説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】加熱によっても粘度の低下が少ない熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】1以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物と1以上のアミン構造をもつ有機アミン化合物との反応生成物を含むレオロジー改変剤と、前記レオロジー改変剤を分散する熱硬化性樹脂と、粒径が5nm〜300nmの微小無機粒子とを有する熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化前にチキソトロピー性を示す熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用のダム材、ダイアタッチ材、穴埋め材などのように、チキソトロピー性をもつ硬化性樹脂組成物が好ましい部材がある。つまり、作業時には粘度が低下して操作性に優れるが、静置する場合には粘度が高くなって垂れなどが発生しないようにするものである。
【0003】
チキソトロピー性をもつ硬化性樹脂組成物としてはレオロジー改変剤とポリマーとの混合物が開示される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、硬化性樹脂組成物としては熱硬化性のものがある。特許文献1に記載の硬化性樹脂組成物は加熱により粘度が低下していき、樹脂組成物の静止に必要な充分な大きさの粘度を保つことが困難な場合があることを見出した。加熱時に充分な粘度を保つことができないと、加熱硬化時に硬化性樹脂組成物が形状を保つことができなくなり目的の性能を発揮することが困難になる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、加熱によっても粘度の低下が少ない熱硬化性樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に係る熱硬化性樹脂組成物の特徴は、1以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物と1以上のアミン構造をもつ有機アミン化合物との反応生成物を含むレオロジー改変剤と、
前記レオロジー改変剤を分散する熱硬化性樹脂と、
粒径が5nm〜300nmの微小無機粒子と、
を有することにある。
【0008】
上記課題を解決する請求項2に係る熱硬化性樹脂組成物の特徴は、請求項1において、前記イソシアネート化合物は2以上のイソシアネート基をもち、
前記有機アミン化合物は2以上のアミン構造をもつことにある。
【0009】
上記課題を解決する請求項3に係る熱硬化性樹脂組成物の特徴は、請求項1又は2において、前記イソシアネート化合物及び前記有機アミン化合物は前記微小無機粒子の存在下で反応させられていることにある。
【0010】
上記課題を解決する請求項4に係る熱硬化性樹脂組成物の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記微小無機粒子はシリカから形成されることにある。
【0011】
上記課題を解決する請求項5に係る熱硬化性樹脂組成物の特徴は、請求項4において、前記微小無機粒子はシランカップリング剤にて処理されていることにある。
【0012】
上記課題を解決する請求項6に係る熱硬化性樹脂組成物の特徴は、請求項1〜5の何れか1項において、シリカ及び/又はアルミナから形成され、粒径0.3μm〜50μmである第2微小無機粒子を有することにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、微小無機粒子を含有させることで温度上昇による粘度低下を抑制できるという効果が発現できる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、イソシアネート化合物及び有機アミン化合物のそれぞれについて2以上の官能基をもつことで、レオロジー改変剤は高度なネットワーク構造を形成することが可能になり、チキソトロピー性を向上させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、微小無機粒子の存在下でイソシアネート化合物及び有機アミン化合物を反応させることにより、レオロジー改変剤と微小無機粒子との間で化学結合を含む強固なネットワーク構造が形成されるため、より高度なチキソトロピー性を発現することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によると、微小無機粒子としてシリカ、アルミナを採用することにより、レオロジー改変剤と微小無機粒子の表面との間の相互作用が期待でき、高いチキソトロピー性の発現が期待できる。
【0017】
請求項5に係る発明によると、無機粒子の表面をシランカップリング剤にて処理し改変することにより、微小無機粒子と熱硬化性樹脂との親和性向上、微小無機粒子とレオロジー改変剤との相互作用向上などの種々の機能付与を行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明によると、第2微小無機粒子を含有させることで、本熱硬化性樹脂組成物が硬化した後における、更なる熱的安定性などの物理的・化学的性能の向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例において試験例1の試験試料の粘度のシェアレート依存性を示すグラフである。
