説明

熱安定性DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼ

【課題】部位特異的に核酸開裂構造を開裂する方法に用いる事のできる酵素の提供。
【解決手段】Thermus 属真正細菌の野生型熱安定性タイプA DNAポリメラーゼの重合ドメインのアミノ酸配列に、1以上のアミノ酸を置換又は欠失を有する改変熱安定性タイプA DNAポリメラーゼ、およびそれをコードするDNA。該ポリメラーゼは、野生型熱安定性タイプA DNAポリメラーゼのDNA合成活性より減少したDNA合成活性を示すが、5’ヌクレアーゼ活性は保持しており、核酸合成流性を妨げずに、5’ヌクレアーゼ溶性を有するので、特異的な核酸配列を検出する新規な方法に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は1992年12月12日出願の特許出願第07/986,330号の一部継続出願である1993年6月4日出願の特許出願第08/073,384号
の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は部位特異的に核酸開裂構造を開裂する方法に関する。特に、本発明は核酸合成能を阻害しない5’ヌクレアーゼ活性をもつ開裂酵素に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特定の核酸配列を検出することにより、感染を示唆するウイルスまたは細菌の核酸配列の存在を診断したり、病気と関連する哺乳動物遺伝子の変異または対立遺伝子の存在を診断したり、また法廷での試料中の核酸源を同定したり、父親を決定するのに利用されてきた。
【0004】
特定核酸配列の検出は典型的にはハイブリダイゼーションによって行われる。ハイブリダイゼーション法はターゲット核酸(検出すべき配列)と相補的な配列のアニーリングを含む。相補的配列を含む核酸の2つのポリマーがお互いを見つけ出し、塩基対相互作用により結合する能力を有することはよく知られた現象である。「ハイブリダイゼーション」法はMarmurとLane(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 46:453,1960)およびDotyら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 46:461,1960)によって最初に観察されたが、その後この方法は改良されて現代生物学に必須の道具となった。
【0005】
Hayashiら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 50:664,1963)によって実施された初期のハイブリダイゼーション研究は溶液中で行われた。さらに、ターゲットDNAまたはRNAを固体支持体に固定する方法が開発された。SmithとWilcox(J.Mol.Biol.51:379,1970)による特異的制限エンドヌクレアーゼの発見でDNAの別々のフラグメントを単離することが可能となった。制限酵素と組み合わせて、Southern(J.Mol.Biol.98:501,1975)によって記載された固定化法を用いることにより、多数の分画したゲノムDNA中から単一コピー遺伝子をハイブリダイゼーションによって同定することが可能となった。
【0006】
ハイブリダイゼーション法における進歩にもかかわらず、ハイブリダイゼーションをヒトの診断の道具として大規模に用いるには多数の問題がある。やっかいな問題には次のようなものがある:1)ハイブリダイゼーションの効率が悪いこと;2)ゲノムDNA混合物中の特定ターゲット配列の濃度が低いこと;そして3)ただ部分的に相補的なプローブとターゲットとのハイブリダイゼーション。
【0007】
1.効率の悪いハイブリダイゼーション
可能性のある多数のプローブ−ターゲット複合体のうちの一部のみがハイブリダイゼーション反応で形成されることが実験的に観察されている。特に短いオリゴヌクレオチドプローブ(長さ100塩基以下)の場合にはこれが顕著である。これには次の3つの主な理由がある:a)二次および三次構造の相互作用によってハイブリダイゼーションが起こり得ない;b)ターゲット配列を含むDNA鎖が相補鎖と再ハイブリダイズ(再結合)する;そしてc)いくつかのターゲット分子は、ターゲット核酸を固体表面に固定するハイブリダイゼーション方式に用いると、ハイブリダイゼーションが妨げられる。
【0008】
たとえプローブの配列がターゲット配列、すなわちターゲットの一次構造と完全に相補的であっても、高次構造の再配置によってプローブがターゲット配列に接近できるものでなければならない。これらの高次構造再配置は分子の二次または三次構造に関係する。二次構造は分子内結合によって決定される。DNAやRNAターゲットの場合、分子内結合は(2本の異なる鎖間のハイブリダイゼーションとは異なり)1本の連続塩基鎖内でのハイブリダイゼーションによる。分子内結合の程度と位置によって、プローブはターゲット配列から遠ざけられハイブリダイゼーションが妨げられる。
【0009】
変性2本鎖DNAへのオリゴヌクレオチドプローブの溶液ハイブリダイゼーションは、より長い相補的ターゲット鎖が再変性されたり再結合されたりするために、もっと複雑である。この場合もハイブリダイズしたプローブはこの理由によって遠ざけられる。その結果、プローブやターゲットの最初の濃度と比較して低いハイブリダイゼーション率(低い「適用範囲(coverage)」)となる。
【0010】
ナイロンやニトロセルロースなどの固定表面へのターゲット核酸の固定化は分子生物学では周知の技術である。固定化方式はターゲット分子の相補鎖間に起きる再会合の問題を解決するが、二次構造効果に関する問題を解決しない。しかしながら、これらの混合相方式(すなわち、サザンハイブリダイゼーションまたはドットブロットハイブリダイゼーション)は時間のかかる固定工程を必要とする。ハイブリダイゼーション反応自体は液相ハイブリダイゼーション反応よりも動力学的にはるかに遅い。固定化とハイブリダイゼーションの工程を合わせると、実施に最低数時間から数日を要する。さらに、標準的固定化法はしばしば効率が悪く、固体表面の複数の部分にターゲット分子を多数結合させることになり、次のプローブ分子とのハイブリダイゼーションを不可能にする。これらの種々の効果のため全体として、最初のターゲット分子のうちの数%のみがハイブリダイゼーション反応でプローブと結合するだけである。
【0011】
2.低いターゲット配列濃度
実験室での試験では精製プローブとターゲットが用いられる。また、これらのプローブとターゲットの濃度は必要とする感度に応じて調整できる。これとは対照的に、ハイブリダイゼーションを医学診断に応用する目的は、ゲノムDNA混合物からターゲット配列を検出することである。ターゲット配列を含むDNAフラグメントは通常ゲノムDNA中に比較的少量しか含まれていない。これが大きな技術的困難をもたらし、オリゴヌクレオチドプローブを用いる多くの慣用法ではこのような低濃度でハイブリダイゼーションを検出するのに必要な感度をもっていない。
【0012】
ターゲット配列濃度の問題を解決する1つの試みは検出シグナルの増幅である。これには多くの場合、オリゴヌクレオチドプローブに1またはそれ以上の標識を付ける。非放射性標識の場合には、最高の親和性をもつ試薬であっても、オリゴヌクレオチドプローブを用いてゲノムDNA中の1コピー遺伝子を検出することはできないことが見いだされた。Wallaceら(Biochimie67:755,1985)を参照されたい。放射性オリゴヌクレオチドプローブの場合には、極めて高い特異的活性をもつもののみがゆっくりとした満足できる結果を示すことが見いだされた。StudenckiおよびWallace(DNA 3:1,1984)およびStudenkiら(Human Genetics 37:42,1985)を参照されたい。
【0013】
ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)法は低いターゲット配列濃度の問題に対する別のアプローチを提供する。PCRはハイブリダイゼーション前にターゲット濃度を直接増加する。米国特許第4,683,195号および第4,683,202号において、Mullisらはクローニングや精製を行うことなくゲノムDNA混合物中でターゲット配列セグメントの濃度を増加する方法を開示する。
【0014】
ターゲット配列を増幅するこの方法は、所望のターゲット配列を含むDNA混合物に過剰モルの2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入することからなる。2つのプライマーは2本鎖配列のそれぞれの鎖と相補的である。混合物を変性してハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの後、プライマーをポリメラーゼで伸長させて相補鎖を形成する。比較的高濃度の所望のターゲット配列セグメントを得るのに必要な回数だけ変性、ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ伸長の工程を繰り返すことができる。所望するターゲット配列セグメントの長さは2つのプライマー同志の相対的位置によって決定されるので、この長さは調整しうるパラメーターである。繰り返し工程のゆえに、この方法は発明者によって”ポリメラーゼチェインリアクション”(またはPCR)と呼ばれている。所望するターゲット配列セグメントが混合物中において(濃度の点で)優勢な配列となるので、このセグメントが「PCR増幅された」という。
【0015】
しかしながら、PCR法は増幅工程で非ターゲットフラグメントを生産しやすい。PCR反応の途中で部分的に相対的な領域でにせのプライマー伸長が起こり得る。増幅工程の特異性に影響する要因には次のものを含む:a)分析すべきDNA中のターゲット配列の濃度;b)Mg++、ポリメラーゼ酵素およびプライマーの濃度;c)増幅サイクルの回数;そしてd)増幅反応での各種工程に用いる温度と時間[PCR法−DNA増幅の原理と応用(H.A.Erlich編集,Stockton Press,New York,pp.7-16,1989)。特定ターゲット配列が試料DNA中に低濃度で存在する場合には、非ターゲットフラグメントが生産されやすい。臨床試料ではターゲットがゲノム中に1コピーだけ存在したり、HIV感染のように非常に少量のウイルスDNAしか存在しなかったりで、ターゲット濃度が低いのが通常である。
【0016】
検出すべき特定ターゲット配列を表さない増幅産物が生産されるので、PCR反応の産物はターゲットDNAに特異的なプローブを用いて分析しなければならない。特異的増幅産物の検出は、ターゲット配列に特異的なプローブと固体支持体に固定した反応産物とのハイブリダイゼーションによって行ってきた。このような検出法は煩雑で上述したハイブリダイゼーションによるターゲット分子の検出と関連した同様の問題を有する。
【0017】
特異的PCR産物の非ハイブリダイゼーションによる検出法がHollandら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276,1991)によって記載されている。この検出法では、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来の野生型DNAポリメラーゼ(「DNAPTaq」)の5’ヌクレアーゼ活性を用いて、増幅に伴う特異的検出可能な産物を作製する。ターゲットDNAに特異的なオリゴヌクレオチドプローブを5’末端で標識し、増幅すべきターゲットの伸長に用いる非標識プライマーと一緒にPCR反応に加える。DNAPTaqの5’ヌクレアーゼ活性が、プライマーの伸長が完了する前にターゲットDNAに結合した標識プローブを開裂し、より小さいプローブフラグメントを生じる。この検出法では、試料に増幅を行って特異的検出産物を生産することを必要とする。これでは時間がかかり、かつ煩雑な装置を必要とする。
【0018】
この検出系では、ターゲットDNAの最低100コピーの出発コピー数(すなわち増幅前のコピー数)を用いており、これよりも少ない数の出発コピー数でもこの方法で検出できるのかは明らかでない。試料サイズが制限されるために非常に少量のDNAしか得られない臨床試料(新生児や胎児の血液や法廷試料など)では非常に少ないコピー数が問題となるかも知れない。
【0019】
このような方法は従来のハイブリダイゼーション検出法の改良ではあるが、なお試料にPCR反応を実施しなければならず、固有の問題を含んでいる。このような問題の1つは、この系では検出プローブがプライマー伸長の起こる前にターゲットDNAに結合しなければならないことである。伸長が先に起こると、プローブ結合部位が使用できなくなり、プローブ消化ができなので検出シグナルがでてこない。この問題を解決するために、ユーザーはプライマーとプローブの相対量を変更したり、プローブの配列や長さを調節しなければならない。このような最適化の必要は臨床実験室ではあまりにも煩雑である。
【0020】
3.部分的相補性
これに用いる方法のいかんにかかわらず、ハイブリダイゼーションは、検出すべき配列(ターゲット配列)と試験の実施に用いるDNA断片(プローブ)との間のある程度の相補性を必要とする(もちろん、相補性が全くなくとも結合が得られるが、このような結合は非特異的であり避けるべきである)。多くの診断上の利用では、ハイブリダイゼーションが完全であるか、部分的に相補的であるかを決定することは重要でない。例えば、病原体DNA(ウイルス、細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物など)の存在または不在を単に検出するのが目的ならば、関連の配列が存在するときにそのハイブリダイゼーション法によってハイブリダイゼーションが確実に起こることだけが重要であり、部分的に相補的なプローブと完全に相補的なプローブの両方がハイブリダイズする条件を選択できる。しかし、その他の診断上の利用では、ハイブリダイゼーションによって変異ターゲット配列を識別することが必要である。例えば、病原体の特定の対立遺伝子変異が存在することが問題となる。このような正常配列と変異配列とは1または数塩基で異なっている。
【0021】
ハイブリダイゼーション法が部分的相補性と完全相補性とを識別することを必要とする別の利用がある。遺伝子多型性を検出することが重要となりうる。ヒトヘモグロビンは部分的には4つのポリペプチド鎖からなる。これらの鎖のうち2つは141アミノ酸からなる同一の鎖(α鎖)であり、2つは146アミノ酸からなる同一の鎖(β鎖)である。β鎖をコードする遺伝子は多型性を示すことが知られている。正常な対立遺伝子は6番目にグルタミン酸をもつβ鎖をコードする。突然変異対立遺伝子は6番目にバリンをもつβ鎖をコードする。このアミノ酸の違いは、鎌状赤血球貧血として臨床的に知られる重大な(その人が突然変異対立遺伝子に対して同型接合であるときには最も重大な)生理学的意味をもつ。正常な対立遺伝子DNA配列と突然変異対立遺伝子DNA配列との間にただ1つの塩基が異なることによってアミノ酸の変更が起きるという遺伝学の基礎はよく知られたことである。
【0022】
その他の方法(制限酵素分析など)と組み合わせなけれは、部分相補性の場合も完全相補性の場合も同レベルのハイブリダイゼーションを起こすハイブリダイゼーション法はこのような利用には不適切である。プローブが正常ターゲット配列と変異ターゲット配列のどちらにもハイブリダイズするからである。
【0023】
部分相補性と完全相補性との区別を可能にする方法が開発されてきた。1つのアプローチは、研究中の特定ハイブリダイゼーションの温度要求を利用することである。Wallaceら(Nucl.Acids Res.6:3543,1979;Nucl.Acids Res.9:879,1981)によって記載されたように、典型的な融解曲線試験では、非平衡条件下で温度を上昇させながら固定化プローブ−ターゲット複合体を洗浄する。完全相補的なプローブ−ターゲット複合体と比較して、部分相補的なプローブ−ターゲット複合体は温度安定性が低いことが観察された。したがって、この違いを利用してプローブが部分相補的ターゲット配列とハイブリダイズしたか、完全相補的ターゲット配列とハイブリダイズしたかを決定できる。
【0024】
ハイブリダイゼーションの温度依存性を利用する従来の方法には技巧を要する。この方法を用いてヒトゲノムターゲット中の1塩基の突然変異を区別するには、ターゲット配列とのハイブリダイゼーション相互作用が17塩基から25塩基の長さである短いオリゴヌクレオチドプローブを用いる場合に限定される。長さの下限はヒトゲノム中のプローブと相補性をもつかどうかのランダムな可能性によって決定した。これはランダムな16塩基対の相互作用では1以上であるが、17塩基またはそれ以上の長さの相互作用では1以下である。上限は実施可能性の問題である。25塩基よりも長い相互作用では温度安定性に基づいて1塩基のミスマッチを区別することは困難である。またこれらの従来法は残念なことに時間がかかり過ぎる。この実験でのプローブ濃度は約1−5x10-10Mである。この濃度は経験的に導き出された;すなわち、プローブの使用量を最小にし、同時に約20ヌクレオチドの長さのプローブを用いて1コピーの遺伝子を十分区別できるものである。ハイブリダイゼーション時間はこの条件では2〜10時間である。ハイブリダイゼーションの後、種々のストリンジェンシーを用いて数回洗浄して過剰のプローブ、非特異的結合、およびターゲットゲノム中で部分相補的配列と結合したプローブを除去する。実験のノイズ(非特異的結合プローブ)に対するシグナル(特異的結合プローブ)比は究極的には洗浄工程で決定されるので、洗浄工程を注意深く制御することが必要である。
【0025】
上述した検出法はいずれも上述した3つの問題すべてを解決するものではない。PCR法は低いターゲット濃度の問題を解決する。しかしながら、どのようなハイブリダイゼーション法を用いてPCR産物を特異的に検出しようとも、すべてのターゲット分子の検出と関連する同じ問題に直面する。PCRターゲット間の1塩基の違いの検出は最初、オリゴヌクレオチドプローブとPCRターゲットとの間に形成されるハイブリダイゼーション産物の制限酵素分析を用いてなされた。この方法は制限酵素がすべての配列に存在する訳ではないという事実によって限定される。最近の研究では、制限酵素を用いないで区別をしているが、しかしこれらの研究では固体支持体へのターゲット核酸の固定が不十分である(ドットブロットハイブリダイゼーション;Saiki et at.,Nature 324:163,1986)。
【0026】
対立遺伝子特異的変異の別の検出法がKwakら(Nucl.Acids Res.18:999,1990)に開示されている。この方法は、鋳型鎖とプライマーとの間にミスマッチがある場合にはDNAPがDNA鎖を合成することが困難であるという事実に基づいている。ミスマッチは、PCR反応で用いるプライマーに完全に相補的でないターゲットDNAの伸長を妨げ、増幅を妨げる作用をする。対立遺伝子特異的変異は、可能性のある対立遺伝子のうちの1つだけと完全にマッチするプライマーを用いることによって検出できるが、この検出法は技巧を要し、制限が多い。特に面倒なのは、ミスマッチの塩基組成がミスマッチを越えて伸長するのを妨げる能力に影響するという事実である。ある種のミスマッチは伸長を妨げず、少しの影響しか及ぼさない。
【0027】
特定ターゲットDNAを検出する理想的方法は、試料DNAをまず増幅する必要なく検出できるものであり、DNA試料中に低コピー数で存在するターゲット配列の検出ができるものである。このような理想的検出法はまた、哺乳動物遺伝子の対立遺伝子間の1塩基の変異でも識別できるように、ターゲット配列の変異間の区別ができるものである。
【0028】
本発明の1つの目的は上述した問題点を解決する特定核酸配列の検出法を提供することである。
【発明の概要】
【0029】
本発明は部位特異的手法で核酸開裂構造を開裂する手段に関する。ある態様では、開裂手段は熱安定性DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼを含む開裂酵素である。これらのポリメラーゼは特定核酸配列の新規検出法の基礎となる。本発明は、多くの他の用途のうち、臨床診断目的に新規検出法を用いることを含む。
【0030】
ある態様では、本発明は、天然の(すなわち「野生型」)DNAポリメラーゼのDNA合成活性とは異なるDNA合成活性を示すように、天然の配列を変更したDNAポリメラーゼ(すなわち「突然変異体」DNAポリメラーゼ)をコードするDNA配列を含む。コードされるDNAポリメラーゼが天然DNAポリメラーゼよりも低い合成活性を示すように変更することが好ましい。このようにして、本発明の酵素は主として5’ヌクレアーゼであり、妨害となる合成活性の不在下に構造特異的に核酸を開裂することができる。
【0031】
重要なことは、本発明の5’ヌクレアーゼが直鎖状二本鎖構造を開裂して単一の分離した開裂産物を生じることである。これらの直鎖構造は、1)野生型酵素によって(有意な程度には)開裂されないか、あるいは2)野生型酵素によって開裂されて複数の産物を生じるか、のいずれかである。この5’ヌクレアーゼの特徴は真性細菌熱安定性種に見られる熱安定性ポリメラーゼから同様にして得られる酵素と一致することが発見された。
【0032】
ポリメラーゼ合成を欠失させるのに必要な変更の性質や欠失の程度によっては本発明は限定されない。本発明は変更された構造(一次、二次など)とともに、合成阻害剤によって阻害される天然の構造も含む。
【0033】
構造を変更する場合には、ポリメラーゼの構造を変更する手段によっては本発明は限定されない。ある態様では、天然DNA配列の変更は1ヌクレオチドの変化を含む。別の態様では、天然DNA配列の変更は1以上のヌクレオチドの欠失を含む。さらに別の態様では、天然DNA配列の変更は1以上のヌクレオチドの挿入を含む。いずれの場合にも、DNA配列の変更はアミノ酸配列の変更となって現れることがある。
【0034】
本発明は各種の起源由来の5’ヌクレアーゼを意図する。好ましい5’ヌクレアーゼは熱安定性である。熱安定性5’ヌクレアーゼは、核酸ハイブリダイゼーションが極めて特異的な温度で作用しうる点で特に有用であり、対立遺伝子特異的検出(1塩基のミスマッチを含む)を可能にする。ある態様では、熱安定性5’ヌクレアーゼは、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・フラヴァス(Thermus flavus)およびサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)の天然ポリメラーゼ由来の変更ポリメラーゼからなる群から選択される。
【0035】
