説明

熱活性化装置、印字装置およびプリンタ

【課題】加熱手段や印字手段に対するシート材の圧接状態が不足することを防ぎ、シート材にかすれた箇所が生じるのを抑える。
【解決手段】熱活性化ヘッド11を支持するヘッド支持部材13と、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に対して近接離間させる方向にヘッド支持部材13を回動可能に支持する支軸14と、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させる方向にヘッド支持部材13を付勢するプラテンバネ16と、支軸14がプラテンバネ16による付勢方向に移動可能に係合される軸穴15と、軸穴15内での支軸14の位置を規制し熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させる方向にヘッド支持部材13を付勢する調整バネ17とを備える。また、調整バネ17の付勢力F2は、プラテンバネ16の付勢力F1よりも小さくされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材の一方に印字層が設けられ他方に感熱性粘着層が設けられてなるシート材を、プラテンローラによって搬送する熱活性化装置、印字装置およびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、物流や店舗では、価格等の各種情報やPOS(point of sales)端末による管理用バーコード等を表示するためのラベルが、物品に貼付されて用いられている。この種のラベルとしては、シート状基材の一方に印字層が設けられ他方に感熱性粘着層が設けられてなるシート材によって発行されるラベルが提案されている。
【0003】
このような感熱性粘着層を有するラベルを発行するラベル発行装置としては、一般に、シート材を供給するシート供給装置と、このシート供給装置から供給されたシート材の感熱性印字層に各種情報を印字する印字装置と、この印字装置によって印字されたシート材を切断する切断装置と、シート材の感熱性粘着層を熱活性化するための熱活性化装置とを備える構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、図8に示すように、熱活性化装置は、シート材の感熱性粘着層を熱活性化する熱活性化ヘッド111と、この熱活性化ヘッド111が圧接されてシート材を保持して搬送するためのプラテンローラ112と、熱活性化ヘッド111を支持するヘッド支持部材113とを有している。
【0005】
プラテンローラ112は、支持フレーム(不図示)に支持されたプラテン軸118に回転可能に支持されており、図示しない回転駆動機構によって回転駆動される。また、ヘッド支持部材113は、一端側に熱活性化ヘッド111が設けられ、他端側に、支持フレームに支持された支軸114に回動可能に支持される一組の支持片119が設けられている。各支持片119には、支軸114が挿通される軸穴115が設けられている。また、ヘッド支持部材113を挟んでプラテンローラ112の反対側には、熱活性化ヘッド111をプラテンローラ112の周面に圧接させる複数のプラテンバネ116が設けられている。
【0006】
そして、この熱活性化装置は、熱活性化ヘッド111によって感熱性粘着層を熱活性化すると共に、熱活性化ヘッド111が圧接されたプラテンローラ112が回転駆動することで、熱活性化ヘッド111とプラテンローラ112との間に挟まれたシート材を搬送する。
【0007】
また、図示しないが、熱活性装置と同様に、印字装置も、シート材の感熱性印字層に印字する印字ヘッドと、この印字ヘッドが圧接されてシート材を保持して搬送するためのプラテンローラと、印字ヘッドを支持するヘッド支持部材とを有している。そして、ヘッド支持部材は、支軸を介して支持フレームに回動可能に支持されており、プラテンバネの付勢力によって、プラテンローラに印字ヘッドを圧接する。
【特許文献1】特開2003―316265号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の熱活性化装置や印字装置では、熱活性化ヘッドや印字ヘッド(以下、単にヘッドとも称する。)を支持するヘッド支持部材が、支軸を介して支持フレームに回動可能に支持されている。このため、ヘッド支持部材や支持フレーム等の寸法精度が製造上のバラツキで良好に確保されない場合に、例えば、プラテンローラを回転可能に支持するプラテン軸と、ヘッド支持部材を回転可能に支持する支軸とが互いに平行でないことがある。
