説明

熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物及びその接着方法

【課題】100℃未満の加熱処理により硬化して各種基材に対し良好な接着性を示し、150℃以下での接着耐久性に優れた熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物及び該組成物と金属、無機物又はプラスチック基材との接着方法を提供する。
【解決手段】
(A)直鎖状ポリフルオロ化合物、(B)SiH基を2個以上有し、他の官能性基を有さない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金族金属系触媒、(D)含フッ素有機基、SiH基、エポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基並びにアリール基を有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン、(E)多価アリルエステル化合物、(F)エポキシ基及びオルガノオキシ基を有し、SiH基を含有しない有機ケイ素化合物、(G)SiH基及びアリール基を有し、エポキシ基、トリ(オルガノオキシ)シリル基及び含フッ素有機基を含有しない有機ケイ素化合物を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、無機物及びプラスチック基材に対する接着性に優れた熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物に関するものであり、更に詳述すると、100℃未満の加熱処理により硬化して、アルミニウム等の金属やアルミナセラミックス等の無機物、更にポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等のプラスチックに対して良好な接着性を示し、かつ150℃以下での接着耐久性に優れた熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物、及び該接着剤組成物と金属、無機物又はプラスチック基材との接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素シロキサン及び白金族化合物からなる組成物から、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、離型性、撥水性、撥油性、低温特性等の性質がバランスよく優れた硬化物を得ることが提案されている(特許文献1:特許第2990646号公報)。
【0003】
該組成物に、更に、ヒドロシリル基とエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基とを有するオルガノポリシロキサンを添加することにより、金属やプラスチック基材に対して自己接着性を付与した組成物が提案されている(特許文献2:特許第3239717号公報)。該接着剤組成物は、加熱により硬化させることができ、得られる硬化物は上記各種性質に優れているので、これらの特性が要求される各種工業分野、例えば電気電子部品周辺や車載用部品周辺などの接着用途に使用される。
【0004】
しかし、該接着剤組成物を硬化させ、金属、無機物又はプラスチック基材に対して接着性を発現させるには100〜200℃の高温での加熱処理が必要である。そのため、基材が耐熱性の低い熱可塑性樹脂である場合、加熱により変形・変質が生じてしまう。また、加熱炉に収容することが困難な程大きな部品に対しては該接着剤組成物の使用が制限されることがあった。更に、このような高温での加熱処理は、加熱炉のエネルギーコストの面でも問題であり、また加熱炉から排出される二酸化炭素量も環境面から問題である。
【0005】
そこで、例えば特開2008−291142号公報(特許文献3)では、該接着剤組成物に、更に、1分子中に2個以上のアリルオキシカルボニル基(CH2=CHCH2OC(=O)−)を有する化合物を添加することにより、100℃未満の加熱処理で、金属やプラスチック基材に対して接着性を発現させることが提案されている。
【0006】
しかしこの場合、初期接着は良好であるものの、100℃未満でも比較的高い温度、例えば80℃下にて長時間放置した場合、接着力が経時で大きく低下してしまう問題があった。電気電子部品周辺や車載用部品周辺に使用される場合、該接着剤にはそのような温度下でも接着性が維持される接着耐久性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2990646号公報
【特許文献2】特許第3239717号公報
【特許文献3】特開2008−291142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、100℃未満の加熱処理により硬化して、金属、無機物及びプラスチック基材に対して良好な接着性を示し、かつ150℃以下での接着耐久性に優れた熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物、及び該接着剤組成物と金属、無機物又はプラスチック基材との接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高温での接着耐久性の問題の解決として、特願2010−139059を提案している。これは、接着剤組成物に、1分子中に2個以上のアリルオキシカルボニル基(CH2=CHCH2OC(=O)−)を有する化合物の他に、接着付与剤として、1分子中に含フッ素有機基を有し、更にケイ素原子に直結した水素原子、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基、炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基を有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン、更に1分子中にエポキシ基及びケイ素原子に直結したアルコキシ基をそれぞれ1個以上有する有機ケイ素化合物を配合することにより、100℃未満での接着耐久性に優れた接着剤組成物を提案しているものである。
しかし、最近では100℃を超える温度、具体的には150℃での接着耐久性が要求されるようになった。上記接着剤組成物では、150℃に長時間放置すると接着力が経時で低下してしまう場合があった。
【0010】
本発明者らは、更なる検討を重ねた結果、(A)下記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物、(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)を2個以上有し、かつ分子中にその他の官能性基を有さない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金族金属系触媒、(D)1分子中に含フッ素有機基を有すると共に、ケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基を有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン、(E)下記一般式(6)で表される多価アリルエステル化合物、(F)1分子中にエポキシ基及びケイ素原子に直結したオルガノオキシ基をそれぞれ1個以上有すると共に、分子中にケイ素原子結合水素原子(SiH基)を含有しない有機ケイ素化合物、及び(G)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)及び直接又は炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基をそれぞれ1個以上有すると共に、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及びトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに含フッ素有機基を含有しない有機ケイ素化合物をそれぞれ特定量含有する組成物が、100℃未満の加熱で容易に硬化すると共に、この硬化物は金属、無機物及びプラスチック基材に対して強固な接着性を有し、更に150℃以下での接着耐久性に優れることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、下記に示す熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物、及びこれを用いた金属、無機物又はプラスチック基材との接着方法を提供する。
〔請求項1〕
(A)下記一般式(1)
CH2=CH−(X)a−Rf1−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化1】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子、又は非置換もしくは置換の1価炭化水素基)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化2】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じ基である。)で表される基であり、aは独立に0又は1である。Rf1は下記一般式(4)又は(5)
【化3】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】


