説明

熱式質量流量センサー、及び流量測定方法

【課題】輸液用チューブの材質や肉厚に影響を受けずに、より高い測定精度を得られる熱式質量流量センサーを提供する。
【解決手段】熱式質量流量センサー1で流量測定を行う場合には、第1の熱伝導体41のチューブ収容部41aに流路の上流側に位置する輸液用チューブT、第2の熱伝導体42のチューブ収容部42aに流路の下流側に位置する輸液用チューブTを、それぞれ嵌め込む。輸液用チューブTの第2の熱伝導体42の取付個所は、その前後よりも上方に位置している。熱式質量流量センサー1は、第2の温度センサ52から入力された検知信号が示す検知温度、及び、目標温度の情報に基づいて発熱体6を発熱させ、その間に積分制御に用いた積分回路からの出力電圧値、予め記憶した電流値情報や比熱や比重等の情報、及び各温度センサ51,52から入力された検知信号に基づき、演算を実行し、流量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を流れる流体の流量を計測する熱式質量流量センサーに関する。また、本発明は、配管内を流れる流体の流量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管内を流れる流量の測定に用いる熱式質量流量センサーとしては、下記の特許文献1に示す液体用熱式質量流量計が開示されている。この熱式質量流量計は、合成樹脂製の配管内を流れる被測定液体の温度を液温センサで計測し、この液温センサによる計測箇所を通過した被測定液体を、伝熱素子を用いて加熱する。伝熱素子を用いた加熱温度の調整は、液温センサによる計測温度に基づき行われる。伝熱素子及び液温センサは定温度手段で覆われ、その外側は更に断熱部材で覆われている。定温度手段は、液温センサによる計測温度に基づき温度調整を行い、これにより断熱部材内が一定の温度に保たれる。断熱部材の外側の外気温は、外気温測温センサにより計測されている。外気温測温センサでの計測温度に基づき、伝熱素子による加熱に用いた熱量から、外部に伝達された熱量が差し引かれ、被測定液体の加熱に用いられた熱量が算出される。そして、算出された熱量に基づき、被測定液体の流量が計測される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−233859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動脈路確保に使用するヘパリン(heparin)添加生理食塩水や、治療のために頭蓋腔内から排出される脳脊髄液等の流量の計量に用いられる熱式質量流量センサーでは、感染防止のために、これらの輸液用チューブ内にセンサを配置することなく、輸液用チューブを測定用の管路としてそのまま用い、例えば、30(ml/hr)以下の流量で管路内に被測定液体を流動させつつ、0.1(ml/hr)〜0.01(ml/hr)程度の流量変化を測定する必要がある。このため、輸液用チューブの材質や肉厚に影響を受けずに、より高い測定精度で流量を測定することが求められている。しかしながら、上記特許文献1に記載の液体用熱式質量流量計では、輸液用チューブを測定用の管路としてそのまま用いて精度の高い流量測定を十分に行うことができなかった。
【0005】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決できる熱式質量流量センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明は、被測定流体が流れる配管に接触させられる第1の熱伝導体と、この第1の熱伝導体の温度を検知する第1の温度センサと、前記配管における前記第1の熱伝導体の接触箇所よりも被測定流体の流路の下流側に接触させられる第2の熱伝導体と、この第2の熱伝導体の温度を検知する第2の温度センサと、前記第2の熱伝導体を加熱する加熱手段と、前記第2の温度センサによる検知温度が前記第1の温度センサによる検知温度よりも高い所定の温度となるように前記加熱手段による加熱動作を制御する加熱制御手段と、前記加熱手段による加熱に用いられた熱量から前記配管を流れた被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備え、前記配管における前記第2の熱伝導体の接触した管路を、その前後の管路よりも上方に配置したことを特徴とする。
また、本発明は、前記配管における少なくとも前記第1の熱伝導体の接触箇所と前記第2の熱伝導体の接触箇所とを結ぶ管路を、各前記熱伝導体及び各前記温度センサと共に覆って外部と断熱する断熱部材を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記断熱部材は、前記配管が内部に入る第1の挿通孔と、前記第1の挿通孔から内部に入った前記配管が外部に出る第2の挿通孔とを備え、前記第1の挿通孔は、前記第2の挿通孔よりも上方に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度を調整する温度調整手段と、前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度を検知する調整温度センサと、前記第1の温度センサでの検知温度と前記調整温度センサによる検知温度とが一致するように前記温度調整手段による温度調整動作を制御する調整温度制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、被測定流体が流れる配管に第1の熱伝導体を接触させると共に、前記配管における前記第1の熱伝導体の接触箇所よりも被測定流体の流路の下流側に第2の熱伝導体を接触させて、その接触箇所を前後の管路よりも上方に固定して配置し、前記第1の熱伝導体の温度よりも高い所定の温度となるように前記第2の熱伝導体を加熱しながら前記配管に被測定流体を流通させ、前記配管における前記第2の熱伝導体の接触箇所の管路を前記被測定流体が流通している間、前記第2の熱伝導体の加熱に用いられた熱量に基づき前記配管を流れた被測定流体の流量を算出することを特徴とする。
