説明

熱安定性の熱架橋性エラストマーシリコーン組成物

本発明は、熱安定性のシリコーンエラストマー、並びに過酸化物の存在下における重付加、重縮合又は加硫反応によって熱安定性シリコーンエラストマーを製造するためのオルガノポリシロキサン組成物に関する。シリコーンエラストマーの熱安定化は、鉄(III)錯体から誘導される添加剤を添加することによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性シリコーンエラストマー、並びに過酸化物の存在下における重付加、重縮合又は加硫反応によって熱安定性シリコーンエラストマーを製造するためのオルガノポリシロキサン組成物にも関する。本発明は、過酸化物の存在下において熱硬化性(HCE)であるタイプのオルガノポリシロキサン組成物に特に好適である.これらのエラストマーは、250℃まで熱安定性を必要とする型成形及び/又は押出成形物品に特に有用である。用途の例としては、オーブンシールのようなヒートシールや、電線及びケーブル用の鎧装(被覆材料)を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
エラストマーを生成するオルガノポリシロキサン組成物は、商品として入手できるよく知られた材料である。有機エラストマーと比較して、オルガノポリシロキサン又はシリコーンは、より良好な耐熱性を有する。しかしながら、200℃超、より特定的には220〜250℃の温度範囲では、オルガノポリシロキサンエラストマーでさえ一定暴露時間の後にそれらのエラストマー特性(ゴム状弾性)を失っったり、硬くなって脆化したりすることがある。
【0003】
以前から、いくつかのタイプの化合物をマトリックスに添加することによってシリコーンの熱安定性を改善する試みが為されてきた。
【0004】
例えば英国特許第1251305号明細書には、少なくとも3重量%のヒュームド二酸化チタンをベースエラストマー組成物中に添加することが提唱され、232又は315℃の温度にそれぞれ16時間又は24時間保って硬化させたエラストマーの挙動(圧縮永久歪み)の改善が報告されている。
【0005】
例えば仏国特許第2308664号明細書には、硬化したシロキサンをベースとするエラストマー組成物の熱安定性を、二酸化チタン(特に粒子寸法が15〜40nmの範囲のもの)並びに酸化セリウム及び/又は水酸化セリウムを添加することによって改善することが報告されている。これら2種の添加剤は一緒になると、二酸化チタン単独より効果的であり、硬化したエラストマーの220〜270℃の範囲における耐性を改善することができる。
【0006】
欧州特許公開第0595078A号公報には、熱安定剤として、二酸化チタンをベースとし、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素1〜30重量%を含有する混合酸化物であって10〜150m2/gの範囲のBET比表面積を有するものが提唱されている。この酸化物の比表面積の安定性は、単純な二酸化チタンP25(BET50m2/g)のものより高い。
【0007】
欧州特許公開第745644A号公報には、架橋した時に高い熱安定性を有する透明エラストマーをもたらすオルガノポリシロキサン組成物が記載されている。この目的のために、前記オルガノポリシロキサン組成物は、有機親和性粒子を組成物全体に分散された形で含み、この粒子は、最大寸法が50nmであり且つBET比表面積が少なくとも250m2/g(好ましくは250〜300m2/gの範囲)である多結晶ナノ粒子(好ましくは4〜6nmのクリスタライトから作られたもの)の形の少なくとも1種の金属酸化物から成り且つ有機親和性にするための表面処理に付して有機ケイ素基をグラフトさせたものである。前記オルガノポリシロキサン組成物を着色することは、考えられていない。
【0008】
米国特許第2445567号明細書には別の解決策が推奨されており、これは、加水分解性基で置換されたポリシロキサンをベースとする組成物のゲル化の問題を回避するために、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選択される金属のカルボン酸塩である熱安定剤を用いることを提唱するものである。鉄金属塩の中では、
・飽和脂肪酸の塩、例えば酢酸鉄、プロピオン酸鉄、酪酸鉄、n−ヘキサン酸鉄及び2−エチルヘキサン酸鉄、
・脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸の塩、例えばシュウ酸鉄、コハク酸鉄、アジピン酸鉄、マレイン酸鉄、フタル酸鉄等
を挙げることができる。
【0009】
しかしながら、これらの添加剤のほとんどは、シリコーン組成物中における溶解度の問題を示す。
【0010】
これらの提唱された解決策のいくつかはある程度の利点を有するが、シリコーン産業界では依然として、高温、特に250℃以上の温度にかなりの時間にわたって保たれる場合にシリコーンエラストマーを充分安定化するために、新たな添加剤が求められている。従って、反復的且つ/又は持続的に熱に曝される場合にさえエラストマー特性を維持することができるようにエラストマーの熱安定性をさらに改善すること、及びシリコーン組成物中における溶解度の問題を示さない添加剤を見出すことに対する要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許第1251305号明細書
【特許文献2】仏国特許第2308664号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第0595078A号公報
【特許文献4】欧州特許公開第745644A号公報
【特許文献5】米国特許第2445567号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、架橋した時に高い熱安定性を有する熱安定性シリコーンエラストマーをもたらすオルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の意味の中で、用語「熱安定性シリコーンエラストマー」とは、200℃超の温度に曝したとき、特に200℃〜275℃の範囲の温度に数日間(特に3日間)保たれた時に硬くなったり脆化したりすることなくエラストマー特性を維持するシリコーンエラストマーを特に意味するものとする。特に好ましくは、これは230℃超、特に230℃〜300℃の温度に3日間以上保たれた時に耐性があるエラストマーを含む。
【0014】
実際、全く驚くべきことに本発明者らは例えば、本発明に従って、許容できるエラストマー特性を維持し、従って250℃において7日間の処理の後に脆化することがないエラストマーを得た。硬度、衝撃強さ、引張強さ、破断点伸び及び100%モジュラスは、完全に許容できる限度内、即ちエラストマーの予定された用途を可能にする限度内に保たれた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の主題は、、架橋した時に熱安定性エラストマーを生成するオルガノポリシロキサン組成物であって、鉄(III)錯体である少なくとも1種の熱安定剤(S)を含み、該錯体が下記の式(I)のβ−ジケトンから誘導されるβ−ジケトネート(A)である少なくとも1個のリガンドLを含む、前記オルガノポリシロキサン組成物にある。
【化1】