(式中、uは1〜300の整数、sは1〜80の整数、tは上記と同じである。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
で表される直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)を2個以上有し、かつ分子中にその他の官能性基を有さない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSiH基として0.5〜3.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:(A)成分に対して白金族金属原子の質量換算で0.1〜500ppm、
(D)1分子中に含フッ素有機基を有すると共に、ケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基を有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン:0.1〜20質量部、
(E)下記一般式(6)
【化5】


(式中、Aは、−CH=CH−、−CH2CH2−、
【化6】


から選ばれる2価〜4価の基であり、bは該基Aの価数である。)
で表される有機化合物:0.01〜5質量部、及び
(F)1分子中にエポキシ基及びケイ素原子に直結したオルガノオキシ基をそれぞれ1個以上有すると共に、分子中にケイ素原子結合水素原子(SiH基)を含有しない有機ケイ素化合物:0.01〜5質量部
(G)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)及び直接又は炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基をそれぞれ1個以上有すると共に、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及びトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに含フッ素有機基を含有しない有機ケイ素化合物:0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
〔請求項2〕
(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量が、0.002〜0.3mol/100gであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
〔請求項3〕
(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
〔請求項4〕
(D)成分の含フッ素有機基が、分子鎖の両末端及び側鎖に位置する1価の含フッ素有機基である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
〔請求項5〕
(D)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンが、炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基を有するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
〔請求項6〕
(D)成分が、下記平均組成式(7)
【化7】


(式中、R2は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Lは独立に炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基であり、Mは独立に炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基であり、Rf2は独立に炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基である。vは0<v≦10.0の実数、wは0<w≦10.0の実数、xは0<x≦10.0の実数、yは0<y≦10.0の実数、zは0<z≦10.0の実数であり、0<v+w+x+y+z≦30.0の実数である。)
で表される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
〔請求項7〕
(E)成分が、下記構造式で表される芳香族多価アリルエステル化合物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【化8】


〔請求項8〕
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物を100℃未満の温度において金属、無機物又はプラスチック基材上で加熱硬化させることを特徴とする該組成物の硬化物と金属、無機物又はプラスチック基材との接着方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物は、100℃未満の加熱処理により硬化して金属、無機物及びプラスチック基材に対して良好な接着性を示し、かつ150℃以下での接着耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、下記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物である。
CH2=CH−(X)a−Rf1−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化9】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子、又は非置換もしくは置換の1価炭化水素基)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化10】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じ基である。)で表される基であり、aは独立に0又は1である。Rf1は下記一般式(4)又は(5)
【化11】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化12】


(式中、uは1〜300の整数、sは1〜80の整数、tは上記と同じである。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
【0014】
ここで、R1としては、水素原子以外の場合、炭素原子数1〜12、特に1〜10の1価炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)のRf1は、下記一般式(4)又は(5)で表される2価のパーフルオロポリエーテル構造である。
【化13】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数、好ましくは1〜100の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化14】


(式中、uは1〜300の整数、好ましくは1〜200の整数、より好ましくは10〜150の整数、sは1〜80の整数、好ましくは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0016】
Rf1基の好ましい例としては、例えば、下記式(i)〜(iii)で示されるものが挙げられる。更に好ましくは式(i)の構造の2価の基である。
【化15】