【図2】実施例において試験例1の試験試料の粘度の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例において試験例2の試験試料の粘度のシェアレート依存性を示すグラフである。
【図4】実施例において試験例2の試験試料の粘度の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例において試験例3の試験試料の粘度の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施例において試験例4の試験試料の粘度のシェアレート依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物について実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物はレオロジー改変剤と熱硬化性樹脂と微小無機粒子とその他必要に応じて有することができる部材を有する。レオロジー改変剤、熱硬化性樹脂、微小無機粒子の混合比は特に限定しない。レオロジー改変剤は本組成物の総量を基準として0.1〜20重量% 程度混合することができる。微小無機粒子は本組成物の総量を基準として1〜60重量%程度混合することができる。
【0021】
(レオロジー改変剤)
レオロジー改変剤はイソシアネート化合物と有機アミン化合物との反応生成物を含む。
イソシアネート化合物はその分子構造中に1以上(好ましくは2以上)のイソシアネート基をもつ。有機アミン化合物はその分子構造中に1以上(好ましくは2以上)のアミン構造をもつ。イソシアネート基及びアミン構造は、網目構造のネットワーク構造が形成できるため、それぞれ3以上であることもできる。特にイソシアネート基を2つ持つ化合物が望ましく、複数種類の化合物の混合物も選択できる。イソシアネート化合物と有機アミン化合物との反応の方法は特に限定しないが、後述する微小無機粒子の存在下に行うことで、生成するレオロジー改変剤と微小無機粒子との間に結合が生じるなどレオロジー改変剤にて形成されるネットワーク構造中に微小無機粒子を取り込むことが期待できるため望ましい。
・シアネート化合物
シアネート化合物は、脂肪族、脂環式、又は芳香族の骨格をもつことができ、その骨格にイソシアネート基が結合する。脂肪族イソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、及び1,3−ブチレンジイソシアネートである。1,3−シクロペンタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのような脂環式イソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート及びジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートのような芳香族イソシアネート;2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート及び1,4−キシレンジイソシアネートのような脂肪族−芳香族イソシアネート;ジアニシジンジイソシアネート及び4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネートのような核置換芳香族イソシアネート;トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネート、及び1,3,5−トリイソシアナトベンゼン;ならびにトルエンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートのようなポリイソシアネートのダイマー又はトリマーもまた適切である。上記イソシアネートに対応するイソチオシアネート(それらが存在する場合)は、イソシアネート基及びイソチオシアネート基の両方を含む材料の混合物も同様に使用され得る。イソシアネートは、商標MONDUR及びDESMODURでBayerUSA,Inc.から市販される。好ましくは、多官能性モノマーのイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである。適切なイソシアネートの例は、米国特許4,311,622号及び同第4,677,028号に記載される。
・有機アミン化合物
有機アミン化合物は、1つ以上のアミン構造をもつものであればよい。アミン構造には1〜3級のいずれのアミンであっても良い。好ましいアミンは、モノアミンであり、より好ましくはモノ一級アミンである。適切なモノアミンには、ベンジルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、メチルブチルアミン、エチルプルピルアミン及びエチルブチルアミンが挙げられる。更に、ヒドロキシ含有モノアミン(例えば、2−アミノエタノール、1−アミノエタノール、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノブタノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール)が使用され得る。好ましいモノアミンは、ベンジルアミン又はへキシルアミンである。レオロジー改変剤の調製における使用に適切な他のアミンの例は、米国特許第4,311,622号及び同第4,677,028号に記載されるアミンである。
【0022】
有機アミン化合物:イソシアネート化合物の当量比は、0.7〜1.5:1、好ましくは1:1の範囲(一級アミンは単官能性と考える)である。
