説明

熱的に転写された素子を有するアンテナ

アンテナは、パターニングされた導電層を誘電体シートに熱的に結合することによって形成される素子を含む。アンテナは、プロトタイプでも或いは少量生産品でも容易に再設計可能であり、また大量生産品にも適用可能である。アンテナ、或いはその素子は、接着剤としてトナーを用いるゼログラフィープリントによって製造可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関し、特に、誘電体シートに熱的に転写された素子を有するアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
技術上、プレーナ導電性素子を用いる様々なアンテナが知られており、例えば、米国特許第3,587,110号明細書(ウッドワード)に開示されたプレーナフェーズドアレイアンテナ、米国特許第3,509,465号明細書(アンドレ他)に開示されたスパイラルアンテナ、米国特許第3,441,973号明細書(クラスビー他)に開示されたスパイラルアンテナと組み合わされたキャビティー、および米国特許第6、731,248号明細書(キーレン他)に開示されたダイポールアレイがある。例えば、米国特許第6、731,248号明細書に開示されるように、アンテナの導電性素子は、基板に導電層を形成し、その後、その導電層をパターニングすることによって形成されるのが典型的である。
【0003】
約12GHzの超高周波においては、波長は約2.50cmであり、外観上のわずかな寸法の変化すらも波長の実質的な部分となりうる。導電層をパターニングすることによって、1cmの数分の1まで制御可能であるが、適量に配合されるべき溶液やその他の化学薬品が、少量或いは実験的なサンプルを作製するために不都合に適用されるため、導電層を形成するプロセスは、高価なものとなっている。
【0004】
例えば、米国特許第3,855,448号明細書(花形他)に開示されているように、印刷のためにアレイ内において複数のサーマルピンを使用することは、技術上公知である。例えば、米国特許第4,269,892号明細書(シャタック他)に開示されているように、リボンから電気的導電性カーボンブラックを熱的にプリントすることも技術上周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,587,110号明細書
【特許文献2】米国特許第3,509,465号明細書
【特許文献3】米国特許第3,441,973号明細書
【特許文献4】米国特許第6,731,248号明細書
【特許文献5】米国特許第3,855,448号明細書
【特許文献6】米国特許第4,269,892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑み、したがって、本発明の目的の1つは、誘電体シートに熱的に素子を結合することによって形成されるアンテナを提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、プロトタイプ、或いは少量生産品に対しても容易に変更可能なアンテナを提供することにある。
【0008】
さらに本発明の目的は、素子がトナー粒子によって誘電体シートに熱的に結合されたアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、アンテナが、誘電体シートにパターニングされた導電層を熱的に結合することによって形成された素子を含む本発明によって達成される。このアンテナは、プロトタイプ、或いは少量生産品に対しても容易に再設計可能であり、また、このアンテナは、大量生産品に対しても適用可能である。このアンテナ、或いはそれを構成する素子は、トナーを接着剤として用いるゼログラフィープリントによって形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のより完全な理解は、添付の図面とともに、以下の詳細な説明を考慮するによって得られる。
【図1】図1は、熱的に転写可能な導電層を有するリボンを示す。
【図2】図2は、断面構造において、基板に対して導電層を結合するための方法を示す。
【図3】図3は、断面構造において、トナー粒子を接着剤として用いで、基板に対して導電層を結合するための方法を示す。
【図4】図4は、断面構造において、トナー粒子を接着剤として用いて、基板に対して導電層を結合するための別の方法を示す。
【図5】図5は、熱的に接着された素子とともに構成されたアンテナの平面図を示す。