上述したように、本発明は変更ポリメラーゼを検出法に使用することを意図する。ある態様では、本発明は特定ターゲット核酸分子の存在を検出する方法を意図しており、該方法は、a)i)開裂手段、ii)ターゲット核酸、iii)ターゲット核酸の第1部分と相補的な第1オリゴヌクレオチド、iv)第2オリゴヌクレオチドをもつ第1固体支持体であって、該第2オリゴヌクレオチドのある領域がターゲット核酸の第2部分と相補的であって、第2オリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5’末端に一本鎖アームを提供し、該5’アームの一部が第1シグナルオリゴヌクレオチドを含む、上記第1固体支持体、v)第3オリゴヌクレオチドをそれぞれもつ複数の「未開裂」第2固体支持体であって、該第3オリゴヌクレオチドのある領域が第1シグナルオリゴヌクレオチドと相補的であって、第3オリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5’末端に一本鎖アームを提供し、該5’アームの一部が第2シグナルオリゴヌクレオチドを含む、上記第2固体支持体、ならびにvi)第4オリゴヌクレオチドをそれぞれもつ複数の「未開裂」第3固体支持体であって、該第4オリゴヌクレオチドのある領域が第2シグナルオリゴヌクレオチドと相補的であって、第4オリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5’末端に一本鎖アームを提供し、該5’アームの一部が第1シグナルオリゴヌクレオチドを含む、上記第3固体支持体、を提供し;b)第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドの3’末端がターゲットDNA配列にアニールして第1開裂構造を作り出し、第1開裂構造の開裂が第1シグナルオリゴヌクレオチドの解放をもたらすような条件下で、上記開裂手段、ターゲット核酸、第1オリゴヌクレオチドおよび第2オリゴヌクレオチドを混合し;d)第1シグナルオリゴヌクレオチドが第3オリゴヌクレオチドの相補的領域とハイブリダイズして第2開裂構造を作り出し、第2開裂構造の開裂が第2シグナルオリゴヌクレオチドの解放と「開裂した」第2固体支持体をもたらすような条件下で、上記解放された第1シグナルオリゴヌクレオチドを複数の第2固体支持体のうちの1つと反応させ;e)第2シグナルオリゴヌクレオチドが第4オリゴヌクレオチドの相補的領域とハイブリダイズして第3開裂構造を作り出し、第3開裂構造の開裂が第1シグナルオリゴヌクレオチドの解放と「開裂した
」第3固体支持体をもたらすような条件下で、上記解放された第2シグナルオリゴヌクレオチドを複数の第3固体支持体のうちの1つと反応させ;そしてh)第1および第2シグナルオリゴヌクレオチドの存在を検出する、ことからなる。
【0036】
第1シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび第2シグナルオリゴヌクレオチドの解放の後に、第1シグナルオリゴヌクレオチド自体が「開裂した」第2固体支持体から放出されて複数の「未開裂の」第2固体支持体のうちの1つと反応するのが好ましい。同様に、第2シグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび第1シグナルオリゴヌクレオチドの第2分子の解放の後に、第2シグナルオリゴヌクレオチド自体が「開裂した」第3固体支持体から放出されて複数の「未開裂の」第3固体支持体のうちの1つと反応するのが好ましい。「開裂した」という用語、および「未開裂の」という用語は、固体支持体(例えばビーズ)が物理的に開裂したり未開裂であることを意味するのではない。むしろ、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドの状態を示すのに用いる。
【0037】
「固体支持体」という用語によって、本発明が分離した別々の支持体に限定されることを意味するのではない。例えば、本発明は、オリゴ体が同じ固体支持体上であるが異なる領域に分離されている設計も含む。ある態様では、固体支持体はミクロタイターウエルであり、オリゴ体はウエルの異なる領域に結合(例えば共有結合的に)または被覆(例えば非共有結合的に)されている。
【0038】
第2の態様では、本発明は、特定ターゲット核酸分子の存在を検出する方法を含み、該方法は、a)i)ターゲット核酸、ii)ターゲット核酸の第1部分と相補的な第1オリゴヌクレオチド、およびiii)ある領域がターゲット核酸の第2部分と相補的である第2オリゴヌクレオチドであって、第2オリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5’末端に一本鎖アームを提供する、上記第2オリゴヌクレオチド、を提供し;b)第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドの3’末端がターゲットDNA配列にア0ールして第1開裂構造を作り出すような条件下で、上記ターゲット核酸、第1オリゴヌクレオチドおよび第2オリゴヌクレオチドを混合し;c)ターゲット核酸への第1および第2オリゴヌクレオチドのアニーリングに依存して第2オリゴヌクレオチド中に位置する部位において第1開裂構造の開裂が優先的に起こるような条件下で開裂手段を提供し、これによって第2オリゴヌクレオチドの一本鎖アームを解放して第3オリゴヌクレオチドを生成し;d)一本鎖3’アームと一本鎖5’アームをもつ第1ヘアピン構造を、第3オリゴヌクレオチドが第1ヘアピンの一本鎖3’アームとアニールして第2開裂構造を作り出すような条件下に提供し;e)開裂手段によって第2開裂構造の開裂が起きて、第2開裂構造の一本鎖5’アームを解放し、第4オリゴヌクレオチドと第1開裂ヘアピン検出分子とを含む反応生成物を作り出すような条件を提供し;f)一本鎖3’アームと一本鎖5’アームをもつ第2ヘアピン構造を、第4オリゴヌクレオチドが第2ヘアピンの一本鎖3’アームとアニールして第3開裂構造を作り出すような条件下に提供し;g)開裂手段によって第3開裂構造の開裂が起きて、第3開裂構造の一本鎖5’アームを解放し、第3オリゴヌクレオチドと同じ配列の第5オリゴヌクレオチドと第2開裂ヘアピン検出分子とを含む反応生成物を作り出すような条件を提供し;そしてh)第1および第2開裂ヘアピン検出分子を検出する、ことからなる。
【0039】
ある態様では、本発明の検出法は、検出前にターゲットコピー数を増幅する必要なく試料中に存在する特定ターゲット核酸配列を検出できる。この態様では、上記方法の工程d)からg)を少なくとも1回繰り返す。
【0040】
好ましい態様では、開裂手段は低い合成能をもつ変更熱安定性DNAポリメラーゼを含む開裂酵素、すなわち熱安定性DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼを含む。完全な合成の欠失は必要ではないが、検出に必要な識別を妨害するレベルのポリメラーゼ活性がない状態で開裂反応が起きるのが好ましい。
【0041】
本発明の第2の態様の検出法における開裂はオリゴヌクレオチドのアニーリングとは独立でありうるが、開裂がプライマー依存的であることが好ましい。言い換えると、第1オリゴヌクレオチド、第3オリゴヌクレオチドおよび第4オリゴヌクレオチドのアニーリングがないときには工程c)、e)およびg)の開裂反応が起こらないことが好ましい。
【0042】
開裂は部位特異的であるが、本発明では多くの部位での開裂が可能である。ある態様では、工程c)の開裂反応は第2オリゴヌクレオチドのアニールした部分内で起こる。別の態様では、工程c)の開裂反応は第2オリゴヌクレオチドの非アニール部分内で起こる。
【0043】
発明の説明
本発明は部位特異的な手法で核酸開裂構造を開裂する手段に関する。特に、本発明は、妨害となる核酸合成能をもたずに5’ヌクレアーゼ活性をもつ開裂酵素に関する。
【0044】
本発明は、天然の熱安定性DNAポリメラーゼとは異なる変更DNA合成活性を示す熱安定性DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼを提供する。ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性は保持されるが、合成活性は減少するか、あるいはない。このような5’ヌクレアーゼは、妨害となる合成活性の不在下に核酸の構造特異的開裂を触媒することができる。開裂反応の間に合成活性がないために、均一な大きさの核酸開裂生成物をもたらす。
【0045】
本発明のポリメラーゼの新規な性質は特定核酸配列を検出する方法の基礎となる。従来の特定ターゲット配列の検出法のようにターゲット配列自体を増幅するのではなく、この方法は検出分子の増幅に基づく。
【0046】
大腸菌(E.coli)やサーマス(Thermus)属の好熱細菌から単離されたようなDNAポリメラーゼ(DNAP)は新規なDNA鎖を合成する酵素である。既知のDNAPのうちのいくつかが酵素の合成活性に加えて関連のヌクレアーゼ活性を含む。
【0047】
いくつかのDNAPがDNA鎖の5’および3’末端からヌクレオチドを除去することが知られている(Kornberg,DNA Replication,W.H.Freeman and Co.,San Francisco,pp.127-139,1980)。これらのヌクレアーゼ活性は通常それぞれ5’エキソヌクレアーゼおよび3’エキソヌクレアーゼと呼ばれる。例えば、いくつかのDNAPのN−末端ドメインに位置する5’エキソヌクレアーゼ活性は、DNA複製中のラギング鎖合成におけるRNAプライマーの除去および修復における損傷ヌクレオチドの除去に関与している。大腸菌DNAポリメラーゼ(DNAPEcl)のようないくつかのDNAPは、DNA合成における校正(proof−reading)の役割をもつ3’エキソヌクレアーゼ活性ももつ(Kornberg、前出)。
【0048】
サーマス・アクアティカスから単離されたDNAPはTaqDNAポリメラーゼ(DNAPTaq)と呼ばれ、5’エキソヌクレアーゼ活性をもつが、機能的3’エキソヌクレアーゼドメインをもっていない(Tindall and Kunkell,Biochem.27:6008,1988)。DNAPEclおよびDNAPTaqの誘導体はそれぞれクレノウ(Klenow)およびストフェル(Stoffel)フラグメントと呼ばれ、酵素または遺伝子操作の結果5’エキソヌクレアーゼドメインをもっていない(Brutlag et al.,Biochem.Biophys. Res.Commun.37:982,1969;Erlich et al.,Science 252:1643,1991;Setlow and Kornberg,J.Biol.Chem.247:232,1972)。
【0049】
DNAPTaqの5’エキソヌクレアーゼ活性は同時に合成を必要とすることが報告されている(Gelfand,PCR Technology-Principles and Applications for DNA Amplification(H.A.Erlich,編集),Stockton Press,New York,p.19,1989)。DNAPTaqおよびDNAPEclの5’エキソヌクレアーゼの消化生成物中ではモノヌクレオチドが主なものであるが、短いオリゴヌクレオチド(≦12ヌクレオチド)も観察され、これらのいわゆる5’エキソヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼ的に機能しうることを示唆する(Setlow,前出;Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276,1991)。
【0050】
国際公開WO92/06200号において、Gelfandらは熱安定性DNAポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性の好ましい基質は置き換え(displaced)一本鎖DNAであることを示している。ホスホジエステル結合の加水分解が置き換え一本鎖DNAと二重らせんDNAとの間で起こり、好ましいエキソヌクレアーゼ開裂部位は二重らせん領域中のホスホジエステル結合である。したがって、DNAPに関連する5’エキソヌクレアーゼ活性は通常構造依存性の一本鎖エンドヌクレアーゼであり、より正しくは5’ヌクレアーゼと呼ばれる。エキソヌクレアーゼは核酸分子の末端から核酸分子を開裂する酵素である。一方、エンドヌクレアーゼは末端よりもむしろ内部で核酸分子を開裂する酵素である。いくつかの熱安定性DNAポリメラーゼに関連するヌクレアーゼ活性はエンドヌクレアーゼ的に開裂するが、この開裂には開裂すべき分子の5’末端との接触が必要である。したがって、これらのヌクレアーゼは5’ヌクレアーゼと呼ばれる。
【0051】
5’ヌクレアーゼ活性が真性細菌A型DNAポリメラーゼと関連する場合には、タンパク質の3分の1のN−末端領域が独立の機能性ドメインであることが見いだされた。分子のC−末端の3分の2はDNA合成の役割を果たす重合ドメインを構成する。いくつかのA型DNAポリメラーゼは、分子のC−末端の3分の2領域と関連する3’エキソヌクレアーゼ活性ももつ。
【0052】
DNAPの5’エキソヌクレアーゼ活性と重合活性とは、ポリメラーゼ分子のタンパク質分解的開裂または遺伝子操作によって分離された。今日までに、熱安定性DNAPはポリメラーゼ活性をそのまま保持しながら5’ヌクレアーゼ活性量を除去または減少するように修飾されてきた。
【0053】
DNAPEclのクレノウまたは大きなタンパク質分離開裂フラグメントはポリメラーゼ活性と3’エキソヌクレアーゼ活性を含むが、5’ヌクレアーゼ活性をもっていない。DNAPTaqのストフェルフラグメントは、ポリメラーゼ分子のN−末端の289アミノ酸を欠失する遺伝子操作によって5’ヌクレアーゼ活性をもっていない(Erlich et al.,Science 252:1643,1991)。WO92/06200号は変更したレベルの5’から3’へのエキソヌクレアーゼをもつ熱安定性DNAPを記載する。米国特許第5,108,892号は5’から3’へのエキソヌクレアーゼをもたないサーマス・アクアティカスDNAPを記載する。しかしながら、分子生物学の当業界では少ない量の合成活性をもつ熱安定性DNAポリメラーゼが得られていない。
【0054】
本発明は、5’ヌクレアーゼ活性を保持するが、合成活性を減少またはもたない熱安定性A型DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼを提供する。5’ヌクレアーゼ活性から酵素の合成能を分離することができるために、5’ヌクレアーゼ活性が従来報告されてきたような同時に起こるDNA合成を必要としない(Gelfand,PCR Technology,前出)。
【0055】
本発明は、I.5’ヌクレアーゼを用いる特定核酸配列の検出;II.熱安定性DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼの作製;III.5’ヌクレアーゼの治療用途;およびIV.二重捕捉アッセイによる抗原または核酸ターゲットの検出に分けて記載する。本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。
【0056】
「遺伝子」の用語は、ポリペプチドまたは前駆体の生成に必要な制御配列とコード配列を含むDNA配列をいう。ポリペプチドは全長コード配列または所望の酵素活性が保持される限りコード配列の一部によってコードされる。
【0057】
「野生型」の用語は、天然起源のものから単離した遺伝子または遺伝子産物の特徴をもつ遺伝子または遺伝子産物をいう。対照的に、「修飾体」または「突然変異体」とは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して変更した特徴を示す遺伝子または遺伝子産物をいう。天然に起こる突然変異体を単離することができ、これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して変更した特徴をもつという事実によって同定できることに注意されたい。
【0058】
本明細書中で用いる「組換えDNAベクター」の用語は、所望のコード配列と、機能的に連結したコード配列を特定の宿主生物中で発現するのに必要な適当なDNA配列とを含むDNA配列をいう。原核細胞中での発現に必要なDNA配列には、プロモーター、任意のオペレーター配列、リボゾーム結合部位およびその他の配列を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを用いることが知られている。
【0059】
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」の用語は、2以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、好ましくは3以上、そして通常は10以上を含む分子と定義される。正確な大きさは多くの要因に依って決まり、これら要因はオリゴヌクレオチドの最終的機能と用途に依って決まる。オリゴヌクレオチドは化学合成、DNA複製、逆転写、またはその組み合わせを含む多くの方法で製造できる。
【0060】
モノヌクレオチドを反応させてオリゴヌクレオチドを作るには、モノヌクレオチドペントース環の5’リン酸を1方向の隣接するモノヌクレオチドの3’酸素とホスホジエステル結合によって結合させるので、オリゴヌクレオチドの末端は、もしもその5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素と結合していないならば「5’末端」と呼び、もしもその3’酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸と結合していないならば「3’末端」と呼ぶ。本明細書では、大きいオリゴヌクレオチドの内部であっても核酸配列は5’および3’末端をもつという。
【0061】
2つの異なるオーバーラップしないオリゴヌクレオチドが同じ直鎖状の相補的核酸配列の異なる領域とアニールし、一方のオリゴヌクレオチドの3’末端が他方の5’末端に向くとき、前者のオリゴヌクレオチドを「上流」オリゴヌクレオチドと呼び、後者のオリゴヌクレオチドを「下流]オリゴヌクレオチドと呼ぶ。
【0062】
「プライマー」の用語は、プライマー伸長が開始する条件下においたときに合成開始点として作用できるオリゴヌクレオチドをいう。オリゴヌクレオチド「プライマー」は精製した制限酵素消化の場合のように天然で起こり得るし、また合成で作ることもできる。
【0063】
プライマーは鋳型の特定配列鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。プライマー伸長を起こさせるためには、プライマーは鋳型鎖とハイブリダイズするのに十分なほど相補的でなければならない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントをプライマーの5’末端につけて、残りのプライマー配列を鎖と実質的に相補的とすることができる。プライマー配列が鋳型とハイブリダイズできるほどに鋳型の配列との十分な相補性を有し、それによって鋳型−プライマー複合体を形成してプライマーの伸長生成物を合成することができる限り、非相補的塩基またはより長い配列をプライマー中に挿入できる。
【0064】
本明細書で用いる核酸配列の相補鎖とは、一方の配列の5’末端を他方の3’末端と対になるように核酸配列を並べたときに「逆平行鎖会合」であるオリゴヌクレオチドをいう。本発明の核酸には、例えばイノシンや7−デアザグアニンなどの天然の核酸に通常見られないいくつかの塩基を含む。相補性は完全である必要はなく、安定な二本鎖にはミスマッチ塩基対やマッチしない(unmatched)塩基を含むことができる。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、塩基組成およびオリゴヌクレオチド配列、イオン強度およびミスマッチ塩基対の頻度を含む多数の可変要因を考慮して二本鎖の安定性を経験的に決定することができる。
【0065】
核酸二本鎖の安定性は融解温度または「Tm」によって測定する。特定条件下での特定核酸二本鎖のTmは塩基対の半分が解離する温度である。
【0066】
本明細書で用いる「プローブ」の用語は、プローブ中の少なくとも1つの配列が別の核酸中の配列と相補的であるために、別の核酸中の配列と二本鎖構造を形成する標識オリゴヌクレオチドをいう。
【0067】
本明細書で用いる「標識」の用語は、検出可能な(好ましくは定量的に)シグナルを提供するために用いられ、核酸またはタンパク質に結合しうる何らかの原子または分子をいう。標識は蛍光、放射能活性、比色分析、重力、X線回折または吸収、磁性、酵素活性などによって検出しうるシグナルを提供する。
【0068】
本明細書で用いる「開裂構造」とは、DNAPの5’ヌクレアーゼ活性の基質である核酸構造をいう。
【0069】
本明細書で用いる「開裂手段」とは、特定の方法で開裂構造を開裂できる何らかの手段をいう。開裂手段には、5’ヌクレアーゼ活性をもつ天然DNAP、およびより特定するならば、5’ヌクレアーゼ活性をもつが、合成活性をもたない修飾DNAPを含む。
【0070】
本明細書で用いる「解放(liberating)」とは、放出された(released)フラグメントがもはや共有結合的にオリゴヌクレオチドの残り部分に結合しないように、5’ヌクレアーゼの作用によってオリゴヌクレオチドなどのより大きな核酸フラグメントから核酸フラグメントを放出することをいう。
【0071】
本明細書で用いる「基質鎖」の用語は、5’ヌクレアーゼ活性によって媒介される開裂が起こるような開裂構造中の核酸鎖を意味する。
【0072】
本明細書で用いる「鋳型鎖」の用語は、基質鎖と少なくとも部分的に相補的であり、かつ基質鎖とアニールして開裂構造を形成する開裂構造中の核酸鎖を意味する。
【0073】
本明細書で用いる「Km」の用語は、酵素のミカエリス−メンテン定数をいい、ある酵素が酵素触媒反応における最大速度の半分を生じる特定基質の濃度と定義される。
【0074】
I.5’ヌクレアーゼを用いる特定核酸配列の検出
本発明の5’ヌクレアーゼは特定核酸配列の同定のための新規検出アッセイの基礎を与える。この検出系はターゲット配列の2つの部分への2つのオリゴヌクレオチドプローブのアニーリングを要求することによって特定核酸配列の存在を同定する。本明細書で用いるように、「ターゲット配列」または「ターゲット核酸配列」の用語は、ゲノムDNAまたはRNAなどのポリヌクレオチド配列中の、検出すべきまたは開裂すべき、あるいはその両方である特定核酸配列をいう。
【0075】
図1Aは、本発明の検出法の1態様の模式図である。ターゲット配列は発射(triggering)または引き金(trigge)反応において2つの異なるオリゴヌクレオチドによって認識される。これらのオリゴヌクレオチドのうちの1つが固体支持体上に提供されることが好ましい。他方は遊離状態で提供されうる。図1Aでは遊離のオリゴは「プライマー」として示されており、他方のオリゴは1型と呼ぶビーズに結合して示されている。ターゲット核酸は、本発明のDNAP(図1Aには示されていない)によって、(ビーズ1上のオリゴの)5’アームの特異的開裂のための2つのオリゴヌクレオチドと並ぶ。