(式中、p’及びq’はそれぞれ1以上の整数、好ましくは1〜150の整数、より好ましくは1〜100の整数、p’+q’(平均)=2〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。)
【化16】


(式中、p’及びq’はそれぞれ1以上の整数、好ましくは1〜150の整数、より好ましくは1〜100の整数、p’+q’(平均)=2〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。)
【化17】


(式中、u’は1〜300の整数、好ましくは1〜200の整数、より好ましくは10〜150の整数、s’は1〜80の整数、好ましくは1〜50の整数、より好ましくは1〜30の整数である。)
【0017】
(A)成分の好ましい例として、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【化18】


[式中、X1は−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1’−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化19】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1’は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基)で表される基、X1’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1’−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化20】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1’は上記と同じである。)で表される基であり、aは独立に0又は1、dは2〜6の整数、b及びcはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは1〜150の整数、より好ましくは1〜100の整数、b+c(平均)=0〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。]
【0018】
上記一般式(8)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化21】

【0019】
【化22】


(式中、m1及びn1はそれぞれ0〜200の整数、好ましくは1〜150の整数、m1+n1=2〜300、好ましくは6〜200を満足する整数を示す。)
【0020】
なお、上記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、JIS K6249に準拠した粘度測定で、100〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜20,000mPa・sの範囲内にあることが、本組成物をシール、ポッティング、コーティング、含浸等に使用する際に、硬化物においても適当な物理的特性を有しているので望ましい。当該粘度範囲内で、用途に応じて最も適切な粘度を選択することができる。
【0021】
上記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物に含まれるアルケニル基含有量は0.002〜0.3mol/100gが好ましく、更に好ましくは0.008〜0.2mol/100gである。直鎖状フルオロポリエーテル化合物に含まれるアルケニル基含有量が0.002mol/100g未満の場合には、架橋度合いが不十分になり硬化不具合が生じる可能性があるため好ましくなく、アルケニル基含有量が0.3mol/100gを超える場合には、この硬化物のゴム弾性体としての機械的特性が損なわれる可能性があるため好ましくない。
【0022】
これらの直鎖状ポリフルオロ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分は、1分子中に含フッ素有機基を1個以上、好ましくは1〜20個有し、ケイ素原子に直結した水素原子(即ち、SiHで示されるヒドロシリル基)を2個以上(通常、2〜100個程度)、好ましくは3〜50個有し、かつ分子中にその他の官能性基を有さない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、好ましくは1分子中に1価又は2価の含フッ素有機基を1個以上及びケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有し、かつ炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基等のSiH基以外の官能性基を含有せず、また、炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基(例えば、アラルキル基)を有さない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、特にはケイ素原子に直接結合したアリール基を含有しない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。本発明の(B)成分は、上記(A)成分の架橋剤ないし鎖長延長剤として機能するものであり、また、(A)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、含フッ素有機基として、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基等のフッ素含有基を有するものが好ましい。
【0024】
この1価又は2価の含フッ素有機基としては、例えば下記一般式で表されるもの等を挙げることができる。
g2g+1
−Cg2g
(式中、gは1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数である。)
【化23】


(式中、fは1〜200の整数、好ましくは2〜100の整数、hは1〜3の整数である。)
【化24】


(式中、i及びjはそれぞれ1以上の整数、好ましくは1〜100の整数、i+jの平均は2〜200、好ましくは2〜100である。)
−(CF2O)k−(CF2CF2O)l−CF2
(式中、k及びlはそれぞれ1〜50の整数、好ましくは1〜30の整数である。)
【0025】
また、これらパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロオキシアルキレン基とケイ素原子とは2価の連結基により繋がれていることが好ましく、該2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、あるいはこれらの基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合等を介在させたものであってもよく、例えば、
−CH2CH2−、
−CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2OCH2−、
−CH2CH2CH2−NH−CO−、
−CH2CH2CH2−N(Ph)−CO−(但し、Phはフェニル基である。)、
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−N(CH2CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−N(CH(CH32)−CO−、
−CH2CH2CH2−O−CO−
等の炭素原子数2〜12のものが挙げられる。
【0026】
また、この(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおける上記1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子に結合した水素原子以外のケイ素原子に結合した1価の置換基は、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12の非置換又は置換のアルキル基又はアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜20の1価の非置換又は置換の炭化水素基が挙げられる。
【0027】
(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、環状、鎖状、三次元網状及びそれらの組み合わせのいずれでもよい。この含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子数は、特に制限されるものではないが、通常2〜60、好ましくは3〜30程度である。
【0028】
このような1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子結合水素原子を有する(B)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、下記式において、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0029】
【化25】

