説明

熱源装置

【課題】 戻り口部の形状を工夫することで、簡単な構成により、液室内の局部加熱沸騰を防止できるようにする。
【解決手段】 内胴39と外胴40との間に熱媒液を貯溜する液室41が形成され、この液室41の内側に燃焼室42が形成された横向き設置の缶体16と、この缶体16の燃焼室42の一端側に設けられたバーナ17と、液室41の熱媒液を放熱器へ循環させた後に再び液室41に戻す循環ポンプとを備え、液室41の戻り口部45がバーナ寄とした缶体16の一端部側の下部に設けられ、かつ、液室41の往き口部47が缶体16の他端部側に設けられた構成の熱源装置である。そして、戻り口部45は、外胴を貫通してその先端部を内胴39に接近或いは当接させると共にその内胴39の円周方向の片側一方向に向けて熱媒液を噴出する開放面Xを有する戻り口管46にて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房パネル等の放熱器に加熱した熱媒液を循環供給する熱源装置に関し、特に、内、外胴間に熱媒液を貯溜する液室が形成される共にその液室の内側に燃焼室が形成された横向き設置型の熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱源装置において、内胴と外胴との間に熱媒液を貯溜する液室が形成され、この液室の内側に燃焼室が形成された横向き設置の缶体と、この缶体の燃焼室の一端側に設けられたバーナと、液室の熱媒液を放熱器へ循環させた後に再び液室に戻す循環ポンプとを備え、前記液室の戻り口部がバーナ寄とした缶体の一端部側の下部に設けられ、かつ、液室の往き口部が前記缶体の他端部側に設けられた構成の熱源装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−28441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来構成の熱源装置では、図4に示すように、内胴1と外胴2との間に液室3を形成した缶体4におけるバーナ寄の下部に、床暖房パネル等で放熱した後の熱媒液を液室3に戻すための戻り口部5が設けられている。この従来構成の戻り口部5は、水平に切断された戻り口管6の先端部を外胴2に貫通させて液室3に臨ませた構成であるため、前記した戻り口部5から液室3内に流入した熱媒液が、そのまま缶体4の往き口部7へ流れ、例えば、バーナ寄りの液室3の上部に局部加熱が生じて熱媒液が沸騰し、釜鳴り音現象が発生する場合がある。
【0004】
上記したような熱媒液の沸騰による釜鳴り音現象は、特に、床暖房パネルを設置した部屋の室温や床温が設定温度に近づいて、床暖房パネルへ循環供給する熱媒液の循環量が減少しており、なおかつ、バーナの燃焼量がまだ最小燃焼量まで低下していないときに、発生していた。
【0005】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたものであり、戻り口部の形状を工夫することで、簡単な構成により、液室内の局部加熱沸騰を防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、内胴と外胴との間に熱媒液を貯溜する液室が形成され、この液室の内側に燃焼室が形成された横向き設置の缶体と、この缶体の燃焼室の一端側に設けられたバーナと、液室の熱媒液を放熱器へ循環させた後に再び液室に戻す循環ポンプとを備え、前記液室の戻り口部がバーナ寄とした缶体の一端部側の下部に設けられ、かつ、液室の往き口部が前記缶体の他端部側に設けられた構成の熱源装置において、前記戻り口部は、外胴を貫通してその先端部を前記内胴に接近或いは当接させると共にその内胴の円周方向の片側一方向に向けて熱媒液を噴出する開放面を有する戻り口管にて構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱源装置において、前記戻り口管の開放面は、斜めに切断された傾斜切断面にて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、液室の戻り口部からは内胴の円周方向の片側一方向に向けて熱媒液が噴出されるので、この戻り口部から噴出された放熱後の温度低下した熱媒液は、液室の出口となる往き口部へそのまま流れること無く、内胴の円周方向の片側一方向へ流れて旋回流となり、缶体上部に滞留しやすい高温の熱媒液を拡散でき、液室内の局部加熱沸騰が原因での釜鳴り音現象を、簡単な構成で抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態における熱源装置の内部構造の説明図、図2は要部縦断面図である。
【0010】
図1及び図2において、10は床暖房などの温水暖房に利用される熱源装置、11は外装体、12は外装体11の天板、13は底板である。14は外装体11内の下部に設けられた循環ポンプ、15は循環ポンプ14の上方に設置されたリザーブタンク、16はリザーブタンク15の上方に横向き設置された缶体である。
【0011】
17は缶体16の一端側に取り付けられた灯油等の石油燃料を気化して燃焼させる石油気化式のバーナであり、この石油気化式のバーナ17は燃焼量が最大燃焼量から最小燃焼量の範囲で可変するものである。
【0012】
18、19は下端が底板13に固定され、外装体11内に間隔を存して立設された支持板であり、これら支持板18、19間に前記リザーブタンク15を載せる載置板20が架設され、前記支持板18、19の上部で前記缶体16の左右の両端部が支持されている。また、前記缶体16の上部には、プレッシャーキャップ21が設けられたキャップ受け体22が取り付けられている。
【0013】
前記キャップ受け体22とリザーブタンク15との間にはパイプ(図示せず)が接続され、循環用の補給水がリザーブタンク15からパイプを通り缶体16へ補給される。また、缶体16の下部には可撓性の戻り管24が接続され、この戻り管24は缶体16から下方へ延び、適所から略直角に折曲して後方へ延びて外装体11の外部へ臨ませている。
【0014】
