説明

熱定着装置

【課題】均一な加熱により最適な転写を実現する画像形成装置を小型に構成する。
【解決手段】加熱部において被記録媒体を非圧接状態で搬送する両面接触ローラを備え、この両面接触ローラを被記録媒体の上面に接触する上部ローラ55Tと、被記録媒体の下面に接触する下部ローラ55Bとで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された、熱定着装置として特許文献1に記載されるものが存在する。この特許文献1では、金属基材(本発明の基材)上に防錆層を兼ねる着色下地層(本発明の定着層)を形成し、この上に光透過性樹脂層としてアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂で成る透明樹脂層を形成し、この上に多孔質アルミナ等を用いたインクジェット受理層(本発明の浸透層)を形成して金属装飾体を構成して成り、この金属装飾体のインクジェット受理層に対して昇華形着色材を用いたインクジェット印刷により着色模様を形成する。この後、この金属装飾体を加熱炉や、ホットプレスで加熱することによりインクジェット受理層の昇華形着色材が昇華して透明樹脂層に入り込み、インクジェット受理層に形成された着色模様が透明受理層に形成される。次に、インクジェット受理層を温水で軟化させた後、インクジェット受理層の全てを布等で拭き取る形態で取り除くことで、着色模様が形成された金属装飾体が完成するものとなっている。
【0003】
又、可撓性の樹脂シートを基材として用い、この基材の表面に定着層を形成し、更に、この定着層の表面に浸透層(前記受理層と同様の機能を有するもの)を形成し、浸透層に対して昇華性インクでプリントした記録情報を加熱によって定着層に転写定着する被記録媒体は開発中のものであり、この被記録媒体を用い、この被記録媒体の浸透層に対して昇華性インクで記録情報のプリントを行った後に、加熱によって昇華性インクを昇華させて記録情報を定着層に転写定着させる連続した処理を行う装置は開発されていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平10‐297197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱定着装置について考えるに、例えば、この被記録媒体の基材に可撓性の樹脂シートを使用したものでは、この装置で偏った加熱が行われた場合や、偏った力が作用する状態で加熱が行われた場合に基材が歪み平坦性を失うことも考えられる。特に、偏った加熱が行われた場合には、温度が高い領域で転写が進み、温度の低い領域で転写が抑制されるので、転写定着された記録情報の濃度ムラや色ムラに繋がるものとなる。
【0006】
具体的に説明すると、加熱により昇華性インクを昇華させて定着層に対して転写像を形成するものでは、定着層としてフッ素樹脂を使用すること等により銀塩印画紙で画像を形成(プリント)したものやインクジェットプリンターで画像を形成(プリント)したものと比較して耐候性に優れたものを作りやすく、屋外の看板や屋外に使用されるステッカーやシール類に使用することが可能となる。又、この種の被記録媒体を屋外に用いる場合には、基材として比較的安価で耐水性、平滑性に優れたPET(polyethylene terephthalate)樹脂シートを基材に使用することが有効である反面、このPET樹脂は熱可塑性であるため、被記録媒体の加熱を行う際に、例えば、被記録媒体を加熱型の圧着ローラで挟み込んで搬送を行い乍ら熱を作用させるよう構成した場合には、圧着ローラ同士の軸芯方向での圧着力のバラツキや、圧着ローラの表面における温度分布の不均衡から被記録媒体に作用する温度や圧力を不均衡にして基材の平坦性を損なうことや、転写される画像等に濃度ムラや色ムラを発生させるものとなり、均一な加熱を行い得る技術が望まれているのである。特に、厚い被記録媒体を加熱する際には表裏両面から均一な加熱を行うことが重要となるものの、加熱空気を被記録媒体の表裏両面に供給するものでは、電気ヒータ、ファン、空気供給系等を、搬送経路を挟む位置に配置する必要から装置全体が大型化するものとなり、この点にも改善が望まれているのである。
【0007】
本発明の目的は、均一な加熱により最適な転写を実現する画像形成装置を小型に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置において、
前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される前記被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され、この加熱機構が前記搬送経路の下部に配置した加熱プレートと、前記搬送経路の上方から加熱空気を供給する空気加熱部とを備えて構成され、
前記搬送機構が、前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで成る両面接触ローラを備え、この両面接触ローラによって非圧接状態で前記被記録媒体を搬送する点にある。
【0009】