【0030】
【化26】

【0031】
【化27】

【0032】
【化28】

【0033】
【化29】

【0034】
【化30】

【0035】
この(B)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
上記(B)成分の配合量は、(A)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対して(B)成分中のヒドロシリル基、即ちSiH基が0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなる量である。ヒドロシリル基(SiH基)が少なすぎると、架橋度合が不十分となる結果、硬化物が得られず、また、多すぎると硬化時に発泡してしまう。
なお、本発明においては、上記(A)成分と後述する(E)成分との合計のアルケニル基1モルに対し、(B)成分と後述する(D)、(G)成分との合計のSiH基が、0.2〜10モル、特に0.3〜5モルとなる量で使用することが好ましい。
【0036】
[(C)成分]
本発明の(C)成分である白金族金属系触媒は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒は、組成物中に含有されるアルケニル基、特には(A)成分中のアルケニル基と、組成物中に含有されるヒドロシリル基(SiH基)、特には(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。このヒドロシリル化反応触媒は、一般に貴金属又はその化合物であり、高価格であることから、比較的入手し易い白金又は白金化合物がよく用いられる。
【0037】
白金化合物としては、例えば、塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、シリカ、アルミナ、カーボン等に担持した金属白金等を挙げることができる。白金又はその化合物以外の白金族金属系触媒として、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物も知られており、例えば、RhCl(PPh33、RhCl(CO)(PPh32、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh32、Pd(PPh34等を例示することができる。なお、前記式中、Phはフェニル基である。
【0038】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには塩化白金酸や錯体を、例えば、トルエンやエタノール等の適切な溶剤に溶解したものを(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物に相溶させて使用することが好ましい。
【0039】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応触媒としての有効量でよいが、希望する硬化速度に応じて適宜増減することができ、通常、(A)成分に対して0.1〜500ppm、特には0.5〜200ppm(白金族金属原子の質量換算)を配合する。
【0040】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は、1分子中に含フッ素有機基、好ましくは分子鎖の両末端及び側鎖に1価の含フッ素有機基を有すると共に、更にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基等のトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基(例えば、アラルキル基)を有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンであり、本発明の組成物に自己接着性を与える接着付与剤である。
【0041】
更に、本発明の(D)成分の含フッ素有機基としては、(A)成分との相溶性、分散性及び硬化後の均一性等の観点から、炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基を有するものがより好ましい。
【0042】
上記(D)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンとしては、下記平均組成式(7)で表されるものが好ましい。
【0043】
【化31】


(式中、R2は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Lは独立に炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基等のトリ(オルガノオキシ)シリル基であり、Mは独立に炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基(例えば、アラルキル基等)であり、Rf2は独立に炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基である。vは0<v≦10.0の実数、好ましくは0<v≦5.0の実数、wは0<w≦10.0の実数、好ましくは0<w≦5.0の実数、xは0<x≦10.0の実数、好ましくは0<x≦5.0の実数、yは0<y≦10.0の実数、好ましくは0<y≦5.0の実数、zは0<z≦10.0の実数、好ましくは0<z≦5.0の実数であり、0<v+w+x+y+z≦30.0の実数、好ましくは0<v+w+x+y+z≦20.0の実数である。)。
【0044】
なお、上記式(7)における各シロキサン単位の繰返し数を示すv、w、x、y、z及びv+w+x+y+zは、個々の分子については整数であるが、(D)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンを平均組成式として表記する場合には、1H−NMRスペクトルの積分値から算出される数平均値としての実数を意味するものである(以下、同様。)。
【0045】
2の非置換又は置換の1価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、更にベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基を含まないものが好ましい。このようなR2として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられ、この中で特にメチル基が好ましい。
【0046】
Lは炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基等のトリ(オルガノオキシ)シリル基を示し、具体的には、下記の基を挙げることができる。
【化32】


(式中、R3は酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜10、特に1〜5の2価炭化水素基で、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等のオキシアルキレン基などを示す。)
【0047】
【化33】