【0009】
このような場合には、例えば図9に示すように、プラテンローラ112に対して熱活性化ヘッド111が支軸114の軸方向に亘って圧接されず、シート材に対して熱活性化ヘッド111の支軸114方向の一端側だけが圧接される、いわゆる片当たり状態になる。
【0010】
このため、プラテンローラによって搬送されるシート材は、搬送方向に直交する幅方向の一端側が、ヘッドによって良好に押圧されるが、他端側が、ヘッドによって良好に押圧されずに、シート材に対するヘッドの押圧力が不足してしまう。すなわち、プラテンローラと熱活性化ヘッドとの間に間隙が生じてしまうことで、ヘッドに対するシート材の圧接状態が不足し、シート材にかすれた箇所が生じてしまう問題がある。
【0011】
この問題の対策としては、プラテンバネの付勢力を大きくすることによって、プラテンローラに対するヘッドの圧接力を大きくして、シート材に対して支軸方向に生じるヘッドの片当たりを矯正することが考えられる。しかしながら、製造上のバラツキによって必要以上に圧接力が大きくなってしまう場合や、十分な圧接力が得られない場合もあり、プラテンバネの付勢力を大きくするだけでは、シート材に対するヘッドの片当たりを十分に解消することが困難である。
【0012】
また、上述した感熱性粘着層を有するシート材は、感熱性粘着層の摩擦係数が感熱性印刷層に比較して非常に大きい。このため、特に、熱活性化装置では、感熱性粘着シートを搬送する際、感熱性粘着層と熱活性化ヘッドとの間の摩擦力が、プラテンローラと印字層との間の摩擦力よりも大きくなるため、プラテンローラがシート材に対して空転してしまい、シート材を所定の搬送速度で円滑に搬送することが困難になる。
【0013】
このため、特に熱活性化装置では、シート材に対する熱活性化ヘッドの片当たりを解消するために、上述したようにプラテンバネの付勢力を大きくした場合、シート材の感熱性粘着層が熱活性化ヘッドに付着しやすくなる問題を招いてしまう。したがって、熱活性化装置では、シート材に対する熱活性化ヘッドの支軸方向の片当たりを解消するために、プラテンバネの付勢力を大きくすることで対処することができない。
【0014】
そこで、本発明は、加熱手段や印字手段に対するシート材の圧接状態が不足することを防ぎ、シート材にかすれた箇所が生じるのを抑えることができる熱活性化装置、印字装置およびプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するため、本発明に係る熱活性化装置は、シート状基材の一方に印字層が設けられ他方に感熱性粘着層が設けられてなるシート材の感熱性粘着層を熱活性化するための発熱体を有する加熱手段と、加熱手段が圧接されてシート材を保持して搬送するためのプラテンローラと、加熱手段を支持する支持部材と、加熱手段をプラテンローラに対して近接離間させる方向に支持部材を回動可能に支持する支軸と、加熱手段をプラテンローラに圧接させる方向に支持部材を付勢する第1の付勢部材と、支軸が第1の付勢部材による付勢方向に移動可能に係合される軸穴と、軸穴内での支軸の位置を規制し加熱手段をプラテンローラに圧接させる方向に支持部材を付勢する第2の付勢部材とを備える。また、第2の付勢部材の付勢力は、第1の付勢部材の付勢力よりも小さくされている。
【0016】
以上のように構成した本発明に係る熱活性化装置によれば、プラテンローラに対して加熱手段の支軸方向に片当たりが生じた場合に、第1および第2の付勢部材による付勢力によって支持部材がプラテンローラに対して移動され、支軸が軸穴内で第1の付勢部材による付勢方向に移動することで、シート材に対する加熱手段の支軸方向の片当たりが調整される。
【0017】
また、本発明に係る他の熱活性化装置が備える軸穴は、発熱体を中心とする円周方向に沿って長穴状に形成されてもよい。この構成によれば、軸穴内で支軸が移動したときであっても、発熱体と支軸との間の距離が一定に保たれるので、プラテンローラに対する発熱体の相対位置が変化することがない。
【0018】
また、本発明に係る印字装置は、シート状基材の一方に感熱性印字層が設けられ他方に感熱性粘着層が設けられてなるシート材の感熱性印字層に印字するための発熱体を有する印字手段と、印字手段が圧接されてシート材を保持して搬送するためのプラテンローラと、印字手段を支持する支持部材と、印字手段をプラテンローラに対して近接離間させる方向に支持部材を回動可能に支持する支軸と、印字手段をプラテンローラに圧接させる方向に支持部材を付勢する第1の付勢部材と、支軸が第1の付勢部材による付勢方向に移動可能に係合される軸穴と、軸穴内での支軸の位置を規制し印字手段をプラテンローラに圧接させる方向に支持部材を付勢する第2の付勢部材とを備える。また、第2の付勢部材の付勢力は、第1の付勢部材の付勢力よりも小さくされている。