【0023】
一般的に、レオロジー改変剤は、何らかの希釈剤の存在下で、一般的に20℃と80℃との間、好ましくは20℃〜50℃の温度で、適切な反応容器中で、有機アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることによって形成され得る。希釈剤としては先述の熱硬化性樹脂をそのまま用いることもできる。この反応を実行する際に、有機アミン化合物を先に希釈剤中に分散させた後にイソシアネート化合物を添加することが好ましい。
【0024】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は加熱することにより硬化する樹脂である。つまり、硬化前の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのプレポリマーが好適である。例えば、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ブロックされたイソシアネート基、アミノ基、ハーフエステル基、アミック基、カルボキシ基及び炭素-炭素二重結合基を化学構造中に有することが望ましい。これらの官能基は好適な反応条件を設定することで互いに結合可能な官能基(重合性官能基)であり、加熱により重合硬化(熱硬化)する。つまり、加熱によりラジカルやイオン(アニオン、カチオン)などの反応性種を生成したり、それらの官能基間を結合する反応開始剤(重合開始剤)を添加して加熱を行うことで硬化する。重合反応に際して必要な化合物を硬化剤として添加したり、その反応に対する触媒を添加することもできる。
【0025】
(微小無機粒子)
微小無機粒子は粒径が5nm〜300nmの粒子である。更に5nm〜50nmであることが更に望ましい。微小無機粒子を構成する材料としては無機物であり、金属酸化物(シリカ(コロイドシリカ)、アルミナ、チタニア、水酸化アルミニウム、粘土鉱物など)や、樹脂材料(ラテックス、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの合成高分子、天然ラテックスなどの天然高分子など)、金属(金、銀、白金など)、炭化物(SiCなど)や窒化物(AlN)などのセラミクス、炭素材料などが例示できる。その表面には何らかの表面処理を行うこともできる。
【0026】
微小無機粒子としては充填性を向上する目的では真球性が高いことが望ましい。例えば、金属酸化物で説明すると、含酸素雰囲気下にて金属粉末を酸化させて得られる方法(VMC法)や、火炎溶融法などの方法で製造できる。VMC法は、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする酸化物粒子の一部を構成する金属粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物粒子を得る方法である。火炎溶融法は目的とする球状金属酸化物粒子を構成する金属酸化物を粉砕などにより粉末化した後に、火炎中に投入・溶解させた後、冷却・固化させることで、球状金属酸化物粒子を製造する方法である。また、コロイダルシリカでは気相合成などの常法により合成することもできる。例えば、テトラアルコキシシランの重縮合により形成されたコロイドシリカが採用できる。反応条件を制御することで、粒径が制御された微小無機粒子の懸濁液を得ることができる。テトラアルコキシシランとしてはテトラエトキシシラン(TEOS)やその他任意のアルコキシ基を有するものが挙げられる。このようにして製造されたコロイドシリカとしては扶桑化学工業製コロイドシリカPL−3が挙げられる。
【0027】
微小無機粒子が細長い形状をもつこともできる。例えばアスペクト比(粒子の長径と短径との比)が2以上(より好ましくは10以上。更には繊維状であってもよい。)であることで最終製品の強度向上が実現できる。アスペクト比がこの範囲にある粒子が微小無機粒子全体の質量を基準として50%以上含有することができ、80%以上、更には90%以上含有することもできる。
【0028】
微小無機粒子はシランカップリング剤にて処理されることもできる。シランカップリング剤としては反応基をもつ反応性シランカップリング剤、反応基をもたない非反応性シランカップリング剤などを必要に応じて適正に用いることができる。
【0029】
また、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を半導体封止材などの電気・電子部品に適用する場合には、微小無機粒子におけるイオン性物質の含有量を所定値以下に制限することが望ましい。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物からイオン性物質が溶出乃至移行することで、電気・電子部品に予期しない影響が生起しうるからである。更に、電気・電子部品などへの適用のほか、イオン性物質の存在が好ましくない用途に適用する場合にも同様にイオン性物質の含有量を所定値以下に制限することが望ましい。
【0030】
ここで、イオン性物質の含有量として設定する所定値としては、用途によって適正値が異なるが、ダイアタッチ材など半導体に用いる場合には100ppm以下とすることが望ましく、50ppm以下にすることが更に望ましい。制御すべきイオン性物質としては特に限定しないが、アルカリ金属や、アルカリ土類金属、ハロゲンなどの無機物や有機酸などの有機物などが塩などとして存在することが例示できる。特に、ナトリウムの量を所定値以下に制御することが望ましい。微小無機粒子中に含有されうるイオン性物質としてはナトリウムが最も可能性が高く、ナトリウムの量を制御することでその他のイオン性物質の含有量も同時に低減できることが予測される。微小無機粒子中のイオン性物質の含有量を測定する方法としては特に限定しないが、ICPなどの通常の手法が採用できる。例えば、微小無機粒子がシリカである場合、フッ酸などにて溶解後、ICP測定に供することができる。