(式中、R4は炭素原子数1〜10、特に1〜4の2価炭化水素基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基などを示し、R5は炭素原子数1〜8、特に1〜4のカルボニル基を含有してもよい1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、アセチル基等のアシル基、フェニル基等のアリール基などを示す。R6は水素原子又はメチル基であり、k’は2〜10、好ましくは2〜6の整数を示す。)
【0048】
Lとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化34】

【0049】
Mは炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基(例えば、アラルキル基等)であり、該アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましく、Mとしては下記の基が好ましい。
【化35】


(式中、R7は炭素原子数1〜10、特に1〜4の非置換又は置換の2価炭化水素基で、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をメチル基やエチル基等のアルキル基で置換した置換2価炭化水素基などが挙げられる。)
【0050】
Mとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化36】

【0051】
また、Rf2は炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基を示す。この1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基(Rf2)の例として、具体的には、下記一般式で表されるもの等を挙げることができる。
【0052】
【化37】


(式中、R8は炭素原子数1〜10、特に1〜4の2価炭化水素基で、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基などを示す。gは1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数である。またfは2〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、hは1〜3の整数である。)
【0053】
Rf2として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化38】

【0054】
(D)成分として用いられる含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンとして、具体的には、下記の平均組成式で示されるものが例示される。なお、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、下記式において、Meはメチル基を示す。
【0055】
【化39】

【0056】
【化40】

【0057】
【化41】

【0058】
【化42】

【0059】
この(D)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
(D)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは1.0〜15質量部の範囲である。0.1質量部未満の場合には十分な接着性が得られず、20質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、また得られる硬化物の物理的強度が低下する。
【0060】
[(E)成分]
本発明の(E)成分は、本発明の組成物から100℃未満の加熱処理により得られる硬化物の金属やプラスチック基材に対する接着性を大きく向上させるために配合される成分であり、下記一般式(6)で表される化合物(多価アリルエステル化合物)である。
【化43】


(式中、Aは、−CH=CH−、−CH2CH2−、
【化44】


から選ばれる2価〜4価の基であり、bは該基Aの価数である。)
【0061】
上記一般式(6)で表される化合物の好適な具体例としては、下記構造式で表されるベンゼン環を1個含有する芳香族多価アリルエステル化合物などが挙げられる。
【化45】

【0062】
この(E)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部であり、0.1〜3質量部であることが好ましい。0.01質量部未満の場合は、十分な接着性が得られず、5質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下し、また組成物の経時での保存安定性を損ねる可能性がある。
【0063】
[(F)成分]
本発明の(F)成分は、1分子中にエポキシ基及びケイ素原子に直結したオルガノオキシ基をそれぞれ1個以上、好ましくはエポキシ基を1〜10個、特に1〜6個、オルガノオキシ基を1〜10個、特に1〜6個有すると共に、分子中にケイ素原子結合水素原子(SiH基)を含有しない有機ケイ素化合物、好ましくはシラン化合物であり、本発明の組成物に自己接着性を与える接着付与剤である。
【0064】
ここで、エポキシ基としては、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合していることが好ましい。上記酸素原子が介在してもよい炭素原子としては、炭素原子数1〜10、特に1〜5の2価炭化水素基で、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等のオキシアルキレン基などが挙げられる。これらの中でもエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
【0065】
また、オルガノオキシ基のうち、アルコキシ基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6のもの、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基以外のオルガノオキシ基としては、アセトキシ基等のアシロキシ基やフェノキシ基等のアリーロキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基が好ましい。
【0066】
上記(F)成分の具体例としては、下記のような、γ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチル基等のエポキシ官能性基を含有するアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【化46】

【0067】
この(F)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
上記(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部であり、0.1〜3質量部であることが好ましい。0.01質量部未満の場合は、十分な接着性が得られず、5質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下する。
【0068】
[(G)成分]
本発明の(G)成分は、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)、及び直接又は炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基をそれぞれ1個以上、好ましくはSiH基を1〜20個、特に1〜10個、ケイ素原子結合アリール基を1〜10個、特に1〜5個有すると共に、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基やトリ(オルガノオキシ)シリル基、及び含フッ素有機基を含有しない有機ケイ素化合物であり、本発明の組成物から100℃未満の加熱処理により得られる硬化物に、150℃以下での接着耐久性を付与するために配合される成分である。
【0069】
ここで、アリール基としては、炭素原子数6〜30、特に6〜18のものが好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。これらの中でもフェニル基が好ましい。
また、ケイ素原子とアリール基とを連結する炭素原子としては、炭素原子数1〜10、特に1〜4の非置換又は置換の2価炭化水素基で、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をメチル基やエチル基等のアルキル基で置換した置換2価炭化水素基などが挙げられる。これらの中でもプロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)が好ましい。
【0070】
上記(G)成分の有機ケイ素化合物としては、シラン、ジシラン、トリシラン、ジシロキサン、トリシロキサン及びシクロテトラシロキサン化合物などが好ましい。
【0071】
このような(G)成分の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化47】

