説明

熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料

【課題】感光層を構成するバインダー樹脂として用いたときに、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料を得ることができる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料を提供する。
【解決手段】熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、少なくとも40メッシュの篩を通過可能な粒子状とし、前記粒子を重量比で10倍量の蒸留水に投入し、20℃の条件下にて回転数40rpmの速度で20時間攪拌して混合した後、更に20℃の条件下にて1時間静置した後の上澄み水を抽出水としたときに、前記抽出水のpHが5.0〜8.5である熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光層を構成するバインダー樹脂として用いたときに、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料を得ることができる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀感光材料は、その優れた写真特性により、高品質な素材として画像形成分野に広範囲に利用されている。しかし、従来のハロゲン化銀感光材料は、現像及び定着が複雑であることに加え、処理工程が湿式であることから多量の化学廃液を排出するという問題があった。
これに対して、現像工程を熱処理で行う熱現像性感光材料が開発され、実用化されている。
【0003】
熱現像性感光材料としては、主に、脂肪酸の銀塩、有機還元剤、必要に応じて少量の感光性ハロゲン化銀をバインダー樹脂中に分散させた感光層を、紙、プラスチックフイルム、金属箔、ガラス板等の支持体上に積層したものが考えられている。このような熱現像性感光材料としては、例えば、特許文献1には、有機銀塩、還元剤及び有機銀イオンに対して触媒的に接触しているハロゲン化銀からなる熱現像性感光材料が開示されている。
【0004】
熱現像性感光材料の感光層を構成するバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、酢酸プロピオン酸セルロース樹脂、酢酸酪酸セルロース樹脂等の成膜性に優れた樹脂が用いられている。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂が最適のものとして用いられている。
【0005】
しかし、従来の熱現像性感光材料では、材料中の不純物が原因と思われる着色、かぶり、階調不良、感度不足、保存安定性低下等が生じるという問題があった。これに対して、銀塩、還元性物質、添加剤等の改善が図られてきた。例えば、特許文献2には、独立した安定化剤、安定化剤プレカーサ成分を含まず、チオン化合物の銀塩を用いることにより、着色、かぶり、階調不良、感度不足、保存安定性低下等を改善する方法が開示されている。しかしながら、この方法を用いても、熱現像性感光材料の着色、かぶり、階調不良、感度不足、保存安定性低下等の問題点を充分には改善できていないのが現状であった。
【特許文献1】特公昭43−4924号公報
【特許文献2】特開昭49−52626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、感光層を構成するバインダー樹脂として用いたときに、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料を得ることができる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、少なくとも40メッシュの篩を通過可能な粒子状と
し、前記粒子を重量比で10倍量の蒸留水に投入し、20℃の条件下にて回転数40rpmの速度で20時間攪拌して混合した後、更に20℃の条件下にて1時間静置した後の上澄み水を抽出水としたときに、前記抽出水のpHが5.0〜8.5である熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂である。
本発明は、熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、遊離酸値が0.03以下である熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリビニルアセタール樹脂は、製法上の原因により微量の不純物を含有していることが通常であるため、熱現像性感光材料における着色、かぶり、階調不良、感度不足、保存安定性低下等の諸問題が、感光層のバインダー樹脂として用いられているポリビニルアセタール樹脂中に含まれる不純物に起因することを見出した。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、一定の方法により抽出を行ったときの抽出水pHが一定の範囲及び/又は抽出水中の遊離酸値が一定以下であるポリビニルアセタール樹脂を用いた場合には、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂(以下、単にポリビニルアセタール樹脂ともいう)は、少なくとも40メッシュの篩を通過可能な粒子状とし、前記粒子を重量比で10倍量の蒸留水に投入し、20℃の条件下にて回転数40rpmの速度で20時間攪拌して混合した後、更に20℃の条件下にて1時間静置した後の上澄み水を抽出水としたときに、得られた抽出水のpHの下限が5.0、上限が8.5である。5.0未満であると、ポリビニルアセタール樹脂に含まれる酸性の不純物が多いことを表す。8.5を超えると、アルカリ性の不純物が多いことを表す。酸性又はアルカリ性の不純物が多いと、ポリビニルアセタール樹脂を適当な溶媒に溶解して調製した塗工溶液のポットライフが低下し、得られる熱現像性感光材料の保存安定性が低下する。更に、上記不純物により、得られる熱現像性感光材料の着色、かぶり、階調不良、感度不足等が引き起こされる。
【0010】