【0019】
また、本発明に係るプリンタは、上述した本発明の熱活性化装置と、印字層を加熱して印字する印字装置とを備え、シート材を熱活性化装置と印字装置とを通るように搬送する。
【発明の効果】
【0020】
上述したように本発明によれば、プラテンローラに対する支持部材の支軸方向の付勢状態に応じてプラテンローラに対して支持部材が移動することで、プラテンローラに対して加熱手段または印字手段を支軸方向に亘って良好に圧接させることを可能にし、加熱手段や印字手段に対するシート材の圧接状態が不足することを防ぎ、シート材にかすれた箇所が生じるのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
物品に各種情報を表示するために物品に貼り付けられるラベルを発行する際に用いられるラベル発行装置について簡単に説明する。
【0023】
図1に示すように、ラベル発行装置1は、図1中矢印L方向であるシート材3の搬送経路に沿って、シート材3を供給するシート供給装置5、シート材3の感熱性印字層に各種情報を印字する印字装置6、この印字装置6によって印字されたシート材3を切断する切断装置7、シート材3の感熱性粘着層を熱活性化するための熱活性化装置10の順に配置されて構成されている。
【0024】
シート供給装置5は、シート材3が巻回されたシートロール5aを有しており、このシートロール5aからシート材3を繰り出して供給する。このシート供給装置5から供給されるシート材3は、図示しないが、シート状基材と、このシート状基材の表面側に設けられた感熱性印字層と、シート状基材の裏面側に設けられた感熱性粘着層とを備えて構成されている。なお、シート材としては、必要に応じて、シート状基材と感熱性印字層との間に、シート状基材の一方側の層から他方側の層への伝熱を遮断するための断熱層が設けられた構成のものが用いられてもよい。
【0025】
印字装置6は、発熱素子を有するいわゆるサーマルプリンタが用いられており、シート材3の感熱性印字層を感熱させるためのサーマルヘッド6aと、このサーマルヘッド6aに圧接されるプラテンローラ6bとを有している。印字装置6は、シート供給装置5から供給されたシート材3をサーマルヘッド6aとプラテンローラ6bとの間に挟んで印字すると共に搬送する。切断装置7は、印字装置6から搬出されたシート材3を所望の長さに切断するためのカッタ7aを有しており、切断したシート材3を熱活性化装置10に搬出する。
【0026】
図2および図3に示すように、熱活性化装置10は、シート材3の感熱性粘着層を熱活性化するための熱活性化ヘッド11と、この熱活性化ヘッド11が圧接されこの熱活性化ヘッド11との間にシート材3を挟んで矢印L方向である搬送方向にシート材3を搬送するプラテンローラ12と、熱活性化ヘッド11を支持するヘッド支持部材13と、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に対して近接離間させる方向にヘッド支持部材13を回動可能に支持する支軸14とを備えている。
【0027】
また、この熱活性化装置10は、ヘッド支持部材13に設けられて支軸14が後述するプラテンバネ16および調整バネ17による付勢方向に移動可能に挿通される軸穴15と、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させる方向にヘッド支持部材13を付勢する第1の付勢部材としての複数のプラテンバネ16と、軸穴15内での支軸14の位置を規制し熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させる方向にヘッド支持部材13を付勢する第2の付勢部材としての一組の調整バネ17とを備えている。
【0028】
熱活性化ヘッド11としては、印字装置6が備えるサーマルヘッド6aと同様のものが使用されており、図示しないが、シート材3の搬送方向に直交する幅方向に沿って複数の発熱素子(発熱体)が配列されている。熱活性化ヘッド11は、任意の発熱素子を選択的に発熱させることで、シート材3の幅方向に対して感熱性粘着層をドット単位で熱活性化が可能にされている。そして、熱活性化ヘッド11は、プラテンバネ16および調整バネ17による各付勢力によって、プラテンローラ12の周面に圧接されている。