この構成により、搬送機構に対して被記録媒体を搬送することにより、被記録媒体は、搬送機構の搬送経路の下部に配置された加熱プレートで下面が加熱されると同時に、搬送経路の上部に配置された空気加熱部から供給される加熱空気との接触で上面が加熱されるものとなる。つまり、被記録媒体を搬送する際には加熱プレートに対して被記録媒体が移動する状態で熱が被記録媒体の下面に作用するので偏った加熱を回避しながら、この被記録媒体の下面を平均的に加熱できる。また、搬送経路では、上部ローラと下部ローラとで成る両面接触ローラによって非圧接状態で被記録媒体を搬送するので、被記録媒体に強い圧力を作用させない状態での搬送を実現する。その結果、被記録媒体には強い圧力を作用させずに均一な加熱により最適な転写を実現する画像形成装置が小型に構成された。
【0010】
本発明は、一対の前記上部ローラと、単一の前記下部ローラとで前記両面接触ローラが構成されると共に、前記被記録媒体の搬送方向に沿う方向視で、前記上部ローラの外周面と、前記下部ローラの外周面との間に前記被記録媒体の厚さに略等しい間隔を設定しても良い。
【0011】
この構成により、上部ローラと下部ローラとが被記録媒体に軽く接触する状態で、その被記録媒体に搬送力を作用させて搬送を行える。
【0012】
本発明は、前記加熱プレートの上面が平坦に形成され、この加熱プレートの上側位置に、前記搬送機構として、さらに、前記被記録媒体の上面に接触して非圧接状態で搬送する上面接触ローラを備えても良い。
【0013】
この構成により、加熱プレートの上面において、被記録媒体に強い圧力を作用させない状態での搬送を行える。
【0014】
本発明は、前記被記録媒体の搬送方向に沿う方向視で、前記上面接触ローラの外周面と、前記加熱プレートとの間に前記被記録媒体の厚さに略等しい間隔を設定しても良い。
【0015】
この構成により、加熱プレートの上面においては、上面接触ローラが前記被記録媒体の上面に軽く接触して、その被記録媒体に搬送力を作用させて搬送を行える。
【0016】
本発明は、前記空気加熱部が、電気ヒータで加熱された加熱空気を送り出すクロスフローファンを備えると共に、このクロスフローファンから送り出された加熱空気を、前記搬送経路において前記被記録媒体の搬送方向の下流側から、前記搬送方向の上流側に向けて流動させるように構成しても良い。
【0017】
この構成により、搬送経路に搬送される被記録媒体に対して、搬送方向の下流側から上流側に送られる加熱空気を接触させて、加熱することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、画像処理装置Pから転送される画像情報を被記録媒体Mに対して昇華性インクでプリントし、プリントサイズに切断し、加熱により定着した後に送り出す画像形成装置Qが構成されている。
【0019】
前記画像処理装置Pは汎用コンピュータ1、モニター2、キーボード3、マウス4を有すると共に、現像済みの銀塩式の写真フィルム5の画像情報を光電変換するフィルムスキャナー6と、メディアにデジタル信号で保存された情報を取り出すようにコンピュータ内部のメディアドライブ7とを備えて成っている。尚、メディアドライブ7とは、CDやCD−R、あるいは、MO等のディスク状の媒体ばかりでなく、コンパクトフラッシュやスマートメディア等の半導体で成る媒体から情報を取り出すドライブの総称であり、同図にはCD及びCD−Rの情報を読出すメディアドライブを示している。
【0020】
前記被記録媒体Mは図4に示すように、PET(polyethylene terephthalate)製でフィルム状の基材11の表面に対して、昇華性インクに対して親和性のある樹脂としてポリビニルアルコール系の樹脂やポリビニルアセタール系の樹脂等で定着層12を形成し、この定着層12の表面に昇華性インクに対して非親和性となるフッ素樹脂やシリコン樹脂等の薄いフィルム状の浸透層13を剥離自在に重ね合わせ、全体として柔軟なシート状に構成したものであり、この被記録媒体Mは浸透層13に対して昇華性インクで画像をプリントした後、加熱処理を行うことにより、浸透層13のインクが昇華して定着層12に移行し、基材11の表面に画像情報を定着形成する機能を有し、画像情報を転写定着した後には、浸透層13をフィルム状のまま剥離して取り除くことにより基材11の表面の定着層12に形成された明瞭な画像を露出させるものとなっている。又、この被記録媒体Mは、基材11の素材が昇華性インクに対して親和性を有する性質のものでは、その基材11の表面をそのまま定着層12として利用できる。
【0021】
図1〜図3に示すように、前記画像形成装置Qは、被記録媒体Mに画像情報をプリントするプリント部Q1と、このプリント部Q1において昇華性インクで画像情報がプリントされた被記録媒体Mを一時的に蓄えるループ形成部Q2と、このループ形成部Q2から被記録媒体Mが送られる熱定着部Q3(熱定着装置の一例)とを備えて構成されている。この画像形成装置Qでは、熱定着部Q3における被記録媒体Mの搬送速度がプリント部において被記録媒体Mを搬送する速度より低速であるため、この速度差を吸収するために、プリント部Q1と熱定着部Q3との中間位置にループ形成部Q2を配置しており、プリント部Q1と、ループ形成部Q2と、熱定着部Q3とは互いに分離自在なユニットとして構成されている。尚、熱定着部Q3における被記録媒体Mの搬送速度は300mm/min程度であり、プリント部Q1での被記録媒体Mの搬送速度はプリント時の画像情報の解像度や被記録媒体Mの幅によって決まるものであるが、最低速度でも熱定着部Q3における被記録媒体Mの搬送速度より高速度となる。
【0022】
〔プリント部〕