また、本発明のポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも40メッシュの篩を通過可能な粒子状とし、この粒子を重量比で10倍量の蒸留水に投入して混合した後、20℃、1時間静置した後の上澄み水を抽出水としたときに、得られた抽出水中の遊離酸値の上限が0.03である。0.03を超えると、ポリビニルアセタール樹脂に含まれる酸性の不純物が多いことを表す。酸性の不純物が多いと、ポリビニルアセタール樹脂を適当な溶媒に溶解して調製した塗工溶液のポットライフが低下し、得られる熱現像性感光材料の保存安定性が低下する。更に、上記酸性の不純物により、ポリビニルアセタール樹脂の劣化が進行しやすくなり、得られる熱現像性感光材料の着色、かぶり、階調不良、感度不足等が引き起こされる。
なお、本明細書において遊離酸値とは、フリーなブレンステッド酸量のことを意味する。
【0011】
上記遊離酸値の測定方法としては特に限定されないが、例えば、以下の方法により測定することができる。
ポリビニルアセタール樹脂1gを90vol%エタノール水溶液40mLに投入し、室温にて2時間振蕩して溶解する。この溶液に1%フェノールフタレイン溶液を3滴投入し、撹拌した後、0.02mol/Lに調整した水酸化カリウムのイソプロパノール溶液を滴下投入する。微紅色を30秒以上保持する時を終点とし、このときの投入量をa(mL)とする。一方、ポリビニルアセタール樹脂を投入せず、90vol%エタノール水溶液40mLのみを同様の方法で滴定し、このときの投入量をb(mL)とする。ポリビニルアセタール樹脂の遊離酸値は、下記式(1)により算出することができる。
【0012】
【数1】

ポリビニルアセタール樹脂中に含まれる不純物の指標としては、上記抽出液のpHと、遊離酸値のいずれを用いてもよく、また、これらを併用してもよい。ポリビニルアセタール樹脂の見かけ比重が軽すぎたり、水に膨潤したりして抽出水pHの測定が困難である場合には、遊離酸値を指標とすることが好ましい。
【0013】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、残存するハロゲン化物量の好ましい上限は100ppmである。100ppmを超えると、感光性ハロゲン化銀が生成して、得られる熱現像性感光材料の保存性が低下したり、かぶり等の原因となったりすることがある。より好ましい上限は50ppmである。
【0014】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度の好ましい下限が40モル%、好ましい上限が78モル%である。40モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができないことがある。78モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ塗膜の強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0015】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量の好ましい下限が17モル%、好ましい上限が35モル%である。17モル%未満であると、バインダー樹脂として用いたと
きに銀塩の分散性が悪く、感度が低下してしまうことがある。35モル%を超えると、得られる熱現像性感光材料の感光層の透湿性が高く、かぶりが発生したり、保存安定性が悪化したり、画像濃度が低下したりすることがある。
【0016】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、残存アセチル基量の好ましい上限が25モル%である。25モル%を超えると、得られる熱現像性感光材料同士のブロッキングが生じたり、得られる画像が鮮明でなくなったりすることがある。より好ましい上限は15モル%である。
【0017】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、重合度の好ましい下限が200、好ましい上限が3000である。この範囲内であると、銀塩の分散性や、塗工したときの塗膜の強度、塗工性等のバランスを取り易い。より好ましい下限は300、より好ましい上限は1000である。
【0018】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、側鎖に下記式(1)で表される官能基、下記式(2)で表される官能基、下記式(3)で表される官能基、下記式(4)で表される官能基、下記式(5)で表される官能基、下記式(6)で表される官能基、第3級アミン基、及び、第4級アンモニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する変性ポリビニルアセタール樹脂であってもよい。このような側鎖を有することによりバインダー樹脂として用いた場合の有機銀塩等の分散性を向上させることができる。
【0019】
【化1】

式中、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0020】
上記第3級アミン基としては特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。また、Rがアルキル基の場合、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂における、上記官能基の含有量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は5モル%である。0.1モル%未満であると、有機銀塩の分散性向上効果が得られないことがあり、5モル%を超えると、有機溶剤に対する溶解性が低下し、バインダー樹脂として用いることができないことがある。
【0022】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、主鎖にα−オレフィン単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂であってもよい。主鎖にα−オレフィン単位を有することにより、通常のポリビニルアセタール樹脂に比較して疎水性が高くなり、得られる感光層の透湿度を低減することができ、従来のポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とする感光層の問題点であった、水分の浸透によるかぶりや保存性の低下等を抑えられることがある。
