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のLとDの比(L/D)は特に制限はないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは30以上であり、更に好ましくは40以上であり、特に好ましくは45以上である。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位が多く残存する傾向にあり、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向がある。
【0076】
重合後の原重合体(A)に含まれる揮発分、例えば、残存モノマー、各種添加剤、有機溶媒および水等から選ばれる少なくとも1種を、真空乾燥、熱風乾燥、スプレードライにより揮発させた後に、溶融混練することが好ましいが、原重合体(A)に全揮発分が含まれており、揮発分の脱揮と分子内環化を一度に実施することもできる。さらに本発明では、溶融混練による分子内環化反応の際に、触媒を用いない方が、無色透明性、滞留安定性および耐湿熱性の観点から好ましいが、原重合体(A)を上記方法等により加熱する際に、分子内環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することもできる。環化触媒を添加する場合、その添加量の上限は特に制限はないが、原重合体(A)100重量部に対し、10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは2重量部以下であり、更に好ましくは1重量部以下であり、特に好ましくは0.5重量部以下である。酸、アルカリ、塩化合物は、分子内環化反応を促進させるが、十分な滞留時間を確保できる場合は、触媒の残存、触媒による副生成物の生成、熱可塑性重合体の滞留安定性および耐湿熱性を低下させる傾向があるため、触媒を用いないことが最も好ましい。
【0077】
また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸および従来公知の有機リン化合物を挙げることができ、これらの一種、または二種以上を使用することができる。有機リン化合物としては、従来公知のものであれば特に制限はないが、例えば、リン酸メチル等のリン酸エステル、リン酸ジメチル等のリン酸ジエステル、リン酸トリフェニル等のリン酸トリエステル、亜リン酸、亜リン酸メチルおよび亜リン酸フェニル等の亜リン酸エステル、亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸ジエステル、亜リントリフェニル等の亜リン酸トリエステル、フェニルホスホン酸等のアリールホスホン酸、メチルホスホン酸等のアルキルホスホン酸、メチル亜ホスホン酸等のアルキル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアリール亜ホスホン酸、ジメチルホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のアルキルアリールホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸等のアルキル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等のアリール亜ホスフィン酸、フェニルメチル亜ホスフィン酸等のアルキルアリール亜ホスフィン酸、ラウリルアシッドホスフェイト、トリデシルアシッドホスフェイトおよびステアリルアシッドホスフェイト等からなる酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルの塩類等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。
【0078】
塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムを好ましく使用することができる。尚、これらアルカリ金属化合物は、水和物、無水物のいずれも好ましく用いることができ、特に好ましくは酢酸リチウム、酢酸リチウム無水物である。尚、環化触媒は必須ではなく、熱履歴、攪拌圧力、真空度の調整により環化触媒を用いずに熱可塑性重合体を得ることもできる。
【0079】
本発明の(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体は架橋構造を含んでもよいが、架橋構造は微量であることが好ましく、滞留安定性および耐湿熱性の観点から好ましくは架橋構造を含まず、熱可塑性重合体がジメチルスルホキシドに溶解することが好ましい。本発明では、溶融環化を採用し、環化条件を、300℃の温度であれば、例えば300分以内、好ましくは180分以内、より好ましくは120分以内、特に好ましくは60分以内、最も好ましくは30分以内とすることで、架橋構造を含まない熱可塑性重合体を得ることができる。
【0080】
本発明の原重合体(A)は、前記一般式(4)で表される(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む。アミド基含有ビニル系単量体単位としては特に制限はなく、好ましい例としては、対応するモノマーとして、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−イソブチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ペンチルアクリルアミド、N−n−ペンチルメタクリルアミド、N−n−へキシルアクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−クロロフェニルアクリルアミド、N−クロロフェニルメタクリルアミド、N−ジクロロフェニルアクリルアミド、N−ジクロロフェニルメタクリルアミド、N−トリクロロフェニルアクリルアミド、N−トリクロロフェニルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができ、これらの中では、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドが好ましく、少量で耐熱性を発現する点からメタクリルアミドが特に好ましい。
【0081】
原重合体(A)中の(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の含有量の下限は特に制限はなく、少なくとも一部含まれればよいが、1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは3重量%以上であり、更に好ましくは4重量%以上であり、特に好ましくは5重量%以上であり、最も好ましくは6重量%以上である。(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の含有量の上限は特に制限はなく、100重量%でもよいが、流動性、成形加工性の向上の観点から好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは20重量%以下であり、特に好ましくは18重量%以下であり、最も好ましくは15重量%以下である。(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の含有量が1重量%以上の場合には、原重合体(A)の加熱による(i)グルタルイミド環構造単位の生成量が多くなり、耐熱性向上効果および引張強度が大きくなる傾向がある。一方、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の含有量が80重量%以下の場合には、原重合体(A)の加熱による環化反応後に、(ii)水酸基含有ビニル系単量体単位の残存量が少なくなる傾向があり、滞留安定性および耐湿熱性が向上する傾向がある。
【0082】
本発明の原重合体(A)は、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む場合、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位としては、前記一般式(5)で表されるものであり、好ましい具体例としては、対応するモノマーとして、前記の本発明の熱可塑性重合体に含まれる(iii)不飽和カルボン酸エステル単位の具体例に関する頁で例示した単量体を挙げることができ、これらのうち、一種または二種以上を用いることができる。
【0083】
また、原重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体単位を含むことができる。この際に、原重合体中(A)のその他のビニル系単量体単位は、その他のビニル系単量体を重合することにより導入されることが好ましい。その他のビニル系単量体単位の好ましい具体例としては、対応するモノマーとして、前記の本発明の熱可塑性重合体に含まれるその他のビニル系単量体単位の具体例に関する頁で例示した単量体を挙げることができ、これらのうち、一種または二種以上を用いることができる。これらのうち、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位に対応するモノマーやその誘導体およびその前駆体については、分子内環化反応後に不飽和カルボン酸単位が2.0重量%を超えて含有されない範囲で添加する必要がある。
【0084】
また、本発明の原重合体(A)の重量平均分子量(絶対分子量)の上限は特に制限はないが、原重合体(A)の流動性とそれを分子内環化反応してなる本発明の熱可塑性重合体、および更にゴム質重合体(C)を添加してなる本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融加工時の流動性の観点から、好ましくは1000000以下であり、より好ましくは500000以下であり、更に好ましくは400000以下であり、特に好ましくは200000以下であり、最も好ましくは170000以下である。また、重量平均分子量の下限は特に制限はないが、耐衝撃性と溶融滞留安定性の観点から好ましくは10000以上であり、より好ましくは20000以上であり、更に好ましくは30000以上であり、特に好ましくは40000以上であり、最も好ましくは45000以上である。
【0085】
原重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量))の下限は特に制限はないが、1.1以上であることが好ましく、本発明の原重合体(A)の良流動化の観点からより好ましくは2.1以上であり、更に好ましくは2.3以上であることが好ましく、特に好ましくは2.4以上であり、最も好ましくは2.5以上である。分子量分布の上限は特に制限はないが、通常15.0以下であることが好ましく、得られる本発明の熱可塑性重合体の耐衝撃性および引張強度の観点から5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下であり、更に好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下であり、最も好ましくは2.9以下である。
【0086】
原重合体(A)を得る方法としては特に制限はないが、アミド基含有ビニル系単量体を含む単量体成分を重合することにより得ることが好ましく、より好ましくはアミド基含有ビニル系単量体および不飽和カルボン酸エステルを含む単量体成分を重合することにより得ることである。
【0087】
本発明の原重合体(A)、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の各単量体単位のシーケンスは特に制限はなく、ランダム重合体、ブロック重合体、交互重合体、グラフト重合体のいずれかまたはこれらの組み合わせでもよいが、ランダム重合体または交互重合体であることが、熱安定性、色調、湿熱処理後の引張強度等の機械特性に優れる傾向にあり好ましく、ランダム重合体であることがより好ましい。
【0088】
原重合体(A)の製造方法として特に制限はなく、適切な反応による官能基変換により、重合体から原重合体(A)を製造してもよいが、簡便に所望の原重合体(A)を得る観点から重合で製造することが好ましい。この重合方法としては、特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合、沈殿重合等の従来公知の重合法、および塊状懸濁重合のように公知の重合法の組み合わせや、例えば超臨界二酸化炭素等の超臨界流体中での重合が好ましく用いられ、これら重合は回分式、連続式のいずれでもよい。特に原重合体(A)および(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体中の異物、特に未溶融ポリマー等を減少し、光学材料用途で求められる低異物を達成する観点から、懸濁重合、塊状重合、連続塊状重合、溶液重合、連続溶液重合、沈殿重合、連続沈殿重合およびこれら重合法の組み合わせが好ましい。原重合体(A)に(iii)不飽和カルボン酸エステル単位が含まれる場合、原重合体(A)の各成分単位のシーケンスは特に制限はないが、分子内環化後の(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の残存量を減量する観点から、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位と(iii)不飽和カルボン酸エステル単位が隣り合ったシーケンスが多く導入される方が好ましく、また、アミド基含有ビニル系単量体の残存モノマーとしての残存量が少ない重合系に設計されることがより好ましい。すなわち、アミド基含有ビニル系単量体をM1、不飽和カルボン酸エステルをM2とした際の両者の共重合反応性比であるr1、r2は、特に制限はないが、r1が0.01以上であることが好ましく、より好ましくはr1は0.1以上であり、更に好ましくはr1は0.3以上であり、特に好ましくはr1は0.5以上であり、最も好ましくはr1は1.0以上であり、r2は0.01以上であることが好ましく、より好ましくはr2は0.1以上であり、更に好ましくはr2は0.3以上であり、特に好ましくはr2は0.5以上であり、最も好ましくはr2は1.0以上である。
【0089】
原重合体(A)の重合工程における重合温度については、任意に設定することが可能であるが、380℃以下の重合温度で重合することが好ましく、より好ましくは180℃以下であり、更に好ましくは150℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、−100℃以上が好ましく、より好ましくは0℃以上であり、更に好ましくは40℃以上であり、特に好ましくは60℃以上である。また重合時間は、必要な重合率を得るのに十分な時間であれば特に制限はない。
