説明

熱応答性ポリウレタンテープ

【課題】光学的な面での優れた熱応答性を示すテープを提供し、医療用テープなどに適したテープを提供すること。
【解決手段】融点が40〜70℃で数平均分子量が800〜10000のポリエステルポリオールと、3官能以上の多官能イソシアネートとが、前記ポリエステルポリオールの水酸基の数に対する前記多官能イソシアネートのイソシアネート基の数の比率が0.6〜0.95となるように反応されてなり、光透過性に可逆的な熱応答性を示し、前記ポリエステルポリオールの融点以上の温度に加熱した際に光透過性が増大し、前記融点未満に冷却した際に光透過性が低下する前記熱応答性を示す熱応答性ポリウレタンからなることを特徴とする熱応答性ポリウレタンテープ等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応答性ポリウレタンテープに関し、特には医療用テープなどに適した熱応答性ポリウレタンテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用テープは、人や人以外のペットなどの動物の怪我を治療する目的で広く用いられている。
例えば、切り傷や擦過傷等の外傷を負った際には、傷口を覆うようにガーゼ包帯を巻き付けて雑菌等の侵入を防止するような傷口保護の措置が採られており、突き指や捻挫等を負った際には、バンデージテープと呼ばれる粘着テープを患部に巻き付けて患部を固定して保護するような措置が採られている。
さらには、骨折等の際には、水硬性キャスティングテープと呼ばれる医療用テープを水に濡らしながら骨折箇所に巻き付けて所謂「ギプス」と呼ばれるものを形成させて骨折箇所を固定することが行われている。
【0003】
ところで、近年、常温固体でありながら所定温度以上に加熱された際に粘土状となって易変形性が発揮され、再び常温に冷却された際に元の固体状態となるような、温度に対して可逆的に性状を変化させる熱応答性物質が種々の用途において利用されている。
そして、下記特許文献1には、加熱によって易変形性を付与することができる熱応答性ポリウレタンシートを前記ギブスのような患部の固定保護用途に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表97/003130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような熱応答性を有するシートは、加熱・冷却といった単純な操作によってその性状を変化させることができることから応用範囲が広く、特許文献1において示されているような機械的特性のみならず電気的特性や光学特性において熱応答性を示すものの開発が期待されている。
【0006】
例えば、医療用テープにおいては、一旦、患部に巻き付けてしまうと、これを取り除かない限り患部の様子を目視観察することが困難であることから、所定温度上昇に加熱することで透明性が発揮され、患部の様子が外部から視認されやすいものを得ることができれば、患部の様子を観察するために包帯やギプスを取り替える手間を削減でき、医療従事者や患者の負担を軽減させ得る。
また、このような光透過性において熱応答性を示すテープが得られれば、医療用のみならず一般的な部材の固定に利用されるようなテープとしても有効利用を図ることができる。
しかし、このような光学的な面での優れた熱応答性を示す物質は見出されておらず医療用テープなどに適した熱応答性を示すテープはいまだ見出されてはいない。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、光学的な面での優れた熱応答性を示すテープを提供し、医療用テープなどに適したテープを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、所定のポリオールとイソシアネートとを反応させてなるポリウレタンが、光透過性において優れた熱応答性を示すことを見出し本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
即ち、上記課題を解決するため熱応答性ポリウレタンテープに係る本発明は、融点が40〜70℃で数平均分子量が800〜10000のポリエステルポリオールと、3官能以上の多官能イソシアネートとが、前記ポリエステルポリオールの水酸基の数に対する前記多官能イソシアネートのイソシアネート基の数の比率が0.6〜0.95となるように反応されてなり、光透過性に可逆的な熱応答性を示し、前記ポリエステルポリオールの融点以上の温度に加熱した際に光透過性が増大し、前記融点未満に冷却した際に光透過性が低下する前記熱応答性を示す熱応答性ポリウレタンからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、比較的数平均分子量が小さく、40〜70℃の範囲内に融点を存在させるポリエステルポリオールが熱応答性ポリウレタンテープを形成する成分として採用されている。
上記のようなポリエステルポリオールは、一般的にワックスライクな性状を示し、融点未満において白濁した不透明な状態でありながら融点以上の温度においては透明性の高い液体となる。