また、本発明は、前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度が前記第1の熱伝導体の温度と一致するように前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被測定流体を流通させる管路をそのまま用いて、精度の高い測定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の熱式質量流量センサー1が備える温度検出部2の構成の概略を示す図であり、(a)は正面から内部を見た図、(b)は(a)のA−A線での温度検出部2の断面を示す図である。温度検出部2は、箱体3の内部に備えられている。箱体3の底壁には挿通孔31,32が設けられている。図1(b)に示すように、箱体3は、例えば、発泡スチロール等の断熱部材36a及び断熱部材36bを嵌め合わせて構成される。また、温度検出部2は、輸液用チューブTに取り付けられる2つの熱伝導体41,42と、各熱伝導体41,42の温度を検知する温度センサ51,52と、熱伝導体42を加熱するための発熱体6とを備えて構成されている。一方の断熱部材36aには収容凹部361が設けられている。収容凹部361には、輸液用チューブT、熱伝導体41,42,温度センサ51,52,及び発熱体6が収容される。
【0009】
熱伝導体41,42は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属から形成されている。図1(b)に示すように、熱伝導体42は、長方形の一側面に円弧状の切欠部を設けた断面形状を有している。円弧状の切欠部は輸液用チューブTを収容するチューブ収容部42aを構成している。チューブ収容部42aを構成する切欠部は、円弧状を呈している。チューブ収容部41aは、側方から輸液用チューブTが嵌め込まれて、その表面を輸液用チューブTの外周面に密着させる構成を有している。熱伝導体42も熱伝導体41と同様の構成を有している。本実施形態では、各チューブ収容部41a,42aは、一般的に用いられるポリプロピレンやポリブタジエン等のポリエチレンやポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の輸液用チューブ(外径5mm,内径3mm)を輸液用チューブTとして用いた場合に、その表面を輸液用チューブTの外周面に密着させて係止できるように構成されている。
【0010】
温度センサ51,52としては、測温抵抗体(白金線、金属皮膜、炭素皮膜抵抗体)や熱電対、IC温度センサー等を用いることができる。温度センサー自体が発する熱が測定結果に与える影響を抑えるために、温度センサ51,52としては、消費電力が少ないものを用いることが望ましい。このため、本実施形態では、消費電力が数十マイクロワットの半導体IC温度センサーを、温度センサ51,52として用いている。温度センサ51,52は、温度検出用の検出部を熱伝導体41,42に接触させている。発熱体6は、金属皮膜抵抗器であり、熱伝導体42に接触させられている。
【0011】
図2は、熱式質量流量センサー1の制御回路のハードウエア構成の概略を示すブロック図である。図2に示すように、熱式質量流量センサー1の端末装置7は、各種の演算や制御を行う演算制御部71と、複数のキーからなる入力部72と、各種の表示を行う表示部73と、外部機器とのデータ通信を行う送受信部74と、時間の管理を行う時計部75と、演算制御部71での処理に用いられる各種データを記憶する記憶部76とを備えて構成されている。なお、演算制御部71は、CPU(Central Prosessing Unit)と、制御プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)と、制御プログラムが演算等に使用するRAM(Random Access Memory)とから構成される。送受信部74を介して端末装置7とデータ通信を行う外部機器には、上述した温度センサ51,52、及び、上述した発熱体6による発熱を行う発熱制御装置77がある。これらは、ケーブル線を介して端末装置7と電気的に接続されている。
【0012】
第1の温度センサ51及び第2の温度センサ52は、検出部での検出結果に応じた検出信号を端末装置7に入力する。発熱制御装置77は、端末装置7から入力される制御信号に従い、PID(Proportinal Integral Differential)制御を行い、発熱体6を発熱させる。また、発熱制御装置77は、PID制御の際に作動させた積分回路からの出力電圧値を示す出力電圧信号を端末装置7に入力する。
【0013】
送受信部74は、演算制御部71の制御プログラムの制御に従い、温度センサ51,52及び発熱制御装置77から入力されるアナログ信号を、時計部75で計時される所定の時間間隔でサンプリングし、デジタル信号に変換する。また、入力部72から入力された被測定流体の比熱や比重等の流量測定に用いるデータを、記憶部76に記憶する。表示部73は、演算制御部71の制御に基づき、計測データや流量測定の結果等のデータを表示する。記憶部76は、発熱制御装置77の積分回路を作動させる電流値の情報を、電流値情報として記憶している。また、記憶部76は、発熱制御装置77の制御により発熱体6を発熱させ、第2の熱伝導体42を加熱する目標温度Tの情報を記憶している。目標温度Tは、第1の温度センサ51からの入力信号が示す温度より高い所定の温度(例えば5℃)に設定されている。