【0090】
また、重合時に用いる単量体は、一括で仕込んで重合しても良く、分割添加、逐次添加しながら重合しても良い。複数の単量体を用いる場合、より好ましくは、生成する原重合体、熱可塑性重合体を構成する単量体単位の組成分布を低減する目的で、単量体混合物中の重量組成比を任意に設定して、分割添加あるいは逐次添加する方法が挙げられる。また、第一工程の重合液中の溶存酸素濃度は特に制限はないが、低い方が好ましく、例えば1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下であり、特に好ましくは7ppm以下であり、最も好ましくは5ppm以下である。本発明における溶存酸素濃度とは、飯島電子工業株式会社製、DOメーターB−505を用い、重合容器内温が所定の重合温度に到達した重合開始時点の溶液中の酸素濃度を測定したものである。
【0091】
本発明の原重合体(A)の重合において、重合開始剤は必須ではなく、熱重合、UV放射線を用いた重合、イオン化放射線を用いた重合等でもよいが、重合速度の観点から重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては光重合開始剤、イオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤等が挙げられるが、生産性の観点からラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、通常公知のあらゆる開始剤が使用でき、例えば日本油脂(株)、和光純薬工業(株)等の開始剤メーカーの公知の製品カタログに記載されているものを用いることができるが、中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物を好適に使用することができる。
【0092】
使用される重合開始剤の量は、重合に用いられる単量体混合物量に対して、0.001〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.001〜2.0重量部であり、更に好ましくは0.01〜1.5重量部である。
【0093】
また、本発明の熱可塑性重合体が原重合体(A)の分子量を好ましく調節する観点から連鎖移動剤を用いることが好ましい。原重合体(A)の重合時に用いられる連鎖移動剤としては特に制限はないが、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、メルカプトカルボン酸、メルカプトカルボン酸エステルおよび芳香族チオール等の連鎖移動剤を添加することができ、好ましい連鎖移動剤としては、例えば、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、1−ペンタンチオール、n−オクチルメルカプタン、イソオクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンおよびn−ウンデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸n−オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸n−プロピル、チオグリコール酸n−ブチル、チオグリコール酸ドデシル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸メチル、2−メルカプトプロピオン酸メチル、2−メルカプトプロピオン酸エチル、2−メルカプトプロピオン酸n−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸n−プロピル、3−メルカプトプロピオン酸イソプロピル、3−メルカプトプロピオン酸n−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸イソブチル、3−メルカプトプロピオン酸n−ペンチル、3−メルカプトプロピオン酸イソアミル、3−メルカプトプロピオン酸−sec−アミル(3−メルカプトプロピオン酸1−メチルブチル)、3−メルカプトプロピオン酸2−メチルブチル、3−メルカプトプロピオン酸1,3−ジメチルブチル、3−メルカプトプロピオン酸ネオペンチル、3−メルカプトプロピオン酸1−メチルアミル、3−メルカプトプロピオン酸2−メチルアミル、3−メルカプトプロピオン酸3−メチルアミル、3−メルカプトプロピオン酸tert−アミル、3−メルカプトプロピオン酸n−ヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸シクロヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−へプチル、3−メルカプトプロピオン酸2,4−ジメチルペンチル、3−メルカプトプロピオン酸2,3−ジメチルペンチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシメチル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシメチル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシメチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシエチル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシエチル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシエチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシプロピル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシプロピル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシプロピル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸イソオクチル、3−メルカプトプロピオン酸tert−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸ノニル、3−メルカプトプロピオン酸イソノニル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ノニル、3−メルカプトプロピオン酸デシル、3−メルカプトプロピオン酸イソデシル、3−メルカプトプロピオン酸ウンデシル、3−メルカプトプロピオン酸n−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸イソドデシル、3−メルカプトプロピオン酸トリデシル、3−メルカプトプロピオン酸テトラデシル、3−メルカプトプロピオン酸ペンタデシル、3−メルカプトプロピオン酸ヘキサデシル、3−メルカプトプロピオン酸オクタデシル、3−メルカプトプロピオン酸イソオクタデシル、3−メルカプトプロピオン酸オエレイル、3−メルカプトプロピオン酸パルミトレイル、3−メルカプトプロピオン酸リノリル、3−メルカプトプロピオン酸リノレニル、3−メルカプトプロピオン酸フェニル、3−メルカプトプロピオン酸ベンジル、3−メルカプトプロピオン酸アリルおよび2−メルカプトエチルオクタン酸エステル等のメルカプトカルボン酸エステルおよびこれらのフロロ化物等のハロゲン化物、6−メルカプトメチル−2−メチル−2−オクタノール、2−フェニル−1−メルカプト−2−エタノール、4−メルカプト−1,1−ビス(トリフルオロメチル)−1−ブタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(6−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメチル)プロパン−2−オールおよび1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(5−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメチル)プロパン−2−オール等のメルカプトアルコール、ベンゼンチオール、m−ブロモベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、m−クロロベンゼンチオール、p−クロロベンゼンチオール、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオール、ベンジルチオール、m−トルエンチオールおよびp−トルエンチオール等の芳香族チオール、p−アニソイルジスルフィド、ベンゾイルジスルフィド、ビス(p−ブロモベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−クロロベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−シアノベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−ニトロベンゾイル)ジスルフィド、p−トルオイルジスルフィドおよびベンゾイルジメチルチオカルバモイルスルフィド等のスルフィド、ポルフィリン類縁体等の窒素原子を有する化合物を配位子として有するコバルト触媒を例示することができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0094】
原重合体(A)の重合において、重合収率は特に制限はないが、生産性の観点から、重合収率が10%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは60%以上であり、特に好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。
【0095】
また、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲において、重合時にn−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジイソブチレン・無水マレイン酸重合体等のアニオン系、オクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン系、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート等の非イオン系の界面活性剤を分散剤として用いることもできる。中でも着色が少ない等の理由から、非イオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0096】
前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含有し、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度の値が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする熱可塑性重合体、好ましくは、前記熱可塑性重合体が更に一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下である熱可塑性重合体、更に好ましくはグルタル酸無水物単位の含有量が2.0重量%以下である熱可塑性重合体、特に好ましくは、前記熱可塑性重合体が原重合体(A)の溶融混練により分子内環化せしめて製造して得た熱可塑性重合体は、引張伸度の向上の観点から、更にゴム質含有重合体(B)を含むことが好ましい。また、組成を調整したゴム質含有重合体を添加することで、面内位相差や厚み方向位相差の値を制御することも可能となり、例えば、偏光子保護フィルム用途等で、ゼロ位相差が要求される場合には、マトリックスとなる熱可塑性重合体に光弾性係数の増大に繋がるスチレンの共重合やスチレン系樹脂の配合を行わなくても、ゴム質含有重合体の組成調整、添加量調整により、面内位相差や厚み方向位相差をゼロに近付けることが可能である。
【0097】
ゴム質含有重合体(B)は、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル単量体などからなる単量体混合物を重合せしめたグラフト重合体等が好ましく使用できるが、特に多層構造重合体が色調および透明性の点で優れており好ましい。
【0098】
前記多層構造重合体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。多層構造重合体において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル系単量体、シリコーン系単量体、スチレン系単量体、ニトリル系単量体、共役ジエン系単量体、ウレタン結合を生成する単量体、エチレン系単量体、プロピレン系単量体、イソブテン系単量体などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル系単位およびブタジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位から構成されるゴム、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴム、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴム、およびアクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系位体、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する重位であるゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、架橋性成分から構成される重合体を架橋させたゴムも好ましい。このような架橋性成分としては、特に制限はないが、例えば、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体が例示され、これらを単独で使用もしくは二種以上を併用することができる。
【0099】
前記多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸エステル単位、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位、(i)グルタルイミド環構造単位、不飽和カルボン酸単位、グリシジル基含有ビニル系単量体単位、無水マレイン酸およびグルタル酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル系単量体単位、シアン化ビニル系単量体単位、マレイミド系単量体単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位、(i)グルタルイミド環構造単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