【0023】
上記α−オレフィン単位としては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は環状のアルキル基に由来するものが好適である。上記範囲内であれば分岐や直鎖状の部位と環状の部位の両方を含んでいても良い。上記α−オレフィン単位の炭素数が20を超えると、原料として用いる変性ポリビニルアルコールの溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せず変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができなかったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低く熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができなかったりすることがある。より好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は環状のアルキル基に由来するものであり、更に好ましくは炭素数2〜6の直鎖状アルキル基に由来するものである。具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等に由来する単位が好適である。
【0024】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖中における上記α−オレフィン単位の含有量の好ましい下限は1モル%、好ましい上限は20モル%である。1モル%未満であると、充分な透湿性低減効果が得られないことがある。20モル%を超えると、原料として用いる変性ポリビニルアルコールの溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せず、変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができなかったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低くなったり、有機銀塩の分散性が劣ったりして、熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができないことがある。より好ましい上限は10モル%である。
【0025】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。また、ポリ酢酸ビニルのアルコール溶液中に酸触媒とアルデヒドとを添加することによっても製造することができる。
【0026】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピルアルデヒド等のアセタール化できるアルデヒドであればどのようなアルデヒドを用いてもよい。なかでも、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、又は、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとを併用すること好ましい。
また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化された部分のうちアセトアルデヒドによりアセタール化された部分の割合の好ましい下限は、全アセタール化部分に対して、30%である。30%未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂のガラス転
移点が80℃以下となり、感光性銀塩の核成長が進み過ぎたり、銀塩の分散性が不充分で画像の解像度や鮮明度が不充分となったりすることがある。より好ましい下限は50%である。
【0027】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性のものが好適である。非ハロゲン性の酸触媒を用いれば、残存ハロゲン化物量を100ppm以下とすることが容易になる。また、ハロゲン性の酸触媒を用いる場合には、得られたポリビニルアセタール樹脂を水や水/アルコールの混合溶液等により充分に洗浄して精製することが好ましい。
【0028】
なお、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応においては、アルデヒドの酸化防止のため、又は、得られるポリビニルアセタール樹脂の酸化防止及び耐熱性向上のために、反応系又は樹脂系にヒンダードフェノール系、ビスフェノール系、リン酸系等の酸化防止剤を添加する方法が知られている。しかし、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する場合には、上記酸化防止剤を使用しないことが好ましい。酸化防止剤を使用すると、酸化防止剤が変性ポリビニルアセタール樹脂中に残存し、塗工溶液のポットライフの低下、得られる熱現像性感光材料の保存性の低下等を引き起こし、かぶりや画像/階調部の鮮明性を損なうことがある。
【0029】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られたポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0030】
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造において、上記抽出水のpHを5.0〜8.5とし、遊離酸値を0.03以下とする方法としては、例えば、1)上記中和工程の前及び/又は上記中和後の洗浄工程前に、析出したポリビニルアセタール樹脂を、60メッシュの篩を通過可能な程度の微小粒子状にすることにより、中和及び洗浄の効率を上げる方法;2)上記中和工程の前及び/又は上記中和後の洗浄工程前に、析出したポリビニルアセタール樹脂を、ボールミル等で物理的に粉砕し、60メッシュの篩を通過可能な程度の微小粒子状にすることにより、中和及び洗浄の効率を上げる方法;3)上記アセタール化反応での温度等の反応条件を制御し、析出するポリビニルアセタール樹脂の粒子径を60メッシュの篩を通過可能な程度の微小粒子状に制御したうえで中和及び洗浄を行うことにより、中和及び洗浄の効率を上げる方法等を用いることが好ましい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造において、これら1)〜3)の方法は単独で行ってもよいが、併用することでより高い効果が得られる。なかでも、1)若しくは3)、又は、1)と3)との併用が好ましい。
