説明

熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置

【課題】扁平熱交チューブとPTCヒータ間の接触熱抵抗を低減し、伝熱性能を高めるとともに、PTCヒータと制御基板間の電気的接続を容易化、簡素化し、電極間の絶縁性や組み立て性を向上できる熱媒体加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数枚の扁平熱交チューブ12と、その扁平チューブ部12A間に組み込まれるPTCヒータ13と、扁平熱交チューブ12およびPTCヒータ13を一面側からケーシング11の内面に押圧し固定する熱交押え部材15と、熱交押え部材15上に設置され、PTCヒータ13を制御する制御基板17と、を備え、制御基板17の端子台17Bに対し、電極板24から上方に延長された端子24Aを直接接続してPTCヒータ13と制御基板17とを電気的に結線するとともに、ケーシング11の内面に、端子24Aと係合して該端子24Aおよび電極板24を位置決めする位置決め手段28を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に適用される車両用空調装置にあって、暖房用の熱源となる被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つに、正特性サーミスタ素子(Positive Temperature Coefficient;以下、PTC素子という。)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇と共に抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
上記のような熱媒体加熱装置において、特許文献1には、熱媒体の入口および出口を備えたハウジング内に、該ハウジング内を加熱室と熱媒体の循環室とに分割する多数の隔壁を設け、この隔壁によって区画された加熱室側に隔壁と接するようにPTC加熱素子を挿入設置し、隔壁を介して循環室側に流通される熱媒体を加熱するようにした熱媒体加熱装置が提示されている。
【0004】
また、特許文献2には、PTC素子を挟んでその両面に電極板、絶縁層および伝熱層を設けて平板状のPTCヒータを構成し、該PTCヒータの両面に、熱媒体の入口および出口を備えた互いに連通されている一対の熱媒体流通ボックスを積層し、更にその外面に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を設けた積層構造の熱媒体加熱装置が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−7106号公報
【特許文献2】特開2008−56044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示されたものは、隔壁により形成された幅および前後方向の加熱室の多数の凹部に、多数のPTC加熱素子を挿入設置した構成とされている。このため、伝熱面となる隔壁間にPTC加熱素子を密着させて挿入設置することは、必ずしも容易なことではなく、隔壁とPTC加熱素子との間の接触熱抵抗が大きくなってしまい、伝熱効率が低下し易い。一方、隔壁間の間隔を狭くして密着性を高めようとすると、組み付け時の作業性が著しく低下し、工数が増加する等の課題があった。また、幅方向および前後方向に形成された多数の凹部に多数のPTC加熱素子を個別に組み込まなければならず、構造の複雑化、組み立て性の悪化、コストアップ等は避けられなかった。
【0007】
また、特許文献2のものは、PTCヒータの両面に放熱フィンを有る一対の熱媒体流通ボックスを積層し、その外面に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を積層してボルトにより締結した構成とされているため、PTCヒータと熱媒体流通ボックスとを密着させ、その間の接触熱抵抗を低減させることができる。しかし、PTCヒータを多層配置することが困難なため、平面面積が大きくなるとともに、熱媒体流通ボックスや専用の基板収容ボックスが必要で、これらは、耐熱性や伝熱性等の面からアルミダイカスト製とされるため、小型軽量化には限界があるとともに、高価になる等の課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の扁平熱交チューブおよびPTCヒータを用い、それらを多層に積層配設し、その間の接触熱抵抗を低減して伝熱性能を高め、小型高性能化するとともに、PTCヒータと制御基板間の電気的接続を容易化、簡素化し、電極間の絶縁性や組み立て性を向上することが可能な熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側からケーシング内面に押圧して密着させる熱交押え部材と、前記熱交押え部材上に設置され、前記PTCヒータを制御する制御基板と、を備え、前記制御基板の端子台に対し、前記PTCヒータの一対の電極板から上方に延長された端子が直接接続されることにより、前記PTCヒータと前記制御基板とが電気的に接続されるとともに、前記ケーシング内面に、前記端子と係合して該端子および前記電極板の位置決めを行う位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着される構成とされており、該熱交押え部材上にPTCヒータを制御する制御基板が設置され、該制御基板の端子台に対し、PTCヒータの一対の電極板から上方に延長された端子が直接接続されることにより、PTCヒータと制御基板とが電気的に接続されるとともに、ケーシング内面に、端子と係合して該端子および電極板の位置決めを行う位置決め手段が設けられているため、複数枚の扁平熱交チューブ間にPTCヒータを挟み込んで積層配置し、それを熱交押え部材で押圧することによって、各々を互いに密着させて組み込むことができる。