そして、上記のようなポリエステルポリオールは、多官能イソシアネートと所定の割合で反応されることによって前記融点以上の温度における流動性が抑制され、熱応答性ポリウレタンテープを形成させた際にそのテープ形状を保持させつつ透明性を発揮させることができる。
即ち、本発明の熱応答性ポリウレタンテープは、光透過性に可逆的な熱応答性を示し、前記ポリエステルポリオールの融点以上の温度に加熱した際に光透過性が増大し、前記融点未満に冷却した際に光透過性が低下する前記熱応答性を示すことから熱応答性を利用した医療用テープなどに有効利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、骨折箇所を固定して保護するためのギプスの形成に用いられる医療用テープを例に本発明の熱応答性ポリウレタンテープの実施形態を説明する。
【0012】
本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープは、融点が40〜70℃で数平均分子量が800〜10000のポリエステルポリオールと、3官能以上の多官能イソシアネートとが、前記ポリエステルポリオールの水酸基の数(XOH)に対する前記多官能イソシアネートのイソシアネート基の数(XNCO)の比率(XNCO/XOH)が0.6〜0.95となるように反応された熱応答性ポリウレタンによって所定厚みに形成されたもので光透過性に可逆的な熱応答性を示し、前記ポリエステルポリオールの融点以上の温度に加熱した際に光透過性が増大し、前記融点未満に冷却した際に光透過性が低下する熱応答性を示すものである。
【0013】
また、本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープは、前記融点未満の温度(例えば、23℃)において樹脂ライクで剛性を示すとともに前記融点以上の温度においては、ゴムライクでゴム弾性を示し、この樹脂ライクな状態とゴムライクな状態とを温度によって可逆的に変化させる熱応答性をも有するものである。
即ち、本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープは、巻き付け容易な柔らかさとなるように加熱されて患部に巻き付けられた後で常温付近に冷却されることによって硬質な状態に戻ってギプスとして機能するものである。
【0014】
まず、熱応答性ポリウレタンテープを形成する熱応答性ポリウレタンの原材料について説明する。
【0015】
本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープの形成に用いられる前記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピクリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等のジカルボン酸等の多価カルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等のポリオールとの反応により得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクタムを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープに用いられるポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオールが好ましく、該ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ダイセル化学工業社から「PLACCEL200シリーズ」として市販のものの内、融点が40〜70℃の2官能のポリカプロラクトンジオールを採用することができ、「PLACCEL210」(メーカー公表分子量:1000)、「PLACCEL220」(メーカー公表分子量:2000)、「PLACCEL230」(メーカー公表分子量:3000)、「PLACCEL240」(メーカー公表分子量:4000)などの商品名のものを採用することができる。
【0017】
なお、本実施形態において融点が40〜70℃のポリエステルポリオールを熱応答性ポリウレタンの構成成分として採用しているのは、このポリエステルポリオールの融点が、熱応答性ポリウレタンテープに熱応答性を発揮させる温度と略等しくなるためである。
即ち、このポリエステルポリオールの融点が40℃以上とされているのは、融点が40℃未満となって一般的に体験しうる気温や人間の標準体温に近くなるとギプスを形成させた際に熱応答性ポリウレタンテープが柔軟になって、例えば、骨折箇所を十分に固定したりすることができなくなるおそれを有するためである。
また、このポリエステルポリオールの融点が70℃以上とされているのは、融点が70℃を超えると熱応答性を発揮させるのに熱応答性ポリウレタンテープを高温に加熱しなければならなくなり、場合によっては、ギプスの装着者に火傷を負わせないように慎重な作業が要求されるおそれを有するためである。
【0018】