{ここで、
1は次式(II):
【化2】

(ここで、
nは0〜5の整数であり、
Φはフェニルであり、そして
各基Yは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素をベースする鎖、アルコキシ、シリル基及びハロゲン原子より成る群から選択される基である)
で表わされる基であり;
基R2は、R1と同じ定義を有する基(R1と同一であっても異なっていてもよい)、水素原子又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素をベースとし且つ随意に1個以上の酸素原子を間に含む基、アラルキル基、アルコキシ及びシリル基より成る群から選択される基を表わし;
基R3は水素原子又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素をベースとし且つ随意に1個以上のヘテロ原子を間に含む基を表わし;そして
1、R2及びR3は2つ一組で、炭化水素をベースとし且つ随意に1個以上のヘテロ原子を間に含む鎖によって互いに結合して環を形成することもできる。}
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの好ましい実施形態に従えば、前記熱安定剤(S)は、次式:
【化3】

(ここで、
x、y及びzは、それぞれの種のモル数を表わし、次の関係式:
・0<x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、
リガンドLは上で規定した通りのβ−ジケトネート(A)であり、そして
リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、単一の原子から成るイオン及び分子のイオンより成る群から選択される)
を有する鉄(III)錯体である。
【0017】
好ましくは、前記熱安定剤(S)は、次式:
【化4】

(ここで、
x、y及びzは、それぞれの種のモル数を表わし、次の関係式:
・0<x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、
リガンドLは上で規定した通りの又は請求項1に記載のβ−ジケトネート(A)であり、そして
リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、分子のイオンである)
を有する鉄(III)錯体である。
【0018】
1つの好ましい実施形態に従えば、前記リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、カルボキシレートである。
【0019】
別の好ましい実施形態に従えば、前記リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、次式:
【化5】

(ここで、R4はC1〜C40炭化水素をベースとし且つ随意に置換された一価有機基である)
を有する。
【0020】
前記リガンドB及びCが同一であっても異なっていてもよく、芳香族カルボキシレート及びC1〜C40飽和脂肪酸のカルボキシレートより成る群から選択されるのが特に有利である。
【0021】
1〜C40飽和脂肪酸のカルボキシレートの中では、次の対応する酸のアニオンを挙げることができる:
・ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラセロン(laceroic)酸(ドトリアコンタン酸)及び安息香酸。
【0022】
β−ジケトネートの別の例には、次のβ−ジケトンの誘導体がある:
・ステアロイルベンゾイルメタン(Rhodia社より販売されているRhodiastab(登録商標)-50、CAS 58446-52-9)、
・ジベンゾイルメタン(Rhodia社より販売されているRhodiastab(登録商標)-83、CAS 120-46-7)、
・オクタノイルベンゾイルメタン(Rhodia社より販売されているRhodiastab(登録商標)-92、CAS 68892-13-7)、
・4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(CAS 70356-09-1)、
・4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタン、及び
・4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタン。
【0023】
1つの特に好ましい実施形態は、β−ジケトネート(A)が次式(II):
【化6】

