説明

熱媒体配管システム

【課題】熱媒体の搬送動力の削減及び熱源機及び空気調和機を最も効率的に制御し得るようにし熱媒体配管システムを提供する。
【解決手段】熱源機ループA、及び複数系統の空調機ループB、並びに熱源機ループAと各空調機ループBとを接続する熱搬送ループCを備える。熱源機ループAは、熱源機1と熱源ポンプ12と熱媒体往管路13aと熱媒体還管路13bとを備え、且つ熱媒体還管路13bには熱源ポンプ12が設けられている。空調機ループBは、空気調和機4と空調機ポンプ14と熱媒体往管路15aと熱媒体還管路15bとを備え、且つ熱媒体往管路15aには空調機ポンプ14が設けられている。熱搬送ループCは、熱媒体循環ポンプ16と熱媒体循環ポンプ16が設けられた無端状の熱媒体循環管路17とを備えている。熱源ポンプ12及び空調機ポンプ14並びに熱媒体循環ポンプ16は回転数制御可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビル、工場等の空気調和設備における冷水、温水等の熱媒体を送給するための熱媒体配管システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の店舗及び事務所等が入居するオフィスビル等の建造物には、複数の空調機が設けられ、各空調機には、熱源機からポンプにより冷水又は温水等の熱媒体が各空調機の熱負荷に対応した流量で供給され、冷房や暖房が行なわれる。而して、斯かる空調機を備えた熱媒体配管システムの従来の一例は図6に示されている。
【0003】
図6中、1は冷凍機又はボイラのような熱源機、2は熱源機1の出口側に接続されて冷水又は温水等の熱媒体が送給される熱媒体往主管路、3は熱媒体往主管路2から分岐した複数の熱媒体往管路、4は入口側が各熱媒体往管路3に接続されて互いに並列配置されたAHU等の空調機、5は各空調機4の出口側に接続された熱媒体還管路、6は各熱媒体還管路5が合流するよう接続されると共に、熱源機1の入口側に接続された熱媒体還主管路、7は熱媒体往主管路2側においては、最も熱源機1側の空調機4よりも熱媒体流れ方向上流側において熱媒体往主管路2に接続され、熱媒体還主管路6側においては、最も熱源機1側の空調機4よりも熱媒体流れ方向下流側において熱媒体還主管路6に接続されたバイパス管路である。
【0004】
熱媒体往主管路2には、バイパス管路7の熱媒体往主管路2接続位置よりも熱源機1側において熱源ポンプ8が接続されると共に、熱媒体流れ方向最上流側における熱媒体往管路3の接続位置よりもバイパス管路7側において熱媒体ポンプ9が接続され、各熱媒体還管路5には流量制御弁10が設けられている。
【0005】
図6に示すシステムでは、冷却若しくは加熱されて熱源機1から送出された熱媒体は、熱源ポンプ8により熱媒体往主管路2を送給され、一部の熱媒体はバイパス管路7を通って熱媒体還主管路6へ流入する。
【0006】
又、残りの熱媒体は熱媒体ポンプ9により更に熱媒体往主管路2を送給され、熱媒体往管路3から空調機4へ導入されて冷熱若しくは温熱を消費し、熱媒体還管路5を通って熱媒体還主管路6へ流入し、バイパス管路7からの熱媒体と共に、熱源機1へ戻る。この際、空調機4を通る熱媒体は、空調機4を経て対象空間に送給される空気により対象空間が所定の温度になるよう、流量制御弁10により流量制御される。
【0007】
空調機を備えた熱媒体配管システムの従来の他の例は特許文献1に示すものがあり、図7に示されている。図7の例では、熱媒体往主管路2には図6に示す熱源ポンプ8や熱媒体ポンプ9は設けず、且つバイパス管路7も設けず、各熱媒体往管路3に、インバータ制御による回転数制御を行い得るようにした熱媒体ポンプ11を設けている。図7中、図6に示すものと同一のものには同一の符号が付してある。
【0008】
図7の場合は、熱源機1からの熱媒体は熱媒体往主管路2及び熱媒体往管路3を経て熱媒体ポンプ11へ導入され、熱媒体ポンプ11から熱媒体往管路3を経て空調機4へ送給され、冷熱若しくは温熱を消費して熱媒体還管路5を通り熱媒体還主管路6へ送給され、熱媒体還主管路6を経て熱源機1へ戻る。この際、空調機4を通る熱媒体は、空調機4を経て対象空間に送給される空気により対象空間が所定の温度になるよう、熱媒体ポンプ11の回転数がインバータ制御されることにより流量制御される。