【図6】図6は、熱的に転写された導電性金属箔を用いるインダクタ或いはコイル状アンテナの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、熱的に転写可能な導電層を有するリボンを示す。リボン10は、フレキシブルまものであるが寸法的には安定であり、かつスプロケットホール11および12として示されるレジストレーションガイド含むことが望ましい。レジストレーションガイドは、機械的よりもむしり光学的なものである。リボンの寸法は、応用例によって決定される。本発明の一局面によれば、トナー粒子は接着剤として用いられ、リボンは、ゼログラフィープリンタによって操作が容易となるように、標準サイズのシート状ペーパーであっても良い。ゼログラフィープリンタは、アンテナの素子をプリントすると同時に、レジストレーションガイドとして、基準のマークをプリントすることができる。
【0012】
第2図は、導電層を誘電体シートに結合するための望ましい方法を示す。発明のこの実施の形態においては、リボン20は、基板23上に配置される導電層21と、導電層上に配置される接着層26とを含む。導電層21は、接着層26よりも低い接着性を有するリリース層24によって、基板23に取り付けられている。したがって、接着層26が熱によって柔軟化され、或いは活性化されると、導電層21は、基板23から分離される。導電層21は、例えば、銅、或いはアルミニウムのような(数千オングストロームのオーダーの)薄い金属層である。
【0013】
リボン20および誘電体シート28は、明確化のためにわずかに離隔されて、図2において示されている。転写のために、リボン20および誘電体シート28の二つは一緒にされて、熱せられたピン27が降下されて、導電層21の一部を誘電体シート28に転写する。ピン27は、複数のピンの内の1本であり、ドットマトリックスプリンタにおけるものと同様である。熱および圧力の組み合わせが、転写には効果的である。複数のピンは個別に動作可能であり、そのため、導電層21が誘電体シート28に接着されるとき、結果として導電層21におけるパターンを制御することができる。パターンの解像度は、ピンの直径に依存し、極めて小さく、例えば、0.005インチである。導電層は、パネルの背面を隔てて、連続した領域に転写される。リボンが使用され、ステップでプロセスが繰り返し可能であることから、リボンのサイズが誘電体シート28のサイズに影響を与えることはなく、かつ誘電体シートのサイズがリボンのサイズに影響を与えることもない。
【0014】
図3は、トナー粒子を接着剤として使用することによって、導電層を基板に結合するための方法を示す。トナー粒子のパターン層35は、例えば、離隔したシート上にプリントし、そのシートを基板に対してラミネート加工するか、或いは、基板上にプリントすることによって、誘電体層36上に形成される。転写のために、リボン30がパターン層35に接触するように導入され、加熱されたローラー38が導電層21の選択された部分を誘電体シート36に接着するように降下される。加熱されたローラーは、必ずしも誘電体シート36と同じ幅(図面上の寸法)である必要はないが、誘電体シート36と同じ幅か、もしくは誘電体シート36よりも広い幅を有することが望ましい。リボン30がトナー粒子のパターン層35から離隔された状態で、導電層31の複数の部分がトナー粒子のパターン層35に接着すると、それにより、誘電体シート36上には、パターニングされた導電層が形成される。
【0015】
図4は、誘電体シートに導電層を結合するための別の方法を示す。転写のために、リボン20が誘電体シート28に接触するように導入され、局所的な圧力印加ではなく、望ましくはラスターパターンで基板をレーザー41によって走査することによって、過渡的な加熱が効果的に実施されている。リボン20が誘電体シート28に接触するように導入されることによって、リボン20からのわずかな圧力が存在する。
【0016】
図5は、本発明によって構成されたアンテナを示す。図5において、プレーナフェーズドアレイアンテナの素子は、アンテナの部品となる誘電体シートに対して、導体を熱的に転写することによって、形成される。所望の導電性パターンは、ゼログラフィートナー粒子を用いて、アンテナの素子を規定するための転写中にプリントされるか、或いは、その転写前にプリントされる。開口プレート51および同調スタブ53は、いずれもこのようにして形成される。
【0017】
図5において、開口プレートは、誘電体シートの一方の主表面上に転写される。例えば、スタブ53のような同調スタブは、第2の誘電体シートに転写されるか或いは誘電体シート51の裏面側に開口プレートとアラインメントされて、転写される。接地プレートは、何らかの適当な方法で、能動素子とは離隔して形成される。図5に示されたアンテナは、開口プレートと同調スタブとの相互作用によって、そのインピーダンスはインダクティブ成分およびキャパシティブ成分の両方を有する。図5は、米国特許第5,418,541号明細書(シュレーダーら)の第1図に基づくものである。プレーナフェーズドアレイアンテナの動作は、技術的に公知である。
【0018】