前記プリント部Q1は、本体ケース20の内部に対して、ロール状の被記録媒体Mを送るよう圧着型の一対の搬送ローラ21を複数組備えて成る搬送機構Aと、この搬送機構Aで水平方向に搬送される被記録媒体Mに対して画像情報をプリントするインクジェット型のプリントヘッド22と、このプリントヘッド22と一体形成した切断機構Bと、これらを制御するプリント制御装置23とを備えて成り、この本体ケース20を支持脚27で支持することにより、画像情報がプリントされた被記録媒体Mを比較的高い位置で水平方向に送り出すよう構成されている。
【0023】
前記搬送機構Aは、ロール状の被記録媒体Mをプリントヘッド22の部位まで搬送する前搬送機構A1と、このプリントヘッド22の部位から被記録媒体Mを排出口20Aまで搬送する後搬送機構A2とを組み合わせて成り、この前搬送機構A1と、後搬送機構A2とは夫々ともステッピングモータ型の搬送モータ(図示せず)で独立して駆動自在に構成されている。前記プリントヘッド22は、被記録媒体Mの搬送方向(副搬送方向)と直交する姿勢(主走査方向に沿う姿勢)で備えられた一対のガイドロッド24で案内される状態で、ステッピングモータ型の主走査モータ(図示せず)からの駆動力で主走査方向に往復作動自在に支持され、このプリントヘッド22に対して取換え自在に備えたインクカートリッジ25の昇華性インクをピエゾ素子等の吐出機構26によりノズル(図示せず)から吹き出して画像情報をプリントするよう構成されている。
【0024】
前記切断機構Bは、プリントヘッド22に対して被記録媒体Mの側に突出する位置と、被記録媒体Mから離間する方向に退入する位置とに切換自在に備えた刃体28と、この刃体28の位置を、カム送りやネジ送り機構(図示せず)を介して切換える切換モータ29とを備えて構成されている。
【0025】
尚、インクカートリッジ25のインクとして、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の少なくとも4色のインクの他に中間色の2色のインクを用いた6色を使用するよう構成され、この実施形態で使用される昇華性インクは、80℃程度で昇華が始まり、前述したようにフィルム状のPET製の基材11を有する被記録媒体Mにおいては、180℃で2分程度の加熱により最適な転写状態となる。この昇華性インクは170℃〜200℃程度でインクの昇華を無理なく行えるものであり、200℃では1分程度の加熱、170℃では5分程度の加熱で必要とする転写、定着が可能となる。
【0026】
この構成により、被記録媒体Mに対してプリント部Q1で画像情報のプリントを行う場合には、前記プリント制御装置23が、搬送機構Aを作動させて被記録媒体Mをプリントヘッド22の部位まで搬送し、次に、プリントヘッド22を制御して昇華性インクを被記録媒体Mの浸透層13に吹き付けて画像情報をプリントする。このように画像情報をプリントする場合には、被記録媒体Mの搬送を停止させた状態でプリントヘッド22を走査方向に作動させて昇華性インクを被記録媒体Mに吹き付け、この走査によりプリントヘッド22が作動端に達すると、前搬送機構A1と後搬送機構A2とを等速で同期駆動してプリントヘッド22におけるプリント幅に対応した量だけ被記録媒体Mを搬送する処理が繰り返して行われる。次に、画像情報がプリントされた被記録媒体Mのうち、画像情報同士の中間位置等、切断を行うべき部位が切断機構Bの切断位置まで搬送されると、刃体28を突出させてプリントヘッド22を作動させることにより被記録媒体Mを切り離すものとなり、この後、前記後搬送機構A2を作動させて、切り離した被記録媒体Mを排出口20Aから送り出す制御が実行される。
【0027】
〔ループ形成部〕
図5に示すように、前記ループ形成部Q2は、中央位置に3つの従動ローラ30を有したターンローラ31を備えると共に、このターンローラ31を基準にして搬送上手側の第1ループ形成機構L1と、ターンローラ31を基準にして搬送下手側の第2ループ形成機構L2と、これらの下方位置において被記録媒体Mを受け止めるケース44とを備えて構成されている。
【0028】
前記ターンローラ31は、ステッピングモータ型のローラモータM31で駆動自在に構成され、このターンローラ31の外周に対して前記3つの従動ローラ30を圧接させることで、被記録媒体Mを比較的大きい角度でターンローラ31に巻き付けて被記録媒体Mの巻き癖を取り除き得るようにも機能する。
【0029】
前記第1ループ形成機構L1は、プリント部Q1の排出口20Aから排出された被記録媒体Mを下方に案内する導入ガイド32と、この導入ガイド32で下方に案内された被記録媒体Mを更に下方に案内する第1固定ガイド33と、この第1固定ガイド33に対向配置した第1可動ガイド34とを備えると共に、この第1可動ガイド34を上端部の揺動軸34A周りで揺動自在に支持し、この揺動軸34Aに備えた第1セクタギヤ35に対して第1モータM34の出力ギヤ36を咬合させて成り、この第1モータM34の駆動により、この第1可動ガイド34を同図に実線で示す閉じ姿勢と、仮想線で示す開放姿勢とに切換自在となる。
【0030】