【0100】
上記(iii)不飽和カルボン酸エステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、中でもアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0101】
上記(iii)不飽和カルボン酸エステル単位、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位の具体例としては、本発明の熱可塑性重合体の組成に関する頁で例示した(iii)不飽和カルボン酸エステル単位、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位から誘導される単位が好ましく用いられる。また、上記不飽和カルボン酸単量体単位の種類としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
【0102】
上記不飽和グリシジル基含有ビニル系単量体単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0103】
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0104】
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。ゴム質含有重合体(B)の製造方法としては、特に制限はなく、イオン重合、ラジカル重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、(共)重合時には、必須ではないが分子量を制御する目的で、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタンおよびn−オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、メルカプトカルボン酸、メルカプトカルボン酸エステルおよび芳香族チオール等の連鎖移動剤を添加することができる。このような連鎖移動剤としては、原重合体(A)、および(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の重合による製造時に好ましく用いられる連鎖移動剤として例示したものを挙げることができる。
【0105】
本発明のゴム質含有重合体(B)は、その多層構造において、最外層(シェル層)の種類は、上述のとおり(iii)不飽和カルボン酸エステル単位、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位(i)グルタルイミド環構造単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位、(i)グルタルイミド環構造単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
【0106】
本発明の熱可塑性重合体との溶融混練に供するゴム質含有重合体(B)として、不飽和カルボン酸エステル単位を必須として、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を用いることが最も好ましい。
【0107】
最外層が(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を必須として、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の重合体の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位が生成する。従って、最外層に(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を必須として、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含有する重合体を有する多層構造重合体を熱可塑性重合体に配合して溶融混練する際の加熱により、最外層に(i)グルタルイミド環構造単位を含有する多層構造重合体が得られる。これにより、連続相(マトリックス相)となる本発明の重合体中に、前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含有する多層構造重合体が良好に分散することが可能となり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現する傾向となる。同様に、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を用いることで、前記一般式(2)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含有する多層構造重合体が良好に分散することが可能となり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうる傾向となる。
【0108】
本発明の(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性樹脂組成物中に含有せしめるゴム質含有重合体(B)の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位からなる重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位/(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位からなる重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位/(メタ)アクリル酸単位からなる重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位/(メタ)アクリル酸単位/グルタル無水物環構造単位からなる重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/グルタル無水物環構造単位からなる重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/グルタル無水物環構造単位/(メタ)アクリル酸単位からなる重合体であるもの、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる。ここで、“/”は重合を示す。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位からなる重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位/(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位からなる重合体であるものが、連続相(マトリックス相)である本発明の(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体との屈折率を近似させること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
【0109】
多層構造重合体の平均粒子径の下限は特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から0.005μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、更に好ましくは0.02μm以上であり、特に好ましくは0.03μm以上であり、最も好ましくは0.05μm以上である。平均粒子径の上限は特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物の透明性の観点から1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは0.9μm以下であり、最も好ましくは0.8μm以下である。なお、多層構造重合体の平均粒子径は、小角光散乱測定によるギニエプロットあるいは透過型電子顕微鏡写真から算出することができる。
【0110】
本発明の多層構造重合体において、コアとシェルの重量比は特に制限はないが、多層構造重合体全体に対して、コア層が20重量%以上、95重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、90重量%以下であることがより好ましく、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることが更に好ましく、60重量%以上、80重量%以下であることが特に好ましい。
【0111】
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
【0112】
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)”、カネカ社製”カネエース(登録商標)”、呉羽化学工業社製”パラロイド(登録商標)”、ロームアンドハース社製”アクリロイド(登録商標)”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド(登録商標)”およびクラレ社製”パラペット(登録商標)SA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0113】
また、ゴム質含有重合体(B)として使用されるゴム質含有グラフト重合体の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル(その具体例は前述と同様である)、アミド基含有ビニル系単量体(その具体例は前述と同様である)、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル単量体(その具体例は前述と同様である)、および必要に応じてこれらと重合可能な他のビニル単量体(その具体例は前述と同様である)の1種以上から選択される単量体(混合物)を(共)重合せしめたグラフト重合体が挙げられる。
【0114】
グラフト重合体に用いられるゴム質重合体としては、ジエンゴム、アクリルゴムおよびエチレンゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエンのブロック重合体、アクリロニトリル−ブタジエン重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル重合体、エチレン−プロピレン重合体、エチレン−プロピレン−ジエン重合体、エチレン−イソプレン重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
【0115】
本発明におけるグラフト重合体を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径は特に制限はないが、0.05〜1.5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmの範囲であり、更に好ましくは0.15〜0.4μmの範囲である。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
【0116】
本発明におけるグラフト重合体は、ゴム質重合体10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%を重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を越える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
【0117】
なお、グラフト重合体は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト重合させる際に生成する、グラフトしていない重合体を含んでいてもよい。衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は、0.1〜1.5dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
【0118】
本発明におけるグラフト重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には、特に制限はないが、0.1〜2.0dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.2〜1.0dl/gのものである。
【0119】
本発明におけるグラフト重合体の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合および乳化重合などの公知の重合法および塊状懸濁重合のようにこれら重合法の組み合わせにより得ることができ、これら重合は回分式、連続式のいずれでもよい。
【0120】
また、本発明の熱可塑性重合体およびゴム質含有重合体(B)のそれぞれの屈折率には特に制限はないが、これらの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、透明性に優れる熱可塑性樹脂組成物が好適に用いられる用途において好ましい。透明性に優れる熱可塑性樹脂組成物が好適に用いられる用途において、熱可塑性重合体およびゴム質含有重合体(B)のそれぞれの屈折率に関し、両者の屈折率の差は特に制限はないが、0.10以下であることが好ましく、より好ましくは0.05以下であり、更に好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.01以下である。このような屈折率条件を満たすためには、本発明の熱可塑性重合体の各単量体単位組成を調整する方法、および/またはゴム質含有重合体(B)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成を調製する方法などが挙げられる。
【0121】
なお、ここで言う屈折率差とは、以下に示す方法で測定した値である。本発明の熱可塑性重合体が可溶な溶媒に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離する。この可溶部分(本発明の熱可塑性重合体を含む部分)と不溶部分(ゴム質含有重合体(B)を含む部分)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を屈折率差と定義する。