また、本実施形態において数平均分子量が800〜10000のポリエステルポリオールを熱応答性ポリウレタンの構成成分として採用しているのは、一般にポリエステルポリオールの数平均分子量が、該ポリエステルポリオールとイソシアネートとを反応して得られるポリウレタンの強度や該ポリエステルポリオールの溶融状態における粘度等と正の相関関係を示す傾向にあるためで、熱応答性ポリウレタンテープに十分な強度を付与し得るとともに適度な溶融粘度を発揮させて熱応答性ポリウレタンテープの製造時における作業性を良好にさせ得るためである。
【0019】
なお、ポリエステルポリオールの融点が40〜70℃であることについてはJIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法によって確認することができ、ポリエステルポリオールの数平均分子量が800〜10000であることについては、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によって確認することができる。
【0020】
前記ポリエステルポリオールとともに熱応答性ポリウレタンを構成させるための3官能以上の多官能イソシアネートとしては、例えば、一般的な2官能イソシアネートを主たる出発材料としたものが挙げられ、2官能イソシアネートの3量体(ビウレット、アロファネート、あるいは、イソシアヌレート)、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールとの付加物、フロログリシン等の3官能フェノールとの付加物あるいは、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
なお、3官能以上の多官能イソシアネートの出発材料となる2官能イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族2官能イソシアネート;1,3−トリメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、水添p−キシリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂肪族2官能イソシアネート等が挙げられる。
【0021】
なお、本実施形態においてこのような3官能以上の多官能イソシアネートを用いるのは、官能基が3個以上存在することによって、前記ポリエステルポリオールとの反応後に得られる熱応答性ポリウレタンに三次元構造を付与しやすく、熱応答性ポリウレタンの架橋度をより向上させ易いためである。
そして、このことによって、熱応答性ポリウレタンテープに機械的強度や耐薬品性等を容易に付与することが可能になるためである。
このような点において、上記のような多官能イソシアネートの中でも、熱応答性ポリウレタンテープに対する優れた機械的強度の付与や柔軟性の付与が容易である点において、ジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る熱応答性ポリウレタンテープは、前記多官能イソシアネートと前記ポリエステルポリオールとを反応させた熱応答性ポリウレタンによって形成させることができものではあるが、ポリエステルポリオールと多官能イソシアネートとの官能基の比率、即ち、イソシアネート基と水酸基との比率(以下「NCO/OH価」ともいう)が過度に高い値になるとフリーなイソシアネート基が水分と反応して揮発成分を発生させたり、熱応答性ポリウレタンが脆弱なものとなるおそれを有する。
一方で「NCO/OH価」が過度に低い値となると、熱応答性ポリウレタンの架橋密度が不十分となって熱応答性ポリウレタンテープが加熱時に形状保持できなくなるおそれを有する。
このようなことから、熱応答性ポリウレタンテープに適度な強度と柔軟性を付与し得る点において、通常、前記「NCO/OH価」は、0.6以上0.95未満とされる。
【0023】
なお、前記ポリエステルポリオールと前記多官能イソシアネートとを反応させて熱応答性ポリウレタンテープを作製するためには、一般的なテープ作製方法と同様の方法を採用することができる。
例えば、長尺帯状の離型処理フィルムを加熱炉中を走行した後に巻取り装置に巻き取られるように配置するとともに前記ポリエステルポリオールと前記多官能イソシアネートとを、必要に応じて金属酸化物、有機金属化合物、アミン系触媒といった重合触媒を加えた上で混合攪拌して混合液を作製し、前記離型処理フィルムを走行させながら該離型処理フィルムの表面にダイコーターなどを使って前記混合液を連続的に押出させ、前記加熱炉を通過する過程において前記混合液中のポリエステルポリオールと多官能イソシアネートとを反応させて広幅なシートを形成させ、該広幅シートを所定幅にスリット加工するなどして熱応答性ポリウレタンテープを作製することができる。
【0024】
なお、熱応答性ポリウレタンテープは、ギプスなどの形成に有用な医療用テープとして用いられるものであるが、この種の用途に用いる場合には、熱応答性ポリウレタンテープを、23℃の条件下で測定したヘイズが80〜99.9%となり、且つ、ポリエステルポリオールの融点以上の温度(例えば、60℃)で測定したヘイズが0〜40%となるように調整することが好ましい。