【0029】
プラテンローラ12は、プラテン軸18に回動可能に支持されており、図示しない回転駆動機構によって回転駆動される。プラテン軸18の両端は、支持フレーム(不図示)に支持されている。なお、プラテンローラは、シート材の感熱性粘着層と熱活性化ヘッドとの摩擦力よりも、プラテンローラとシート材の感熱性印字層との摩擦力を大きくすることで、シート材を円滑に搬送するために、摩擦係数が比較的大きい材料、例えばフロロシリコンゴム等の樹脂材によって形成されてもよい。
【0030】
ヘッド支持部材13は、略平板状に形成されており、シート材3の搬送方向に対する一端側に熱活性化ヘッド11が設けられている。また、ヘッド支持部材13の他端側には、支軸14に回動可能に支持される一組の支持片19が設けられている。これら各支持片19には、支軸14が挿通される軸穴15が形成されている。また、各支持片19の軸穴15内に挿通された支軸14は、両端が支持フレームに支持されている。また、ヘッド支持部材13上には、熱活性化ヘッド11の発熱素子が、プラテンローラ12とヘッド支持部材13との当接点Pの位置よりもシート材3の搬送方向に所定のオフセット量だけ僅かにずらして配置されている。
【0031】
軸穴15は、図2に示すように、プラテンローラ12の端面から見て、熱活性化ヘッド11の発熱素子を中心とする円周上に沿って形成されている。このため、軸穴15内に沿って支軸14が移動した際に、熱活性化ヘッド11の発熱素子と支軸14との間の距離が一定に保たれるので、軸穴15内での支軸14の位置に拘わらず、プラテンローラ12に対する熱活性化ヘッド11の相対位置が変動することがない。つまり、プラテンローラ12に対する熱活性化ヘッド11のオフセット量が一定に保たれる。
【0032】
プラテンバネ16としては、圧縮コイルバネが用いられており、ヘッド支持部材13を間に挟んでプラテンローラ12の反対側からヘッド支持部材13を押圧する位置に配置されている。これらプラテンバネ16は、一端がヘッド支持部材13に当接され、他端が支持フレームに支持されており、プラテンローラ12に対して熱活性化ヘッド11を押圧している。
【0033】
調整バネ17としては、引っ張りコイルバネが用いられており、ヘッド支持部材13に対してプラテンバネ16の反対側からヘッド支持部材13の支持片19を引っ張る位置に配置されている。各調整バネ17は、ヘッド支持部材13の支持片19近傍に設けられ、一端がヘッド支持部材13の各支持片19に掛止され、他端が支持フレームに掛止されている。
【0034】
ヘッド支持部材13の支持片19を各調整バネ17が付勢することで、支軸14は、軸穴15内の所定の位置に保たれている。したがって、ヘッド支持部材13は、支軸14を回動支点として、プラテンローラ12に対して熱活性化ヘッド11を近接離間させる方向に円滑に回動することが可能にされている。
【0035】
そして、調整バネの付勢力F2は、プラテンバネ16の付勢力F1よりも小さくされている。このため、プラテンバネ16および調整バネ17の付勢力によってヘッド支持部材13がプラテンローラ12に対して移動することが可能にされている。ヘッド支持部材13がプラテンローラ12に対して移動するに伴って、支軸14が軸穴15内に沿って移動することで、プラテンローラ12に対してヘッド支持部材13が調動され、シート材3に対する熱活性化ヘッド11の支軸14方向の片当たりが調整される。
【0036】
以上のように構成された熱活性化装置10について、シート材3に対する熱活性化ヘッド11の支軸14方向の圧接状態が調整される動作を説明する。
【0037】
熱活性化装置10では、支持フレームやヘッド支持部材13等の製造上のバラツキによって、プラテンローラ12に対して熱活性化ヘッド11の支軸14方向に片当たりが発生した場合に、プラテンバネ16および調整バネ17の付勢力によってヘッド支持部材13がプラテンローラ12に対して移動することで、支軸14の各端部が各軸穴15内に沿ってそれぞれ移動する。
【0038】
このため、ヘッド支持部材13は、プラテンローラ12に対する支軸14方向の相対位置が移動され、プラテンローラ12の周面に対して熱活性化ヘッド11が支軸14方向に亘って良好に圧接される。すなわち、熱活性化装置10では、プラテンローラ12に対して熱活性化ヘッド11の支軸14方向に生じた片当たりが自律的に矯正される。このため、熱活性化ヘッド11に対するシート材3の圧接状態が不足するのを防ぐことができる。