【特許文献1】特許第3490986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6に示す熱媒体配管システムにおいては、熱媒体の流量制御は流量制御弁10の開度調整により行なわれるため、流量制御弁10を通る熱媒体の流れに常に流動抵抗による圧力損失が生じ、その結果、熱媒体ポンプ9の消費動力が大きくなるうえ、空調機4へ送給しない熱媒体はバイパス管路7をバイパスさせるために熱源ポンプ8も必要となる。その結果、図6に示すシステムでは、熱媒体の搬送動力が大きくなり、省エネルギ上不利である。
【0010】
図7に示す特許文献1の熱媒体配管システムでは、熱媒体の流量制御は、各空調機4で要求される熱媒体の流量を基に熱媒体ポンプの回転数制御により行なっているため、図6の場合よりも熱媒体の搬送動力を削減することができる。しかしながら、熱媒体は熱媒体ポンプ11のみで搬送しているため、例えば、空調機4側の要求熱媒体流量がほとんどなくなったとしても、熱源機1の凍結等の不具合を避けるための最低流量は確保せざるを得ず、その場合、空調機1を通して熱媒体の流量を確保するため、空調機4の熱交換器の圧力損失や空調機4までの配管抵抗を加えた搬送となり、熱媒体の搬送動力の削減を充分に行なうことが困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は、上述の実情に鑑み、熱媒体の搬送動力の削減を図ることができると共に、熱源機及び空調機を最も効率的に制御し得るようにした熱媒体配管システムを提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の熱媒体配管システムは、
熱源機ループ、及び複数系統の空調機ループ、並びに前記熱源機ループと各空調機ループとを接続する熱搬送ループを備え、
熱源機ループは、
熱源機と、熱源ポンプと、熱搬送ループからの熱媒体を熱源機に送給する熱媒体還管路と、熱源機からの熱媒体を熱搬送ループへ送給する熱媒体往管路とを備え、且つ熱媒体還管路又は熱媒体往管路には前記熱源ポンプが設けられており、
空調機ループは、
空調機と、空調機ポンプと、熱搬送ループからの熱媒体を空調機へ送給する熱媒体往管路と、空調機からの熱媒体を熱搬送ループへ送給する熱媒体還管路とを備え、且つ熱媒体往管路又は熱媒体還管路には前記空調機ポンプが設けられており、
熱搬送ループは、
熱媒体循環ポンプと、熱媒体循環ポンプが設けられて熱媒体が送給される熱媒体循環管路とを備えているものである。
【0013】
請求項2の熱媒体配管システムにおいては、熱源機ループは複数系統設置され、所定の熱源機ループにおいて熱搬送ループからの熱媒体を熱源機へ送給する熱媒体還管路及び、熱源機からの熱媒体を熱搬送ループに送給する熱媒体往管路を、熱搬送ループにおける熱媒体循環管路の空調機ループ接続部間に接続したものである。
【0014】
請求項3の熱媒体配管システムは、
バイパス管路を備え、
該バイパス管路は、一端を、熱媒体流れ方向最下流側に位置する空調機ループ以外の空調機ループにおける熱媒体還管路に接続されていると共に、他端を、熱媒体流れ方向最下流側に位置する空調機ループの熱媒体還管路接続部よりも下流側において熱搬送ループの熱媒体循環管路に接続され、
空調機ループにおける熱媒体還管路のバイパス管路接続位置よりも熱媒体流れ方向下流側には、第一の弁手段が設けられ、バイパス管路には第二の弁手段が設けられている請求項1又は2に記載の熱媒体配管システム。
【0015】
請求項4の熱媒体配管システムは、
熱負荷が所定の値よりも低い場合は、第一の弁手段開き、第二の弁手段を閉止し、熱負荷が所定の値以上の場合は、第一の弁手段を閉止し、第二の弁手段を開くよう構成したものである。
【0016】