【0014】
演算制御部71は、送受信部74から入力されたデジタル信号を所定の時間間隔でサンプリングした経過時間と共に計測データとして記憶部76に記憶し、後述する演算の実行等の各種処理を行う。また、発熱制御装置77に制御信号を供給して、第2の温度センサ52からの入力信号が示す温度が目標温度Tとなるように、発熱制御装置77による発熱体6の発熱を制御する。
【0015】
また、演算制御部71は、記憶部76に記憶した計測データ及び比熱や比重のデータに基づき、輸液用チューブTの内部を流れる被測定流体の流量を算出する。具体的には、演算制御部71は、以下の演算式(1)を実行して、流量R(m/h)を算出する。
R=Q/((t2−t1)×Cp×ρ)・・・・・・・(1)
ここで、Q:発熱体6の発熱に用いた消費電力(Wh)、t1:第1の温度センサ51での検知温度(℃)、t2:第2の温度センサ52での検知温度(℃)、Cp:被測定流体の比熱(J/(g・K))、ρ:被測定流体の密度(kg/m)である。
【0016】
なお、消費電力Qは、発熱制御装置77から供給される出力電圧信号が示す電圧値と、記憶部76に記憶した電流値情報の示す電流値に基づき算出される。つまり、演算制御部71は、第2の温度センサ52での検知信号が示す温度が第1の温度センサ51での検知温度よりも所定温度高い目標温度Tに達し、出力電圧信号が示す電圧値が安定すると、その電圧値を基準電圧情報として記憶部76に記憶し、その後に入力される出力電圧信号が示す電圧値から基準電圧情報が示す電圧値を減算し、得られた値に電流値情報が示す電流値を乗じることにより、被測定流体の発熱に用いた消費電力Qを算出する。
【0017】
次に、熱式質量流量センサー1を用いた被測定流体の流量測定の動作について説明する。
熱式質量流量センサー1で流量測定を行う場合には、まず、第1の熱伝導体41のチューブ収容部41aに流路の上流側に位置する輸液用チューブT、第2の熱伝導体42のチューブ収容部42aに流路の下流側に位置する輸液用チューブTを、それぞれ嵌め込み、各チューブ収容部41a,42aの内周面を輸液用チューブTの外周面に密着させる。この状態では、熱伝導体41,42、温度センサ51,52、及び発熱体6が、輸液用チューブTと共に断熱部材36aの収容凹部361内に収容され、箱体3を構成する断熱部材36a,36bで覆われている。また、輸液用チューブTは、箱体3の底面に形成された挿通孔31から箱体3の内部に進入して上方に向けてほぼ垂直に延びており、この垂直部分の一部には第1の熱伝導体41が取り付けられている。
【0018】
輸液用チューブTは、上方に延びた後に屈曲して水平方向に延びている。この水平部分には第2の熱伝導体42が取り付けられている。輸液用チューブTは、水平方向に延びた後に屈曲して下方に延び、箱体3の底面の挿通孔32から箱体3の外部に延びている。つまり、輸液用チューブTにおける第2の熱伝導体42の取付個所は水平に配置され、また、他の箇所よりも上方に位置している。このようにして箱体3の内部に輸液用チューブTが取り付けられた状態で、流量測定が行われる。
【0019】
第1の温度センサ51及び第2の温度センサ52からは検知温度を示す検知信号が出力されており、演算制御部71は、この検知信号を記憶部76に記憶する。演算制御部71は、第2の温度センサ52から入力された検知信号が示す検知温度、及び、記憶部76に記憶された目標温度Tの情報を含む制御信号を、発熱制御装置77に対して出力する。この制御信号を入力された発熱制御装置77は、検知温度及び目標温度Tの情報に基づき、発熱体6を発熱させる。そして、第2の温度センサ52での検知温度が目標温度Tに達して安定すると、演算制御部71は、流量測定が可能な状態であることを示唆する制御信号を表示部73に供給する。この制御信号を受信した表示部73は、この制御信号に対応する表示を行う。一方、発熱制御装置77は、発熱体6を発熱させている間、積分制御に用いた積分回路からの出力電圧値を示す出力電圧信号を出力する。これにより、輸液用チューブT内を第2の熱伝導体42の取付箇所まで流れてきた被測定流体により冷却される熱伝導体42を加熱する際に用いられた電圧値の情報が演算制御部71に供給される。
【0020】
演算制御部71は、発熱制御装置77から入力された出力電圧信号、及び、各温度センサ51,52から入力された検知信号を所定の時間間隔でサンプリングし、記憶部76に記憶された電流値情報や比熱や比重等の情報に基づき、上記式(1)の演算を実行し、流量R(m/h)を算出する。そして、算出した流量を、演算に用いた各種情報及び時計部75での計時結果と共に、記憶部76に記憶する。記憶部76に記憶された各情報は、入力部72からの信号入力等に基づく要求に応じて、表示部73に表示される。
【0021】
本実施形態による熱式質量流量センサー1によれば、被測定流体が流れる輸液用チューブTに接触した各熱伝導体41,42の温度が温度センサ51,52により検知され、輸液用チューブTにおける被測定流体の流路の下流側に位置する管路に接触した熱伝導体42が加熱される。この加熱は、第2の温度センサ52による検知温度が第1の温度センサ51による検知温度よりも高い目標温度Tとなるように制御され、加熱に用いられた熱量に基づいて、輸液用チューブTを流れた被測定流体の流量が算出される。
【0022】