図6は、本質的に誘導性インピーダンスを示すスパイラルアンテナを示す。スパイラル61は、導電層を誘電体シート62に転写することによって形成される。リード64は、絶縁層65上にプリントされ、かつ導電性接着剤によって、スパイラルの内部端に結合されている。超高周波信号を使用しない限りは、リード64とスパイラル61間の容量性結合は、あまり顕著なものではない。スパイラル61は、双方向の糸状に巻かれ、かつ誘電体シート62の同一側で同一方向に、交差することなく、延伸している両端を有する。スパイラル61は、インダクタとしての役割を果たすことも可能である。
【0019】
したがって、本発明は、誘電体シート若しくは基板に対して、素子が熱的に結合されているアンテナを提供するものである。誘電体シートは、堅くて曲がらないもの、或いはフレキシブルなものであっても良く、用途に応じて平坦、或いは曲がったものであっても良い。本発明によれば、プロトタイプ或いは少量製品に対しても、アンテナの設計は、変更可能である。素子は、トナー粒子によって基板に対して熱的に結合可能であり、かつ素子は、ゼログラフィープリントによって、直接的にパターンニング可能である。寸法的な余裕度は、波長にも依存するが小さく、誘電体シートの厚さによって、キャビティーのサイズ或いは素子の間隔が決定される。
【0020】
以上のように本発明は記載されたが、当業者には、本発明の技術的範囲内において、様々な変更が可能であることは明らかである。例えば、パターニングされたトナー粒子を転写するときに、加熱されたローラーの代わりに、ホットプレート上で加熱さられたラミネーターを使用することも可能である。層間の結合は、接着促進剤を用いて層を処理することによって増強することができる。本発明にしたがって、アンテナの能動素子或いは受動素子は形成可能である。一回の転写で素子が形成されるとは限らない。パターンを形成するには複数の転写を適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体シートに熱的に転写された導電層と、
前記導電層と前記誘電体シートとの間の接着層と
を備え、前記導電層は、アンテナの能動素子の一部であり、前記接着層は、前記導電層を前記誘電体シートに接着するために熱的に活性化されることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記接着層は、加熱すると柔軟化することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナは、熱的に転写された素子の複数の層を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記導電層は、ひとつのパターンで熱的に転写されて、前記アンテナに対する一群の素子を提供することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記導電層は、実質的に誘導性インピーダンスを示すことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記導電層は、スパイラルであることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
サーマルプリンタと誘電体シートとの間の基板上に、前記誘電体シートに対向して、導電層を配置するステップと、
前記導電層を前記誘電体シートに接触させるステップと、
前記サーマルプリンタを用いて前記導電層を加熱し、前記導電層の部分を前記誘電体シートに転写するステップと、
前記基板を前記誘電体シートから分離するステップと
を有するアンテナの製造方法。
【請求項8】
前記複数のステップは第2の誘電体シート上で繰り返され、さらに、前記誘電体シートおよび前記第2の誘電体シートを組み立ててアンテナを形成する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のアンテナの製造方法。
【請求項9】
前記サーマルプリンタは、前記導電層を局所的に加熱して、パターンを形成することを特徴とする請求項7に記載のアンテナの製造方法。
【請求項10】
前記導電層を前記誘電体シートに接触させるステップの前に、前記誘電体シート上に接着剤を形成するステップを有することを特徴とする請求項7に記載のアンテナの製造方法。
【請求項11】
前記導電層を前記誘電体シートに接触させるステップの前に、前記誘電体シート上に、パターンをゼログラフィープリントする工程を有することを特徴とする請求項7に記載のアンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529812(P2010−529812A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512172(P2010−512172)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/007286
【国際公開番号】WO2008/156609
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】