請求項5の熱媒体配管システムにおいては、熱源ポンプ及び空調機ポンプ並びに熱媒体循環ポンプは回転数制御可能に構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1〜5記載の熱媒体配管システムによれば、熱源機ループ及び各空調機ループ並びに熱搬送ループ間では、夫々互いに干渉を受けることなく、各ループ間において各機器を夫々効率良く運転することが可能となり、又、各機器においての必要熱媒体流量を確保するために、高低差のない位置にある専用化された各種ポンプが熱媒体の流量を確保するので、揚程に無駄がなく、従って、熱媒体の搬送動力の削減が可能となると共に、熱源機及び空調機を最も効率的に制御することが可能となり、又、請求項2においては、熱源機ループを熱媒体循環管路の空調機ループ間に接続しているため、当該接続部よりも下流側の空調機ループにおける空調機入口の熱媒体の温度を低くすることが可能となり、更に、請求項3の熱媒体配管システムでは、空調機ループに導入される熱媒体の温度変化を回避することができる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1は本発明の熱媒体配管システムの実施の形態の一例である。而して、本図示例では、熱媒体配管システムは、熱源機ループA及び空調機ループB並びに熱搬送ループCに分けられていると共に、空調機ループBは複数系統設けられ、熱源機ループA及び空調機ループBは熱搬送ループCにより接続されている。
【0019】
すなわち、熱源機ループAは、熱源機1と熱源ポンプ12と熱媒体往管路13aと熱媒体還管路13bとを備え、且つ熱媒体還管路13bには熱源ポンプ12が設けられている。空調機ループBは、空調機4と空調機ポンプ14と熱媒体往管路15aと熱媒体還管路15bとを備え、且つ熱媒体往管路15aには空調機ポンプ14が設けられている。熱搬送ループCは、熱媒体循環ポンプ16と熱媒体循環ポンプ16が設けられた無端状の熱媒体循環管路17とを備えている。
【0020】
而して、一端を熱源機ループAの熱源機1出口側に接続された熱媒体往管路13aの他端は、熱搬送ループCにおける熱媒体循環管路17の熱媒体循環ポンプ16接続位置よりも熱媒体流れ方向上流側に接続され、一端を熱源機ループAの熱源機1入口側に接続された熱媒体還管路13bの他端は、熱搬送ループCにおける熱媒体循環管路17の熱媒体往管路13a接続位置よりも熱媒体流れ方向上流側に接続されている。
【0021】
複数の空調機ループBは、熱媒体循環管路17の熱媒体循環ポンプ16接続位置よりも熱媒体流れ方向下流側において、熱媒体循環管路17に対し、熱媒体流れ方向上流側から下流側へ向けて順次接続されている。すなわち、一端を空調機ループBの空調機4入口側に接続された熱媒体往管路15aの他端は熱媒体循環管路17に接続され、一端を空調機ループBの空調機4出口側に接続された熱媒体還管路15bの他端は、熱媒体往管路15a接続部よりも熱媒体流れ方向下流側において熱媒体循環管路17に接続されている。而して、熱媒体流れ方向最上流側における熱媒体往管路15aの熱媒体循環管路17に対する接続位置は、熱媒体循環ポンプ16よりも熱媒体流れ方向下流側に位置している。
【0022】
熱源ポンプ12及び空調機ポンプ14並びに熱媒体循環ポンプ16は何れもインバータ制御によりポンプ回転数制御を行い得るようになっている。
【0023】
次に、上記図示例の作動を説明する。
熱搬送ループCの熱媒体循環管路17を循環して熱源機ループAの熱媒体還管路13bから熱源ポンプ12により熱源機1へ送給された熱媒体は、熱源機1において冷却若しくは加熱され、冷却若しくは加熱された熱媒体は、熱媒体往管路13aを流通して熱媒体循環管路17へ送給され、熱媒体循環管路17を熱媒体往管路13a接続部よりも上流側から循環し送給されてきた熱媒体と合流し、熱媒体循環管路17を下流側へ送給され、熱媒体循環ポンプ16により加圧されて熱媒体循環管路17を更に下流側へ送給される。
【0024】
而して、熱媒体の一部は空調機ループBの熱媒体往管路15aへ流入して熱媒体往管路15aを送給され、空調機ポンプ14から空調機4へ送給され、空調機4において冷熱若しくは温熱を消費して仕事をし、温度が上昇若しくは下降した熱媒体は熱媒体還管路15bを送給されて熱媒体循環管路17へ流入し、順次下流側へ送給されて他の空調機ループBからの熱媒体と合流し、熱媒体循環管路17を流通して熱源機ループA側へ送給され、一部の熱媒体は熱源機ループAの熱媒体還管路13bへ流入し、残りの熱媒体は熱媒体循環管路17において熱媒体往管路13aからの熱媒体と合流して前述の経路を通り循環する。
【0025】