【0039】
上述したように、熱活性化装置10によれば、支軸14が移動可能に挿通される長穴状の軸穴15を有するヘッド支持部材13と、プラテンバネ16よりも付勢力が小さい調整バネ17とを備えることによって、プラテンローラ12と熱活性化ヘッド11との支軸14方向の圧接状態に応じて、プラテンローラ12に対してヘッド支持部材13が自律的に移動されて調整される。このため、この熱活性化装置10によれば、プラテンローラ12に対して熱活性化ヘッド11の支軸14方向に生じる片当たりが調整され、シート材3に対して熱活性化ヘッド11を支軸14方向に亘って良好に圧接させることを可能にし、熱活性化ヘッド11に対するシート材3の圧接状態が不足することを防ぎ、シート材3にかすれた箇所が生じるのを抑えることができる。
【0040】
したがって、この熱活性化装置10によれば、支持フレームやヘッド支持部材13等の寸法精度が十分に確保されない場合であっても、プラテンローラ12に対する熱活性化ヘッド11のオフセット量を一定に確保すると共に、シート材3に対する熱活性化ヘッド11の支軸14方向の片当たりを容易に解消することができる。
【0041】
上述した実施形態では、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させる方向にヘッド支持部材13を付勢するプラテンバネ16として圧縮コイルバネが用いられ、軸穴15内での支軸14の位置を規制して熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させる方向にヘッド支持部材13を付勢する一組の調整バネ17として引っ張りコイルバネが用いられる構成を一例として説明した。この構成に限定されるものではなく、本発明に係る熱活性化装置は、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に圧接させるように付勢する付勢部材であれば、例えば板バネ、捻りコイルバネや、ゴム等の弾性部材等が用いられてもよい。以下、プラテンバネ16または調整バネ17として他の付勢部材を用いる他の実施形態について説明する。
【0042】
(他の実施形態)
図4に示すように、上述の実施形態では、調整バネ17としての引っ張りコイルバネによってヘッド支持部材13の支持片19を引っ張る構成が採られたが、調整バネ17によってヘッド支持部材13を押圧する構成が採られてもよい。調整バネ17によってヘッド支持部材13を押圧する構成が採られた他の実施形態について、図4(a)〜図4(d)を参照して説明する。
【0043】
他の実施形態では、プラテンバネ16として圧縮コイルバネが用いられており、調整バネ17として図4(a)に示すように圧縮コイルバネが用いられてもよく、また図4(b)に示すように板バネが用いられてもよい。板バネは、一端が固定されて、他端がヘッド支持部材13に当接されている。
【0044】
また同様に、他の実施形態は、プラテンバネ16として圧縮コイルバネが用いられて、調整バネ17として図4(c)に示すように捻りコイルバネが用いられてもよく、また図4(d)に示すように弾性部材が用いられてもよい。これらの構成において、捻りコイルバネは、支軸(不図示)に支持されており、一端が固定部(不図示)に突き当てられ、他端がヘッド支持部材13に当接されている。弾性部材は、例えばゴム材や多孔質体等からなり、弾性変形された状態でヘッド支持部材13に圧接されている。すなわち、弾性部材は、弾性力によってヘッド支持部材13を押圧するように設けられている。
【0045】
続いて、プラテンバネ16として板バネが用いられた他の実施形態について、図5(a)〜図5(e)を参照して簡単に説明する。
【0046】
他の実施形態では、調整バネ17として引っ張りコイルバネが用いられており、図5(a)に示すようにプラテンバネ16として板バネが用いられてもよい。また、他の実施形態は、プラテンバネ16として板バネが用いられており、図5(b)に示すように調整バネ17として圧縮コイルバネが用いられてもよく、また図5(c)に示すように調整バネ17として板バネが用いられてもよい。
【0047】
また同様に、他の実施形態は、プラテンバネ16として板バネが用いられており、図5(d)に示すように調整バネ17として捻りコイルバネが用いられてもよく、また図5(e)に示すように調整バネ17として弾性部材が用いられてもよい。
【0048】
