説明

熱媒体加熱装置およびこれを備えた車両用空調装置

【課題】大型化することなく冷却板の密着性を高めることが可能な熱媒体加熱装置およびこれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ順次積層される電極板と、熱媒体を供給する入口ヘッダ部22および熱媒体が導出される出口ヘッダ部23と、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23に設けられる密着部材と、を有し、電極板を間に挟んで互いに平行に積層されて電極板と熱交換する複数の扁平状の熱交チューブ17と、積層された複数の熱交チューブ17の一面側に設けられて、電極板に接続される基板と、基板に接続される発熱素子と、基板の他面側に接続されて、積層された複数の熱交チューブ17を押圧する板状の押圧部材16と、電極板、熱交チューブ17、基板、押圧部材17および発熱素子が収容されるケーシング11と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体加熱装置およびこれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つとして、正特性サーミスタ素子(PTC素子)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。
PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇とともに抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
このように、PTCヒータは、ヒータの温度が上昇すると消費電流が低くなり、その後一定温度の飽和領域に達すると、消費電流が低い値で安定するという特性を有する。この特性を利用することにより、消費電力を節減することができるとともに、発熱部温度の異常上昇を防止することができるという利点が得られる。
このような特長を有することから、PTCヒータは、多くの技術分野において用いられており、空調の分野においても、例えば、車両用空調装置において、空気加温用の放熱器に供給する熱媒体(ここでは、エンジンの冷却水)を加熱するための加熱装置に適用したものが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−7106号公報
【特許文献2】特開2010−2094号公報
【特許文献3】特許第4100328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の発明は、冷却器を製造時に、垂直にケーシングに挿入された複数の冷却板の間を加圧して各冷却板に設けられているダイアフラム部を変形させることによって半導体素子と冷却板とを密着させている。そのため、水平方向に冷却板を積層させる場合には、冷却器の高さ方向を小さくすることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、大型化することなく冷却板の密着性を高めることが可能な熱媒体加熱装置およびこれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明に係る熱媒体加熱装置は、PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ積層される電極板と、熱媒体を供給する入口ヘッダ部および前記熱媒体が導出される出口ヘッダ部と、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられる密着部材と、を有し、前記電極板を間に挟んで互いに平行に積層されて該電極板と熱交換する複数の扁平状の熱交チューブと、積層された複数の前記熱交チューブの一面側に設けられて、前記電極板に接続される基板と、該基板に接続される発熱素子と、前記基板の他面側に接続されて、積層された複数の前記熱交チューブを押圧する板状の押圧部材と、前記電極板、前記熱交チューブ、前記基板、前記押圧部材および前記発熱素子が収容されるケーシングと、を備えることを特徴とする。
【0008】
PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ積層される電極板と熱交換する複数の熱交チューブを互いに平行に積層し、積層された複数の熱交チューブの一面側に基板と押圧部材とを設けることとした。そのため、押圧部材によって入口ヘッダ部間および出口ヘッダ部間に設けられた密着部材を密着させることができる。これにより、積層させた熱交チューブの密着性が高められて、電極板と熱交チューブとの接触熱抵抗を低減させることができる。したがって、熱交チューブから電極板への伝熱効率を向上させた熱媒体加熱装置にすることができる。
【0009】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、前記発熱素子は、前記基板と前記押圧部材との間に設けられ、前記押圧部材は、金属製であることを特徴とする。