【0122】
また、熱可塑性樹脂組成物中での本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(B)の重合組成および分子量分布については、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作の後に、各成分を個別に分析する。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に関し、溶液製膜または溶融製膜により厚さ100±5μmのフィルムを作製し、このフィルムの表面を微分干渉型反射顕微鏡(ニコン社製 ECLIPSE LV100Dにより観察した際に、無作為に10カ所の点で観察、異物数(内部の異物由来の凹凸数)のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm)として評価した場合の1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数は、特に制限はないが、1000個以下であることが好ましく、より好ましくは15個以下であり、更に好ましくは10個以下であり、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0個である。ここで、異物とは外乱異物を除く。
【0123】
本発明において、本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(B)を配合する際の重量比は特に制限はないが、99/1〜40/60の範囲であることが好ましく、99/1〜50/50の範囲であることがより好ましく、99/1〜60/40の範囲であることが更に好ましく、99/1〜70/30の範囲であることが特に好ましい。
【0124】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(B)とを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合する方法を用いる。製造する熱可塑性樹脂組成物中のゴム質含有重合体粒子の凝集を抑制するためには、比較的低温、かつ回転数を低めにして剪断力があまりかからないように溶融混練することが好ましい。具体的にはニーディングゾーンにおける樹脂温度をTとすると、(本発明の熱可塑性重合体のTg+100℃)≦T≦(ゴム質含有重合体(B)の1%分解温度)の範囲に制御することが好ましく、さらには、(本発明の熱可塑性重合体のTg+120℃)≦T≦(ゴム質含有重合体(B)の0.5%分解温度)の範囲に制御することが一層好ましい。ここで、ゴム質含有重合体(B)の1%分解温度とは、窒素中での示差熱重量同時測定装置(セイコー電子工業社製、TG/DTA−200)を用いて、100〜450℃の温度領域を20℃/分の昇温速度で行った加熱試験により、加熱前の重量を100%とした時の重量減少率が1%に達した時の温度である。
【0125】
本発明の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度としては、特に制限はないが、実用耐熱性の観点から、好ましくは110℃以上であり、更に好ましくは120℃以上である。また、より好ましい態様においてはガラス転移温度が125℃以上であり、更に好ましくは130℃以上の極めて優れた耐熱性を有する。また、上限としては、特に制限はないが、通常200℃以下である。ここでいうガラス転移温度とは、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて昇温速度20℃/分で測定した際に観察されるガラス転移温度のうち、ゴム質重合体のガラス転移温度ではなく、熱可塑性樹脂組成物のマトリックスのガラス転移温度を指す。本発明では、ゴム質含有重合体(B)に加えて、更にモノホスファイト系化合物を含有することができる。これにより、ゴム質含有重合体(B)の分解が抑制され大幅な着色抑制、流動性向上効果が得られるため好ましく使用できる。
【0126】
本発明で用いるモノホスファイト系化合物とはその分子内に1個のリン原子を持ち3個の有機基が結合した有機亜リン酸エステルであり、耐熱性の点から分子量300〜2000が好ましく、さらに分子量350〜1500の範囲であることがより好ましく、特に分子量400〜1000の範囲であることが最も好ましい。分子量が300以下では溶融混練時に揮発しやすく着色抑制、流動性向上効果が得られ難く、分子量が2000以上の場合には異物化しやすく高度な透明性が得られない問題がある。さらに、性状として液体または固体などの形態があるが使用に際しての制限はなく、液体の場合粘度1〜10000mPa・sの範囲であることが好ましく、さらに粘度2〜7000mPa・sの範囲であることがより好ましく、特に粘度5〜5000mPa・sの範囲であることが最も好ましい。または固体性状の場合、融点60〜220℃の範囲が好ましく、さらに融点80〜210℃の範囲がより好ましく、特に融点100〜200℃の範囲が最も好ましい。さらに、有機亜リン酸エステルの3個の酸素原子の内2個以上が芳香族残基と結合している環状モノホスファイト系化合物、または、有機亜リン酸エステルの3個の酸素原子の内少なくとも1つが芳香族残基と結合しているモノホスファイト系化合物であることが好ましい。具体的なホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
この中で、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが特に好ましく利用できる。これらの特定のホスファイト系化合物を1種または2種以上併用して使用する事が可能である。
【0127】
本発明で用いるモノホスファイト系化合物には、さらにヒンダードフェノール系またはチオエーテル系化合物を併用することが可能である。ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物、チオエーテル系化合物を少なくとも一種を併用させることによりゴム質含有重合体の分解がさらに抑制され大幅な色調改良効果が得られる。
【0128】
具体的なヒンダ−ドフェノ−ル系化合物としては分子量400以上のものが好ましく、具体的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、1,6−へキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、N,N’−ヘキサメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0129】
具体的なチオエーテル系化合物はとしては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
【0130】
ホスファイト系化合物の添加量は特に制限はないが、ゴム質含有重合体(B)と熱可塑性重合体の合計量100重量部に対して、0.001〜5重量部の範囲で添加することが好ましい。ホスファイト系化合物の添加法としては、例えば、原重合体(A)の分子内環化反応によって(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体を製造する場合においては、ゴム質含有重合体(B)と原重合体(A)の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部のホスファイト系化合物を原重合体(A)と同時に添加し溶融混練する方法、本発明の熱可塑性重合体を製造する過程、該加熱処理途中の段階でゴム質含有重合体(B)と原重合体(A)との合計量100重量部に対して0.001〜5重量部のホスファイト系化合物を添加し溶融混練する方法、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体を製造した後、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(B)の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部のホスファイト系化合物を溶融混練する方法等が挙げられる。使用できる加熱処理装置としては特に制限はなく、例えば単軸押出機、二軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出装置、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダー混練機等が好ましく使用できる。
【0131】
また、ゴム質含有重合体(B)を含んでなる本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は特に制限はないが、プランジャー式キャピラリーレオメーター(東洋精機製作所製 キャピログラフ タイプ1C)を用いて、ガラス転移温度+130℃の温度で測定し、せん断速度12.16秒−1における溶融粘度(Pa・s)が10〜10000000Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜5000000Pa・sの範囲であり、更に好ましくは10〜1000000Pa・sの範囲であり、特に好ましくは10〜500000Pa・sの範囲であり、最も好ましくは10〜400000Pa・sの範囲である。
【0132】
また、本発明の熱可塑性重合体、および更にゴム質含有重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、エチレン−プロピレン−ジエン重合体およびポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル重合体、スチレン−アクリロニトリル重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック重合体等の芳香族ビニル系樹脂、塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系樹脂、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、PET樹脂、PBT樹脂およびポリ乳酸等のポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリオキシベンジレン、ポリアミドイミド、酸または酸無水物変性アクリル系エラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、ノボラックエポキシフェノール樹脂など、ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体等の熱可塑性樹脂から選ばれた一種以上、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から選ばれた一種以上を更に含有させることができる。特に、前記の脂組の面内位相差と厚み方向位相差を考慮した上で熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物に添加することにより、例えばゼロ位相差、正の位相差、負の位相差等、位相差を所望の値に調整する位相差調整剤とすることもできる。
【0133】
また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性を付与するためにヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系等の従来公知の紫外線吸収剤が含まれていることが好ましい。紫外線吸収剤の融点は特に制限はないが、80℃以上が好ましく、より好ましくは110℃以上であり、更に好ましくは120℃以上であり、特に好ましくは130℃以上であり、最も好ましくは140℃以上である。また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物は、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、難燃剤(赤燐、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、あるいはこれらのハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなど)、核剤、アミン系、スルホン酸系、帯電防止剤(イオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤や、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドエーテル、オレフィン系エーテルエステルアミドまたはオレフィン系エーテルエステルアミド等のポリアミドエラストマーのランダムまたはブロックポリマーなど)、顔料、蛍光顔料、蛍光増白剤などの着色剤、耐候剤、紫外線安定剤、光安定剤、滑剤、顔料、蛍光顔料、染料、蛍光染料、着色防止剤、可塑剤、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、木材粉、もみがら粉、くるみ粉、古紙、蓄光顔料、タングステン粉末あるいはタングステン合金粉末、ホウ酸ガラスや銀系抗菌剤などの抗菌剤や抗カビ剤、マグネシウム−アルミニウムヒドロキシハイドレートに代表されるハイドロタルサイトなどの金型腐食防止剤、含硫黄化合物系、アクリレート系、リン系有機化合物、塩化銅 、ヨウ化第1銅、酢酸銅、またはステアリン酸セリウムなどの金属塩安定剤などの酸化防止剤や耐熱安定剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。 本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形体に成形して使用することができる。