本図示例においては、熱源機ループA、及び複数の空調機ループB、並びに熱源機ループAと各空調機ループBとを接続する熱搬送ループCを夫々独立して設け、熱源機ループAに熱源ポンプ12を、又、各空調機ループBに空調機ポンプ14を、更に、熱搬送ループCに熱媒体循環ポンプ16を設け、熱源ポンプ12及び空調機ポンプ14並びに熱媒体循環ポンプ16は回転数制御可能に構成されている。
【0026】
このため、空調機ループBにおける空調機ポンプ14の流量が最低流量となって、空調機4の入口と出口の熱媒体の温度差が小さくなった場合でも、複数の空調機ループBにおいては、熱媒体循環管路17に対し、順次、熱媒体往管路15aの接続部下流側において熱媒体還管路15bを接続していること、及び熱搬送ループCにおける熱媒体循環ポンプ16の流量を制御することで、熱媒体循環管路17に対する熱媒体往管路15a接続部の最も下流側の点と、熱媒体循環管路17に対する熱媒体還管路15bの最も下流側の点との間の熱媒体の温度差を大きくとることが可能となり、熱源機1での熱媒体の温度差を確保することが可能となる。
【0027】
従って、熱源機ループA及び各空調機ループB並びに熱搬送ループC間では、夫々互いに干渉を受けることなく、各ループA,B,C間において各機器を夫々効率良く運転することが可能となり、熱媒体の搬送動力の削減が可能となると共に、熱源機1及び空調機4を最も効率的に制御することが可能となる。
【0028】
次に、本図示例の熱媒体配管システムと、図7に示す特許文献1の熱媒体配管システムにおける低熱負荷時の熱源機1や空調機4の出口及び入口間の温度差の確保等について、図2(A)、(B)を基に冷房の場合について説明する。すなわち、空調機4の低熱負荷時に、ポンプが最低流量に達した場合、空調機4における入口と出口の温度差は小さくなる。図2(A)、(B)では、空調機4の入口と出口の温度差Δt2=3℃、各空調機4の熱負荷合計ΣQ=1200Kcal/min(1系統の空調機4当りの熱負荷Q=300Kcal/min)と同一条件にして比較した。
【0029】
図7の熱媒体配管システムの場合、メインのラインである熱媒体往主管路2の流量はF1=400L/minであるのに対し、本図示例の場合、メインのラインである熱媒体循環管路17の流量はF1=240L/minと少なくて良い。又、熱源機1の入口と出口の熱媒体の温度差は従来がΔt1=3℃と小さいのに対し、本図示例では、Δt1=5℃となり、一般に高効率とされる温度差を確保することができる。これらの点から本図示例の方が、図7に示すシステムよりも熱媒体搬送動力や熱源動力を低減でき、省エネルギー効果が高い。
【0030】
なお、図2(A)、(B)において各空調機4を通る熱媒体の流量はF2=100L/min、図2(B)において熱源機1を循環する熱媒体の流量はF=240L/minである。
【0031】
又、図2(A)における各空調機4の部分に記載してある数値は、各空調機4の入口及び出口の熱媒体温度で、入口では7℃、出口では10℃であり、図2(B)における各空調機ループの空調機4の部分に記載してある数値は、各空調機4の入口及び出口の熱媒体温度で、熱源機1側から見て第1番目の空調機ループにおいては、入口では7℃、出口では10℃、第2番目の空調機ループにおいては、入口では8.25℃、出口では11.25℃、第3番目の空調機ループにおいては、入口では9.5℃、出口では12.5℃、第4番目の空調機ループにおいては、入口では10.75℃、出口では13.75℃である。なお、ここでは、熱交換対象の空調空気側の温度場は充分高温側であることと、空調機4における熱交換器は、温度場が違うところで同じ温度差が取れるように必要能力を備えている。
【0032】
更に、図2(B)における熱媒体循環管路17においては、熱源機1側から見て第1番目の空調機ループの熱媒体還管路15bからの熱媒体が流入することにより、第1番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は、8.25℃となり、第2番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は9.5℃となり、第3番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は10.75℃となり、第4番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は12℃となる。
【0033】