前記第2ループ形成機構L2は、第1ループ形成機構L1からターンローラ31を介して送られた被記録媒体Mを前記熱定着部Q3に案内する第2固定ガイド37と、第2固定ガイド37に対向配置した第2可動ガイド38と、被記録媒体Mを前記熱定着部Q3に送る圧着型の供給ローラ39とを備えると共に、この第2可動ガイド38を上端部の揺動軸38A周りで揺動自在に支持し、この揺動軸38Aに備えたセクタギヤ40に対して第2モータM38の出力ギヤ41を咬合させ、又、供給ローラ39を駆動する供給モータM39の出力ギヤ42と、供給ローラ39の軸端に備えた入力ギヤ43と咬合させて成り、第2モータM38の駆動により、第2可動ガイドを同図に実線で示す閉じ姿勢と、仮想線で示す開放姿勢とに切換自在となり、供給モータM39の駆動により供給ローラ39を回転させて、このループ形成部Q2からの被記録媒体Mを熱定着部Q3に供給自在となる。
【0031】
このループ形成部Q2では、被記録媒体Mの搬送経路の各所に対して被記録媒体Mの存否を判別するセンサ(図示せず)を配置すると共に、制御装置(図示せず)を備えており、この制御装置により以下に説明する制御が実行される。つまり、プリント部Q1の排出口20Aから被記録媒体Mが排出された場合には、第1可動ガイド34を同図に実線に示す閉じ姿勢に設定すると同時にターンローラ31を低速で回転させることにより、この被記録媒体Mの先端を導入ガイド32からターンローラ31まで案内し、このターンローラ31と従動ローラ30とで被記録媒体Mの先端部を圧着保持したことが確認されるとターンローラ31を停止させた後に、第1可動ガイド34を同図に仮想線で示す開放姿勢に切換えて、この第1ループ形成機構L1の空間内に被記録媒体Mを垂れ下がる形態で蓄える。次に、プリント部Q1から送り出された被記録媒体Mの後端を検出すると、第2可動ガイド38を同図に実線で示す閉じ姿勢に設定した状態でターンローラ31と、供給ローラ39との駆動を開始して、被記録媒体Mの先端を第2ループ形成機構L2の供給ローラ39まで送り、供給ローラ39で被記録媒体Mの先端部を圧着して熱定着部Q3における被記録媒体Mの搬送速度と等しい速度で熱定着部Q3に送込む作動を行いながら、第2可動ガイド38を同図に仮想線で示す開放姿勢に切換えた後に、ターンローラ31を高速回転させて第1ループ形成機構L1に蓄えられた被記録媒体Mを第2ループ形成機構L2の空間内に被記録媒体Mを垂れ下がる形態で蓄える制御が行われる。このように、第1ループ形成機構L1の被記録媒体Mが第2ループ形成機構L2に送り出されると、プリント部Q1からの被記録媒体Mを前述と同様に第1ループ形成機構L1に導入する制御が開始されるのである。
【0032】
又、このループ形成部Q2には、熱定着部Q3に対して外部から被記録媒体Mを直接供給するために、一対のガイド板45で成る手差し供給部を備えており、例えば、この画像形成装置Qから分離した位置にセットされたプリンター等で画像情報が形成された被記録媒体Mの加熱定着も行えるように構成されている。尚、前記導入ガイド32は手動操作により、同図において仮想線に示す排出姿勢に切換可能であり、この排出姿勢に切換えることにより、プリント部Q1でプリントされた被記録媒体Mや、通常のインク(非昇華性のインク)でプリントされたプリントペーパを外部に取り出せるよう構成されている。尚、ループ形成部Q2において被記録媒体Mの搬送が行われている際に、手差し供給部から被記録媒体Mを導入できないよう、手差し供給部に制御信号によって開閉するシャッターを備えることや、ループ形成部Q2に被記録媒体Mが存在することをオペレータに示すランプを備えることも可能である。
【0033】
〔熱定着部〕
図2及び図6〜図9に示すように前記熱定着部Q3は、本体ケース50の内部に、被記録媒体Mを加熱する断熱材製の加熱ケース51と、この加熱ケース51に対して加熱空気を供給するよう加熱ケース51の上部位置に配置した断熱材製の送風ケース52(空気加熱部の一例)と、加熱ケース51から送り出された被記録媒体Mに接触して被記録媒体Mの平坦化を図る平坦化部Dとを備えると共に、この本体ケース50を支持する支持脚53を備えて構成されている。尚、この加熱ケース51と、送風ケース52とで加熱部が構成されている。
【0034】
前記加熱ケース51の内部に形成される加熱空間Rには、被記録媒体Mの導入部の側に位置を設定して圧着型の一対の導入ローラ54を配置し、この導入ローラ54より搬送下手側に被記録媒体Mの上面と下面とに接触して搬送力を作用させる複数の両面接触ローラ55と、被記録媒体Mの上面に接触して搬送力を作用させる複数の上面接触ローラ56とを有して成る加熱搬送機構を備え、又、この加熱搬送機構における被記録媒体Mの搬送経路の下部位置に被記録媒体Mの下面に接触して案内する平坦なガイド体57(加熱プレートの一例)を、搬送上手位置と搬送下手位置とに配置し、このガイド体57の下面側に該ガイド体57を加熱するシートヒータ58を備えている。又、前記両面接触ローラ55は一対の上部ローラ55Tと単一の下部ローラ55Bとを、側面視(軸芯に沿う方向視)で千鳥配置状態で備えると共に、被記録媒体Mの搬送方向に沿う方向視で上部ローラ55Tの外周面と、下部ローラ55Bの外周面との間に被記録媒体Mの厚さに略等しい間隔を設定し、この上部ローラ55Tと、下部ローラ55Bとが被記録媒体Mに軽く接触する状態で搬送力を作用させるよう構成したものである。尚、両面接触ローラ55で被記録媒体Mを接触状態で搬送するので、被記録媒体Mが幅方向に熱膨張した場合でも、被記録媒体Mに歪みを発生し難いものにしており、この両面接触ローラ55が被記録媒体Mに対して軽く接触する状態で配置されるので、被記録媒体Mの温度分布のバラツキも回避するものとなっている。そして、両面接触ローラ55を構成する一対の上部ローラ55Tと単一の下部ローラ55Bとの位置関係を任意に調整できるよう構成することによって、多様な被記録媒体Mの厚さに良好に対応させることも可能となる。又、前記上面接触ローラ56は、被記録媒体Mの搬送方向に沿う方向視で、この上面接触ローラ56の外周面とガイド体57の上面との間に被記録媒体Mの厚みに略等しい間隔が形成されるよう配置することで、この上面接触ローラ56が被記録媒体Mの上面に軽く接触して被記録媒体Mに搬送力を作用させるよう構成したものである。