のステアロイルベンゾイルメタンβ−ジケトンから誘導された場合である。
【0024】
前記熱安定剤は、その性状に応じて様々な量で存在させる。例として、シリコーン組成物100部当たり0.001〜3重量部、好ましくはシリコーン組成物100部当たり0.01〜1重量部の範囲の量で添加することができる。これは、用途のタイプに応じて、純粋な形で、又は溶液状で有機溶剤中、シリコーンオイル中、シリコーンガム中若しくはマスター混合物{即ちシリコーンガム及び充填剤(フィラー)を含むシリコーン組成物}中として、添加することができる。
【0025】
シリコーン組成物
【0026】
本発明において対象とする硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、単一包装体又は複数の包装体(1成分型又は多成分型)として提供され、前記熱安定剤(S)に加えて、1種以上のポリオルガノシロキサン成分から成る主成分、適当な触媒、並びに随意としての、特に補強用充填剤、架橋剤、構造化防止剤(agent anti-structure)、粘着剤及び触媒抑制剤より成る群から選択される1種以上の化合物を含有する。
【0027】
前記熱安定剤(S)は、シリコーンエラストマーを得ることが意図される任意のポリオルガノシロキサン組成物であって、重付加反応により(HCE、LSR若しくは重付加RTV)又は重縮合反応により(重縮合RTV)、高温において有機過酸化物の作用によって架橋し(HCE)、又は金属触媒の存在下で周囲温度において若しくは加熱によって架橋するものに有用である。
【0028】
用語RTV、LSR及びHCEは当業者によく知られている。RTVは「室温加硫性」の略号であり;LSRは「液状シリコーンゴム」の略号であり;HCRは「熱硬化したゴム」の略号であり;HCEは「熱硬化性エラストマー」の略号である。
【0029】
より特定的には、本発明は、次のものを含む熱硬化性エラストマー系オルガノポリシロキサン組成物に適用される:
・25℃において1000000mPa・s超の粘度を有する少なくとも1種のジオルガノポリシロキサンガムA100部、
・補強用充填剤B5〜150部、
・有機過酸化物C0.1〜7部、及び
・随意としての少なくとも1種の「構造化防止用」化合物F。
【0030】
斯かるHCE(熱硬化性エラストマー)は、過酸化物硬化HCEと称され、例えば米国特許第3142655号、同第3821140号、同第3836489号及び同第3839266号の各明細書に記載されている。
【0031】
前記ガムAは、シリコーン製造業者によって販売されているよく知られた製品であり、既知の技術に従う方法を実施することによって製造することができる。
【0032】
前記ジオルガノポリシロキサンガムAは、25℃において1000000mPa・s超、好ましくは25℃において2000000mPa・s超の粘度を有する高分子量線状ポリマーであり、そのジオルガノポリシロキサン鎖は式R2SiO2/2の単位から本質的に成り、この鎖は各末端を式R3SiO1/2の単位及び/又は式OR'の基でブロックされる。R及びR'は有機基、特にアルキル基である。しかしながら、ジオルガノポリシロキサン鎖中にR2SiO2/2以外の単位、例えば式RSiO3/2及び/又はSiO4/2が、R2SiO2/2単位の数に対して最大2%の割合で少量存在することは、除外されない。基R及びR'の意味は下記に詳細に説明するが、用語「アルキル基」はC1〜C4アルキル基、より特定的にはメチル、エチル、n−プロピル及びn−ブチル基を意味するということを明記しておく。
【0033】
式R2SiO2/2及びR3SiO1/2の単位並びに式OR'の基の具体例としては、次の式のものを挙げることができる。
【化7】