【0010】
金属製の押圧部材と基板との間に発熱素子を設けることとした。そのため、積層された熱交チューブを押圧部材によって押圧するとともに、押圧部材を介して発熱素子を熱交チューブからの冷却熱によって冷却することができる。したがって、熱媒体加熱装置の伝熱効率をさらに向上させることができる。
また、積層された熱交チューブを押圧する押圧部材と発熱素子を冷却する冷却部材とを押圧部材によって兼用することとした。そのため、熱媒体加熱装置を構成する部品数を減らすことができる。したがって、熱媒体加熱装置全体を小型化することができる。
【0011】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、前記ケーシングには、積層された複数の前記熱交チューブに導かれる前記熱媒体の導出入を行う熱媒体導出入路が一体的に形成されることを特徴とする。
【0012】
熱媒体の導出入を行う熱媒体導出入路をケーシングに一体的に形成することとした。そのため、熱媒体を熱媒体加熱装置に供給する際に、積層された熱交チューブにかかる応力を分散することができる。したがって、積層された熱交チューブにかかる荷重を低減することができる。
【0013】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、前記電極板は、その長手方向の一端部から突出する複数の端子を有し、前記基板は、その長手方向の一端部に前記複数の端子に対向する複数の端子台を有し、前記複数の端子と、前記複数の端子台とが接合することを特徴とする。
【0014】
電極板の長手方向の一端部から突出する複数の端子と、基板の長手方向の一端部に電極板に設けられる複数の端子に対向する複数の端子台とを接合することとした。これにより、電極板と基板とを電気的に直接接合することができる。そのため、電極板と基板とを電気的に接続するための配線(ハーネス)が不要となる。したがって、配線経路が複雑化することなく、組付け性を容易とすることができ、部品数も削減することができる。
【0015】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、前記発熱素子は、前記入口ヘッダ部付近に設けられることを特徴とする。
【0016】
熱媒体を供給する入口ヘッダ部に近い位置に基板に接続される発熱素子を設けることとした。そのため、PTC素子により加熱される前の比較的温度の低い熱媒体によって発熱素子を効率よく冷却することができる。したがって、発熱素子の更なる冷却性能を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る熱媒体加熱装置によれば、前記ケーシングに対向している前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられる前記密着部材は、Oリングであることを特徴とする。
【0018】
アルミ製の熱交チューブは、冬場において、PTC素子に加熱されることで周囲温度(外気温度)との温度差により熱膨張が懸念される。周囲温度(外気温度)と同等であって材質の異なるケーシングと熱交チューブとの間に設けられる密着部材に液状ガスケットを用いた場合には、熱交チューブの熱膨張によって液状ガスケットのせん断破壊が生じる恐れがある。
【0019】
そこで、熱交チューブとケーシングとの間には、Oリングを用いることとした。そのため、熱膨張によるせん断破壊を防止することができる。したがって、熱交チューブとケーシングとの間のシール性の低下を防止することができる。
【0020】
本発明に係る車両用空調装置は、上記いずれかに記載の熱媒体加熱装置を備えることを特徴とする。
【0021】
大型化させることなく伝熱効率を向上させることが可能な熱媒体加熱装置を用いることとした。そのため、車両用空調装置の性能を向上させ、かつ、設置スペースを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る複数の熱媒体加熱装置によれば、PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ積層される電極板と熱交換する複数の熱交チューブを互いに平行に積層し、積層された複数の熱交チューブの一面側に基板と押圧部材とを設けることとした。そのため、押圧部材によって入口ヘッダ部間および出口ヘッダ部間に設けられた密着部材を密着させることができる。これにより、積層させた熱交チューブの密着性が高められて、電極板と熱交チューブとの接触熱抵抗を低減させることができる。したがって、熱交チューブから電極板への伝熱効率を向上させた熱媒体加熱装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置の組み立てる手順を説明するための分解斜視図である。
【図3】図1に示す熱媒体加熱装置であって、(A)は、その上面図を示し、(B)は、その側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る熱媒体加熱装置について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1には、本実施形態に係る熱媒体加熱装置を具備した車両用空調装置の概略構成図を示めす。