また、PTCヒータの電極板から上方に延長されている端子を制御基板の端子台に接続するに当たり、ケーシング内面に設けられている位置決め手段と端子とを係合させ、該端子および電極板の位置決めを行うことにより、電極板の端子と制御基板の端子台とを互いに位置合わせして接続することができる。従って、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を小型高性能化することができるとともに、PTCヒータと制御基板間の電気的接続を容易化、簡素化し、電極間の絶縁距離の確保と組み立て性の向上を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記位置決め手段は、前記ケーシング内面に一体成形された位置決めピンとされ、該位置決めピンと前記端子に設けられている位置決め穴との嵌合により、前記端子および前記電極板が位置決め可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、位置決め手段が、ケーシング内面に一体成形された位置決めピンとされ、該位置決めピンと端子に設けられている位置決め穴との嵌合により、端子および電極板が位置決め可能とされているため、ケーシング内面に一体に成形されている位置決めピンに対し、端子に設けられている位置決め穴を嵌合することにより、端子および電極板を制御基板の端子台に対して位置決めすることができる。従って、PTCヒータと制御基板間の電気的接続を容易化、簡素化し、電極間の絶縁距離の確保および組み立て性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記端子は、複数枚の電極板の一側辺に、それぞれ辺方向に位置をずらしてL字状に上方に延長されて設けられ、前記制御基板の一側辺に並設されている複数の端子台に直接接続可能とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、端子が、複数枚の電極板の一側辺に、それぞれ辺方向に位置をずらしてL字状に上方に延長されて設けられ、制御基板の一側辺に並設されている複数の端子台に直接接続可能とされているため、扁平熱交チューブの扁平チューブ部間に組み込まれたPTCヒータの複数枚の電極板の一側辺に設けられているL字状の各端子を、位置決め手段を介してそれぞれ所定位置に位置決めすることにより、各々の端子の上方延長部分を制御基板の一側辺に並設されている複数の端子台に対向位置せしめ、ネジ止め等により直接接続することができる。従って、PTCヒータと制御基板間の電気的接続を容易化、簡素化し、組み立て性の向上とコスト低減を図ることができる。
【0015】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記位置決め穴は、L字状とされている前記端子の水平方向延長部に設けられ、前記ケーシング内面に鉛直方向に立設されている前記位置決めピンに上方から嵌合可能とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、位置決め穴が、L字状とされた端子の水平方向延長部に設けられ、ケーシング内面に鉛直方向に立設されている位置決めピンに上方から嵌合可能とされているため、端子の水平方向延長部に設けられている位置決め穴を、鉛直に立設されている位置決めピンに上方から嵌合しながら組み付けることによって、L字状の端子を制御基板の端子台に対して簡易に位置決めすることができる。従って、PTCヒータと制御基板間の電気的接続の容易化、簡素化を図り、組み立て性を向上することができる。
【0017】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記ケーシング内面には、前記位置決め手段に隣接する前記端子の外面側位置に、上方に向って立設された絶縁壁が設けられ、該絶縁壁の反端子側が前記制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとされていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ケーシング内面の位置決め手段に隣接する端子の外面側位置に、上方に向って立設された絶縁壁が設けられ、該絶縁壁の反端子側が制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとされているため、絶縁壁を挟んで一方側に配設される電極板の端子と、その反対側に配設される電源ハーネスおよびLVハーネスとの間に、絶縁壁を介して確実に所定の絶縁距離を確保することができる。