【0034】
好ましいガムAは、式R2SiO2/2の一連のシロキシ単位から成り且つ鎖の各末端を式R3SiO1/2のシロキシ単位及び/又は式OR'の基でブロックされたガムである。これらの式中、記号Rは同一であっても異なっていてもよく、メチル、エチル、n−プロピル、フェニル、ビニル又は3,3,3−トリフルオロプロピル基を表わし、これらの基の少なくとも60%(数を基準)はメチル基であり、シロキシ単位の最大3モル%がオルガノビニルシロキシ単位であり、そして記号R'は水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はβ−メトキシエチル基を表わす。
【0035】
本発明においては、ビニル化ジメチルポリシロキサンガム、即ち鎖中及び/又は鎖の末端にケイ素原子に結合したビニル基を最大1%のビニルメチルシロキシ単位のモル含有率で含むジメチルポリシロキサンガムを用いるのが、特に好ましい。
【0036】
充填剤B、好ましくは補強用シリカBは、ジオルガノポリシロキサンガムA100部当たり5〜150部、好ましくは8〜100部の割合で用いられる。これらは、ヒュームドシリカ及び沈降シリカから選択される。これらは、BET法及びCTAB法に従って測定して少なくとも50m2/g、好ましくは70m2/g超の比表面積、80nmより小さい平均一次粒子寸法及び200g/リットルより小さい見掛け密度を有する。
【0037】
これらのシリカは、そのまま添加することもでき、また、有機ケイ素化合物(この目的で通常用いられているもの)で処理した後に添加することもできる。これらの化合物の中には、ヘキサメチルジシロキサン又はオクタメチルシクロテトラシロキサンのようなメチルポリシロキサン類、ヘキサメチルジシラザン又はヘキサメチルシクロトリシラザンのようなメチルポリシラザン類、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン又はジメチルビニルクロロシランのようなクロロシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン又はトリメチルメトキシシランのようなアルコキシシラン類がある。この処理の際に、該シリカの初期重量が20重量%まで、好ましくは約18%まで、増加することができる。
【0038】
補強用シリカBに加えて、半補強用又は増量用無機充填剤Bを導入することもできる。これらの充填剤Bはもっと粗大な、0.1μm超の平均粒子直径を有するものである。これらの充填剤Bには、より特定的には石英粉末、焼成クレー、ケイ藻土シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸亜鉛及び硫酸バリウムがある。これらは、ガムA100部当たり5〜120部、好ましくは10〜50部の割合で導入される。これらの無機充填剤は、そのまま、即ち処理せずに用いることもでき、また、補強用シリカBの場合に上で挙げた有機ケイ素化合物で処理してから用いることもできる。
【0039】
有機過酸化物Cは、ガムA100部当たり0.1〜7部、好ましくは0.2〜5部の割合で用いられる。これらは当業者によく知られており、より特定的には過酸化ベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、過安息香酸t−ブチル、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、過酸化ジ−t−ブチル及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを含む。これらの材料はまた、SiHタイプの反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンの存在下でPt(白金含有化合物)を用いて架橋させることもできる。
【0040】
これらの各種過酸化物は、場合により異なる温度及び速度で分解する。これらは、要求される硬化条件に応じて選択される。
【0041】
本発明に従う組成物はまた、式R''2SiO2/2の一連の単位から成り且つ鎖の各末端を式OR'の基でブロックされ、25℃において最大5000mPa・sの粘度を有する少なくとも1種のジオルガノポリシロキサンオイルF0.1〜10部、好ましくは0.3〜5部をも含むことができる。これらの式中、記号R''は同一であっても異なっていてもよく、メチル、フェニル又はビニル基を表わし、これらの基の少なくとも40%(数基準)はメチルであり、そして記号R'はAで与えた意味を有する。
【0042】
記号R''及びR'の意味は、上に説明した。
【0043】
式R''2SiO2/2の単位及び式OR'の基の具体例としては、次の式のものを挙げることができる。
【化8】

【0044】
好ましくは、次のものを用いる:
・鎖の各末端をヒドロキシル、メトキシ又はβ−メトキシエトキシ基でブロックされ、25℃において10〜200mPa・sの粘度を有するジメチルポリシロキサンオイル、
・CH3(C65)SiO2/2単位から成り且つ鎖の各末端をヒドロキシル及び/又はメトキシ基でブロックされ、25℃において40〜2000mPa・sの粘度を有するメチルフェニルポリシロキサンオイル。
【0045】
オイルFの使用目的は、本発明の組成物が貯蔵中に変化を被るのを防止すること、より特定的には硬化して構造化するのを防止することである。従って、これらは「構造化防止」剤である。
【0046】
前記オイルFの全部又は一部を、別の「構造化防止」剤、例えば、ジフェニルシランジオール又は下記の式のシランに代えることもできる。
【化9】