車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調し、それを車室内へと導く空気流路2を形成するためのケーシング3を備えている。
【0025】
ケーシング3の内部には、空気流路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスして流れる空気量との割合を調整し、その下流側でミックスされる空気の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0026】
ケーシング3の下流側は、図示しない吹き出しモード切替ダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁とともに冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることにより、そこを通過する空気を冷却するものである。
放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10により加熱された熱媒体(例えば、水)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0027】
図2には、図1に示した熱媒体加熱装置の組み立てる手順を説明するための分解斜視図を示めし、図3には、組み立てた熱媒体加熱装置であって、(A)には、その上方から見た図を示し、(B)には、その側面図を示している。
【0028】
図2に示すように、熱媒体加熱装置10は、基板13と、電極板14(図3(B)参照)と、IGBT12(図3(B)参照)と、熱交押さえ板(押圧部材)16と、複数(例えば、3つ)の熱交チューブ(冷却チューブ)17と、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子18(図3(B)参照)と、電極板14、積層された熱交チューブ17、基板13、IGBT12(発熱素子)および熱交押さえ板16が収容されているケーシング11と、を備えている。
なお、電極板14、PTC素子18、および後述する絶縁体(図示せず)により、PTCヒータが構成される。
【0029】
ケーシング11は、上側半分と下側半分とに二分割された構成となっており、上側半分に位置するアッパーケース11a(図3(B)参照)と、下側半分に位置するロアケース11bと、を備えている。また、アッパーケース11aおよびロアケース11bの内部には、ロアケース11bの上方からロアケース11bの開口部11cにアッパーケース11aを搭載することによって、基板13、IGBT12、電極板14、熱交押さえ板16、積層された熱交チューブ17およびPTC素子18を収容するための空間が形成されている。
【0030】
ロアケース11bの下面には、積層された3つの熱交チューブ17に導かれる熱媒体の導入を行う熱媒体入口路(熱媒体導出入路)11dと熱媒体の導出を行う熱媒体出口路(熱媒体導出入路)11eとが一体的に形成されている。ロアケース11bは、その内部空間に収容される熱交チューブ17を形成しているアルミニウムと線膨張が近い樹脂材料(たとえば、PBT)によって成形されている。
なお、アッパーケース11aもロアケース11bと同様に樹脂材料により成形されていることが望ましい。樹脂材料によりアッパーケース11aが成形されることによって、軽量化を図ることができる。
【0031】
ロアケース11bの下面には、電源ハーネス27とLVハーネス28との先端部が貫通する電源ハーネス用孔11fとLVハーネス用孔11g(図3(A)参照)とが開口している。
電源ハーネス27は、基板13に電源を供給するものである。電源ハーネス27の先端部は、2つに分かれていて、基板13に設けられている2つの電源ハーネス用端子台13cに電極ハーネス接続用ねじ13bによってねじ止め可能となっている。
【0032】
LVハーネス28は、熱交押さえ板16に設けられているIGBT12に制御用の信号を送信するものである。LVハーネス28の先端部は、基板13にコネクタ接続が可能となっている。
【0033】
PTCヒータを構成している熱交チューブ17は、アルミニウム製である。熱交チューブ17は、図3(B)に示すように、たとえば、3つの熱交チューブ17が互いに平行になるように積層されている。3つの熱交チューブ17は、下段、中段、上段熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層される。各熱交チューブ17a、17b、17cの流路内は、コルゲート状のインナーフィン(図示せず)が形成されている。これにより、各熱交チューブ17a、17b、17cの内部には、その軸方向に連通している複数の流路が形成されることとなる。
【0034】