従って、制御基板およびPTCヒータ等の電気系の絶縁性を高め、その信頼性を向上することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側からケーシング内面に押圧して密着させる熱交押え部材と、前記熱交押え部材上に設置され、前記PTCヒータを制御する制御基板と、を備え、前記制御基板の端子台に対し、前記PTCヒータの上下一対の電極板から上方に延長された端子が直接接続されることにより、前記PTCヒータと前記制御基板が電気的に接続されるとともに、前記電極板から上方に延長される前記端子の外面側位置に、前記ケーシング内面から上方に向って立設された絶縁壁が設けられ、該絶縁壁の反端子側が前記制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとされていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着される構成とされており、該熱交押え部材上にPTCヒータを制御する制御基板が設置され、該制御基板の端子台に対し、PTCヒータの上下一対の電極板から上方に延長された端子が直接接続されることにより、PTCヒータと制御基板が電気的に接続されるとともに、電極板から上方に延長される端子の外面側位置に、ケーシング内面から上方に向って立設された絶縁壁が設けられ、該絶縁壁の反端子側が制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとされているため、複数枚の扁平熱交チューブ間にPTCヒータを挟み込んで積層配置し、それを熱交押え部材で押圧することにより、各々を互いに密着させて組み込むことができる。また、電極板から上方に延長されている端子を制御基板の端子台に接続することにより、PTCヒータと制御基板間を簡易に電気的に接続することができ、その端子と制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとの間に立設されている絶縁壁によって、両者間に所定の絶縁距離を確保することができる。従って、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を小型高性能化することができるとともに、制御基板およびPTCヒータ等の電気系の絶縁性を高め、その信頼性を向上することができる。
【0021】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記絶縁壁は、前記ケーシング内面に一体成形され、該ケーシングの外周壁との間に前記配線スペースが形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、絶縁壁が、ケーシング内面に一体成形され、該ケーシングの外周壁との間に配線スペースが形成されているため、電極板から上方に延長される端子の外面側位置に、端子に沿って絶縁壁を一体に立上げ成形するだけで、その外面側に周囲から区画された配線スペースを確保し、制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスを配線することができる。従って、ケーシングに絶縁壁を一体成形するだけの簡易な構成により制御基板およびPTCヒータの絶縁性を高め、その信頼性を向上することができる。
【0023】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置は、空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、前記熱媒体加熱装置が、上述のいずれかの熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、空気流路中に配設されている放熱器に対して、上述のいずれかの熱媒体加熱装置により加熱された熱媒体が循環可能な構成とされているため、空気流路中に配設されている放熱器に対して供給される熱媒体を、構成が簡素で小型高性能化された上述の熱媒体加熱装置により加熱して供給することができる。従って、車両用空調装置における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱媒体加熱装置によると、複数枚の扁平熱交チューブ間にPTCヒータを挟み込んで積層配置とし、それを熱交押え部材で押圧することにより、各々を互いに密着させて組み込むことができるとともに、PTCヒータの電極板から上方に延長されている端子を制御基板の端子台に接続するに当たり、ケーシング内面に設けられている位置決め手段と端子とを係合させ、該端子および電極板の位置決めを行うことにより、電極板の端子と制御基板の端子台とを互いに位置合わせして接続することができるため、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を小型高性能化することができるとともに、PTCヒータと制御基板間の電気的接続を容易化、簡素化し、電極間の絶縁距離の確保と組み立て性の向上を図ることができる。
【0026】
本発明の熱媒体加熱装置によると、複数枚の扁平熱交チューブ間にPTCヒータを挟み込んで積層配置とし、それを熱交押え部材で押圧することにより、各々を互いに密着させて組み込むことができるとともに、電極板から上方に延長されている端子を制御基板の端子台に接続することにより、PTCヒータと制御基板間を簡易に電気的に接続することができ、その端子と制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとの間に立設されている絶縁壁により、両者間に所定の絶縁距離を確保することができるため、扁平熱交チューブとPTCヒータ間の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置を小型高性能化することができるとともに、制御基板およびPTCヒータ等の電気系の絶縁性を高め、その信頼性を向上することができる。
【0027】
また、本発明の車両用空調装置によると、空気流路中に配設されている放熱器に対して供給される熱媒体を、構成が簡素で小型高性能化された上述の熱媒体加熱装置により加熱して供給することができるため、車両用空調装置における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置の分解斜視図である。
【図3】図2に示す熱媒体加熱装置のアッパケースを外した状態の平面図である。