【化10】

【0047】
本発明に従う組成物の調製は、既知の機械的手段、例えばニーダー、ロールタイプのミキサー、スクリュータイプのミキサー又はアームミキサーを用いて、実施される。これらの装置中への各種成分の添加は、任意の順序であってよい。しかしながら、最初にすべてのガムA及び補強用シリカBを装填し、最後に過酸化物Cを装填することが推奨される。
【0048】
前記組成物は、過酸化物触媒作用の場合には加熱することによって架橋する。加熱時間はもちろん温度、圧力及び架橋剤の性状に応じて変化する。この時間は一般的に、100〜180℃付近において数分程度である。
【0049】
本発明はまた、もちろん、熱硬化性又は常温硬化性エラストマー組成物であって重付加又は重縮合によって架橋するものにも適用される。
【0050】
金属触媒(一般的に白金をベースとするもの)の存在下で、周囲温度において又は加熱することによって、重付加反応により(本質的にヒドロゲノシリル基とアルケニルシリル基との反応により)架橋する2成分型又は1成分型ポリオルガノシロキサン組成物が、例えば米国特許第3220972号、同第3284406号、同第3436366号、同第3697473号及び同第4340709号の各明細書に記載されている。重付加反応によって架橋する熱架橋性組成物(重付加HCEと称される)の場合、アルケニルシリル基を有するポリオルガノシロキサン成分は、25℃において500000mPa・s超、好ましくは100万mPa・s〜3000万mPa・sの範囲、さらにはそれ以上の粘度を有する。ヒドロゲノシリル基を有するポリオルガノシロキサン成分は、25℃において最大10000mPa・s、好ましくは5〜1000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0051】
ポリオルガノシロキサン組成物の例には、下記成分を含み、加熱することによって重付加反応により架橋する1成分型又は2成分型ポリオルガノシロキサン組成物(重付加HCE組成物と称される)がある:
【0052】
(a')1分子当たり平均して少なくとも2個のビニル基(異なるケイ素原子に結合したもの)が鎖中及び/又は鎖の末端に配置された線状ホモポリマー又はコポリマーであるポリジオルガノシロキサンガム{そのケイ素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、該その他の基の少なくとも60モル%(好ましくは該その他の基の全部)はメチル基であり、このガムは25℃において500000mPa・s超、好ましくは少なくとも100万mPa・sの粘度を有する}:100重量部;
【0053】
(b')1分子当たり平均して少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の水素原子(異なるケイ素原子に結合したもの)を有する線状、環状又は網状ホモポリマー及びコポリマーから選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロゲノシロキサン{そのケイ素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%(好ましくはこれらの基の全部)はメチル基であり、この成分は25℃において5〜1000mPa・sの粘度を有する}{この反応成分(b')は、(b')のヒドリド官能基対(a')のビニル基のモル比が0.4〜10の範囲、好ましくは1.1〜5の範囲となる量で用いられる};
【0054】
(c')触媒として有効量の白金触媒;
【0055】
(d')ケイ質充填剤:全ポリオルガノシロキサン(a')+(b')100重量部当たり0.5〜150重量部、好ましくは1〜100重量部。
【0056】
架橋を遅らせることが必要ならば、重付加反応によって架橋するポリオルガノシロキサン組成物に白金触媒の抑制剤(f')を添加することができる。これらの抑制剤は周知である。特に、有機アミン類、シラザン類、有機オキシム類、ジカルボン酸ジエステル、アセチレン性ケトン類、並びに特に(好ましい抑制剤としての)アセチレン性アルコール(例えば仏国特許第1528464号、同第2372874号及び同第2704553号の各明細書を参照されたい)、及び本質的にZ=ビニル且つx=y=1である単位(II)から成り且つ随意にn=2である単位(I)と組み合わされた環状ポリジオルガノシロキサンを用いることができる。抑制剤を用いる場合、これはガム(a')100部当たり0.005〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部の割合で用いられる。
【0057】
好ましい熱ヒドロシリル化反応ブロッカー(抑制剤)であるアセチレン性アルコールは、次式を有する。
【化11】