25は支持板19と外装体11との間に設けられた運転制御装置等の電装部品、27は表示部を兼ねた操作部であり、この操作部27には運転スイッチ等の複数のスイッチと複数の表示ランプ等が設けられている。
【0015】
30は缶体16と循環ポンプ14との間に接続された循環パイプ、31は循環ポンプ14の吐出口側に接続された往き管であり、この往き管31も後方に延びて外装体11の外部に臨ませてある。
【0016】
33はオイルレベラー、34は燃料供給用の電磁ポンプ、この電磁ポンプ34により汲み上げられたオイルレベラー33内の燃料は燃料供給管35を通って前記バーナ17へ供給される。
【0017】
36は前記バーナ17に燃焼用空気を供給するバーナ送風機、37は缶体16内から排出されるバーナ17の燃焼排ガスを外部へ排気する排気管である。
【0018】
次に前記缶体16について詳述する。この缶体16は、図1及び図2に示すように、円筒形状の内胴39と、この内胴39の外側に間隔を開けて同心的に設けた外胴40との間に、循環用温水(熱媒液)を貯溜する液室41が形成されてあり、この液室41の内側、即ち、内胴39内に燃焼室42が形成されており、この燃焼室42の燃焼排ガスは、前記液室41を貫通する多数の煙管43、43を通って排気ケース44内に集合した後、排気管37から外部へ排気される。
【0019】
45は前記バーナ17寄りとした缶体16の下部に設けられた液室41の戻り口部であり、この戻り口部45は、図2に示すように、外胴40を貫通してその先端部を前記内胴39に接近或いは当接させると共に、その内胴39の円周方向の片側一方向に向けて循環用温水(熱媒液)を噴出する開放面Xを有するステンレス鋼管製の戻り口管46にて構成されている。
【0020】
そして、前記戻り口管46の開放面Xは、斜め上向きになるように、鉛直方向に対し、約45度の傾斜角度θで切断した傾斜切断面にて形成されている。また、この戻り口管46の下部に前記した戻り管24が接続されるものである。
【0021】
また、47は前記缶体16の他端部側の上部に設けられた液室41の往き口部であり、この往き口部47は、前記循環パイプ30を介して循環ポンプ14の吸い込み部に連通する。
【0022】
このように構成された熱源装置10において、バーナ17が燃焼を開始すると、バーナ17の火炎Fが燃焼室42に形成され、この燃焼室42の燃焼ガスは、多数の煙管43、43を通過して液室41の循環用温水(熱媒液)を加熱昇温させ、排気ケース44から排気管37を通って外部へ排気される。
【0023】
前記循環ポンプ14の運転が開始されると、缶体16で約40〜60℃に加熱された循環用温水(熱媒液)は、往き口部47を出て、循環パイプ30、循環ポンプ14及び往き管31を介して、例えば、室内の床に設置された床暖房パネル等の放熱器(図示せず)に循環され、この放熱器で温水暖房が行なわれ、放熱器で放熱後の温度低下した循環用温水(熱媒液)は、戻り管24を通り、戻り口管46先端の開放面Xから液室41内に噴出して戻される。
【0024】
ここで、戻り口管46先端の開放面Xから液室41内に噴出される放熱後の温度低下した循環用温水(熱媒液)は、図2に示すように、液室41の出口となる往き口部47へそのまま流れること無く、内胴39の円周方向の片側一方向へ向かって流れて旋回流となり、この旋回流によって、バーナ17に近い液室41の上部(図1の破線で示す領域Y)に高温の循環用温水(熱媒液)が停滞しないように拡散させることができ、液室41内の局部加熱沸騰を抑え、この局部加熱沸騰が原因での釜鳴り音現象を抑制することができる。
【0025】
尚、上述の一実施形態では、戻り口管46の開放面Xは、斜め上向きになるように、鉛直方向に対し、約45度の傾斜角度θで切断した傾斜切断面にて形成されているが、例えば、図3に示すように、液室41内に突出した部分における戻り口管46の先端部の半分を削除して、上面と右側面(図3においての右側面)を開放させた形状にしても良く、本発明はこれらの実施形態に限定されるものでないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示す熱源装置の内部構造を説明する説明図である。
【図2】同じく、要部縦断側面図である。
【図3】戻り口管の他の実施形態を示す要部縦断側面図である。
【図4】従来例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 熱源装置
14 循環ポンプ
16 缶体
17 バーナ
39 内胴
40 外胴
42 燃焼室
45 戻り口部
46 戻り口管
47 往き口部
X 開放面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内胴と外胴との間に熱媒液を貯溜する液室が形成され、この液室の内側に燃焼室が形成された横向き設置の缶体と、この缶体の燃焼室の一端側に設けられたバーナと、液室の熱媒液を放熱器へ循環させた後に再び液室に戻す循環ポンプとを備え、前記液室の戻り口部がバーナ寄とした缶体の一端部側の下部に設けられ、かつ、液室の往き口部が前記缶体の他端部側に設けられた構成の熱源装置において、
前記戻り口部は、外胴を貫通してその先端部を前記内胴に接近或いは当接させると共にその内胴の円周方向の片側一方向に向けて熱媒液を噴出する開放面を有する戻り口管にて構成されていることを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
前記戻り口管の開放面は、斜めに切断された傾斜切断面にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52904(P2006−52904A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235521(P2004−235521)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(503358732)三洋エアコンディショナーズ株式会社 (46)
【Fターム(参考)】