【図4】図3に示す熱媒体加熱装置を下方側から見た側面図である。
【図5】図4のA−A断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図が示されている。
車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調した後、それを車室内へと導くための空気流通路2を形成するケーシング3を備えている。
【0030】
ケーシング3の内部には、空気流通路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、該ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスする空気量との流量割合を調整し、その下流側でエアミックスさせることによって、温調風の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0031】
ケーシング3の下流側は、図示しない吹き出しモード切替えダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示省略された圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることによって、そこを通過する空気を冷却するものである。放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10と共に熱媒体循環回路10Aを構成しており、熱媒体加熱装置10で加熱された高温の熱媒体(例えば、不凍液、水等)がポンプ9を介して循環されることによって、そこを通過する空気を加温するものである。
【0032】
図2には、図1に示された熱媒体加熱装置10の分解斜視図が示され、図3には、その熱媒体加熱装置10のアッパケースを外した状態の平面図、図4には、図3を下方側から見た側面図、図5には、図4のA−A断面相当図が示されている。
熱媒体加熱装置10は、箱形構成のケーシング11と、複数枚(例えば、3枚)の扁平熱交チューブ12と複数組のPTCヒータ13とが交互に積層されている熱交換モジュール14と、該熱交換モジュール14をケーシング11のロアケース11Aの内底面に押圧して固定するための熱交押え部材15と、該熱交押え部材15上に一対のスペーサ部材16を介して配設されたPTCヒータ13を制御する制御基板17とから構成されている。
【0033】
ケーシング11は、上半部と下半部とに2分割された箱形構成のケーシングとされており、下半部に位置されるロアケース11Aに対して、上半部に位置されるアッパケース11B(図5参照)が複数本のネジを介してネジ止め固定されることにより、一体化される構成とされている。そして、このケーシング11の内部空間に、上記した扁平熱交チューブ12およびPTCヒータ13からなる熱交換モジュール14、熱交押え部材15、一対のスペーサ部材16および制御基板17等が収容設置されるようになっている。
【0034】
ロアケース11Aの下面には、積層された3枚の扁平熱交チューブ12に導入される熱媒体を導くための熱媒体入口路11Cおよび扁平熱交チューブ12内を流通した熱媒体を導出するための熱媒体出口路11Dが、下方に突出されるように一体形成されているとともに、熱交押え部材15を締め付け固定するためのボス部11Eが、4箇所に上方に突出されるように一体形成されている。ロアケース11Aは、その内部空間に収容設置される扁平熱交チューブ12を形成するアルミ合金材と線膨張率が近似している樹脂材料(例えば、PPS)により成形されている。なお、アッパケース11Bも、ロアケース11Aと同様の樹脂材料により成形することが望ましい。
【0035】
さらに、ロアケース11Aの下面には、電源ハーネス18およびLVハーネス19の先端部を貫通するための電源ハーネス用孔およびLVハーネス用孔(共に図示省略)が開口されている。電源ハーネス18は、制御基板17を介してPTCヒータ13に電力を供給するためのものであり、先端部が2又状に分岐され、制御基板17に設けられている2つの電源ハーネス用端子台17Aにネジを介してネジ止め可能とされている。また、LVハーネス19は、制御基板17に対して制御用の信号を送信するためのものであり、その先端部は、制御基板17にコネクタ接続可能とされている。
【0036】
制御基板17は、上位制御装置(ECU)からの指令に基づいて複数組のPTCヒータ13に対する通電制御を行うものであり、FETやIGBT等からなる複数のパワートランジスタ(発熱性電気部品)20を含む制御回路21が表面実装され、その制御回路21を介して複数組のPTCヒータ13に対する通電状態が切替え可能に構成されているものである。この制御基板17は、少なくとも発熱性電気部品である複数のパワートランジスタ20が実装される部位に対応して、基板両面に貫通されるように、銅やアルミ等の高熱伝導性材からなる熱貫通部(図示省略)が設けられた構成とされている。
【0037】
そして、上記複数組のPTCヒータ13をその両面から挟み込むように複数枚の扁平熱交チューブ12が積層されることにより、熱交換モジュール14が構成されている。この扁平熱交チューブ12は、アルミ合金製薄板をプレス成形した一対のチューブ材を重ね合わせることによって構成されるものであり、図2および図5に示されるように、例えば3枚の扁平熱交チューブ12を互いに平行になるように積層し、その扁平熱交チューブ12間にそれぞれPTCヒータ13を挟み込んで積層することにより、1組の熱交換モジュール14を構成するようにしている。
【0038】