【0076】
開裂部位(大きな黒矢印で示されている)は、「プライマー」の3’末端とビーズ1上のオリゴの下流フォークの間の距離によって制御される。後者は未開裂領域(斜線で示す)で設計される。このようにして、いずれのオリゴヌクレオチドも並び方が間違っていたりターゲット核酸に結合していないときには開裂されない。
【0077】
開裂が達成されるとαシグナルオリゴと呼ばれる単一コピーを放出する。このオリゴは検出可能な部分(例えば蛍光)を含むことができる。あるいは、未標識であってもよい。
【0078】
検出法の1態様では、さらに2つのオリゴヌクレオチドが固体支持体上に提供される。図1Aでビーズ2上に示すオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション可能なαシグナルオリゴと相補的な領域(α’で示す)をもつ。この構造は本発明のDNAPで開裂することができ、βシグナルオリゴを放出する。βシグナルオリゴは次に、相補的領域(β’で示す)をもつオリゴをもつ3型ビーズとハイブリダイズできる。再度この構造は本発明のDNAPで開裂されて新規なαオリゴを放出する。
【0079】
この時点では増幅はリニアである。この方法の効率を増加するには、βオリゴの放出後に2型ビーズとハイブリダイズしたαシグナルオリゴを解放することが望ましく、これによって2型ビーズ上の別のオリゴとさらにハイブリダイズできる。同様に、3型ビーズからのαオリゴの放出後に、βオリゴを解放するのが望ましい。
【0080】
「捕捉された」シグナルオリゴの解放は多くの方法によって実施できる。第1に、本発明のDNAPはα’(およびβ’)プライムオリゴの5’末端を「ニブリング」することができる真性の5’エキソヌクレアーゼをもつことが見いだされた(後程さらに詳述する)。したがって、適当な条件下では、DNAPのニブリングによってハイブリダイゼーションが脱安定化される。第2に、α−α’プライム(β−β’プライムも同様)複合体は熱(例えば熱サイクリング)によって脱安定化される。
【0081】
このような方法でシグナルオリゴを解放すると、各開裂の結果、シグナルオリゴの数が2倍になる。このようにして検出可能なシグナルが急速に得られる。
【0082】
図1Bは、本発明の検出法の第2態様の模式図である。再び、ターゲット配列が発射または引き金反応において2つの異なるオリゴヌクレオチドによって認識されて、ターゲット核酸は本発明のDNAP(図1Bには示していない)によって、5’アームの特異的開裂のための2つのオリゴヌクレオチドと並ぶ。第1のオリゴはターゲット配列の一部と完全に相補的である。第2のオリゴヌクレオチドはターゲット配列と部分的に相補的であり;第2オリゴヌクレオチドの3’末端はターゲット配列と十分相補的であるが、5’末端は非相補的であって一本鎖アームを形成する。第2オリゴヌクレオチドの非相補的末端は一連の標準のヘアピン構造に使用しうる一般的配列でありうる(後程詳述する)。異なるターゲット配列の検出には2つのオリゴヌクレオチドの独特の部分を必要とする;第1オリゴヌクレオチドの全部と第2オリゴヌクレオチドの3’末端である。第2オリゴヌクレオチドの5’アームの配列は不変であるか、または一般的である。
【0083】
ターゲット配列に沿って互いの近くで第1と第2オリゴヌクレオチドがアニーリングして、フォーク状の開裂構造を形成し、これがDNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼの基質となる。開裂部位のおよその位置が図1B中、大きな黒矢印で示されている。
【0084】
本発明の5’ヌクレアーゼはこの構造を開裂することができるが、第1オリゴヌクレオチドの3’末端の伸長を重合することはできない。第1オリゴヌクレオチドの伸長は第2オリゴヌクレオチドのアニール領域を置き換える(displacement)ことになり、また第2オリゴヌクレオチドに沿った開裂部位を動かすことになるので、この重合活性の欠失は有利である。もしも有意な量の重合が起こると、様々な長さの開裂生成物が生じてしまう。開裂生成物が検出反応を開始するので、均一な長さの単一開裂生成物が望ましい。
【0085】
引き金反応は熱サイクリングができるような条件下で行う。反応の熱サイクリングは反応に放出される引き金オリゴヌクレオチドの量を対数的に増加する。
【0086】
検出法の第2部では、引き金反応で形成された第1開裂構造の開裂によって解放された第2オリゴヌクレオチドのフラグメント(第3のまたは引き金オリゴヌクレオチドと呼ぶ)と、第1ヘアピン構造とのアニーリングが起きる。第1ヘアピン構造は一本鎖5’アームと一本鎖3’アームをもつ。第3オリゴヌクレオチドは、第1ヘアピン構造の3’アームにアニーリングすることによって第1ヘアピン構造の開裂の引き金を引き、これによって本発明の5’ヌクレアーゼによる開裂の基質を形成する。第1ヘアピン構造の開裂は以下の2つの反応生成物を生じる:1)第4オリゴヌクレオチドと呼ばれるヘアピンの開裂した5’アーム、および2)5’アームをもたない開裂したヘアピン構造であって未開裂ヘアピンよりも大きさが小さいもの。この開裂した第1ヘアピンが、引き金または第3オリゴヌクレオチドによって指示された開裂が起こったことを示唆するための検出分子として用いられる。したがって、これは最初の2つのオリゴヌクレオチドが見いだされたことを示唆し、これによって試料中のターゲット配列の存在を示唆する。
【0087】
第4オリゴヌクレオチドを第2ヘアピン構造とアニールさせることによって検出生成物を増幅できる。このヘアピン構造は5’一本鎖アームと3’一本鎖アームをもつ。第1ヘアピン構造の開裂によって生じた第4オリゴヌクレオチドは、第2ヘアピン構造の3’アームにアニールし、これによって5’ヌクレアーゼにより認識される第3開裂構造を生じる。第2ヘアピン構造の開裂は以下の2つの反応生成物を生じる:1)第3ヌクレオチドよりも小さいか、あるいは同じ配列の第5オリゴヌクレオチドと呼ばれるヘアピンの開裂した5’アーム、および2)5’アームをもたない開裂した第2ヘアピン構造であって未開裂ヘアピンよりも大きさが小さいもの。この開裂した第2ヘアピンが検出分子であり、第1ヘアピン構造の開裂によって生じたシグナルを増幅する。第4オリゴヌクレオチドのアニーリングと同様に、第3オリゴヌクレオチドは開裂した第1ヘアピン分子から解離して、遊離となって第1ヘアピン構造の新たなコピーとアニールする。ヘアピン構造からのオリゴヌクレオチドの解離は、加熱または塩基対相互作用を破壊する適当な他の手段によって実施できる。
【0088】
検出シグナルをさらに増幅するには、第5オリゴヌクレオチド(第3オリゴヌクレオチドと類似または同じ配列)と第1ヘアピン構造の別の分子とをアニーリングすることによって実施できる。次に開裂を行い、解放されたオリゴヌクレオチドを次に第2ヘアピン構造の別の分子とアニーリングする。過剰に提供される第1および第2ヘアピン構造のアニーリングと開裂を連続的に繰り返すと検出すべき開裂ヘアピン生成物が十分量で生じる。検出反応の温度は、ヘアピン構造の直接開裂に使用するオリゴヌクレオチドのアニーリング温度のすぐ下とすぐ上、一般的には約55℃と70℃をサイクルさせる。各サイクルで開裂物の数が2倍になり、ついには残るヘアピン構造の量が該ヘアピン構造のKm以下になる。ヘアピン構造が実質的に消費され尽くしたときにこの到達点に達する。検出反応を定量的に用いる場合には、開裂したヘアピン検出生成物の蓄積がプラトーに達する前にサイクル反応を停止する。
【0089】
開裂ヘアピン構造の検出は幾つかの方法で実施できる。ある態様では、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルで分離した後、臭化エチジウムで染色することにより検出を実施する。別の態様では、開裂および未開裂ヘアピン構造をゲルで分離した後にオートラジオグラフィーで検出を実施する。このとき、ヘアピン構造をまず放射性プローブで標識し、HPLCまたはFPLCのカラムクロマトグラフィーで分離した後、異なる大きさのフラグメントをOD260で検出する。その他の検出手段は、一本鎖5’アームが開裂によって放出されたときの蛍光分極変化の検出を含み、ヘアピン構造の3’アームとアニールしたプライマーの量が増加するとインターカレーション蛍光指示薬の蛍光が増加する。連続的な開裂の繰り返しが起きると、(プライマーとヘアピンの3’アームとの間の)二本鎖DNAの量の増加が起きる。
【0090】
ヘアピン構造はアガロース、スチレンまたは磁気ビーズなどの固体支持体にヘアピンの3’末端を介して結合させることができる。所望する場合には、ヘアピンの3’末端とビーズの間にスペーサー分子を入れることもできる。ヘアピン構造を固体支持体に結合する有利な点は、2つのヘアピン構造が相補的領域で互いにハイブリダイズすることを防止できることである。ヘアピン構造が互いにアニールすると、開裂反応中に放出されるプライマーとのハイブリダイゼーションに使用できるヘアピン量が減少する。ヘアピン構造を固体支持体に結合する場合には、開裂反応の生成物の検出にさらに別の方法を用いることもできる。これらの方法には、5’アームが5’末端に標識を含むときには放出された一本鎖5’アームの測定を行うことを含むが、これに限定されない。この標識は放射活性、蛍光、ビオチンなどでありうる。ヘアピン構造が開裂しない場合には、5’標識は固体支持体に結合したままである。開裂が起きると、5’標識は固体支持体から放出される。
【0091】
ヘアピン分子の3’末端はジデオキシヌクレオチドを用いてブロックすることができる。ジデオキシヌクレオチドを含む3’末端は、末端トランスフェラーゼなどの一定のDNA修飾酵素を用いる反応に関与できない。3’末端ジデオキシヌクレオチドをもつヘアピンの開裂は、開裂部位に新たなブロックされていない3’末端を生じる。この新たな3’末端は遊離のヒドロキシ基をもっており、これが末端トランスフェラーゼと相互作用して開裂生成物を検出する別の手段を提供する。
【0092】
ヘアピン構造は、その自己相補的領域が非常に短い(一般に3〜8塩基対)ように設計される。したがって、ヘアピン構造は、ヘアピンの3’アームにアニールしたオリゴヌクレオチドの存在によって安定化しない限り、反応が実施される高温(一般に50〜75℃の範囲)では不安定である。この不安定性は、関連プライマーがないときにポリメラーゼがヘアピン構造を開裂することを防ぎ、これによってオリゴヌクレオチドに指示されていない開裂による誤った正の結果が生じるのを防ぐ。
【0093】
上述したように、減少した重合活性をもつ本発明の5’ヌクレアーゼを使用すると、特定核酸配列の検出法に有利である。開裂反応の最中に有意な量の重合があると、開裂部位が予測できずにシフトし、単一の簡単に定量できる生成物ではなく種々の大きさの開裂ヘアピン構造を生成することとなる。さらに、1回の開裂に使用したプライマーが伸長してしまうと、不正確な構造を形成したり、あるいは中程度の温度サイクル条件で融解するには長すぎることによって、次のサイクルに使用できなくなる。プリスチン系(すなわち、dNTPが存在しない)では、未修飾ポリメラーゼを使用できるが、ヌクレオチド(dNTP)が存在すると、1サイクル当たりの効率が減少し、誤った負の結果を生じる。粗抽出物(ゲノムDNA調製物、粗細胞溶解物など)、PCR反応からのDNA試料やdNTPで汚染されているかも知れないその他の試料を用いる場合には、熱安定性ポリメラーゼ由来である本発明の5’ヌクレアーゼが特に有用である。
【0094】
II.熱安定性DNAポリメラーゼからの5’ヌクレアーゼの作製
A型DNAポリメラーゼをコードする遺伝子はDNA配列レベルで互いに約85%の相同性をもつ。熱安定性ポリメラーゼの好ましい例としては、サーマス・アクアティカス、サーマス・フラヴァスおよびサーマス・サーモフィリスから単離したものを含む。しかしながら、5’ヌクレアーゼ活性をもつその他の熱安定性A型ポリメラーゼも好適である。図2および図3は、上記3つのポリメラーゼのヌクレオチドとアミノ酸配列を比較したものである。配列番号1−3は3つの野生型ポリメラーゼのヌクレオチド配列を示し、配列番号4−6はアミノ酸配列を示す。配列番号1はYT−1株から単離した野生型サーマス・アクアティカスDNAポリメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に対応する(Lawyer et al.,J.Biol.Chem.264:6427,1989)。配列番号2は野生型サーマス・フラヴァスDNAポリメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に対応する(Akhmetzjanov and Vakhitov,Nucl.Acids Res.20:5839,1992)。配列番号3は野生型サーマス・サーモフィリスDNAポリメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に対応する(Gelfand et al.,WO 91/09950,1991)。配列番号7−8は上記3つのDNAPそれぞれのコンセンサスヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す(図2および図3の上の列にも示してある)。
【0095】
熱安定性ポリメラーゼ由来の本発明の5’ヌクレアーゼは合成能を減少しているが、天然のDNAポリメラーゼと実質的に同じ5’エキソヌクレアーゼ活性を保持する。本明細書で用いる「実質的に同じ5’ヌクレアーゼ活性」の用語は、修飾酵素の5’ヌクレアーゼ活性が構造依存性の一本鎖エンドヌクレアーゼとして機能する能力を保持するが、未修飾酵素と比較して必ずしも同じ開裂速度ではないことを意味する。A型DNAポリメラーゼは、5’ヌクレアーゼ活性を増加するが、減少した合成活性をもつように修飾することもできる。減少した合成活性と増加した5’ヌクレアーゼ活性をもつ修飾酵素も本発明の意図するところである。
【0096】
本明細書で用いる「減少した合成活性」の用語は、修飾酵素が未修飾または「天然」酵素に見られる合成活性レベルよりも低いことを意味する。修飾酵素は合成活性が全く残っていないか、あるいは後述する検出アッセイで修飾酵素の使用を妨害しないレベルの合成活性をもつ。本発明の5’ヌクレアーゼはポリメラーゼの開裂活性は望ましいが、合成活性は望ましくない場合(本発明の検出アッセイの場合など)には有利である。
【0097】
上述したように、本発明はポリメラーゼに合成欠失を与えるのに必要な変更の特性によって限定することを意図するものではない。本発明は、1)タンパク質分解;2)組換え構築体(突然変異体を含む);および3)物理的および/または化学的修飾および/または阻害、を含む各種方法を含むが、これに限定されない。
【0098】
1.タンパク質分解
減少した合成活性をもつ熱安定性DNAポリメラーゼは未修飾酵素をタンパク質分解酵素で物理的に開裂して、合成活性を欠失するが5’ヌクレアーゼ活性は保持する酵素フラグメントを生成する。タンパク質分解消化に続いて、得られるフラグメントを標準のクロマトグラフ法で分離し、DNA合成能と5’ヌクレアーゼとしての作用をアッセイする。合成活性と5’ヌクレアーゼ活性を測定するアッセイを以下に記載する。
【0099】
2.組換え構築体
以下の実施例は熱安定性DNAポリメラーゼ由来の5’ヌクレアーゼをコードする構築体の好ましい作製法を記載する。A型DNAポリメラーゼはDNA配列が似ているので、サーマス・アクアティカスおよびフラヴァスポリメラーゼに用いたクローニング法はその他の熱安定性A型ポリメラーゼにも応用できる。一般に、熱安定性DNAポリメラーゼは熱安定性A型DNAポリメラーゼを含む細菌から分子生物学的方法を用いてゲノムDNAを単離することによってクローン化される。このゲノムDNAをPCRによってポリメラーゼ遺伝子を増幅できるプライマーにさらす。
【0100】
増幅されたポリメラーゼ配列を次に標準の欠失法に付して遺伝子のポリメラーゼ部分を欠失させる。適当な欠失法を以下の実施例に記載する。
【0101】
以下の実施例は、5’ヌクレアーゼ活性を排除することなくDNAPTaqポリメラーゼドメインのどの部分を除去すればよいかを決定するための方策を記載する。タンパク質からのアミノ酸の欠失は、コードする遺伝物質を欠失するか、あるいは突然変異またはフレームシフトによって転写ストップコドンを導入することによって実施できる。さらに、タンパク分子の分解処理はタンパク質セグメントを除去するために実施できる。
【0102】
以下の実施例において、Taq遺伝子の特異的変更は、ヌクレオチド1601から2502の間の欠失(コーディング領域の末端)、2043の位置への4ヌクレオチドの挿入、およびヌクレオチド1614から1848の間とヌクレオチド875と1778の間(配列番号1)の欠失であった。これらの修飾配列を以下の実施例ならびに配列番号9−12に記載する。
【0103】
単一の塩基対の変更は酵素の構造と機能には特に害がないことを当業者は理解する。同様に、これらの酵素のエキソヌクレアーゼまたはポリメラーゼ機能を実質的に変更することなく小さな付加や欠失を行いうる。
【0104】
その他の欠失も本発明の5’ヌクレアーゼを作製するのに適している。欠失によって、合成活性が本発明の検出アッセイにおける5’ヌクレアーゼの使用を妨害しないレベルまで5’ヌクレアーゼのポリメラーゼ活性を減少させることが好ましい。最も好ましくは、合成活性がない。修飾ポリメラーゼを用いて、後述するアッセイで合成活性と5’ヌクレアーゼ活性の存在を試験する。これらのアッセイを十分検討することによって、構造未知の酵素の候補をスクリーニングすることができる。言い換えると、構築体”X”が、構造的によりもむしろ機能的に定義する本発明の5’ヌクレアーゼ属のメンバーであるか否かを決定するために、後述するプロトコルに従ってこれを評価することができる。
【0105】
以下の実施例では、増幅したサーマス・アクアティカスのゲノムDNAのPCR産物は天然のゲノムDNAと同じヌクレオチド配列をもたず、また元のクローンと同じ合成能をもっていなかった。ポリメラーゼ遺伝子のPCR増幅中にDNAPTaqの背信(infidelity)によって生じる塩基対の変化によるのもポリメラーゼ遺伝子の合成能を不活性化できる方法の1つである。以下の実施例ならびに図4Aおよび図5Aは、合成能にとって重要でありそうな天然サーマス・アクアティカスおよびフラヴァスDNAポリメラーゼ中の領域を示す。この他にもポリメラーゼを不活性化しそうな別の塩基対の変化や置換がある。
【0106】
しかしながら、このような突然変異増幅産物でDNAポリメラーゼから5’ヌクレアーゼを作製する方法を出発する必要はない。これは合成欠失DNAPTaq突然変異体を作製するために以下の実施例で行った方法であるが、野生型DNAポリメラーゼ配列を欠失、挿入および付加を導入するための出発物質として用いて5’ヌクレアーゼを作製できることが当業者には理解されよう。例えば、合成欠失DNAPTfl突然変異体を作製するには、配列番号13−14に挙げるプライマーを用いてサーマス・フラヴァスAT−62株からの野生型DNAポリメラーゼ遺伝子を増幅する。増幅されたポリメラーゼ遺伝子を次に制限酵素による消化に付して合成能をコードするドメインの大部分を除去する。
【0107】
本発明は、好適な宿主内で発現できる本発明の核酸構築体を含む。遺伝子構造に種々のプロモーターや3’配列を結合して効率良い発現を達成する方法が当業者には公知である。以下の実施例は2つの好適なベクターおよび6つの好適なベクター構築体を開示する。もちろん、その他のプロモーター/ベクターの組み合わせも好適である。本発明の核酸構築体の発現に宿主生物を用いることは必要ではない。例えば、核酸構築体によってコードされるタンパク質の発現は無細胞インビトロ転写/翻訳系を用いることによって実施できる。このような無細胞系の例としては市販のTnTTM結合網状赤血球溶解系(Coupled Reticulocyte Lysate System:Promega Corporation,Madison,WI)がある。
【0108】
適当な核酸構築体が得られると、5’ヌクレアーゼをこの構築体から得ることができる。以下の実施例および標準の生物学的知識によって種々の適当な方法で構築体を操作することができる。
【0109】
5’ヌクレアーゼを発現させた後、後述するようにしてポリメラーゼの合成活性とヌクレアーゼ活性とを試験する。
【0110】
3.物理的および/または化学的修飾および/または阻害
熱安定性DNAポリメラーゼの合成能を化学的および/または物理的手段で減少することができる。ある態様では、ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって触媒される開裂反応を、ポリメラーゼの合成活性を阻害することが好ましい条件下に実施する。有意な合成活性を必要としない開裂反応を妨害しないような活性レベルまで合成活性レベルを減少させることのみが必要である。
【0111】
以下の実施例に示すように、5mM以上のMg++濃度は天然DNAPTaqの重合活性を阻害する。合成活性が阻害される条件下で機能する5’ヌクレアーゼの能力は、後述するように、一定範囲のMg++濃度(5〜10mM)の存在下に、合成活性と5’ヌクレアーゼ活性のアッセイを行うことによって試験する。一定濃度のMg++の効果は、各アッセイの標準反応と比較した試験反応の合成量および開裂量を定量することによって決定する。
【0112】
その他のイオン、ポリアミン、変性剤(尿素、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセロールや非イオン性界面活性剤(Triton X−100やTween−20))、核酸結合剤(アクチノマイシンD、臭化エチジウムやプソラレン)の阻害効果は、合成および5’ヌクレアーゼアッセイ用の標準反応緩衝液にこれらを添加することによって試験する。熱安定性ポリメラーゼの合成活性に好ましい阻害効果をもつこれらの化合物を用いて、次に合成活性は減少または排除されているが、5’ヌクレアーゼ活性(開裂)は保持される反応条件を作り出す。
【0113】
ポリメラーゼの合成活性を好ましく阻害するには物理的手段を用いる。例えば、熱安定性ポリメラーゼの合成活性は、ポリメラーゼを高温(典型的には96〜100℃)に長時間(20分またはそれ以上)さらすことによって破壊される。各酵素によって特異的耐熱性が少々異なるが、これらは容易に決定できる。ポリメラーゼを種々の時間、熱で処理して、合成活性と5’ヌクレアーゼ活性に及ぼす熱処理の効果を決定する。
【0114】
III.5’ヌクレアーゼの治療上の有用性