【0134】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、流延法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜380℃、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。また、流延法により本発明のフィルムを製造する場合、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤が使用可能である。好ましい溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン等である。該フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を前記の1種以上の溶剤に溶かし、その溶液をTダイ、バー付きTダイ、ダイ・コート、バーコーターなどを用いて、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱フィルム、スチールベルト、金属箔などの平板または曲板(ロール)上に流延し、溶剤を蒸発除去する乾式法、あるいは溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることにより製造できる。また、従来公知の単軸押出機や2軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出したフィルムを巻取りロールにてロール状のフィルムとして得る際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出し方向に延伸した1軸延伸、押出し方向に垂直な方向に延伸した同時2軸延伸、逐次2軸延伸を行うこともできる。本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいが、延伸、好ましくは2軸延伸することにより、フィルムの靱性が更に向上する傾向にある。ここで、延伸倍率の下限は特に制限はないが、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは1.2倍以上であり、更に好ましくは1.3倍以上であり、特に好ましくは1.4倍以上であり、延伸倍率の上限は特に制限はないが、好ましくは5.0倍以下であり、より好ましくは4.0倍以下であり、更に好ましくは3.5倍以下であり、特に好ましくは3.0倍以下である。
【0135】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを光学フィルムとして用いる際には、フィルムの位相差、光学等方性および剛性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)等を行うこともできる。また、位相差、光学等方性を所望のものに調製するべく、その他の熱可塑性樹脂を混合することもできる。また、本発明の熱可塑性重合体および熱可塑性樹脂組成物を表面層、内層等に有する多層積層体として用いること、または溶液としてコーティング用として用いることも可能である。
【0136】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物の厚さ40μmのフィルムを、恒温恒湿槽内で80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後の引張強度保持率(耐湿熱性)としては特に制限はないが、30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性重合体を原重合体(A)の溶融混練により分子内環化せしめて製造しているため、引張強度保持率に優れる傾向がある。
【0137】
ここで、引張強度としては、ペレット状の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれを80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は用いた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれのガラス転移温度+130℃の温度に設定)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却し、厚さ40μmのフィルムを作成して得られたフィルムをフィルム長手方向にJIS3号ダンベル形状に打ち抜き、引張試験機(東洋ボールドウィン社(現オリエンテック社)製テンシロンUTM−100)を用いて、JIS−K7113に準拠して測定する。また、前記の湿熱処理前の引張強度に対して、前記と同様にJIS3号ダンベル形状に打ち抜いた40μmのフィルムを恒温恒湿槽内で80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後のダンベル形状のフィルムを引張試験機(東洋ボールドウィン社(現オリエンテック社)製テンシロンUTM−100)を用いて、JIS−K7113に準拠して引張強度を測定した。前記(8)で得られた引張強度に対する引張強度保持率(%)を求める。引張強度保持率(%)=(湿熱処理後の引張強度/湿熱処理前の引張強度)×100。
【0138】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を偏光子保護フィルムとして使用する場合は、波長550nmの光に対する光弾性係数は特に制限はないが、好ましくは−20×10−12〜20×10−12Pa−1であり、より好ましくは−5×10−12〜5×10−12Pa−1であり、更に好ましくは−3×10−12〜3×10−12Pa−1であり、特に好ましくは−2×10−12〜2×10−12Pa−1であり、最も好ましくは−1×10−12〜1×10−12Pa−1であり、これにより、優れた光学特性を発揮することができる。尚、波長550nmの光に対する光弾性係数は、分光エリプソメーター(日本分光社製、製品名「M−220」)を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、23℃、波長550nmにてサンプル中央の位相差を測定し、応力(σ)と位相差の値の関数の傾きから算出することができる。
【0139】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を位相差フィルム用途以外の用途(例えば偏光子保護フィルム用途等)として使用する場合は、面内位相差Re(Δnd)の絶対値は小さい値である方が好ましく、Reの絶対値は好ましくは20.0nm以下であり、より好ましくは5.0nm以下であり、更に好ましくは1.5nm以下であり、特に好ましくは1.0nm以下であり、最も好ましくは0.5nm以下である。厚み方向位相差Rthの絶対値は小さい値である方が好ましく、好ましくは400nm以下、100nm以下であり、より好ましくは20.0nm以下であり、更に好ましくは5.0nm以下であり、特に好ましくは3.0nm以下であり、最も好ましくは2.0nm以下である。尚、ReおよびRthは、熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の厚さ40μmのフィルムのそれぞれについて、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製、自動複屈折計KOBRA−WRP)を用いて、温度23℃、測定波長590nmにて、屈折率nx、ny、nzを測定し、Re(Δnd)およびRthを算出することができる。
【0140】
また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を位相差フィルムとして用いる場合は、主に一軸延伸を行い、この延伸倍率を調整あるいは一軸延伸温度を調整することで、Re(Δnd)を適宜調整することができる。ここで、延伸倍率の下限は特に制限はないが、好ましくは1.05倍以上であり、より好ましくは1.1倍以上であり、更に好ましくは1.2倍以上であり、特に好ましくは1.3倍以上であり、延伸倍率の上限は特に制限はないが、好ましくは5.0倍以下であり、より好ましくは4.0倍以下であり、更に好ましくは3.5倍以下であり、特に好ましくは3.0倍以下である。一軸延伸時の温度としては特に制限はないが、温度の下限は、用いる熱可塑性重合体のTgに対して、Tg−30℃以上であることが好ましく、より好ましくはTg−20℃以上であり、更に好ましくはTg−10℃以上であり、特に好ましくはTg以上、最も好ましくはTg+5℃以上であり、上限は特に制限はないが、通常、Tg+50℃以下であり、好ましくはTg+30℃以下であり、更に好ましくはTg+20℃以下である。
【0141】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を位相差フィルムとして用いる場合は、例えば、1軸延伸して得た厚さ40μmのフィルムのReの絶対値の下限としては、20.0nm以上が好ましく、より好ましくは30.0nm以上であり、更に好ましくは40.0nm以上であり、特に好ましくは45.0nm以上であり、Reの絶対値の上限としては特に制限はないが、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは180nm以下であり、特に好ましくは160nm以下である。
【0142】
また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を製膜後、1軸延伸して得た厚さ40μmのフィルムについて、80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後のReの値と、湿熱処理前のReの値の差(ΔRe)の絶対値は特に制限はないが、製造時や長期使用時の光学特性の安定性の観点から、20.0nm以内であることが好ましく、より好ましくは10.0nm以内であり、更に好ましくは5.0nm以内であり、特に好ましくは3.0nm以内であり、最も好ましくは1.0nm以内であり、一軸延伸して得た厚さ40μmのフィルムを80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後のRthの値と、湿熱処理前のRthの値の差(ΔRth)の絶対値は特に制限はないが、40.0nm以内であることが好ましく、より好ましくは20.0nm以内であり、更に好ましくは10.0nm以内であり、特に好ましくは3.0nm以内であり、最も好ましくは2.0nm以内である。尚、湿熱処理前後のReはフィルムの厚さ40μmの箇所において、同様の箇所を同条件で測定するものである。
【0143】
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を製膜後、2軸延伸して得た厚さ40μmのフィルムについて、80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後のReの値と、湿熱処理前のReの値の差(ΔRe)の絶対値は特に制限はないが、製造時や長期使用時の光学特性の安定性の観点から、10.0nm以内であることが好ましく、より好ましくは3.0nm以内であり、更に好ましくは1.0nm以内であり、特に好ましくは0.5nm以内であり、最も好ましくは0.3nm以内であり、2軸延伸して得た厚さ40μmのフィルムを80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後のRthの値と、湿熱処理前のRthの値の差(ΔRth)の絶対値は特に制限はないが、40.0nm以内であることが好ましく、より好ましくは5.0nm以内であり、更に好ましくは2.0nm以内であり、特に好ましくは1.0nm以内であり、最も好ましくは0.5nm以内である。尚、湿熱処理前後のRe、Rthはフィルムの厚さ40μmの箇所において、湿熱処理前と同様の箇所を同条件で測定するものである。
【0144】
また、厚さ40μmのフィルムの厚みムラは、特に制限はないが、±50%未満であることが好ましく、より好ましくは±20%未満であり、更に好ましくは±10%未満であり、特に好ましくは±5%未満であり、更に好ましくは±1%未満、最も好ましくは厚みムラがないことである。厚さ40μmのフィルムのRthの測定箇所による変動の幅は特に制限はないが、±50%未満であることが好ましく、より好ましくは±30%未満であり、更に好ましくは±20%未満であり、特に好ましくは±10%未満であり、最も好ましくはRthの変動は±1%未満である。
【0145】
本発明の熱可塑性重合体中の、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位および/または前記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量が増加すると、例えば80℃/95%RHあるいは60℃/95%RH等の条件で湿熱処理を行った際に、熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物のReの湿熱処理前後での変化量(低下量)、Rthの湿熱処理前後での変化量(上昇量)が大きくなる傾向にある。ここで、(i)グルタルイミド環構造単位および前記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位は正のReを与え、前記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位は負のReを与えるものであり、湿熱処理前後でのこれら単位の含有量の変化が、Re、Rthの変化に影響を与える。
【0146】
本発明において、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物よりなる偏光子保護フィルムは、少なくとも片面に傷防止のためにハードコート層や反射防止膜を有していてもよい。このようなハードコート層を形成するハードコート剤としては特に制限はないが、例えば、有機珪素系化合物、エポキシ化合物、メラミン樹脂等を主成分とする熱硬化性の架橋性樹脂や、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、活性エネルギー線硬化性の架橋性樹脂等を挙げることができる。反射防止膜としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、少なくとも光吸収層を含んでいることが好ましい。
【0147】
本発明の熱可塑性重合体および熱可塑性樹脂組成物を溶融加工して得られる成形品またはフィルムは、高度な耐熱性と無色透明性を有し、流動性、耐衝撃性、および溶融滞留安定性に大きく優れる点を活かして、光学材料、電気電子部品、自動車部品、機械機構部品、ハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができ、より具体的には、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品として、カメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料などにも適用することができ、これら各種の用途にとって極めて有用である。尚、本発明においては、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム等を光学補償フィルムと総称する。また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を偏光子保護フィルムとして用いる際には、偏光子との間に易接着層を用いることができ、前記接着層としては特に制限はないが、例えば従来公知のものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0148】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各測定および評価は次の方法で行った。