手術中に頻繁に行われる動脈血採血の度に注射を行うと患者や医師の負担になることから、一度採血用注射を行うと、その針を動脈に刺したまま確保することが、一般的に行われている。その際には、血液凝固を抑えるために微量(1ml/hr〜3ml/hr)のヘパリン添加生理食塩水の注入が持続的に行われる。動脈への輸液は、動脈圧よりも高い圧力を加えて行われるために滴下筒を使用する事ができず、しかも、このような高い圧力の下で1ml/hr〜3ml/hrといった微量の液体の流量を、病原体等への感染の虞を避けた状態で監視するのは困難であった。このため、従来は、動脈へ輸液される液体の流量監視は行われていなかった。また、頭蓋内に溜まって脳を圧迫している脳脊髄液を一時的に排出する治療を行う際に、排出される脳脊髄液の流量が約20ml/hrと微量であることから、従来は、排出の際の流量の常時監視は行われていなかった。
【0023】
しかしながら、本実施形態による熱式質量流量センサー1によれば、輸液用チューブTに接触させた熱伝導体41,42を介して輸液用チューブT内の被測定流体の温度の検知や加熱を行うので、測定の度に各熱伝導体41,42を輸液用チューブTに着脱することにより、人体から排出された流体や人体に注入する流体等の病原体等に感染するおそれのあるヘパリン添加生理食塩水や、治療用の脳脊髄液等の輸液や排液でも、注入や排出に用いる輸液用チューブT等の配管を測定用の配管としてそのまま用いて、精度の高い測定を行うことが可能となる。
【0024】
また、本実施形態による熱式質量流量センサー1によれば、輸液用チューブTにおける少なくとも各測定個所を結ぶ管路が、各熱伝導体41,42及び各センサ51,52と共に、断熱部材36a,36bで覆われているので、輸液用チューブTや熱伝導体41,42から外部に漏れる熱量を断熱部材36a,36bにより抑えることができることから、被測定流体の質量の算出精度を高めることができる。
【0025】
また、箱体3の内部が全て断熱部材36a,36bで埋められて空洞が殆どないため、空洞がある場合に生じる空気の対流や発熱体6等からの輻射による熱の伝導等が第1の温度センサー51の計測結果に影響を及ぼすことを避けることができる。また、第1の温度センサ51と第2の温度センサ52とを結ぶ輸液用チューブT内で生じる被測定流体の温度差に基づき発生する対流を抑えることができる。このため、正確な温度計測を行うことができる。
【0026】
また、本実施形態による熱式質量流量センサー1によれば、測定個所の管路がその前後の管路よりも上方に位置していることから、縦方向に沿って配置された管路に各熱伝導体41,42が位置している場合のように、輸液用チューブT内の被測定流体に生じる温度差により生じる密度差を解消する方向、つまり、被測定流体における温度の高い密度の小さい部分が上方に移動し温度の低い密度の高い部分が下方に移動するのに伴い対流が発生するのを抑えて、第2の温度センサ52による測定の誤差を抑えることができる。このため、被測定流体の質量の算出精度を高めることができる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は本発明の第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aが備える温度検出部2aの構成の概略を示す図であり、(a)は正面から内部を見た図、(b)は(a)のB−B線での温度検出部2aの断面を示す図である。
【0028】
本実施形態の熱式質量流量センサー1aは、上記第1の実施形態の熱式質量流量センサー1と同様に、熱伝導体41,42、第1の温度センサ51、第2の温度センサ52、及び発熱体6を備える温度検出部2aを箱体3の内部に収容して構成されている。熱伝導体41,42、第1の温度センサ51、第2の温度センサ52、発熱体6、及び箱体3は、熱式質量流量センサー1が備えるものと同様の構成を有している。熱伝導体41,42、第1の温度センサ51、第2の温度センサ52、及び発熱体6は、一方の断熱部材36aが備える収容凹部361に収容されている。また、箱体3は、上記第1の実施形態の箱体3とほぼ同様の構成を有しているが、挿通孔31,32に代えて、上壁に設けられた挿通孔33、及び、下壁に設けられた挿通孔34を備えている。
【0029】
また、熱式質量流量センサー1aの温度検出部2aは、電子冷却素子81、調整用熱伝導体82、放熱用熱伝導体83、及び調整用温度センサ84を備えている。放熱用熱伝導体83は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属から構成されており、矩形の平板状を呈している。断熱部材36aには開口35が設けられており、放熱用熱伝導体83はこの開口35から背面側を一部露出させて開口35内に取り付けられている。電子冷却素子81は、例えば、ペルチェ素子から構成されており、放熱用熱伝導体83と同様の形状を有している。電子冷却素子81は、その背面を放熱用熱伝導体83の前面に合わせて放熱用熱伝導体83に取り付けられている。
【0030】
調整用熱伝導体82は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属から構成されており、平板体の中央部に矩形の開口83aを設けた形状を呈している。調整用熱伝導体82は、その背面を電子冷却素子81の前面に合わせて電子冷却素子81に取り付けられている。また、調整用温度センサ84は、温度検出用の検出部を調整用熱伝導体82の前面に接触させている。また、上述した第2の熱伝導体42は、調整用熱伝導体82の開口82aの内側に位置して、電子冷却素子81の前面側にチューブ収容部42aを向け、電子冷却素子81の前面と離間して配置されている。
