説明

熱硬化性樹脂組成物

【構成】 式(1)で示されるジシアネートエステル化合物とフェノール変性ポリブタジエン樹脂とを反応させてなる熱硬化性樹脂組成物。
【化1】


【効果】 高Tgで、靭性に優れ、しかも吸水率が小さい硬化物を得ることができ、これを半導体封止に用いた場合、封止体の耐半田クラック性も良好であり、半導体封止用樹脂組成物として非常に信頼性の高い優れたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガラス転移点(以下Tgという)が高く、低吸水性で、靭性に優れた半導体封止用熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年IC、LSI、トランジスター、ダイオードなどの半導体素子や電子回路等の封止には、特性、コスト等の点からエポキシ樹脂組成物が一般的に用いられている。しかし、電子部品の量産性指向、高集積化や表面実装化の方向に進んで来ており、これに伴い封止樹脂に対する要求は厳しくなってきている。特に高集積化に伴うチップの大型化、パッケージの薄肉化や表面実装時における半田浸漬(200〜300℃)によって装置にクラックが発生し易くなっており、信頼性向上のために半導体封止用樹脂としては耐熱性、高靭性と低吸水性が強く望まれている。
【0003】半導体封止用樹脂としては現在エポキシ樹脂が主流である。しかし、エポキシ樹脂は、耐熱性と低吸水性の点で改良に限界があり、表面実装時の半田浸漬後の信頼性の高いものが得られていない。エポキシ樹脂に代わる高耐熱性を有する樹脂としては、マレイミド樹脂が注目されてきているが、吸水率が大きく、吸湿時の半田浸漬でクラックを発生し、信頼性に乏しい欠点がある。この他に、エポキシ樹脂に代わる高耐熱性を有する樹脂としては、シアネートエステル樹脂が公知である。この樹脂は、積層板成形のように長いプレス時間をかける場合には、Tgが高く、比較的低吸水性の硬化物となる。しかし、これを封止材などの短時間成形に用いる場合は、硬化速度が非常に遅く、金型からの離型性も悪い。硬化性を上げるため、ノニルフェノール、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛などの硬化触媒を増やすと、Tgが下がり、脆くなり、吸水率も大きくなるなどの問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的とするところは、高耐熱性、高靭性で、かつ低吸水性を有し、半田浸漬後の信頼性に非常に優れた半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、式(1)で示されるジシアネートエステル化合物とフェノール変性ポリブタジエン樹脂とを反応させてなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0006】
【化1】


【0007】
【作用】本発明において用いられるジシアネートエステル化合物は、式(1)で示されるものである。式(1)の好ましいジシアネートエステル化合物の例として、ビス(4-シアネートフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-シアネートフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-シアネートフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアネートフェニル)メタン、1,1-ビス(4-シアネートフェニル)エタン、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジ(4-シアネートフェニル)エーテル、ジ(4-シアネートフェニル)チオエーテル、4,4-ジシアネート-ジフェニルなどが挙げられる。
【0008】本発明で用いられるフェノール変性ポリブタジエン樹脂は、分子量300〜2000のポリブタジエンをフェノール類と付加重合させたものである。ポリブタジエンの分子量が300より低いと良好な靭性が得られず、2000より高いと耐熱性が低下する。
【0009】フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノールなどが使用される。フェノール類の含有量は、フェノール変性ポリブタジエン樹脂中の5重量%以上、50重量%以下で、かつ分子当り平均1〜3個付加したものが好ましい。フェノール類の含有量が5重量%未満では、硬化性が悪く、Tgも低く、良好な靭性が得られない。また50重量%を越えると、成形時の離型性が悪く、成形品の吸水率が大きくなる。
【0010】フェノール変性ポリブタジエン樹脂は、ジシアネートエステル化合物100重量部に対し、5重量部以上50重量部以下が好ましい。5重量部未満では、硬化性、離型性が悪く、成形品の吸水率も大きくなる。また50重量部を越えると、耐熱性が低下し、良好な靭性が得られない。
【0011】ジシアネートエステル化合物とフェノール変性ポリブタジエン樹脂は、100〜200℃に加熱して、融点が50℃以上100℃以下になるよう、予め反応させておくことが望ましい。
【0012】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛などの硬化促進剤、シリカ粉末などの無機充填材、滑剤、難燃剤、離型剤、シランカップリング剤、着色剤などを必要に応じて適宜配合添加し、加熱混練することによって成形材料にすることができる。
【0013】本発明の組成物を用いた硬化樹脂は、誘電率、誘電正接も小さいので、低誘電率積層板用にも好適である。
【0014】
【実施例】
(実施例1〜3)撹拌装置、減圧蒸留装置及び温度計を付けた反応容器に、ジシアネートエステル化合物とフェノール変性ポリブタジエン樹脂、更に実施例1では、ナフテン酸コバルトを表1の処方に従って入れ、加熱する。減圧下(約20mmHg)、150℃で融点が50〜70℃になるよう反応させた。生成樹脂の融点は表1に示した。
【0015】
【表1】


【0016】(比較例1)ジシアネートエステル化合物だけを、実施例1と同様に反応させた。生成樹脂の融点は表1に示した。
【0017】(実施例4〜6)表2に示す配合に従って、実施例1〜3で得た樹脂に、硬化促進剤、シリカ粉末、エポキシシラン及び離型剤を加え、熱ロールで混練して成形材料を得た。得られた成形材料を、トランスファー成形により、180℃3分で成形し、外観の良好な成形品が得られた。この成形品をさらに180℃、8時間後硬化を行い、特性を評価した。結果を表2に示す。
【0018】
【表2】


【0019】実施例4〜6の成形材料は、Tgが高く、靭性(破断エネルギー)が大きく、しかも吸水率が小さい。65℃、95%RH、72時間の吸湿処理での耐半田クラック性も良好であった。
【0020】(比較例2)比較例1のシアネートエステル樹脂を用いて、実施例4と同様に成形材料化したが、硬化不良で、離型性も悪く、成形が困難であった。
【0021】(比較例3)比較例1のシアネートエステル樹脂を用い、硬化性を上げるため、硬化触媒を増やして、実施例4と同様に成形材料化した。結果を表2に示す。硬化性は向上したが、離型性は良くなかった。Tgはエポキシ樹脂と同程度に低く、靭性も大きくない。吸水率もエポキシ樹脂と同程度に大きい。耐半田クラック性も良くなかった。
【0022】(比較例4)エポキシ樹脂を用いて、実施例4と同様に成形材料化した。結果を表2に示す。Tgは実施例1〜3に比べて低く、吸水率は大きい。
【0023】
【発明の効果】本発明による熱硬化性樹脂組成物の硬化物は高Tgであり、靭性に優れ、しかも吸水率が小さい。これを半導体封止に用いた場合、封止体の耐半田クラック性も良好であり、半導体封止用樹脂組成物として非常に信頼性の高い優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 式(1)で示されるジシアネートエステル化合物とフェノール変性ポリブタジエン樹脂とを反応させてなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【化1】