各扁平熱交チューブ12は、上記の如く一対のチューブ材を重ね合わせることにより構成される厚さが数ミリ程度の扁平断面形状とされた扁平チューブ部12Aと、その両端部分に形成された熱媒体が流入する入口ヘッダ部12Bおよび熱媒体が流出する出口ヘッダ部12Cとを備えた構成とされており、更に扁平チューブ部12A内には、波板状のインナーフィン(図示省略)が挿入され、該扁平チューブ部12A内に複数の熱媒体流通路が形成されるようになっている。
【0039】
3枚の扁平熱交チューブ12は、下段、中段、上段の順に順次積層され、その両端の入口ヘッダ部12Bおよび出口ヘッダ部12C同士が互いにOリング等のシール材を介して密接され、入口ヘッダ部12Bおよび出口ヘッダ部12Cに設けられている図示省略の連通穴が互いに連通されるようになっている。この3枚の扁平熱交チューブ12は、積層された状態または順次積層されながらロアケース11A内の下面に組み込まれ、後述するようにロアケース11Aのボス部11E(4箇所)に締め付け固定される熱交押え部材15を介して、ロアケース11Aの下面に向け押圧固定されるように構成されている。
【0040】
また、上記3枚の扁平熱交チューブ12間に、それぞれPTCヒータ13が挟み込まれることによって、1組の熱交換モジュール14が構成されている。この複数組(2組)のPTCヒータ13は、公知の如く、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)23の上下両面に、それぞれ電極板24を接触配置したものであり、絶縁シート等を介して3枚の扁平熱交チューブ12間に各々積層配置されている。なお、PTCヒータ13は、3枚の扁平熱交チューブ12と共に積層された状態または順次積層されながらロアケース11Aの内底面に組み込まれ、上記の如く熱交押え部材15を介してロアケース11Aの下面に押圧固定されるように構成されている。
【0041】
電極板24は、PTC素子23に対して電力を供給するためのものであり、平面視において、矩形状を呈するアルミ合金製板材により構成されている。この電極板24は、PTC素子23を挟んでその両面に、PTC素子23の上面に接するように一枚、PTC素子23の下面に接するように一枚それぞれ積層配置されており、これら2枚の電極板24によって、PTC素子23が上下両面から挟み込まれるようになっている。
【0042】
さらに、PTC素子23の上面側に配置される電極板24は、その上面が扁平熱交チューブ12の下面に接するように配設され、PTC素子23の下面側に配置される電極板24は、その下面が扁平熱交チューブ12の上面に接するように配設されるように構成されている。本実施形態においては、電極板24は、下段の扁平熱交チューブ12と中段の扁平熱交チューブ12との間、中段の扁平熱交チューブ12と上段の扁平熱交チューブ12との間に各々2枚、合計4枚が配置されている。
【0043】
これら4枚の電極板24は、各扁平熱交チューブ12の扁平チューブ部12Aと略同一形状とされており、各々の長辺側に1つの端子24Aが一体に設けられている。この端子24Aは、各電極板24を積層させたとき、重ならないように、電極板24の長辺に沿って配置されている。つまり、各電極板24に設けられている端子24Aは、その長辺に沿って少しずつ位置がずらされて設けられ、各電極板24が積層された場合に直列に配列されるように設けられている。各端子24Aは、電極板24から水平方向に突出され、更に上方に延長されるようにL字形状とされており、制御基板17の表面側の一辺に並設されている複数組(4組)の端子台17Bにネジ25により接続可能な構成とされている。
【0044】
3枚の扁平熱交チューブ12および2組のPTCヒータ13は、上記の如く積層された状態または順次積層されながらロアケース11Aの内底面上に組み込まれ、その最上段の扁平熱交チューブ12の上面が、ロアケース11Aのボス部11E(4箇所)に4個のネジ26により締め付け固定される熱交押え部材15を介して、ロアケース11Aの内底面方向に押圧されることにより、各扁平熱交チューブ12の入口ヘッダ部12Bおよび出口ヘッダ部12Cの上下面同士、並びに各扁平熱交チューブ12の扁平チューブ部12AとPTCヒータ13の上下面同士がそれぞれ密着状態とされるようになっている。
【0045】
これによって、ケーシング11内部に熱交換モジュール14が組み込まれ、ロアケース11Aの熱媒体入口路11Cから導入された熱媒体は、各扁平熱交チューブ12の入口ヘッダ部12Bから扁平チューブ部12A内へと導かれ、この扁平チューブ部12A内を流通する過程において、PTCヒータ13により加熱昇温されて各出口ヘッダ部12Cに流出し、そこからロアケース11Aの熱媒体出口路11Dを経て熱媒体加熱装置10の外部へと導出されるようになる。そして、熱媒体加熱装置10から導出された熱媒体は、熱媒体循環回路10A(図1参照)を介して放熱器6に供給されるようになっている。
【0046】
熱交押え部材15は、制御基板17に表面実装されている複数の発熱性電気部品20を銅やアルミ等の高熱伝導性材からなる熱貫通部22を介して冷却するヒートシンクとしての機能を兼ね備えたものであり、アルミ合金製の板材により構成されている。この熱交押え部材15は、扁平熱交チューブ12の上面を覆う大きさとされたものであり、長手方向寸法が制御基板17よりも長くされ、扁平熱交チューブ12およびPTCヒータ13からなる熱交換モジュール14を押圧固定する際、入口ヘッダ部12Bおよび出口ヘッダ部12Cの周囲におけるシール性を確保するため、その中心線を通る位置でネジ26を介してケーシング11のボス部11Eに締め付け固定されるように構成されている。
【0047】