【0035】
前記導入ローラ54、両面接触ローラ55、上面接触ローラ56は夫々とも金属製の軸部材54A、55A、56Aの外周に対して耐熱性に優れた発泡シリコンゴム等を形成して成り、これらを搬送ローラと総称する。この搬送ローラを構成する場合に、発泡シリコンゴムのチューブを軸部材54A、55A、56Aに被覆し接着固定する形態で構成することも可能であり、このように構成することで、搬送ローラ外周の硬度を低下させて被記録媒体Mに圧着した際の単位面積あたりの圧力を下げながら、摩擦力を増して確実な搬送を実現している。又、前記ガイド体57はステンレス材、アルミニウム材、チタン材のように熱伝導率が0.02cal/cm/sec/℃以上で、熱膨張率が24×10-8cm/℃以下で、板厚が0.8〜50mm程度のものが使用され、前記一対のシートヒータ58は、夫々とも内部に耐熱性に優れたシリコンゴム等に対してシーズヒータ(図示せず)を埋設して構成されたものであり、夫々のシートヒータ58の中央位置にガイド体57の温度を計測するガイド温度センサSaを備えている。
【0036】
前記送風ケース52の内部には、被記録媒体Mの幅方向で2つに分割した領域の空気を加熱するよう複数のロッド状に形成された一対の電気ヒータ60と、加熱空気を送るよう被記録媒体Mの幅方向と平行する姿勢の軸芯周りで支持され、被記録媒体Mの幅方向の両端に配置したファンモータ61の駆動力で駆動回転される一対のクロスフローファン62を備えている。この送風ケース52の下面側で、クロスフローファン62の直下位置に加熱空気の吐出口Eを形成し、加熱搬送機構における被記録媒体Mの搬送経路の搬送上手位置に吸入口Fを形成している。又、前記吐出口Eの開口部には、夫々のクロスフローファン62に対応して一対の空気温度センサSbを備えている。尚、夫々の空気温度センサSbで180℃の温度を計測するよう対応する電気ヒータ60に供給する電力を制御し、搬送上手のガイド温度センサSaで150℃の温度を計測し、搬送下手側のガイド温度センサSaで180℃の温度を計測するよう夫々のシートヒータ58に供給する電力を制御する制御手段(図示せず)を備えている。
【0037】
そして、被記録媒体Mの加熱時には、2つのファンモータ61を同時に駆動し、2つの電気ヒータ60を同時に駆動することで、送風ケース52の内部で加熱された加熱空気を吐出口Eから、加熱ケース51の内部空間における被記録媒体Mの搬送方向の下手側位置に対して被記録媒体Mの幅方向での全幅を超える幅で送り出し、この加熱空気を加熱空間Rにおいて被記録媒体Mの搬送経路に沿って搬送上手側に向けて流動させ、被記録媒体Mの搬送方向の上手位置から吸入口Fから送風ケース52の内部に吸引し、前記電気ヒータ60で加熱した後にクロスフローファン62に供給することで空気を循環させる形態での加熱を実現している。このように加熱を行う際において、一対の空気温度センサSbで計測される温度に差異が発生した場合には、その温度差に基づき、対応する電気ヒータ60に供給する電力を制御し、かつ、ファンモータ61の駆動速度を制御して温度の差を小さくするものにしている。
【0038】
前記平坦化部Dは、前記加熱搬送機構の排出部(搬送終端位置の前記両面接触ローラ55の部位)に対して、この排出部から排出される被記録媒体Mを搬送方向に沿って、その搬送下手側を下方に向かわせるよう湾曲させる湾曲搬送経路Gと、この湾曲搬送経路Gにおいて被記録媒体Mの搬送方向の幅方向に沿って接触する加熱部材70とを備えて成っている。具体的には、図12、図13に示すように前記湾曲搬送経路Gは、被記録媒体Mを搬送下手側ほど下方に向かわせるよう、前記排出部から被記録媒体Mが送り出される経路の延長上において、下側ほど前記排出部から離間する方向に傾斜する姿勢の第1ガイド面71と、被記録媒体Mを下方に送るよう縦姿勢の第2ガイド面72とを備えると共に、側壁73を備えることで下方に開放する空間で形成され、この空間の下方位置に被記録媒体Mに接触して被記録媒体Mの湾曲姿勢を整えるガイド体74を備えている。
【0039】
前記加熱部材70は、前記排出部から被記録媒体Mが排出される方向と平行姿勢な上部壁70aと、この上部壁70aに連なる位置において縦姿勢となる後部壁70bとの境界部位に形成される角部70cを有すると共に、この角部70cを加熱する加熱体としての電気ヒータ70dを備えて構成されている。又、加熱部材70には温度を計測する平坦部温度センサScを備え、この平坦部温度センサScで計測される温度が180℃に維持されるよう電気ヒータ70dに供給する電力が制御される。
【0040】
この平坦化部Dでは、加熱ケース51の内部で熱定着処理された後、水平姿勢で送り出された被記録媒体Mを、前記湾曲搬送経路Gにおいて搬送方向に沿ってカーリングさせる形態で湾曲させて下方に送ると同時に、この被記録媒体Mの下面に対して加熱部材70における角部70cを積極的に接触させることで、この角部70cからの力を被記録媒体Mの下面に集中的に作用させる形態で接触させることにより、加熱ケース51(加熱空間R)での加熱定着時に被記録媒体Mに歪みが発生しても、この直線状で、しかも、180℃に加熱された角部70cとの接触により矯正する形態で歪みを取り除き、平坦な被記録媒体Mとして送り出すものにしているのである。