各熱交チューブ17a、17b、17c内にインナーフィンが形成されることによって、各熱交チューブ17a、17b、17cの剛性が増すこととなる。そのため、後述する基板サブアッセンブリ15によって各熱交チューブ17a、17b、17cがロアケーシング11bの内底面の方向に付勢されても、各熱交チューブ17a、17b、17cが変形しにくくなっている。
【0035】
各熱交チューブ17a、17b、17cは、図2に示すように、熱媒体を供給する入口ヘッダ部22および熱媒体が導出される出口ヘッダ部23と、入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間に設けられる液状ガスケット(密閉部材)と、を有している。各熱交チューブ17a、17b、17cは、電極板14をそれらの間に挟んで互いに平行に積層されている。
【0036】
各熱交チューブ17a、17b、17cは、平面視した場合に、軸方向(図2において左右方向)に長い偏平状を呈している。偏平状の各熱交チューブ17a、17b、17cは、扁平方向、すなわち、軸方向と直交する厚さ方向(図2において上下方向)に幅広となっている。
【0037】
各熱交チューブ17a、17b、17cの軸方向の端部には、入口ヘッダ部22と出口ヘッダ部23とが各々設けられている。入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23は、その中心に連通孔(図示せず)を有している。
【0038】
各熱交チューブ17c、17b、17aをこの順に積層させて、後述する基板サブアッセンブリ15によってロアケーシング11bの内底面の方向に押圧することによって、液状ガスケットが中段熱交チューブ17bの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の下面と、その下方に位置している下段熱交チューブ17cの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面との間を密着し、かつ、中段熱交チューブ17bの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面と、上段熱交チューブ17aの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の下面とが密着する。このように、各熱交チューブ17a、17b、17cを積層させることによって、上段熱交チューブ17a、中段熱交チューブ17bおよび下段熱交チューブ17の各連通孔が連通する。
【0039】
熱媒体入口路11dから導かれた熱媒体は、各入口ヘッダ部22から各熱交チューブ17a、17b、17cへと導かれる。各熱交チューブ17a、17b、17cに流入した熱媒体は、各熱交チューブ17a、17b、17cを通過する際に昇温(加熱)されて、各熱交チューブ17a、17b、17から各出口ヘッダ部23に流入し、熱媒体出口路11eから熱媒体加熱装置10外へと導出される。熱媒体加熱装置10に導出された熱媒体は、熱媒体循環回路10A(図1参照)を介して放熱器6に供給されることになる。
【0040】
電極板14は、図3(B)に示すように、PTC素子18を作動させるための電力を供給するものであり、平面視した場合には、矩形状を呈するアルミニウム製の板状部材である。電極板14は、PTC素子18を挟んで少なくともその両面にそれぞれ順次積層されている。電極板14は、PTC素子18の上面に接するようにして一枚、PTC素子18の下面に接するようにして一枚設けられていている。これら二枚の電極板14により、PTC素子18の上面とPTC素子18の下面とが挟み込まれるようになっている。
【0041】
また、PTC素子18の上面側に位置する電極板14は、その上面が熱交チューブ17の下面に接するようにして配置され、PTC素子18の下面側に位置する電極板14は、その下面が熱交チューブ17の上面に接するようにして配置されている。本実施形態の場合には、電極板14は、下段熱交チューブ17cと中段熱交チューブ17bとの間、中段熱交チューブ17bと上段熱交チューブ17aとの間に各々2枚、合計4枚設けられている。
【0042】
4枚の各電極板14は、熱交チューブ17a、17b、17cと略同形とされている。各電極板14は、その長辺側に1つの端子14aが設けられている。電極板14に設けられている端子14aは、各電極板14を積層させた場合に重なることなく、電極板14の長辺に沿って位置している。すなわち、各電極板14に設けられている端子14aは、その長辺に沿って位置が少しずつずらして設けられており、各電極板14を積層させた場合には直列になるように設けられている。
【0043】
各端子14aは、上方に突出するように設けられている。各端子14aは、基板13に設けられている端子台13aに端子接続用ねじ14bによって接続されている。
【0044】
基板サブアッセンブリ15は、基板13と熱交押さえ板16とを互いに平行に設け、熱交押さえ板16の上面に設置されているIGBT12を間に挟んでいるものである。基板13と熱交押さえ板16とは、例えば4本の基板サブアッセンブリ接続用ねじ15aによって固定されている。これによって、基板サブアッセンブリ15は、一体化している。