【0031】
また、熱式質量流量センサー1aは、図2に示す発熱制御装置77の他に、図示しない温度調整装置も備える。温度調整装置は、端末装置7から入力される制御信号に従い、PID制御を行い、電子冷却素子81による温度調整を行う。また、演算制御部71は、発熱制御装置77による発熱体6の発熱の他に、温度調整装置による電子冷却素子81での温度調整も制御する。温度調整装置による温度調整は、第1の温度センサ51からの入力信号が示す温度を目標温度Tとし、調整用温度センサ84からの入力信号が示す温度が目標温度Tと一致するように行われる。なお、第2の熱伝導体42は、上記第1の実施形態と同様に目標温度Tで加熱されている。
【0032】
次に、熱式質量流量センサー1aを用いた被測定流体の流量測定の動作について説明する。
熱式質量流量センサー1aで流量測定を行う場合には、第1の実施形態の熱式質量流量センサー1の場合と同様に、第1の熱伝導体41のチューブ収容部41aに流路の上流側に位置する輸液用チューブT、第2の熱伝導体42のチューブ収容部42aに流路の下流側に位置する輸液用チューブTを、それぞれ嵌め込む。この状態では、図3に示すように、輸液用チューブTにおける第2の熱伝導体42に嵌め込まれた箇所は、電子冷却素子81及び調整用熱伝導体82に周囲を囲まれている。また、第2の熱伝導体42の取付箇所に対して被測定流体の上流側及び下流側に位置する輸液用チューブTは、放熱用熱伝導体83に近接して位置している。
【0033】
第1の実施形態の熱式質量流量センサー1の場合と同様に、熱伝導体41,42、第1の温度センサ51,第2の温度センサ52、発熱体6、及びこれらの取り付けられた輸液用チューブTは、断熱部材36aの収容凹部361に収容され、箱体3を構成する断熱部材36a,36bで覆われている。また、輸液用チューブTにおける第2の熱伝導体42に取り付けられた個所の配置、及び、第1の熱伝導体41の取り付け箇所との位置関係も、第1の実施形態の熱式質量流量センサー1の場合と同様になっている。さらに、本実施形態の熱式質量流量センサー1aでは、電子冷却素子81、調整用熱伝導体82、放熱用熱伝導体83、及び調整用温度センサ84も、断熱部材36aの開口35に収容されて、断熱部材36aで覆われている。
【0034】
また、熱式質量流量センサー1aでは、箱体3の内部の輸液用チューブTの配置形状が、第1の実施形態の熱式質量流量センサー1の場合と異なっている。つまり、本実施形態では、箱体3の上壁に設けられた挿通孔33から輸液用チューブTが箱体3の内部に進入し、そのまま箱体3の底面付近まで下方に延びている。この経路の途中にある輸液用チューブTに第1の熱伝導体41が取り付けられている。輸液用チューブTは、箱体3の底面付近まで下方に延びた後、屈曲して水平方向に延びている。そして、更に屈曲して斜め上方に向けて延びた後に屈曲して水平方向に延びている。この水平部分の輸液用チューブTには、第2の熱伝導体42が取り付けられている。輸液用チューブTは、水平方向に延びた後、屈曲して下方に延び、箱体3の下壁に設けられた挿通孔34を通って外部に出ている。このため、挿通孔33から箱体3の内部に進入して箱体3の底面付近まで延びる輸液用チューブT内の被測定流体に作用する重力により、熱伝導体42の取付箇所を通過する前の被測定流体の逆流が抑えられる。一方、熱伝導体42の取付箇所から下方に延びて挿通孔34から箱体3の外部に出た輸液用チューブT内の被測定流体に作用する重力により、熱伝導体42の取付箇所を通過した被測定流体の逆流が抑えられる。このため、被測定流体の流量の測定精度を高めることができる。
【0035】
演算制御部71は、上記第1の実施形態の場合と同様に、発熱制御装置77の制御を行って発熱体6を発熱させ、輸液用チューブT内を流れる被測定流体の流量を測定する。また、演算制御部71は、第1の温度センサ51及び調整温度センサ84からの入力信号が示す各検知温度、及び、調整用温度センサ84の目標温度Tの情報を含む制御信号を、温度調整装置に対して出力する。本実施形態では、目標温度Tが第1の温度センサ51での検知温度と同じ値に設定されている。この制御信号を入力された温度調整装置は、各検知温度及び目標温度Tの情報に基づき制御を行い、電子冷却素子81による温度調整を行わせる。これにより、第2の熱伝導体42の周囲の温度が、第1の熱伝導体の取付箇所の輸液用チューブT内を流通する被測定流体の温度と同じ温度に保たれる。
【0036】
本実施形態による熱式質量流量センサー1aによれば、上記第1の実施形態による熱式質量流量センサー1と同様の作用効果を得られる。しかも、本実施形態による熱式質量流量センサー1aによれば、調整用温度センサ84での検知温度が第1の温度センサ51での検知温度と一致するように温度調整が行われ、輸液用チューブTにおける熱伝導体42が接触した管路の周囲の温度が、熱伝導体41が接触した管路を流れる被測定流体の温度と同じ温度に保たれる。このため、熱伝導体41,42や輸液用チューブTによって加熱された外気の影響等による温度変化を抑えて、被測定流体の加熱に必要な熱量を精度良く測定して、被測定流体の流量の算出精度を高めることができる。
【0037】
なお、各上記実施形態の説明では、熱伝導体41,42がその右側面を円弧状に切り欠いて形成されたチューブ収容部41a,42aを備えている場合について説明した。しかしながら、取り付けられた輸液用チューブTの外周面に接触する接触面を備えるのであれば、その形状は任意である。
【0038】