一対のスペーサ部材16は、熱交押え部材15を止めるネジ26の位置が上記位置に制約されたとき、熱交押え部材15の上面側に配設される制御基板17との干渉を避けるために介装されるものである。このスペーサ部材16のうち、少なくとも制御基板17上に実装されている発熱性電気部品20と対応する位置側のスペーサ部材16は、例えばアルミ合金製板材等の高熱伝導性材とされ、発熱性電気部品20からの熱を、制御基板17を貫通する熱貫通部を介して熱交押え部材15に伝熱可能な構成とされている。なお、他のスペーサ部材16は、樹脂材等としてもよい。
【0048】
制御基板17は、熱交押え部材15の上面側に一対のスペーサ部材16を介して複数個のネジ27によりネジ止め固定され、その熱貫通部(図示省略)が高熱伝導性材とされたスペーサ部材16と接触されるように配設されている。そして、この制御基板17の端子台17Aに、2又状に分岐された電源ハーネス18が接続されるとともに、LVハーネス19がコネクタ接続され、更に端子台17Bに、PTCヒータ13の電極板24から延長されているL字状の端子24Aがネジ25を介して直接接続されることにより、制御基板17が熱交押え部材15上に組み込まれ、ケーシング11内に収容設置されるように構成されている。
【0049】
さらに、上記のように、電極板24から延長されている端子24Aを制御基板17の端子台17Bに対して治具を用いずに直接接続するには、両者を正確に位置決めする必要がある。つまり、ロアケース11Aの内底面に複数枚の扁平熱交チューブ12と共に積層配置されるPTCヒータ13の電極板24に設けられている端子24Aと、ロアケース11Aのボス部11Eに位置決めされて固定される熱交押え部材15上に設置される制御基板17の端子台17Bとを位置合わせするには、端子24Aをロアケース11Aに対して位置決めして組み込めるようにすればよい。
【0050】
そこで、本実施形態においては、上記した4枚の電極板24に設けられている4本の端子24Aをロアケース11Aに対して位置決めするため、図5に示されるように、ロアケース11Aの内底面の所定位置に、各端子24Aと対応して鉛直方向に立設された4本の位置決めピン(位置決め手段)28を設けている。この4本の位置決めピン28は、所定の間隔で1列状に4本配列されており、その高さは、4本の端子24Aが水平方向に延長されている水平方向延長部よりも少し高めの高さとされており、ロアケース11Aと一体に成形されている。
【0051】
一方、4本の端子24Aには、それぞれ水平方向延長部に、上記位置決めピン28に対して嵌合可能な位置決め穴29が設けられており、この位置決め穴29を各位置決めピン28に嵌合することによって、各端子24Aおよび電極板24がロアケース11Aに対して位置決めされ、更にロアケース11Aのボス部11Eに位置決め固定されている熱交押え部材15上に設置される制御基板17の端子台17Bに対して位置決めされるようになっている。
【0052】
また、上記位置決めピン28のピン列と隣接する各端子24Aの外面側位置には、上方に延長されている各端子24Aに沿うように上方に向って立設された絶縁壁30が、ロアケース11Aと一体に成形されている。この絶縁壁30は、反端子24A側の側面とロアケース11Aの外周壁面との間に、制御基板17に接続される電源ハーネス18およびLVハーネス19を通す配線スペース31を区画し、各端子24Aおよび電極板24に対して所定の絶縁距離が確保可能な構成とされている。
【0053】
なお、制御基板17上に表面実装されるパワートランジスタ等の複数の発熱性電気部品20は、ケーシング11内に収容設置された状態でロアケース11Aに設けられている熱媒体入口路11Cに近い側、すなわち熱交換モジュール14を構成している複数枚の扁平熱交チューブ12の入口ヘッダ部12B側に対応して配設されており、制御基板17の両面に貫通されている熱貫通部が、入口ヘッダ部12Bに流入される加熱前の比較的温度の低い熱媒体により冷却される熱交押え部材15および高熱伝導性材とされたスペーサ部材16を介して冷却されるようになっている。
【0054】
また、上記熱媒体加熱装置10は、ケーシング11のロアケース11Aの内底面に3枚の扁平熱交チューブ12と2組のPTCヒータ13とを、PTCヒータ13の両面を絶縁シート(図示せず)で挟みながら、それらを順次1枚ずつ積層して組み込み、熱交換モジュール14が組み込まれた段階で、熱交押え部材15によりその上面を押圧してロアケース11A側に締め付け固定するか、もしくは熱交換モジュール14をサブアッセンブリした後、ロアケース11A内に組み込み、その上面を熱交押え部材15で押圧して締め付け固定することによって、各扁平熱交チューブ12および各PTCヒータ13をそれぞれ互いに密着状態にして組み込むことができる。
【0055】
さらに、熱交押え部材15上に、スペーサ部材16を介装して制御基板17をネジ止め固定し、制御基板17に対する電気系統の結線を行い、その上部覆うアッパケース11Bをロアケース11Aにネジ止め固定することにより、熱媒体加熱装置10を組み立てることができる。そして、この熱媒体加熱装置10は、熱媒体入口路11Cを経て入口ヘッダ部12Bに流入された熱媒体を複数枚の扁平熱交チューブ12内に流通させ、PTCヒータ13によって加熱した後、出口ヘッダ部12Cから熱媒体出口路11Dを介して流出させることにより、熱媒体循環回路10A内を循環される熱媒体の加熱に供される。
【0056】
斯くして、本実施形態の熱媒体加熱装置10および車両用空調装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