【0045】
基板サブアッセンブリ15を構成している基板13は、各電極板14に設けられている端子14aに対応する一辺に電極板14の端子14aに対向している端子台13aが下面に、例えば4つ設けられている。また、4つの端子台13aと直列に並ぶように、電源ハーネス27の先端部と接続される2つの電源ハーネス用端子台13cが設けられている。
【0046】
各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、基板13の下面から下方に突出するように設けられている。また、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、積層されている熱交チューブ17a、17b、17cの長辺に沿って直列になるように設けられている。
【0047】
基板13に設けられている各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、ロアケース11fの開口部11cよりも少し上方になるように設けられている。そのため、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cに接続される電極板14の端子14aや電源ハーネス27の先端部が固定しやすくなっている。
【0048】
図3(B)に示すように、IGBT12(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、略長方形状をしたトランジスタである。IGBT12は、作動することによって熱を生じる発熱素子である。IGBT12は、熱交押さえ板16の上面であって、上段熱交チューブ17aの入口ヘッダ部22近傍にIGBT12接続用ねじ12aによってねじ止めされている。
【0049】
基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押さえ板16は、平面視した際に扁平状の金属製の板状部材である。板状の熱交押さえ板16は、基板13よりも軸方向に大きなものであり、熱交チューブ17a、17b、17cを覆うことができる大きさとされている。基板13よりも軸方向に大きくなっている熱交押さえ板16には、熱交押さえ板16をロアケーシング11bに固定するための基板サブアッセンブリ固定用ねじ15b(図3(A)参照)が貫通可能な貫通孔(図示せず)が例えば、4箇所に設けられている。
【0050】
基板サブアッセンブリ15は、積層された上段熱交チューブ17aの上方に搭載されている。すなわち、基板サブアッセンブリ15は、熱交押さえ板16の下面が上段熱交チューブ17aの上面に接するようにして配置されている。
【0051】
基板サブアッセンブリ15は、熱交押さえ板16を4本の基板サブアッセンブリ固定用ねじ15bによってロアケーシング11bにねじ止めすることによって、熱交押さえ板16の下面とロアケース11bの内底面との間に積層されている熱交チューブ17a、17b、17cを挟み込んでいる。このように、基板サブアッセンブリ15をロアケーシング11bにねじ止めすることによって、ロアケース11bの内底面の方向に熱交チューブ17a、17b、17cを付勢(押圧)することができるようになっている。
【0052】
また、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押さえ板16が金属製であるため、熱交チューブ17a、17b、17c内を流れる熱媒体の冷却熱を熱交押さえ板16を介してIGBT12の冷却に用いることができる。
【0053】
次に、図2および図3を用いて本実施形態に係る熱媒体加熱装置10の組み立て手順を説明する。
ロアケース11bの開口部11cに液状ガスケット(図示せず)を塗布する。ロアケース11bの内底面に略平行になるように下段熱交チューブ17cをロアケース11bの内部空間に設置する。
PTC素子18の両面を絶縁シート(図示せず)によって挟み、下段熱交チューブ17cの上方から搭載する。
【0054】
下段熱交チューブ17cの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面に液状ガスケットを塗布して、下段熱交チューブ17cの上方から中段熱交チューブ17bを搭載する。
PTC素子18の両面を絶縁シートによって挟み、中段熱交チューブ17bの上方から搭載する。
【0055】
中段熱交チューブ17bの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面に液状ガスケットを塗布して、中段熱交チューブ17bの上方から上段熱交チューブ17aを搭載する。
【0056】
搭載された上段熱交チューブ17aの上方から基板サブアッセンブリ15を熱交押さえ板16が下方になるように搭載する。上段熱交チューブ17aに搭載された基板サブアッセンブリ15の熱交押さえ板16を基板サブアッセンブリ固定用ねじ15bによってロアケース11bにねじ止めする。
【0057】