上記各実施形態の説明では、輸液用チューブTにおける第2の熱伝導体42が取り付けられた箇所に被測定流体が流れていない流量“0”の状態、つまり、第2の熱伝導体42のみが加熱されている状態での積分回路からの出力電圧値を電圧値情報、そのときの電流値を電流値情報として、それぞれ測定の度に記憶部76に記憶し、演算に用いる場合について説明した。しかしながら、これらの情報を予め記憶部76に記憶しておき、積分回路からの出力電圧信号とこれらの記憶情報とに基づき、発熱体6の発熱に用いた電力量を算出する構成としてもよい。また、熱伝導体41の取付箇所と熱伝導体41の取付箇所とを結ぶ輸液用チューブTを断熱材で覆う構成としてもよい。この構成によれば、輸液用チューブTの周囲の温度の影響を抑えて被測定流体の測定精度を高めることができる。
【0039】
また、第2の熱伝導体42の取付箇所の管路がその前後の管路よりも上方に位置しているのであれば、箱体3の内部での輸液用チューブTの配置態様は任意であり、例えば、図4に示すように第1の熱伝導体41の取付箇所と第2の熱伝導体42の取付箇所とを結ぶ輸液用チューブTを円弧状を呈するように配置してもよい。
【0040】
図5は、熱伝導体41,42の取付位置及び輸液用チューブTの配置態様と、目標温度Tに対する誤差との関係を示すグラフである。図5に示す各データL1〜L5は、上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aを用いて、第1の温度センサ51での検知温度よりも5℃高い温度を目標温度Tとし、被測定流体を流量6.4(ml/hr)で流して計測を行った場合に得られたものである。なお、被測定流体としては生理食塩水,輸液用チューブTとしてはテルモ株式会社製テルフュージョン(登録商標)ポンプ用輸液セットTS-PA300L41をそれぞれ用い、熱伝導体41の取付位置に対する熱伝導体42の取付位置の高さHは50(mm)に設定してある。図5(a)に示すデータL1〜L3は、上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aを底面を下にして箱体3を配置した場合に得られたデータである。また、図5(b)に示すデータL4,L5は、上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aを左側面を下にして箱体3を配置した場合(L5)、及び、背面を下にして箱体3を配置した場合(L4)に得られたデータである。各データは、横軸に時間、縦軸に温度誤差をそれぞれ示している。
【0041】
箱体3を左側面を下にして配置した場合のデータL5からは、箱体3の内部に配置された輸液用チューブTの経路の最も下に位置する箇所に第1の熱伝導体41が取り付けられ、そこから最も上に位置する箇所に向けて上昇していく輸液用チューブTの経路の最も下に位置する箇所に第2の熱伝導体42が取り付けられた場合の測定精度を知ることができる。箱体3を背面を下にして配置した場合のデータL4からは、箱体3内に水平に配置された輸液用チューブTに熱伝導体41,42を取り付けた場合の測定精度を知ることができる。なお、図5(a)のグラフは、3回分の計測結果のデータを示している。
【0042】
図5(a)に示すグラフに示す各データL1〜L3では、3回の計測とも測定温度の誤差がほぼ約0.01℃の範囲内に収まった安定した計測結果を得られている。また、約0.01℃の範囲を超えた最大値も約0.02℃の範囲には収まっている。これに対して、図5(b)に示すグラフに示す各データL4,L5では、何れも測定温度の誤差の変動が大きく、しかも、箱体3の左側面を下にして配置した場合(L5)には、約0.03℃を超える測定温度の誤差が生じている。また、箱体3の背面を下にして配置した場合(L4)には、箱体3の左側面を下にして配置したときのような大きな誤差は生じていないものの、図5(a)に示すデータに比べて約0.01℃近い誤差が頻繁に発生している。
【0043】
このため、上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aのように、第2の熱伝導体42の取付箇所の輸液用チューブTを、その前後の輸液用チューブTよりも上方に配置することにより、測定温度の誤差、つまり、測定流量の誤差を抑えた計測結果を安定して得られることを確認することができる。
【0044】
図6は、輸液用チューブTを流れる被測定流体の流量と、発熱制御装置77が備える積分回路からの出力電圧値との関係を示すグラフである。図6に示す各データL1〜L5は、上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aを用いた流量測定時に、第2の熱伝導体42の取付箇所の周囲の温度(調整用温度センサ84での検知温度)が、第1の温度センサ51での検知温度に対して0.0℃,−0.5℃,−1.0℃の温度差を有する場合に得られたデータである。なお、計測条件は、図5を用いて説明した計測と同じである。
【0045】
同図において、データL1は温度差が0.0℃,データL2〜L4は温度差が−0.5℃,データL5は温度差が−1.0℃である場合の計測データである。各データL1〜L5は、横軸に流量を、縦軸に出力電圧値をそれぞれ示している。図6に示すように、データL1〜L5の何れも、積分回路からの出力電圧値は、流量0(ml/hr)〜流量4(ml/hr)程度まで流量の増加に伴って急激に高くなった後、流量5(ml/hr)位からは流量の増加に伴って緩やかに高くなっている。ただ、同じ流量に対する出力電圧値は、データL1,データL2〜L4,データL5の順で高いことが確認できる。