【0149】
(1)原重合体(A)、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の各成分組成
得られた原重合体(A)、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体重合の各々を重水素化ジメチルスルホキシド中で1H−NMR測定を行い、各成分組成を決定した。熱可塑性重合体が、例えば、メタクリル酸メチル単位、グルタルイミド環構造単位およびメタクリルアミド単位から構成されるものである場合、1H−NMRスペクトルを測定し、0.8〜1.1ppmのピークがメタクリル酸メチル単位およびグルタルイミド環構造単位のα−メチル基の水素、1.6〜1.9ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.4〜3.8ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、6.5〜7.7ppmのピークはメタクリルアミド単位のアミド基の水素、10.1〜10.9ppmのピークはグルタルイミド環構造単位の水素と帰属し、スペクトルの積分比から各重合単位の組成を計算した。また、熱可塑性重合体が、例えば、メタクリル酸メチル単位、N−メチル基を有するグルタルイミド環構造単位およびN−メチルメタクリルアミド単位から構成される重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークは、メタクリル酸メチル単位およびN−メチルメタクリルアミド単位のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖中のメチレン基の水素、3.4〜3.8ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、2.3〜3.0ppmのピークはN−メチルメタクリルアミド単位のN−メチル基の水素、2.6〜3.2ppmのピークはN−メチルグルタルイミド環構造単位のN−メチル基の水素、6.9〜7.7ppmのピークはN−メチルメタクリルアミド単位のアミド基の水素である。また、他の共重合成分として、スチレンを含有する場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、これらの積分強度の比を比較し、各々の比を算出することができるが、更に、下記13C−NMRにより、(メタ)アクリル酸単位等の不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位の存在の有無と、存在する際には不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸エステルまたはグルタルイミド環構造単位との比を算出し、先の1H−NMRの結果と合わせて、不飽和カルボン酸単位およびグルタル酸無水物単位の含有量を算出し、組成を決定した。13C−NMRによる熱可塑性重合体中のグルタル酸無水物単位の含有量の確認方法としては、600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度15℃、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定し測定することで得られるものであり、本発明の熱可塑性重合体の重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、グルタル酸無水物環のカルボニルピークは、化学シフト170.8〜174.1ppmの範囲に、グルタル酸無水物環のそれぞれのカルボニルの置かれた環境の違いにより分裂し、これらが一部重なって観察される。不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測される。また、(iii)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト176.00〜179.43ppmの範囲に分裂して観測される。上記の各々の単位のピークについて、その積分強度から各々の単位の組成比を算出し、1H−NMRの測定結果と合わせて、組成を決定した。
【0150】
(2)ガラス転移温度(Tg)
実施例または比較例で得られたペレット状の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
【0151】
(3)黄色度(Yellowness Index(YI値))
実施例または比較例で得られたペレット状の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は用いた熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃の温度に設定、熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却し、厚さ40μmのフィルムを作成した。フィルムの厚さは、JIS K7130−1999に準拠して測定した。得られた厚さ40μmのフィルムのYI値をJIS K7105−1981に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0152】
(4)透明性(全光線透過率、ヘイズ)
前記(3)で得られた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の厚さ40μmのフィルムのそれぞれについて、日本電色工業社製ヘイズメーター NDH−300Aを用いて、JIS−K7105−1981に準拠して、23℃、50%RHでの全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
【0153】
(5)滞留安定性
前記(3)で黄色度の測定に用いた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれのフィルムについて、熱可塑性重合体のガラス転移温度+150℃(熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+150℃)の温度にてプレス成形機のプレス金型上で30分間溶融滞留させた後に、そのまま熱可塑性重合体のガラス転移温度+150℃の温度にてプレス成形して得た厚さ40μmのフィルムのYI値と、前記(3)で測定したYI値との差(ΔYI)の絶対値を算出した。
【0154】
(6)面内位相差(Re)(2軸1.5倍延伸フィルムのRe)
実施例または比較例で得られたペレット状の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は用いた熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃の温度に設定、熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却し、厚さ80μmのフィルムを作成した。フィルムの厚さは、JIS−K7130−1999に準拠して測定した。得られた厚さ80μmのフィルムをガラス転移温度+10℃の温度で自動二軸延伸装置(井元製作所社製)を用いて、60mm/minの速度で2軸同時1.5倍延伸し、40μmの2軸1.5倍同時延伸フィルムを得た。得られた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の厚さ40μmの2軸1.5倍同時延伸フィルムのそれぞれについて、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製、自動複屈折計KOBRA−WRP)を用いて、温度23℃、測定波長590nmにて、屈折率nx、ny、nzを測定し、Re(Δnd)を算出した。尚、実施例6および7では、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いて作製した、実施例6および7の熱可塑性樹脂組成物よりなる未延伸の厚さ40μmのフィルムについても、前記と同様の条件でRe(Δnd)を算出し、未延伸フィルムのReとした。
【0155】
(7)面内位相差(Re)(1軸2倍延伸フィルムのRe)
実施例または比較例で得られたペレット状の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は用いた熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃の温度に設定、熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却し、厚さ55μmのフィルムを作成した。このフィルムをガラス転移温度+10℃の温度で自動二軸延伸装置(井元製作所社製)を用いて、60mm/minの速度で1軸2倍延伸して、厚さ40μmの1軸2倍延伸フィルムを作製し、前記(6)と同様にRe(Δnd)を算出した。
【0156】
(8)引張強度、引張伸度
実施例または比較例で得られたペレット状の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は用いた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれのガラス転移温度+130℃の温度に設定)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却し、厚さ40μmのフィルムを作成した。フィルムの厚さは、JIS−K7130−1999に準拠して測定した。次いで、得られたフィルムをフィルム長手方向にJIS3号ダンベル形状に打ち抜き、引張試験機(東洋ボールドウィン社(現オリエンテック社)製テンシロンUTM−100)を用いて、JIS−K7113に準拠して引張強度を測定した。また、熱可塑性樹脂組成物についてはJIS−K7113に準拠して引張伸度の測定も行った。尚、引張強度、引張伸度は未延伸のフィルムの値である。
【0157】
(9)耐湿熱性(2軸1.5倍延伸フィルムの湿熱処理前後での面内位相差変化量の絶対値)(2軸1.5倍延伸フィルムのΔReの絶対値)
前記(6)でReを測定した2軸1.5倍延伸フィルム、未延伸フィルムの各々について、恒温恒湿槽内で80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製、自動複屈折計KOBRA−WRP)を用いて、温度23℃、測定波長590nmにて、屈折率nx、ny、nzを測定し、Re(Δnd)を算出し、前記(6)で測定した湿熱処理前のReの値と、湿熱処理後のReの値の差(ΔRe)の絶対値を求めた。
【0158】
(10)耐湿熱性(1軸2倍延伸フィルムの湿熱処理前後での面内位相差変化量の絶対値)(1軸2倍延伸フィルムのΔReの絶対値)
前記(7)でReを測定した一軸2倍延伸フィルムについて、恒温恒湿槽内で80℃/95%RHで60時間湿熱処理を行った後、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製、自動複屈折計KOBRA−WRP)を用いて、温度23℃、測定波長590nmにて、屈折率nx、ny、nzを測定し、Re(Δnd)を算出し、前記(7)で測定した湿熱処理前のReの値と、湿熱処理後のReの値の差(ΔRe)の絶対値を求めた。
【0159】
(11)原重合体(A)、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の重量平均分子量・分子量分布
得られた原重合体(A)、(i)グルタルイミド環構造単位を含有する熱可塑性重合体の各々をジメチルホルムアミドに溶解して、0.3重量%の測定サンプル溶液とし、ジメチルホルムアミドを溶媒として、温度23℃にて、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製、流速:0.8ml/分)を用い、データ処理としてはデータ処理ソフト“ASTRA”( Wyatt Technology社製)を用いて、絶対分子量として重量平均分子量、分子量分布を測定した。分子量分布は、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出した。尚、参考例、実施例および比較例において、重量平均分子量(以下、Mwと記載することもある)は、百の位で四捨五入し、有効数字を千の位までとし、分子量分布(以下、Mw/Mnと記載することもある)は、小数点以下3位で四捨五入し、小数点以下2位までで表した。
【0160】
(12)重合収率
単量体混合物を重合して得た原重合体(A)、比較例用の原重合体の各々の重合溶液について、各々、再沈殿により精製を行って得た原重合体(A)、比較例用の原重合体の各々のケークから、真空乾燥機中、減圧(10Torr)下、80℃にて15時間真空乾燥し、そのまま更に140℃で真空乾燥処理を揮発分を完全に留去するまで実施することにより、重合収率を下式より算出した。尚、本発明において、真空乾燥とは、特に断らない限り、真空乾燥機(ヤマト科学社製 DP−32)を用いて、10Torrの圧力下、実施することを指す。
重合収率(%)=[加熱処理後得られた重合体の全重量/仕込んだ単量体成分の全重量]×100、ここで、前記重合体とは原重合体(A)、比較例用の原重合体の各々を指す。
【0161】
実施例
熱可塑性重合体(c−1)〜(c−5)の製造
実施例1:熱可塑性重合体(c−1)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル92重量部、メタクリルアミド8重量部、1、4−ジオキサン140重量部およびn−ドデシルメルカプタン0.1重量部からなる混合物を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。1、4−ジオキサン10重量部およびラウロイルパーオキサイド0.6重量部からなる混合物を2時間で逐次添加し、さらに90℃で3時間保った後、重合を終了した。重合後、150重量部の1、4−ジオキサンを投入して内容物を希釈し、次いで、過剰のイオン交換水中に投入して重合物を沈殿させ、更にイオン交換水で二度洗浄し、これを濾過して分別した。次いで、80℃にて15時間、140℃にて5時間真空乾燥して、原重合体(a−1)を得た。Mwは、135000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.95であった。原重合体(a−1)の重合率は70%であり、重合組成はメタクリル酸メチル単位/メタクリルアミド単位(重量%比)=94/6であった。