これによって、各熱交チューブ17a、17b、17cの入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間がロアケース11bの内底面方向に付勢されて、各々の入口ヘッダ22間および出口ヘッダ部23間が密着することとなる。
【0058】
各々の入口ヘッダ22間および出口ヘッダ部23間が密着することとなるので、下段熱交チューブ17cと中段熱交チューブ17bと間および中段熱交チューブ17bと上段熱交チューブ17aとの間に挟まれているPTC素子18および電極板14が各熱交チューブ17a、17b、17cに密着することとなる。
【0059】
次に、基板サブアッセンブリ15を構成している基板13に設けられている各端子台13aと、各電極板14の端子14aとを端子接続用ねじ14bによって本止めする。
電源ハーネス用孔11fに電極ハーネス27を挿入して電極ハーネス27の先端部と、基板サブアッセンブリ15を構成している基板13に設けられている各電源ハーネス用端子台13cとを電極ハーネス接続用ねじ13bによってねじ止めする。
【0060】
さらに、LVハーネス28の先端部をロアケース11bの側壁に開口しているLVハーネス用孔11gからロアケース11bの内部に挿入して、基板13にネクタ接続する。
電極ハーネス27をロアケース11bの外底面から電源ハーネス固定用ねじ27aによって固定し、LVハーネス用孔11gにLVハーネス28を固定する。
【0061】
ロアケース11bの開口部11cに液状ガスケットを塗布する。ロアケース11bの上方からアッパーケース11aを搭載する。アッパーケース11aに設けられているクリップ部(図示せず)をロアケース11bに設けられている爪部(図示せず)に引掛けてアッパーケース11aとロアケース11bとを締結して、熱媒体加熱装置10の組み立てを完了(終了)する。
【0062】
以上述べたように、本実施形態に係る熱媒体加熱装置10および車両用空調装置1によれば、以下の効果を奏する。
PTC素子18を挟んで少なくともその両面にそれぞれ順次積層されている電極板14と熱交換する3つ(複数)の熱交チューブ17を互いに平行に積層し、積層された上段熱交チューブ17aの上面(熱交チューブ17の一面側)に基板13と熱交押さえ板(押圧部材)16とを組み合わせた基板サブアッセンブリ15を設けることとした。そのため、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押さえ板16によって入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間に設けられている液状ガスケット(密着部材)を密着させることができる。これにより、積層させた熱交チューブ17間の密着性が高められて、電極板14と熱交チューブ17との接触熱抵抗を低減させることができる。したがって、熱交チューブ17から電極板14への伝熱効率を向上させた熱媒体加熱装置10にすることができる。
【0063】
金属製の熱交押さえ板16と基板13との間にIGBT(発熱素子)12を設けることとした。そのため、熱交押さえ板16および基板13によって、積層された熱交チューブ17を押圧するとともに、熱交押さえ板16を介してIGBT12を熱交チューブ17からの冷却熱によって冷却することができる。したがって、熱媒体加熱装置10の伝熱効率をさらに向上させることができる。
また、積層された熱交チューブ17の押圧とIGBT12の冷却とを熱交押さえ板16によって兼用することとした。そのため、熱媒体加熱装置10を構成する部品数を減らすことができる。したがって、熱媒体加熱装置10全体を小型化することができる。
【0064】
熱媒体の導入を行う熱媒体入口路(熱媒体導出入路)11dと熱媒体の導出を行う熱媒体出口路(熱媒体導出入路)11eとをロアケーシング11bに一体的に形成することとした。そのため、熱媒体を熱媒体加熱装置10に供給する際に、積層された熱交チューブ17にかかる応力を分散することができる。したがって、熱交チューブ17に係る荷重を低減することができる。
【0065】
また、基板サブアッセンブリ15と各電極板14との電気的な接続においては、基板サブアッセンブリ15を構成している基板13に設けられている各端子台13aと、各電極板14に設けられている端子14aとを端子接続用ねじ14bによって固定するのみでよく、電気的に接続するための配線(ハーネス)を不要とすることができる。このため、配線経路が複雑化することなく、組付け性を容易とすることができ、部品数を削減することができる。
【0066】
さらに、基板13に接続されるIGBT(発熱素子)12を、熱交チューブ17の入口ヘッダ部22に近い位置に設けることとした。そのため、PTC素子18により加熱される前の比較的温度の低い熱媒体によって、IGBT12を冷却することができる。したがって、IGBT12の冷却性能を一層高める上で好ましい。
【0067】
伝熱効率が向上するとともに、小型化することができる熱媒体加熱装置10を用いることとした。そのため、車両用空調装置1の性能を向上させ、かつ、設置スペースを低減することができる。