つまり、積分回路からの出力電圧値が同じでも、第2の熱伝導体42の周囲の温度と第1の温度センサ51での検知温度との温度差によって、測定される流量値が違うことが確認できる。具体的には、出力電圧値が約5.75(V)のときの流量を見ると、データL1では計測流量値が約7(ml/hr)、データL2〜L4では計測流量値が約3(ml/hr)、データL5では計測流量値が約1(ml/hr)となっている。このため、第2の熱伝導体42の取付箇所の周囲の温度と、第1の温度センサ51での検知温度との間の温度差によって流量の計測結果に大きな差が出ること、つまり、第2の熱伝導体42の取付箇所の周囲の温度変化に計測結果が敏感に反応することを確認できる。
【0046】
従って、調整用温度センサ84での検知温度が第1の温度センサ51での検知温度と一致するように温度調整を行う上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aによれば、このような温度調整を行わない熱式質量流量センサーに比べて精度の高い測定を行うことができることが明らかになった。なお、調整用温度センサ84での検知温度は、一定の温度を保つことができるのであれば、第1の温度センサ51での検知温度と一致しなくてもよく、第1の温度センサ51での検知温度や第2の温度センサ52での検知温度との関係から流量を算出することが可能な任意の温度、例えば、第1の温度センサ51での検知温度に比例した温度を設定することができる。ただし、流量算出のための処理負担を軽減できることや、測定精度を高められることから、調整用温度センサ84での検知温度は、第1の温度センサ51での検知温度と一致させることが好ましい。
【0047】
図7は、輸液用チューブTを流れる被測定流体の流量と、発熱制御装置77が備える積分回路からの出力電圧値との関係を示すグラフである。図7に示す各データL1,L2は、上記第2の実施形態の熱式質量流量センサー1aにおいて、第2の熱伝導体42の長さが、5.0mm,20.0mmの各場合に流量測定を行って得られたデータである。なお、計測条件は、図5を用いて説明した計測と同じである。
【0048】
同図において、データL1は第2の熱伝導体42の長さが5.0mmの場合,データL2は第2の熱伝導体42の長さが20.0mmの場合に得られた計測データである。各データL1,L2は、横軸に流量を、縦軸に出力電圧値をそれぞれ示している。図7に示すように、データL1,L2の何れも、積分回路からの出力電圧値は、流量の増加に伴って緩やかに高くなっている。ただ、データL2の方がデータL1に比べて、同じ流量に対する出力電圧値が高いことが確認できる。
【0049】
また、データL1では、計測流量値が約6(ml/hr)を超えると、積分回路からの出力電圧値に大きな変化が見られなくなることが確認できる。また、計測流量値が約10(ml/hr)を超えると、流量を増加させても積分回路からの出力電圧値に殆ど変化が見られなくなり、流量の計測が困難であることが予想される。これに対して、データL2では、計測流量値が約20(ml/hr)になっても、流量の変化に応じた出力電圧値の変化を確認することができる。これは、第2の熱伝導体42でも長さが短い場合には、第2の熱伝導体42による加熱が十分に行われる前に、第2の熱伝導体42の取付箇所を被測定流体が通過してしまうのに対し、第2の熱伝導体42の長さが長い場合には、第2の熱伝導体42の取付箇所を通過する被測定流体を十分に加熱できるためであると考えられる。
【0050】
この計測結果から、計測できる流量範囲が、第2の熱伝導体42の長さによって異なることが確認できる。被測定流体の流量に対して第2の熱伝導体42の長さが短い場合には、被測定流体を目標温度Tまで十分に加熱できずに、誤差が生じ易くなることが予想される。逆に、被測定流体の流量に対して第2の熱伝導体42の長さが長い場合には、被測定流体を目標温度Tまで十分に加熱して精度の高い測定を行うことができるものの、第2の熱伝導体42の加熱に時間がかかることから、計測を開始できる状態になるまでに時間がかかることが予想される。このため、第2の熱伝導体42の長さは、目的とする計測流量に合わせる必要があることが確認できる。
【0051】
また、計測結果から、第2の熱伝導体42の長さが長い程、被測定流体を加熱するのに多くの熱量が用いられることも確認することができる。これは、第2の熱伝導体42等から外部に熱が漏れることの計測結果への影響が、第2の熱伝導体42の長さが長い程大きいためであると考えられる。
【0052】
また、積分回路からの出力電圧値と被測定流体の流量との関係を表すデータを予め記憶しておき、このデータを参照して流量測定を行う構成によれば、被測定流体以外のものが加熱されることによる計測精度への影響を抑えられると考えられる。このため、上記各実施形態の熱式質量流量センサー1,1aにおいては、第2の熱伝導体42として、同じ太さでも長さが長いものを用いる程、被測定流体の流量変化に対する積分回路からの出力電圧値の変動が大きく、計測精度を高めることができ、また、広い範囲の流量を精度良く測定できることが確認できる。また、被測定流体の計測流量を予め予測できるときには、その流量に適した長さの第2の熱伝導体42を用いる構成とすることによっても、測定精度を高められることが確認できる。
【0053】