本発明の5’ヌクレアーゼは上述した診断用途のみでなく、感染細胞内の特定mRNAの開裂と不活性化のための治療上の用途をもつ。病原体によって産生されるあるmRNAと相補的オリゴヌクレオチドを合成欠失ポリメラーゼとともに感染細胞中に導入することにより、ウイルスや細菌などの病原体のmRNAは、合成欠失DNAポリメラーゼによる開裂のためのターゲットとされる。適当なオリゴヌクレオチドが合成できるようにヌクレオチド情報が入手できる限り、どのような病原体もこの方法によってターゲットとされうる。合成オリゴヌクレオチドは相補的mRNAとアニールし、それによって修飾酵素によって認識される開裂構造を形成する。熱安定性DNAポリメラーゼRNA−DNAハイブリッドを開裂する5’ヌクレアーゼ活性の能力を実施例1Dに示す。
【0115】
リポソームは便利な送達システムである。合成オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼと共役または結合させてこれらの分子を同時送達できる。別の送達システムも用いることができる。
【0116】
アンチセンス遺伝子制御およびリボザイムを用いる病原体mRNAの不活性化が報告されている(Rossi,米国特許第5,144,019号:本明細書に参照として包含する)。これらの方法にはいずれも限界がある。
【0117】
アンチセンスRNAを用いて遺伝子発現を阻害するには化学量論的量、すなわち病原体RNAに比べて大過剰モルのアンチセンスRNAが有効であるためには必要である。他方、リボザイム治療は触媒的であり、したがってアンチセンス法で見られる治療化合物の大過剰モルの必要性の問題はない。しかしながら、あるRNAのリボザイム開裂には、触媒的に活性な開裂構造を形成するための高度に保存された配列の存在することが必要である。このためにはターゲット病原体mRNAが保存配列(GAAAC(X)nGU)を含むことが必要であり、したがってこの方法で開裂できる病原体mRNAの数が限定される。これとは対照的に、DNAオリゴヌクレオチドと5’ヌクレアーゼの使用によるRNAの開裂は構造のみに依存する;したがって実際にあらゆる病原体RNA配列が適当な開裂構造を設計するために使用できる。
【0118】
IV.二重捕捉アッセイによる抗原または核酸ターゲットの検出
熱安定性DNAポリメラーゼからの5’ヌクレアーゼの生成能が抗原または核酸ターゲットの新規検出法のための基礎となる。この二重捕捉アッセイでは、合成活性とヌクレアーゼ活性をコードするポリメラーゼドメインを、2つの別々で異なる抗体またはオリゴヌクレオチドに共有結合する。合成ドメインとヌクレアーゼドメインの両方が同じ反応に存在し、かつdATP、dTTPおよび少量のポリd(A−T)が提供されると、大量のポリd(A−T)が生産される。新規に生産されたポリd(A−T)を5’ヌクレアーゼが開裂してプライマーを生成し、これが次に合成ドメインによってより多くのポリd(A−T)を生産するための触媒として用いられる結果、大量のポリd(A−T)が生産される。ポリd(A−T)は自己相補的であり、高温で変更した構造を容易に形成するので、5’ヌクレアーゼはポリd(A−T)を開裂することができる。これらの構造は5’ヌクレアーゼによって認識されて開裂され、合成反応のためのより多くのプライマーを生成する。
【0119】
以下に抗原を検出するための二重捕捉アッセイの一例を示す:ある抗原検出用の分析すべき試料を準備する。この試料は細胞混合物を含んでいてよく、例えばウイルスで感染された細胞はその表面にウイルスでコードされる抗原を提示する。もしも検出すべき抗原が溶液中に存在するときは、まずこれをミクロタイターディッシュの壁やビーズなどの固体支持体に慣用手段を用いて結合する。次に試料を、1)抗原上の第1抗原または第1エピトープのいずれかを認識する抗体と共役させた熱安定性DNAポリメラーゼの合成ドメイン、および2)合成ドメインと共役させた抗体によって認識されるのと同じ抗原上の第2の異なる抗原または第2エピトープのいずれかを認識する第2抗体と共役させた熱安定性DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼドメイン、と混合する。抗体をその同起源の抗原と相互作用させるための適当な時間(使用する抗体により条件は異なる;適当な条件は当業者に公知である)の後、試料を洗浄して未結合抗体−酵素ドメイン複合体を除去する。次にdATP、dTTPおよび少量のポリd(A−T)を洗浄試料に加え、試料を高温(一般に60〜80℃、より好ましくは70〜75℃)でインキュベートして熱安定性合成および5’ヌクレアーゼドメインを機能させる。もしも試料が、ポリメラーゼの別々に共役させたドメインの両方によって認識される抗原を含んでいる場合には、ポリd(A−T)生産の対数増加が起こる。もしもポリメラーゼの合成ドメインと共役させた抗体のみが試料中に存在し、5’ヌクレアーゼドメインが洗浄試料中に存在しない場合には、ポリd(A−T)の算術増加のみが得られる。反応条件は、ポリd(A−T)における算術増加が検出域値以下になるように制御できる。反応進行時間の長さを制御することによるか、あるいは非常に少量のポリd(A−T)を加えて鋳型として作用させ、新規ポリd(A−T)プライマーを生成するためのヌクレアーゼ活性の不在下では非常に少量のポリd(A−T)のみが合成されるようにすることにより上記制御は達成できる。
【0120】
酵素の両方のドメインを1つの抗体に共役させる必要はない。合成ドメインを1つの抗体に共役させ、5’ヌクレアーゼドメインは溶液中に提供するか、あるいはその逆も可能である。このような場合、共役した抗体−酵素ドメインを試料に加えてインキュベートし次に洗浄する。溶液中のdATP、dTTP、ポリd(A−T)と残りの酵素ドメインを次に加える。
【0121】
さらに、ターゲット核酸配列が検出できるように2つの酵素ドメインをオリゴヌクレオチドに共役させてもよい。2つの異なる酵素ドメインに共役させたオリゴヌクレオチドは同じターゲット核酸鎖上の異なる領域を認識するかも知れないし、あるいは2つの関連しないターゲット核酸を認識するかも知れない。
【0122】
ポリd(A−T)の生産は以下のものを含む多くの方法で検出できる:1)ポリd(A−T)の合成に供給したdATPまたはdTTPのいずれかに放射性標識し、次に反応生成物のサイズ分画とオートラジオグラフィーを用いる;2)ポリd(A−T)の合成に供給したdATPに蛍光標識し、dTTPにビオチン化プローブを用い、次に反応生成物をアビジンと共役させた磁気ビーズなどのアビジンビーズを通過させ;蛍光化dATPがビオチン化dTTPとの共有結合中に導入されるときのみ蛍光プローブがアビジンビーズと結合するので、アビジン含有ビーズ上の蛍光プローブの存在はポリd(A−T)が形成されたことを示唆する;および3)蛍光分極の変化によるサイズ増加の示唆。ポリd(A−T)の存在を検出するためのその他の手段には、二本鎖DNA形成の増加をモニターするためのインターカレート性蛍光指示薬の使用を含む。
【0123】
上述した抗原または核酸ターゲット検出のための二重捕捉アッセイは以下の有利な点を含む:
1)試料の熱サイクリングが全く必要でない。ポリメラーゼドメインおよびdATPおよびdTTPは固定温度(一般に約70℃)でインキュベートする。インキュベートの約30分後に添加dNTPの75%までがポリd(A−T)に導入される。熱サイクリングがないことによりこのアッセイが臨床試験室に適している;熱サイクリング装置を購入する必要がなく、非常に正確な温度コントロールの必要がない。
【0124】
2)反応条件が簡単である。結合酵素ドメインのインキュベーションは0.5mM MgCl2(より高濃度でもよい)、2−10mM Tris−Cl、pH8.5、約50μMdATPおよびdTTPを含む緩衝液中で行う。反応容量は10−20μlであり、反応生成物は10−20分後に検出できる。
【0125】
3)合成活性とヌクレアーゼ活性の両方がない場合には反応が検出されない。したがって、正の結果は両方のプローブ(抗体またはオリゴヌクレオチド)がそのターゲットを認識したことを示唆し、これによって2つの異なるプローブがターゲットに結合することによる認識の特異性が増大する。
【0126】
DNAPの2つの酵素活性を分離することができるため、ポリd(A−T)産生の対数増加が得られる。もしもDNAPEclのクレノウフラグメントのような5’ヌクレアーゼ活性をもたないDNAPを用いる場合には、ポリd(A−T)産生のリニアまたは算術増加のみが得られる(Setlow et al.,J.Biol.Chem.247:224,1972)。5’ヌクレアーゼ活性はもつが、合成活性はもたない酵素を提供することができることが本発明の開示により可能となった。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は本発明の好ましい態様と局面を説明するためのものであり、その範囲を限定するものと解してはならない。
【0128】
以下の記載において、以下の略号を使用する:℃(セ氏温度);g(重力場);vol(容量);w/v(重量/容量);v/v(容量/容量);BSA(ウシ血清アルブミン);CTAB(臭化セチルトルメチルアンモニウム);HPLC(高圧液体クロマトグラフィー);DNA(デオキシリボ核酸);p(プラスミド);μl(マイクロリットル);ml(ミリリットル);μg(マイクログラム);pmole(ピコモル);mg(ミリグラム);M(モル);mM(ミリモル);μM(マイクロモル);nm(ナノメートル);kdal(キロダルトン);OD(光学密度);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);FITC(蛍光イソチオシアネート);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);NaPO4(リン酸ナトリウム);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン);PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオライド);TBE(トリス−ボレート−EDTA、すなわち、HClでなく硼酸で滴定したトリス緩衝液でEDTAを含む);PBS(リン酸緩衝生理食塩水);PPBS(1mM PMSF含有リン酸緩衝生理食塩水);PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);Tween(ポリオキシエチレンソルビタン);Dynal(Dynal A.S.,オスロー、ノルウェー);Epicentre(Epicentre Technologies,マディソン、WI);National Biosciences(プリモス、MN);New England Biolabs(ベヴァリー、MA);Novegen(Novegen,Inc.マディソン、WI);Perkin Elmer(ノーウォーク、CT);Promega Corp.(マディソン、WI);Stratagene(Stratagene Cloning Systems,ラホラ、CA);UBA(U.S.Biochemical,クリーブランド、OH)。
【0129】
実施例1
天然熱安定性DNAポリメラーゼの性状
A.DNAPTaqの5’ヌクレアーゼ活性
ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)(Saiki et al.,Science 239:487,1988;Mullis and Faloona,Methods in Enzymology 155:335,1987)の間、DNAPTaqは多くの、しかし全てではないDNA配列を増幅することができる。DNAPTaqを用いて増幅できない配列を図6に示す(ヘアピン構造は配列番号15、プライマーは配列番号16−17)。このDNA配列は、PCRで用いるプライマーに対応する2つの一本鎖アームを用いてそれ自体の上に折り畳まれてヘアピンを形成することができるという顕著な特徴をもつ。
【0130】
この増幅不能が酵素の5’ヌクレアーゼ活性によるものかどうかを試験するために、30サイクルのPCR中におけるDNAPTaqおよびDNAPStfのこのDNA配列を増幅する能力を比較した。合成オリゴヌクレオチドはウィスコンシン大学−マジソンのThe Biotechnology Centerから入手した。DNAPTaqおよびDNAPStfはPerkin Elmerから入手した(すなわち、AmplitaqTMDNAポリメラーゼおよびAmplitaqTMDNAポリメラーゼのストフェルフラグメント)。基質DNAはpUC19中に二本鎖型でクローン化した図6に示すヘアピン構造を含む。増幅に用いたプライマーは配列番号16−17に示す。プライマー配列番号17は図6のヘアピン構造の3’アームとアニールしたことを示す。プライマー配列番号16は図6のヘアピンの5’アーム中の太字で示す20ヌクレオチドとして示される。
【0131】
ポリメラーゼチェインリアクションはスーパーコイルプラスミドターゲットDNA1ng、各プライマー5pmole、各dNTP40μM、およびDNAPTaqまたはDNAPStf2.5ユニットを、10mM Tris−HCl、pH8.3の50μl溶液中に含んでいた。DNAPTaq反応は50mM KClと1.5mM MgCl2を含んでいた。温度は95℃で30秒;55℃で1分;および72℃で1分で、これを30サイクル行った。各反応の10%を、45mM Tris−Borate、pH8.3、1.4mM EDTAの緩衝液中での6%ポリアクリルアミド(架橋29:1)でゲル電気泳動により分析した。
【0132】
結果を図7に示す。予想された生成物はDNAPStf(単に「S」で示す)
によって生成したが、DNAPTaq(「T」で示す)によっては生成しなかった。DNAPTaqの5’ヌクレアーゼ活性がこのDNA配列の増幅欠失の理由であると結論した。
【0133】
この構造のDNAの基質領域中にある5’の対合しないヌクレオチドがDNAPTaqによって除去されるかどうかを試験するために、PCR4サイクル中の末端標識5’アームの行方を、同じ2つのポリメラーゼを用いて比較した(図8)。図6に示すようなヘアピンの鋳型をDNAPStfおよび32P−5’−末端標識プライマーを用いて作製した。DNAの5’末端はDNAPTaqによる少数の大きなフラグメントとして放出されたが、DNAPStfによっては放出されなかった。これらのフラグメントの大きさ(移動度に基づく)は、これらがDNAの対合しない5’アームのほとんど全てを含むことを示す。したがって、分岐二本鎖の根元(base)で、またはその近くで開裂が起こる。直接配列決定分析と、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによるフラグメントの伸長能力によって確認されたように、これらの放出されたフラグメントは3’OH基で終わる。
【0134】
図9〜11は、DNAPTaqによって触媒される開裂反応を特徴づけるために設計された実験の結果を示す。特記しない限り、開裂反応は、熱変性末端標識ヘアピンDNAP0.01pmole(未標識相補鎖も存在させた)、(3’アームに相補的な)プライマー1pmole、およびDNAPTaq0.5ユニット(0.026pmoleと推定される)を、10mM Tris−Cl、pH8.5、50mM KClおよび1.5mM MgCl2の全量10μl中に含んだ。上記したように、いくつかの反応では異なるKCl濃度をもち、各試験に用いられる正確な時間と温度はそれぞれの図面に示してある。プライマーを含む反応では図6に示すもの(配列番号17)を用いた。いくつかの場合には、ポリメラーゼと選択されたヌクレオチドを与えて結合部位までプライマーを伸長した。
【0135】
MgCl2または酵素のいずれかを添加することにより最終反応温度で反応を開始した。95%ホルムアミド8μlを20mM EDTAと0.05%マーカー染料とともに加えることにより反応をインキュベーション温度で停止した。記載したTmの計算はNational Biosciences,Inc.のOligoTMプライマー分析ソフトウェアを用いて行った。これには15または65mMの全塩(すべての反応において1.5mMMgCl2はこの計算では15mM塩の容量を用いた)において、DNA濃度を0.25μMとして決定した。
【0136】
図9は、開裂部位での種々の実験および条件の結果を含むオートラジオグラムである。図9Aは開裂を可能にする反応成分を決定するものである。5’−末端−標識ヘアピンDNAのインキュベーションを表示の成分とともに55℃で30分行った。生成物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析し、生成物の長さをヌクレオチドで示した。図9Bはプライマーを添加しない場合の開裂部位に及ぼす温度の効果を示す。反応は表示の温度でKClの不在下に10分間インキュベートした。生成物の長さをヌクレオチドで示す。
【0137】
驚くべきことに、DNAPTaqによる開裂にはプライマーもdNTPも必要としない(図9A)。したがって、5’ヌクレアーゼ活性は重合化と連結していない。ヌクレアーゼ活性にはマグネシウムイオンを必要とするが、マグネシウムイオンは他のもので代替しうる。ただし、特異性と活性に変化はあるかも知れないが。亜鉛もカルシウムイオンも開裂反応を支持しない。反応は25℃から85℃の広範な温度領域で起きるが、高温で開裂速度は増加する。
【0138】
図9についてさらに言及すると、添加dNTPの不在下ではプライマーは伸長しない。しかしながら、プライマーはヘアピンの開裂部位と開裂速度の両方に影響を及ぼす。開裂部位の変化(図9A)は明らかにDNA基質のアーム間に形成される短い二本鎖の破壊の結果である。プライマーの不在下では、図6の下線で示す配列同志は伸長二本鎖を形成する。伸長二本鎖の末端における開裂は、図9Aのプライマー不添加レーンに見られる11ヌクレオチドフラグメントの放出をもたらす。過剰のプライマーの添加(図9A、レーン3および4)または高温でのインキュベーション(図9B)は、二本鎖の短い伸長を破壊し、より長い5’アームをもたらし、それ故より長い開裂生成物をもたらす。
【0139】
プライマーの3’末端の位置は開裂の正確な部位に影響を及ぼしうる。電気泳動分析により、プライマーの不在下(図9B)では、開裂は第1塩基対と第2塩基対の間にある基質二本鎖(温度により伸長または短い形のいずれか)の末端で起こることが判明した。プライマーが二本鎖の根元まで伸長している場合には、開裂は1ヌクレオチド二本鎖側でも起こる。しかしながら、プライマーの3’末端と基質二本鎖との間に4または6ヌクレオチドのギャップが存在する場合には、開裂部位は5’方向に4から6ヌクレオチドシフトする。
【0140】
図10は、プライマーオリゴヌクレオチドの存在下(図10A)または不在下(図10B)における開裂の速度論を示す。反応は50mM KCl(図10A)または20mM KCl(図10B)のいずれかを用いて55℃で行った。反応生成物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析し、生成物の長さをヌクレオチドで示す。マーカーである「M」は5’末端−標識19−ntオリゴヌクレオチドである。これらの塩濃度では、図10Aおよび図10Bはプライマーの存在下ではプライマーの不在下の約20倍反応が早いことを示唆している。この効率に及ぼす効果が基質上の酵素の正しい整列と安定化に寄与しているのかも知れない。
【0141】
開裂速度に対するプライマーの相対的影響は両反応を50mM KClで実施するときにより大きくなる。プライマーの存在下では、開裂速度はKCl濃度とともに約50mMまで増加する。しかしながら、プライマー存在下でのこの反応の阻害は100mMで明らかであり、150mMKClで完全である。これとは対照的に、プライマーの不在下では速度は20mMまでKCl濃度によって増強されるが、30mM以上の濃度では減少する。50mMKClでは、反応はほぼ完全に阻害される。プライマー不在下におけるKClによる開裂阻害は温度によって影響され、低温でより顕著である。
【0142】
切断されるべきアームの5’末端の認識が基質認識の重要な特徴である。環状のM13DNAのように遊離の5’末端をもたない基質は試験したいかなる条件でも開裂されない。明らかな5’アームをもつ基質であっても、DNAPTaqによる開裂速度はアームの長さによって影響を受ける。プライマーと50mM KClの存在下では、27ヌクレオチドの長さの5’伸長は55℃、2分で本質的に完全であった。対照的に、84および188ヌクレオチドのアームをもつ分子の開裂は20分後で約90%および40%のみが完全であった。高温でのインキュベーションが長い伸長の阻害効果を減少し、これは5’アーム中の二次構造または酵素の熱不安定な構造が反応を阻害することを示唆する。基質過剰の条件下で行った混合実験では、長いアームをもつ分子は非生産的(non−productive)複合体中では利用可能な酵素と好ましく結びつかないことを示す。これらの結果は、5’アームが一端から他端へと移動することによって、5’ヌクレアーゼドメインが分岐二本鎖の末端で開裂部位に近づくことができることを示唆する。より長い5’アームは(特にKCl濃度が高いときには)より偶発的な二次構造をとることが予想され、このため上記移動が邪魔されるのであろう。
【0143】
基質鎖ターゲット分子またはパイロット核酸のいずれかの長い3’アームによっては、少なくとも2キロベースまでは、開裂が阻害されないように思われる。別の極端な場合、1ヌクレオチド程度の短さのパイロット核酸の3’アームは効率はよくないがプライマー独立の反応において開裂を支持する。完全に対合したオリゴヌクレオチドはプライマー伸長の間にDNA鋳型の開裂を引き出さない。
【0144】
相補鎖がただ1つの対合しない3’ヌクレオチドを含む場合であってもDNAPTaqが分子を開裂できることは、対立遺伝子特異的PCRの最適化に有用である。対合しない3’末端をもつPCRプライマーは、ヌクレオチド三リン酸の不在下でDNAPTaqを用いて鋳型−プライマー複合体をプレインキュベーションする間に望ましくない鋳型の選択的開裂を指示するためのパイロットオリゴヌクレオチドとして作用した。
【0145】
B.その他のDNAPの5’ヌクレアーゼ活性
その他のDNAP中のその他の5’ヌクレアーゼが本発明に適しているかどうかを決定するために、1群の酵素(そのうちのいくつかは明瞭な5’ヌクレアーゼ活性をもたないことが文献で記載されている)を試験した。各酵素の合成に最適と報告されている条件下で図6に示すヘアピン基質を用いて、これらのその他の酵素の構造特異的に核酸を開裂する能力を試験した。
【0146】
DNAPEclおよびDNAPクレノウはPromega Corporationから;ピロコッカス・フリアス(Pyrococcus furious)のDNAP(「Pfu」、Bargseid et al.,Strategies 4:34,1991)はStratageneから;サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)のDNAP(「Tli」、VentTM(exo−)、Perler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5577,1992)はNew England Biolabsから;サーマス・フラヴァスのDNAP(「Tfl」、Kaledin et al.,Biokhimiya 46:1576,1981)はEpicentre Technologiesから;サーマス・サイモフィリスのDNAP(「Tth」、Carballeira et al.,Biotechniques 9:276,1990;Myers et al.,Biochem.30:7661,1991)はU.S.Biochemicalsから入手した。