【0041】
前記平坦化部Dの下方位置には、この平坦化部Dから送り出された被記録媒体Mを受け止めるよう、先端側が下方に位置する傾斜姿勢の布製のストッカー80を備えている。このストッカー80は、図1、図2に示すように熱定着部で処理可能な被記録媒体Mの最大幅より広い幅に設定されると共に、耐熱性に優れたポリエステル系の繊維に、静電気を除去するよう導電性を有する炭素繊維を織り込んで成り、このストッカー80の上端を水平姿勢の支持ロッド81に支持し、下端部を下端ロッド82に支持し、この下端ロッド82の両端を熱定着部の支持脚53から延設したステー83に支持して、該ストッカー80を、その下側ほど熱定着部Q3から離間する方向に変位する傾斜姿勢に設定している。
【0042】
図2に示すように、前記平坦化部Dの湾曲搬送経路Gの上部位置や、下端の開口や漏出するミストやガス等で成る臭気物質を回収するよう、前記平坦化部Dの上方位置に対して下方に開放するダクト90を配置し、このダクト90で回収されたミストやガスを吸引する電動ファン91と、この電動ファン91からのミストやガスを除去機構92で除去する除去部Hを備えている。この除去機構92は、ミスト、ガスを吸着することで臭気を除去するものや、化学反応によって臭気を除去するものや、微生物の活動によって臭気を除去するものを想定しており、具体的には、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、珪酸カルシウム、オゾン脱臭装置、光触媒装置、洗浄式脱臭装置を採用することが考えられている。
【0043】
前記導入ローラ54を除く搬送ローラと、これらの搬送ローラに回転力を伝える伝動系、前記ガイド体74、及び、前記平坦化部Dを前記本体ケース50に対して、被記録媒体Mの搬送方向の下手側に向けてスライド式に引き出し自在に構成したスライドフレーム100に支持してある。つまり、図6〜図11に示すようにスライドフレーム100は、搬送ローラの両側部に配置した一対の伝動ケース102と、この伝動ケース102同士を連結する位置に配置した底壁101と、これらを連結するフレームで成り、このスライドフレーム100は、本体ケース50の後面側に引き出す状態と(図8を参照)、本体ケース50の内部に収納してセットする状態(図7を参照)とにスライド操作により切換え自在に支持されている。このスライド操作を実現するため、前記被記録媒体Mの搬送方向と平行する姿勢の一対のガイドレール103を支持し、このガイドレール103にガイドされるホイール104を前記伝動ケース102に遊転支承してある。
【0044】
前記本体ケース50の下部位置に搬送モータ106を備え、この搬送モータ106の出力ギヤ107に咬合する中間ギヤ108を本体ケース側に支持し、この中間ギヤ108に咬合する入力ギヤ109を前記伝動ケース102の一方の側面に支持してある。前記伝動ケース102には、前記入力ギヤ109と一体回転する入力スプロケット110と、前記両面接触ローラ55の下部ローラ55Bの軸部材55Aの軸端に備えたスプロケット55Sと、上面接触ローラ56の軸部材56Aの軸端に備えたスプロケット56Sと、これらのスプロケット110、55S、56Sに動力を伝える無端チェーン112と、この無端チェーン112に張力を作用させるよう揺動アーム113に支承したテンション輪体114とを内蔵している。更に、この伝動ケース102と、他方の伝動ケース102とに対して、前記両面接触ローラ55を同期回転させるよう夫々のローラの軸部材55Aの軸端において互いに咬合する連動ギヤ115を内蔵している。
【0045】
図10、図14に示すように、前記被記録媒体Mの搬送上手位置のスプロケット55Sと一体回転するギヤ120を備え、このギヤ120と咬合する伝動ギヤ121をスライドフレーム100の側に支持し、この伝動ギヤ121を前記導入ローラ54の軸部材54Aの軸端に備えた被伝動ギヤ122と咬合させ、夫々の軸部材54Aに対して互いに咬合する連動ギヤ123を備えている。
【0046】
図7、図8に示すように、スライドフレーム100の下面位置と本体ケース50のフレーム50Fとの間にドロアコネクタ127を備えている。このドロアコネクタ127は、本体ケース50のフレーム50Fの側に支持した固定コネクタ127Aと、スライドフレーム100の側に支持したスライドコネクタ127Bとで構成され、このドロアコネクタ127はスライドフレーム100を引き出すことにより分離し、スライドフレーム100を図7に示す連結位置にセットすることで、互いに嵌合して導通状態に達する。尚、このドロアコネクタ127を介して前記シートヒータ58に供給する電力、ガイド体57の温度を計測するガイド温度センサSaに対する信号系の導通と分離とを可能に構成してある。
【0047】