複数枚の扁平熱交チューブ12が積層され、その扁平チューブ部12A間にPTCヒータ13が挟み込まれた状態で、各扁平熱交チューブ12およびPTCヒータ13が、熱交押え部材15によりロアケース11Aに対し押圧されて締め付け固定される構成とされている。このため、複数枚の扁平熱交チューブ12と複数組のPTCヒータ13を、それぞれ互いに密着させて組み込むことができる。
【0057】
従って、扁平熱交チューブ12とPTCヒータ13との間の接触熱抵抗を低減して伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10を高性能化することができるとともに、扁平熱交チューブ12およびPTCヒータ13を多層に積層配置することによって、その平面面積を小さくし、熱交換モジュール14、ひいては熱媒体加熱装置10を小型コンパクト化することができる。
【0058】
また、熱交押え部材15上に、PTCヒータ13を制御する制御基板17が設置され、その制御基板17の端子台17Bに対し、PTCヒータ13の一対の電極板24から上方に延長されている端子24Aが直接接続されることにより、PTCヒータ13と制御基板17とが電気的に接続されるとともに、ケーシング11(ロアケース11A)の内底面に端子24Aと係合(嵌合)して該端子24Aおよび電極板24の位置決めを行う位置決めピン(位置決め手段)28が設けられている。
【0059】
このため、一対の電極板24から上方に延長されている端子24Aを、制御基板17の端子台17Bに直接接続するに当たり、ロアケース11Aの内底面に設けられている位置決めピン28と端子24Aに設けられている位置決め穴29とを嵌合させ、該端子24Aおよび電極板24の位置決めを行うことにより、電極板24の端子24Aと制御基板17の端子台17Bとを互いに位置合わせして接続することができる。従って、扁平熱交チューブ12とPTCヒータ13間の電気的接続を容易化、簡素化し、電極間の絶縁距離の確保および組み立て性の向上を図ることができるとともに、ハーネスレス化により部品点数を削減し、全体として構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、上記端子24Aが、複数枚の電極板24の一側辺に、それぞれ辺方向に位置をずらしてL字状に上方に延長されて設けられ、制御基板17の一側辺に並設されている複数の端子台17Bに直接接続可能とされており、扁平熱交チューブ12の扁平チューブ部12A間に組み込まれたPTCヒータ13の複数枚の電極板24の一側辺に設けられているL字状の各端子24Aを、位置決めピン28を介してそれぞれ所定位置に位置決めすることによって、各々の端子24Aの上方延長部分を制御基板17の一側辺に並設されている複数の端子台17Bに対向位置せしめ、ネジ25を介して直接接続することができる。従って、PTCヒータ13と制御基板17間の電気的接続を容易化、簡素化し、組み立て性の向上とコスト低減を図ることができる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、端子24A側の位置決め穴29が、L字状とされた端子24Aの水平方向延長部に設けられ、ロアケース11Aの内底面に鉛直方向に立設されている位置決めピン28に上方から嵌合可能とされているため、端子24Aの水平方向延長部に設けられている位置決め穴29を、鉛直に立設されている位置決めピン28に上方から嵌合しながら組み付けることにより、L字状の端子24Aを制御基板17の端子台17Bに対して簡易に位置決めすることができる。従って、PTCヒータ13と制御基板17間の電気的接続の容易化、簡素化を図り、組み立てを更に容易化することができる。
【0062】
加えて、本実施形態では、ロアケース11Aの内底面の位置決めピン28に隣接する端子24Aの外面側位置に、上方に向って立設された絶縁壁30が設けられ、該絶縁壁30の反端子24A側が制御基板17に接続される電源ハーネス18およびLVハーネス19の配線スペース31とされている。このため、絶縁壁30を挟んで一方側に配設される電極板24の端子24Aと、その反対側に配設される電源ハーネス18およびLVハーネス19との間に、絶縁壁30を介して確実に所定の絶縁距離を確保することができる。これによって、制御基板17およびPTCヒータ13等の電気系の絶縁性を高め、その信頼性を向上することができる。
【0063】
また、上記絶縁壁30は、ロアケース11Aの内底面に一体成形され、そのロアケース11Aの外周壁との間に配線スペース31を形成している。このように、電極板24から上方に延長される端子24Aの外面側位置に、端子24Aに沿うように絶縁壁30を一体に立上げ成形することによって、その外面側に周囲から区画された配線スペース31を確保し、制御基板17に接続される電源ハーネス18およびLVハーネス19を配線することができる。従って、ロアケース11Aに絶縁壁30を一体成形するだけの簡易な構成により制御基板17およびPTCヒータ13の絶縁性を高め、その信頼性を向上することができる。
【0064】
さらに、上述のように、構成が簡素でかつ小型高性能化された熱媒体加熱装置10によって加熱された熱媒体を空気流路2中に配設されている放熱器6に供給することができるため、車両用空調装置1における空調性能、特に暖房性能の向上を図ることができるとともに、車両に対する空調装置の搭載性を向上することができる。
【0065】
なお、本実施形態においては、熱交押え部材15およびスペーサ部材16が、アルミ合金製の板材とされているため、制御基板17上の発熱性電気部品20からの熱を、基板の熱貫通部を通して熱伝導性が良好でかつ軽量なアルミ合金製板材とされている熱交押え部材15に伝熱し、扁平熱交チューブ12を冷却源とする熱交押え部材15に放熱することによって、発熱性電気部品20を冷却することができる。従って、熱交押え部材15をヒートシンクに、制御基板17に表面実装されている発熱性電気部品20の冷却性能を高めることができ、熱に対する信頼性を向上することができるとともに、軽量化を維持することができる。