【0147】
各DNAポリメラーゼ0.5ユニットを、プライマー依存性反応用に製造者から供給された緩衝液、または10mM Tris−Cl、pH8.5、1.5mM MgCl2、および20mM KClを用いる反応20μl中でアッセイした。反応混合物を酵素添加前に72℃に保持した。
【0148】
図11は試験結果を報告するオートラジオグラムである。図11Aは幾つかの好熱細菌のDNAPのエンドヌクレアーゼの反応を示す。反応は、プライマー存在下に55℃で10分、あるいはプライマー不在下に72℃で30分インキュベートし、生成物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した。生成物の長さをヌクレオチドで示す。図11BはDNAPEclの5’ヌクレアーゼによるエンドヌクレアーゼ開裂を示す。DNAPEclおよびDNAPクレノウ反応は37℃で5分インキュベートした。DNAPEclレーンの25および11ヌクレオチドの開裂生成物の薄いバンドに注意されたい(それぞれプライマーの存在下および不在下に実施)。図7Bもプライマーの存在下(+)および不在下(−)におけるDNAPTaqの反応を示す。これらの反応はそれぞれ50mMおよび20mM KClで行い、55℃で10分インキュベートした。
【0149】
図11Aに関しては、真性細菌サーマス・サーモフィラスおよびサーマス・フラヴァスからのDNAPは、プライマーの存在下でも不在下でも、DNAPTaqと同じ場所で基質を開裂する。これとは対照的に、古細菌ピコッカス・フリオサスおよびサーモコッカス・リトラリスからのDNAPは基質をエンドヌクレアーゼ的に開裂できない。ピコッカス・フリオサスおよびサーモコッカス・リトラリスからのDNAPは真性細菌酵素とほとんど配列相同性をもっていない(Ito et al.,Nucl.Acids Res.19:4045,1991;Mathur et al.,Nucl.Acids Res.19:6952,1991;Peter et al.も参照のこと)。図11Bに関しては、DNAPEclは基質も開裂するが、得られる開裂生成物の検出は3’エンドヌクレアーゼが阻害されない限り難しい。DNAPEclおよびDNAPTaqの5’ヌクレアーゼドメインのアミノ酸配列は約38%相同である(Gelfand前出)。
【0150】
DNAPTaqの5’ヌクレアーゼドメインもバクテリオファージT7の遺伝子6によってコードされる5’エキソヌクレアーゼと約19%相同である(Dunn et al.,J.Mol.Biol.166:477,1983)。DNAP重合化ドメインと共有結合しないこのヌクレアーゼは、添加プライマーの不在下に上述した5’ヌクレアーゼによって切断される部位と類似または同一の部位で、DNAをエンドヌクレアーゼ的に開裂することもできる。
【0151】
C.トランス開裂
どのような特定配列でも効率よく開裂できる5’ヌクレアーゼの能力を以下の実験で示す。「パイロットオリゴヌクレオチド」と呼ぶ部分的に相補的なオリゴヌクレオチドを所望の開裂点にある配列とハイブリダイズさせた。パイロットオリゴヌクレオチドの非相補的部分は鋳型の3’アームと類似の構造(図6参照)を提供し、一方基質鎖の5’領域が5’アームとなった。パイロットの3’領域がそれ自体の上に折り畳まれて安定したテトラループをもつ短いヘアピンを作るように3’領域を設計することによってプライマーを提供した(Antao et al.,Nucl.Acds Res.19:5901,1991)。2つのパイロットオリゴヌクレオチドを図12Aに示す。オリゴヌクレオチド19−12(配列番号18)、30−12(配列番号19)および30−0(配列番号40)はそれぞれ31、42および30ヌクレオチドである。しかしながら、オリゴヌクレオチド19−12(配列番号18)および34−19(配列番号19)は、基質鎖中の異なる配列と相補的であるのはそれぞれ19および30ヌクレオチドに過ぎない。パイロットオリゴヌクレオチドは約50℃(19−12)および約75℃(30−12)で相補体を溶融するように計算される。いずれのパイロットも3’末端に12ヌクレオチドをもち、これが結合した塩基対プライマーとの3’アームとして作用する。
【0152】
パイロットオリゴヌクレオチドによって開裂が指示されることを示すために、2つのパイロットオリゴヌクレオチドとなりうるものの存在下に、一本鎖ターゲットDNAをDNAPTaqとともにインキュベートした。ターゲットとパイロット核酸が共有結合していないトランス開裂反応は、一端標識基質DNA0.01pmole、DNAPTaqlユニットおよびパイロットオリゴヌクレオチド5pmoleを、同じ緩衝液20μl中に含む。これらの成分を95℃で1分インキュベートする間に一緒にし、PCR生成二本鎖基質DNAを変性し、次に反応温度を最終インキュベーション温度に下げる。オリゴヌクレオチド30−12および19−12は、ターゲット鎖の5’末端から85および27ヌクレオチドである基質DNAの領域とハイブリダイズすることができる。
【0153】
図21は、完全206merの配列(配列番号32)を示す。206merはPCRによって生成した。New England Biolabsから入手したM13/pUCの24mer逆配列(−48)プライマーおよびM13/pUC配列(−47)プライマー(それぞれカタログ番号1233および1224)を各50pmoleで、ターゲット配列を含む鋳型(10ng)としてのpGEM3z(f+)プラスミドベクター(Promega Corp.)とともに用いた。PCRの条件は以下の通りである:各dNTP50μMおよびTaqDNAポリメラーゼ2.5ユニットを、0.05%Tween−20および0.05%NP−40を含む20mM Tris−Cl、pH8.3、1.5mM MgCl2、50mM KClの100μl中で用いた。反応は95℃、45秒;63℃、45秒;次いで72℃、75秒を35サイクル行った。サイクルの後、72℃で5分インキュベートすることによって反応を停止した。得られるフラグメントを45mM Tris−Borate、pH8.3、1.4mM EDTAの緩衝液中の6%ポリアクリルアミドゲル(29:1架橋)の電気泳動によって精製し、臭化エチジウム染色またはオートラジオグラフィーによって可視化し、ゲルから切り出して、受動拡散で溶出し、そしてエタノール沈殿で濃縮した。
【0154】
パイロットオリゴヌクレオチド19−12の存在下、50℃で基質DNAの開裂が起きた(図12B、レーン1および7)が、75℃では起きなかった(レーン4および10)。オリゴヌクレオチド30−12の存在下では、いずれの温度でも開裂が観察された。基質中の50℃の偶発的構造はKClの不在下でもプライマー独立性の開裂を可能にした(図12B、レーン9)が、添加オリゴヌクレオチドの不在下(レーン3、6および12)または約80℃では開裂は起きなかった。基質DNAと相補的でない非特異的オリゴヌクレオチドは50mM KClの存在下でも不在下でも50℃で開裂を指示しなかった(レーン13および14)。したがって、開裂反応の特異性は基質への相補性の程度およびインキュベーション温度によって制御できる。
【0155】
D.RNAの開裂
前述した交差開裂(transcleavage)試験で使用された配列の短縮RNA版を、反応時に基質となり得る能力について試験した。RNAは、パイロットオリゴヌクレオチドの存在に依存している反応において予想された場所で開裂された。[α-32P]UTP存在下でT7 RNAポリメラーゼにより生成されたRNA基質は、図12Bで使用されたDNA基質の切断された型と一致する。反応条件は、50mM KCl存在下、55℃で40分間インキュベートするという上述のDNA基質に使用した条件と同様のものであった。使用したパイロットオリゴヌクレオチドは30-0(配列番号20)と指称し、図13Aに示す。
【0156】
開裂反応の結果を図13Bに示す。反応は図13Bに示したようにDNAPTaqまたはパイロットオリゴヌクレオチドの存在下もしくは非存在下で行った。
【0157】
驚くべきことに、RNA開裂の場合は、3'アームはパイロットオリゴヌクレオチドに不要である。この開裂が、30塩基対長RNA-DNA二重鎖(duplex)に沿ってRNAを数箇所切断すると考えられる前述したRNアーゼHによるものとは考えにくい。DNAPTaqの5'ヌクレアーゼは、ヘテロ二重鎖領域の5'末端付近の単一部位でRNAを開裂させる構造特異的RNアーゼHである。
【0158】
3'アームを欠くオリゴヌクレオチドは、天然(native)DNAPを用いたDNAターゲットの開裂を効率的に行うことができないため、そのようなオリゴヌクレオチドがRNAターゲットの効率的な開裂を行うパイロットとして作用し得るということは驚くべきことである。しかしながら、本発明の5'ヌクレアーゼのいくつか(例えば、図4のクローンE、F及びG)は3'アームが欠落してもDNAを開裂できる。いいかえれば、非延長可能開裂構造は、熱安定性DNAポリメラーゼから誘導されたいくつかの本発明の5'ヌクレアーゼによる特異的開裂に必要とされない。
【0159】
我々は、完全に相補的なプライマーの存在下でDNAPTaqによるRNA鋳型の開裂が、DNAPTaqが逆転写酵素の反応に似た反応においてRNA鋳型上でDNAオリゴヌクレオチドを延長することができないことを説明する一助となり得るかどうかについて検討を行った。また別の耐熱DNAP、DNAPTthはRNAを鋳型として使用することが可能であるが、Mn++の存在下においてのみであり、そこで我々はこの酵素がこの陽イオン存在下ではRNAを開裂しないであろうと予測した。従って、我々はRNA分子をDNAPTaqもしくはDNAPTthの存在下、Mg++もしくはMn++を含むバッファー中で、適当なパイロットオリゴヌクレオチドと共にインキュベートした。予想されたように両酵素はMg++の存在下でRNAを開裂した。しかしながら、Mn++存在下ではDNAPTaqはRNAを分解したが、DNAPTthはしなかった。我々は多くのDNAPの5'ヌクレアーゼ活性がそれらがRNAを鋳型として使用できないことの原因になり得るものと結論するものである。
【0160】
実施例2
熱安定性DNAポリメラーゼからの5'ヌクレアーゼの生成
合成活性(本発明の検出アッセイ時のDNA開裂中の好ましくない副反応である活性)については減少しているが、熱安定性ヌクレアーゼ活性をなお維持する熱安定性DNAポリメラーゼを生成した。結果として、極度に特異的に核酸DNAを開裂する熱安定性ポリメラーゼが得られる。
【0161】
Thermus属真正細菌から得たタイプA DNAポリメラーゼは、広範囲のタンパク質配列同一性を共有しており(DNAStar社、WIのDNA分析ソフトウェアにおいてリップマン−ピアソン法を使用すると、重合ドメインの90%)、重合及びヌクレアーゼアッセイの両方において類似した挙動を示す。そこで我々は、Thermus aquaticus(DNAPTaq)とThermus flavus(DNAPTfl)のDNAポリメラーゼの遺伝子をこの種類の代表として使用した。Thermus thermophilus、Thermus sp.、Thermotoga maritima,Thermosipho africanus及びBacillus stearothermophilusのような他の真正細菌生物から得たポリメラーゼ遺伝子も同様に適している。これらの耐熱性生物から得たDNAポリメラーゼは高温でも生存し機能し得、従って温度を核酸鎖の非特異的ハイブリダリゼーションに対する選択として使用する反応においても使用できる。
【0162】
以下に記載する欠失突然変異誘発のために使用した制限部位は便宜上選んだ。Thermus thermophilus遺伝子には同様な便宜を有する別の部位があり、関連する生物からの他のタイプAポリメラーゼ遺伝子により同様な構築物を作るのに使用できる。
【0163】
A. 5'ヌクレアーゼ構築物の生成
1. 改変DNATaq遺伝子
第一段階は、Taq DNAポリメラーゼの改変遺伝子を誘発可能プロモーターの制御下のプラスミド上に置くことであった。改変Taqポリメラーゼ遺伝子は次のようにして単離した。即ち、Taq DNAポリメラーゼ遺伝子を、Thermus aquaticusのYT-1株(Lawyerら.,上出)のゲノムDNAから、配列番号13-14に記載したオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用してポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。得られたDNAのフラグメントは、コード配列の5'末端に制限エンドヌクレアーゼEcoRIの認識配列と、3'末端にBglII認識配列を有している。BglIIによる開裂は、BamHIによって生成された末端に適合する5'の突出部分、即ち「粘着末端」を残す。PCR-増幅DNAをEcoRIとBamHIにより消化した。ポリメラーゼ遺伝子のコード領域を含む2512bpフラグメントをゲル精製し、次いで誘発可能プロモーターを含むプラスミド中に結合した。
【0164】
本発明の一つの態様においては、ハイブリッドtrp-lac(tac)プロモーターを含むpTTQ18ベクターを使用したが(M.J.R.Stark,Gene 5:255(1987))、これは図14に示す。tacプロモーターはE.coli lacリプレッサーの制御下にある。抑制により、菌増殖が所望のレベルに到達するまで遺伝子産物の合成を抑制し、所望のレベルにおいて特異的な誘発剤、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えることにより抑制を解除することができる。このような系により、形質転換体の増殖を遅らせたり阻害する外来タンパク質の発現が可能となる。
【0165】
tacのような細菌プロモーターは、複数コピーのプラスミド上に存在する場合はうまく抑制できない。もし毒性の高いタンパク質がそのようのプロモーターの制御下に置かれると、少量の発現リークスルーが細菌に有害となり得る。本発明のもう一つの態様においては、クローン化遺伝子産物の合成抑制のための別の方法を使用した。バクテリオファージT7由来の、プラスミドベクター系pET-3中に見られる非細菌プロモーターを、クローン化変異体Taqポリメラーゼ遺伝子を発現させるために使用した(図15、Studier and Moffatt,J.Mol.Biol.189:113(1986))。このプロモーターはT7 RNAポリメラーゼによってのみ転写を開始する。BL21(DE3)pLYSのような適した株においては、このRNAポリメラーゼの遺伝子はlacオペレーターの制御下で細菌ゲノム上に保持される。この配置は、コピー数の多い遺伝子(プラスミド上)の発現が、単一コピー中に存在するため容易に抑制されるT7 RNAポリメラーゼの発現に完全に依存するという利点を持っている。
【0166】
pTTQ18ベクター(図14)中に結合するためにTaqポリメラーゼコード領域を含むPCR生成物DNA(mutTaq、クローン4B、配列番号21)をEcoRIとBglIIで消化し、このフラグメントを標準的な「粘着末端」条件(Sambrookら.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(1989))でプラスミドベクターpTTQ18のEcoRI及びBamHI部位に結合した。この構築物の発現により、天然タンパク質の最初の2つの残基(Met-Arg)がベクターからの3つ(Met-Asn-Ser)に置換されているが天然タンパク質の残りは変化していない翻訳融合産物が得られる。この構築物をE.coliのJM109株中に形質転換し、形質転換体を、天然タンパク質を発現する細菌が増殖できない不完全な抑制条件下でプレーティングした。これらのプレーティング条件により、増幅過程でのTaqポリメラーゼの不忠実性の結果生じたもののような前もって存在する突然変異を含む遺伝子を単離することができる。
【0167】
この増幅/選択手順を使用して、突然変異Taqポリメラーゼ遺伝子(mutTaq、クローン4B)を含むクローン(図4Bに記載した)を単離した。突然変異体は最初にその表現型により検出され、それにおいては粗細胞抽出物中の熱安定型5'ヌクレアーゼ活性は正常であったが、重合活性はほとんどなかった(野生型Taqポリメラーゼ活性の約1%以下)。
【0168】
組換え体遺伝子のDNA配列分析では、2個のアミノ酸の置換を生じるポリメラーゼ領域での変化有することが示され、即ち、ヌクレオチド位置1394でのAからGへの変化がアミノ酸位置465でのGluからGlyへの変化を生じ(天然の核酸、アミノ酸配列により番号を付した、配列番号1及び4)、そしてヌクレオチド位置2260でのAからGへのもう一つの変化によりアミノ酸位置754でのGlnからArgへの変化を生じる。GlnからGlyへの変異は保存されない位置におけるものであり、またGluからArgへの変異は事実上全ての公知のタイプAポリメラーゼで保存されているアミノ酸を変化させるので、この後者の変異がこのタンパク質の合成活性を省略する原因である可能性が非常に高い。図4B構築物のヌクレオチド配列は配列番号21に示す。
【0169】
DNAPTaq構築物のその後の誘導体はmutTaq遺伝子から生成され、そのためそれらは全て、これら特定領域が削除されない限り、他の変化に加えてこれらのアミノ酸置換を保有する。これらの変異部位は、図4の図表中でこれらの位置における黒い枠で示す。図4E、F及びGに示す遺伝子を除く全ての構築物はpTTQ18ベクター中で生成した。
【0170】
図4E及びFの遺伝子に使用したクローニングベクターは、上述したように、市販されているpET-3系からのものである。このベクター系は、T7プロモーターのクローニングの下流にBamHI部位のみを持っているが、この系は3つのリーディングフレームのいずれかへのクローニングを可能とする変異体を含んでいる。上述したPCR生成物のクローニングのために、pET-3cとよばれる変異体を使用した(図15)。ベクターをBamHIで消化し、仔ウシ腸ホスファターゼで脱リン酸化し、粘着末端はDNAPEclのKlenowフラグメントとdNTPを用いて充填した。EcoRIとSalIで消化することにより図4Bに示した変異体TaqDNAPの遺伝子(mutTaq、クローン4B)がpTTQ18より放出され、そして「粘着末端」はベクターと同様の方法で充填した。フラグメントは標準平滑末端条件(Sambrookら.,Molecular Cloning,上出)でベクターに結合し、構築物をE.coliのBL21(DE3)pLYS株中に形質転換し、そして単離物をスクリーニングしてプロモーターに対して正しい方向に遺伝子に結合されているもの同定した。この構築物は別の翻訳融合産物を産出し、その産物においてはDNAPTaqの最初の2個のアミノ酸(Met-Arg)がベクターからの13とPCRプライマーからの2個により置換されている(Met-Ala-Ser-Met-Thr-Gly-Gly-Gln-Gln-Met-Gly-Arg-Ile-Asn-Ser)(配列番号29)。
【0171】
我々の目的は、DNA合成能力を欠いているが、5'ヌクレアーゼ活性により核酸を切断する能力を保持する酵素を作りだすことであった。プライマーと鋳型によるDNAの合成の作用は実際には順序よく配列された一連の現象であるので、他に影響を与えずに一つの現象を中断することによりDNA合成をできなくさせることは可能である。これらの段階は、限定されないが、プライマー認識と結合、dNTP結合とヌクレオチド間のホスホジエステル結合の触媒作用を含む。DNAPEcI上の重合領域にあるいくつかのアミノ酸がこれらの機能と関連しているが、正確なメカニズムはまだほとんど明らかにされていない。
【0172】
DNAポリメラーゼの重合能力の破壊する方法の一つは、タンパク質のその領域をコードする遺伝子部分の全てまたは一部を削除するか、さもなければ遺伝子を完全な重合ドメインを作ることができないようにすることである。個々の変異体酵素は細胞内及び細胞外での安定性や溶解性の点で互いに異なる。例えば穏やかなタンパク質分解により重合ドメインから活性形態で放出され得るDNAPEcIの5'ヌクレアーゼドメイン(Setlow and Kornberg,J.Biol.Chem.247:232(1972))と比べてみると、Thermusヌクレアーゼドメインは同様に処理すると溶解性が低くなり、開裂活性が消失することが多い。
【0173】
図4Bに示した変異体遺伝子を出発物質として使用して、いくつかの欠失構築物を生成した。全てのクローニング技術は標準的なものであり(Sambrookら.,上出)、以下に要約する。
【0174】
図4C:mutTaq構築物をPstIにより消化し、これは示したようにポリメラーゼコード領域内で一旦切断し、そしてベクターの複数のクローニング部位にある遺伝子のすぐ下流を切断する。これらの2つの部位の間にあるフラグメントを放出した後、ベクターを再結合し、894-ヌクレオチド欠失を生成し、フレーム内の結合点の40ヌクレオチド下流に停止コドンを導入した。この5'ヌクレアーゼ(クローン4C)のヌクレオチド配列は配列番号9に示す。
【0175】
図4D:mutTaq構築物をNheIで消化し、これは遺伝子を位置2047を一旦切断する。その結果生じた4ヌクレオチドの5'側の突出末端を上述のように充填し、平滑末端を再結合した。その結果生じた4ヌクレオチドの挿入物はリーディングフレームを変化させ、変異の10個のアミノ酸下流で翻訳の終結を引き起こす。この5'ヌクレアーゼ(クローン4D)のヌクレオチド配列は配列番号10に示す。
【0176】
図4E:mutTaq遺伝子の全体を、EcoRIとSaIIを用いてpTTQ18から切断し、上述したようにpET-3c中にクローン化した。このクローンを図4Eで示した位置にある特定部位でBstXI及びXcmIにより消化した。該DNAをDNAPEclのKlenowフラグメントとdNTPにより処理すると、両方の部位の3'側の突出部分が除去されて平滑末端となった。これらの平滑末端は一緒に結合し、1540ヌクレオチドのフレーム外欠失を生じた。フレーム内終結コドンは結合部を18トリプレット過ぎたところにあった。この5'ヌクレアーゼ(クローン4E)のヌクレオチド配列は、配列番号30に示した適切なリーダー配列とともに配列番号11に示す。またこれはCleavase(商標)BXとも指称される。
【0177】