これら1)〜3)の方法を有するポリビニルアセタール樹脂の製造方法もまた、本発明の一つである。
【0031】
ここで、上記3)の方法において析出したポリビニルアセタール樹脂の粒子径は、得られたポリビニルアセタール樹脂を乳鉢ですりつぶし、光学顕微鏡にて50〜100個のポリビニルアセタール樹脂粒子をランダムに観察することで確認することができる。このとき、粒子径が35μm以下である粒子の割合の好ましい下限は80%である。80%未満であると、中和時のアルカリとの反応効率が低下することがある。より好ましい下限は95%である。
【0032】
また、ポリビニルアセタール樹脂の粒子が小さすぎると、ポリビニルアセタール樹脂が飛散しやすくなって取扱性が低下するので、洗浄及び中和後には必要に応じて粒子径を大きくする工程を行ってもよい。ポリビニルアセタール樹脂の粒子径を大きくする方法としては特に限定されないが、例えば、洗浄後、ポリビニルアセタール樹脂の微小粒子を水に分散させ、加熱して微小粒子同士を合着させる方法;ポリビニルアセタール樹脂を乾燥し、加熱又は室温でプレスし、板状にした後、適当な粒子径となるように粉砕する方法等が挙げられる。
【0033】
上記官能基を側鎖に有する変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、ビニルエステルと上記官能基を有するモノマーとを共重合した共重合体をケン化して得た変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法;ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール樹脂の主鎖に結合する水酸基を利用して官能基を導入する方法等が挙げられる。
上記官能基を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0034】
上記主鎖にα−オレフィン単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化して得た変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法等が挙げられる。
【0035】
本発明のポリビニルアセタール樹脂を感光層のバインダー樹脂として用いれば、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料を得ることができる。
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とする感光層を有する熱現像性感光材料もまた、本発明の1つである。
【0036】
本発明の熱現像性感光材料は、支持体と、支持体に積層された感光層とからなる。
上記感光層は、本発明のポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として、有機銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀、有機溶剤等を含有する分散液を上記支持体表面に塗工することにより形成される。
【0037】
上記有機銀塩としては、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩であり、感光したハロゲン化銀の存在下で80℃以上に加熱されたときに有機還元剤と反応して銀を生ずるものであれば特に限定されず、例えば、メルカプト基、チオン基又はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩、ベンゾトリアゾール銀等が挙げられる。具体的には、3−メルカプト−4−フェニル1,2,4−トリアゾールの銀塩、2−メルカプト−ベンツイミダゾールの銀塩、2−メルカプト−5−アミノチアゾールの銀塩、1−フェニル−5−メルカプトテトラチアゾールの銀塩、2−メルカプトベンゾチアゾールの銀塩、チオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩等のジチオカルボン酸の銀塩、チオアミド銀、チオピリジン銀塩ジチオヒドロキシベンゾールの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、メルカプトオキサジアゾールの銀塩、脂肪族カルボン酸の銀塩:カプリン酸銀、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロイン酸銀、リノール酸銀、オレイン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、アジピン酸銀、セバシン酸銀、こはく酸銀、酢酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀等、芳香族カルボン酸銀、チオンカルボン酸銀、チオエーテル基を有する脂肪族カルボン酸銀、テトラザインデンの銀塩、S−2−アミノフェニルチオ硫酸銀、含金属アミノアルコール、有機酸金属キレート等が挙げられる。なかでも、脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましく、ベヘン酸銀がより好ましい。
【0038】
上記有機銀塩の粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は10μmである。より好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は5μmである。
【0039】
上記有機銀塩の配合量としては特に限定されないが、ポリビニルアセタール100重量部に対して好ましい下限は10重量部、好ましい上限は1000重量部である。より好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は500重量部である。
【0040】