このような光透過性の調整は、熱応答性ポリウレタンテープの厚みによって調整する方法の他に、熱応答性ポリウレタンテープに無機フィラーや着色剤などの添加剤をさらに含有させて調整することができる。
この厚みによって熱応答性ポリウレタンテープの光透過性を調整するのに際しては、過度に厚みを減少させると熱応答性ポリウレタンテープの強度が極端に低くなるおそれを有するとともに過度に厚くすると、いかに温度が高くなるように加熱しても十分な透明性が発揮されなくなるおそれを有する。
このような観点から、熱応答性ポリウレタンテープは0.1mm以上5mm以下の厚みとすることが好ましく、0.2mm以上4mm以下の厚みとすることがより好ましく、0.3mm以上3mm以下の厚みとすることが特に好ましい。
なお、前記無機フィラー等の添加剤によって光透過性を調整する場合には、該無機フィラーとしてガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカ、シリカ等を含有させることができる。
【0025】
また、各種特性の調整を図るべく、他の添加剤として、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤、可塑剤、粘性付与剤、熱可塑性樹脂、硬化性オリゴマー等を本発明の効果が著しく損なわれない範囲において適宜熱応答性ポリウレタンテープに含有させることが可能である。
【0026】
また、熱応答性ポリウレタンテープは、患部に巻き付けるのに際しては柔軟であることが求められる一方で、巻き付け時の張力に耐える程度の強度が必要になる。
また、熱応答性ポリウレタンテープには、ギプスとして機能させるのに可能な程度の強度を冷却後において有していることが求められる。
このような点において本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープは、23℃における引張弾性率が100〜500MPaであることが好ましく、60℃における引張弾性率が0.1〜50MPaであることが好ましい。
この熱応答性ポリウレタンテープの引張弾性率は、用いるポリエステルポリオールや多官能イソシアネートの種類、これらの配合割合、及び、前記添加剤(無機フィラー)等によって調整することができる。
【0027】
なお、本実施形態の熱応答性ポリウレタンテープでギプスを形成させた場合には、該ギプスの一部をヘアドライヤー等で加熱することで、当該加熱箇所を透明化させることができ、ギプスを通じて患部を視認させることができる。
従って、患部の確認のために、一旦、ギプスを取り去って、患部確認後に改めて新品のキャスティングテープを用いてギプスを形成させるような、従来の医療用テープを用いる場合に要していた手間を省略させることができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、ギプス用のテープを例示しているが、本発明の熱応答性ポリウレタンテープは、ギプスの形成に用いられるような場合のみならず、人やペットが怪我を負った際に患部を保護するために用いられる医療用テープ全般において同じような効果を得ることができる。
さらには、本発明の熱応答性ポリウレタンテープは、医療用テープのみならず、一般的な部材を固定するための固定用テープとしても利用可能なものである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例における各種特性の測定方法及び評価方法について説明する。
【0030】
(数平均分子量の測定方法)
「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した、ポリスチレン(PS)換算の数平均分子量を意味する。
具体的には、試料25mgをテトラヒドロフラン(THF)5mLに溶解させ(浸透時間:6.0±0.5hr(完全溶解))、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した上で、クロマトグラフを用いて下記の測定条件で測定する。
そして、予め測定し、作成しておいた単分散標準ポリスチレンの検量線から試料の数平均分子量を求めることができる。

使用機器:島津製作所社製、商品名「島津高速液体クロマトグラフProminenceシステム」
基本構成:LC‐20AD、DGU−20A3、CTO−20A、SIL−20A、RID−10A、CBM−20A、LCsolution Ver.1.25、GPCオプションソフト
ガードカラム:島津製作所社製、商品名「SHIMAZU Shim−pack GPC−800P」1本(4.6mmI.D.×10mm)
カラム:島津製作所社製、商品名「SHIMAZU Shim−pack GPC−803」1本(8mmI.D.×300mm)、「SHIMAZU Shim−pack GPC−804」1本(8mmI.D.×300mm)
カラム温度:40℃
検出器セル温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
移動相流量:1.0mL/min