図6に示すように、プラテンバネ16や調整バネ17として用いられる板バネは、例えば金属材からなり、ヘッド支持部材13に当接する一側が櫛形状に所定間隔で切り欠かれて複数の弾性片20がそれぞれ形成されている。このように構成された板バネによれば、弾性片20の寸法を適宜調整することで、板バネによる押圧力を容易に制御することが可能になり、熱活性化ヘッド11をプラテンローラ12に良好に押圧することができる。
【0049】
つまり、板バネは、例えば、弾性片20の基端からヘッド支持部材13に当接される先端までの長さや、弾性片20の幅を太くしたり細くしたりすることや、各弾性片20の間隔(ピッチ)を大きくしたり小さくすることで弾性片20の個数を適宜変更することなどによって、板バネの弾性力を調整することができる。また、板バネで押圧するヘッド支持部材13の幅方向(プラテンローラ12の軸方向)に対して、各弾性片20による押圧力が均一に加わるように、ヘッド支持部材13に各弾性片20を当接させるように構成することが好ましい。この場合、板バネは、例えば、複数の弾性片20が、ヘッド支持部材13の幅方向に対して等間隔、あるいはヘッド支持部材13の幅方向の中心線に対して線対称に設けられて、ヘッド支持部材13に当接させるように構成される。また、板バネは、例えばプラスチック等の樹脂材料によって形成することもできるが、熱活性化ヘッド11などの熱の影響による弾性力の変化を考慮すると、熱による影響が比較的少ない金属材料で形成するのが望ましい。
【0050】
最後に、プラテンバネ16として捻りコイルバネが用いられた他の実施形態について、図7(a)〜図7(e)を参照して簡単に説明する。
【0051】
他の実施形態では、調整バネ17として引っ張りコイルバネが用いられており、図7(a)に示すようにプラテンバネ16として捻りコイルバネが用いられてもよい。また、他の実施形態は、プラテンバネ16として捻りコイルバネが用いられており、図7(b)に示すように調整バネ17として圧縮コイルバネが用いられてもよく、また図7(c)に示すように調整バネ17として板バネが用いられてもよい。
【0052】
また同様に、他の実施形態は、プラテンバネ16として捻りコイルバネが用いられており、図7(d)に示すように調整バネ17として捻りコイルバネが用いられてもよく、また図7(e)に示すように調整バネ17として弾性部材が用いられてもよい。
【0053】
上述したように、プラテンバネ16および調整バネ17は、必要に応じて、各種バネや弾性部材が組み合わされて用いられてもよく、同様の効果を得ることができる。また、熱活性化装置の小型化を図ることを考慮した場合、プラテンバネとしては圧縮コイルバネや板バネを用いる構成が好ましく、調整バネとしては引っ張りコイルバネ、圧縮コイルバネ、捻りコイルバネ、板バネを用いる構成が好ましい。
【0054】
なお、上述した実施形態では、熱活性化装置が、プラテンローラに対する熱活性化ヘッドの片当たりを抑える構成にされたが、プラテンローラに対する印字ヘッドの片当たりを抑える構成として印字装置に適用されても同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、上述した実施形態の熱活性化装置では、支軸が挿通される軸穴が、発熱素子を中心とする円周上に沿って形成される構成が採られたが、軸穴は、内径が支軸の外径よりも大きく形成された丸穴に形成されて、この軸穴内に支軸がプラテンバネおよび調整バネによる付勢方向に移動可能に挿通される構成にされてもよく、上述と同様の効果が得られる。
【0056】
また、上述した実施形態の熱活性化装置では、支軸が挿通される軸穴がヘッド支持部材の支持片に設けられる構成が採られたが、図示しないが、例えば軸穴が支持フレームに設けられると共に、ヘッド支持部材に支軸が固定されて設けられる構成が採られてもよく、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態のラベル発行装置を模式的に示す断面図である。
【図2】前記熱活性化装置を示す側面図である。
【図3】プラテンローラと熱活性化ヘッドとの支軸方向の当接状態を示す正面図である。
【図4】調整バネとして他のバネを用いる種々の構成を説明するための側面図である。
【図5】プラテンバネとして板バネを用いる種々の構成を説明するための側面図である。
【図6】板バネの形状を示す平面図である。
【図7】プラテンバネとして捻りコイルバネを用いる種々の構成を説明するための側面図である。
【図8】従来の熱活性化装置を示す側面図である。
