説明

熱感応性組織癒着防止用組成物およびその製造方法

本発明は、熱感応性組織癒着防止用組成物およびその製造方法に関するものであって、さらに詳しくは、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体、及び前記共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液に架橋剤を加えて化学反応が起こるようにして製造され、選択的に炎症反応を抑制することができる薬剤をさらに含む組成物であって、前記組成物を遠心分離したとき、上層液と下層液の粘度、可視光線領域の吸光度及び安定性の差が10%以内であることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物に関するものであって、さらに、前記組成物を製造することにおいて、反応速度遅延剤を添加せず、スプレー法及び攪拌法を同時に使用することで、架橋の均一化及び粘度の安定性を優れるようにすることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法に関するものである。本発明によると、架橋が均質にされないために生じる繊維状の浮遊物を防止することができるだけでなく、架橋の均一化や粘度の安定化を高めることができ、人体内の負傷部位に非常に均一に塗布可能であり、安定性及び組織癒着防止効果に優れた熱感応性組織癒着防止用組成物を提供する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱感応性組織癒着防止用組成物およびその製造方法に関するものであって、さらに詳しくは、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体、及び前記共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液に架橋剤を加えて化学反応が起こるようにして製造され、選択的に炎症反応を抑制することができる薬剤をさらに含む組成物であって、前記組成物を遠心分離したとき、上層液と下層液の粘度、可視光線領域の吸光度及び安定性の差が10%以内であることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物に関するものであって、さらに、前記組成物を製造することにおいて、反応速度遅延剤を添加せず、スプレー法及び攪拌法を同時に使用することで、架橋の均一化及び粘度の安定性に優れるようにすることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癒着は多様な手術後に発生するものであり、炎症、創傷、摩擦、手術による創傷など、傷の治癒過程において血液が流出して凝固し、これにより、周辺臓器あるいは組織と一次的な癒着が発生して、ここに細胞が浸透して組織化されると、さらに強い癒着が形成される。骨盤に癒着が発生した場合には、慢性痛、性機能障害、不妊などの原因になりかねず、甲状腺摘出術後の瘢痕の形成による癒着によって胸部の痛み、飲み込む能力の低下などの副作用が発生し、脊椎手術の場合、癒着が発生すると、神経が圧迫されて激しい痛みをもたらす。よって、このような癒着を剥離するための2次手術が要求されることもあるが、癒着は経済的にも大きな負担となり、1988年度の米国の統計資料によると、腹部手術後の癒着による合併症の治療にかかった費用が12億ドルに至ると報告されている。腹部手術後の癒着によって発生する合併症としては、小腸閉鎖が49乃至74%、不妊が15乃至20%、慢性骨盤痛が20乃至50%、後続手術時の臓穿孔が約19%に至ることが知られている。また、耳鼻咽喉科の場合、慢性副鼻腔炎の処置のための鼻腔内視鏡術後の再発率が患者の7.6乃至38%に至るが、ラリンゴスコープジャーナルに載せられた「ラマダン」の論文(Laryngoscope, Jan.;109(1): p.27 ~ 29(1999), Ramadan H.H., "Surgical causes of failure in endoscopic sinus surgery.")によると、これにより再手術を受ける患者の56%で癒着が発生したと報告されている。産婦人科の場合、不完全な流産、死産、再発性流産などに対する掻爬術、吸入除去術(suction evacuation)後に20乃至50%で子宮内膜に癒着が発生し、このような癒着が不妊、無月経、習慣性流産などを招くことが知られており、癒着防止のために多くの研究が進行してきた。最近は物理的バリアー(barrier)を使用する方法が開発されて使用されている。
【0003】
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(PEG-PPG-PEG)ブロック共重合体は、酸度、温度、イオン強度などの環境的刺激に感応して粘度などが変化し、溶液状態からゲル状態へ粘度が上昇するなど、熱に対して状態が変化することがよく知られており、これを利用して、医療用材料として使用する技術が米国特許第5,939,485号、第4,188,373号、第4,478,822号、第4,474,751号などに記載されている。
【0004】
組織癒着防止剤に関する従来技術のうち、韓国出願番号10-2003-0050953号では、水溶液状で適切な粘性と安定性を付与する高分子を架橋するためにMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+から選ばれる1種以上のカチオン、又はキトサン(chitosan)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、ホルマリン(formalin)、ポリ-L-リシン(poly-L-lysine)から選ばれる1種以上のものを使用して架橋をするために高速攪拌機を使用したが、多量に製造すると繊維状の浮遊物が生成し、生成された前記浮遊物の除去や均一な架橋が困難な実情にあった。
【0005】