【0162】
次いで原重合体(a−1)100重量部を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給速度15kg/h、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(e−1)を得た。Mwは、130000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.95であった。熱可塑性重合体(c−1)の組成はメタクリル酸メチル単位93.0重量%、グルタルイミド環構造単位7.0重量%、メタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%、グルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は130℃であった。
【0163】
実施例2:熱可塑性重合体(c−2)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル90重量部、メタクリルアミド10重量部、1、4−ジオキサン140重量部およびn−ドデシルメルカプタン0.2重量部からなる混合物を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。1、4−ジオキサン10重量部およびラウロイルパーオキサイド0.6重量部からなる混合物を2時間で逐次添加し、さらに90℃で3時間保った後、重合を終了した。重合後、150重量部の1、4−ジオキサンを投入して内容物を希釈し、次いで、過剰のイオン交換水中に投入して重合物を沈殿させ、更にイオン交換水で二度洗浄し、これを濾過して分別した。次いで、80℃にて15時間、140℃にて5時間真空乾燥して、原重合体(a−2)を得た。Mwは、108000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.95であった。原重合体(a−2)の重合率は70%であり、重合組成はメタクリル酸メチル単位/メタクリルアミド単位(重量%比)=91/9であった。
【0164】
次いで原重合体(a−2)100重量部を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給速度15kg/h、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(c−2)を得た。Mwは100000、分子量分布(Mw/Mn)は1.92であった。熱可塑性重合体(c−2)の組成はメタクリル酸メチル単位90.0重量%、グルタルイミド環構造単位10.0重量%、メタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%、グルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は133℃であった。
【0165】
実施例3:熱可塑性重合体(c−3)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル70重量部、N−メチルメタクリルアミド30重量部、1、4−ジオキサン100重量部およびn−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら120℃に昇温した。1、4−ジオキサン10重量部およびラウロイルパーオキサイド0.6重量部からなる混合物を3時間で逐次添加し、さらに3時間保った後、重合を終了した。重合後、200重量部の1、4−ジオキサンを投入して内容物を希釈し、次いで、過剰のイオン交換水/メタノール(70/30)混合溶液中に投入して重合物を沈殿させ、沈殿物をろ過した後、更にイオン交換水/メタノール(70/30)混合溶液で3回洗浄し、これをろ過して分別した。次いで、80℃にて15時間、140℃にて15時間真空乾燥して、原重合体(a−3)を得た。原重合体(a−3)のMwは95000、分子量分布(Mw/Mn)は2.15であった。原重合体(a−3)の重合率は90%であり、重合組成はメタクリル酸メチル単位/N−メチルメタクリルアミド単位(重量%比)=75/25であった。
【0166】
次いで原重合体(a−3)100重量部を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給速度15kg/h、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(c−3)を得た。Mwは90000、分子量分布(Mw/Mn)は2.15であった。熱可塑性重合体(c−3)の組成はメタクリル酸メチル単位:83重量%、グルタルイミド環構造単位27重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%、グルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は132℃であった。
【0167】
実施例4:熱可塑性重合体(c−4)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル80重量部、メタクリルアミド20重量部、1、4−ジオキサン140重量部およびn−ドデシルメルカプタン0.2重量部からなる混合物を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。1、4−ジオキサン10重量部およびラウロイルパーオキサイド0.4重量部からなる混合物を1時間で逐次添加し、さらに3時間保った後、重合を終了した。重合後、150重量部の1、4−ジオキサンを投入して内容物を希釈し、次いで、過剰のイオン交換水中に投入して重合物を沈殿させ、更にイオン交換水で二度洗浄し、これを濾過して分別した。次いで、80℃にて15時間、140℃にて5時間真空乾燥して、原重合体(a−4)を得た。Mwは104000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.85であった。原重合体(a−4)の重合率は60%であり、重合組成はメタクリル酸メチル単位/メタクリルアミド単位(重量%比)=83/17であった。
【0168】
次いで原重合体(a−4)100重量部を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給速度15kg/h、シリンダ温度295℃で分子内環化反応を行い、押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(c−4)を得た。Mwは、100000、分子量分布(Mw/Mn)は、1.85であった。熱可塑性重合体(c−4)の組成はメタクリル酸メチル単位81.5重量%、グルタルイミド環構造単位18.5重量%、メタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%、グルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は145℃であった。
【0169】
実施例5:熱可塑性重合体(c−5)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル65重量部、メタクリルアミド35重量部、1、4−ジオキサン100重量部およびn−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら120℃に昇温した。1、4−ジオキサン10重量部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.6重量部からなる混合物を3時間で逐次添加し、さらに120℃で3時間保った後、重合を終了した。重合後、200重量部の1、4−ジオキサンを投入して内容物を希釈し、次いで、過剰のイオン交換水/メタノール(70/30)混合溶液中に投入して重合物を沈殿させ、沈殿物をろ過した後、更にイオン交換水/メタノール(70/30)混合溶液で3回洗浄し、これをろ過して分別した。次いで、80℃にて15時間、140℃にて15時間真空乾燥して、原重合体(a−5)を得た。Mwは95000、分子量分布(Mw/Mn)は2.12であった。原重合体(a−5)の重合率は90%であり、重合組成はメタクリル酸メチル単位/メタクリルアミド単位(重量%比)=68/32であった。
【0170】
次いで原重合体(a−5)100重量部を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給速度15kg/h、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(c−5)を得た。Mwは、90000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.15であった。熱可塑性重合体(c−4)の組成はメタクリル酸メチル単位:65.0重量%、グルタルイミド環構造単位35.0重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%、グルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は152℃であった。
【0171】
比較例1 比較例用の熱可塑性重合体(d−1)の合成
40mmφの噛合い型同方向回転式二軸押出機のホッパーより窒素を200ml/minの流量で押出機内にフローし、押出機の反応ゾーン(一級アミン注入口からベント口までの間)の温度を270℃、スクリュー回転数200rpmとして、ホッパーから110℃で8時間乾燥させたポリメタクリル酸メチル樹脂(住友化学工業社製、スミペックスMH)を20kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して、注入ノズルから15重量部のモノメチルアミン(4kg/hr)を注入した。反応ゾーンの末端(ベント口の手前)にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性重合体(d−1)を得た。Mwは100000、分子量分布(Mw/Mn)は2.25であった。熱可塑性重合体(d−1)の組成を1H−NMRと13C−NMRの両方を使用して解析した結果(メタクリル酸単位、グルタル酸無水物単位の存在および組成を13C−NMRで確認)、メタクリル酸メチル単位69.2重量%、グルタルイミド環構造単位(N−メチルグルタルイミド環構造単位)26.0重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位2.5重量%およびグルタル酸無水物単位2.3重量%であり、ガラス転移温度は132℃であった。
【0172】
比較例2 比較例用の熱可塑性重合体(d−2)の合成
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、窒素パージを行いながら、メタクリル酸メチル65重量部、メタクリルアミド35重量部、溶媒としてメタノール130重量部を仕込み、ジ−t−ブチルパーオキサイド1重量部およびn−オクチルメルカプタン0.16重量部を加え、撹拌下に120℃へ昇温し共重合を開始した。重合の進行とともに定量ポンプを用いてメタクリル酸メチル92重量部を3時間かけて等速で連続的に供給して共重合を6時間行った。引き続き同一装置、同一温度でナトリウムメトキシド0.25重量部含むメタノール溶液11.5重量部を定量ポンプを用いて供給し撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、系内の温度が45℃となった時に沈澱したポリマーを取り出し、メタノールで洗浄した後、130℃で24時間真空乾燥を行い、比較例用の熱可塑性重合体(d−2)を得た。比較例用の熱可塑性重合体(d−2)の重合率は80%であり、Mwは120000、分子量分布(Mw/Mn)は2.24であった。組成はメタクリル酸メチル単位65.0重量%、グルタルイミド環構造単位35.0重量%、メタクリルアミド単位0.0重量%であり、メタクリル酸単位0.0重量%およびグルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は150℃であった。
【0173】
比較例3 比較例用の熱可塑性重合体(d−3)の合成
40mmφの噛合い型同方向回転式二軸押出機のホッパーより窒素を200ml/minの流量で押出機内にフローし、押出機の反応ゾーン(一級アミン注入口からベント口までの間)の温度を270℃、スクリュー回転数200rpmとして、ホッパーから110℃で8時間乾燥させたメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(80モル%/20モル%)を20kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して、注入ノズルから20重量部のモノメチルアミン(4kg/hr)を注入した。反応ゾーンの末端(ベント口の手前)にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で16時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性重合体(d−3)を得た。Mwは、120000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.25であった。比較例用の熱可塑性重合体(d−3)の組成を1H−NMRと13C−NMRの両方を使用して解析した結果(メタクリル酸単位、グルタル酸無水物単位の存在および組成を13C−NMRで確認)、メタクリル酸メチル単位24.6重量%、グルタルイミド環構造単位(N−メチルグルタルイミド環構造単位)48.1.重量%、スチレン21.5重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位3.3重量%およびグルタル酸無水物単位2.5重量%であり、ガラス転移温度は155℃であった。
【0174】
比較例4 比較例用の熱可塑性重合体(d−4)の合成