上記有機銀塩は、感光性ハロゲン化銀が触媒的に接触させられてもよい。この場合は、例えば、予め調製された有機銀塩の溶液や分散液、又は、有機銀塩を含む熱現像性感光材料に、ハロゲン化銀形成成分を作用させて有機銀の一部をハロゲン化銀に形成する方法等が挙げられる。
【0041】
上記有機還元剤としては特に限定されず、上記有機銀塩の種類により適宜選択され、例えば、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリヒドロキシベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類又はポリヒドロキシナフタレン類、ハイドロキノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類等が挙げられる。なかでも、光分解性の有機還元剤が好ましく用いられるが、熱分解性の有機還元剤も用いることができる。また、光分解を促進する化合物を併用することもでき、ハロゲン化銀と還元剤との反応を阻害するための被覆剤を併用することもできる。
【0042】
上記感光性ハロゲン化銀としては、有機銀塩に作用してハロゲン化銀を形成するものであれば特に限定されない。
上記感光性ハロゲン化銀の使用量としては特に限定されず、有機銀塩100重量部に対して好ましい下限は0.0005重量部、好ましい上限は0.2重量部である。より好ましい下限は0.01重量部である。
【0043】
上記有機溶剤としては、本発明のポリビニルアセタール樹脂を溶解でき、かつ、水分の含有量がほとんどないものであれば特に限定されないが、例えば、ケトン、エステル類が好ましい。なかでも、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等がより好ましい。また、上記有機溶剤としてエタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いる場合には、充分に脱水したものを用いることが好ましい。
【0044】
上記感光層は、銀により黒色画像を形成させる場合には、添加剤として色調剤を含有してもよい。また、カラー画像を形成させる場合には、カラーカプラー、ロイコ染料等を含有
してもよい。更に、必要に応じて増感剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0045】
上記支持体としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフイルム;アルミニウム板等の金属板;ガラス、紙等が挙げられる。
【0046】
上記支持体上に塗布される銀の量としては、支持体1mあたりの好ましい下限が0.1g、好ましい上限が5gである。0.1g未満であると、画像濃度が低くなることがあり、5g以上を超えても、画像濃度の向上はみられない。より好ましい下限は0.3g、より好ましい上限は3gである。
【0047】
本発明の熱現像性感光材料を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、本発明のポリビニルアセタール樹脂を適当な有機溶媒に溶解し、更に有機銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀及び必要に応じて添加する添加剤をボールミル等の分散機を用いて分散させた分散液を作製する。次いで、上記分散液を支持体上に有機銀塩が規定の量となるように塗工し、溶剤を蒸発させる方法等が挙げられる。
なお、上記有機銀塩と有機還元剤とは、これらを一括して変性ポリビニルアセタール樹脂に配合し支持体上に一層に形成してもよいし、上記有機銀塩と有機還元剤とを各別に変性ポリビニルアセタール樹脂に配合し、これらを支持体上に各別に二層に形成してもよい。
【0048】
本発明の熱現像性感光材料は、ポリビニルアセタール樹脂に起因する不純物の混入が極めて少ないため、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性にも優れる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、感光層を構成するバインダー樹脂として用いたときに、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料を得ることができる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸30gを加え、更にブチルアルデヒド16gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド70gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、塩酸108gを加え35℃に昇温して6時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水洗後のポリビニルブチラール樹脂を脱水した後、60メッシュの篩にかけて通過した粒子のみを蒸留水に分散し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後冷却した。
【0052】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥した後、ポリビニルアセタール樹脂の粒子を乳鉢で粉砕し、60メッシュの篩にかけ、通過した粒子のみを蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水、乾燥してポリビニルブチラール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂粒子の粒子径を測定したところ、粒子径が35μm以下の粒子の割合は97%であった。また、残存アセチル基量は1.7モル%、残存水酸基量は20モル%であった。
【0053】
得られたポリビニルブチラール樹脂5g、ベヘン酸銀5g、メチルエチルケトン40gを24時間ボールミルで混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を得た。