(式中、
1は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はフェニル基であり、
2はH又は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はフェニル基であり、
基R1及びR2と三重結合に対してα位に位置する炭素原子とが随意に環を形成することもでき、
1及びR2中に含有される炭素原子の合計数は少なくとも5,好ましくは9〜20の範囲である。)
【0058】
前記アルコールは、250℃以上の沸点を有するものから選択するのが好ましい。例として、次のものを挙げることができる。
・1−エチニル−1−シクロヘキサノール;
・3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
・3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
・1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
・3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
・3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール。
【0059】
これらのα−アセチレン性アルコールは、商品として入手できる製品である。
【0060】
重付加HCEと称されるポリオルガノシロキサン組成物の調製は、既知の機械的手段、例えばスクリュータイプのミキサー、ロールタイプのミキサー及びアームミキサーを備えた装置を用いて、実施される。これらの装置中への各種成分の添加は、任意の順序であってもよく、また、組成物に望まれる1成分型若しくは2成分型形態を考慮に入れた順序であってもよい。
【0061】
熱安定剤(S)をも含有させたポリオルガノシロキサン組成物は、1成分型組成物、即ち単一包装体で提供されるものであることができる。組成物を使用前に貯蔵しなければならないのであれば、重付加HCE組成物の場合には、上記の白金の触媒作用の抑制剤(組成物の架橋の間に加熱することによって消失するもの)を有効量添加するのが望ましいだろう。添加剤をも含有するこれらの組成物は、2成分型組成物、即ち一方だけが架橋用触媒を含む2つの別々の包装体として提供されるものであることもできる。エラストマーを得るために、これら2つの包装体の内容物が混合され、触媒によって架橋が起こる。斯かる1成分型及び2成分型組成物は、当業者によく知られている。
【0062】
周囲温度において一般的に金属触媒(例えばスズ又はチタン化合物)の存在下で湿分の作用により重縮合反応によって架橋する2成分型又は1成分型オルガノポリシロキサン組成物は、例えば1成分型組成物については米国特許第3065194号、同第3542901号、同第3779986号及び同第4417042号、並びに仏国特許第2638752号の各明細書に、そして2成分型組成物については米国特許第3678002号、同第3888815号、同第3993729号及び同第4064096号の各明細書に記載されている。
【0063】
重縮合組成物にはまた、伸張用シランとしての働きをする2個の加水分解性基を有するシランを含ませることもできる。これらの二官能性シランは、当業者によく知られている。
【0064】
本発明に従う組成物は、貯蔵に対して安定である。これらは、型成形用及び押出成形用に特に好適である。それらは加工が容易であり、非常に様々な形状を作ることが可能である。
【0065】
本発明の主題はまた、上で規定した組成物又は請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を硬化/架橋させることによって得ることができる熱安定性オルガノポリシロキサンエラストマーにもある。
【0066】
本発明の別の主題は、架橋してエラストマーになるオルガノポリシロキサン組成物用の、次式を有する鉄(III)錯体から成る新規の熱安定剤(S)にある。
【化12】

(ここで、
x、y及びzは、それぞれの種のモル数を表わし、次の関係式:
・0≦x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、
リガンドLは上で規定した通りの又は請求項1に記載のβ−ジケトネート(A)であり、そして
前記リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、カルボキシレートである。)
【0067】
好ましくは、次の関係式:
・0<x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、且つ、
前記リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、C1〜C40飽和脂肪酸のカルボキシレート及び芳香族カルボキシレートより成る群から選択される。
【0068】
特に好ましい熱安定剤は、式(II)において
x=3、y=0且つz=0であり、且つ、
前記リガンドLが次式(II):
【化13】

のステアロイルベンゾイルメタンβ−ジケトンから誘導されたβ−ジケトネートである
ものである。
【0069】
本発明に従うβ−ジケトネートを調製するために用いられるβ−ジケトンは、商品として入手でき、或は例えば欧州特許公開第1129073号公報に記載されたようなクライゼン反応によって、又は欧州特許公開第454623号公報若しくは米国特許第5015623号明細書に記載されたようにケトンのカルボアニオンとエステルとを反応させることによって、調製することもできる。
【0070】
前記熱安定剤(S)の調製は、当業者にとって特別困難なことではない。例えば、安定剤(S)のリガンドA、B及びCを構成する分子を水と混合し、次いで水酸化カリウム、有機溶剤(例えばトルエン)及び塩化鉄六水和物の溶液を添加することができる。通常の化学技術に従って反応させ、抽出し、精製した後に、本発明に従う安定剤(S)が得られる。当業者であれば、所望の錯体を得るために各成分の割合を変更したりすることができるだろう。
【0071】
本発明の別の主題は、架橋してエラストマーになるオルガノポリシロキサン組成物から熱安定性エラストマーを製造するために、本発明に従う上で規定した熱安定剤(S)を使用することに関する。
【0072】
本発明の最後の主題は、架橋してエラストマーになるオルガノポリシロキサン組成物に本発明に従う上で規定した熱安定剤(S)を添加することを特徴とする、シリコーンエラストマーを熱安定化する方法に関する。
【実施例】
【0073】
以下、非限定的な例としての具体例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0074】
例1:本発明に従う熱安定剤(S)の合成
【0075】
Rhodiastab(登録商標)-50=ベンゾイルステアリルメタン(以下、「R50」と略記する)
【化14】