【0066】
特に、制御基板17上において、発熱性電気部品20が、熱媒体加熱装置10の熱媒体の流入側である扁平熱交チューブ12の入口ヘッダ部12B側に配設され、熱交押え部材15および高熱伝導性材とされたスペーサ部材16をヒートシンクとし、加熱前の比較的温度の低い熱媒体によって冷却されるように構成されているため、発熱性電気部品20を効果的に冷却し、その冷却性能を向上することができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、扁平熱交チューブ12を3層に積層し、各々の間にPTCヒータ13を組み込んだ構成としているが、これに限らず、扁平熱交チューブ12およびPTCヒータ13の積層枚数を増減してもよいことはもちろんである。また、上記実施形態では、ケーシング11を樹脂材製としているが、これに限らず、アルミダイカスト製等の金属製としてもよく、これも本発明に包含されるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用空調装置
6 放熱器
10 熱媒体加熱装置
10A 熱媒体循環回路
11 ケーシング
11A ロアケース
12 扁平熱交チューブ
12A 扁平チューブ部
12B 入口ヘッダ部
12C 出口ヘッダ部
13 PTCヒータ
15 熱交押え部材
17 制御基板
17B 端子台
18 電源ハーネス
19 LVハーネス
24 電極板
24A 端子
28 位置決めピン(位置決め手段)
29 位置決め穴
30 絶縁壁
31 配線スペース



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側からケーシング内面に押圧して密着させる熱交押え部材と、
前記熱交押え部材上に設置され、前記PTCヒータを制御する制御基板と、を備え、
前記制御基板の端子台に対し、前記PTCヒータの一対の電極板から上方に延長された端子が直接接続されることにより、前記PTCヒータと前記制御基板とが電気的に接続されるとともに、
前記ケーシング内面に、前記端子と係合して該端子および前記電極板の位置決めを行う位置決め手段が設けられていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記位置決め手段は、前記ケーシング内面に一体成形された位置決めピンとされ、該位置決めピンと前記端子に設けられている位置決め穴との嵌合により、前記端子および前記電極板が位置決め可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
前記端子は、複数枚の電極板の一側辺に、それぞれ辺方向に位置をずらしてL字状に上方に延長されて設けられ、前記制御基板の一側辺に並設されている複数の端子台に直接接続可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項4】
前記位置決め穴は、L字状とされている前記端子の水平方向延長部に設けられ、前記ケーシング内面に鉛直方向に立設されている前記位置決めピンに上方から嵌合可能とされていることを特徴とする請求項3に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
前記ケーシング内面には、前記位置決め手段に隣接する前記端子の外面側位置に、上方に向って立設された絶縁壁が設けられ、該絶縁壁の反端子側が前記制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
入口ヘッダ部から流入された熱媒体が扁平チューブ部を流通後、出口ヘッダ部から流出される複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される複数枚の前記扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
複数枚の前記扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを前記扁平熱交チューブの一面側からケーシング内面に押圧して密着させる熱交押え部材と、
前記熱交押え部材上に設置され、前記PTCヒータを制御する制御基板と、を備え、
前記制御基板の端子台に対し、前記PTCヒータの上下一対の電極板から上方に延長された端子が直接接続されることにより、前記PTCヒータと前記制御基板が電気的に接続されるとともに、
前記電極板から上方に延長される前記端子の外面側位置に、前記ケーシング内面から上方に向って立設された絶縁壁が設けられ、該絶縁壁の反端子側が前記制御基板に接続される電源ハーネスおよびLVハーネスの配線スペースとされていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項7】
前記絶縁壁は、前記ケーシング内面に一体成形され、該ケーシングの外周壁との間に前記配線スペースが形成されていることを特徴とする請求項6に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項8】
空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、
前記熱媒体加熱装置が、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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