【0072】
【化48】

【0073】
【化49】

【0074】
【化50】

【0075】
この(G)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
上記(G)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部であり、0.03〜5質量部であることが好ましい。0.01質量部未満の場合は、十分な接着耐久性が得られず、10質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下する。
【0076】
[その他の成分]
本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物においては、その実用性を高めるために、上記の(A)〜(G)成分以外にも、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機質充填剤、反応制御剤、接着促進剤等の各種配合剤を必要に応じて添加することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲、並びに組成物の特性及び硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0077】
可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤として、下記一般式(9)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物及び/又は下記一般式(10)、(11)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物を併用することができる。
Rf3−(X’)aCH=CH2 (9)
[式中、X’、aは上記式(1)で説明したものと同じ、Rf3は、下記一般式(12)で表される基である。
【化51】


(式中、f’は1以上の整数、好ましくは1〜100の整数、より好ましくは1〜50の整数、h’は2又は3であり、かつ上記(A)成分のRf1基に関するp’+q’(平均)及びu’とs’の和、並びにb〜dの和のいずれの和よりも小さい。)]
【0078】
D−O−(CF2CF2CF2O)c'−D (10)
(式中、DはCb'2b'+1−(b’は1〜3)で表される基であり、c’は1〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、かつ、前記(A)成分のRf1基に関するp’+q’(平均)及びu’とs’の和、並びにb〜dの和のいずれの和よりも小さい。)
D−O−(CF2O)d'(CF2CF2O)e'−D (11)
(式中、Dは上記と同じであり、d’及びe’はそれぞれ1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数であり、かつ、d’とe’の和は、前記(A)成分のRf1基に関するp’+q’(平均)及びu’とs’の和、並びにb〜dの和のいずれの和よりも小さい。)
【0079】
上記一般式(9)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる(なお、下記、m2は、上記要件を満足するものである)。
【0080】
【化52】