得られた塗工溶液を、ポリエステル基材上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して乾燥した。この塗工面上に、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫酸塩0.5g、ポリビニルピロリドン2g、メタノール30mLからなる溶液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布して乾燥することにより、熱現像性感光材料を得た。
【0054】
(実施例2)
重合度800のポリビニルアルコールを用いた以外は実施例1と同様にして、残存アセチル基量11モル%、残存水酸基量28モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。
また、得られたポリビニルブチラール樹脂粒子の粒子径を測定したところ、粒子径が35μm以下の粒子の割合は99%であった。
得られたポリビニルブチラール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0055】
(実施例3)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール132gを1600gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸105gを加え、更にアセトアルデヒド28gを添加した。次に、13℃まで冷却し、ブチルアルデヒド36gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後55℃に昇温して5時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水洗後のビニルアセタール樹脂を脱水乾燥した後、60メッシュの篩にかけて通過した粒子のみを蒸留水に分散し、分散液に炭酸水素ナトリウムを添加して溶液のpHを8.0に調整した。溶液を70℃で6時間保持した後冷却した。
【0056】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥した後、ポリビニルアセタール樹脂の粒子を乳鉢で粉砕し、60メッシュの篩にかけ、通過した粒子のみを蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂粒子の粒子径を測定したところ、粒子径が35μm以下の粒子の割合は95%であった。また、残存アセチル基量は1.8モル%、残存水酸基量は26モル%、アセトアセタール化度は37.3モル%(全アセタール化部分における割合は51.7%)、ブチラール化度は34.9モル%であった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0057】
(実施例4)
重合度が1700のポリビニルアルコールを用いた以外は実施例3と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂粒子の粒子径を測定したところ、粒子径が35μm以下の粒子の割合は97%であった。また、残存アセチル基量は1.9モル%、残存水酸基量は30モル%、アセトアセタール化度は40.1モル%(全アセタール化部分における割合は58.9%)、ブチラール化度は28.0モル%であった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0058】
(実施例5)
重合度が800のポリビニルアルコールを用いた以外は実施例3と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂粒子の粒子径を測定したところ、粒子径が35μm以下の粒子の割合は98%であった。また、残存アセチル基量は12モル%、残存水酸基量は25モル%、アセトアセタール化度は50モル%(全アセタール化部分における割合は79.4%)、ブチラール化度は13モル%であった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0059】
(比較例1)
反応終了時及び洗浄時に60メッシュの篩を通過しなかった樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法によりポリビニルブチラール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基量は1.7モル%、残存水酸基量は20モル%であった。
得られたポリビニルブチラール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0060】
(比較例2)
反応終了時及び洗浄時に60メッシュの篩を通過しなかった樹脂を用いた以外は実施例3と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基量は1.8モル%、残存水酸基量は26モル%、アセトアセタール化度は37.3モル%(全アセタール化部分における割合は51.7%)、ブチラール化度は34.9モル%であった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0061】
(比較例3)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、35℃に保ち、これに35%塩酸30gを加え、更にブチルアルデヒド16gを添加した。次に、15℃まで冷却し、ブチルアルデヒド70gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、塩酸108gを加え35℃に昇温して6時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水洗後のポリビニルブチラール樹脂を脱水した後、蒸留水に分散し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を40℃で6時間保持した後冷却した。
【0062】
次に、蒸留水により溶液を10時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥してポリビニルブチラール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂粒子の粒子径を測定したところ、粒子径が35μm以下の粒子の割合は85%であった。また、残存アセチル基量は1.7モル%、残存水酸基量は20モル%であった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、熱現像性感光材料を作製した。