リガンドA=R50から誘導されるβ−ジケトネート。
【0076】
(a)安定剤(S1):Fe[リガンドA]3の調製
【0077】
アンカー形撹拌機、温度プローブ及び凝縮管を備えた100ミリリットルの反応器中に、メタノール76g及びトルエン85gの混合物中の「Rhodiastab(登録商標) 50」19.5g(50ミリモル)を装填する。この反応媒体を60℃において撹拌し、49.8重量%水酸化カリウム水溶液6.5g(即ち水酸化カリウム58ミリモル、β−ジケトンのモル数に対して1.14当量)を添加する。次いで、54.95重量%塩化鉄六水和物水溶液8.05g(即ち鉄163ミリモル)を添加する。15分間の反応時間の後に、相分離をし、有機相を脱イオン水で洗浄する。次いで溶剤を真空下において蒸留によって除去して、最終生成物を得た(14.54g、赤茶色固体、融点33℃)。
【0078】
(b)安定剤(S2):Fe[(リガンドA)1,(ステアレート)1,(オクタノエート)1]の調製
【0079】
凝縮管、アンカー形撹拌機及び温度プローブを備えた200ミリリットルの反応器中に、50%純度ステアリン酸4.91g(18.1ミリモル)、オクタン酸2.55g(17.7ミリモル、「Rhodiastab(登録商標) 50」6.86g(17.8ミリモル)及び水10.64gを装填する。この混合物を周囲温度において撹拌し、49.6重量%水酸化カリウム5.23g(46.9ミリモル)を添加する。次いで、トルエン61.51gを添加し、最後に53.32重量%塩化鉄六水和物水溶液9.09g(即ち鉄17.9ミリモル)を添加する。15分間反応させた後に、撹拌を停止し、沈降によって媒体を分離する。相分離をする。中性pHが得られるまで有機相を洗浄する(脱イオン水+50重量%水酸化カリウム水溶液)。次いで真空下で蒸留することによってトルエンを除去して、最終生成物11.9gが得られた(収率78%)。
【0080】
(c)鉄(III)錯体安定剤(S3):Fe[(リガンドA)1;(ベンゾエート)1;オクタノエート)1]の調製
【0081】
凝縮管、アンカー形撹拌機及び温度プローブを備えた200ミリリットルの反応器中に、安息香酸2.58g(21.1ミリモル)、オクタン酸3g(21ミリモル)、「Rhodiastab(登録商標) 50」8.26g(21.4ミリモル)及び水29.21gを装填する。この混合物を周囲温度において撹拌し、49.8重量%水酸化カリウム9.38g(83.4ミリモル)を添加する。次いで、トルエン42.72gを添加し、最後に54.95重量%塩化鉄六水和物水溶液10.90g(即ち鉄22.2ミリモル)を添加する。15分間反応させた後に、撹拌を停止し、沈降によって媒体を分離する。相分離をする。有機相を脱イオン水で洗浄する。次いで真空下で蒸留することによってトルエンを除去して、最終生成物14.52gが得られた(収率97%、融点34℃)。
【0082】
出発成分を変えてこの手順を繰り返して、安定剤(S4)及び(S5)を調製した。
【0083】
【表1】

【0084】
例2:過酸化物の存在下で熱硬化性であるオルガノポリシロキサン組成物
【0085】
以下のものをミキサーを用いて緊密に混合する:
・2つの末端のそれぞれをトリメチルシロキシ単位でブロックされ、鎖中にビニル基を720ppm含有し、25℃において2000万mPa・sの粘度を有するポリ(ジメチル)(メチルビニル)シロキサンであるポリオルガノシロキサン(a)100部;
・200m2/gの比表面積を有するD4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)処理済ヒュームドシリカ46部;
・両末端をジメチルヒドロキシシロキシ単位でブロックされ、ヒドロキシルOH9重量%を含有し、25℃において50mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンオイル2.4部、及び
・カップリング剤のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン1部。
【0086】
ベース混合物が得られ、これをロールタイプのミキサーに移し、上記の混合物100部当たり1.25部の過酸化2,4−ジクロロベンゾイル(50%)(CAS No. 133-14-2)及び混合物100部当たり試験に応じてx重量部の安定剤(S4)又は(S5)を添加する。
【0087】
次いでこの組成物を成形し、約115℃において8分間架橋させる。得られたエラストマーを250℃に3日間、そしてこの同じ温度に7日間、曝す。結果を下記の第1表に示す。表から、本発明に従う添加剤で安定化されたHCE(試験1及び2)が耐熱性であり、そして良好なエラストマー特性を維持するということが、即座にわかる。
【0088】
【表2】