【0081】
上記一般式(10)、(11)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる(なお、下記n3又はn3とm3の和は、上記要件を満足するものである。)。
CF3O−(CF2CF2CF2O)n3−CF2CF3
CF3−[(OCF2CF2n3(OCF2m3]−O−CF3
(ここで、m3+n3=2〜201、m3=1〜200、n3=1〜200である。)
【0082】
また、上記一般式(9)〜(11)で表されるポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、(A)成分と同様の測定で、5〜100,000mPa・s、特に50〜50,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
【0083】
更に、上記一般式(9)〜(11)で表されるポリフルオロ化合物を添加する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜300質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜250質量部である。
【0084】
無機質充填剤としては、例えば、BET法による比表面積が50m2/g以上(通常、50〜400m2/g)、特には100〜350m2/g程度の、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、石英粉末、溶融石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム等の補強性又は準補強性充填剤[(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部、特に1〜25質量部の配合量とすることが好ましい]、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、アルミン酸コバルト等の無機顔料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン等の耐熱向上剤、アルミナ、窒化硼素、炭化ケイ素、金属粉末等の熱伝導性付与剤等を添加することができる。
【0085】
ヒドロシリル化反応触媒の制御剤の例としては、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン性アルコールや、上記の1価含フッ素有機基を有するクロロシランとアセチレン性アルコールとの反応物、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、トリアリルイソシアヌレート等、あるいはポリビニルシロキサン、有機リン化合物等が挙げられ、その添加により硬化反応性と保存安定性を適度に保つことができる。
また、カルボン酸無水物、チタン酸エステル等の接着促進剤を添加することができる。
【0086】
本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物の製造方法は特に制限されず、上記(A)〜(G)成分及びその他の任意成分を練り合わせることにより製造することができる。その際、必要に応じて、プラネタリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー等の混合装置、ニーダー、三本ロール等の混練装置を使用することができる。
【0087】
本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物の構成に関しては、用途に応じて上記(A)〜(G)成分及びその他の任意成分全てを1つの組成物として取り扱う、いわゆる1液タイプとして構成してもよいし、あるいは、2液タイプとし、使用時に両者を混合するようにしてもよい。
【0088】
本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物の硬化条件は、10℃以上100℃未満の範囲であれば特に制限されないが、20℃以上100℃未満が好ましく、50℃以上100℃未満がより好ましい。また、その場合の硬化時間は架橋反応及び基材との接着反応が完了する時間を適宜選択すればよいが、一般的には30分〜30時間が好ましく、30分〜25時間がより好ましく、30分〜20時間が更に好ましい。
【0089】
このようにして得られた本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物は、100℃未満の加熱処理により、アルミニウム等の金属や、アルミナセラミックス等の無機物、更にポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂やポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等のプラスチック基材に対して良好な接着性を示し、かつ150℃以下での接着耐久性に優れる硬化物を与えることから、特に電気電子部品周辺や車載用部品周辺用途の接着剤として有用である。具体的に、電気電子部品周辺用途としては、電気自動車用モータ、モバイル機器、圧電デバイス、屋外機器等の実装基板及び電極の防湿防水保護シールやコーティング、リチウム二次電池や電解コンデンサ、色素増感太陽電池等の耐電解液保護シール及びコーティング、業務用インクジェットプリンタや半導体装置等の耐溶剤・耐油保護シール及びコーティングなどが挙げられ、車載用部品周辺用途としては、ガス圧センサや液圧センサ、温度センサ、湿度センサ、回転センサ、Gセンサ、タイミングセンサ、エアフローメーター、電子回路、半導体モジュール、各種コントロールユニットなどの保護シール及びポッティングなどが挙げられる。
【0090】
なお、本発明の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物を使用するに当たり、その用途、目的に応じて該組成物を適当なフッ素系溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、フロリナート(3M社製)、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル等に所望の濃度に溶解して使用してもよい。特に、薄膜コーティング用途においては溶剤を使用することが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示し、Meはメチル基を示す。また、粘度は23℃における測定値を示す(JIS K6249に準拠)。なお、式(13)、(14)の平均重合度(繰り返し単位の平均数)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の分子量分布測定における数平均値を示し、また、式(16)、(21)における各シロキサン単位の繰り返し数は、1H−NMRスペクトル分析の積分値から算出される数平均値としての実数を示す。
【0092】
[実施例1]
下記式(13)で示されるポリマー(粘度10,000mPa・s、ビニル基量0.012モル/100g)100部に、疎水化処理されたヒュームドシリカR−976(日本アエロジル社製商品名、BET比表面積250m2/g)5.0部、下記式(14)で示される含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH基量0.0067モル/g)1.2部、下記式(15)で示される含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH基量0.0039モル/g)1.8部、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.35部、下記平均組成式(16)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン7.0部、下記式(17)で示される有機化合物0.25部、下記式(18)で示される有機ケイ素化合物0.20部、下記式(19)で示される有機ケイ素化合物0.10部、及び下記式(20)で示される化合物0.10部を順次添加し、均一になるように混合した。その後、脱泡操作を行うことにより組成物を調製した。
【0093】
【化53】

【0094】
【化54】

【0095】
【化55】

【0096】
次に、表1に記載の各種被着体(アルミニウム、アルミナセラミックス、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂)の100mm×25mmのテストパネル2枚をそれぞれの端部が10mmずつ重複するように、厚さ1mmの上記で得た組成物の層を挟んで重ね合わせ、80℃で5時間加熱することにより該組成物を硬化させ、接着試験片を作製した。次いで、この試験片について引張剪断接着試験(引張速度50mm/分)を行い、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表1に示す。
また、上記作製した接着試験片を150℃下、1,000時間放置した後、同様に引張剪断接着試験(引張速度50mm/分)を行い、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。結果を表5に示す。
【0097】
[実施例2]
上記実施例1において、上記平均組成式(16)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンの代わりに、下記平均組成式(21)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン9.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表1に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表5に示す。
【0098】
【化56】

【0099】
[実施例3]
上記実施例1において、上記平均組成式(21)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン5.0部を追加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表1に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表5に示す。
【0100】
[実施例4]
上記実施例1において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、下記式(22)で示される有機ケイ素化合物0.20部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表2に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表6に示す。
【0101】
【化57】