続いて、本図示例の熱媒体配管システムと図7に示す熱媒体配管システムの高温度差設定時における熱源機1や空調機4の出口及び入口間の温度差の確保等について、図3(A)、(B)を基に冷房の場合について説明する。すなわち、一般にポンプの搬送動力を低減させるためには、ポンプの流量を減少させて空調機4の入口及び出口における熱媒体の温度差を大きくした方が良い。而して、図3(A)、(B)では、空調機4の入口と出口の熱媒体の温度差Δt2=7℃、各空調機4の熱負荷合計ΣQ=2800Kcal/min(1系統当りの空調機4の熱負荷Q=700Kcal/min)と同一条件にして比較した。
【0034】
熱源機1の入口と出口における熱媒体の温度差は、従来の熱媒体配管システムの場合、熱源機1の入口と出口の熱媒体の温度差Δt1=7℃と大きいのに対し、本図示例の熱媒体配管システムにおいては、Δt1=5℃と一般的に高効率とされる温度差を確保することができる。これにより、本図示例の場合は熱源動力を低減することができる。又、熱媒体循環ポンプ16や熱源ポンプ12の搬送動力の増加分より、Δt1の2℃分の温度差減少分による熱源動力の削減分の方がはるかに動力が大きくなる。これらの点から本図示例の方が、図7に示すシステムよりも熱媒体搬送動力や熱源動力を低減でき、省エネルギー効果が高い。
【0035】
なお、図3(A)においてメインのラインである熱媒体往主管路2、熱媒体還主管路6を循環する熱媒体の流量はF1=400L/min、図3(B)において熱源機1を循環する熱媒体の流量はF=560L/min、メインのラインである熱媒体循環管路17を循環する熱媒体の流量はF1=560L/min、図3(A)、(B)における各空調機4を通る熱媒体の流量はF2=100L/minである。
【0036】
又、図3(A)における各空調機4の部分に記載してある数値は、各空調機4の入口及び出口の熱媒体温度で、入口では7℃、出口では14℃であり、図3(B)における各空調機4の部分に記載してある数値は、各空調機4の入口及び出口の熱媒体の温度で、熱源機1側から見て第1番目の空調機ループにおいては、入口では7℃、出口では14℃、第2番目の空調機ループにおいては、入口では8.25℃、出口では15.25℃、第3番目の空調機ループにおいては、入口では9.5℃、出口では16.5℃、第4番目の空調機ループにおいては、入口では10.75℃、出口では17.75℃である。
【0037】
更に、図3(B)における熱媒体循環管路17においては、熱源機1側から見て第1番目の空調機ループの熱媒体還管路15bからの熱媒体が流入することにより、第1番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は、8.25℃となり、第2番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は9.5℃となり、第3番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は10.75℃となり、第4番目の空調機ループから出た直後の熱媒体循環管路17における熱媒体の温度は12℃となる。
【0038】
続いて、搬送機器の容量低減について説明する。
すなわち、通常、ポンプの選定は、必要流量と必要揚程からポンプの性能曲線を用いて行なわれる。例えば、図7の場合のポンプ選定は各空調機4の最大流量と全揚程(図7の熱源機1→熱媒体往主管路2→熱媒体ポンプ11→熱媒体往管路3→空調機4→熱媒体還管路5→熱媒体還主管路6→熱源機1で示されるラインの全抵抗)から選定する。
【0039】
一方、本図示例の場合は、空調機ポンプ14の揚程は、図1の空調機ループBの揚程(熱媒体往管路15a→空調機ポンプ14→空調機4→熱媒体還管路15bで示されるラインの抵抗)で良いため、最大流量が図7の熱媒体ポンプ11と同じであっても、必要揚程が小さくなるので、空調機ポンプ14の容量は小さくなる。同時に、ポンプ回転数制御手段の容量も小さくてすむ。又、空調機ポンプ14は容量が小さいため低負荷時の制御性が良好である。更に又、超高層ビルのように建物規模が大きくなるに従い、図7のラインの全揚程は大きくなるため、ポンプ容量の観点から見て本図示例の方が有利である。又、一般的にポンプは低揚程のポンプの方が高揚程のポンプよりも効率が良くなるので有利である。
【0040】