【0063】
(評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたポリビニルアセタール樹脂、塗工溶液及び熱現像性感光材料について以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0064】
(1)ポリビニルアセタール樹脂抽出液のpHの測定
得られたポリビニルアセタール樹脂粒子を40メッシュの篩に通して、通過可能な粒子のみ2gを採取した。このポリビニルアセタール樹脂粒子を蒸留水20gに投入し、ミックスローターを用いて20℃、回転数40rpmで20時間混合した。その後、20℃にて1時間静置した後、上澄みのpHを測定した。
【0065】
(2)ポリビニルアセタール樹脂の遊離酸度の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂1gを90vol%エタノール水溶液40mLに投入し、室温にて2時間振蕩して溶解した。この溶液に1%フェノールフタレイン溶液を3滴投入し、撹拌した後、0.02mol/Lに調整した水酸化カリウムのイソプロパノール溶液を滴下投入した。微紅色を30秒以上保持する時を終点とし、このときの投入量a(mL)を求めた。一方、樹脂を投入せず、90vol%エタノール水溶液40mLのみを同様にして滴定し、このときの投入量b(mL)を求めた。得られたa及びbの値を用い、上記式(1)によりポリビニルアセタール樹脂の遊離酸度を算出した。
【0066】
(3)ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性の評価
得られたポリビニルアセタール樹脂を、湿度90%、温度40℃の恒温恒湿条件で1週間保存後、メチルエチルケトンに10重量%の濃度になるように溶解した。溶解後、10μmのフィルターでろ過して未溶解物を採取し、乾燥後の重量を測定して、ポリビニルアセタール樹脂全体に対する未溶解物の割合を求めた。
【0067】
(4)塗工溶液の保存安定性の評価
得られた塗工溶液を、常温で3日間、室内の蛍光灯下に置き、目視により溶液の着色変化を測定し、以下の基準により評価した。
また、測色色差計(マイセック社製、ZE2000)を用いてYI(黄色指数)を測定し、保存前後でのYI(黄色指数)の増加を求めた。
○:白色のままほとんど変化が見られなかった。
×:僅かに着色した。
【0068】
(5)熱現像性感光材料の階調性評価
階調パターンフィルムを通して250Wの高圧水銀灯を用いて、20cmの距離から0.3秒間露光後、120℃の熱板を用いて5秒間加熱して現像することにより、パターン画像を得た。形成されたパターン画像について、階調性を以下の基準により評価した。
○:階調パターンにほとんど変化が見られなかった。
×:階調パターンに変化が見られた。
【0069】
(6)熱現像性感光材料のかぶり評価
上記(5)と同様の方法によって得たパターン画像について、かぶりを以下の基準により評価した。
○:かぶりが全く発生していなかった。
×:かぶりが発生していた。
【0070】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、感光層を構成するバインダー樹脂として用いたときに、着色、かぶり、階調不良、感度不足等がなく、保存安定性に優れる熱現像性感光材料を得ることができる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、
少なくとも40メッシュの篩を通過可能な粒子状とし、前記粒子を重量比で10倍量の蒸留水に投入し、20℃の条件下にて回転数40rpmの速度で20時間攪拌して混合した後、更に20℃の条件下にて1時間静置した後の上澄み水を抽出水としたときに、前記抽出水のpHが5.0〜8.5である
ことを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、遊離酸値が0.03以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、
少なくとも40メッシュの篩を通過可能な粒子状とし、前記粒子を重量比で10倍量の蒸留水に投入し、20℃の条件下にて回転数40rpmの速度で20時間攪拌して混合した後、更に20℃の条件下にて1時間静置した後の上澄み水を抽出水としたときに、前記抽出水のpHが5.0〜8.5であり、かつ、
遊離酸値が0.03以下である
ことを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項4】
残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17〜35モル%、かつ、重合度が200〜3000であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項5】
側鎖に下記式(1)で表される官能基、下記式(2)で表される官能基、下記式(3)で表される官能基、下記式(4)で表される官能基、下記式(5)で表される官能基、下記式(6)で表される官能基、第三級アミン基、及び、第四級アンモニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を0.1〜5モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
【化1】

式中、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【請求項6】
主鎖にα−オレフィン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とする感光層を有することを特徴とする熱現像性感光材料。

【公開番号】特開2006−30959(P2006−30959A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116184(P2005−116184)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】