韓国出願番号10-2006-0053279号では、イオン交換重合反応速度遅延剤である炭酸ナトリウム(Na2CO3)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、 リン酸三ナトリウム・12水和物 (Na3PO4・12H2O)、ポリリン酸ナトリウム(Na5P3O10)、ピロリン酸四ナトリウム (Na4P2O7)、ピロリン酸四ナトリウム・10水和物 (Na4P2O7・10H2O)、エチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム・2 水和物 (Na4EDTA2H2O)から選ばれる一つを添加して速度を遅延させ、均一に架橋しようとしたが、人体内に使用するには適していない実情にある。
【0006】
このように、現在までは架橋が均一にされないために生じる繊維状の浮遊物を防止することはできず、架橋の均一化及び粘度の安定化を高める熱感応性組織癒着防止剤を製造することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,939,485号
【特許文献2】米国特許第4,188,373号
【特許文献3】米国特許第4,478,822号
【特許文献4】米国特許第4,474,751号
【特許文献4】韓国出願番号10-2003-0050953号
【特許文献4】韓国出願番号10-2006-0053279号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Laryngoscope, Jan.;109(1): p.27 ~ 29(1999), Ramadan H.H., "Surgical causes of failure in endoscopic sinus surgery."
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術の問題を解決するために、本発明は、生体適合性を有するとともに優れた組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体、及び水溶液状で適切な粘性と安定性を付与する高分子を含む水溶液に架橋剤を加えて化学反応が起こるようにして製造され、選択的に炎症反応を抑制することが可能な薬剤をさらに含めて人体内の負傷部位に容易に塗布することができ、組織癒着防止性能に優れた熱感応性組織癒着防止用組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記熱感応性組織癒着防止用組成物を製造する際に、反応速度遅延剤を添加することなく、スプレー法及び攪拌法を同時に使用して攪拌の均一化及び粘度の安定性を高めることができる熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の前記目的及びその他の目的は下記に説明された本発明によって達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、
a) ポリエチレンオキシドブロックを含有する分子量1,000乃至500,000g/molのブロック共重合体、及び
b) 前記a)共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液に、
c) 架橋剤を加えて化学反応が起こるようにして製造される組成物であって、
前記組成物を25 ℃、3,000rpmで3分間、遠心分離したとき、上層液と下層液の粘度、可視光線領域の吸光度及び安定性の差が10%以内であることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、
a) ポリエチレンオキシドブロックを含有する分子量1,000乃至500,000g/molのブロック共重合体、及び
b) 前記a)共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液を製造した後、
c) 前記水溶液に架橋剤をスプレー噴射粒径5乃至500μmの範囲でスプレー噴射し、攪拌して製造されることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明によると、熱感応性組織癒着防止用組成物を製造する際に、スプレー法を利用して架橋剤の総表面積を極大化するため、速度遅延剤を添加しなくても、架橋が均質にされないために生じる繊維状の浮遊物を防止することができるだけでなく、架橋の均一化や粘度の安定化を高めることができ、人体内の負傷部位に非常に均一に塗布可能であり、安定性に優れた組織癒着防止用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の比較例1の製造方法を示した図である。
【図2】本発明の比較例2の製造方法を示した図である。
【図3】本発明の実施例1乃至4の製造方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は前記目的を達成するために、 分子量1,000乃至500,000g/molであり、水溶液に溶解されて、温度によりゾル−ゲル転移を示し、組織癒着を抑制することができるポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体、及び前記 共重合体と混合して水溶液状で適切な粘性(3,え00乃至9,000cP)と安定性を付与する分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液に架橋剤を加えて化学反応が起こるようにして製造され、前記組成物を25 ℃、3,000rpmで3分間、遠心分離したとき、上層液と下層液の粘度、可視光線領域の吸光度及び安定性の差が10%以内であることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物を提供し、前記組成物は選択的に薬剤、特に消炎剤を含むこともできる。
【0017】
また、本発明は、
a) ポリエチレンオキシドブロックを含有する分子量1,000乃至500,000g/molのブロック共重合体、及び
b) 前記a)共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液を製造した後、
c) 前記水溶液に架橋剤をスプレー噴射粒径5乃至500μmの範囲でスプレー噴射し、攪拌して製造されることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法を提供する。