【0102】
[実施例5]
上記実施例2において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、上記式(22)で示される有機ケイ素化合物0.20部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表2に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表6に示す。
【0103】
[実施例6]
上記実施例3において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、上記式(22)で示される有機ケイ素化合物0.20部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表2に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表6に示す。
【0104】
[実施例7]
上記実施例1において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、下記式(23)で示される有機ケイ素化合物0.20部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表3に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表7に示す。
【0105】
【化58】

【0106】
[実施例8]
上記実施例2において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、上記式(23)で示される有機ケイ素化合物0.20部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表3に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表7に示す。
【0107】
[実施例9]
上記実施例3において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物の代わりに、上記式(23)で示される有機ケイ素化合物0.20部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表3に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表7に示す。
【0108】
[比較例1]
上記実施例1の配合において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物を配合しないこと以外は実施例1と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表4に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表8に示す。
【0109】
[比較例2]
上記実施例2の配合において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物を配合しないこと以外は実施例2と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表4に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表8に示す。
【0110】
[比較例3]
上記実施例3の配合において、上記式(19)で示される有機ケイ素化合物を配合しないこと以外は実施例3と同様に組成物を調製後、接着試験片を作製した。そして接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を同様に評価した。結果を表4に示す。また、150℃下、1,000時間放置後の接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率についても同様に評価した。結果を表8に示す。
【0111】
【表1】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0112】
【表2】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0113】
【表3】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0114】
【表4】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0115】
【表5】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0116】
【表6】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0117】
【表7】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。
【0118】
【表8】

剪断接着力の( )内は凝集破壊率(面積%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
CH2=CH−(X)a−Rf1−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化1】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は水素原子、又は非置換もしくは置換の1価炭化水素基)で表される基、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR1−Y’−(Y’は−CH2−又は下記構造式(3)
【化2】


で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R1は上記と同じ基である。)で表される基であり、aは独立に0又は1である。Rf1は下記一般式(4)又は(5)
【化3】


(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】


(式中、uは1〜300の整数、sは1〜80の整数、tは上記と同じである。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
で表される直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)を2個以上有し、かつ分子中にその他の官能性基を有さない含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSiH基として0.5〜3.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:(A)成分に対して白金族金属原子の質量換算で0.1〜500ppm、
(D)1分子中に含フッ素有機基を有すると共に、ケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基を有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン:0.1〜20質量部、
(E)下記一般式(6)
【化5】


(式中、Aは、−CH=CH−、−CH2CH2−、
【化6】


から選ばれる2価〜4価の基であり、bは該基Aの価数である。)
で表される有機化合物:0.01〜5質量部、及び
(F)1分子中にエポキシ基及びケイ素原子に直結したオルガノオキシ基をそれぞれ1個以上有すると共に、分子中にケイ素原子結合水素原子(SiH基)を含有しない有機ケイ素化合物:0.01〜5質量部
(G)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子(SiH基)及び直接又は炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基をそれぞれ1個以上有すると共に、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及びトリ(オルガノオキシ)シリル基、並びに含フッ素有機基を含有しない有機ケイ素化合物:0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量が、0.002〜0.3mol/100gであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項3】
(B)成分の含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項4】
(D)成分の含フッ素有機基が、分子鎖の両末端及び側鎖に位置する1価の含フッ素有機基である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項5】
(D)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンが、炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基を有するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項6】
(D)成分が、下記平均組成式(7)
【化7】


(式中、R2は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Lは独立に炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリ(オルガノオキシ)シリル基であり、Mは独立に炭素原子を介してケイ素原子に結合したアリール基であり、Rf2は独立に炭素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロオキシアルキル基である。vは0<v≦10.0の実数、wは0<w≦10.0の実数、xは0<x≦10.0の実数、yは0<y≦10.0の実数、zは0<z≦10.0の実数であり、0<v+w+x+y+z≦30.0の実数である。)
で表される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【請求項7】
(E)成分が、下記構造式で表される芳香族多価アリルエステル化合物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物。
【化8】

【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱硬化性フルオロポリエーテル系接着剤組成物を100℃未満の温度において金属、無機物又はプラスチック基材上で加熱硬化させることを特徴とする該組成物の硬化物と金属、無機物又はプラスチック基材との接着方法。

【公開番号】特開2012−107081(P2012−107081A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254812(P2010−254812)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】