【0031】
イオン性物質の含有量の制御の方法としては特に限定しないが、(a)原材料中のイオン性物質(及び/又は、その後、イオン性物質に変化する物質)の含有量を制御した上で、微小無機粒子を合成により製造する方法、(b)微小無機粒子からイオン性物質を洗浄などにより除去する方法が例示できる。
【0032】
(必要に応じて有することができる部材)
必要に応じて有することができる部材としては第2微小無機粒子、溶媒などが挙げられる。第2微小無機粒子としては粒径が0.3μm〜50μmである以外は微小無機粒子と同じであるため説明は省略する。粒径としては0.3μm〜10μmであることが更に望ましい。
【0033】
(製造方法)
製造方法について一例を挙げる。例えば(a)水性スラリーを調製する工程と(b)その水性スラリーに水系有機溶媒及び熱硬化性樹脂を添加する工程と(c)イソシアネート化合物及び有機アミン化合物を添加する工程とにて製造できる。更に(d)その他の工程を有することもできる。
【0034】
(a)水性スラリーを調製する工程は微小無機粒子を水系媒質に分散した水性スラリーを調製する工程である。微小無機粒子を水系媒質中に添加した後、撹拌、超音波照射などにより、分散させる。また、微小無機粒子を構成する材料を水系媒質に溶解した溶液を用意し、その材料の溶解性を何らかの方法(イオン交換、化学反応による置換基の導入・脱離、pHや温度などの制御など)にて低下させることで微小無機粒子を析出し、微小無機粒子を含む水性スラリーを得ることができる。例えば、水ガラス水溶液をイオン交換樹脂でイオン交換することによって、コロイドシリカ水性スラリーを調製することができる。
【0035】
微小無機粒子としては表面性状が親水性であること以外は特に限定しない。表面が親水性であるとは、最終的に混合等させる混合材料に対して、そのままの状態で分散させた場合に、凝集を生ずるようなものである。
【0036】
水系媒質としては親水性が高い(混合材料との親和性がそのままでは十分でない)微小無機粒子を分散できる媒質であり、その製造工程において液体であることが望ましい。例えば、水が挙げられる。
【0037】
(b)水系有機溶媒は水系媒質よりも沸点が高く、水系媒質と混合できる有機溶媒である。沸点が高いことで、蒸発等により除去する場合に水系媒質から除去が進行し、微小無機粒子を分散する媒質を水系媒質から水系有機溶媒に徐々に置換することができる。ここで、沸点がより高いとは水系媒質を除去する場合の雰囲気における沸点が高いことを意味する。例えば、減圧雰囲気下にて水系媒質を除去する場合にはその圧力下における沸点にて比較する。また、他の添加物により沸点が変化するような場合(共沸混合物の形成、沸点上昇など)はその効果も考慮することが望ましい。
【0038】
水系媒質と水系有機溶媒との混合比は特に限定しないが、水系有機溶媒より沸点が高い有機化合物である混合材料が溶解する程度に水系有機溶媒を添加することが望ましい。そして、水系有機溶媒の量は多すぎると、生産効率が低下するおそれがある。
【0039】
水系媒質として水を採用する場合に、水系有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(プロピレングリコール−1−メチルエーテル、沸点119℃程度;プロピレングリコール−2−メチルエーテル、沸点130℃程度)、ブタノール(沸点117.7℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点204℃程度)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃程度)などが例示できる。
【0040】
(c)イソシアネート化合物及び有機アミン化合物はのうち、有機アミン化合物は前述の水系有機溶媒及び熱硬化性樹脂を添加する際に同時に添加することもできる。
【0041】
(d)その他の工程として、水系媒質や水系有機溶媒を蒸発・除去する工程を有する。水系媒質や水系有機溶媒は加熱したり、減圧したりすることで蒸発させることができる。
【0042】
水系媒質及び水系有機溶媒を除去することで、熱硬化性樹脂中に微小無機粒子が混合乃至分散した状態とすることができる。
【実施例】
【0043】
(試験例1)
微小無機粒子としてのシリカ微粒子(コロイドシリカOS:シリカ分20質量%:平均粒径約10nm:日産化学製)を100質量部にプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を200質量部とシリカ微粒子の表面積に応じた量の非反応性シランカップリング剤(ビニルトリクロルシラン:KBM−1003:信越化学工業製)とを混合し、40℃で72時間保持した後、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製)を90質量部を混合・分散した。その後、エバポレータにより水及びPGMを除去してコロイドシリカをエポキシ樹脂中に分散させた。更にエポキシ樹脂を添加することにより、全体の質量を基準としてシリカ微粒子が10質量%になるようにした。
【0044】