図4は本発明の実施の形態の他の例である。而して、本図示例では、熱源機1を備えた熱源機ループAを複数系統設け、所定の熱源機ループAにおいては、熱媒体往管路13a及び熱媒体還管路13bを所定の空調機ループB,B間において、熱搬送ループCの熱媒体循環管路17に接続するようにしている。
【0041】
図1の熱媒体配管システムにおける各空調機ループBにおいては、冷房の場合、図2(B)、図3(B)に示すように、熱媒体が空調機ループの熱媒体還管路15bから熱媒体循環管路17に流入することにより、熱媒体循環管路17内の熱媒体の温度は、下流側へ行くにつれて徐々に高くなる。しかるに、図4の図示例のように、所定の熱源機ループAの熱媒体往管路15a及び熱媒体還管路15bを空調機ループB,B間において熱搬送ループCの熱媒体循環管路17に接続することにより、この接続部よりも下流側における空調機ループBの空調機4の入口における熱媒体の温度を低くすることが可能となる。
【0042】
図5は本発明の実施の形態の更に他の例であり、冷凍機或はボイラの能力すなわち熱源機能力、及び熱負荷を考慮した熱媒体配管システムの例である。図中、18は複数のバイパス管路である。これらのバイパス管路18は、一端を、熱媒体循環ポンプ16を基準として熱媒体流れ方向最下流側に位置する空調機ループB以外の空調機ループBにおける熱媒体還管路15bに接続されていると共に、他端を、熱媒体循環ポンプ16を基準として熱媒体流れ方向最下流側に位置する空調機ループBの熱媒体還管路15b接続部よりも下流側において熱搬送ループCの熱媒体循環管路17に接続されている。
【0043】
各空調機ループBにおける熱媒体還管路15bのバイパス管路18接続位置よりも熱媒体流れ方向下流側には、切替弁19が接続され、バイパス管路18には、切替弁20が接続されている。
【0044】
熱媒体循環管路17の熱媒体往管路13a接続部と熱媒体循環ポンプ16接続部との間には、流量検出器21が接続され、熱媒体循環管路17の熱媒体循環ポンプ16接続部と熱媒体流れ方向最上流側の熱媒体往管路15a接続部との間には温度検出器22が接続され、熱媒体循環管路17の熱媒体流れ方向最下流側におけるバイパス管路18接続部よりも熱媒体還管路13b側には、温度検出器23が接続されている。
【0045】
温度検出器22で検出した循環ポンプ出口温度T1及び温度検出器23で検出した熱媒体還温度T2並びに流量検出器22で検出した熱媒体の循環ポンプ流量Fcは図示してないコントローラに与えられて熱負荷QcがQc=Fc×(T2−T1)により求められると共に、求められた熱負荷Qcは、熱源機能力×係数αと比較され、熱負荷Qc≦熱源機能力×係数αの場合は切替弁19に開指令を与え、切替弁20に閉指令を与え、又、熱負荷Qc>熱源機能力×係数αの場合は、切替弁20に開指令を与え、切替弁19に閉指令を与えるようになっている。なお、熱源機能力は冷凍機或はボイラの設計時定格能力であり、係数αは建物の用途、規模により決定される係数で、一般的には0.9〜1.0である。
【0046】
本図示例においては、熱負荷Qc<熱源機能力×係数αの場合は、切替弁19が開き、切替弁20は閉止しているため、熱媒体の流れは図1の場合と同様である。しかし、熱負荷Qc≧熱源機能力×係数αの場合は、切替弁19は閉止し、切替弁20が開く。
【0047】
このため、空調機ループBの空調機4で仕事をした熱媒体は熱媒体還管路15bからバイパス管路18を経て熱媒体循環管路17における熱媒体流れ方向最下流側の熱媒体還管路15b接続部よりも下流側の部分に送出され、その結果、空調機ループBの熱媒体還管路15bから送出された熱媒体が熱媒体流れ方向下流側における空調機ループBに導入されることはない。
【0048】
従って、各空調機ループBの空調機4へは、熱源機ループAの熱源機1で所定の温度に冷却若しくは加熱された熱媒体が導入されるため、熱媒体流れ方向下流側における空調機4へ導入される熱媒体の温度上昇、或は温度低下を防止することができる。
【0049】