検出器:RI
試料濃度:0.5wt%
注入量:50μL
測定時間:30min

なお、検量線用単分散標準ポリスチレン試料は、昭和電工社製、商品名「shodex」平均分子量が631000、365000、118000、54000、17000、7660、3250、1320を用いた。
具体的には、上記検量線用単分散標準ポリスチレンをA(631000, 118000,17000,3250),B(365000,54000,7660,1320)にグループ分けし、 各4種類の単分散標準ポリスチレンの合計濃度が0.05wt%濃度になるようにTHFで溶解し、該溶液を50μL注入して得られた結果に基づいて検量線を作成した。
即ち、これらの保持時間から較正曲線(三次式)を作成し平均分子量を測定した。
【0031】
(融点測定(DSC測定))
融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法に準拠し測定した。
即ち、測定装置(示差走査熱量計装置 DSC6220型(SIIナノテクノロジー株式会社製)を用い測定容器に試料を6.5±0.5mg充てんして、窒素ガス流量30ml/minのもと、10℃/minの昇温速度で融点を測定した。
融点は得られたDSC曲線の吸熱ピークのピークトップから求められる値とした。
【0032】
(ヘイズ)
ヘイズは、JIS K7136に記載の方法により測定した。
即ち、ヘーズメーターHM−150型(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて50×50mmの試験片を測定した。
【0033】
(引張弾性率測定)
引張弾性率は、JIS K6251:1993「加硫ゴムの引張試験方法」記載の方法により測定した。
具体的には、テンシロン万能試験機 UCT−10T(株式会社オリエンテック製)を用いて、試験片はダンベル状3号形試験片を使用して求めた。
なお、試験に際しては、テンシロン万能試験機付属の恒温槽中の引張試験治具に前記試験片をチャック間隔が50mmとなるように取り付け、常温時は、23℃、高温時は、60℃に加温した雰囲気とし、この雰囲気において試験片を2.5分間保持した後、試験速度500mm/minで引張応力を測定した。
そして、引張弾性率は、歪みが0.5%〜5%の引張応力を基に算出した。
【0034】
(ゴム弾性)
試料を手で引張って、ゴム弾性を感じることができるかどうかを官能評価した。
【0035】
(熱応答性)
常温状態(23℃)と高温状態(60℃)での物性の違いについて以下の基準で熱応答性を判断した。
○:常温時では硬くゴム弾性を有せず、高温時はゴム弾性を有しており、また、白濁から透明への状態変化が見られ、これが可逆的に変化する。
×:常温時、高温時で弾性や透明性に違いがほぼ見られない。
【0036】
(実施例1)
次に記載する方法で熱応答性ポリウレタンを重合した。
ポリカプロカクトンポリオール20g(ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセル240」、数平均分子量4000、融点60℃、水酸基価 28(KOHmg/g))を100mlのフラスコに入れ、該フラスコ内を窒素置換して、60℃で均一に溶解するまで撹拌した。
次に、多官能イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート3量体のイソシアヌレート型ポリイソシアネート)1.47g(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTPA−100」(イソシアネート、NCO%=23.1))、触媒として、有機ジルコニア化合物1.0g(KING Industries社製 K−CAT 4205)を入れ充分に混合撹拌させたのち、この混合液を減圧脱泡し、シリコン処理した100μm厚さのポリエチレンテレフタレート離型フィルム間に挟んで70℃で6時間静置反応させることで、熱応答性ポリウレタンのシートサンプルを作製した。
なお、離型フィルム間での反応に際しては、1mm厚みのシリコーンスペーサーをフィルム間に挟んで、熱応答性ポリウレタンシートの厚みが1mmとなるように調整した。
【0037】
(実施例2)
多官能イソシアネートの量を1.34gに変更した以外は実施例1と同様に熱応答性ポリウレタンのシートサンプルを作製した。
【0038】
(実施例3)
多官能イソシアネートの量を1.24gに変更した以外は実施例1と同様に熱応答性ポリウレタンのシートサンプルを作製した。
【0039】
(実施例4)
ポリカプロカクトンポリオール20gをダイセル化学工業社製の「プラクセル220」(数平均分子量2000、融点56℃、水酸基価56(KOHmg/g))に変更したこと、多官能イソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」)の量を2.68gに変更したこと以外は、実施例1と同様に厚み1mmの熱応答性ポリウレタンシートを作製した。
【0040】
(実施例5)
多官能イソシアネートの量を2.49gに変更した以外は実施例4と同様に熱応答性ポリウレタンのシートサンプルを作製した。