【0018】
前記ポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体は、分子量1,000乃至500,000g/molのものであって、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体(Pluronic series)、ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリカプロラクトン共重合体などを使用することができる。
【0019】
前記分子量10,000 乃至1,000,000 g/molの高分子としては、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)の一種であるコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、アルギン酸(alginic acid)、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、デキストラン(dextran)、コラーゲン(collagen)、及びその分解物であるゼラチン(gelatin)、エラスチン(elastin)、及びフィブリン (fibrin)からなる群から選ばれる1種以上の混合物を使用することができる。
【0020】
このとき、架橋剤としては、Mg2+、Mn2+、Ca2+、Cu2+、Sr2+、Ba2+、Fe2+、Co2+から選択された1種以上のカチオンを含む化合物、又はキトサン(chitosan)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、ホルマリン(formalin)、ポリ-L-リシン(poly-L-lysine)、ポリアクリル酸 (polyacrylic acid)、及びポリメタクリル酸(polymethacrylic acid)を含むアクリル酸系高分子、ドーパミン(dopamine)を含むヒドロキシルアミン化合物、イソロイシン(isoleucine)、フェニルアラニン(phenylalanine)、ロイシン(leuchine)、トレオニン(threonine)、リシン(lysine)、トリプトファン(tryptophan)、メチオニン(methionine)、バリン(valline)、ヒスチジン(histidine)、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン(asparagines)、アスパルテート(aspartate)、システイン(cysteine)、グルタミン(glutamine)、グルタメート(glutamate)、グリシン(glycine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、チロシン(tyrosine)などを使用することができる。
【0021】
本発明による熱感応性組織癒着防止用組成物は、前記ポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体及び前記高分子が化学結合によって生成され、前記化学結合はグラフト共重合、ランダム共重合、交差共重合、架橋結合などで結合して形成することができる。
【0022】
また、前記薬剤としては、トロンビン(thrombin)、アプロチニン(aprotinin)、ステロイド系抗炎症剤(Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs, Non Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、ヘパリン(heparin)、組織プラスミノーゲン活性化因子、及び消炎剤(イブプロフェン(Ibuprofen)、ナプロキセン(Naproxen)、トルメチン(Tolmetin)、インドメタシン(Indomethacin))などを使用することができる。
【0023】
前記薬剤は、本発明による組織癒着防止用組成物の製造段階中、又は負傷部位に塗布する前に前記組成物に含めることができ、体温により前記癒着防止用組成物がゲル化されることによって薬剤の放出が行われる。
【0024】
前記薬剤、特に消炎剤をさらに含ませて組織癒着防止用組成物を製造すると、薬剤を放出するか、炎症反応を抑制して組織癒着抑制性能をさらに向上させることができる。
【0025】
本発明の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造には食塩水及びリン酸塩緩衝溶液、有機酸塩緩衝溶液、重炭酸塩緩衝溶液などを含む塩溶液のうち、いずれか一つを選んで使用することもでき、これは、体液が一定量の塩を含む溶液なので、純粋な水を使用して製造された組成物より生体適合性に優れているためである。特に塩溶液を使用する場合、純粋な水を使用して製造した組成物よりゲル化される温度を低くすることができ、熱感応速度も速くすることができる。
【0026】
前記ポリエチレンオキシドブロックを含有したブロック共重合体、前記高分子及び前記架橋剤が含まれた水溶液から形成される本発明による組成物(以下、「本発明による組成物」という)に対するポリエチレンオキシドブロックを含有したブロック共重合体の含量は1乃至50重量%が好ましく、さらに好ましくは10乃至30重量%である。もし、その含量が1重量%未満であると、ゾル−ゲル転移が現れないという問題があり、50重量%を超過すると、試料の粘度が高く、常温で体内塗布が困難な問題がある。
【0027】
本発明による組成物に対する前記高分子の含量は0.1乃至4重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5乃至1重量%である。もし、含量が0.1重量%未満であると、粘性や安定性を付与できないか、架橋を形成できないという問題があり、4重量%を超過すると、試料の粘度が高く、体内に均一な塗布が難しいという問題がある。
【0028】