図14に示すように、スライドフレーム100のうち被記録媒体Mの搬送方向での上手位置には嵌合孔116を形成してあり、本体ケース50のフレーム50Fには、嵌合孔116に対して挿抜自在な位置決めピン117を突設してある。同図に示すように、本体ケース50のフレーム50Fに対して支軸128周りで揺動自在、かつ、トーションバネ129でロック方向に付勢したロックアーム130を支持してある。このロックアーム130は先端部に対してロック片130Aと、オペレータが操作する操作部130Bとを一体形成してあり、このロックアーム130の基端部に対して接当部130Cを一体形成してある。前記スライドフレーム100には、ロック片130Aと係合するロック孔131Aを形成したロックプレート131を備えており、ロックアーム130と、ロックプレート131との対向する部位にマグネット132Aと、リードスイッチ132Bとで成る近接スイッチ132を配置してある。この近接スイッチ132は、ロックアーム130の状態を電気的に検出するものであり、図面には示さないが、このリードスイッチ132Bでロックが解除されたことを検出した場合には、電力供給系に介装されたリレー(図示せず)を作動させて前記ドロアコネクタ127に対して本体ケース側から供給される電力を遮断するよう電力が構成されている。
【0048】
この構成により、スライドフレーム100を引き出す場合にはロックアーム130を図14(ロ)に示すロック解除姿勢に操作することで、このロックアーム130に一体形成された接当部130Cがスライドフレーム100の端部を押圧して、このスライドフレーム100を引き出し方向に僅かにスライド作動させるものとなり、この状態ではリレーが作動してドロアコネクタ127に対する電力を遮断する。この状態でオペレータが人為的にスライドフレーム100を引き出すことにより、ドロアコネクタ127が完全に分離し、前記中間ギヤ108と入力ギヤ109とが分離し、前記伝動ギヤ121と被伝動ギヤ122とが分離して大きく引き出すことが可能となり、この引き出し状態で搬送系の点検や修理、あるいは、被記録媒体Mの詰まりの取り除きを容易に行えるものとなっている。この後、スライドフレーム100を本体ケース内に押し込み操作することで、前記中間ギヤ108と入力ギヤ109とが咬合し、前記伝動ギヤ121と被伝動ギヤ122とが咬合して搬送モータ106からの動力の伝達が可能になると共に、ドロアコネクタ127が連結状態に達して電力と信号との伝達が可能になり、図14(イ)に示す如くロックアーム130のロック片130Aがロックプレート131のロック孔131Aに係合してロック状態に達してスライドフレーム100が固定されるのである。
【0049】
このように画像形成装置Qを構成したので、この画像形成装置Qで被記録媒体Mに対して画像を転写により形成する場合には以下の制御が実行される。つまり、プリント部Q1の搬送機構Aを駆動して被記録媒体Mをプリントヘッド22の位置まで搬送した状態でプリントヘッド22を作動させて、被記録媒体Mの浸透層13に対して昇華性インクで画像情報をプリントする。このように被記録媒体Mに対して画像情報がプリントされる際に、プリントされる画像情報が大きいものである場合には、画像情報がプリントされた被記録媒体Mの先端がプリント部Q1の排出口20Aから前記ループ形成部Q2に送り出される。又、プリント部Q1において画像情報がプリントされた被記録媒体Mを切断する際には、この被記録媒体Mの切断すべき位置が切断機構Bの切断位置に達したタイミングで、刃体28を突出させた状態でプリントヘッド22を主走査方向に作動させることで、被記録媒体Mの切り離しが行われ、送出された被記録媒体Mの切断部位が、被記録媒体Mの後端となり、プリント部Q1の内部における切断部位が次に送り出される被記録媒体Mの先端となる。
【0050】
又、プリント部Q1から被記録媒体Mが送り出された場合には、その被記録媒体Mの先端部がループ形成部Q2の中央位置のターンローラ31まで送られ、このターンローラ31と従動ローラ30とに圧着保持された状態で、その被記録媒体Mを垂れ下げる形態で第1ループ形成機構L1に部位に蓄えるものとなり、この状態で被記録媒体Mの後端を検出すると、ターンローラ31に圧着保持されていた被記録媒体Mの先端部を第2ループ形成機構L2の供給ローラ39まで送る作動を行い、この供給ローラ39に圧着保持された後に、ターンローラ31を高速回転させて第1ループ形成機構L1に蓄えられた被記録媒体Mを第2ループ形成機構L2に送り出し、この第2ループ形成機構L2において被記録媒体Mを垂れ下がる形態で蓄える。特に、このループ形成部Q2では、ターンローラ31に対して被記録媒体Mを巻き付ける形態で搬送し、このターンローラ31に対する被記録媒体Mの巻き付け方向がプリント部Q1においてロール状でセットされた被記録媒体Mの巻回方向と逆向きであるので、この被記録媒体Mの巻き癖を効果的に取り除くものとなる。
【0051】
次に、熱定着部Q3においてはループ形成部Q2の供給ローラ39から被記録媒体Mが供給されると、この被記録媒体Mを導入ローラ54から加熱ケース51の内部の加熱空間Rに送り込むものとなり、この加熱空間Rにおいて、搬送ローラとの接触により搬送力が与えられて搬送方向の下手に送られる。そして、この加熱ケース51では搬送方向の下手側から上手側に向けて、被記録媒体Mの幅方向の全幅に達する幅で送られる加熱空気との接触により被記録媒体Mの上面が加熱されると同時に、この被記録媒体Mの下面がガイド体57に接触することで加熱される。又、この加熱ケース51の内部では、搬送方向の下手側ほど加熱空気の温度が高く(180℃)、搬送方向の下手側のガイド体57の温度も高い(180℃)ので、被記録媒体Mを搬送することで、被記録媒体Mの温度を緩やかに上昇させ搬送下手に達した時点で適正な温度まで上昇させて、基材11に歪みを殆ど招かず、画像情報にムラを生じない熱転写を実現するものとなっている。