このようにするのは、年間の最大冷房負荷或は最大暖房負荷が冷凍機やボイラの設計時定格能力よりも低い場合には、図1に示す熱媒体配管システムで良いが、熱負荷Qが冷凍機やボイラの設計時定格能力と略等しくなった場合には、図1に示す熱媒体配管システムでは、熱媒体循環ポンプ16を基準として熱媒体流れ方向下流側の空調機ループBほど、空調機4へ送給される熱媒体の温度が上昇若しくは下降することになり、熱負荷処理ができなくなる虞があるため、熱負荷Qcが熱源機1の設計時定格能力と略等しくなった場合には、上流側の空調機ループBから送出された熱媒体を下流側の空調機ループBへ導入しないようにして、熱媒体の温度上昇或は温度低下を回避するためである。
【0050】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の熱媒体配管システムの実施の形態の一例を示す管路図である。
【図2】図1の熱媒体配管システムと図7の熱媒体配管システムの低負荷時における、熱源機や空調機の入口及び出口間の温度差の確保等について説明するための管路図で、図2(A)は特許文献1のものを、又、図2(B)は本発明のものを示す。
【図3】図1の熱媒体配管システムと図7の熱媒体配管システムの高温度差設定時における、熱源機や空調機の入口及び出口間の温度差の確保等について説明するための管路図で、図3(A)は特許文献1のものを、又、図3(B)は本発明のものを示す。
【図4】本発明の熱媒体配管システムの実施の形態の他の例を示す管路図である。
【図5】本発明の熱媒体配管システムの実施の形態の更に他の例を示す管路図である。
【図6】従来の熱媒体配管システムの一例を示す管路図である。
【図7】特許文献1に示す従来の熱媒体配管システムの他の例を示す管路図である。
【符号の説明】
【0052】
1 熱源機
4 空調機
12 熱源ポンプ
13a 熱媒体往管路
13b 熱媒体還管路
14 空調機ポンプ
15a 熱媒体往管路
15b 熱媒体還管路
16 熱媒体循環ポンプ
17 熱媒体循環管路
18 バイパス管路
19 切替弁(弁手段)
20 切替弁(弁手段)
A 熱源機ループ
B 空調機ループ
C 熱搬送ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機ループ、及び複数系統の空調機ループ、並びに前記熱源機ループと各空調機ループとを接続する熱搬送ループを備え、
熱源機ループは、
熱源機と、熱源ポンプと、熱搬送ループからの熱媒体を熱源機に送給する熱媒体還管路と、熱源機からの熱媒体を熱搬送ループへ送給する熱媒体往管路とを備え、且つ熱媒体還管路又は熱媒体往管路には前記熱源ポンプが設けられており、
空調機ループは、
空調機と、空調機ポンプと、熱搬送ループからの熱媒体を空調機へ送給する熱媒体往管路と、空調機からの熱媒体を熱搬送ループへ送給する熱媒体還管路とを備え、且つ熱媒体往管路又は熱媒体還管路には前記空調機ポンプが設けられており、
熱搬送ループは、
熱媒体循環ポンプと、熱媒体循環ポンプが設けられて熱媒体が送給される熱媒体循環管路とを備えている
ことを特徴とする熱媒体配管システム。
【請求項2】
熱源機ループは複数系統設置され、所定の熱源機ループにおいて熱搬送ループからの熱媒体を熱源機へ送給する熱媒体還管路及び、熱源機からの熱媒体を熱搬送ループに送給する熱媒体往管路を、熱搬送ループにおける熱媒体循環管路の空調機ループ接続部間に接続した請求項1記載の熱媒体配管システム。
【請求項3】
バイパス管路を備え、
該バイパス管路は、一端を、熱媒体流れ方向最下流側に位置する空調機ループ以外の空調機ループにおける熱媒体還管路に接続されていると共に、他端を、熱媒体流れ方向最下流側に位置する空調機ループの熱媒体還管路接続部よりも下流側において熱搬送ループの熱媒体循環管路に接続され、
空調機ループにおける熱媒体還管路のバイパス管路接続位置よりも熱媒体流れ方向下流側には第一の弁手段が設けられ、バイパス管路には第二の弁手段が設けられている請求項1又は2に記載の熱媒体配管システム。
【請求項4】
熱負荷が所定の値よりも低い場合は、第一の弁手段開き、第二の弁手段を閉止し、熱負荷が所定の値以上の場合は、第一の弁手段を閉止し、第二の弁手段を開くよう構成した請求項3に記載の熱媒体配管システム。
【請求項5】
熱源ポンプ及び空調機ポンプ並びに熱媒体循環ポンプは回転数制御可能に構成されている請求項1乃至4の何れかに記載の熱媒体配管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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