具体的には、動脈路確保に使用するヘパリン添加生理食塩水の輸液のように3(ml/hr)以下の流量の計測の場合には熱伝導体42の長さが(長さ5mm)と短くすることができ、その時の流量計測の応答速度は約1〜3分程度と速い。このため、動脈路確保に使用するヘパリン添加生理食塩水の輸液の流量測定には、長さ5mm程度の熱伝導体42を用いるのが好ましいことが確認できる。また、脳脊髄液の頭蓋腔内からの排液では約20(ml/hr)以下の流量なので熱伝導体42の長さは20mm以上とする必要があり、その時の流量計測の応答速度は約5〜10分程度と長くなるが、脳脊髄液の頭蓋腔内からの排液の流量測定には、長さ20mm程度の熱伝導体42を用いるのが好ましいことが確認できる。なお、ここで指摘する熱伝導体42の長さは一般的な外径5mm,内径3mmの輸液用チューブTの場合である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態の熱式質量流量センサーが備える温度検出部の内部を正面から見た図であり、(b)はA−A線での温度検出部の断面を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の熱式質量流量センサーのハードウエア構成の概略を示すブロック図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態の熱式質量流量センサーが備える温度検出部の内部を正面から見た図であり、(b)はB−B線での温度検出部の断面を示す図である。
【図4】輸液用チューブの配置態様の変形例を示す図である。
【図5】輸液用チューブの配置態様と目標温度に対する誤差との関係を示すグラフである。
【図6】輸液用チューブを流れる被測定流体の流量と、発熱制御装置が備える積分回路からの出力電圧値との関係を示す第1のグラフである。
【図7】輸液用チューブを流れる被測定流体の流量と、発熱制御装置が備える積分回路からの出力電圧値との関係を示す第2のグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1 熱式質量流量センサー
2 温度検出部
3 箱体
36a,36b 断熱部材
41,42 熱伝導体
51,52 温度センサ
6 発熱体
81 電子冷却素子
82 調整用熱伝導体
83 放熱用熱伝導体
84 調整用温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流れる配管に接触させられる第1の熱伝導体と、この第1の熱伝導体の温度を検知する第1の温度センサと、前記配管における前記第1の熱伝導体の接触箇所よりも被測定流体の流路の下流側に接触させられる第2の熱伝導体と、この第2の熱伝導体の温度を検知する第2の温度センサと、前記第2の熱伝導体を加熱する加熱手段と、前記第2の温度センサによる検知温度が前記第1の温度センサによる検知温度よりも高い所定の温度となるように前記加熱手段による加熱動作を制御する加熱制御手段と、前記加熱手段による加熱に用いられた熱量から前記配管を流れた被測定流体の流量を算出する流量算出手段とを備え、
前記配管における前記第2の熱伝導体の接触した管路を、その前後の管路よりも上方に配置したことを特徴とする熱式質量流量センサー。
【請求項2】
前記配管における少なくとも前記第1の熱伝導体の接触箇所と前記第2の熱伝導体の接触箇所とを結ぶ管路を、各前記熱伝導体及び各前記温度センサと共に覆って外部と断熱する断熱部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱式質量流量センサー。
【請求項3】
前記断熱部材は、前記配管が内部に入る第1の挿通孔と、前記第1の挿通孔から内部に入った前記配管が外部に出る第2の挿通孔とを備え、
前記第1の挿通孔は、前記第2の挿通孔よりも上方に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱式質量流量センサー。
【請求項4】
前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度を調整する温度調整手段と、前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度を検知する調整温度センサと、前記第1の温度センサでの検知温度と前記調整温度センサによる検知温度とが一致するように前記温度調整手段による温度調整動作を制御する調整温度制御手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の熱式質量流量センサー。
【請求項5】
被測定流体が流れる配管に第1の熱伝導体を接触させると共に、前記配管における前記第1の熱伝導体の接触箇所よりも被測定流体の流路の下流側に第2の熱伝導体を接触させて、その接触箇所を前後の管路よりも上方に固定して配置し、
前記第1の熱伝導体の温度よりも高い所定の温度となるように前記第2の熱伝導体を加熱しながら前記配管に被測定流体を流通させ、
前記配管における前記第2の熱伝導体の接触箇所の管路を前記被測定流体が流通している間、前記第2の熱伝導体の加熱に用いられた熱量に基づき前記配管を流れた被測定流体の流量を算出することを特徴とする流量測定方法。
【請求項6】
前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度が前記第1の熱伝導体の温度と一致するように前記第2の熱伝導体の接触した管路の周囲の温度を調整することを特徴とする請求項5に記載の流量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−249662(P2008−249662A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94794(P2007−94794)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【Fターム(参考)】