図4F:全mutTaq遺伝子をEcoRIとSaIIを用いてpTTQ18より切断し、上述したようにpET-3c中にクローン化した。このクローンは図で示した位置にある特定の部位においてBstXIとamHIにより消化した。このDNAをDNAPEclのKlenowフラグメントとdNTPにより処理し、BstXI部位の3'側の突出部分を除去して平滑末端とし、一方Bam HI部位の5'側の突出部分は充填して平滑末端とした。これらの末端を一緒に結合し、903ヌクレオチドのフレーム内欠失を生じた。この5'ヌクレアーゼ(クローン4F)のヌクレオチド配列は配列番号12に示す。これはCleavase(商標)BBとも指称される。
【0178】
図4G:このポリメラーゼは図4Eに示したものの変形である。これをプラスミドベクターpET-21(Novagen)中にクローン化した。このベクター中に見られるバクテリオファージT7由来の非細菌プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼによってのみ転写が開始される。Studier and Moffatt、上出を参照。(DES)pLYSのような適当な株中では、このRNAポリメラーゼの遺伝子はlacオペレーターのコントロール下で細菌性ゲノムに保有される。この配置は、コピー数の多い遺伝子(プラスミド上)の発現が、単一コピー内に存在するため容易に抑制されるT7 RNAポリメラーゼの発現に完全に依存しているという利点を持っている。これらの変異体遺伝子の発現が、厳格にコントロールされているこのプロモーターの下にあるものであるため、発現タンパク質の毒性による宿主細胞に対する潜在的な問題はほとんど無視できる。
【0179】
pET-21ベクターも、発現されたタンパク質のカルボキシ末端に付加される6個の連続したヒスチジン残基を伸長した物である「His*タグ」を特徴とする。得られるタンパク質は、次いで市販されているNi++イオンを固定したカラム樹脂(Novagen)を用いた金属キレートクロマトグラフィーにより1段階で精製され得る。2.5mlカラムは再利用でき、供与または変性(グアニジン*HClまたは尿素)条件下で目的タンパク質を20mgまで固定することができる。
【0180】
E.coli(DES)pLYS細胞を、上述した構築物で標準的な形質転換方法により形質転換し、標準増殖培地(例えばLuria-Bertani液体培地)に接種するのに使用した。T7 RNAポリメラーゼの生成は、IPTGの添加により対数増殖期の間誘導し、さらに12〜17時間インキュベートした。誘導の前後に培養物のアリコートを取り出し、タンパク質をSDS-PAGEにより調べた。外来タンパク質が細胞タンパク質の3-5%を占め、主要なタンパク質バンドのいずれとも共に移動しない場合、クーマシーブルー染色により外来タンパクを可視化することができる。主要な宿主タンパク質と共に移動するタンパク質は、分析のこの段階で可視化するためには総タンパク質の10%以上発現されなければならない。
【0181】
いくつかの変異体タンパク質は、細胞により封入体内に隔離される。これらは細菌が高レベルの外来タンパク質を発現するようにされた場合に細胞質内で形成される粒子であり、粗溶解物から精製し、SDS-PAGEにより分析してタンパク質含有物(量)を決定することができる。封入体内にクローン化タンパク質がある場合は、開裂とポリメラーゼ能力をアッセイするために放出されなければならない。それぞれのタンパク質にあった溶解方法があり、様々な方法が知られている。例えば、Builder & Ogez、米国特許第4,511,502号(1985);Olson、米国特許第4,518,526号(1985);Olson & Pai、米国特許第4,511,503号(1985);Jonesら.、米国特許第4,512,922号(1985)を参照されたい。これらは全て引用により本明細書の一部とする。
【0182】
可溶化タンパク質を、前述したNi++カラムで、製造者の使用説明書(Novagen)に従い精製する。洗浄したタンパク質を、イミダゾール競合物質(1M)と高濃度塩(0.5M NaCl)の組み合わせによりカラムから溶出し、バッファーを交換して透析し、変性タンパク質を再度折り畳ませる。典型的な回収量は、出発培養物1mlあたり約20μgの特異的タンパク質である。DNAP変異体は、Cleavase(商標)BNと称し、配列は配列番号31に示す。
【0183】
2.改変DNAPTfl遺伝子
Thermus flavusのDNAポリメラーゼ遺伝子は、American Type Tissue Collectionより得た“Thermus flavas”AT-62株(ATCC33923)より単離した。この菌株は、Akhmetzjanov and Vakhitov、上出、により発表された配列を生成するのに使用されたT.flavus株とは異なった制限地図を有する。発表された配列は、配列番号2として挙げられている。T.flavusのAT-62株由来のDNAポリメラーゼ遺伝子の配列データは発表されていない。
【0184】
T.flavus由来のゲノムDNAは、T.aquaticus DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号13〜14)を増幅するのに使用したものと同じプライマーを使用して増幅した。約2500塩基対PCRフラグメントをEcoRI及びBamHIにより消化した。DNAPEc1のKlenowフラグメントとdNTPにより突出した末端を平滑化した。得られたN-末端のコーディング領域を含む約1800塩基対フラグメントを、上述したようにpET-3cに結合した。この構築物、クローン5Bは図5Bに示す。野生型T.flavus DNAポリメラーゼ遺伝子は図5Aに示す。5BクローンはpET-3cにクローン化したDNAPTaqクローン4E及びFと同じリーダーアミノ酸を有している。翻訳終結がどこで起こるかは正確にはわからないが、ベクターはクローニング部位のすぐ下流に強い転写終結シグナルを有する。
【0185】
B.形質転換細胞の増殖と誘導
細菌細胞は、標準の形質転換技術を用い上記の構築物により形質転換し、標準的な増殖培地(例えば、Luria-Bertani肉汁培地)の2mlに接種するのに使用した。得られる培養物を、使用した特定の菌株について適当なようにイキュベートし、特定の発現系について必要ならば誘導した。図4及び5に示した構築物の全てについて、培養物は0.5 ODの光学密度(波長600mmにおいて)まで増殖させた。
【0186】
クローン化遺伝子の発現を誘導するために、培養物を0.4mM IPTGの最終濃度とし、インキュベーションを12〜17時間継続した。それぞれの培養物の50μlのアリコートを誘導の前後で取り出し、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)用の標準ゲルロードバッファーの20μlと合わせた。外来タンパク質が細胞タンパク質の約3-5%を占め、主要なE.coliタンパク質バンドのいずれとも共に移動しない場合は、それらはその後のクーマシーブルー染色(Sambrook at al.、上出)により可視化される。主要な宿主タンパク質と共に移動するタンパク質は、分析のこの段階で見るためには、総タンパク質の10%以上発現されなければならない。
【0187】
C.熱溶菌と分画化
発現された熱安定性タンパク質、即ち5'ヌクレアーゼを、粗細胞抽出物を加熱し、熱安定性のより低いE.coliタンパク質を変性し、沈殿させることによって単離した。次に沈殿したE.coliタンパク質を他の細胞の断片と共に遠心分離により除去した。1.7mlの培養物を12,000-14,000 rpmで30-60秒マイクロ遠心分離することによりペレット化した。上清の除去後、細胞を400μlのバッファーA(50mMトリス-HCl,pH7.9,50mMデキストロース、1mM EDTA)に再懸濁し、再度遠心分離し、次に4mg/mlリゾチームを含む80μlのバッファーAに再懸濁した。細胞を室温で15分インキュベートし、次に80μlのバッファーB(10mMトリス-HCl,pH7.9,50mM KCl,1mM EDTA,1mM PMSF,0.5% Tween-20,0.5% Nonidet-P40)と合わせた。
【0188】
この混合物を75℃で1時間放置し、宿主タンパク質を変性させ、沈殿させた。この細胞抽出物を4℃において14,000 rpmで15分間遠心分離し、上清を新しい試験管に移した。この上清の0.5-1μlのアリコートを各試験反応に直接使用し、抽出物のタンパク質含有物(量)は、前述のように7μlを電気泳動分析にかけることにより決定した。本来の組換え体Taq DNAポリメラーゼ(Englke,Anal.Biochem 191:396(1990))と図4Bに示した2個所に突然変異があるタンパク質は、両方とも可溶性でこの時点では活性である。
【0189】
熱処理後は封入体内へ細胞により外来タンパク質が隔離されるため、外来タンパク質は検出できない。これらは、細菌が高レベルの外来タンパク質を発現するようにされるときに細胞質内に生成される粒子であり、粗溶解物から精製し、SDS PAGEで分析してそのタンパク質含有物(量)を測定することができる。文献には多数の方法が記載されているが、以下に1つの方法を記載する。
【0190】
D.封入体の単離と溶解化
上述したようにして小培養物を増殖させ誘導した。1.7mlのアリコートを短時間の遠心分離によってペレット化し、細菌細胞を100μlの溶解バッファー(50mM Tris-HCl,pH8.0,1mM EDTA,100mM NaCl)中に再懸濁した。20mM PMSFの2.5μlを最終濃度が0.5mMになるように添加し、リゾチームを1.0mg/mlの濃度まで加えた。細胞を室温で20分間インキュベートし、デオキシコール酸を1mg/ml(100mg/ml溶液の1μl)加え、混合物をさらに37℃で約15分間または粘性が出るまでインキュベートした。DNアーゼIを10μg/ml加え、混合物は室温で約30分間または粘性でなくなるまでインキュベートした。
【0191】
4℃で15分間の14,000 rpmでの遠心分離により封入体をこの混合物から回収し、上清は捨てた。ペレットを10mM EDTA(pH 8.0)と0.5% Triton X-100を含む100μgの溶解バッファー中に再懸濁した。室温で5分間置いた後、封入体を前と同様にペレット化し、上清は後で分析するために残した。封入体は50μgの蒸留水中に再懸濁し、5μgをSDSゲルロードバッファー(封入体を溶解する)と合わせ、上清のアリコートと共に電気泳動法により分析した。
【0192】
クローン化タンパク質が封入体中にある場合は、それを放出させ開裂とポリメラーゼ活性をアッセイすることができるが、溶解方法は特定の活性に適合するものでなければならない。種々のタンパク質に適した種々の溶解方法があり、様々な方法がMolecular Cloning(Sambrookら.,上出)に記載されている。次に示すのは、我々の分離物のいくつかに用いた改良法である。
【0193】
封入体−水懸濁液の20μlを室温で4分間、14,000 rpmでの遠心分離でペレット化し、上清を廃棄した。封入体をさらに洗浄するために、ペレットを2M尿素を含む20μlの溶解バッファー中に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。その後、洗浄済み封入体は8M尿素を含む2μlの溶解バッファー中に再懸濁した。封入体が溶解するにつれて溶液は視覚的に清澄化した。不溶残渣を室温で4分間、14,000 rpmでの遠心分離で除去し、そして抽出物の上清を新しい試験管に移した。
【0194】
尿素濃度を減らすために抽出物をKH2PO4中に希釈した。180μlの50mM KH2PO4,pH 9.5,1mM EDTA及び50mM NaClが入った新しい試験管を準備した。抽出物の2μlアリコートを加え、短時間攪拌して混合した。この処理を、全部で10回の添加により全抽出物が加えられるまで繰り返した。混合物を室温で15分間放置し、その間に若干の沈殿物がしばしば形成した。沈殿物は室温で15分間、14,000 rpmでの遠心分離により除去し、上清を新しい試験管に移した。KH2PO4溶液中のタンパク質200μlに140-200μlの飽和(NH42SO4を加え、得られた混合物は(NH42SO4の約41%飽和から50%飽和になった。混合物を氷上で30分間冷却してタンパク質を沈殿させ、その後室温で4分間、14,000 rpmでの遠心分離によりタンパク質を回収した。上清を廃棄し、ペレットを20μlバッファーC(20ml HEPES,pH 7.9,1mM EDTA,0.5% PMSF,25mM KCl及びそれぞれ0.5%のTween-20とNonidet P 40)中に溶解した。タンパク質溶液を再度4分間遠心分離して不溶物質をペレット化し、上清を新しい試験管に移した。この方法で調製した抽出物のタンパク質含有物は、SDS-PAGEで1-4μl分離することにより可視化し、0.5〜1μlの抽出物を記載した開裂及び重合アッセイにおいて試験した。
【0195】
E.ヌクレアーゼの存在と合成活性に関するタンパク質分析
上述の図4及び5に示した5'ヌクレアーゼを次の方法により分析した。
【0196】
1.構造特異性ヌクレアーゼアッセイ
改変ポリメラーゼの候補を、その構造特異性開裂を触媒する能力を調べることにより5'ヌクレアーゼ活性について試験した。ここで使用した「開裂構造」という用語は、DNAPの5'ヌクレアーゼ活性による開裂の基質である核酸構造を意味している。
【0197】
ポリメラーゼを図16に示した構造を持つ試験用複合体に露出させた。5'ヌクレアーゼ活性の試験は次の3反応を含む。1)反応時の塩濃度の変化に比較的鈍感であり、従って改変酵素が活性のために必要とするどのような溶液条件中でも行い得るため、プライマー指示型開裂(図16B)が行われる。これは一般的に非改変ポリメラーゼにとって好ましい条件と同様である。2)プライマー非依存型開裂を可能とするバッファー、即ち低塩バッファー中で同様のプライマー指示型開裂を行い、酵素がこれらの条件下で活性を有し続けられるということを示す。3)プライマー非依存型開裂(図16A)を同様の低塩バッファー中で行う。
【0198】
図16に示したように基質鎖と鋳型鎖間で分岐型二重鎖が生成される。本明細書中で使用する用語「基質鎖」とは、5'ヌクレアーゼ活性による開裂が生じる核酸の鎖を意味する。基質鎖は、5'ヌクレアーゼ開裂の基質として働く分岐複合体において常に上の鎖として示す(図16)。本明細書中で使用する用語「鋳型鎖」とは、基質鎖に対して少なくとも部分的に相補的であり、基質鎖にアニールして開裂構造を形成する核酸鎖を意味する。鋳型鎖は常に分岐開裂構造の下の鎖として示す(図16)。プライマー依存型開裂が試験されるときのように、プライマー(19から30ヌクレオチド長の短いオリゴヌクレオチド)が複合体に付加される場合は、鋳型鎖の3'アームにアニールするように設計される(図16B)。そのようなプライマーは、反応に使用したポリメラーゼが合成活性を有する場合、鋳型鎖に沿って延長される。
【0199】
開裂構造は、ターゲットの3'末端とパイロットの5'末端を、図16Eに示すようなループになるように結合した単一ヘアピン分子として形成され得る。プライマーの存在に対する酵素の感度を分析できるように、3'アームに相補的なプライマーオリゴヌクレオチドもこれらの試験に必要である。
【0200】
試験用の開裂構造を形成するために使用される核酸は化学的に合成し得、あるいは標準的なDNA組換え技術により生成し得る。後者の方法によれば、クローニングベクター内に短いDNAセグメントの二重鎖コピーを、互いに隣接しているが逆の方向に挿入することにより、分子のヘアピン部分を生成することができる。この逆転反復を包含し、短い(約20ヌクレオチド)不対の5'と3'アームを生成するために十分な隣接配列を含む二重鎖フラグメントを、その後の制限酵素消化により、または5'-エキソヌクレアーゼを欠いている酵素(例えばAmplitaq(商標)DNAポリメラーゼのStoffelフラグメント、Vent(商標)DNAポリメラーゼ)によるPCRにより、ベクターから放出し得る。
【0201】
試験DNAは一端もしくは両端または内部を放射性同位体もしくは非同位体標識のどちらかにより標識し得る。ヘアピンDNAが合成単一鎖であるかクローン化された二重鎖であるかにかかわらず、全二重鎖をメルトするためにDNAを使用前に加熱する。氷上で冷却する場合、図16Eに示した構造が生成し、この構造はこれらのアッセイを行うのに十分な時間安定である。
【0202】
プライマー指示型開裂(反応1)を試験するために、試験分子の検出できる量(典型的には、32P標識ヘアピン分子の1-100fmol)及び10-100倍モル過剰のプライマーを、試験酵素と適合できることが知られているバッファー中に置く。反応2では、プライマー指示型開裂がプライマー非依存型開裂を可能とする条件下で行われ、反応1で使用したバッファーとpH、酵素安定剤(例えば、牛血清アルブミン、非イオン性界面活性剤、ゼラチン)及び還元剤(例えば、ジチオトレイトール、2−メルカプトエタノール)に関して同じであるが、一価の陽イオン塩が20ml KClと置き換えられている溶液中に同量の分子を置く。20mM KClはプライマー非依存型開裂に最適であることが示されているものである。通常は塩の不存在下で作用する、DNAPEc1のような酵素のためのバッファーはこの濃度を得るために添加しない。プライマー非依存型開裂を試験するために(反応3)、プライマー無しで、同量の試験分子を反応2で使用したのと同じバッファー条件下で合わせる。
【0203】
次に3種の試験反応物の全てを、試験用複合体に対する酵素のモル比が約1:1である十分な量の酵素に露出させる。反応物は、酵素安定性と複合体安定性のどちらかにより許容されるいずれか低い方の温度を上回ることのない温度範囲で、好熱菌由来の酵素には80℃までで、開裂させるのに十分な時間(10-60分)インキュベートする。反応1、2及び3の生成物は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、オートラジオグラフィーまたは使用した標識系に適当な同等の方法で視覚化される。その他の標識系としては、化学発光検出、銀あるいは他の染色、ブロッティング及びプロービング等を含む。開裂生成物の存在は、非開裂試験構造よりも低分子量で移動する分子の存在により示される。これらの開裂生成物は、候補ポリメラーゼが構造特異性5'ヌクレアーゼ活性を有することを示している。
【0204】
改変DNAポリメラーゼが、天然DNAポリメラーゼのものと実質的に同じ5'ヌクレアーゼ活性を持っているかどうかを決定するために、上述した試験の結果を、天然DNAポリメラーゼでこれらの試験を行って得た結果と比較する。「実質的に同じ5'ヌクレアーゼ活性」とは、改変ポリメラーゼと天然ポリメラーゼが両方とも同様の形態で試験分子を開裂するという意味である。改変ポリメラーゼが天然DNAポリメラーゼと同じ速度で開裂する必要はない。
【0205】
ある酵素または酵素調製品は、上述した開裂条件下で機能し、5'ヌクレアーゼ検出を妨害し得る他の関連したあるいは汚染活性を有し得る。これら他の活性を考慮して反応条件を変更し、基質の破壊または5'ヌクレアーゼ開裂及びその生成物のその他のマスキングを避けることができる。例えば、E.coliのDNAポリメラーゼI(Pol I)は、そのポリメラーゼ及び5'ヌクレアーゼ活性に加え、3'から5'方向へDNAを分解することができる3'エキソヌクレアーゼを有する。その結果、図16Eの分子が上述した条件下でこのポリメラーゼに露出されると、3'エキソヌクレアーゼは不対3'アームをすぐに取り除き、5'エキソヌクレアーゼ開裂のための基質に要求される分岐構造を破壊し、開裂は検出されない。もし条件の変化(例えばpH)、突然変異、または活性についての競合物の添加により3'エキソヌクレアーゼが阻害されるならば、Pol Iの前記構造を開裂する本来の活性を顕在化することができる。図16Eの構造に関連の無い、競合する単一鎖オリゴヌクレオチドの500pmoleをPol Iによる開裂反応に添加すると、5'エキソヌクレアーゼの5'アームの放出を妨げることなく図16Eの構造の3'アームの消化が効果的に阻害される。競合物の濃度は重要でないが、反応の間3'エキソヌクレアーゼを占領するのに十分に高くなければならない。
【0206】
試験分子の同様な破壊は、候補ポリメラーゼ調製中の汚染により引き起こされ得る。構造特異的ヌクレアーゼ反応のいくつかのセットを行い、候補ヌクレアーゼの純度を決定し、研究しているポリメラーゼ調製物に対する試験分子の過少及び過剰の露出の間の領域を見つけることができる。
【0207】
上述した改変ポリメラーゼを、以下のようにして5'ヌクレアーゼ活性について試験した。反応1は10mMトリス-Cl,pH8.5,20℃,1.5mM MgCl2及び50mM KClのバッファー中で行った。反応2ではKCl濃度は20mMに下げた。反応1及び2では、図16Eの試験基質分子の10fmoleを、示したプライマーの1pmole及び改変ポリメラーゼ(上記のように調製した)を含む抽出物の0.5-1.0μlと合わせた。その後この混合物をその後55℃で10分間インキュベートした。試験した変異体ポリメラーゼの全てについて、これらの条件は完全な開裂を行うのに十分なものであった。図16Eに示した分子を5'末端で標識した場合、25ヌクレオチド長の放出された5'フラグメントは、20%ポリアクリルアミドゲル(19:1架橋)上で、45mMトリス−ホウ酸,pH8.3、1.4mM EDTAを含むバッファー中の7M尿素により都合よく分離された。クローン4C〜F及び5Bは、非改変DNAポリメラーゼのものに匹敵する構造特異性開裂を示した。さらに、クローン4E、4F及び4Gは、上述の3'アームの不存在下でDNAを開裂する能力をさらに有している。典型的な開裂反応を図17に示した。
【0208】
図17に示した反応に関しては、変異体ポリメラーゼクローン4E(Taq変異体)及び5B(Tfl変異体)について、それらの図16Eに示したヘアピン基質分子を開裂する能力を調べた。基質分子は5'末端を32Pで標識した。熱変成され、末端を標識された基質DNAの10fmoleと0.5単位DNAPTaq(レーン1)、または4eもしくは5b抽出物(図17、レーン2〜7、抽出物は上記のように調製した)の0.5μlを、10mMトリス-Cl,pH8.5,50mM KCl及び1.5mM MgCl2を含むバッファー中で一緒に混合した。最終反応容量は10μlであった。レーン4及び7に示した反応では、さらにそれぞれのdNTPを50μM含んでいる。レーン3、4、6及び7に示した反応では、プライマーオリゴヌクレオチド(基質の3'アームと相補的であり、図16Eに示されている)を0.2μM含んでいる。反応物は55℃で4分間インキュベートした。反応は、反応容量10μlに対して20mM EDTAと0.05%の標識染料を含む95%ホルムアミドの8μlを添加することにより停止した。次に試料を12%変成アクリルアミドゲルに加えた。電気泳動の後、ゲルをオートラジオグラフィーにかけた。図17に示すように、クローン4Eと5Bは天然DNAPTaqのものと同等の開裂活性を示す。プライマー不在でも、これらの反応で起こる開裂があることは重要である。ここで使用したような(図16E)長ヘアピン構造を、50mM KClを含むバッファー中で行われる開裂反応で使用した場合、低レベルのプライマー非依存型開裂が見られる。KClの濃度が高くなると,これらの条件下では、プライマー非依存型開裂は抑制されるが、排除はされない。