【0089】
第1表中の略号
SAH:ショアーA硬度(DIN規格53 505)
IS:衝撃強さ(DIN規格53 512;%での値)
TS:引張強さ(NF規格46 002;MPaでの値)
E/B:破断点伸び(NF規格46 002;%での値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋した時に熱安定性エラストマーを生成するオルガノポリシロキサン組成物であって、鉄(III)錯体である少なくとも1種の熱安定剤(S)を含み、該錯体が下記の式(I)のβ−ジケトンから誘導されるβ−ジケトネート(A)である少なくとも1個のリガンドLを含む、前記オルガノポリシロキサン組成物。
【化1】

{ここで、
1は次式(II):
【化2】

(ここで、
nは0〜5の整数であり、
Φはフェニルであり、そして
各基Yは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素をベースする鎖、アルコキシ、シリル基及びハロゲン原子より成る群から選択される基である)
で表わされる基であり;
基R2は、R1と同じ定義を有する基(R1と同一であっても異なっていてもよい)、水素原子又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素をベースとし且つ随意に1個以上の酸素原子を間に含む基、アラルキル基、アルコキシ及びシリル基より成る群から選択される基を表わし;
基R3は水素原子又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素をベースとし且つ随意に1個以上のヘテロ原子を間に含む基を表わし;そして
1、R2及びR3は2つ一組で、炭化水素をベースとし且つ随意に1個以上のヘテロ原子を間に含む鎖によって互いに結合して環を形成することもできる。}
【請求項2】
前記熱安定剤(S)が次式:
【化3】

(ここで、
x、y及びzは、それぞれの種のモル数を表わし、次の関係式:
・0<x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、
リガンドLは請求項1に記載のβ−ジケトネート(A)であり、そして
リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、単一の原子から成るイオン及び分子のイオンより成る群から選択される)
を有する鉄(III)錯体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱安定剤(S)が次式:
【化4】

(ここで、
x、y及びzは、それぞれの種のモル数を表わし、次の関係式:
・0<x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、
リガンドLは請求項1に記載のβ−ジケトネート(A)であり、そして
リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、分子のイオンである)
を有する鉄(III)錯体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記リガンドB及びCが同一であっても異なっていてもよく、カルボキシレートである、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記リガンドB及びCが同一であっても異なっていてもよく、次式:
【化5】

(ここで、R4はC1〜C40炭化水素をベースとし且つ随意に置換された一価有機基である)
を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記リガンドB及びCが同一であっても異なっていてもよく、芳香族カルボキシレート及びC1〜C40飽和脂肪酸のカルボキシレートより成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記リガンドB及びCが次の対応する酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラセロン酸及び安息香酸:のアニオンから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記β−ジケトネート(A)が次式(II):
【化6】

のステアロイルベンゾイルメタンβ−ジケトンから誘導されたものである、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物を硬化/架橋させることによって得られる熱安定性オルガノポリシロキサンエラストマー。
【請求項10】
架橋してエラストマーになるオルガノポリシロキサン組成物用の熱安定剤(S)であって、次式:
【化7】

(ここで、
x、y及びzは、それぞれの種のモル数を表わし、次の関係式:
・0≦x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、
リガンドLは請求項1に記載のβ−ジケトネート(A)であり、そして
前記リガンドB及びCは同一であっても異なっていてもよく、カルボキシレートである)
を有する鉄(III)錯体である、前記熱安定剤(S)。
【請求項11】
前記β−ジケトネート(A)が次式(II):
【化8】

のステアロイルベンゾイルメタンβ−ジケトンから誘導されたものである、請求項10に記載の熱安定剤(S)。
【請求項12】
次の関係式:
・0<x≦3、
・0≦y≦(3−x−z)、
・0≦z≦(3−x−y)、及び
・[x+y+z]=3
を満たし、且つ、
リガンドB及びCが同一であっても異なっていてもよく、C1〜C40飽和脂肪酸のカルボキシレート及び芳香族カルボキシレートより成る群から選択される、請求項10に記載の熱安定剤(S)。
【請求項13】
x=3、y=0且つz=0であり、且つ、
前記リガンドLが次式(II):
【化9】

のステアロイルベンゾイルメタンβ−ジケトンから誘導されたβ−ジケトネートである
ものである、請求項10〜12のいずれかに記載の熱安定剤(S)。
【請求項14】
架橋してエラストマーになるオルガノポリシロキサン組成物から熱安定性エラストマーを製造するための、請求項10〜13のいずれかに記載の熱安定剤(S)の使用。
【請求項15】
架橋してエラストマーになるオルガノポリシロキサン組成物に請求項10〜13のいずれかに記載の熱安定剤(S)を添加することを特徴とする、シリコーンエラストマーを熱安定化する方法。

【公表番号】特表2010−522777(P2010−522777A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533807(P2009−533807)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061328
【国際公開番号】WO2008/049828
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】