【0041】
(実施例6)
ポリカプロカクトンポリオール20gをダイセル化学工業社製の「プラクセル210」(数平均分子量1000、融点48℃、水酸基価112(KOHmg/g))に変更したこと、多官能イソシアネートの量を5.26gに変更した以外は実施例1と同様に熱応答性ポリウレタンのシートサンプルを作製した。
【0042】
(比較例1)
多官能イソシアネートの量を3.64gに変更した以外は実施例4と同様に熱応答性ポリウレタンのシートサンプルを作製した。
【0043】
(比較例2)
ポリカプロカクトンポリオール20gをダイセル化学工業社製の「プラクセル220AL」(数平均分子量2000、融点0〜5℃)に変更したこと、ポリイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」)の量を2.46gに変更したこと以外は、実施例1と同様に厚み1mmの熱応答性ポリウレタンシートを作製した。
【0044】
(比較例3)
ポリカプロカクトンポリオール20gをダイセル化学工業社製の「プラクセル205」(数平均分子量530、融点35℃)に変更したこと、多官能イソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」)の量を10gに変更したこと以外は、実施例1と同様に厚み1mmの熱応答性ポリウレタンシートを作製した。
【0045】
(比較例4)
ポリカプロカクトンポリオール20gをダイセル化学工業社製の「プラクセル210」(数平均分子量1000、融点48℃、水酸基価112(KOHmg/g))に変更したこと、多官能イソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」)の量を3.60gに変更したこと以外は、実施例1と同様に厚み1mmの熱応答性ポリウレタンシートを作製した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
実施例1〜6では、23℃と60℃におけるヘイズ及びゴム弾性の変化がみられるものの比較例1〜3は、常温時でも高温時でもゴム弾性があり熱応答性を有しているとはいえないものであった。
また、比較例4では十分な形状保持がなされず測定ができない状態であった。
【0049】
(ギプスとしての評価)
実施例1、実施例3、及び、比較例2の熱応答性ポリウレタンテープを60℃の温水に数分間浸しゴム状態に変化させて腕部に巻きつけた。
その後、この腕部に巻き付けたままの状態で熱応答性ポリウレタンテープを室温程度にまで冷却した際に、実施例1、実施例3の熱応答性ポリウレタンテープでは、腕が固定され、ギプスとして機能することが確認された。
一方で、比較例2の熱応答性ポリウレタンテープでは、弾性変形を生じやすく、固定が不十分であった。
次に、ヘアードライヤーで固定部分に局所的な加熱を実施したところ、実施例1、実施例3の熱応答性ポリウレタンテープでは、60℃以上に加熱された時点で白濁から透明になることを確認したが、比較例2の熱応答性ポリウレタンテープでは、元から透明なものとなっていた。
更に、実施例1、実施例3の熱応答性ポリウレタンテープは、固定部分をすべて60℃に再加熱した際には、腕部から容易に取り外せることを確認した。
【0050】
以上のように、本発明によれば光学的な面での優れた熱応答性を示すテープが提供され、医療用テープなどに適したテープが提供され得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が40〜70℃で数平均分子量が800〜10000のポリエステルポリオールと、3官能以上の多官能イソシアネートとが、前記ポリエステルポリオールの水酸基の数に対する前記多官能イソシアネートのイソシアネート基の数の比率が0.6〜0.95となるように反応されてなり、光透過性に可逆的な熱応答性を示し、前記ポリエステルポリオールの融点以上の温度に加熱した際に光透過性が増大し、前記融点未満に冷却した際に光透過性が低下する前記熱応答性を示す熱応答性ポリウレタンからなることを特徴とする熱応答性ポリウレタンテープ。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオールがポリカプロラクトンポリオールである請求項1記載の熱応答性ポリウレタンテープ。
【請求項3】
23℃での引張弾性率が100〜500MPa、60℃での引張弾性率が0.1〜50MPaである請求項1又は2に記載の熱応答性ポリウレタンテープ。
【請求項4】
患部を保護するための医療用テープとして用いられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱応答性ポリウレタンテープ。

【公開番号】特開2013−13444(P2013−13444A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146341(P2011−146341)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】