その後、有機アミン化合物(Ethacure100:アルベマール製)を10質量部添加・混合し、更にイソシアネート化合物(デュラネートTPA−100:旭化成製)を アミン対イソシアネートの当量比が約1:1になるように添加・混合した。最後に硬化剤(イミダゾール系:2PHZ−PW:四国化成製)を添加し、減圧撹拌することにより脱泡し本試験例の試験試料とした。
【0045】
(試験例2)
微小無機粒子としてのシリカ微粒子(コロイドシリカOL:シリカ分20質量%:平均粒径約50nm:日産化学製)を100質量部にプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を200質量部と第2微小無機粒子としてのアドマファインSE2050−SQ(シリカ:平均粒径0.5μm:アドマテックス製)を200質量部、シリカ微粒子の表面積に応じた量の非反応性シランカップリング剤(ビニルトリクロルシラン:KBM−1003:信越化学工業製)とを混合し、40℃で72時間保持した後、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を100質量部を混合・分散した。その後、エバポレータにより水及びPGMを除去してコロイドシリカ及び第2微小無機粒子をエポキシ樹脂中に分散させた。更にエポキシ樹脂を添加することにより、全体の質量を基準としてシリカ微粒子が60質量%になるようにした。
【0046】
その後、この微粒子分散樹脂組成物100質量部に対して有機アミン化合物(Ethacure100:アルベマール製)を2質量部添加・混合し、更にイソシアネート化合物(デュラネートTPA−100:旭化成製)をアミン対イソシアネートの当量比が約1:1になるように添加・混合した。最後に硬化剤(イミダゾール系:2PHZ−PW:四国化成製)を添加し、減圧撹拌することにより脱泡し本試験例の試験試料とした。
【0047】
(試験例3)
コロイドシリカを添加していない以外は試験例1と同様の操作を行い本試験例の試験試料とした。
【0048】
(試験例4)
イソシアネート化合物及び有機アミン化合物を添加していない以外は試験例1と同様の操作を行い本試験例の試験試料とした。
【0049】
(粘度の測定)
試験例1の試験試料について粘度を測定した。測定温度は25℃と110℃とした。結果を図1に示す。図1より明らかなように、高温でも高いチキソトロピー性を発現できることが分かった。そして、70℃で放置した際の粘度変化を検討した(測定条件:sharerate5S-1)。結果を図2に示す。図2より明らかなように、70℃での放置では粘度の経時変化は殆ど認められなかった。
【0050】
試験例2の試験試料についても試験例1の試験試料と同様に粘度を測定した。測定温度は70℃とした。結果を図3に示す。図3より明らかなように、試験例1の試験試料と同様に、高温でも高いチキソトロピー性を発現できることが分かった。そして、70℃で放置した際の粘度変化を検討した(測定条件:sharerate5S-1)。結果を図4に示す。図4より明らかなように、70℃での放置では粘度の経時変化は殆ど認められなかった。
【0051】
試験例3の試験試料についても試験例1の試験試料と同様に高温下での粘度の経時変化を測定した。測定温度は70℃とした(測定条件:sharerate5S-1)。結果を図5に示す。図5より明らかなように、70℃での放置では粘度が経時的に低下することが分かった。
【0052】
試験例4の試験試料についても試験例1の試験試料と同様に粘度を測定した。測定温度は25℃とした。結果を図6に示す。図6より明らかなように、シェアレートの大きさにかかわらず粘度の大きさは一定でチキソトロピー性は示さなかった。
【0053】
以上の結果から、レオロジー改変剤を添加することでチキソトロピー性が向上することが分かった(試験例1、2、4)。そのチキソトロピー性は微小無機粒子の添加により高温に放置しても高い値を示すことが分かった(試験例1、2、3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物と1以上のアミン構造をもつ有機アミン化合物との反応生成物を含むレオロジー改変剤と、
前記レオロジー改変剤を分散する熱硬化性樹脂と、
粒径が5nm〜300nmの微小無機粒子と、
を有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物は2以上のイソシアネート基をもち、
前記有機アミン化合物は2以上のアミン構造をもつ請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物及び前記有機アミン化合物は前記微小無機粒子の存在下で反応させられている請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記微小無機粒子はシリカから形成される請求項1〜3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記微小無機粒子はシランカップリング剤にて処理されている請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
シリカ及び/又はアルミナから形成され、粒径0.3μm〜50μmである第2微小無機粒子を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−235797(P2010−235797A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85901(P2009−85901)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【Fターム(参考)】