また、前記高分子の架橋時に、本発明による組成物に対する架橋剤の含量は0.01乃至2重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05乃至0.2重量%である。もし、その含量が0.01重量%未満であると、架橋を形成できないという問題があり、2重量%を超過すると、強い架橋を形成して、試料が流動性でなくなり、体内塗布及び注入が困難になる。
【0029】
前記熱感応性組織癒着防止用組成物に薬剤を添加する場合、本発明による組成物に対する含量は0.01乃至50重量%が好ましく、特に消炎剤の場合には、その含量は1乃至10重量%がさらに好ましい。もし、0.01重量%未満であると、炎症抑制及び癒着防止効能を示さない問題があり、50重量%を超過すると、人体に毒性を示す問題がある。
【0030】
本発明による熱感応性組織癒着防止用組成物を遠心分離機(centrifugal separator)を使用して25℃、3000rpmで3分間、遠心分離すると、上層液と下層液の粘度、可視光線領域の吸光度及び安定性の差が10%以内であり、好ましくは7%以内であり、さらに好ましくは5%以内である。粘度はゾル状態の20℃で測定し、吸光度は可視光線領域のうち、400乃至750波長領域を測定し、安定性は人体内条件の37℃で同じ温度の食塩水を満たし、60rpmの速度で振って、1週間、ゲル状態の形態維持を確認した。
【0031】
上記した本発明による組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシドブロックを含有するブロック共重合体及び前記共重合体とともに水溶液内で粘性と安定性を付与する高分子を均一に混合し、なお、選択的に薬剤を添加して製造した組織癒着防止用組成物は、あらゆる複雑な負傷部位にも非常に容易かつ均一に注入、塗布され、安定性を有するため、優れた組織癒着防止性能を示し、組織癒着防止剤として非常に効果的に適用される。
【0032】
本発明の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造において、架橋剤を加えるときにスプレー法を使用する場合、前記水溶液状で噴射速度は10乃至100ml/分が好ましく、さらに好ましくは50乃至100ml/分である。
【0033】
本発明でスプレー法を使用する場合に、架橋剤をスプレー噴射粒径5乃至500μmの範囲、好ましくは50乃至100μmの範囲でスプレー噴射して使用することができる。
【0034】
本発明の熱感応性組織癒着防止用組成物を製造することにおいて、前記水溶液状で攪拌速度は300rpm乃至1500rpmが好ましく、さらに好ましくは500乃至1,000rpmである。もし、攪拌速度が300rpm未満であると、全体的な攪拌ではなく、部分的な攪拌になりやすい。
【0035】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解のためであって、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
比較例1
天然高分子であり、生体適合性に優れたヒアルロン酸を超純水に対して0.8重量%で溶解した水溶液に、生体適合性とゾル−ゲル相転移現象及び組織癒着を抑制可能なポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を本発明による組成物に対して25重量%となるように入れ、攪拌機を使用して500rpmの速度で攪拌しながら、Ca(CH3COO)2水溶液をなんら装置も使用せずに添加して癒着防止用組成物を製造した。
【0037】
比較例2
天然高分子であり、生体適合性に優れたヒアルロン酸を超純水に対して0.8重量%で溶解した水溶液に、生体適合性とゾル−ゲル相転移現象及び組織癒着を抑制可能なポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を本発明による組成物に対して25重量%となるように入れ、攪拌機を使用して500rpmの速度で攪拌しながら、Ca(CH3COO)2水溶液を、ビュレットを使用して20ml/分ずつ添加して癒着防止用組成物を製造した。
【0038】
実施例1
天然高分子であり、生体適合性に優れたヒアルロン酸を超純水に対して0.8重量%で溶解した水溶液に、生体適合性とゾル−ゲル相転移現象及び組織癒着を抑制可能なポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を本発明による組成物に対して25重量%となるように入れ、攪拌機を使用して500rpmの速度で攪拌しながら、Ca(CH3COO)2水溶液を、スプレーを使用して20ml/分ずつ噴射して癒着防止用組成物を製造した。
【0039】
実施例2
天然高分子であり、生体適合性に優れたヒアルロン酸を超純水に対して0.8重量%で溶解した水溶液に、生体適合性とゾル−ゲル相転移現象及び組織癒着を抑制可能なポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を本発明による組成物に対して25重量%となるように入れ、攪拌機を使用して500rpmの速度で攪拌しながら、CaCl2水溶液を、スプレーを使用して20ml/分ずつ噴射して癒着防止用組成物を製造した。
【0040】
実施例3
天然高分子であり、生体適合性に優れたアルギン酸を超純水に対して0.8重量%で溶解した水溶液に、生体適合性とゾル−ゲル相転移現象及び組織癒着を抑制可能なポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を本発明による組成物に対して25重量%となるように入れ、攪拌機を使用して500rpmの速度で攪拌しながら、Ca(CH3COO)2水溶液を、スプレーを使用して20ml/分ずつ噴射して癒着防止用組成物を製造した。
【0041】
実施例4
天然高分子であり、生体適合性に優れたアルギン酸を超純水に対して0.8重量%で溶解した水溶液に、生体適合性とゾル−ゲル相転移現象及び組織癒着を抑制可能なポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を本発明による組成物に対して25重量%となるように入れ、攪拌機を使用して500rpmの速度で攪拌しながら、CaCl2水溶液を、スプレーを使用して20ml/分ずつ噴射して癒着防止用組成物を製造した。
【0042】