特開2007−9191号公報の実施例7を参考として、比較例3で得られた比較例用の熱可塑性重合体(d−3)のカルボキシル基の低減を行った。押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機のホッパーへ、比較例用の熱可塑性重合体(d−3)を1kg/hrの速度で供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂100重量部に対して、エステル化剤として8重量部の炭酸ジメチル、および触媒として2重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し、樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。また、反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。その後、反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.09MPaに減圧して除去した。押出機のダイスから出てきたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイズしペレットを得た後、更にこのペレットを、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で、ベント口の圧力を−0.09MPaに減圧して、残存する揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、比較例用の熱可塑性重合体(d−4)を得た。比較例用の熱可塑性重合体(d−4)の組成を1H−NMRと13C−NMRの両方を使用して解析した結果(メタクリル酸単位、グルタル酸無水物単位の存在および組成を13C−NMRで確認)、メタクリル酸メチル単位26.0重量%、グルタルイミド環構造単位(N−メチルグルタルイミド環構造単位)48.0重量%、スチレン21.5重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位2.2重量%およびグルタル酸無水物単位2.3重量%であり、ガラス転移温度は153℃であった。
【0175】
比較例5 比較例用の熱可塑性重合体(d−5)の合成
比較例4において、原料に熱安定剤としてイルガノックスHP2215を添加して、比較例4と同様の製造法にて比較例3で得られた比較例用の熱可塑性重合体(d−3)のカルボキシル基の低減を行い、比較例用の熱可塑性重合体(d−5)を得た。組成を1H−NMRと13C−NMRの両方を使用して解析した結果(メタクリル酸単位、グルタル酸無水物単位の存在および組成を13C−NMRで確認)、メタクリル酸メチル単位26.0重量%、グルタルイミド環構造単位(N−メチルグルタルイミド環構造単位)48.0重量%、スチレン21.5重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位2.2重量%およびグルタル酸無水物単位2.3重量%であり、、ガラス転移温度は152℃であった。
【0176】
比較例6 比較例用の熱可塑性重合体(d−6)の合成
特開2002−338624号公報の実施例5を参考として比較例3で得られた比較例用の熱可塑性重合体(d−3)のカルボキシル基の低減を行った。比較例用の熱可塑性重合体(d−3)30gをジメチルホルムアミド270gに70℃で溶解させた後、液温を20℃まで下げた。20℃において、この溶液にヨウ化メチル6.2gを添加し、さらに水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム/メタノール溶液(10%、56.8g)を添加した。1時間後、反応液をメタノール(1000ml)に投入し、重合体を沈殿させた。この沈殿物を濾別し、乾燥させて20gの比較例用の熱可塑性重合体(d−6)を得た。組成を1H−NMRと13C−NMRの両方を使用して解析した結果(メタクリル酸単位、グルタル酸無水物単位の存在および組成を13C−NMRで確認)、メタクリル酸メチル単位30.6重量%、グルタルイミド環構造単位(N−メチルグルタルイミド環構造単位)47.9重量%、スチレン21.5重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%およびグルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は145℃であった。
【0177】
比較例7 比較例用の熱可塑性重合体(d−7)
特許公告平4−61007の実施例1を参考にして、比較例用の熱可塑性重合体(d−7)の合成を行った。メタクリル酸メチル50重量部、N−メチルメタクリルアミド50重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.01重量部およびtert−ドデシルメルカプタン0.1重量部を溶解してガラス製アンプルに入れ、液体窒素温度下で冷却した後、脱気を繰り返して窒素雰囲気下で封管した。次いで、この封管アンプルを加熱浴に入れ、70℃で15時間加熱した後、更に120℃で3時間加熱して重合を完結した。重合率は95%であり、この重合体をテトラヒドロフランに溶解した後、過剰のn−ヘキサン中で再沈殿を3回繰り返して精製した。この重合体のMwは204000であり、Mw/Mnは2.50であった。次にこの重合体を50mlの試験管に30g入れ、230℃のオイルバス中で5時間加熱した。その後、1.0mmHgの減圧下で揮発分を留去して、比較例用の熱可塑性重合体(d−7)を得た。この比較例用の熱可塑性重合体(d−7)のMwは185000、Mw/Mnは2.35であった。メタクリル酸メチル単位37.5重量%、グルタルイミド環構造単位(N−メチルグルタルイミド環構造単位)62.5重量%、N−メチルメタクリルアミド単位0.0重量%、メタクリル酸単位0.0重量%およびグルタル酸無水物単位0.0重量%であり、ガラス転移温度は155℃であった。
【0178】
実施例1〜5および比較例1〜7の結果をまとめたものを表1に示す。表1では、グルタルイミド環構造単位をGI環構造単位、メタクリル酸単位をMAA単位、グルタル酸無水物単位をGAH単位、スチレン単位をST単位と記載した。
【0179】
【表1】

【0180】
表1の実施例1〜5と比較例1〜7との比較から、(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(a−1)〜(a−5)を溶融混練し、分子内環化反応せしめる製造法により、メタクリル酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下の(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することができることがわかった。前記製造法で製造した実施例1〜5の熱可塑性重合体は、比較例1〜7の比較例用の熱可塑性重合体と比較して、高度な耐熱性を有しながら、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有することがわかった。
【0181】
参考例1:ゴム質含有重合体(b−1)の製造
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内にイオン交換水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル51重量部、スチレン19重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル24重量部、メタクリルアミド6重量部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(b−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
【0182】
参考例2:ゴム質含有重合体(b−2)
三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)W377”(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)を使用した。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
【0183】
実施例6、7:熱可塑性樹脂組成物(e−1)、(e−2)
実施例2で得られた熱可塑性重合体(c−2)のペレットおよびゴム質含有重合体(b−1)、(b−2)を表2に示した組成で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。これらについて、評価結果を表2に示す。
【0184】
【表2】

【0185】
表2より、本発明の熱可塑性重合体に更にゴム質含有重合体(B)を含有させた実施例6、7の熱可塑性樹脂組成物は、高度な耐熱性を維持したまま、無色性、透明性、滞留安定性および耐湿熱性に優れ、かつ引張強度と引張伸度においても優れることがわかった。これらの効果は、特に、熱可塑性重合体(c−2)にゴム質含有重合体(b−1)を配合した実施例6の熱可塑性樹脂組成物で顕著であった。また、実施例6の熱可塑性樹脂組成物は、延伸処理を行わずともゼロ位相差となり、ゼロ位相差を視野においた光学補償フィルムに展開する上で光学特性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物およびこれらからなる成形品およびフィルムは、高度な耐熱性を有しながら、無色性、透明性、引張強度および滞留安定性に優れ、かつ優れた耐湿熱性をも有するため、光学材料、機械関連部品、精密機械関連部品、電気機器のハウジング、情報機器関連部品等の多種多様な用途、特に光学補償フィルム等の光学フィルム用途として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含有し、下記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸単位の含有量が2.0重量%以下であり、ガラス転移温度が110℃以上である熱可塑性重合体であって、前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの黄色度が2.0以下でかつヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする熱可塑性重合体。
【化1】

(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【化2】

(ただし、R4は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【請求項2】
前記熱可塑性重合体中の前記不飽和カルボン酸単位の含有量が1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性重合体。
【請求項3】
前記熱可塑性重合体からなる厚さ40μmのフィルムの全光線透過率が91%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性重合体。
【請求項4】
前記熱可塑性重合体が(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することにより分子内環化反応せしめて得られるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体。
【請求項5】
前記熱可塑性重合体が(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位および(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む原重合体(A)を溶融混練することにより分子内環化反応せしめて得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体。
【請求項6】
前記熱可塑性重合体が(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体。
【請求項7】
前記熱可塑性重合体をガラス転移温度+150℃の温度にて30分間溶融滞留させた際の黄色度の変化量(ΔYI)の絶対値が2.0以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体。
【請求項8】
前記熱可塑性重合体が(i)グルタルイミド環構造単位を1〜99重量%含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体。
【請求項9】
(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することを特徴とする熱可塑性重合体の製造方法。
【化3】

(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【請求項10】
(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位および(iii)不飽和カルボン酸エステル単位を含む原重合体(A)を溶融混練することで分子内環化反応せしめることにより、下記一般式(1)で表される(i)グルタルイミド環構造単位を含む熱可塑性重合体を製造することを特徴とする請求項9に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
【化4】

(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかである。R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
【請求項11】
前記溶融混練を押出機を用いて行うことを特徴とする請求項9または10に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
【請求項12】
前記押出機が、ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
【請求項13】
第二工程後の熱可塑性重合体中に残存する(ii)アミド基含有ビニル系単量体単位が5重量%以下であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
【請求項14】
前記熱可塑性重合体がジメチルスルホキシドに溶解することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体からなる成形品。
【請求項16】
成形品がフィルムである請求項15記載の成形品。
【請求項17】
フィルムが光学補償フィルムである請求項16記載のフィルム。

【公開番号】特開2008−255175(P2008−255175A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97022(P2007−97022)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】