【図9】従来の熱活性化装置におけるプラテンローラと熱活性化ヘッドとの支軸方向の当接状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ラベル発行装置
3 シート材
6 印字装置
10 熱活性化装置
11 熱活性化ヘッド
12 プラテンローラ
13 ヘッド支持部材
14 支軸
15 軸穴
16 プラテンバネ
17 調整バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の一方に印字層が設けられ他方に感熱性粘着層が設けられてなるシート材の前記感熱性粘着層を熱活性化するための発熱体を有する加熱手段と、
前記加熱手段が圧接されて前記シート材を保持して搬送するためのプラテンローラと、
前記加熱手段を支持する支持部材と、
前記加熱手段を前記プラテンローラに対して近接離間させる方向に前記支持部材を回動可能に支持する支軸と、
前記加熱手段を前記プラテンローラに圧接させる方向に前記支持部材を付勢する第1の付勢部材と、
前記支軸が前記第1の付勢部材による付勢方向に移動可能に係合される軸穴と、
前記軸穴内での前記支軸の位置を規制し、前記加熱手段を前記プラテンローラに圧接させる方向に前記支持部材を付勢する第2の付勢部材とを備え、
前記第2の付勢部材の付勢力は、前記第1の付勢部材の付勢力よりも小さくされている熱活性化装置。
【請求項2】
前記支持部材は、一端部に前記加熱手段が設けられ、他端部に前記軸穴が設けられている請求項1に記載の熱活性化装置。
【請求項3】
前記軸穴は、前記発熱体を中心とする円周方向に沿って長穴状に形成されている請求項1または2に記載の熱活性化装置。
【請求項4】
前記前記第1の付勢部材は、前記支持部材を挟んで前記プラテンローラの反対側から前記支持部材の一端部を押圧する位置に配置され、
前記第2の付勢部材は、前記支持部材に対して前記第1の付勢部材の反対側から前記支持部材の他端部を引っ張る位置に配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱活性化装置。
【請求項5】
前記第1の付勢部材は圧縮コイルバネ、板バネ、捻りコイルバネのいずれかであり、前記第2の付勢部材は引っ張りコイルバネである請求項4に記載の熱活性化装置。
【請求項6】
前記前記第1の付勢部材は、前記支持部材を挟んで前記プラテンローラの反対側から前記支持部材の一端部を押圧する位置に配置され、
前記第2の付勢部材は、前記支持部材に対して前記第1の付勢部材と同じ側から前記支持部材の他端部を押圧する位置に配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱活性化装置。
【請求項7】
前記第1の付勢部材は、圧縮コイルバネ、板バネ、捻りコイルバネのいずれかである請求項6に記載の熱活性化装置。
【請求項8】
前記第2の付勢部材は、圧縮コイルバネ、板バネ、捻りコイルバネのいずれかである請求項6に記載の熱活性化装置。
【請求項9】
シート状基材の一方に感熱性印字層が設けられ他方に感熱性粘着層が設けられてなるシート材の前記感熱性印字層に印字するための発熱体を有する印字手段と、
前記印字手段が圧接されて前記シート材を保持して搬送するためのプラテンローラと、
前記印字手段を支持する支持部材と、
前記印字手段を前記プラテンローラに対して近接離間させる方向に前記支持部材を回動可能に支持する支軸と、
前記印字手段を前記プラテンローラに圧接させる方向に前記支持部材を付勢する第1の付勢部材と、
前記支軸が前記第1の付勢部材による付勢方向に移動可能に係合される軸穴と、
前記軸穴内での前記支軸の位置を規制し、前記印字手段を前記プラテンローラに圧接させる方向に前記支持部材を付勢する第2の付勢部材とを備え、
前記第2の付勢部材の付勢力は、前記第1の付勢部材の付勢力よりも小さくされている印字装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱活性化装置と、前記印字層を加熱して印字する印字装置とを備え、前記シート材を前記熱活性化装置と前記印字装置とを通るように搬送するプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−98938(P2007−98938A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173744(P2006−173744)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】