前記方法によって製造された比較例1、比較例2、実施例1乃至4の組織癒着防止用組成物を遠心分離機(centrifugal separator)を利用して25℃、3000rpmで3分間、遠心分離した後、上層液と下層液に分けて粘度、可視光線領域の吸光度及び安定性を測定した結果を下記表1,2,3にそれぞれ示した。
【0043】
表1は、本発明の比較例1,2と実施例1乃至4において製造された材料を、遠心分離機を使用して上層液部分と下層液部分に分けて粘度差を示したものである。
【0044】
表2は、本発明の比較例1,2と実施例1乃至4において製造された材料を、遠心分離機を使用して上層液部分と下層液部分に分けて可視光線領域の吸光度を測定して示したものである。
【0045】
表3は、本発明の比較例1,2と実施例1乃至4において製造された材料を、遠心分離機を使用して上層液部分と下層液部分に分けて安定性を測定して示したものである。
【0046】
【表1】

【0047】
前記表1から、スプレー法を利用して架橋剤を噴射して製造した実施例1乃至4の組織癒着防止用組成物は、スプレー法を利用しなかった比較例1,2と比べて上層液及び下層液の粘度が類似しており、その差が10%以内であって、安定性により優れていることが分った。
【0048】
【表2】

【0049】
前記表2から、スプレー法を使用せずに製造した比較例1,2の組成物を遠心分離した後の上層液と下層液の可視光線領域の吸光度は差が大きいが、スプレー法を利用して架橋剤を噴射して製造した実施例1乃至4の場合は、上層液と下層液の可視光線領域の吸光度が類似しており、その差が10%以内であって、架橋程度が均一であることが分った。
【0050】
【表3】

【0051】
また、前記表3から、スプレー法を使用せずに製造した比較例1,2の組成物を遠心分離した後、上層液と下層液の安定性を測定したとき、10%以上の差があったが、スプレー法を利用して架橋剤を噴射して製造した実施例1乃至4の場合は、遠心分離した後、上層液と下層液の安定性を測定したとき、上層液と下層液の差が10%以内であって、人体内において安定性に優れていることが分かる。安定性は人体内条件の37℃で同じ温度の食塩水を満たし、60rpmの速度で振って、1週間、ゲル状態の形態維持を確認した。
【0052】
上記において、本発明は記載された具体例を中心に詳細に説明したが、本発明の範疇及び技術思想範囲内で多様な変形及び修正が可能なことは当業者によって明確であり、このような変形及び修正が、添付された特許請求範囲に属することは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ポリエチレンオキシドブロックを含有する分子量1,000乃至500,000g/molのブロック共重合体、及び
b) 前記a)ブロック共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液に、
c) 架橋剤を加えて化学反応が起こるようにして製造される組成物であって、
前記組成物を25℃、3,000rpmで3分間、遠心分離したとき、上層液と下層液の粘度の差が10%以内であることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項2】
前記上層液と下層液の可視光線領域の400乃至750波長における吸光度の差が10%以内であることを特徴とする請求項1に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項3】
前記上層液と下層液の安定性の差が10%以内であることを特徴とする請求項1に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、前記a)共重合体、及びb)高分子を含む水溶液に、
架橋剤をスプレー噴射粒径5乃至500μmの範囲でスプレー噴射し、攪拌して製造されることを特徴とする請求項1に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項5】
前記架橋剤としては、Mg2+、Mn2+、Ca2+、Cu2+、Sr2+、Ba2+、Fe2+、及びCo2+から選択された1種以上のカチオンを含む化合物、キトサン(chitosan)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、ホルマリン(formalin)、及びポリ-L-リシン(poly-L-lysine)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)、及びポリメタクリル酸(polymethacrylic acid)を含むアクリル酸系高分子、ドーパミン(dopamine)を含むヒドロキシルアミン化合物、イソロイシン(isoleucine)、フェニルアラニン(phenylalanine)、ロイシン(leuchine)、トレオニン(threonine)、リシン(lysine)、トリプトファン(tryptophan)、メチオニン(methionine)、バリン(valline)、ヒスチジン(histidine)、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン(asparagines)、アスパルテート(aspartate)、システイン(cysteine)、グルタミン(glutamine)、グルタメート(glutamate)、グリシン(glycine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、及びチロシン(tyrosine)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項6】
前記組成物に、トロンビン(thrombin)、アプロチニン(aprotinin)、ステロイド系(Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs, Non Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、ヘパリン(heparin)、組織プラスミノーゲン活性化因子、イブプロフェン(Ibuprofen)、ナプロキセン(Naproxen)、トルメチン(Tolmetin)、及びインドメタシン(Indomethacin)からなる群から選ばれる1種以上の薬剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項7】