【0209】
2.合成活性についてのアッセイ
プライマーが鋳型にアニールされ、DNA合成が添加した酵素により触媒されるアッセイシステムに改変酵素を添加することにより、改変酵素またはタンパク質分解フラグメントの能力をアッセイした。多くの標準的な実験技術がそのようなアッセイを採用している。例えば、ニックトランスレーション及び酵素的配列決定は、ポリメラーゼ分子によるDNA鋳型に沿ったプライマーの延長を使用するものである。
【0210】
改変酵素の合成活性を測定するための好ましいアッセイにおいては、オリゴヌクレオチドプライマーを、単鎖DNA鋳型、例えばバクテリオファージM13 DNAにアニールさせ、プライマー/鋳型二本鎖を対象の改変ポリメラーゼ、デオキシヌクレオシドトリホスフェート(dNTP)及び非改変、即ち天然酵素に適していることが知られているバッファー及び塩の存在下にインキュベートする。プライマーの延長の検出(変性ゲル電気泳動による)またはdNTPの取り込みの検出(酸沈殿またはクロマトグラフィーによる)が活性ポリメラーゼの指標となる。同位体あるいは非同位体の標識をプライマー上にあるいはdNTPとして含有させ、重合生成物の検出を容易にすることが好ましい。合成活性は、成長DNA鎖に取り込まれた遊離ヌクレオチドの量で定量化でき、特異的な反応条件下で単位時間あたりの取り込み量で表される。
【0211】
合成活性のアッセイの代表的な結果を図18に示す。変異体DNAPTaqクローン4B〜Fの合成活性は、以下のようにして試験した。以下のバッファーのマスター混合物を作製した。1.2X PCRバッファー(1X PCRバッファーは50mM KCl,1.5mM MgCl2,10mMトリス-Cl,pH 8.5及びTween 20とNonidet P40をそれぞれ0.05%含む)、dGTP,dATP及びdTTPのそれぞれの50μM、5μM dCTPと600Ci/mmolの0.125μM α-32P-dCTP。この混合物を最終容量に調製する前に、2つの同量のアリコートに分割した。一方には50μlの容量まで蒸留水を加え、上記の濃度とした。もう一方は、一本鎖M13mp18 DNAの5μg(約2.5pmolまたは最終濃度0.05μM)、M13配列決定プライマーの250pmol(最終濃度5μM)、及び蒸留水を加え最終容量50μlとした。それぞれの混合物を75℃に5分間暖め、その後室温まで冷却した。これによりDNA含有混合物中でプライマーをDNAにアニールさせることができる。
【0212】
それぞれのアッセイについて、混合物の4μlとDNAを、記載したように調製された変異体ポリメラーゼの1μl、または1μlのdH2O中の1単位のDNAPATaq(Perkin Elmer)と合わせた。「DNAなし」対照はDNAPTaqの存在下で行い(図18、レーン1)、「酵素なし」対照は酵素の代わりに水を用いて行った(レーン2)。それぞれの反応物を混合し、室温(約22℃)で5分間、次に55℃で2分間、さらに72℃で2分間インキュベートした。この段階的インキュベーションは、72℃より低い最適温度を有する変異体における重合を検出するために行った。最終的なインキュベーションの後、試験管を短時間回転させて縮合物を回収し、氷上に置いた。各反応物の1μlをポリエチレンイミン(PEI)セルロース薄層クロマトグラフィープレートの底辺から1.5cmの原点にスポットし、乾燥させた。クロマトグラフィープレートはpH3.5の0.75M NaH2PO4中で、バッファーの先端が原点より約9cmの所に来るまで展開した。プレートを乾燥させ、プラスチックラップで包み、蛍光インクでマークし、そしてX線フィルムに露出させた。取り込みはスポットした場所に停止しているカウントとして測定し、一方取り込まれていないヌクレオチドは、塩溶液により原点から移動された。
【0213】
2つのコントロールのレーンでのカウントの場所の比較により、変異体試料では重合活性が欠落していることが確認された。改変DNAPTaqクローンでは、クローン4Bのみが図18に示すように残留合成活性を保持している。
【0214】
実施例3
熱安定性DNAポリメラーゼ由来5'ヌクレアーゼは短ヘアピン構造を特異的に開裂できる
検出分子としてふさわしい開裂したヘアピン構造を生成するために、ヘアピン構造体を開裂する5'ヌクレアーゼの能力を考察した。ヘアピン試験分子の構造と配列は図19Aに示す(配列番号15)。オリゴヌクレオチド(図19A中の標識「プライマー」、配列番号22)は、ヘアピン試験分子の3'アーム上のその相補的配列にアニールされることが示されている。ヘアピン試験分子は、ポリメラーゼ連鎖反応中に標識したT7プロモータープライマーを使用して32Pで単一末端標識した。標識はヘアピン試験分子の5'アーム上にあり、図19Aでは星印で示している。
【0215】
熱変成し、末端を標識したヘアピン試験分子の10fmole、プライマーオリゴヌクレオチド(ヘアピンの3'アームに相補的)の0.2μM、各dNTPの50μM及びDNAPTaq(Perkin Elmer)の0.5単位または5'ヌクレアーゼを含む抽出物(上記のように調製した)の0.5μlを加えることにより、10mMトリス-Cl,pH8.5,50mM KCl及び1.5mM MgCl2を含むバッファー中の総容量10μlで開裂反応を行った。レーン3、5及び7に示した反応はdNTPなしに行った。
【0216】
反応物を55℃で4分間インキュベートした。反応容量10μlに対して8μlの、20mM EDTAと0.05%の標識染料を含む95%ホルムアミドを添加することにより、反応を55℃で停止した。試料は変成ポリアクリルアミドゲル(10%ポリアクリルアミド,19:1架橋、7M尿素、89mMトリス−ホウ酸、pH8.3,2.8mM EDTA)上にロードする前には加熱しなかった。試料は、単一鎖や再二重鎖化した開裂していないヘアピン分子の分離を可能とするために加熱しなかった。
【0217】
図19Bは、開裂された生成物の一種を得るために、オリゴヌクレオチドをヘアピンの単一鎖3'アームにアニールすると(図19B、レーン3及び4)、検出できる合成活性が欠落している改変ポリメラーゼがヘアピン構造を開裂することを示している。レーン3及び4に示したクローン4Dのような5'ヌクレアーゼは、dNTPの存在下でも単一開裂生成物を生成する。合成活性の残留量(野生型活性の1%未満)を保持している5'ヌクレアーゼは、該ポリメラーゼがヘアピンの3'アームにアニールしたオリゴヌクレオチドを伸長でき、それにより開裂位置を移動できるので、複数の開裂生成物を生成する(クローン4B、レーン5及び6)。天然DNATaqは、残留合成活性を保持している変異体ポリメラーゼより多種の開裂生成物を生成し、さらにdNTPの存在下で、天然ポリメラーゼの合成活性の高いレベルのために、ヘアピン構造を二重鎖形態に変える(図19B、レーン8)。
【0218】
実施例4
トリガー/検出アッセイの試験
トリガー/検出アッセイの検出反応中に検出されるトリガー/検出アッセイのトリガー反応中に放出される型のオリゴヌクレオチドの能力を試験するために、図20Aに示した2個のヘアピン構造を一般的手法により合成した。2個のヘアピンはA-ヘアピン(配列番号23)及びT-ヘアピン(配列番号24)と称する。適当なアニールしたプライマーの存在下で予想される開裂の部位を矢印で示す。A-及びT-ヘアピンは、A-ヘアピン内のほとんどのT残基を除くことにより、またT-ヘアピン内のほとんどのA残基を除くことにより鎖内の誤った折り畳み(intra-strand mis-folding)を避けるように設計した。誤った開始やずれを避けるために、ヘアピンは配列モチーフにおいて局部的に変化させて設計した(例えば、T残基を1または2個のヌクレオチドを離してまたは対にして置く)。A-及びT-ヘアピンは一緒にアニールして、pUC型ベクターで指向性クローニングをするために適当な末端を持つ二重鎖を形成することができる。即ち、制限部位は二重鎖のループ領域にあり、所望によりステム領域の延長に使用できる。
【0219】
試験トリガーオリゴヌクレオチドの配列は図20Bに示す。このオリゴヌクレオチドはアルファプライマーと称する(配列番号25)。アルファプライマーは図20Aに示すようにT-ヘアピンの3'アームに対して相補的である。アルファプライマーがT-ヘアピンにアニールすると、熱安定性DNAポリメラーゼにより認識される開裂構造が生成する。T-ヘアピンの開裂はT-ヘアピンの5'単一鎖アームを遊離させ、tauプライマー(配列番号26)と開裂されたT-ヘアピン(図20B、配列番号27)を生成する。tauプライマーは図20Aに示したようにA-ヘアピンの3'アームに相補的である。tauプライマーのA-ヘアピンに対するアニーリングは、別の開裂構造を生成する。この二番目の開裂構造の開裂はA-ヘアピンの5'単一鎖アームを遊離し、アルファプライマーのもう一つの分子を生成し、これはT-ヘアピンの別の分子にアニールする。熱的サイクルはプライマーを放出するので、付加的な開裂反応として機能できる。アニーリングと開裂の複数のサイクルを行う。開裂反応の生成物はプライマーと図20Cに示した短縮ヘアピン構造である。短縮しまたは開裂したヘアピン構造は、変成アクリルアミドゲル電気泳動により非開裂ヘアピンから分離し得る。
【0220】
アニーリングと開裂反応は、以下のように行う。10mMトリス-Cl,pH8.5,1.0MgCl2,75mM KCl,A-ヘアピン1pmole,T-ヘアピン1pmoleを含む反応容量50μl中で、アルファプライマーをヘアピン構造(1pmole)に対して等モル量または10〜106倍の範囲の希釈物で添加し、5'ヌクレアーゼを含む抽出物(上記のように製造した)の0.5μlを添加した。アルファ又はトリガープライマーの予想されるメルト温度は、上記のバッファー中では60℃である。アニーリングはこの予想されるメルト温度のすぐ下の55℃で行う。Perkin Elmer DNA Thermal Cyclerを使用して、反応物を55℃で30秒間アニールさせた。その後温度を開裂が可能となる72℃まで、5分間にわたってゆっくり上昇させた。開裂後、反応物を急速に55℃にし(毎秒1℃)、アニーリングの別のサイクルが起こるようにした。一定の範囲でサイクル行い(20,40及び60サイクル)、反応生成物はこれらのサイクル回数のそれぞれにおいて分析した。開裂したヘアピン生成物の蓄積がプラトーに達していないことを示している反応回数を、その後の量的な結果を得ることが望まれる場合の測定に使用する。
【0221】
所望のサイクル回数の後、反応容量10μlに対して20mM EDTAと0.05%の標識染料を含む95%ホルムアミドの8μlを添加することにより、反応を55℃で停止した。試料は変成ポリアクリルアミドゲル(10%ポリアクリルアミド,19:1架橋、7M尿素,89mMトリス−ホウ酸、pH8.3、2.8mM EDTA)にロードする前には加熱しなかった。試料は、単一鎖及び再二重鎖化した非開裂ヘアピン分子の分離を可能とするために加熱しなかった。
【0222】
ヘアピン分子は、アガロースやスチレンまたは磁性ビーズのような独立した固体支持体分子に、それぞれのヘアピンの3'末端で結合させることができる。所望の場合は、スペーサ−分子をヘアピンの3'末端とビーズの間に置くことができる。固体支持体にヘアピンを結合させる利点は、これによりメルトとアニールのサイクル中にA-及びT-ヘアピン相互間のハイブリダイゼーションが防止されることである。A-及びT-ヘアピンは互いに相補的であり(図20Dに示したように)、もし相互に全長に渡ってアニールすることを許容するならば、これは検出反応中にアルファ及びtauプライマーに対するハイブリダイゼーションに利用できるヘアピンの量を減少させることになる。
【0223】
本発明の5'ヌクレアーゼは有意な合成活性を欠いているのでこのアッセイで使用される。合成活性の欠如は、結果として単一開裂ヘアピン生成物の生成をもたらす(図19B、レーン4に示したように)。複数の開裂生成物は、1)合成活性阻害の存在(図19B、レーン6及び8参照)または2)反応中のプライマー非依存型開裂の存在により生成される。プライマー非依存型開裂の存在は、開裂構造の分岐点の異なった大きさの生成物の存在によりトリガー/検出アッセイ中に検出される。プライマー非依存型開裂は、存在する場合には、ヘアピン分子の分岐領域で開裂不可能なヌクレオチドを使用することにより鈍化又は抑制し得る。例えば、チオール化ヌクレオチドを分岐領域でいくつかのヌクレオチドと置き換えるのに使用してプライマー非依存型開裂を妨ぐことができる。
【0224】
実施例5
直鎖核酸基質の開裂
上記より、天然(即ち「野生型」)熱安定性DNAポリメラーゼが特異的な方法でヘアピン構造を開裂でき、そしてこの発見を検出アッセイにうまく適用できることが明らかである。この実施例では、本発明の変異体DNAPを、図22Aに示した三種の異なるた開裂構造に対して試験する。図22Aの構造1は単純な単一鎖206-マーである(この調製及び配列の情報は上記した)。構造2及び3は二本鎖である。構造物2は図12A(下)に示したように同一のヘアピン構造であり、構造3は構造物2のヘアピン部分が除かれている。
【0225】
開裂反応物は、10mMトリス-Cl,pH8.3,100mM KCl,1mMMgCl2の総容量10μl中の0.01pmoleの生成した基質DNAと、1pmoleパイロットオリゴヌクレオチドとからなっていた。反応物を55℃で30分間インキュベートし、20mM EDTAと0.05%の標識染料を含む95%ホルムアミドの8μlを添加することにより停止した。試料は、45mMトリス−ホウ酸,pH8.3,1.4mM EDTAのバッファー中で、7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル(19:1架橋)による電気泳動の直前に75℃で2分間加熱した。
【0226】
結果はオートラジオグラフィーにより可視化し、図22Bに示した。使用した酵素は以下の通りである。Iは天然TaqDNAP;IIは天然TflDNAP;IIIは図4Eに示したCleavase(商標)BX;IVは図4Fに示したCleavase(商標)BB;Vは図5Bに示した変異体;VIは図4Gに示したCleavase(商標)BNである。
【0227】
構造2は比較を「正常化(normalize)」するために使用した。例えば、30分間で構造2の開裂の同量を与えるためには、50ngのTaq DNAPと300ngのCleavase(商標)BNを必要とすることが判った。このような条件下で、天然Taq DNAPは構造3を有意な程度には開裂できない。天然Tfl DNAPは複数の生成物を作るようなかたちで構造3を開裂する。
【0228】
これに対し、試験した変異体の全てが構造3の直線二重鎖を開裂する。この知見は、変異体DNAポリメラーゼのこの特性が、好熱菌種において熱安定ポリメラーゼに一貫しているということを示している。
【0229】
本明細書に記載した、本発明の変異体DNAポリメラーゼが直線二重鎖構造を開裂できるという発見は、より直接的なアッセイデザインに応用できる(図1A)。図23は図1Aのアッセイデザインに対応するより詳細な図である。
【0230】
図23に示した2つの43マーは標準的な方法により合成した。それぞれは検出のために5'末端にフルオレセインを、ストレプトアビジンでコートした常磁性粒子に結合できるようにするために3'末端にはビオチンを含んでいる(ビオチンーアビジン結合は「 」で示している)。
【0231】
トリチル基を除去する前に、オリゴをHPLCにより精製し、合成反応の切断された副生成物を除いた。各43マーのアリコートはM-280 Dynabeads(Dynal)にビーズのmg当たり100pmoleの密度で結合した。2mgのビーズ(200μl)を、洗浄1回あたり200μlの、0.1% BSAを含む1X洗浄/結合バッファー(1M NaCl,5mMトリス-Cl,pH 7.5,0.5mM EDTA)で2回洗浄した。洗浄の間に、ビーズは磁気により沈殿させては上清を除いた。2回目の洗浄後、ビーズを2X洗浄/結合バッファー(1mM EDTAを含む2M NaCl,10mMトリス-Cl,pH7.5)の200μl中に再懸濁し、2つの100μlのアリコートに分けた。それぞれのアリコートに2種のオリゴヌクレオチドのうちの1種の100μM溶液の1μlを入れた。混合後、時々静かに攪拌しながら、ビーズを室温で60分間インキュベートした。次にビーズを沈殿させ、上清の分析では痕跡量のみの遊離オリゴヌクレオチドが示され、結合が成功したことを示した。ビーズの各アリコートは、1回の洗浄につき100μlの1X洗浄/結合バッファーにより3回洗浄し、つぎに10mMトリス-Cl,pH8.3,75mM Kclのバッファー中で2回洗浄した。オリゴの1pmoleが懸濁液のμl当たりビーズの10μgに結合した濃度になるように、ビーズを最終容量100μlのトリス/KClに再懸濁した。ビーズは使用の合間は4℃で貯蔵した。
【0232】
ビーズのタイプは図1Aに対応している。即ち、タイプ2ビーズは、アルファシグナルオリゴ(配列番号35)並びに遊離すると24マーであるベータシグナルオリゴ(配列番号36)について相補的な配列(配列番号34)を含むオリゴ(配列番号33)を含んでいる。このオリゴには「A」がなく、「T」に富んでいる。タイプ3ビーズは、ベータシグナルオリゴ(配列番号39)並びに遊離すると20マーであるアルファシグナルオリゴ(配列番号35)について相補的な配列(配列番号38)を含むオリゴ(配列番号37)を含んでいる。このオリゴには「T」がなく、「A」に富んでいる。
【0233】
開裂反応物は、1μlの示したビーズ、10pmoleの「パイロット」(示した場合には)としての標識していないアルファシグナルオリゴ及び500ngのCleavase(商標)BNを、20μlの75mM KCl,10Mmトリス-Cl,pH8.3,1.5mM MgCl2及び10μM CTAB中に含む。酵素を除く全ての成分を合わせ、軽鉱物油で覆い、53℃に暖めた。反応は事前に暖められた酵素の添加により開始させ、その温度で30分間インキュベートした。反応はその温度で、20mM EDTAとそれぞれ0.05%のブロモフェノールブルーとキシレンシアノールを含む95%ホルムアミドの16μlを添加することにより停止させた。この添加により酵素活性が停止され、加熱することによりビオチン−アビジン結合が崩壊し、ビーズからオリゴの大部分(95%以上)が放出される。45mMトリス−ホウ酸,pH8.3,1.4mM EDTAのバッファー中で、7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル(19:1架橋)による電気泳動の直前に試料を75℃に2分間加熱した。結果は、分離されたDNAを正に帯電したナイロン膜に接触移動させ、アルカリフォスファターゼに結合された抗−フルオレセイン抗体によりブロックした膜をプロービングすることにより可視化した。洗浄後、抗体が結合している所に紫色の沈殿を生じさせるWestern Blue(Promega)中で膜をインキュベートすることによりシグナルを発色させた。
【0234】
図24は、本発明のDNAP変異体による図23の直鎖二重鎖核酸構造の開裂の増幅を示している。中央の2つのレーンはビーズの両方のタイプを含んでいる。上述したように、遊離したときベータシグナルオリゴ(配列番号36)は24マーであり、アルファシグナルオリゴ(配列番号35)は遊離したとき20マーである。24マーと20マーに対応する二つの低バンドの形成は「パイロット」に明らかに依存している。
【0235】
実施例6
熱安定性DNAPによる5'エキソヌクレオチド分解開裂(「ニッブリング」)
本発明のものを含む熱安定性DNAPは、直鎖二重鎖核酸構造を5’末端から少しずつ分解する(nibbling)ことができるという真の5’エキソヌクレアーゼ活性を有していることが判明した。この実施例においてはやはり206塩基対DNA二重鎖基質を使用する(上記参照)。この場合、ポリメラーゼ連鎖反応において1種の32P-標識プライマー及び1種の非標識プライマーを使用することによりそれを製造した。開裂反応物は、0.01pmolの熱変性され末端標識された基質DNA(非標識鎖を有するものも存在する)、5pmoleのパイロットオリゴヌクレオチド(図12Aのパイロットオリゴを参照)及び0.5単位のDNAPTaqまたはE.coli抽出物(上記参照)中の0.5μのCleavase(商標)BBを、10mMトリス-Cl,pH8.5,50mM KCl,1.5mM MgCl2の10μlの総容量中に含んでいた。
【0236】
反応は、予め温めた酵素を加えることにより65℃で開始し、その後最終的なインキュベート温度に30分間変更した。結果を図25Aに示す。レーン1〜4の試料は天然Taq DNAPによる結果であり、レーン5〜8はCleavase(商標)BBによる結果を示している。レーン1、2、5及び6についての反応は65℃で行い、レーン3、4、7及び8についての反応は50℃で行い、全てその温度で、20mM EDTAと0.05%のマーカー染料を含む95%ホルムアミドの8μlを添加することにより停止させた。45mMトリス−ホウ酸,pH8.3,1.4mM EDTAのバッファー中で、7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル(19:1架橋)による電気泳動の直前に試料を75℃で2分間加熱した。反応1、2、5及び6の予想された生成物は85ヌクレオチド長であり、反応3及び7の予想された生成物は27ヌクレオチド長である。反応4及び8はパイロット無しで行われ、206ヌクレオチドに止まったままである。24ヌクレオチドで見られたかすかなバンドは、PCR由来の残留末端標識プライマーである。
【0237】
Cleavase(商標)BBがこのような条件下で、微細種で標識の全てを出現させたということは驚くべき結果であり、これは酵素が基質を完全に加水分解した可能性を示唆している。レーン5〜8(欠失変異体で行った反応)に見られる最も速く移動したバンドの組成を決定するために、T7遺伝子6エキソヌクレアーゼ(USB)または仔ウシ腸アルカリ性フォスファターゼ(Promega)のいずれかで、製造者の使用説明書に従い、206塩基対二重鎖の試料を処理し、標識モノヌクレオチド(図25Bのレーンa)または遊離32P標識無機リン酸(図25Bのレーンb)のいずれかをそれぞれ生成した。これらの生成物は、パネルAのレーン7に見られる生成物と共に、45mMトリス−ホウ酸,pH8.3,1.4mM EDTAのバッファー中で、7M尿素を含む20%アクリルアミドゲル(19:1架橋)による短時間の電気泳動により分離した。このようにCleavase(商標)BBは、基質をモノヌクレオチドに転換できる。
【0238】
実施例7
ニッブリングは二重鎖依存性である