【0052】
この熱転写を終了した被記録媒体Mは平坦化部Dに送られ、図12に示す如く、第1ガイド面71と、第2ガイド面72とを有した湾曲搬送経路Gで湾曲させた状態で加熱部材の角部70cに接触することで、この直線状の角部70cが被記録媒体Mの幅方向での全幅に接触することで、多少の歪みが取り除かれ、次に、ストッカー80で受け止める形態で回収されるのである。尚、平坦化部Dの上方位置に配置した除去機構92で熱定着時に発生する臭気を除去し快適な作業環境を作り出している。
【0053】
〔別実施の形態〕
本発明は上記実施形態以外に、例えば、図15に示すように熱定着部Q3における本体ケース50の上面に対して外部から被記録媒体Mを供給するための手差し供給部140を形成し、手差し供給部140からの被記録媒体Mを該熱定着部Q3における搬送機構に合流させる供給経路141を形成して実施することも可能である(この別実施の形態では前記実施の形態と同じ機能を有するものには、実施の形態と共通の番号、符号を付している)。このように構成することにより、プリント部Q1以外のプリンターで昇華性インクを用いてプリントされた被記録媒体Mを熱定着部Q3に対して容易に供給できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】画像処理装置及び画像形成装置を示す斜視図
【図2】画像処理装置及び画像形成装置を示す一部切り欠き側面図
【図3】プリント部の縦断側面図
【図4】被記録媒体の縦断側面図
【図5】ループ形成部の縦断側面図
【図6】熱定着部の斜視図
【図7】熱定着部の縦断側面図
【図8】スライドフレームをスライドさせた状態の熱定着部の縦断側面図
【図9】熱定着部の縦断正面図
【図10】加熱搬送機構の伝動系の概要を示す斜視図
【図11】加熱伝動機構の伝動ケースの配置を示す縦断正面図
【図12】平坦化部の構造を示す縦断側面図
【図13】平坦化部の構造を示す斜視図
【図14】連結位置と分離位置とのスライドフレームの端部を示す縦断側面図
【図15】別実施の形態の熱定着部を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0055】
11 基材
12 定着層
13 浸透層
52 空気加熱部
55 両面接触ローラ
55T 上部ローラ
55B 下部ローラ
56 上面接触ローラ
57 加熱プレート
60 電気ヒータ
62 クロスフローファン
M 被記録媒体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材表面の定着層に転写すべき画像情報がプリントされる浸透層とを有するシート状の被記録媒体を加熱することにより、浸透層に昇華性インクでプリントされた画像情報を定着層に転写定着する加熱部を備えている熱定着装置であって、
前記加熱部が、前記被記録媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、この搬送機構で搬送される前記被記録媒体を加熱する加熱機構とで構成され、この加熱機構が前記搬送経路の下部に配置した加熱プレートと、前記搬送経路の上方から加熱空気を供給する空気加熱部とを備えて構成され、
前記搬送機構が、前記被記録媒体の上面に接触する上部ローラと、この上部ローラを基準にして前記被記録媒体の搬送方向に変位した位置において前記被記録媒体の下面に接触する下部ローラとで成る両面接触ローラを備え、この両面接触ローラによって非圧接状態で前記被記録媒体を搬送する熱定着装置。
【請求項2】
一対の前記上部ローラと、単一の前記下部ローラとで前記両面接触ローラが構成されると共に、前記被記録媒体の搬送方向に沿う方向視で、前記上部ローラの外周面と、前記下部ローラの外周面との間に前記被記録媒体の厚さに略等しい間隔を設定している請求項1記載の熱定着装置。
【請求項3】
前記加熱プレートの上面が平坦に形成され、この加熱プレートの上側位置に、前記搬送機構として、さらに、前記被記録媒体の上面に接触して非圧接状態で搬送する上面接触ローラを備えている請求項1又は2記載の熱定着装置。
【請求項4】
前記被記録媒体の搬送方向に沿う方向視で、前記上面接触ローラの外周面と、前記加熱プレートとの間に前記被記録媒体の厚さに略等しい間隔を設定している請求項3記載の熱定着装置。
【請求項5】
前記空気加熱部が、電気ヒータで加熱された加熱空気を送り出すクロスフローファンを備えると共に、このクロスフローファンから送り出された加熱空気を、前記搬送経路において前記被記録媒体の搬送方向の下流側から、前記搬送方向の上流側に向けて流動させるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−347166(P2006−347166A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142793(P2006−142793)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【分割の表示】特願2002−138746(P2002−138746)の分割
【原出願日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.コンパクトフラッシュ
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】