前記組成物に対する前記a)共重合体の含量は1乃至50重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項8】
前記組成物に対する前記b)高分子の含量は0.1乃至4重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項9】
前記組成物に対する前記c)架橋剤の含量は0.01乃至2重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項10】
前記組成物に対する前記薬剤の含量は0.01乃至50重量%であることを特徴とする請求項6に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項11】
前記a)ブロック共重合体は、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体(Pluronic series)、ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、及びポリエチレンオキシド−ポリカプロラクトン共重合体からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項12】
前記b)高分子は、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、アルギン酸(alginic acid)、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、デキストラン(dextran)、コラーゲン(collagen)、及びその分解物であるゼラチン(gelatin)、エラスチン(elastin)、及びフィブリン(fibrin)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物。
【請求項13】
a) ポリエチレンオキシドブロックを含有する分子量1,000乃至500,000g/molのブロック共重合体、及び
b) 前記a)ブロック共重合体と混合可能な分子量10,000乃至1,000,000g/molの高分子を含む水溶液を製造した後、
c) 前記水溶液に架橋剤をスプレー噴射粒径5乃至500μmの範囲でスプレー噴射し、攪拌して製造されることを特徴とする熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項14】
前記スプレー噴射速度は10乃至100ml/分であることを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項15】
前記攪拌速度は300rpm乃至1500rpmであることを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項16】
前記水溶液は、前記a)共重合体、及び前記b)高分子を塩溶液に溶解させて製造されることを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項17】
前記塩溶液は、食塩水、リン酸塩緩衝溶液、有機酸塩緩衝溶液、及び重炭酸塩緩衝溶液からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項16に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項18】
前記組成物は、トロンビン(thrombin)、アプロチニン(aprotinin)、ステロイド系(Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs, Non Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、ヘパリン(heparin)、組織プラスミノーゲン活性化因子、イブプロフェン(Ibuprofen)、ナプロキセン(Naproxen)、トルメチン(Tolmetin)、及びインドメタシン(Indomethacin)からなる群から選ばれる1種以上の薬剤をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項19】
前記組成物に対する前記薬剤の含量は0.01乃至50重量%であることを特徴とする請求項18に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項20】
前記組成物に対する前記a)共重合体の含量は1乃至50重量%であることを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項21】
前記組成物に対する前記b)高分子の含量は0.1乃至4重量%であることを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。
【請求項22】
前記組成物に対する前記c)架橋剤の含量は0.01乃至2重量%であることを特徴とする請求項13に記載の熱感応性組織癒着防止用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509129(P2012−509129A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537345(P2011−537345)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005280
【国際公開番号】WO2010/058902
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511107728)ジェネウェル・カンパニー・リミテッド (2)
【出願人】(511122396)ハンナム・ユニヴァーシティー・インスティチュート・インダストリー−アカデミア・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】