Cleavase(商標)BBによるニッブリングは二重鎖に依存している。この実施例では、内部で標識された206-マーの単一鎖を、非標識206-bpフラグメントを鋳型として用いて、4個全ての非標識dNTPと組み合わせたα-32P標識dCTPを導入するプライマー伸長の15サイクルにより生成した。単一及び二重鎖生成物を、45mMトリス−ホウ酸,pH8.3,1.4mM EDTAのバッファー中で、6%非変成アクリルアミドゲル(29:1架橋)による電気泳動により分離し、オートラジオグラフィーにより可視化し、ゲルから切り出し、受動拡散により溶出し、エタノール沈降により濃縮した。
【0239】
開裂反応物は0.04pmoleの基質DNA、及び2μlのCleavase(商標)BB(上述したようにE.coli抽出物中)を10mMトリス-Cl,pH8.5,50mM KCl,1.5mM MgCl2の総容量40μl中に含んでいた。反応は事前に暖められた酵素の添加により開始し、10μlのアリコートを5、10、20、30分で取り出し、30mM EDTAと0.05%のマーカー染料を含む95%ホルムアミドの8μlを含むように準備した試験管に移した。45mMトリス−ホウ酸,pH 8.3,1.4mM EDTAのバッファー中で、7M尿素を含む10%アクリルアミドゲル(19:1架橋)による電気泳動の直前に試料を75℃で2分間加熱した。結果は図26に見られるようにオートラジオグラフィーにより可視化した。明らかに、Cleavase(商標)BBによる開裂は二重鎖構造に依存している。即ち、単一鎖構造の開裂は検出されないが、206-マー二重鎖の開裂は完了している。
【0240】
実施例8
ニッブリングはターゲット指揮下にある
本発明のDNAPのニッブリング活性は、検出アッセイでうまく使用できる。そのようなアッセイの一つの態様を図27に示す。このアッセイでは、ターゲット配列に特異的な標識オリゴを使用する。オリゴはターゲットに対して過剰としハイブダリゼーションを急速に行う。この様態では、オリゴは2個のフルオレセイン標識を含み、これらがオリゴ上で近接していることによりそれらの放射が打ち消される。DNAPがオリゴを末端から少しずつ分解できるとき、その標識は分離され、検出され得る。短縮された二重鎖は不安定になり、解離する。重要なことは、ターゲットはここでそのままの標識したオリゴと自由に反応できるということである。反応は、望ましいレベルの検出が得られるまで継続できる。類似したタイプであるが異なる、λエキソヌクレアーゼを使用したサイクルアッセイが記載されている。C.G.Copley and C.Boot,BioTechniques 13:888(1992)参照。
【0241】
そのようなアッセイの成功は特異性に依存している。言い換えれば、オリゴは特異的なターゲットにハイブリダイズしなければならない。アッセイが敏感であることも好ましい。即ち、理想的には、オリゴは少量のターゲットを検出しなければならない。図28Aはプラスミドターゲット配列に結合された5'末端32P標識プライマーを示している。この場合、プラスミドは二分間煮沸しその後急冷することにより熱変成したpUC19(市販品)であった。プライマーは21マー(配列番号39)である。使用した酵素は、100mM KCl,10Mmトリス-Cl,pH8.3,2mM MgCl2中のCleavase(商標)BX(5×10-3μl抽出物に等価の希釈物)であった。反応はゲノムバックグラウンドDNA(ニワトリ血液由来)の存在下または非存在下で、55℃で16時間行った。反応は、20mM EDTAと標識染料を含む95%ホルムアミドの8μlを添加することにより停止した。
【0242】
反応生成物は、図28Bに見られるようにPAGE(10%ポリアクリルアミド、19:1架橋1×TBE)により分離した。レーン「M」は標識21マーを含む。レーン2及び3はそれぞれ100ng及び200ngのゲノムDNAをそれぞれ含んでいるが、レーン1〜3は特異的ターゲットを含まない。レーン4、5及び6は全て0ng、100ngまたは200ngのゲノムDNAのそれぞれと共に特異的ターゲットを含む。モノヌクレオチドへの変換がレーン4、5及び6でバックグラウンドDNAの存在または量にかかわらず起こることは明らかである。従って、ニッブリングはターゲット指揮下にあり、特異的であり得る。
【0243】
実施例9
Cleavase精製
上述したように、発現された熱安定性タンパク質、即ち5'ヌクレアーゼを粗細菌細胞抽出物により分離した。その後沈殿したE.coliタンパク質を他の細胞残渣とともに遠心分離により除いた。本実施例では、BNクローンを発現する細胞を培養し、回収した(500g)。各1g(湿潤重量)のE.coliに対して、3mlの溶菌バッファー(50mMトリス-HCl,pH8.0,1mM EDTA,100mM NaCl)を添加した。細胞を室温で200μg/mlのリゾチームで20分間溶解した。その後デオキシコール酸を最終濃度が0.2%になるように添加し、混合物を15分間室温でインキュベートした。
【0244】
溶解物を0℃で約6〜8分間超音波処理した。沈殿を遠心分離(39,000g、20分間)により除いた。ポリエチレンイミンを上清に加え(0.5%)、混合物を氷上で15分間インキュベートした。混合物を遠心分離し(5,000g、15分間)、上清は保存した。これを30分間60℃に加熱し、その後再び遠心分離し(5,000g、15分間)、上清は再び保存した。
【0245】
上清を35%硫酸アンモニウムで4℃で15分間沈殿させた。その後混合物を遠心分離し(5,000g、15分間)、上清を除去した。次に沈殿を0.25M KCl,20トリスpH7.6,0.2%Tween 0.1EDTAに溶解し、そして結合バッファー(8X結合バッファーは40mMイミダソール,4M NaCl,160mMトリス-HCl,pH7.9を含む)に対して透析した。
【0246】
その後、溶解したタンパク質をNi++カラム(Novagen)上で精製した。結合バッファーをカラム床の上段に注入し、カラムに調製した抽出液をロードする。1時間当たり約10カラム容量の流速が効率的な精製に最適である。流速が高すぎると、より多くの不純物が溶出フラクションに混入することになる。
【0247】
カラムを1X結合バッファーの25ml(10容量)で洗浄し、次に1X洗浄バッファー(8X洗浄バッファーは480mMイミダゾール,4M NaCl,160mMトリス-HCl,pH7.9を含む)の15ml(6容量)で洗浄する。結合タンパク質を1X溶出バッファー(4X溶出バッファーは4mMイミダゾール,2M NaCl,80mMトリス-HCl,pH7.9を含む)で溶出した。次にタンパク質を上記のように35%硫酸アンモニウムで再沈殿させた。その後沈殿を再度溶解し、20mMトリス,100mM KCl,1mM EDTAに対して透析した。溶液をTween20とNP-40のそれぞれ0.1%とし、4℃で貯蔵した。
【0248】
上記より、本発明はこれまで開示されなかったヌクレアーゼ活性を有する新規な開裂酵素を提供することは明らかである。この酵素は、種々の設計のターゲット検出アッセイにおいて成功裏に使用し得る。これらのアッセイは、試料DNAを検出の前に増幅する必要がなく、従ってDNA-ベースの検出技術に改良をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1A】図1Aは、本発明の検出法の1態様を示す模式図である。
【図1B】図1Bは、本発明の検出法の第2の態様を示す模式図である。
【図2A】図2Aは、サーマス・アクアティカス、サーマス・フラヴァスおよびサーマス・サーモフィラスから単離されたDNAP遺伝子のヌクレオチド構造を比較する図であり、コンセンサス配列を各列の上部に示す。
【図2B】図2Bは、図2Aの続きである。
【図2C】図2Cは、図2Bの続きである。
【図2D】図2Dは、図2Cの続きである。
【図2E】図2Eは、図2Dの続きである。
【図2F】図2Fは、図2Eの続きである。
【図2G】図2Gは、図2Fの続きである。
【図2H】図2Hは、図2Gの続きである。
【図3A】図3Aは、サーマス・アクアティカス、サーマス・フラヴァスおよびサーマス・サーモフィラスから単離されたDNAP遺伝子のアミノ酸配列を比較する図であり、コンセンサス配列を各列の上部に示す。
【図3B】図3Bは、図3Aの続きである。
【図3C】図3Cは、図3Bの続きである。
【図4】図4A−Gは、野生型および合成−欠失DNAPTaq遺伝子の模式図である。
【図5】図5Aは、野生型サーマス・フラヴァスポリメラーゼ遺伝子を示す。図5Bは、合成−欠失サーマス・フラヴァスポリメラーゼ遺伝子を示す。
【図6】図6は、DNAPTaqを用いて増幅できない構造を示す。
【図7】図7は、DNAPTaqまたはDNAPStfのいずれかを用いて分岐二本鎖を増幅する試みを示す臭化エチジウム染色ゲルである。
【図8】図8は、DNAPTaqによる分岐二本鎖の開裂、およびDNAPStfによる開裂の不在を分析するゲルのオートラジオグラムである。
【図9】図9A−Bは、DNAPTaqで分岐二本鎖を開裂する試みにおいて、種々の反応成分の添加、およびインキュベーション温度の変化による開裂の有無を分析するゲルのオートラジオグラムである。
【図10】図10A−Bは、プライマーの存在下および不在下における開裂反応の経時変化を示すオートラジオグラムである。
【図11】図11A−Bは種々のDNAPを用いて(プライマーの存在下および不在下における)分岐二本鎖の開裂の試みを示すゲルのオートラジオグラムである。
【図12A】図12Aは、パイロットオリゴヌクレオチドによってターゲットされた基質DNAの特異的開裂を試験するのに用いた基質およびオリゴヌクレオチドを示す。
【図12B】図12Bは図12Aに示す基質とオリゴヌクレオチドを用いた開裂反応の結果を示すゲルのオートラジオグラムである。
【図13A】図13Aは、パイロットオリゴヌクレオチドによってターゲットされた基質RNAの特異的開裂を試験するのに用いた基質およびオリゴヌクレオチドを示す。
【図13B】図13Bは、図13Aに示す基質とオリゴヌクレオチドを用いた開裂反応の結果を示すゲルのオートラジオグラムである。
【図14】図14は、ベクターpTTQ18の模式図である。
【図15】図15は、ベクターpET−3cの模式図である。
【図16】図16A−Eは、DNAPの5’ヌクレアーゼ活性による開裂に適した基質である分子のセットを示す。
【図17】図17は、合成−欠失DNAPで行った開裂反応の結果を示すゲルのオートラジオグラムである。
【図18】図18は、合成−欠失DNAPTaqクローンでの合成活性アッセイの生成物を解析するPEIクロマトグラムのオートラジオグラムである。
【図19A】図19Aは、合成−欠失DNAPの短いヘアピン構造を開裂する能力を試験するのに用いた基質分子を示す。
【図19B】図19Bは、図19Aに示す基質を用いて行った開裂反応の生成物を解析するゲルのオートラジオグラムを示す。
【図20A】図20Aは、引き金/検出アッセイに用いたA−およびT−ヘアピン分子を示す。
【図20B】図20Bは、引き金/検出アッセイに用いたαプライマーの配列を示す。
【図20C】図20Cは、開裂したA−およびT−ヘアピン分子の構造を示す。
【図20D】図20Dは、A−およびT−ヘアピン分子間の相補性を示す。
【図21】図21は、本発明の5’ヌクレアーゼ用基質として用いた完全な206−merの二本鎖配列を示す。
【図22A】図22Aは、野生型DNAPおよびサーマス・アクアティカスおよびサーマス・フラヴァスから単離した5’ヌクレアーゼによる直鎖核酸基質(図21の206−merに基づく)の開裂を示す。
【図22B】図22Bは、野生型DNAPおよびサーマス・アクアティカスおよびサーマス・フラヴァスから単離した5’ヌクレアーゼによる直鎖核酸基質(図21の206−merに基づく)の開裂を示す。
【図23】図23は、本発明の検出法の1態様に対応する詳細な図である。
【図24】図24は、本発明の5’ヌクレアーゼによる図23の直鎖二本核酸構造の開裂の生成物を示す。
【図25】図25Aは、本発明のDNAPで検出した「ニブリング(nibbling)」現象を示す。図25Bは、図25Aの「ニブリング」が5’ヌクレアーゼ開裂であってホスファターゼ開裂でないことを示す。
【図26】図26は、「ニブリング」現象が二本鎖依存的であることを示す。
【図27】図27は、検出アッセイにおいてどのように「ニブリング」を用いるかを示す模式図である。
【図28A】図28Aは、「ニブリング」がターゲット指向性でありうることを示す。
【図28B】図28Bは、「ニブリング」がターゲット指向性でありうることを示す。
【0250】







































【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定性DNAポリメラーゼをコードするDNA配列であって、天然DNAポリメラーゼのものから変更されたDNA合成活性を示すように天然配列に対して配列において変更されている前記DNA配列。
【請求項2】
コードされたDNAポリメラーゼが天然DNAポリメラーゼのものよりも減少した合成活性を示す、請求項1のDNA配列。
【請求項3】
前記天然配列に対する変更が単一のヌクレオチドの変化を含む請求項1のDNA配列。
【請求項4】
前記天然配列に対する変更が欠失を含む請求項1のDNA配列。
【請求項5】
配列番号9〜12及び21からなる群から選択されるDNA配列を含む請求項4のDNA配列。
【請求項6】
前記天然配列に対する変更が挿入を含む請求項1のDNA配列。
【請求項7】
Thermus aquaticus、Thermus flavus及びThermus thermophilusからなる群から選択された生物を起源とする請求項2のDNA配列。
【請求項8】
天然DNAポリメラーゼのものから変更されたDNA合成活性を示すように天然配列に対して配列において変更されている熱安定性DNAポリメラーゼをコードするDNA配列を含む組換え体DNAベクター。
【請求項9】
前記天然配列に対する変更が単一のヌクレオチドの変化を含む請求項8のDNA配列を含む組換え体DNAベクター。
【請求項10】
前記天然配列に対する変更が欠失を含む請求項8のDNA配列を含む組換え体DNAベクター。
【請求項11】
Thermus aquaticus、Thermus flavus及びThermus thermophilusからなる群から選択された生物を起源とする請求項8のDNA配列を含む組換え体DNAベクター。
【請求項12】
配列番号9〜12及び21からなる群から選択されるDNA配列を含む請求項11のDNA配列を含む組換え体DNAベクター。
【請求項13】
請求項8の組換え体ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項14】
天然DNAポリメラーゼのものから変更されたDNA合成活性を示すが、天然DNAポリメラーゼのものと実質的に同じ5'ヌクレアーゼ活性を保持するようにアミノ酸配列において変更された熱安定性DNAポリメラーゼ。
【請求項15】
変更されたポリメラーゼが天然DNAポリメラーゼのものよりも減少した合成活性を示す請求項14のポリメラーゼ。
【請求項16】
前記天然配列に対する変更がアミノ酸の変化を含む請求項15のポリメラーゼ。
【請求項17】
前記天然配列に対する変更が欠失を含む請求項15のポリメラーゼ。
【請求項18】
Thermus aquaticus、Thermus flavus及びThermus thermophilusからなる群から選択された生物を起源とする請求項15のポリメラーゼ。
【請求項19】
配列番号9〜12及び21からなる群から選択される核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含む請求項18のポリメラーゼ。
【請求項20】
特異的なターゲットDNA分子の存在を検出する方法であって、
a) i) ターゲット核酸、
ii) 前記ターゲット核酸の第1の部分に相補的な第1のオリゴヌクレオチド、及び
iii) 第2のオリゴヌクレオチドであって、そのある領域が前記ターゲット核酸の第2の部分に相補的であり、該第2のオリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5'末端において一重鎖アームを提供するものである前記第2のオリゴヌクレオチドを用意し、
b) 前記ターゲット核酸、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドを、前記第1のオリゴヌクレオチドと前記第2のオリゴヌクレオチドの3'末端が前記ターゲットDNA配列にアニールして第1の開裂構造を生成するような条件下で混合し、
c) 前記第1の開裂構造の開裂が前記第2のオリゴヌクレオチド内に位置する部位において前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドの前記ターゲット核酸上へのアニーリングに依存するかたちで優先的に起こるような条件下で開裂手段を提供し、これにより前記第2のオリゴヌクレオチドの一重鎖アームを遊離して第3のオリゴヌクレオチドを生成し、
d) 一重鎖3'アーム及び一重鎖5'アームを有する第1のヘアピン構造を、前記第3のオリゴヌクレオチドが前記第1のヘアピンの一重鎖3'アームにアニールし、これにより第2の開裂構造を生成するような条件下に提供し、
e) 前記開裂手段により前記第2の開裂構造の開裂が起こり、前記第2の開裂構造の一重鎖5'アームが遊離され、第4のオリゴヌクレオチドと第1の開裂されたヘアピン検出分子を含む反応生成物を生成する条件を提供し、
f) 一重鎖3'アーム及び一重鎖5'アームを有する第2のヘアピン構造を、前記第4のオリゴヌクレオチドが前記第2のヘアピンの一重鎖3'アームにアニールし、これにより第3の開裂構造を生成するような条件下に提供し、
g) 前記開裂手段により前記第3の開裂構造の開裂が起こり、前記第3の開裂構造の一重鎖5'アームが遊離され、配列において前記第3のオリゴヌクレオチドと同一の第5のオリゴヌクレオチドと第2の開裂されたヘアピン検出分子を含む反応生成物を生成する条件を提供し、
h) 前記第1及び第2の開裂されたヘアピン検出分子の存在を検出することを含む前記方法。
【請求項21】
段階d)〜g)を少なくとも1回繰り返す請求項20の方法。
【請求項22】
前記開裂手段が変更された熱安定性DNAポリメラーゼを含み、開裂反応が有意なポリメラーゼ活性の不存在下におこる請求項20の方法。
【請求項23】
前記第1のオリゴヌクレオチド、前記第3のオリゴヌクレオチド及び前記第4のオリゴヌクレオチドのアニールの不存在下には段階c)、e)及びg)の開裂反応がそれぞれ起こらない請求項20の方法。
【請求項24】
段階c)の開裂反応が前記第2のオリゴヌクレオチドのアニールした部分内で起こる請求項20の方法。
【請求項25】
段階c)の開裂反応が前記第2のオリゴヌクレオチドのアニールしていない部分内で起こる請求項20の方法。
【請求項26】
特異的なターゲット核酸分子の存在を検出する方法であって、
a) i) 開裂手段、
ii) ターゲット核酸、
iii) 前記ターゲット核酸の第1の部分に相補的な第1のオリゴヌクレオチド、
iv) そのある領域が前記ターゲット核酸の第2の部分に相補的である第2のオリゴヌクレオチドを有する第1の固体支持体であって、前記第2のオリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5'末端において一重鎖アームを提供し、前記5'アームが第1のシグナルオリゴヌクレオチドを含むもの、
v) そのある領域が前記第1のシグナルオリゴヌクレオチドに相補的である第3のオリゴヌクレオチドをそれぞれ有する複数の開裂されていない第2の固体支持体であって、前記第3のオリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5'末端において一重鎖アームを提供し、前記5'アームの部分が第2のシグナルオリゴヌクレオチドを含むもの、及び
vi) そのある領域が前記第2のシグナルオリゴヌクレオチドに相補的である第4のオリゴヌクレオチドをそれぞれ有する複数の開裂されていない第3の固体支持体であって、前記第4のオリゴヌクレオチドの非相補的領域がその5'末端において一重鎖アームを提供し、前記5'アームの部分が前記第1のシグナルオリゴヌクレオチドを含むもの、を用意し、
b) 前記開裂手段、前記ターゲット核酸、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドを、前記第1のオリゴヌクレオチドと前記第2のオリゴヌクレオチドの3'末端が前記ターゲットDNA配列にアニールして第1の開裂構造を生成し、前記第1の開裂構造の開裂により前記第1のシグナルオリゴヌクレオチドが遊離されるような条件下で混合し、
c) 前記遊離された第1のシグナルオリゴヌクレオチドを前記複数の第2の固体支持体の1つと、前記第1のシグナルオリゴヌクレオチドが前記第3のオリゴヌクレオチドの前記相補的領域にハイブリダイズして第2の開裂構造を生成し、前記第2の開裂構造の開裂が前記第2のシグナルオリゴヌクレオチドと開裂された第2の固体支持体の遊離をもたらすような条件下で反応させ、
d) 前記遊離された第2のシグナルオリゴヌクレオチドを前記複数の第3の固体支持体の1つと、前記第2のシグナルオリゴヌクレオチドが前記第4のオリゴヌクレオチドの前記相補的領域にハイブリダイズして第3の開裂構造を生成し、前記第3の開裂構造の開裂が前記第1のシグナルオリゴヌクレオチドの第2の分子と開裂された第3の固体支持体の遊離をもたらすような条件下で反応させ、
e) 前記第1及び第2のシグナルオリゴヌクレオチドの存在を検出することを含む前記方法。
【請求項27】
前記開裂手段が熱安定性DNAポリメラーゼから誘導された5'ヌクレアーゼを含む請求項26の方法。
【請求項28】
前記熱安定性DNAポリメラーゼが、Thermus aquaticus、Thermus flavus及びThermus thermophilusからなる群から選択された生物から誘導される請求項27の方法。
【請求項29】
前記5'ヌクレアーゼが配列番号11、30及び31からなる群から選択されるDNA配列によりコードされている請求項28の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【公開番号】特開2008−54686(P2008−54686A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259968(P2007−259968)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【分割の表示】特願平7−501963の分割
【原出願日】平成6年6月6日(1994.6.6)
【出願人】(504442539)サード ウェーブ テクノロジーズ,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】