【0068】
なお、ここで用いられている液状ガスケットとは、耐熱性に優れ高温に晒される各熱交チューブ17の入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23間等のシールに適した硬化性の液状シール剤(例えば、株式会社スリーボンド製のシリコーンを主成分とした製品番号1207dのシリコーン系液状ガスケット)である。
【0069】
また、本実施形態では、密着部材として液状ガスケットを用いるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、Oリング等を用いるものとしても良いし、ロウ付にて固着させても良い。
【0070】
Oリング等を用いた際には、各熱交チューブ17a、17b、17cが例えばアルミ等で形成されている場合、冬場においては、PTC素子18によって加熱されることにより周囲温度(外気温度)との温度差による熱膨張が懸念される。このため、異なる材質により形成されたケーシング11(例えば樹脂等)を用いた場合には、ロアケース11bの熱媒体入口路11dおよび熱媒体出口路11eと熱交チューブ17cの入口ヘッダ部22と出口ヘッダ部23との固着に液状ガスケットを用いることによって、上述のように熱交チューブ17cは熱膨張する。この際、ケーシング11が周囲温度(外気温度)と同等であるため、熱膨張により液状ガスケットにせん断破壊が生じる可能性もある。
【0071】
これらを考慮して、例えば、同材質同士である熱交チューブ17a、17b、17c間の入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の密着部材には、液状ガスケットを用い、異種材質である熱交チューブ17cの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23と、ロアケース11bの熱媒体入口路11dおよび熱媒体出口路11eとの密着部材としては、Oリングを用いることによって、せん断破壊を防止することが可能となる。
このように、ケーシング11の部材や熱交チューブ17の部材に応じて、液状ガスケットやOリング等の適宜好ましい最適な密着部材を選定することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 車両用空調装置
10 熱媒体加熱装置
11 ケーシング
12 IGBT(発熱素子)
13 基板
16 熱交押さえ板(押圧部材)
17 熱交チューブ(冷却チューブ)
22 入口ヘッダ部
23 出口ヘッダ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC素子を挟んで少なくともその両面にそれぞれ積層される電極板と、
熱媒体を供給する入口ヘッダ部および前記熱媒体が導出される出口ヘッダ部と、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられる密着部材と、を有し、前記電極板を間に挟んで互いに平行に積層されて該電極板と熱交換する複数の扁平状の熱交チューブと、
積層された複数の前記熱交チューブの一面側に設けられて、前記電極板に接続される基板と、
該基板に接続される発熱素子と、
前記基板の他面側に接続されて、積層された複数の前記熱交チューブを押圧する板状の押圧部材と、
前記電極板、前記熱交チューブ、前記基板、前記押圧部材および前記発熱素子が収容されるケーシングと、を備えることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記発熱素子は、前記基板と前記押圧部材との間に設けられ、前記押圧部材は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
前記ケーシングには、積層された複数の前記熱交チューブに導かれる前記熱媒体の導出入を行う熱媒体導出入路が一体的に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項4】
前記電極板は、その長手方向の一端部から突出する複数の端子を有し、
前記基板は、その長手方向の一端部に前記複数の端子に対向する複数の端子台を有し、
前記複数の端子と、前記複数の端子台とが接合されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
前記発熱素子は、前記入口ヘッダ部付近に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
前記ケーシングに対向している前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に設けられる前記密着部材は、Oリングであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の熱媒体加熱装置を備えることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate